JP3807030B2 - 鍵盤楽器、電子楽器および方法ならびに記録媒体 - Google Patents

鍵盤楽器、電子楽器および方法ならびに記録媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、演奏情報から離鍵速度を推定する鍵盤楽器の離鍵速度推定装置および方法と、演奏情報から鍵盤楽器の離鍵速度を推定するプログラムを記録した記録媒体とに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、自動演奏ピアノでは、音高、打弦速度(打弦強度)、打弦タイミング、離鍵タイミング等のタッチ要素を含む演奏情報を逐次、解釈・実行して自動演奏が行われる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、手弾きのピアノ演奏においては、タッチを微妙に調節して演奏の表現力を高めることが行われており、自動演奏ピアノにおいても、タッチの忠実な再現が達成すべき目標の一つとなっている。しかしながら、上述した自動演奏ピアノの演奏情報は離鍵速度を含んでおらず、したがって、打弦速度に関わらず、離鍵速度は一定となり、タッチを忠実に再現することができない。
【0004】
このことは、自動演奏ピアノに限らず、パーソナルコンピュータ等を用いて作成する演奏情報(例えばMIDIデータ)についても同様である。
本発明は上記事情に鑑みて為されたもので、演奏情報から離鍵速度を推定することができる鍵盤楽器の離鍵速度推定装置および方法と、演奏情報から鍵盤楽器の離鍵速度を推定するプログラムを記録した記録媒体とを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述した課題を解決するために本発明は、演奏情報を解釈して鍵を駆動する鍵盤楽器であって、少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報を記憶した演奏情報記憶手段と、打弦速度と離鍵速度との相関関係を表す関係情報を記憶する関係情報記憶手段と、前記演奏情報記憶手段に記憶されている演奏情報に含まれる打弦速度を抽出し、抽出した打弦速度に関係する離鍵速度を、前記関係情報記憶手段に記憶されている前記関係情報を用いて求める離鍵速度取得手段と、前記演奏情報に含まれている打弦速度で鍵を駆動して打弦し、前記離鍵速度取得手段で求めた離鍵速度で鍵を離鍵させる鍵制御手段とを有する鍵盤楽器を提供する。
【0006】
この態様においては、前記鍵制御手段は、前記演奏情報に応じた信号を生成し、当該信号を前記離鍵速度取得手段により求められた離鍵速度に基づいて加工して駆動指示信号を出力する出力手段を有し、前記出力手段から出力された駆動指示信号に基づいて鍵の打弦および離鍵を行うようにしてもよい。
【0007】
また本発明は、演奏情報を解釈して楽音信号を発生する電子楽器であって、少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報を記憶した演奏情報記憶手段と、打弦速度と離鍵速度との相関関係を表す関係情報を記憶する関係情報記憶手段と、前記演奏情報記憶手段に記憶されている演奏情報に含まれる打弦速度を抽出し、抽出した打弦速度に関係する離鍵速度を、前記関係情報記憶手段に記憶されている前記関係情報を用いて求める離鍵速度取得手段と、前記離鍵速度取得手段で求めた離鍵速度に基づいて、前記楽音信号を変更制御する変更制御手段とを有する電子楽器を提供する。
【0008】
また本発明は、演奏情報を解釈して鍵を駆動する鍵盤楽器の駆動方法であって、記憶部に記憶されている演奏情報であって、少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報から打弦速度を抽出し、抽出した打弦速度に関係する離鍵速度を、記憶部に記憶されている情報であって、打弦速度と離鍵速度との相関関係を表す関係情報を用いて求める離鍵速度取得ステップと、前記演奏情報に含まれている打弦速度で鍵を駆動して打弦し、前記離鍵速度取得ステップで求めた離鍵速度で鍵を離鍵させる鍵制御ステップとを有する鍵盤楽器の駆動方法を提供する。
