JP4199977B2 - 三重効用吸収式冷凍機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、空気調和装置等の熱源機として使用される三重効用吸収式冷凍機に関する。
【0002】
【従来の技術】
三重効用吸収式冷凍機に関する従来技術としては、例えば特開昭60−134172号公報に記載のものが挙げられる。本従来技術では、高温再生器、中温再生器及び低温再生器、凝縮器、蒸発器、吸収器、溶液熱交換器類、溶液ポンプ及び冷媒ポンプなどを主要構成機器とし、これら機器を溶液配管、冷媒配管などで接続する構成になっている。
【0003】
また本従来技術の溶液サイクルは、3個の再生器へ並列的に希溶液を供給してそれぞれ濃縮させる、いわゆるパラレルフロー方式の採用により、高温再生器の低温、低圧作動化を図っている。
【0004】
本従来技術では、溶液ポンプとして、吸収器出口の低温希溶液ポンプ、高温熱交換器の希溶液ライン入口の高温希溶液ポンプ、低温熱交換器の濃溶液ライン入口の濃溶液ポンプ、の3台が設置されている。溶液配管群は、この高温希溶液ポンプが低温希溶液ポンプからの吐出溶液の一部を高温再生器に送るように構成されている。
【0005】
また高温再生器の出口には、気液分離器と、この気液分離器に連通する高温再生器液面タンクが設置されている。高温再生器で生成された濃溶液は、気液分離器、高温熱交換器を経て、前記高温再生器液面タンクの液面に応じて開閉する流量制御弁によって流量を調節された後に、前記中温再生器及び低温再生器からの濃溶液と、溶液スプレイ液面タンクにて合流する(従来技術1)。
【0006】
また、他の従来技術としては、特開2002−130859号公報に記載の吸収冷凍機が挙げられる。本従来技術では、シリーズに接続された低温度、中温度および高温度の3段階の再生器を備え、吸収器にて得られる希溶液を前記低温度再生器に送給する希溶液ポンプと、前記低温度再生器にて得られる中間吸収液を中温度再生器に送給する中間液ポンプと、前期中温度再生器にて得られる濃吸収液を前記高温度再生器に送給する濃液ポンプなどを備えている。
【0007】
本従来技術では、前記各溶液ポンプによる吸収液の送給量を制御する制御装置を備えている。また本従来技術の溶液サイクルは、吸収器で生成された希溶液が全量低温度再生器に送られ、低温度再生器で得られた中間吸収液の所定割合のみを中温度再生器に送り、その残部の中間吸収液を直接的に吸収器に戻し、前期中温度再生器で得られた濃吸収液の所定割合のみを前記高温度再生器に送り、その残部の濃吸収液を直接的に吸収器に戻す構成となっている(従来技術2)。
【0008】
【特許文献1】
特開昭60−134172号公報
【特許文献2】
特開2002−130859号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
従来の三重効用吸収式冷凍機は、上記特開昭60−134172号公報に記載されるように、高温再生器の溶液量の調整を流出量の調節によって行っていた。この場合、冷凍機の起動直後などの高温再生器の圧力が低い条件では、高温再生器からの溶液流出量が少ないため、供給量が過剰となって高温再生器液面タンク内の液面が上昇して前記流量制御弁が全開となる。
【0010】
しかしながら、高温再生器と濃溶液の合流部との間には高温熱交換器が介在するので、前記流量制御弁が全開となっても、高温再生器からの流出量はこの高温熱交換器の流動抵抗によって制限される。このため、高温再生器圧力が低い条件において溶液供給量が過剰となり、吸収器の溶液量が不足して、低温希溶液ポンプの動作に支障をきたすことがある。
【0011】
また上記従来技術では、前記高温希溶液ポンプの冷却及び軸受循環手段については触れていない。ここで、吸収式冷凍機で一般的に用いられる自己再循環式のキャンドモーターポンプを採用すると、作動流体が高温であるために軸受等に高価な材質を用いる必要が生じ、冷凍機のコストが増大する。
