JP4192405B2 - 鍵盤装置の鍵駆動装置および鍵盤装置の鍵駆動方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ソレノイドユニットを用いて鍵を駆動する鍵盤装置の鍵駆動装置および鍵盤装置の鍵駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、ピアノなどの鍵盤楽器の中には、各鍵毎にソレノイドユニットを設け、これらのソレノイドユニットが鍵を突き上げることにより自動演奏を行う機能を備えたものがある。このような自動演奏機能を備えた鍵盤楽器では、演奏データに基づいてソレノイドユニットに駆動電流を供給する鍵駆動装置を有している。
【0003】
従来の鍵駆動装置では、図7に示すような駆動電流波形をソレノイドユニットに供給しており、この駆動電流波形によってソレノイドユニットが作動し、対応する鍵を突き上げて押鍵動作が実行されている。ここで、図7に示す駆動電流波形について説明すると、押鍵動作を実行する場合、まずアタック電流を供給した後、演奏する楽曲の強弱に応じたタッチ電流を供給している。アタック電流はソレノイドユニットの静止摩擦を打ち消して、プランジャを始動させるための電流であり、アタック電流としてはタッチ電流等の後から供給される電流よりも大きい値の電流が供給される。そして、打弦タイミングが経過すると、打弦後のハンマの跳ね返りを抑止するためのバックチェック電流が供給され、この後、押鍵状態を維持するためのホールド電流が供給される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、図8は、上述した駆動電流波形における楽音の強弱に応じたタッチ電流値と、演奏データに示される強弱値(例えばMIDI(Musical Instrument Digital Interface)のベロシティ値)との関係を示す。タッチ電流値とベロシティ値の関係は、図中破線で示すような関係になることが制御上好ましいが、実際には図中実線で示すように、弱音領域と強音領域とでのタッチ電流との関係が著しく異なっている。そして、弱音域において楽音の強弱を微細に制御するためには、タッチ電流値を非常に細やかに制御する必要があり、弱音域において正確な電流制御を行うことは非常に困難である。
【0005】
また、鍵駆動に用いられるソレノイドユニットは、図9に示すような推力特性を持っているのが一般的である。同図に示すように、一般的なソレノイドユニットの特性は、プランジャの位置がある範囲内において上方側になるほどソレノイドユニットの推力が大きくなるようになっている。これは、押鍵を維持した状態での効率を考慮したものであり、押鍵維持状態にプランジャが位置する時、つまり上方側にプランジャがある時により大きな推力を得るためである。押鍵用のソレノイドユニットは、このような非線形の特性を有しているため、弱音再生を行う場合には、十分な推力が得られず、所望量の楽音発生がなされにくいといった問題がある。
【0006】
これ以外にも、従来の駆動電流波形によるソレノイドユニットでは、ピアノの種類、鍵盤の高低差、各ピアノ間の構造のばらつき、および温湿度などの使用環境の変化といった外乱要素により、所望量の楽音発生に支障をきたすことがあり、特に上述したような理由から弱音領域では外乱の影響を受けやすい。
【0007】
また、図7に示すように、従来の駆動電流波形では、アタック電流値からタッチ電流値に不連続、かつ急激に変動するため、ソレノイドユニットのプランジャ、鍵、アクション機構といった押鍵時に作動する各部品の挙動が乱れてしまい正常な押鍵動作に支障を来すことがあり得る。例えば、ハンマがアクション機構から所定のタイミングよりも早く脱進してしまったり、各部品同士が共振系を構成して振動してしまうといったことがあり得る。