また本発明は、コンピュータ装置を、少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報を記憶した演奏情報記憶手段と、打弦速度と離鍵速度との相関関係を表す関係情報を記憶する関係情報記憶手段と、前記演奏情報記憶手段に記憶されている演奏情報に含まれる打弦速度を抽出し、抽出した打弦速度に関係する離鍵速度を、前記関係情報記憶手段に記憶されている前記関係情報を用いて求める離鍵速度取得手段と、前記演奏情報に含まれている打弦速度で鍵を駆動して打弦し、前記離鍵速度取得手段で求めた離鍵速度で鍵を離鍵させる鍵制御手段として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を提供する。
【0009】
A.第1実施形態
まず、一般的な形式の演奏情報に基づいて離鍵速度を加味した自動演奏をリアルタイムで実現可能とする第1実施形態について説明する。
【0010】
A−1.第1実施形態の構成
図1は本発明の第1実施形態による離鍵速度推定装置10を適用した自動演奏ピアノの要部の構成を示すブロック図であり、この図において、11はRAM(Random Access Memory )等の記憶手段であり、自動演奏のための演奏情報等を記憶する。12は自動演奏ピアノの各部を制御する制御手段であり、図示せぬCPU(中央処理装置)、ROM(Read Only Memory )、書換可能なメモリ、各種I/Oインタフェース等から構成されている。なお、記憶手段11の一部を書換可能なメモリとして使用することも可能である。また、13は各鍵(ソレノイド)毎に設けられたPWM駆動回路等の駆動手段であり、自動演奏時には、制御手段12が記憶手段11から演奏情報を読み出し、演奏情報中の命令を逐次、解釈・実行して得られる駆動指示信号に従って各鍵(ソレノイド)を駆動する。
【0011】
制御手段12において、12aは記憶手段11から読み出した演奏情報中の命令を順に解釈・実行して駆動指示信号を出力する解釈実行手段であり、この解釈実行手段12a,記憶手段11,および駆動手段13は、一般的な自動演奏ピアノと同一のものを使用可能である。一方、制御手段12内に実現された離鍵速度推定装置10は、解釈実行手段12aから出力された各鍵毎の駆動指示信号を加工して対応する駆動手段13へ供給するものであり、以下、その構成について説明する。
【0012】
離鍵速度推定装置10において、10aはタッチ要素の一つである離鍵速度(offvel)と他のタッチ要素(打弦速度(onvel)、打弦タイミングと離鍵タイミングとの時間間隔(GT)、押鍵速度、打弦タイミングと押鍵タイミングとの時間間隔、押鍵タイミングと離鍵タイミングとの時間間隔など)との関係を表す関係情報を音楽ジャンル(クラシック、ジャズ、ポップス等)毎に記憶した関係情報記憶手段、10bは離鍵速度推定手段であり、解釈実行手段12aが解釈・実行する演奏情報と上記関係情報と図示せぬ操作子によって指定された音楽ジャンルとに基づいて離鍵速度(推定離鍵速度)を推定し、この離鍵速度を当該演奏情報で指定された鍵に対応する駆動指示信号作成手段10cへ供給するとともに、供給された演奏情報中の打弦を指示する命令(打弦命令)を鍵毎に記憶するバッファを備え、離鍵を指示する命令(離鍵命令)が供給された場合には、離鍵速度を推定した後に上記バッファ中の当該離鍵命令で指定される鍵に割り当てられた領域をクリアする。
【0013】
また、駆動指示信号作成手段10cは、離鍵速度推定手段10bで求められた推定離鍵速度に応じた駆動指示信号を対応する合成手段10dへ供給し、合成手段10dは、解釈実行手段12aからの駆動指示信号と駆動指示信号作成手段10cからの駆動指示信号とを合成し、駆動指示信号として対応する駆動手段13へ供給する。
【0014】
A−2.関係情報の作成方法
次に、関係情報記憶手段10aが記憶している関係情報の作成方法について説明する。実際には、前述した様々なタッチ要素と離鍵速度との関係情報が各音楽ジャンル毎に存在するが、ここでは、説明が繁雑になるのを避けるために、一つの音楽ジャンルにおけるonvel(打弦速度)およびGT(打弦タイミングと離鍵タイミングとの時間間隔)とoffvel(離鍵速度)との関係のみを示す関係情報の作成過程について説明する。
【0015】