同様に、上記特開2002−130859号公報に記載の吸収冷凍機では、中温再生器出口の濃液が100℃を超えるため、濃液ポンプの自己冷却性能が悪く、信頼性に支障を来たすと共に、軸受等に高温に耐えうる高価な材質を用いる必要が生じ、冷凍機のコストが増大する。
【0012】
さらに上記特開2002−130859号公報に記載の吸収冷凍機では、中間液ポンプおよび濃液ポンプによる吸収液の送給量を制御しているが、これらのポンプでは軸受潤滑及び冷却用の媒体を外部から供給していないので、作動流体の自己循環によりこれらの機能を満足しなければならず、このためこれらのポンプの回転数を一定値未満に下げることができない。
【0013】
従って、冷凍機の起動時や停止時などの条件では高温再生器への溶液供給量が過剰となり、高温再生器の液面上昇による冷媒蒸気への溶液随伴、あるいは吸収器の液量不足による希溶液ポンプのキャビテーションなどの不具合が発生する恐れがあり、またこれらを防止するために、高温再生器および吸収器の小型化が困難となるなどの課題があった。
【0014】
さらに、上記各従来技術においては、冷凍機起動時に各溶液ポンプを同時に起動すると、定格運転時に比較して起動時の圧力が低い高温再生器に対して溶液供給量が過剰になるという課題があった。
【0015】
本発明の目的は、高温再生器の圧力変動に対して、溶液量のバランスを確保できる三重効用吸収式冷凍機を提供することにある。
【0016】
また本発明の目的は、高温溶液を扱う溶液ポンプにおいても、安定して冷却および軸受潤滑が可能な手段を備えた、信頼性の高い三重効用吸収式冷凍機を提供することにある。
【0017】
本発明のさらに他の目的は、溶液フローの構成の違いに係らず、高温再生器に溶液を送るポンプの回転数を自由に設定することにより、あらゆる運転条件下で高温再生器の保有溶液量が安定した、信頼性の高い三重効用吸収式冷凍機を提供することにある。
【0018】
本発明のさらに他の目的は、冷温水機の起動時に、高温再生器に対して溶液供給量が過剰とならずに安全に装置を起動できる三重効用吸収式冷凍機の運転方法を提供することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明に係る三重効用吸収式冷凍機は、吸収器から希溶液を高温再生器と低温再生器に並列に送るように配管構成するとともに、高温希溶液ポンプから高温再生器に送られる溶液流量を制御する制御装置を設けたものである。
【0020】
これにより、高温再生器からの溶液流出量が少ない条件においても再生器と吸収器との液量バランスを維持できるので、三重効用吸収式冷凍機の動作安定性と信頼性の向上、運転条件の範囲拡大が図られる。
【0021】
また上記目的を達成するために本発明に係る三重効用吸収式冷凍機の他の発明は、吸収器出口に低温溶液ポンプを設け、高温再生器又は高温熱交換器の入口に設けられて高温再生器に溶液を送る高温溶液ポンプを備えると共に、前記高温溶液ポンプは軸受潤滑および冷却媒体を外部から供給する構造として、この供給部に前記低温溶液ポンプから吐出される溶液の一部を導くように配管接続したものである。
【0022】
これにより、高温の溶液を扱うポンプであっても、軸受潤滑およびモーター発熱などの冷却に低温の溶液を用いることができ、耐熱性の高価な材質を用いることなく、溶液ポンプの安定した軸受潤滑および冷却が可能となる。
【0023】
さらに、高温溶液ポンプから高温再生器に送られる溶液流量を制御する制御装置を設けた場合は、前記高温溶液ポンプの回転数に係らず安定した軸受潤滑および冷却が可能となるので、ポンプの回転数を自由に設定でき、あらゆる運転条件下における高温再生器の保有溶液量の安定化を図ることができる。
【0024】
また上記目的を達成するために本発明に係る三重効用吸収式冷凍機の運転方法は、冷凍機の起動時に低温側の溶液ポンプを起動し、その後高温側の溶液ポンプを遅延して起動するものである。
【0025】
