JP4193264B2 - 監視回路付基板保持装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、例えば真空中で基板(例えば半導体ウェーハ)にイオンビームを照射してイオン注入を行うイオン注入装置等に用いられるものであって、基板を保持する基板保持装置に関し、より具体的には、基板の保持力不足状態を検出する監視回路付の基板保持装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の基板保持装置の一例として、静電気によって基板を吸着保持する静電チャックを有する基板保持装置が、従来から種々提案されている。例えば、特開平6−334024号公報参照。
【0003】
基板保持装置において、仮に基板の保持力不足状態が発生すると、基板保持装置から基板がずれたり脱落したりする等の問題が生じるので、保持力不足状態を速やかに検出することが望ましい。
【0004】
静電チャック上の基板の吸着状態を、基板と静電チャックの電極との間の静電容量の大小によって検出する技術が、従来から提案されている。例えば、特開平4−216650号公報参照。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
基板と静電チャックとの間の静電容量の大小によって基板の吸着状態を検出する技術は、他の方法、例えば基板を機械的に引っ張り上げてロードセルによって保持力を測定する方法等と違って、実際のイオン注入装置等において真空を破らずにそのまま検出することができるという利点を有している。
【0006】
しかしながら、基板と静電チャックとの間の静電容量の大小を単に測定する従来の技術では、種々実験したところ、静電チャック上に基板が有るけれども吸着力が不足している状態と、静電チャックに基板が正常に吸着されている状態との間では静電容量の差が殆ど生じないため、基板の吸着力不足状態を正確に検出することができないことが確かめられた。
【0007】
そこでこの発明は、基板と基板保持装置との間の静電容量を測定する技術を用いて、しかも基板の保持力不足状態を正確に検出することのできる監視回路付基板保持装置を提供することを主たる目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
この発明の監視回路付基板保持装置は、基板を保持するものであって保持した基板の表裏方向へ移動させられる基板保持装置と、この基板保持装置に保持された基板と当該基板保持装置との間の静電容量を測定する静電容量測定器と、前記基板保持装置が基板の表面方向へ移動しているときの減速時または基板の裏面方向へ移動を開始するときの加速時に、前記静電容量測定器で測定した静電容量を所定の基準値と比較して、前者が後者よりも小さいときに保持力不足を表す信号を出力する比較回路とを備えることを特徴としている。
【0009】
基板保持装置は、基板の処理や交換等のために、保持した基板の表裏方向へ移動させられる場合が多い。この発明は、この点に着目して、基板保持装置の上記移動を、基板の保持力不足状態の検出に利用するものである。
【0010】
即ち、基板保持装置が基板の表面方向へ移動しているときの減速時、または基板保持装置が基板の裏面方向へ移動を開始するときの加速時には、基板の慣性によって、基板にはそれを基板保持装置から引き離す(剥がす)力が働く。この時、基板の保持力が不足していると、基板があたかも浮くような状態になって、基板と基板保持装置との間の隙間が一時的に増大するので、基板と基板保持装置との間の静電容量の値は大きく低下する。
【0011】
上記比較回路は、この静電容量の値が大きく低下する時に、当該静電容量を所定の基準値と比較して前者(静電容量)が後者(基準値)よりも小さい時に保持力不足を表す信号を出力するものであり、これによって、基板の保持力不足状態を正確に検出することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
図3は、イオン注入装置の一例を部分的に示す平面図である。なお、これと同様のイオン注入装置が、例えば特公平7−70298号公報に記載されている。
【0013】
このイオン注入装置は、図示しない真空排気装置によって真空排気される注入室6内に、X方向(例えば水平方向)に電気的に(即ち電界または磁界によって)走査されたイオンビーム2が導入されるよう構成されている。この注入室6の左右に、この例では、二つの互いに同一構造の駆動装置10が設けられている。但し、駆動装置10は一つの場合もある。