まず、ピアニストが、onvel,GT,offvelを検出可能なピアノを用いて、対象音楽ジャンルに属する楽曲をいくつか演奏する。この演奏の際の検出結果を記録することで図2〜図6に示すグラフが得られる。なお、各グラフにおいて、onvelおよびoffvelの分解能は10ビットである。
【0016】
図2〜図6に示すグラフは、それぞれ、GTが短い場合、やや短い場合、中程度の場合、やや長い場合、長い場合のonvelとoffvelとの関係を実測値で示しており、各グラフ中には実測値の分布を近似した直線が描かれている。このように直線近似できることから明らかなように、onvelとoffvelとの間には、明らかに相関がある。さらに、各グラフ中の近似直線が一致しないことから、onvelとoffvelとの間の相関関係はGTに応じて変化することが明らかである。したがって、onvel,GT,offvelには相関がある、といえる。よって、onvel,GT,offvelの相関関係を表す情報を関係情報とすることにより、onvel,GT,および関係情報からoffvelを推定することができる。
【0017】
なお、関係情報記憶手段における関係情報の記憶形式は任意であり、例えば、GTの値毎にグラフ中の直線の関数を持つようにしてもよいし、各測定点の値をテーブル化して記憶するようにしてもよい。あるいは、onvelおよびGTに対するoffvelの確率分布を求め、これを関係情報として記憶するようにしてもよい。
また、図2〜図6において、近似直線を描けることをもってonvelとoffvelとの間に相関ががあるとしたが、これはあくまで一例であり、任意の関数による近似曲線が得られる場合にも、両者間に相関があると判断できる。
【0018】
A−3.第1実施形態の動作
次に、上述した構成の自動演奏ピアノの動作について説明する。ただし、記憶手段11には、音高、打弦速度、押鍵か離鍵か等を示すイベント情報と、打弦タイミング、離鍵タイミング等の各イベントのタイミングを示すタイミング情報等からなる演奏情報が予め記憶されているものとする。なお、当該演奏情報には、離鍵速度に関する情報は含まれていない。また、予め、使用者が操作子(図示略)を操作して特定の音楽ジャンルが選択されているものとする。
【0019】
このような状況下で、使用者が、演奏開始を指示すると、制御手段12が記憶手段11から演奏情報中の命令を順に読み出し、内部の解釈実行手段12aおよび離鍵速度推定手段10bへ供給する。このとき、制御手段12は、演奏情報に含まれる打弦タイミング、離鍵タイミングなどを示すタイミング情報にしたがって、順次、音高,打弦速度等のイベント情報を読み出す。これにより、解釈実行手段12aでは、供給された演奏情報中の命令を順に解釈・実行し、当該命令に応じた駆動指示信号を駆動手段13内の当該命令(音高)に応じた駆動手段13へ出力する。ここで、駆動指示信号が駆動手段13に与えられてから実際に打弦されるまでには時間がかかり(アタックディレイという)、また、この時間は、打弦速度が遅いほど長くなる。したがって、記憶手段から読み出された演奏情報をすぐさま駆動手段13に供給するようにすると、演奏情報が指示する打弦タイミングの間隔と実際の打弦タイミングの間隔とが異なってしまう。そこで、演奏情報のイベント情報の読出しタイミングに対して、実際の打弦タイミングおよび実際の離鍵タイミングを所定時間(例えば、500msec)だけ遅延させるとともに、駆動指示信号の値(電圧値あるいは電流値)を、実際の打弦タイミングに対してアタックディレイを考慮した時間だけ先行して打弦速度に応じた値に上昇し、離鍵タイミングで一定値に下降するようにする。すなわち、解釈実行手段12aから出力される駆動指示信号は、一般的な自動演奏ピアノにおいて駆動手段に供給される駆動指示信号と同様に変化する。
【0020】
一方、離鍵速度推定手段10bでは、ある鍵(音高)に関する離鍵命令が供給されると、当該離鍵命令と既にバッファに記憶されている当該鍵に関する打弦命令とに基づいてGT(打弦タイミングと離鍵タイミングとの時間間隔)が求められ、このGTと打弦命令に含まれるonvel(打弦速度)と予め選択された音楽ジャンルの関係情報とに基づいて、offvel(離鍵速度)が推定され、この推定離鍵速度に応じた値(電圧値あるいは電流値)の駆動指示信号が離鍵タイミングで当該鍵に対応した駆動指示信号作成手段10cから出力される。ただし、この駆動指示信号において、離鍵タイミング以降の所定期間(解釈実行手段12aから出力される駆動指示信号の離鍵に関する期間)の値は、前述の一定値だけ低く設定される。