加えて、図7に示す駆動電流波形でソレノイドユニットを制御した場合、プランジャと鍵が強く衝突することになるため、衝突音が発生するとともに、鍵の挙動が不安定になり、プランジャの動作と鍵の動作が一致しなくなるという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情を考慮してなされたものであり、安定した押鍵動作を実行させることを目的とし、第1には弱音領域においても、安定した押鍵動作を実行させることが可能であり、第2にはソレノイドユニットの可動部と鍵が強く衝突することを防止することが可能な鍵盤装置の鍵駆動装置および鍵盤装置の鍵駆動方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に記載の鍵盤装置の鍵駆動装置は、鍵盤装置の各鍵に対応して設けられるソレノイドユニットと、演奏データに基づいて特定される前記ソレノイドユニットに駆動信号を供給する駆動制御手段とを備え、当該駆動信号が供給されたソレノイドユニットが対応する前記鍵を突き上げて駆動する鍵盤装置の鍵駆動装置であって、前記駆動制御手段は、前記ソレノイドユニットの静止摩擦を打ち消すための予め設定されたアタック電荷を前記ソレノイドユニットに供給する波形パートであって、所定時間の間に最大アタック電流値から前記演奏データに示される強弱に基づいた楽音電流値に連続して電流値が減少する波形パートを有する駆動電流波形を生成し、当該駆動電流波形を前記ソレノイドユニットに供給し、前記アタック電荷の値をE A 、前記最大アタック電流値をI A 、前記楽音電流値をI T とした場合、電流値が連続的に変化する前記所定時間は、2E A /(I A +I T )で算出される値であることを特徴としている。
【0011】
また、請求項に記載の鍵盤装置の鍵駆動装置は、請求項に記載の鍵盤装置の鍵駆動装置において、前記最大アタック電流値から前記楽音電流値に連続して減少する波形は、高次多項式にしたがった線を描く波形であることを特徴としている。
【0012】
また、請求項に記載の鍵盤装置の鍵駆動装置は、請求項に記載の鍵盤装置の鍵駆動装置において、前記高次多項式は、ベジエ曲線を描く式またはS字曲線を描く式であることを特徴としている。
【0014】
また、請求項に記載の鍵盤装置の鍵駆動方法は、鍵盤装置の各鍵に対応して設けられるソレノイドユニットに演奏データに基づいた駆動信号を供給し、当該駆動信号が供給されたソレノイドユニットが対応する前記鍵を突き上げて駆動する鍵盤装置の鍵駆動方法であって、前記ソレノイドユニットの静止摩擦を打ち消すための予め設定されたアタック電荷を前記ソレノイドユニットに供給する波形パートであって、所定時間の間に最大アタック電流値から前記演奏データに示される強弱に基づいた楽音電流値に連続して電流値が減少する波形パートを有する駆動電流波形を生成し、当該駆動電流波形を前記ソレノイドユニットに供給し、前記アタック電荷の値をE A 、前記最大アタック電流値をI A 、前記楽音電流値をI T とした場合、電流値が連続的に変化する前記所定時間は、2E A /(I A +I T )で算出される値であることを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
A.鍵駆動装置の構成
まず、図1は本発明の実施形態に係るピアノの鍵駆動装置の構成を示す断面図である。この図1において、1は鍵であり、棚板2の上に図示せぬバランスピンを介して回動自在に支持されている。演奏者は、この鍵1の前端部(図示略)を押鍵して演奏する。この様な鍵1が、図面の表裏方向に複数並設され、鍵盤が構成されている。
【0016】
鍵1の後端部の上方には、鍵1の動作に応じて弦を打撃する公知のハンマアクション機構(図示略)が設けられている。また、棚板2における鍵1の後端部の下方部分には、鍵1の配列方向に伸びる収納孔が形成されており、この収納孔に、鍵1ごとにソレノイドユニット3と、演奏データに応じて各ソレノイドユニット3に駆動信号を供給する駆動制御装置103とを備えた鍵駆動装置Pが収納されている。
【0017】
この鍵駆動装置Pは、鍵1の後端部を押し上げることによって鍵1に押鍵動作を与えるもので、支持体80と、この支持体80に鍵1の配列方向に向かって千鳥状に配置され、1つ1つの鍵1の後端部の下面に対向配置されているソレノイドユニット3とを有している。
【0018】
ソレノイドユニット3は、ヨーク100と、ソレノイド101と、プランジャ102とを有している。駆動制御装置103は、演奏データに応じて特定される鍵1に対応したソレノイド101に駆動電流を供給する。そして、駆動電流が供給されたソレノイドユニット3のソレノイド101およびヨーク100によって磁界が発生し、プランジャ102が上昇する。このように上昇するプランジャ102によって鍵1の後端部が突き上げられ、押鍵動作が実行されるようになっている。
【0019】
B.駆動電流波形