これにより、冷温水機起動時に高温再生器への溶液供給量が過剰とならず、起動時の高温再生器への溶液の偏在とこれに伴う不具合の防止を図ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明の一実施の形態に係る三重効用吸収式冷凍機のサイクル系統図である。図のように、中温再生器、低温再生器などへ高温再生器と並行に希溶液を流す、いわゆるパラレルフロー方式のものである。
【0028】
三重効用吸収式冷凍機は、高温再生器1、気液分離器15、中温再生器2、低温再生器3、凝縮器4、蒸発器5、冷媒ポンプ55、吸収器6、低温希溶液ポンプ70、高温希溶液ポンプ75、濃溶液ポンプ81、低温熱交換器8、中温熱交換器9、高温熱交換器10、LGドレン熱交換器85、MGドレン熱交換器95、排ガス熱交換器105、106、およびこれら機器を結ぶ溶液配管及び冷媒配管などから構成されている。本実施形態においては、冷凍機の冷媒には水、吸収剤には臭化リチウムが用いられている。
【0029】
次に、この冷凍機の機構及び運転中の動作について説明する。
【0030】
冷房に供される冷水は、蒸発器5で冷媒の蒸発熱によって冷却されて冷水配管59から冷房負荷系に送られる。このとき発生した冷媒蒸気は、吸収器6の溶液によって吸収される。この吸収によって蒸発器内の圧力と蒸発温度とが低圧、低温に維持される。なお、蒸発器5内の液冷媒は冷媒配管P1に設けられた冷媒ポンプ55で加圧され蒸発器上部より冷水配管59に散布する構成となっている。
【0031】
また、蒸発器5及び吸収器6は、2段蒸発吸収型の構成となっている。すなわち、蒸発器5の上段側の蒸発部5aで蒸発した冷媒蒸気は、吸収器6の上段側の吸収部6aで、蒸発器5の下段側の蒸発部5bで蒸発した冷媒蒸気は、吸収器6の下段側の吸収部6bでそれぞれ吸収される。この構成により、冷凍機の運転効率を一層向上している。
【0032】
吸収器6では、高温再生器1、中温再生器2、低温再生器3の各再生器で過熱濃縮された溶液すなわち濃溶液が各熱交換器を経由して配管P3により送られてきて、伝熱管群63上に滴下される。滴下された濃溶液は、吸収器6内の伝熱管群63内を流れる冷却水によって冷却されると共に冷媒蒸気を吸収し、濃度のより薄い溶液すなわち希溶液となって吸収器6の下部に滞留する。
【0033】
この希溶液は、希溶液配管P2に設けられた希溶液ポンプ70によって、大部分は低温熱交換器8およびLGドレン熱交換器85に送られる。同時に希溶液ポンプ70の吐出側の配管には、高温希溶液ポンプ75の冷却液配管72が接続されており、吐出液の一部が高温希溶液ポンプ75の冷却および軸受潤滑用として導かれている。同様に、希溶液ポンプ70の吐出液の一部は、濃溶液ポンプ81へ冷却および軸受潤滑用としても図示しない配管によって導かれている。
【0034】
低温熱交換器8に送られた希溶液は、配管P3によって吸収器6に流入する濃溶液と熱交換して温度上昇する。一方、LGドレン熱交換器85に送られた希溶液は、中温再生器2で発生した冷媒蒸気を低温再生器3内で凝縮した配管P4からの冷媒液と、配管P5を流れるMGドレン熱交換器95からの冷媒液とを、混合した冷媒液と熱交換して温度上昇する。低温熱交換器8とLGドレン熱交換器85とで熱交換した希溶液は一旦合流し、その後再び分岐して、一部は配管P6により低温再生器3に、他の一部は中温熱交換器9に、残りはMGドレン熱交換器95に送られる。LGドレン熱交換器85で希溶液と熱交換して温度低下した冷媒液は、配管P7により凝縮器4に導かれる。
【0035】
低温再生器3に送られた希溶液は、中温再生器2で発生した冷媒蒸気の凝縮熱を伝える伝熱管群33と、排ガス熱交換器105を通った高温再生器1からの排ガスと、外部から供給される排熱とを熱交換する第2の排ガス熱交換器106を通った外部排熱を伝える伝熱管群34とに滴下することによって過熱濃縮されて、濃度の濃い溶液すなわち濃溶液となる。この配管P8の濃溶液は、高温再生器1及び中温再生器2からの配管P3の濃溶液と合流し、濃溶液ポンプ81によって、低温熱交換器8を経由して吸収器6へ送られる。低温再生器3で発生した冷媒蒸気は、凝縮器4へ送られ吸収器6内の伝熱管63に接続されている凝縮伝熱管43内を流れる冷却水によって冷却されて凝縮し、LGドレン熱交換器85から配管P7により供給された冷媒液と混合され配管P9により蒸発器5へ送られる。