【0021】
解釈実行手段12aおよび駆動指示信号作成手段10cから出力された同一鍵に対する各駆動指示信号は、当該鍵に対応する合成手段10dにおいて加算され、駆動指示信号として対応する駆動手段13へ供給される。合成手段10dから出力された駆動指示信号の値は、打弦タイミングにアタックディレイを考慮した時間だけ先行して打弦速度に応じた値に上昇し、離鍵タイミングで推定離鍵速度に応じた値に下降するので、駆動手段13により駆動される鍵は、打弦タイミングおよび打弦速度に応じて打鍵動作を行い、離鍵タイミングにおいては、打弦速度、打弦タイミング、および離鍵タイミングに応じた推定離鍵速度で離鍵動作を行う。
【0022】
A−4.まとめ
以上説明したように、上述した第1実施形態によれば、離鍵速度を含まない演奏情報による自動演奏時に、打弦速度、打弦タイミング、および離鍵タイミングに応じた推定離鍵速度での離鍵動作が行われる。図7に一例を示すように、本実施形態における推定離鍵速度(推定offvel)は、ピアニストの演奏時の離鍵速度(実offvel)の実測値に近い値となるので、離鍵速度が一定の従来の自動演奏ピアノに比較して、音楽性に優れた演奏が実現される。このことは、使用者が正しいタッチを習得する際にも有益である。
また、解釈実行手段12aと離鍵速度推定装置10とを分離したので、一般的な解釈実行手段12aをそのまま流用することができる、という利点もある。もちろん、離鍵速度推定装置10を解釈実行手段12a内に実現することも可能である。
【0023】
なお、本実施形態において、離鍵速度の推定にはある程度の時間が必要であるが、本実施形態においては、演奏情報のイベント情報の読出しタイミングに対して実際の打弦タイミングおよび実際の離鍵タイミングを所定時間だけ遅延させるようにしているので、この所定時間中に離鍵速度の推定処理を行うことができ、実際の離鍵タイミングにおいて推定離鍵速度に応じた制御を行うことができる。
【0024】
また、解釈実行手段12aから出力される駆動指示信号の離鍵タイミング以降の所定期間における一定値を“0”とすれば、駆動指示信号作成手段10cにおいて当該期間を考慮せずに済む。また、合成手段10dにおいて、両駆動指示信号を加算するのではなく、打弦(押鍵)時と離鍵時とで解釈実行手段12aから出力された信号と駆動指示信号作成手段10cから出力された信号とを駆動手段13に選択的に供給するようにすることによって両駆動指示信号を合成するようにしてもよい。
【0025】
B.第2実施形態
次に、一般的な形式の演奏情報に離鍵速度を加味して修正演奏情報を作成する第2実施形態について説明する。
【0026】
B−1.第2実施形態の構成
図8(a)は本発明の第2実施形態による自動演奏ピアノの離鍵速度推定装置20の構成を示すブロック図であり、図8(b)は当該離鍵速度推定装置20によって作成・出力された修正演奏情報(後述する)に従って自動演奏を行う自動演奏ピアノの要部の構成を示すブロック図である。これらの図において、図1と共通する部分には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0027】
図8(a)に示すように、離鍵速度推定装置20は、第1実施形態における離鍵速度推定装置10と同一形式の演奏情報を入力し、修正演奏情報を作成・出力するものであり、関係情報記憶手段10a,離鍵速度推定手段20a,情報加工手段20b,情報補正手段20c,および音楽ジャンル選択用の操作子(図示略)等から構成されている。
【0028】
離鍵速度推定手段20aおよび情報加工手段20bは、同一の演奏情報の命令が順に入力されるよう構成されており、離鍵速度推定手段20aが離鍵速度推定手段10b(図1参照)と異なる点は、推定離鍵速度を鍵(音高)を表す情報と対応付けてシリアルに出力する点である。これは、本実施形態ではリアルタイム処理を行う必要がないことに起因した差異であり、構成を簡素化できるという利点がある。もちろん、第1実施形態と同様に、鍵毎に異なる出力端を使用する態様とすることも可能である。