上述した鍵駆動装置の構成は、従来の一般的な鍵駆動装置と同様の構成であるが、本実施形態では、駆動制御装置103によるソレノイドユニット3の駆動制御方法としてフィードフォワード制御を採用し、弱音領域においても安定した押鍵動作を可能とする駆動電流波形を生成し、ソレノイドユニット3に供給している。以下、駆動制御装置103からソレノイドユニット3に供給する駆動電流波形について詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る鍵駆動装置では、ある鍵1を押下動作させる場合には、その鍵1に対応したソレノイドユニット3に、図2に示すような駆動電流波形が駆動制御装置103から供給されるようになっている。同図に示すように、この駆動電流波形は、押し付けパートA、アタックパートB、タッチパートC、バックチェックパートDおよびホールドパートEといった5つのパートに分けられる。
【0021】
押し付けパートAは、図1に示すように待機位置にあるプランジャ102が鍵1の下端面に押し付けられるまでの間、ソレノイドユニット3に供給される駆動電流波形の1つのパートであり、この押し付けパートAが供給されると、プランジャ102が待機位置から上昇して鍵1の下端面に接するまで移動する。押し付けパートAでは、プランジャ102が鍵1の下端面に接触する時間を基準(=0)とした場合、この基準時間まで前の時間T0から0までの間、一定の電流値I0が供給される。ここで、ピアノの種類や鍵盤の高さ等にもよるが、時間T0としては5msec程度、電流値I0としては0.08A程度であり、これらの値はこの鍵駆動装置が搭載されるピアノの種類、鍵盤の高さ、およびソレノイドユニットの種類などに応じて予め設定された固定値である。
【0022】
次に、アタックパートBは、プランジャ102が鍵1の下端面に押し付けられた後、ソレノイドユニット3のインダクタンス分による電流の遅れを補償し、静止摩擦を打ち消すためにソレノイドユニット3に供給される駆動電流波形の1つのパートである。このアタックパートBが供給されると、プランジャ102が静止摩擦を脱出して鍵1が回動動作を開始する。アタックパートBでは、プランジャ102が鍵1の下端面に接触した時間0において、最大のアタック電流値IA(0.4〜1A程度)が供給され、それ以降時間T2までの間、電流値が連続して減少し、時間T2になった時点で電流値がIT、後述するハンマ速度に応じたタッチ電流値となる。
【0023】
このようなアタックパートBにおける最大アタック電流値IAからタッチ電流値ITまで連続して変化する波形について、図3を参照しながら詳細に説明する。本実施形態では、アタックパートBにおいては、このパート全体の電荷であるアタック電荷EA(A・sec)は固定値(例えば3mC〜10mC程度)であり、この鍵駆動装置が搭載されるピアノの種類などに応じて予め設定されている。そして、アタックパートBにおけるアタック電荷EAが予め設定された値になり、かつ最大アタック電流値IAからタッチ電流値ITまでに電流値が連続して変化するにあたり、変化する電流値が描く曲線Sが高次多項式、例えばベジエ(Bezier)曲線を描くよう駆動電流値を変化させている。具体的には、次のような手法により、電流値を変化させている。
【0024】
まず、アタックパートBの終了時間T2を次の式により算出する。
2=2EA/(IA+IT
【0025】
一般的な鍵盤高さを有するピアノにおいては、ppp、pp、p、mpといった弱音発生を行う場合には、タッチ電流値ITは0.005A〜0.02A程度であり、アタック電荷EAを5mCとし、最大アタック電流値IAを0.6Aとして場合、上記式に当てはめると、T2=(2X5X0.001)/(0.6+0.02)で算出され、その結果時間T2は16msec程度になる。
【0026】
そして、アタックパートBを、0〜T1(T1=T2/2)までの第1領域と、T1〜T2までの第2領域といったように時間的に2分割し、それぞれの領域の端点H1,H2,H3における電流値を示す関数の一次微分値が図中破線で示すH1,H12,H2,H23,H3を結ぶ直線Mの傾きφと一致するように、以下の式によりベジエ曲線を描く電流値を算出している。ここで、点H12はこの波形グラフにおける座標が(時間T1/2、電流値IA)の点であり、点H23は座標が(時間(T1+T2)/2、電流値IT)の点である。
【数1】
Figure 0004192405
上記各式において、tは時間、iは電流値、uは媒介変数である。