【0014】
各駆動装置10は、基板(例えば半導体ウェーハ)4を保持する基板保持装置8を支えるアーム20と、このアーム20を矢印Bのように左右に回転させるモータ18と、主軸14およびそれに取り付けたモータ18等を矢印Aのように左右に回転させるモータ16とを備えている。モータ16および18は、この例では可逆転式のダイレクトドライブモータである。
【0015】
モータ16によって主軸14を矢印Aのように回転させて、その先にアーム20等を介して取り付けられた基板保持装置8を、基板4の処理(例えばイオン注入)のための起立状態(図中右側の基板保持装置8参照)と、基板4のハンドリング(例えば交換)のための水平状態(図中左側の基板保持装置8参照)とに移動させることができる。そして起立状態で、モータ18を矢印Bのように正逆転させてアーム20を揺動回転させると、アーム20の先端部に取り付けられた基板保持装置8は、そこに保持した基板4をイオンビーム2に向けた状態で、円弧を描くような形で、前記X方向と実質的に直交するY方向(例えば垂直方向)に機械的に走査される。それによって、基板4の全面にイオンビーム2を照射してイオン注入を行うことができる。駆動装置10の上記のような動作の制御は、制御装置24によって行われる。
【0016】
上記基板保持装置8は、例えば図1に示す例のように、基板4を静電気によって吸着保持する静電チャック30と、この静電チャック30を支持する支持体38とを有している。
【0017】
静電チャック30は、この例では、双極型と呼ばれるものであり、例えばセラミックス、ゴム状弾性体等から成る絶縁物32の表面近くに、二つの電極34および36を設けた構造をしている。両電極34および36は、例えば、共に半円形をしていて両者が相対向して円形を成すように絶縁物32内に埋め込まれている。この静電チャック30(具体的にはその電極34および36)には、吸着電源40から吸着用の電圧が印加される。但し、静電チャック30は、後述するように電極が一つの単極型でも良い。電極の形状も、半円形、円形等に限定されない。
【0018】
この基板保持装置8は、例えば、上述した起立状態に移るときに、保持した基板8の表面方向(例えば大地に対して上昇方向)Jへ移動させられ、水平状態に移るときに、保持した基板8の裏面方向(例えば大地に対して下降方向)Kへ移動させられる。
【0019】
図1に示す監視回路付基板保持装置は、上記のような基板保持装置8と、この基板保持装置8に保持された基板4と当該基板保持装置8との間の静電容量Cを測定する静電容量測定器42と、基板保持装置8が基板4の表面方向Jへ移動しているときの減速時または基板4の裏面方向Kへ移動を開始するときの加速時に、静電容量測定器42で測定した静電容量Cを所定の基準値Rと比較して、前者Cが後者Rよりも小さい(即ちC<R)ときに保持力不足を表す信号S2 を出力する比較回路44とを備えている。
【0020】
静電容量測定器42は、この例では、静電チャック30の二つの電極34、36間に接続されている。各電極34、36とその上の基板4との間には、静電容量C1 、C2 がそれぞれ存在する。両静電容量C1 およびC2 は、基板4を経由して実質的に互いに直列接続されていると考えることができるので、静電容量測定器42は、この例では、この静電容量C1 およびC2 の合成(実質的に直列)の静電容量を測定することができる。
【0021】
静電チャック30が一つの電極を有する場合は、基板4に(例えばその裏面に)適当な導通手段(例えば図2に示すような電極ピン58)を当接させ、この導通手段と静電チャック30の電極との間に上記静電容量測定器42を接続して、基板4と静電チャック30の電極との間の静電容量を測定するようにしても良い。
【0022】
比較回路44は、上述したように、基板保持装置8が、▲1▼基板4の表面方向Jへ移動しているときの減速時、または▲2▼基板4の裏面方向Kへ移動を開始するときの加速時に、上記比較を行う。この▲1▼の減速時の典型例は、移動している基板保持装置8が停止する時である。▲2▼の加速時の典型例は、停止している基板保持装置8が動き始める時である。
【0023】