【0029】
一方、情報加工手段20bは、入力命令を所定数だけバッファリングした後に順次出力するとともに、離鍵速度推定手段20aから鍵を表す情報に対応付けられた推定離鍵速度が入力されると、バッファリングした入力命令のうち、当該鍵に対応した離鍵命令を、当該推定離鍵速度での離鍵を指示する離鍵命令に書き換える。
【0030】
また、情報補正手段20cは、情報加工手段20bにおいて離鍵命令が書き換えられた演奏情報を順に入力・バッファリングして修正演奏情報として出力するとともに、バッファリングしている演奏情報中の命令を順に解釈し、離鍵動作中の鍵が打弦動作を開始するような命令群がある場合には、当該鍵が打弦動作を開始可能な位置まで復帰した後に打弦動作が行われるように離鍵命令中の推定離鍵速度や離鍵タイミングを書き換える。(通常は、推定離鍵速度を大きくするようにする。)
【0031】
一方、図8(b)において、21は記憶手段11(図1参照)と同一構成の記憶手段であり、離鍵速度推定装置20が作成した修正演奏情報を記憶する。22は自動演奏ピアノの各部を制御する制御手段であり、解釈実行手段12a(図1参照)と略同一機能の解釈実行手段22aを備えている。解釈実行手段22aが解釈実行手段12aと異なる点は、通常の演奏情報のみならず、上記修正演奏情報を解釈・実行できる点である。
【0032】
B−2.自動演奏ピアノの動作
次に、上述した構成の自動演奏ピアノの動作について説明する。ただし、記憶手段21には、音高、打弦速度、打弦タイミング、推定離鍵速度、離鍵タイミング等からなる修正演奏情報が予め記憶されているものとする(修正演奏情報の作成過程については前述の説明から明らかであるので説明を省略する)。
【0033】
このような状況下で、使用者が、演奏開始を指示すると、制御手段22が記憶手段21から修正演奏情報中の命令を順に読み出し、内部の解釈実行手段22aへ供給する。これにより、解釈実行手段22aでは、供給された演奏情報中の命令を解釈実行し、当該命令に応じた駆動指示信号を駆動手段13内の当該命令(音高)に応じた駆動手段13へ出力する。この駆動指示信号の値は、打弦タイミングにアタックディレイを考慮した時間だけ先行して打弦速度に応じた値に上昇し、離鍵タイミングで推定離鍵速度に応じた値に下降するので、駆動手段13により駆動される鍵は、打弦タイミングおよび打弦速度に応じて打鍵動作を行い、離鍵タイミングにおいては、打弦速度、打弦タイミング、および離鍵タイミングに応じた推定離鍵速度で離鍵動作を行う。この際、推定離鍵速度および離鍵タイミングは予め補正されているので、打弦動作を行うことができないといった問題は発生しない。
【0034】
B−3.まとめ
以上説明したように、上述した第2実施形態によれば、自動演奏時に、打弦速度、打弦タイミング、および離鍵タイミングに応じた推定離鍵速度での離鍵動作が行われる。なお、修正演奏情報の作成過程において、推定打弦速度および打弦タイミングが補正されることもあるが、そのようなケースは希であり、結局、第1実施形態と同様に、音楽性に優れた演奏の実現、および正しいタッチの習得を可能としている。
【0035】
また、修正演奏情報の作成処理はリアルタイム処理ではないので、離鍵速度推定装置20への演奏情報の入力、および離鍵速度推定装置20からの修正演奏情報の出力は、命令の実行順に行われる必要はない。さらに言えば、情報補正手段20bのバッファに演奏情報中の全命令を記憶させ、これを直接的に書き換えて修正演奏情報を作成するようにしてもよい。もちろん、上記バッファは、RAMに限らず、フロッピーディスクや光磁気ディスクなどの書換可能な記録媒体であってもよい。
【0036】
また、上述した第2実施形態では、離鍵速度推定手段20aにおいて、離鍵命令が入力されると即座に推定離鍵速度を求めるようにしているが、同一鍵に対する後続の打弦命令中の打弦タイミングおよび打弦速度をも考慮して推定離鍵速度を求めるようにしてもよい。この場合には、情報補正手段20cを省くことができる。
さらに、言うまでもないが、修正演奏情報を記憶手段21に移し替える方式は任意であり、フロッピーディスクや光磁気ディスク、CD−Rなどの記録媒体を経由したオフライン方式であってもよいし、通信線を経由したオンライン方式であってもよい。