上記各式を第1領域および第2領域毎に、電流値iで解くと次のようになる。
【数2】
Figure 0004192405
第1領域については上記(1)式を用い、第2領域については上記(2)式を用いて電流値iを逐次算出すれば、図3に示したようなベジエ曲線を描く駆動電流波形のアタックパートBを生成することができる。
【0027】
図2に戻り、タッチパートCは、押鍵速度、つまり押鍵に連動するハンマの速度を制御するための駆動電流波形の1つのパートであり、時間T2から打弦タイミングTD間での間、演奏データに示される楽音の強弱(MIDIの場合、ベロシティ値)に応じたタッチ電流値ITが駆動電流として供給されることになる。具体的には、強音を発生させる場合には、タッチ電流値ITを大きく設定してハンマの速度を大きくし、弱音を発生させる場合には、タッチ電流値ITを小さく設定してハンマの速度を小さくする。このようなタッチ電流値ITは、従来のソレノイドユニットへの駆動電流波形と同様に指数関数等を用いて算出、つまり演奏データに示される強弱に応じたハンマの速度の変化に対して電流値を指数変化させるようにすればよい。このように、タッチ電流値ITは、発生すべき楽音の強弱に応じてその都度設定される値である。
【0028】
次に、バックチェックパートDは、打弦後のハンマの跳ね返りを抑えるためにソレノイドユニット3に供給される駆動電流のパートであり、打弦タイミングTD以降の時間ΔTBの間、電流値IBが駆動電流として供給されることになる。ここで、時間ΔTBや電流値IBは、この鍵駆動装置が搭載されるピアノの種類や鍵盤の高さなどに応じて予め設定された固定値である。ここで、打弦タイミングTDは、ハンマの挙動を検出するハンマセンサ等から取得するようにしてもよいし、上述した基準時間からの打弦タイミングまでの遅延時間を、ハンマ速度等を用いて算出するといった公知の打弦タイミング推定方法により推定したものであってもよい。
【0029】
次に、ホールドパートEは、押下された位置で鍵1を保持するため、つまりプランジャ102を鍵1を押し上げた位置で保持するためにソレノイドユニット3に供給する駆動電流のパートであり、バックチェックパートDの終了後であるTDからΔTB経過後の時間TEから電流値IHが駆動電流としてソレノイドユニット3に供給される。これにより、プランジャ102は鍵1を突き上げる位置で保持され、鍵1が押下状態で保持されることになる。ここで、電流値IHは、この鍵駆動装置が搭載されるピアノの種類や鍵盤高さなどに応じて予め設定された固定値であり、電流供給時間は演奏データに示される押鍵状態を持続する時間に応じて決定される。
【0030】
本実施形態では、このように、押し付けパートA、アタックパートB、タッチパートC、バックチェックパートDおよびホールドパートEといった5つのパートを有する駆動電流波形を生成してソレノイドユニット3に供給し、プランジャ102を上昇させて鍵1の押下動作を実現している。
【0031】
C.鍵駆動装置の動作
次に、上記構成の鍵駆動装置Pの動作について説明する。まず、駆動制御装置103によりCD−ROMなどの記録媒体から演奏データが読み出され、この演奏データにより特定された鍵1に対応するソレノイドユニット3に駆動電流波形が駆動制御装置103からソレノイドユニット3に供給される。ここで、駆動制御装置103からソレノイドユニット3に供給される駆動電流波形は、上述したように生成されたものである。つまり、駆動制御装置103によって演奏データに示される楽音の強弱に基づいてタッチ電流値ITが算出され、このタッチ電流値ITを用いて時間T2や、0〜時間T2までの間の電流値が逐次算出される。これにより、図3に示すようなベジエ曲線を描く駆動電流波形が生成されてソレノイドユニット3に供給される。
【0032】
このように駆動電流波形が供給されると、ソレノイドユニット3のプランジャ102が上昇し、鍵1の後端部を突き上げて押鍵動作が実行される。これにより、鍵1に連動するアクション機構によって弦が打撃されて楽音発生がなされる。このような動作が演奏データに示される音符毎に実行され、演奏データに応じた楽曲の自動演奏が実現できるようになっている。
【0033】