【0036】
一方、中温熱交換器9に送られた希溶液は、配管P3により高温再生器1(気液分離器15で分離された)から送られた濃溶液と、配管P10により中温再生器2から送られた濃溶液と熱交換してさらに温度上昇する。またMGドレン熱交換器95に送られた希溶液は、配管P5の高温再生器1で蒸発し気液分離器1で分離された冷媒蒸気を中温再生器2内で凝縮した冷媒液と熱交換して温度上昇する。そして、これらの希溶液は一旦合流し、再び分岐して、一部は中温再生器2に、残りは高温溶液ポンプ75の吸込側に送られる。なお、配管P5のMGドレン熱交換器95で希溶液と熱交換して温度を下げた冷媒液は、低温再生器3内で凝縮した液冷媒(配管P4)と合流してLGドレン熱交換器85に送られる。
【0037】
中温再生器2に送られた希溶液は、高温再生器1で発生した冷媒蒸気の凝縮熱によって過熱濃縮されて濃溶液となり、フロートボックス24にオーバーフローする。フロートボックス24内にはフロートバルブ25が設置されており、このフロートバルブ25は、フロートボックス24内の濃溶液の液位によって中温再生器2に送られる希溶液量を調節する流量調整手段となっている。フロートボックス24内の濃溶液は、配管P10によって高温再生器1で過熱濃縮された濃溶液(配管P3)と合流して中温熱交換器9に導かれる。
【0038】
中温再生器2の加熱に用いられて管内で凝縮した液冷媒は、配管P5によりMGドレン熱交換器95に送られて希溶液を顕熱で加熱した後に、低温再生器3で凝縮した冷媒液と合流し、LGドレン熱交換器85を経て配管P7で凝縮器4に送られる。また先に説明したように、中温再生器2で発生した冷媒蒸気は低温再生器3の伝熱管33に送られ、ここで低温再生器3に流入した希溶液を過熱濃縮する。
【0039】
一方、高温溶液ポンプ75側に送られた希溶液は、高温溶液ポンプ75によって加圧された後で分岐して、大部分は高温熱交換器10に、残りは排ガス熱交換器105に送られる。
【0040】
高温熱交換器10に送られた希溶液は、高温再生器1からの濃溶液(配管P3)と熱交換してさらに温度上昇する。また、排ガス熱交換器105に送られた希溶液は、高温再生器1の加熱に用いられた後の燃焼ガス(燃焼ガス配管P12)と熱交換して温度上昇する。そして、これらの希溶液は合流して高温再生器1に流入する。この流入量は、高温溶液ポンプ75のモータに電力を供給するインバータ駆動装置201で駆動周波数を設定することにより制御される。なお、制御装置200は高温再生器1の気液分離器15に設けられた圧力センサ16(高温再生器内の圧力に相当する)からの信号を用いて、高温溶液ポンプ75のモータに供給する電力の電源周波数等を求めてインバータ駆動装置201に送信する。
【0041】
高温再生器1は貫流式となっており、燃料を燃焼するバーナ12と、このバーナ12の周囲に、同心円状に配置されて溶液を過熱濃縮する伝熱管群などから構成されている。
【0042】
高温再生器1に流入した希溶液は、伝熱管群の管内に導かれ、燃焼ガスとの熱交換によって過熱濃縮されて濃溶液となった後、発生した冷媒蒸気と共に、高温再生器1の出口部に設置された気液分離器15に導かれる。そして、気液分離器15内において冷媒蒸気と分離される。気液分離器15の上部には上述した圧力センサ16が設置されている。
【0043】
気液分離器15で冷媒蒸気から分離された濃溶液は高温熱交換器10に送られ、高温再生器1に流入する希溶液と熱交換して温度低下した後、中温再生器2で過熱濃縮された濃溶液と合流し、さらに中温熱交換器9に送られる。気液分離器15で濃溶液から分離された冷媒蒸気は、中温再生器2に送られて中温再生器2の希溶液を過熱濃縮して管内で凝縮した後、MGドレン熱交換器95に導かれる。
