JP4190174B2 - 高虹彩色酸化チタンとその製法 - Google Patents
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【産業上の利用分野】
この発明は、高虹彩色酸化チタン及びその製法、並びにそれを用いた各種の組成物に関するものであり、具体的には、薄片状の基質表面にチタン組成物を被覆し、更に、この被覆物を剥離した新規なチタン及びその製法に関する。より、詳細には、塗料、化粧料、インキ、プラスチック、触媒等の光機能性材料として有益な薄片状の高虹彩色酸化チタンに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
天然雲母に酸化鉄、酸化チタン等の金属酸化物を被覆して、パール感を出すパール光沢顔料は、従来から公知である。この種の従来のパール光沢顔料は、光輝感が不十分で、色が鮮やかでなく、余色が濁る欠点があった。また合成マイカは、極めて透明度の高い製品が得られ、その点ではパール光沢顔料の優れた基質ということができる。しかしながら、合成マイカは結晶が硬く、へき開しにくいため、通常の方法では表面の平滑性は天然マイカよりは劣るが、透明性と白色度が高いことから、酸化チタン等の薄膜を被覆するパール光沢顔料の基質として使用されるようになった。また、干渉色光輝性を上げるために板状酸化アルミニウムや板状酸化ケイ素を基質として酸化チタン等薄膜を被覆するパール光沢顔料として使用されていた。
【0003】
また、酸化チタンはその白色性、紫外線遮蔽能という特徴を生かして塗料、化粧品さらには樹脂または紙への添加材として広く用いられているが、これらは従来の方法で製造された等粒状の微粒子を利用しているため、塗布性、密着性、分散性等に問題があった。板状の酸化チタンの製法には特許第2979132号等が開示されているが、これは光沢や干渉色のない酸化チタンであった。
【0004】
ところで、元来、色彩は人間にとって生理的、心理的な影響を与える非常に重要な要素である。現に、色彩が人間に及ぼし得る生理的、心理的な効果を活用して安全で能率的な作業環境や健康で快適な生活環境を創世する手法であり、色彩学調整技術が様々な分野において活用されている。
【0005】
通常、物質に色彩を付与させる場合には、各種の着色顔料が用いられる。この着色顔料は、光の吸収や散乱などの現象を利用して好みの色彩を施すが、着色顔料のみでは、近年の色彩に対する多様な感性と意匠の要望には対応することができない。そこで、この着色顔料に加えて光の干渉現象を利用した顔料である二酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢顔料が提供されている。この真珠顔料の大きな特徴は、角度によって微妙に色調が変化する「フリップ・フロップ効果」を付与し得ることである。
【0006】
この真珠光沢顔料は、化粧料、塗料、粘着剤、印刷インキ、樹脂練り込み等の各種の分野において用いられているが、以下のような欠点が指摘される。例えば、真珠光沢顔料は、天然雲母や合成雲母、アルミナ、シリカ、珪酸ガラス、ホウ酸ガラスなどの薄片状乃至板状の粒子を核とし、これに二酸化チタンを被覆し、その二酸化チタンの被覆量をコントロールすることによって様々な干渉色を持った真珠光沢を呈している。このために、このような真珠光沢顔料を化粧料や、塗料、印刷インキ、粘着剤、樹脂練り込み等に外用組成物の顔料として用いると、粒子の厚さが厚いために超薄膜としての膜厚制御ができないことや、粒子エッジの光散乱が強くなるために「フリップ・フロップ効果」による意匠効果に欠ける等の欠点がある。
【0007】
一方、酸化チタンの板状粒子の合成については、例えば、特許第2979132号に記載されている薄片状酸化チタンは、大きな比面積を有する多孔質体でチタン酸セシウムを酸水溶液と接触させて層状結晶を剥離・加熱することにより得られる薄片状酸化チタンであり、チタン酸からなる層状結晶を層1枚にまで剥離した結果、その厚みがナノメータレベルの非常に薄い酸化チタンを得ている。しかし、これは、余りにも薄いために、干渉色のない薄片状酸化チタンである。
【0008】
