JP3586882B2 - 鍵盤楽器の自動演奏システム - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
この発明は、鍵盤をソレノイドで駆動して楽音を発生するアコースティック楽器の自動演奏システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のアコースティック楽器の自動演奏システムは、鍵盤を駆動するソレノイドが発音タイミングで駆動を開始し、鍵盤の押鍵保持が終了すると、そのまま駆動力を解いていた。図3は、上記自動演奏システムにおけるソレノイドに供給される打鍵強度データを示すタイムチャートであり、同図(a)は、mf〜ffなどの比較的強打音を発生する場合の打鍵強度データ、同図(b)は、pp〜mpなどの比較的弱打音を発生する場合の打鍵強度データである。図3(a),(b)に示すように、上記自動演奏システムでは、発音タイミングKONにおいて、初めてソレノイドに第1アッタクデータAT1、第2アタックデータAT2を供給することにより、プランジャを駆動し、鍵とプランジャをまず衝突させてから、ソレノイドにタッチデータTDを供給して、ハンマにより打弦して楽音を発音させていた。
【0003】
したがって、楽音の発生とともに、鍵とプランジャとの衝突による雑音が発生していた。また、発音後の鍵盤保持が終了すると、保持データKDの供給終了後、そのままソレノイドの駆動が解かれる。この結果、鍵が大きな速度でバックレールに衝突するため、離鍵時にも衝突による雑音が発生していた。
【0004】
そこで、鍵とプランジャとによる衝突音の発生を防止するため、ソレノイドのプランジャをバネで支持し、常に鍵と接触させておく自動演奏システムが知られている。図4は、上記プランジャをバネにより支持する方法を採用した従来のアコースティック楽器の自動演奏システムにおける鍵およびソレノイド周辺の構造を示す一部断面図である。図において、1は鍵であり、その一方の端部の下方に、ソレノイド2と、該ソレノイド2によって上下に駆動されるプランジャ3とが配設されている。プランジャ3の下方には、バネ4が設けられており、該バネ4によりプランジャ2を支持することによって、常時、プランジャ2の上端部を鍵に当接させている。このような構成においては、鍵1とプランジャ2が常に当接しているため、押鍵、もしくは離鍵時でも、鍵1とプランジャ2とは衝突することがなく、衝突音が発生しない。
【0005】
また、別のアコースティック楽器の自動演奏システムとしては、プランジャと鍵とが接触する部分を、柔軟な素材としたものが知られている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述したプランジャ3をバネ4によって支持する自動演奏システムでは、自動演奏時以外でも、プランジャ3の上端部と鍵1とが接触している。すなわち、マニュアル演奏でも、鍵1が離鍵状態となる直前で、該鍵1とプランジャ3とが衝突し、この衝突するときの衝撃が手に伝わり、本来のアコースティック楽器(例えばピアノ)のタッチ感を損ねるものであった。また、鍵数分のソレノイド2に対してそれぞれバネ4を組み込まなければならず、構造が複雑になるという問題を生じた。
【0007】
また、上記プランジャ3の先端部分に、柔軟な素材を設けた自動演奏システムでは、衝突による雑音は小さくなるものの、音の発生を先端の部材の変形によって抑えることになる。したがって、pp〜mpなどの比較的弱打では、ソレノイドの駆動力も小さくて済むため、先端の部材の衝突時における変形も小さく、駆動開始から発音までの時間は記録時に近くなるものの、mf〜ffなどの比較的強打では、プランジャの駆動から発音までの時間が先端の部材の変形によって誤差を生じやすくなるため、記録時の演奏を忠実に再現することができないという問題を生じる。
【0008】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたもので、鍵盤の操作感を劣化させることなく、簡単な構成で、メカニズムが発生するノイズを減少できるとともに、さらに、打鍵強度に依存せずに楽音の再現の忠実度を向上できるアコースティック楽器の自動演奏システムを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した問題点を解決するために、請求項1記載の発明では、ソレノイドのプランジャにより鍵が駆動される鍵盤楽器の自動演奏システムにおいて、前記プランジャが鍵を駆動して発音を行わせるための演奏情報に対応した打弦強度データ、および前記プランジャが鍵に当接するだけの値を持ち発音には寄与しない当接データを前記ソレノイドに供給するとともに、前記当接データが前記演奏情報より所定時間前から前記ソレノイドに供給されるように前記演奏情報と前記当接データとの順序を設定しているデータ供給手段を具備することを特徴とする。