【0044】
本実施の形態では、低温希溶液ポンプ70及び濃溶液ポンプ81は冷凍機の起動と同時に運転を開始するが、高温希溶液ポンプ75は、高温再生器1に設けられた圧力センサー16の出力値が所定の値をとなった時点で運転を開始し、その後は前述のように、制御装置200と、インバータ駆動装置201とにより制御され運転が継続される。ただし、高温希溶液ポンプ75の運転開始前においても、少量の希溶液が、低温希溶液ポンプ70によって停止中の高温希溶液ポンプ75内を通過して高温再生器1に供給される。
【0045】
また、高温再生器1での燃料の燃焼による入熱の他に、外部から90℃程度の低温排熱を投入できる外部排熱投入部38を設けた構成となっている。すなわち、低温再生器3の内部には、中温再生器2で発生した冷媒蒸気が流入する伝熱管群33に加えて、外部排熱投入部38からの排熱を流す伝熱管群34が設置されている。
【0046】
この伝熱管群34に導かれる熱媒体は、低温再生器3に流入する前に排ガス熱交換器106によって予熱されている。排ガス熱交換器106には、排ガス熱交換器105で希溶液の一部を加熱した後の排ガスが導かれている。また、低温再生器3への希溶液導入用の配管P6には制御弁210が設けられ、排熱投入量によって開度が制御されている。また、高温再生器1の出力である気液分離器15に設けた圧力センサ16の出力値が高くなると制御弁210の開度が開くように制御装置200により制御されている。
【0047】
以上説明したように本実施形態によれば、高温希溶液ポンプ75から高温再生器1に送られる溶液流量を、高温希溶液ポンプ75の駆動モータをインバータ制御によって制御する制御装置200を設け、圧力センサ16の出力によってモータの電源周波数等を設定するので、高温再生器圧力が低く、高温再生器からの溶液流出量が少ない場合においても、その流出量に応じた流量で高温再生器1に希溶液を供給することが可能となる。
【0048】
従って、高温再生器1の溶液保有量が過剰となって気液分離器15内の液面が上昇して気液分離に支障を来たしたり、吸収器の溶液が不足となって低温希溶液ポンプの動作に支障を来たすことがない。
【0049】
また本実施の形態によれば、高温希溶液ポンプ75及び濃溶液ポンプ81の冷却および軸受潤滑用媒体として、温度の低い低温希溶液ポンプの吐出溶液の一部が導かれているので、軸受潤滑性能が高くポンプの信頼性が向上し、冷凍機としての信頼性も向上する。また、高温希溶液ポンプ75の軸受などに耐熱性の高価な材料を用いる必要がなく、コストアップを回避することが可能となる。
【0050】
さらに本実施の形態によれば、高温希溶液ポンプ75の回転数に係らず、安定した軸受潤滑及び冷却が可能となるので、作動流体の自己循環により軸受潤滑及び冷却を行う場合に発生する下限回転数の問題がなく、ポンプ回転数を任意に設定できる。従って、起動直後や部分負荷運転時などにおいても高温再生器と吸収器の溶液保有量のバランスを維持することができる。またこれに伴って、吸収器低部の最大溶液保有量も低減できるので、機器の小型化および溶液封入量の削減、さらには、これらに伴う起動時間の短縮が可能となる。
【0051】
さらに本実施の形態では、冷凍機の起動時に低温希溶液ポンプ70の運転を開始し、高温希溶液ポンプは高温再生器1の圧力(気液分離器15の圧力)が所定値以上となった時点で運転を開始するので、起動時の高温再生器1への溶液供給量の過剰とそれに伴う不具合を防止することができる。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態について、図2及び図3を用いて説明する。図2は本実施の形態に係る三重効用吸収式冷凍機の系統図、図3は本実施の形態に係る三重効用吸収式冷凍機溶液フローのみを示した概略図(b)と図1の実施の形態を同様に表した場合(a)との比較である。図3では、希溶液の流れを実線、濃溶液の流れを破線で示し、高温溶液ポンプの軸受潤滑・冷却用溶液の流れを細線で示している。