本実施形態では、ソレノイドユニット3へ供給する駆動電流波形のアタックパートBにおいて、最大アタック電流値IAからタッチ電流値ITへ電流値を連続して減少、つまり滑らかに減少させている。これにより、ソレノイドユニット3に発生する推力も滑らかに変化することになる。一方、従来の駆動電流波形(図7参照)では、アタック電流値からタッチ電流値に急激に電流値が変動するため、ソレノイドユニットの発生する推力も急激に変動することになる。このように推力が急激に変動すると、鍵1、これに連動するアクション機構などの各部品間の接触部の挙動が乱れ、アクション機構の動作が正常に行われなくなってしまうことがある。これに対し、本実施形態では、ソレノイドユニット3の推力変動が滑らかであるため、上記のようなアクション機構の挙動の乱れなどを抑制することができ、安定した鍵1およびこれに連動するアクション機構の動作が可能となる。
【0034】
また、本出願人は、本実施形態に係る鍵駆動装置Pによる効果を確認するために、アップライトピアノに搭載した鍵駆動装置において、図3に示すような駆動電流波形をソレノイドユニット3に供給した場合のMIDIデータのベロシティ値と、このベロシティ値に対応した楽音発生を実現するためのタッチ電流値との関係を実験により求め、図4に示すような結果を得た(図4中実線は、本実施形態による駆動電流波形を用いた場合を示し、図4中破線は従来の駆動電流波形を用いた場合を示す)。
【0035】
同図に示すように、本実施形態の駆動電流波形(図3参照)を供給した場合には、従来の駆動電流波形(図7参照)と比較して、ベロシティ値/電流値で表されるグラフ上の傾きが緩やかになり、制御性が向上していることがわかる。特に、弱音領域での制御性の向上が顕著であることがわかる。また、ピアノの種類、鍵盤の高低差、各ピアノ間の構造のばらつき、および温湿度などの使用環境の変化といった外乱要素に対しても従来よりも安定した鍵駆動制御が行えることが実験によりわかった。
【0036】
さらに、本実施形態では、アタックパートBに先だって、このアタックパートBよりも電流値が小さい押し付けパートAを設け、プランジャ102が鍵1の下端面に接触した後にアタックパートBに移行するようにしたので、プランジャ102と鍵1との衝突音の発生を防止するとともに、鍵1の挙動を安定化させることができる。
【0037】
D.変形例
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下のような種々の変形が可能である。
【0038】
(変形例1)
上述した実施形態では、最大アタック電流値IAからタッチ電流値ITに電流値を減少させる際に、ベジエ曲線を描くようにしていたが、これに限らず、0から時間T2までの間(4〜20msec)に連続して電流値が減少するような駆動電流波形であればよい。
【0039】
例えば、図5に示すように、時間T0から時間T2までの間、最大アタック電流値IAからタッチ電流値ITに電流値が直線的に変動する駆動電流波形をソレノイドユニット3に供給するようにしてもよい。このような駆動電流波形における電流値iの一次微分値Δi、つまり傾きは次式により表される。
Δi=(IT−IA)/T2
ここで、T2は、上述した実施形態と同様に次式により算出される。
2=2EA/(IA+IT
従って、Δiは次式で表せる。
【数3】
Figure 0004192405
このようにしてΔiを算出し、図5に示すような駆動電流波形を生成してソレノイドユニット3に供給する。この場合、例えば、図6(a)に示すような回路を用い、図6(b)に示すような各タイミング毎に定数Kを加算器61に供給する。また、遅延部60においてフィードバックされる出力を1クロック遅延させるとともに設定値Iを加算して加算器61に出力するようにすれば、この回路により図5に示すような駆動電流波形を生成することができる。
【0040】
この変形例においても、最大アタック電流値IAからタッチ電流値ITへ電流値を滑らかに減少させているので、上記実施形態と同様に従来の駆動電流波形によるソレノイド駆動よりも安定した制御が可能となる。また、電流値iの導出処理が上記実施形態に比べて容易であるため、処理時間を短くすることができるとともに、当該処理を実現するためのハードウェアもしくはソフトウェアが簡易なものとなる。
【0041】
また、上述したベジエ曲線や直線に限らず、曲線や直線の傾きが滑らかに変化する、つまり曲線または直線を描く式の微分値に段差ができない高次多項式により描かれるものであればよく、例えばS字曲線を描くS字関数にしたがって電流値を連続して減少させるようにしてもよい。
【0042】
(変形例2)