また、請求項2に記載の発明では、前記データ供給手段は、前記当接データを設定する設定操作子を備えることを特徴とする。
【0011】
【作用】
請求項1記載の発明によれば、データ供給手段により、発音前に当接データを駆動手段に供給し、発音機構に前記駆動部を当接させておく。これにより、鍵盤の操作感を劣化させることなく、簡単な構成で、メカニズムが発生するノイズを減少できるとともに、さらに、打鍵強度に依存せずに楽音の再現の忠実度を向上できる。
また、上記データ供給手段に設定操作子を設けることにより、当接データを任意に設定するようにしてもよい。
【0013】
【実施例】
次に図面を参照してこの発明の実施例について説明する。図1はこの発明の一実施例の構成を示すブロック図である。図において、鍵1には、該鍵1の押下を検出するために、鍵1のストローク内の所定の2点にセンサ10が設けられている。11は、速度検出位置指定手段であり、上記センサ10の出力に基づいて、所定の2点のうちのいずれの出力が変化したかを指定するものである。また、12は、速度情報形成手段であり、上記速度検出位置指定手段11の出力に従って、所定の2点間を通過する時間を計測し、予め決められている2点間の距離からその打鍵速度を求め、速度情報として打弦速度推定手段13に出力する。
【0014】
次に、打弦速度推定手段13は、所定の打鍵速度とこれに対応する打弦速度の関係に基づいて、弦を打弦すべき打弦速度を推定し、演奏情報形成手段14に出力する。演奏情報形成手段14は、個々の打弦から推定された打弦速度の値とダンピングデータとから演奏情報を形成する。設定操作子15は、ダンピングデータの電圧値、または後述する駆動手段(ソレノイドおよびプランジャ)の離鍵時における離鍵方向に対して、逆方向の力の値を設定する操作子である。
【0015】
ここで、上記離鍵方向に対する逆方向の力について図2を参照して説明する。図2(a),(b)は、各々、本実施例による打鍵強度データを示す図であり、図3(a)に示すmf〜ffなどの比較的強打音を発生する場合の打鍵強度データ、および同図(b)に示すpp〜mpなどの比較的弱打音を発生する場合の打鍵強度データに対応する。図示のように、本実施例では、発音タイミングKONより所定時間(アタックデータの時間より長く、例えば500ms)前から鍵1の後部の裏側とプランジャの先端部とを当接させるために、所定の力でソレノイドを駆動させる当接データTCDを付け加える。
【0016】
さらに、保持データKDの供給終了後、所定時間経過後で、鍵1の後部の裏側がバックレールと衝突する前に、所定の力でソレノイドを駆動する減衰データDDを付け加えるようになっている。なお、当接データTCDおよび減衰データDDは、力の急激な変化をさけるために、任意の値もしくは段階的に加えられるようになっている。本実施例では、減衰データDDを3段階としている。これら当接データTCDおよび減衰データDDの大きさ、時間、段階数は、アコースティック楽器の自動演奏システムの個々の特性に応じて決定すればよい。すなわち、当接データTCDおよび減衰データDDの大きさ、時間、段数は、上述した設定操作子15で設定される。
【0017】
また、記憶手段16には、上記演奏情報とともに、当接データTCDおよび減衰データDDが記憶される。制御手段17は、記憶手段16の演奏情報および上記当接データTCDおよび減衰データDDに基づいて駆動手段18を制御して、図示しないプランジャを駆動し、演奏再生を制御する。また、アクション機構20は、鍵1の動作により、ハンマ21を駆動し、弦22を打弦するものである。なお、上記演奏情報形成手段14と記憶手段16、設定操作子15、制御手段17が本願発明の請求項のデータ供給手段に相当する。
【0018】
次に、上述した構成による動作について説明する。
まず、演奏データの記憶時には、鍵1の操作をセンサ10によって検出し、該センサ10の出力に基づいて、速度検出位置指定手段11によって所定の2点のうちのいずれの出力が変化したかを指定する。次に、速度情報形成手段12によって、上記速度検出位置指定手段11の出力に従って、その打鍵速度を求め、速度情報を打弦速度推定手段13へ供給する。打弦速度推定手段13は、速度情報から打弦速度を推定し、さらに、演奏情報形成手段14が推定結果から演奏情報を形成し、この演奏情報とともに、設定操作子15によって設定された当接データTCDと減衰データDDとを組み合わせて、1つの楽音分の演奏データとして記憶手段16に記憶させる。
【0019】
次に、上記演奏データの再生時には、記憶手段16に記憶された演奏データを制御手段17に順次出力する。制御手段17は、演奏データに応じて、所定の鍵に対応する駆動手段18を駆動する。この結果、鍵1、アクション機構20により、ハンマ21が駆動されて、弦22が打弦され演奏が行われる。