【0037】
C.共通事項
さらに、第1および第2実施形態において、音楽ジャンル毎に関係情報を作成し使い分ける例を示したが、これに限らず、例えば、奏法や、奏法と音楽ジャンルとの組み合わせ毎に関係情報を作成し使い分けるようにしてもよい。
また、上述した各実施形態では、離鍵速度推定装置を自動演奏ピアノに適用する例を示したが、これに限らず、離鍵速度に応じて発生する楽音信号の特性を変更制御可能な電子楽器に適用するようにしてもよい。これによれば、離鍵速度推定装置により推定された離鍵速度により、発生される楽音信号の特性が変化するので好適である。
【0038】
また、離鍵速度推定装置を実現するための関係情報や動作プログラム等をハードディスク等の記憶装置に格納し、CPUがこれらをRAMに読み出してから使用するように構成し、さらに、CD−ROM(コンパクトディスク−リード・オンリィ・メモリ)やフロッピィディスク、光磁気ディスク等の可搬型の記録媒体に記録されたデータをハードディスク等の記憶装置に転送できるように構成すれば、関係情報や動作プログラム等の追加(インストールなど)や更新(バージョンアップなど)の際に便利である。もちろん、可搬型の記録媒体から直接RAMへデータを転送するようにしてもよい。
【0039】
さらに、可搬型の記録媒体経由ではなく、通信インタフェース経由で、ハードディスク等の記憶装置上の関係情報や動作プログラム等を通信ネットワーク側からダウンロードするようにしてもよい。以下、ネットワーク側から関係情報や動作プログラム等をダウンロードする例を挙げる。
【0040】
上記通信インタフェースはLAN(ローカルエリアネットワーク)やインターネット、電話回線等の通信ネットワークに接続されており、当該通信ネットワークを介してサーバコンピュータと接続される。クライアントとなる離鍵速度推定装置は、自装置が有する記憶装置(ハードディスク等)に関係情報や動作プログラム等が記憶されていない場合、上記通信インタフェース及び通信ネットワークを介してサーバコンピュータへ、関係情報や動作プログラム等を要求するコマンドを送信する。このコマンドを受け取ると、サーバコンピュータは、要求された関係情報や動作プログラム等を、通信ネットワークを介して本装置へと配信する。そして、配信された関係情報や動作プログラム等を本装置が通信インタフェースを介して受信し、記憶装置に蓄積することにより、ダウンロードが完了する。
【0041】
また、本装置を、上記関係情報や動作プログラム等をインストールした市販のパーソナルコンピュータ等によって実現してもよい。もちろん、この場合にも、上記関係情報や動作プログラム等のデータの配布方法としては、ROM等の不揮発性メモリに予め格納しておく方法、可搬型の記録媒体に格納して配布する方法、および通信インタフェース経由で配布する方法等が考えられる。
【0042】
以上説明したように、本発明によれば、少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報と、打弦速度と離鍵速度との関係を表す関係情報とにより離鍵速度を推定できる。この推定した離鍵速度を使用すれば、元の演奏情報が離鍵速度を含んでいなくても、適切な離鍵速度での自動演奏が可能となる。すなわち、鍵盤楽器において、表現力に優れた自動演奏を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1実施形態による離鍵速度推定装置10を適用した自動演奏ピアノの要部の構成を示すブロック図である。
【図2】 同実施形態において、実測値によるonvelとoffvelとの関係を示すグラフ(GTが短い場合)である。
【図3】 同実施形態において、実測値によるonvelとoffvelとの関係を示すグラフ(GTがやや短い場合)である。
【図4】 同実施形態において、実測値によるonvelとoffvelとの関係を示すグラフ(GTが中程度の場合)である。
【図5】 同実施形態において、実測値によるonvelとoffvelとの関係を示すグラフ(GTがやや長い場合)である。
【図6】 同実施形態において、実測値によるonvelとoffvelとの関係を示すグラフ(GTが長い場合)である。