また、上述した実施形態では、本発明をピアノに適用した場合について説明したが、これに限らず、オルガンなどの鍵盤を有する様々な鍵盤装置の鍵駆動装置に適用することが可能である。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、弱音領域においても、安定した押鍵動作を実行させることが可能となる。また、ソレノイドユニットの可動部と鍵とが強く衝突することを防止することができ、大きな衝突音の発生を防止するとともに、鍵1の挙動を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態に係るピアノの鍵駆動装置の構成を示す側断面図である。
【図2】 前記鍵駆動装置の構成要素である駆動制御装置からソレノイドユニットに供給される駆動電流波形を説明するための図である。
【図3】 前記駆動電流波形の1パートであるアタックパートの生成方法を説明するための図である。
【図4】 前記鍵駆動装置による楽音発生の強弱の制御性の向上を説明するための図であり、楽音ベロシティ値と前記ソレノイドユニットに供給するタッチ電流値との関係を示すグラフである。
【図5】 前記駆動制御装置からソレノイドユニットに供給される前記駆動電流波形の変形例を説明するための図である。
【図6】 図5に示す駆動電流波形を生成するための回路構成を示す図である。
【図7】 従来の鍵駆動装置において、ソレノイドユニットに供給される駆動電流波形を説明するための図である。
【図8】 従来の鍵駆動装置における楽音ベロシティ値と、ソレノイドユニットに供給するタッチ電流値との関係を示すグラフである。
【図9】 従来の鍵駆動装置のソレノイドユニットのプランジャ位置と、発生推力との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1……鍵、2……棚板、3……ソレノイドユニット、102……プランジャ、103……駆動制御装置、100……ヨーク、101……ソレノイド、P……鍵駆動装置

Claims (4)

  1. 鍵盤装置の各鍵に対応して設けられるソレノイドユニットと、演奏データに基づいて特定される前記ソレノイドユニットに駆動信号を供給する駆動制御手段とを備え、当該駆動信号が供給されたソレノイドユニットが対応する前記鍵を突き上げて駆動する鍵盤装置の鍵駆動装置であって、
    前記駆動制御手段は、前記ソレノイドユニットの静止摩擦を打ち消すための予め設定されたアタック電荷を前記ソレノイドユニットに供給する波形パートであって、所定時間の間に最大アタック電流値から前記演奏データに示される強弱に基づいた楽音電流値に連続して電流値が減少する波形パートを有する駆動電流波形を生成し、当該駆動電流波形を前記ソレノイドユニットに供給し、
    前記アタック電荷の値をE A 、前記最大アタック電流値をI A 、前記楽音電流値をI T とした場合、電流値が連続的に変化する前記所定時間は、2E A /(I A +I T )で算出される値である
    ことを特徴とする鍵盤装置の鍵駆動装置。
  2. 前記最大アタック電流値から前記楽音電流値に連続して減少する波形は、高次多項式にしたがった線を描く波形である
    ことを特徴とする請求項に記載の鍵盤装置の鍵駆動装置。
  3. 前記高次多項式は、ベジエ曲線を描く式またはS字曲線を描く式である
    ことを特徴とする請求項に記載の鍵盤装置の鍵駆動装置。
  4. 鍵盤装置の各鍵に対応して設けられるソレノイドユニットに演奏データに基づいた駆動信号を供給し、当該駆動信号が供給されたソレノイドユニットが対応する前記鍵を突き上げて駆動する鍵盤装置の鍵駆動方法であって、
    前記ソレノイドユニットの静止摩擦を打ち消すための予め設定されたアタック電荷を前記ソレノイドユニットに供給する波形パートであって、所定時間の間に最大アタック電流値から前記演奏データに示される強弱に基づいた楽音電流値に連続して電流値が減少する波形パートを有する駆動電流波形を生成し、当該駆動電流波形を前記ソレノイドユニットに供給し、
    前記アタック電荷の値をE A 、前記最大アタック電流値をI A 、前記楽音電流値をI T とした場合、電流値が連続的に変化する前記所定時間は、2E A /(I A +I T )で算出される値である
    ことを特徴とする鍵盤装置の鍵駆動方法。
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