比較回路44において上記のような▲1▼減速時または▲2▼加速時のタイミングで比較を行わせるためには、例えば、基板保持装置8を含む前述した駆動装置10の動きを制御する図3に示した制御装置24から、上記▲1▼または▲2▼のタイミングで信号S1 を出力させ、この信号S1 によって比較回路44を能動化させるようにすれば良い。あるいは、この信号S1 によって、静電容量測定器42および比較回路44の少なくとも一方を能動化させるようにしても良い。
【0024】
比較回路44に設定する上記基準値Rは、例えば、静電チャック30による吸着保持力が正常であり、かつ基板4に慣性力を加えないときに、具体的には基板保持装置8の停止中に、静電容量測定器42によって測定した静電容量Cの値の1/2程度に設定しておけば良い。
【0025】
上記▲1▼または▲2▼のタイミング、即ち基板保持装置8が基板4の表面方向Jへ移動しているときの減速時、または基板保持装置8が基板4の裏面方向Kへ移動を開始するときの加速時には、基板4の慣性によって、基板4にはそれを基板保持装置8から引き離す(剥がす)力が働く。この時、万一、基板保持装置8による基板4の保持力が不足していると、基板4があたかも基板保持装置8から浮くような状態になって、基板4と基板保持装置8(より具体的にはその静電チャック30)との間の隙間が一時的に増大するので、静電容量測定器42で測定する、基板4と基板保持装置8との間の静電容量Cの値は大きく低下する。
【0026】
例えば、上記▲1▼または▲2▼のタイミングで、基板保持装置8上の基板4には最大で3G(Gは重力加速度)程度の力が加わる場合がある。このような状況下において、例えば8インチの基板4に対する静電チャック30の吸着力の標準値が仮に300gwであるとすると、基板4が3Gの力を受けたとき、基板4はその質量を例えば53gとすると、53g×3G=159gwの慣性力を受ける。このような力を受けても、正常ならば静電チャック30の吸着力がそれを上回るので、基板4が静電チャック30から剥がされて脱落したりずれたりすることはないけれども、何らかの原因で静電チャック30の吸着力が低下していると、基板4が静電チャック30から剥がされることが起こり得る。このとき、静電容量測定器42で測定する静電容量Cは、正常時の例えば10%程度にまで低下する場合がある。
【0027】
比較回路44は、この静電容量Cの値が大きく低下する時に、当該静電容量Cを上記基準値Rと比較して前者(静電容量C)が後者(基準値R)よりも小さいときに保持力不足を表す信号S2 を出力する。これによって、基板4の保持力不足状態を正確に検出することができる。
【0028】
しかもこの監視回路付基板保持装置は、基板保持装置8上の基板4の保持状態を、基板4と基板保持装置8との間の静電容量Cの大小によって検出するものであるので、前述したように、他の方法、例えば基板4を機械的に引っ張り上げてロードセルによって保持力を測定する方法等と違って、実際のイオン注入装置等において真空を破らずにそのままで検出することができるという利点をも有している。
【0029】
基板保持装置8は、上記例のような静電チャック30を用いたものに限らず、例えば図2に示す例のように、支持体50上に基板4を、その周縁部を基板押さえ54によって機械的に(図中の矢印Fはその機械力を示す)押さえ付けて保持する構造のもの等でも良い。この構造は、メカニカルクランプ方式と呼ばれる。この基板保持装置8も、前述した表面方向Jおよび裏面方向Kに移動させられる。支持体50と基板4との間には、通常は両者間の熱伝達を良くするために、シリコーンゴム等から成るゴム状弾性体52が挟まれて(介在させて)おり、基板4とその下の支持体50または後述する電極56との間には静電容量が生じている。
【0030】
上記静電容量測定器42は、このようなメカニカルクランプ方式の基板保持装置8に保持された基板4と当該基板保持装置8との間の静電容量Cを測定し、前述した比較回路44に与える。それ以外は、図1の例の場合と同様である。
【0031】
上記静電容量Cの測定は、より具体的には、例えば図2に示す例のように、ゴム状弾性体52内に電極56を埋め込んでおき、かつ保持した基板4に(例えばその裏面に)当接する電極ピン58を設けておき、この電極56と電極ピン58との間に静電容量測定器42を接続して、電極56と基板4との間の静電容量を測定しても良い。あるいは、電極56を設けずに、金属製の支持体50を電極として兼用して、この支持体50と基板4との間の静電容量Cを静電容量測定器42によって測定するようにしても良い。
【0032】