【図7】 同実施形態において、推定offvelと実offvelの実測値との関係を示すグラフである。
【図8】 (a)は本発明の第2実施形態による自動演奏ピアノの離鍵速度推定装置20の構成を示すブロック図であり、(b)は離鍵速度推定装置20によって作成・出力された修正演奏情報に従って自動演奏を行う自動演奏ピアノの要部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
10,20…離鍵速度推定装置、10a,22a…関係情報記憶手段、10b,20a…離鍵速度推定手段、10c…駆動指示信号作成手段、10d…合成手段、11,21…記憶手段、12,22…制御手段、12a…解釈実行手段、13…駆動手段、20b…情報加工手段、20c…情報補正手段

Claims (5)

  1. 演奏情報を解釈して鍵を駆動する鍵盤楽器であって、
    少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報を記憶した演奏情報記憶手段と、
    打弦速度と離鍵速度との相関関係を表す関係情報を記憶する関係情報記憶手段と、
    前記演奏情報記憶手段に記憶されている演奏情報に含まれる打弦速度を抽出し、抽出した打弦速度に関係する離鍵速度を、前記関係情報記憶手段に記憶されている前記関係情報を用いて求める離鍵速度取得手段と、
    前記演奏情報に含まれている打弦速度で鍵を駆動して打弦し、前記離鍵速度取得手段で求めた離鍵速度で鍵を離鍵させる鍵制御手段と
    を有する鍵盤楽器。
  2. 前記鍵制御手段は、前記演奏情報に応じた信号を生成し、当該信号を前記離鍵速度取得手段により求められた離鍵速度に基づいて加工して駆動指示信号を出力する出力手段を有し、
    前記出力手段から出力された駆動指示信号に基づいて鍵の打弦および離鍵を行うこと
    を特徴とする請求項1に記載の鍵盤楽器。
  3. 演奏情報を解釈して楽音信号を発生する電子楽器であって、
    少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報を記憶した演奏情報記憶手段と、
    打弦速度と離鍵速度との相関関係を表す関係情報を記憶する関係情報記憶手段と、
    前記演奏情報記憶手段に記憶されている演奏情報に含まれる打弦速度を抽出し、抽出した打弦速度に関係する離鍵速度を、前記関係情報記憶手段に記憶されている前記関係情報を用いて求める離鍵速度取得手段と、
    前記離鍵速度取得手段で求めた離鍵速度に基づいて、前記楽音信号を変更制御する変更制御手段と
    を有する電子楽器。
  4. 演奏情報を解釈して鍵を駆動する鍵盤楽器の駆動方法であって、
    記憶部に記憶されている演奏情報であって、少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報から打弦速度を抽出し、抽出した打弦速度に関係する離鍵速度を、記憶部に記憶されている情報であって、打弦速度と離鍵速度との相関関係を表す関係情報を用いて求める離鍵速度取得ステップと、
    前記演奏情報に含まれている打弦速度で鍵を駆動して打弦し、前記離鍵速度取得ステップで求めた離鍵速度で鍵を離鍵させる鍵制御ステップと
    を有する鍵盤楽器の駆動方法。
  5. コンピュータ装置を、
    少なくとも押鍵か離鍵かを示すイベント情報と打弦速度を包含する演奏情報を記憶した演奏情報記憶手段と、
    打弦速度と離鍵速度との相関関係を表す関係情報を記憶する関係情報記憶手段と、
    前記演奏情報記憶手段に記憶されている演奏情報に含まれる打弦速度を抽出し、抽出した打弦速度に関係する離鍵速度を、前記関係情報記憶手段に記憶されている前記関係情報を用いて求める離鍵速度取得手段と、
    前記演奏情報に含まれている打弦速度で鍵を駆動して打弦し、前記離鍵速度取得手段で求めた離鍵速度で鍵を離鍵させる鍵制御手段
    として機能させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体
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