【0020】
このとき、キーオンタイミングKONより所定時間(アタックデータの時間より長く、例えば500ms)前から、読み出された演奏データの当接データTCDによって駆動手段18を駆動し、鍵1の後部の裏側とプランジャの先端部を当接させておく。この結果、発音時においては、プランジャと鍵1とが強く衝突しないため、該衝突による雑音の発生が防止される。
【0021】
また、発音終了後には、駆動手段18の駆動を解除した後で、かつ鍵盤の後部の裏側がバックレールと衝突する前に、減衰データDDによって決められる所定の力で段階的に駆動手段18を駆動する。この結果、発音終了時においても、鍵1の後部の裏側と、バックレールとが衝突しないため、該衝突による雑音の発生が防止される。
【0022】
なお、上述した実施例では、個々の演奏データに対して当接データTCDと減衰データDDの両方を組み合わせていたが、当接データTCDについては、発生する手段から駆動手段18までを別に設け、演奏データとは別に制御するようにしてもよい。この場合には、演奏データと別に制御することが可能となるので、当接データTCDを修正しても、演奏データを書き換える必要がなくなり、当接データTCDの修正が容易に行えるようになる。
【0023】
また、上述した実施例では、所定時間前から当接データTCDを発生させていたが、当接データTCDを常時発生しておき、プランジャと鍵1の後部の裏側を常時当接させておくようにしてもよい。この構成によれば、発音の都度、プランジャと鍵1の裏側を当接させる必要がないので、当接データTCDの修正の際に、発音数分の演奏データを書き換える必要がなくなり、当接データの修正が容易に行えるようになる。
【0024】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、ソレノイドのプランジャにより鍵が駆動される鍵盤楽器の自動演奏システムにおいて、前記プランジャが鍵を駆動して発音を行わせるための演奏情報に対応した打弦強度データ、および前記プランジャが鍵に当接するだけの値を持ち発音には寄与しない当接データを前記ソレノイドに供給するとともに、前記当接データが前記演奏情報より所定時間前から前記ソレノイドに供給されるように前記演奏情報と前記当接データとの順序を設定しているデータ供給手段を具備したため、鍵盤の操作感を劣化させることなく、簡単な構成で、メカニズムが発生するノイズを減少できるとともに、さらに、打鍵強度に依存せずに楽音の再現の忠実度を向上できるという利点が得られる。
また、請求項2に記載の発明によれば、前記データ供給手段は、前記当接データを設定する設定操作子を備えるようにしたため、鍵盤楽器の個々の特性に応じた調整ができるという利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の構成を示すブロック図である。
【図2】本実施例におけるアコースティック楽器の自動演奏システムにおけるソレノイドに供給される打鍵強度データを示すタイムチャートであり、(a)は、mf〜ffなどの比較的強打音を発生する場合の打鍵強度データ、(b)は、pp〜mpなどの比較的弱打音を発生する場合の打鍵強度データである。
【図3】従来のアコースティック楽器の自動演奏システムにおけるソレノイドに供給される打鍵強度データを示すタイムチャートであり、(a)は、mf〜ffなどの比較的強打音を発生する場合の打鍵強度データ、(b)は、pp〜mpなどの比較的弱打音を発生する場合の打鍵強度データである。
【図4】従来のアコースティック楽器の自動演奏システムにおいて、プランジャをバネにより支持する方法を採用した、鍵およびソレノイド周辺の構造を示す一部断面図である。
【符号の説明】
1……鍵(発音機構)、14……演奏情報形成手段(データ供給手段)、15……設定操作子データ供給手段、16……記憶手段(データ供給手段)、17……制御手段(データ供給手段)、18……駆動手段、TCD……当接データ、DD……減速データ。
Claims (2)
- ソレノイドのプランジャにより鍵が駆動される鍵盤楽器の自動演奏システムにおいて、
前記プランジャが鍵を駆動して発音を行わせるための演奏情報に対応した打弦強度データ、および前記プランジャが鍵に当接するだけの値を持ち発音には寄与しない当接データを前記ソレノイドに供給するとともに、前記当接データが前記演奏情報より所定時間前から前記ソレノイドに供給されるように前記演奏情報と前記当接データとの順序を設定しているデータ供給手段を具備することを特徴とする鍵盤楽器の自動演奏システム。 - 前記データ供給手段は、前記当接データを設定する設定操作子を備えることを特徴とする請求項1記載の鍵盤楽器の自動演奏システム。
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