【0053】
図2に示す三重効用吸収式冷凍機の基本構成要素は、図1の実施の形態と同様である。図1の実施の形態と異なる点は、高温熱交換器10などを経て高温再生器1に希溶液を送る高温希溶液ポンプ75に希溶液を導く配管が、図1及び図3(a)に示す実施の形態では中温熱交換器9の希溶液出口から分岐しているのに対して、図2および図3(b)に示す実施の形態では、低温熱交換器8の希溶液出口から分岐していることである。又高温再生器1からの濃溶液が高温熱交換器10から中温熱交換器8を通らずに、中温熱交換器9から濃溶液と合流して低温熱交換器8に入るように構成してある。なお、中温熱交換器9に供給される濃溶液は、中温再生器2からの濃溶液だけとなる。
【0054】
本実施の形態によれば、高温熱交換器10での希溶液と濃溶液の入口の温度差が大きいため、顕熱損失を低減するための交換熱量が増大して、他の熱交換器よりも耐圧強度が要求される高温熱交換器10が大型化する。しかしその代わりに、高温希溶液ポンプの取扱溶液温度を低減できるので、安価なポンプの採用が可能となる。
【0055】
次に、本発明のさらに他の実施の形態について、図4を用いて説明する。図4に示す三重効用吸収式冷凍機は、希溶液を吸収器6から低温再生器3へ、さらに低温再生器3から中温再生器2へ、中温再生器2から高温再生器1へとシリーズに循環させる方式のものである。さらに本実施の形態では、低温再生器で得られた中間溶液の一部を中温再生器2へは送らずに吸収器6に戻し、同様に中温再生器2で得られた濃溶液の一部を高温再生器1へは送らずに吸収器6に戻すように配管(図の点線で示す配管)を設けてある。
【0056】
この冷凍機の運転中の動作は、図1の実施の形態と概ね同様であり、相違点を以下に説明する。
【0057】
吸収器6で冷媒を吸収した希溶液は、低温溶液ポンプ70によって加圧され、その大部分は低温熱交換器8またはLGドレン熱交換器85に送られ、そこで加熱されて温度上昇した後に低温再生器3に導かれる。残りはポンプ軸受潤滑用溶液供給配管72を通って中温溶液ポンプ74、高温溶液ポンプ75の軸受潤滑または冷却用媒体として各ポンプに供給される。
【0058】
低温再生器3で過熱濃縮された中間濃度の冷媒溶液は、大部分は中温溶液ポンプ74によって加圧され、中温熱交換器9又は排ガス熱交換器106を通って中温再生器2に供給される。残りは図の点線で示すように中温溶液ポンプ74の吸込側から分岐して、中温熱交換器9から低温熱交換器8を経て吸収器へ戻る濃溶液に合流する。中温溶液ポンプ74は軸受潤滑及び冷却用の媒体を外部から供給する方式となっており、先に述べたように、この供給部に低温溶液ポンプ70の吐出溶液の一部が供給されている。なお、排ガス熱交換器106への排ガスは、高温再生器1で発生した排ガスを高温熱交換器10と並列に設けられた排ガス交換105を通ったものが使用される。
【0059】
なお、低温再生器3には液位センサ37が設けられ、この信号により制御装置200は低温溶液ポンプ70を制御する。
【0060】
中温再生器2でさらに過熱濃縮された濃溶液は、大部分は高温溶液ポンプ75によって高温熱交換器10又は排ガス熱交換器105を通って高温再生器1に供給され、残りは高温溶液ポンプ75の吸込側から分岐して、高温熱交換器10から中温熱交換器9、低温熱交換器8を経て吸収器へ戻る濃溶液に合流する。高温溶液ポンプ75は、中温溶液ポンプ74と同様に軸受潤滑及び冷却用の媒体を外部から供給する方式となっており、この供給部に低温溶液ポンプ70の吐出溶液の一部が供給されている。
【0061】
また、中温再生器2には、フロートバルブの代わりに、圧力センサ26及び液位センサ27が設けられており、中温再生器2への溶液供給量の調節は、これらのセンサからの信号をもとに、制御装置200によって中温溶液ポンプ74の適正回転数を演算してインバータ駆動装置202に送信し、この回転数に対応した電源周波数を中温溶液ポンプ74の駆動モータに与えることによって行われる。