この図2の例のようなメカニカルクランプ方式の場合も、何らかの原因で、基板押さえ54によって基板4を押さえ付ける力Fが、即ち基板4の保持力が不足していると、図1の例の場合と同様、▲1▼基板保持装置8が基板4の表面方向Jへ移動しているときの減速時、または▲2▼基板保持装置8が基板4の裏面方向Kへ移動を開始するときの加速時に、基板4の慣性によって、基板4にそれを基板保持装置8から引き離す力が働き、この時、静電容量測定器42で測定する静電容量Cが大きく低下するので、比較回路44から保持力不足を表す信号S2 が出力される。これによって、基板4の保持力不足状態を正確に検出することができる。
【0033】
もっとも、静電チャック30を用いた基板保持装置8の方が、その吸着電源40の動作不良や出力不足等によって、保持力(吸着力)不足状態が起こる可能性がメカニカルクランプ方式よりは高いので、上記のような監視回路を採用する効果はより高い。
【0034】
なお、上記のようにして基板保持装置8上の基板4の保持力不足状態を検出することは、それによって例えば、それ以降の処理を速やかに中断して不良処理が続出することを未然に防止すること等が可能であり、非常に有意義である。
【0035】
上記基板保持装置8を基板4の表裏方向J、Kへ移動させる手段は、図3に示した駆動装置10のようなものに限られるものではない。例えば、図4に示す駆動装置10のように、基板4を上面に保持する基板保持装置8を、上下方向Hに直線的に駆動(移動)するもの等でも良い。この駆動装置10は、特開平10−125613号公報に記載されているのと同様のものであり、基板保持装置8を支持する軸11と、この軸11を上下方向Hに往復直線駆動する直線駆動部12と、軸11が真空容器7を貫通する部分を真空シールする機能を有する軸受部13とを備えている。直線駆動部12は、例えば、モータとギヤとを組み合わせた機構や、シリンダ等から成る。
【0036】
また、基板4を保持した基板保持装置8の移動方向は、必ずしも上記例のように基板4の表面に対して直角の表裏方向に移動させる場合に限られるものではなく、基板4の表面に対して斜めの表裏方向に移動させる場合でも良い。例えば、図5に示す例のように、基板4を保持した基板保持装置8を、垂直方向からある角度θ(≠0)だけ傾けた状態で上下方向Hに移動させる場合でも良い。この場合も、基板保持装置8の上下方向Hの移動によって、基板保持装置8を基板4の表裏方向へ移動させる成分の力が生じるので、基板保持装置8の保持力が不足していると、基板保持装置8と基板4との間の静電容量Cが変化(低下)するからである。
【0037】
【発明の効果】
以上のようにこの発明は、基板保持装置の前述したような移動を基板の保持力不足状態の検出に利用するものであり、基板の保持力が不足していると、基板保持装置の前述したような加減速時に基板と基板保持装置との間の静電容量の値が大きく低下し、それを比較回路で検出するようにしているので、基板の保持力不足状態を正確に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る監視回路付基板保持装置の一例を示す図である。
【図2】この発明に係る監視回路付基板保持装置の他の例を示す図である。
【図3】イオン注入装置の一例を部分的に示す平面図である。
【図4】基板保持装置を駆動する機構の他の例を示す概略図である。
【図5】基板保持装置を駆動する機構の更に他の例を示す概略図である。
【符号の説明】
4 基板
8 基板保持装置
10 駆動装置
30 静電チャック
42 静電容量測定器
44 比較回路

Claims (2)

  1. 基板を保持するものであって保持した基板の表裏方向へ移動させられる基板保持装置と、この基板保持装置に保持された基板と当該基板保持装置との間の静電容量を測定する静電容量測定器と、前記基板保持装置が基板の表面方向へ移動しているときの減速時または基板の裏面方向へ移動を開始するときの加速時に、前記静電容量測定器で測定した静電容量を所定の基準値と比較して、前者が後者よりも小さいときに保持力不足を表す信号を出力する比較回路とを備えることを特徴とする監視回路付基板保持装置。
  2. 前記基板保持装置は、絶縁物内に1以上の電極を埋め込んでいて静電気によって基板を吸着保持する静電チャックを有しており、前記静電容量測定器は、この静電チャックの電極と基板との間の静電容量を測定するものである請求項1記載の監視回路付基板保持装置。
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