【0062】
同様に、高温再生器1への溶液供給量の調節は、高温再生器1の気液分離器15に設けられた圧力センサ16および液位センサ17からの信号によってインバータ駆動装置201から高温溶液ポンプ75の駆動モータに出力される電源周波数によって行われる。
【0063】
また冷凍機の起動時には、低温溶液ポンプ70を冷凍機の運転開始と共に起動する。そして、中温溶液ポンプ74と、高温溶液ポンプ75は、中温再生器2と高温再生器1のそれぞれに設けた液位センサ37、27の検出値、すなわち液位が所定値以上になった時点で運転を開始する。
【0064】
本実施の形態によれば、高温溶液ポンプ75、中温溶液ポンプ74の軸受潤滑及び冷却媒体として、低温溶液ポンプ70の吐出液の一部を供給しているので、高温溶液ポンプ75、中温溶液ポンプ74の回転数によらずに安定した軸受潤滑および冷却が可能となる。また、インバータ駆動方式を採用することによって、これらのポンプの回転数が任意に設定可能となり、冷凍機のあらゆる運転条件に対して、高温再生器1、吸収器6などの保有溶液量を所定の範囲内に維持することができる。そのため、高温再生器1への溶液の偏在による気液分離不良や吸収器6での溶液量不足による低温溶液ポンプ70の動作不良又は液面スイッチ作動による運転停止などを回避できるため、冷凍機の動作が安定し、信頼性を向上することができる。
【0065】
本実施の形態では、高温溶液ポンプ75の軸受潤滑および冷却用の媒体として、低温溶液ポンプ70の吐出液の一部を供給しているが、これは中温溶液ポンプ74の吐出液の一部としてもよい。この場合には、供給される溶液の温度が低温溶液ポンプ70の吐出液よりも高くなって冷却能力が低下する代わりに、高温溶液ポンプ75からの吐出液の温度低下による冷凍サイクルの顕熱損失を低減でき、冷凍機の効率が上昇する利点がある。
さらに本実施の形態では、
以上説明してきた全ての実施の形態においては、蒸発器5および吸収器6はいわゆる2段蒸発吸収の構成となっているが、これは、吸収式冷凍機で一般的に用いられている1段蒸発吸収の構成とした場合においても、本発明の適用により、同様の優れた効果を発揮することは明白である。
【0066】
また以上説明してきた全ての実施の形態においては、吸収器の溶液出口に設けられた低温溶液ポンプ70は特に回転数制御を行わない構成としているが、これは、インバータをさらに追加して、制御装置200によって制御しても良い。この場合は、フロートバルブ25の動作安定化による信頼性向上、低温再生器3への溶液供給量制御による部分負荷効率の向上、起動時に希溶液系統の圧力をソフトに立ち上げることができるため、熱交換器等に急激な圧力変動が発しないことによる低温熱交換器8及びLGドレン熱交換器85の耐圧強度低減、さらには必要最小限の動力で駆動することによる消費電力の低減などの利点がある。
【0067】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の三重効用吸収式冷凍機によれば、高温再生器への溶液供給量を任意に設定することが可能となり、高温再生器からの流出量が少ない条件においても液量バランスを維持でき、液面の過度の上昇や低下に伴う不具合を回避できるので、三重効用吸収式冷凍機の信頼性が向上する。
【0068】
また、高温再生器への循環量制御が中温再生器及び低温再生器への循環量にほとんど影響を与えないので、中温再生器及び低温再生器の動作が安定して吸収式冷凍機の信頼性がさらに向上する。
【0069】
さらに本発明の三重効用吸収式冷凍機によれば、中温再生器出口の100℃以上溶液を、高温溶液(濃液)ポンプを用いて高温再生器に送る方式を採用した場合においても、この高温溶液ポンプの軸受潤滑及び冷却を、高温溶液ポンプの回転数によらずに確実に行うことができ、軸受などに耐熱性の高価な材質を用いることがなく、高温溶液ポンプの回転数を任意に設定できるので、吸収式冷凍機のコストアップを低減し、且つ信頼性が向上する。
【0070】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る三重効用吸収式冷凍機の系統図である。
【図2】本発明の他の実施の形態に係る三重効用吸収式冷凍機の系統図である。
【図3】図1の実施の形態と図2の実施の形態との構成の違いを表す概略系統図である。
【図4】本発明のさらに他の実施の形態に係る三重効用吸収式冷凍機の系統図である。
【符号の説明】
1…高温再生器、2…中温再生器、3…低温再生器、4…凝縮器、5…蒸発器、6…吸収器、8…低温熱交換器、9…中温熱交換器、10…高温熱交換器、12…バーナ、15…気液分離器、16、26…圧力センサ、17、27、37…液位センサ、24…フロートボックス、25…フロートバルブ、33、34、43、63…伝熱管、55…冷媒ポンプ、59…冷水配管、5a…上段側蒸発器、5b…下段側蒸発器、6a…上段側吸収器、6b…下段側吸収器、70…低温溶液ポンプ、72…ポンプ軸受潤滑用溶液供給配管、74…中温溶液ポンプ、75…高温溶液ポンプ、81…濃溶液ポンプ、85…LGドレン熱交換器、95…MGドレン熱交換器、105、106…排ガス熱交換器、200…制御装置、201、202…インバータ。

Claims (5)

  1. 高温再生器、中温再生器及び低温再生器、凝縮器、吸収器、蒸発器、複数の溶液熱交換器、これらの機器を結ぶ溶液配管及び冷媒配管、溶液及び冷媒をサイクル内に循環させる溶液ポンプ及び冷媒ポンプを備えた三重効用吸収式冷凍機において、
    前記吸収器から希溶液を前記高温再生器と前記中温再生器と前記低温再生器に並列に送るように配管を構成し、
    前記溶液ポンプとして、少なくとも前記吸収器の希溶液出口に接続された低温希溶液ポンプと、前記低温希溶液ポンプからの希溶液の一部を前記高温再生器に送る高温希溶液ポンプを備え、
    前記高温希溶液ポンプの駆動モータをインバータ制御する制御信号を生成する制御装置を設け
    前記高温再生器からの排ガスと前記高温希溶液ポンプからの希溶液とを熱交換する第1の排ガス熱交換器を前記高温熱交換器と並列に設け、
    さらに前記第1の排ガス熱交換器からの排ガスと外部排熱とを熱交換する第2の排ガス熱交換器を設け、
    前記第2の排ガス熱交換器で熱交換された外部排熱を前記低温再生器に導いて当該低温再生器内の希溶液を加熱して冷媒蒸気を発生させる構成とした
    ことを特徴とする三重効用吸収式冷凍機。
  2. 請求項1に記載の三重効用吸収式冷凍機において、前記制御装置は前記高温再生器の圧力に応じて前記駆動モータの電源周波数を決定することを特徴とする三重効用吸収式冷凍機。
  3. 請求項2に記載の三重効用吸収式冷凍機において、前記高温再生器の気液分離器内の圧力を検出するに圧力センサと、前記低温再生器の内部に中温再生器で発生した冷媒蒸気を流す伝熱管群と前記第2の排ガス熱交換器で熱交換された外部排熱を流す伝熱管群と、前記低温再生器への希溶液導入用の配管に設けた制御弁とを備え、前記制御装置は、排熱投入量によって前記制御弁の開度を制御すると共に、前記圧力センサの出力値が高くなると前記制御弁の開度を開くように制御する構成としたことを特徴とする三重効用吸収式冷凍機。
  4. 請求項1に記載の三重効用吸収式冷凍機において、前記高温希溶液ポンプは軸受潤滑媒体を外部から供給する構造とし、この軸受潤滑媒体の供給部に前記低温希溶液ポンプから吐出される希溶液の一部を導くように配管接続したことを特徴とする三重効用吸収式冷凍機。
  5. 請求項4に記載の三重効用吸収式冷凍機において、前記制御装置は前記高温再生器の状態に伴って変化する物理量を入力信号として前記高温希溶液ポンプの回転数を制御することを特徴とする三重効用吸収式冷凍機。
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