また、特開昭62−237936、特開昭62−247834、特開昭62−213833に記載されている板状酸化チタンは、チタンアルコラートのゾルゲルをドラムに付着して加熱させて酸化物とし、これをスクレーパでドラムから剥離して加熱焼成させて若干パール状の板状酸化チタンを得ているが、これは、スクレーパで剥離させるために粒子がカール状であることと粒子の厚さがミクロンオーダであるために、全く干渉色を発色させることができない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、このような従来の問題点を解決しようとするものであり、干渉色による色彩が認められ得る新規で卓越した光輝感、色の鮮明度を発現し、しかも余色が濁らない高虹彩色酸化チタンを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記問題点を解決するため鋭意研究の結果、高虹彩色酸化チタンを製造するに際し、薄片状の基質表面にチタン組成物の被覆層を形成し、その被覆層を剥離することによってこの課題を解消する新規な高虹彩色酸化チタンを得た。
【0011】
より具体的には、薄片状基質表面には、アナターゼ型もしくはルチル型酸化チタンをベースとする金属酸化物及び又は金属水酸化物が被覆されて被覆層が形成され、この被覆層へアルカリ化合物を添加することで、薄片状基質表面から剥離した剥離物を得ることができる。この剥離物は、同時に所望の光沢で且つ干渉色を発色する組成物として提供される。
【0012】
即ち、本発明に係わる第1の被覆物は、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、シリカフレーク、アルミナフレーク、硫酸バリウムから選ばれる一種又は二種以上の薄片状基質と、その表面に被覆した酸化チタン及び/又は水酸化チタンから成る被覆層から構成される。そして、本発明に係わる高虹彩色酸化チタンは、この被覆物を剥離した剥離物である。
【0013】
上記剥離物は、光沢において、アクリル系クリヤーラッカー30部に1部を混合し、白黒の隠蔽率試験紙、JISK5400に4ミルのアプリケーターで塗布し、隠蔽率試験紙の黒地において、堀場製グロスチェッカIG−330型で光沢を求めた値が60°で55〜90であり、発色は、光干渉により発色する高虹彩色酸化チタンである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について説明する。図1は、本発明の高虹彩色酸化チタンに係わる被覆物の概念図であり、図2は、本発明の高虹彩色酸化チタンの製法を示す概要図であり、図3は、本発明の被覆物のX線回折による分析結果のグラフであり、図4は、本発明の被覆物における酸化チタンの表面状態を示す顕微鏡写真であり、図5は、本発明の剥離物である酸化チタン組成物の干渉色とチタン層の膜厚の関係を示す表であり、図6は、剥離物である酸化チタンの顕微鏡写真であり、図7は、剥離物である酸化チタンの顕微鏡写真であり、図8は、本発明の剥離物である酸化チタンの三次元光沢計による分析結果を示すグラフである。
【0015】
本発明に係わる高虹彩色酸化チタンの被覆物及び高虹彩色酸化チタンとその製法は、薄片状の基質表面に酸化チタンまたは水酸化チタンのチタン組成物から成る被覆層を形成した被覆物と、この被覆物に対して、被覆層のみを剥離することによって得られた剥離物と、その製法を開示したものであり、従来と異なる点は、所定の条件下で、剥離物を得ることで、これを塗料等の幅広い用途に使用する際には、塗布面上に形成したこの剥離物を含む層において、光干渉による従来にない高虹彩色の発色を得ることができる。
【0016】
本発明に係わる高虹彩色酸化チタンの被覆物は、図1に図示の如く、薄片状基質1の表面にアナターゼ型もしくはルチル型酸化チタンをベースとする金属酸化物及び又は金属水酸化物を含む被覆層2を、光沢が得られる0.05〜0.6μmの特定の厚さまで被覆したものである。
【0017】
薄片状基質1は、平滑性に富み、その粒子の板形の大きさは、レーザー径で50〜800μmの範囲が好ましい。50μm以下では剥離した酸化チタン、水酸化チタンの粒子径が細かすぎて、干渉光沢が十分に発揮できても酸化チタンが剥離しにくい。また、粒子の板形の大きさが、800μm以上になると、酸化チタン、水酸化チタンの干渉光沢は十分に発揮できるが、剥離した粒子の機械的強度に弱いため利用する用途が限定される。
【0018】
最も好適には、100〜700μmの範囲である。100μm以下の基質を用いると、後述する剥離物の粒子が細かすぎて高虹彩色の干渉色の発色が弱くなる。また、基質の粒子径が700μmより大きくなると、剥離物の粒子による高虹彩色の干渉色の発色は強くなるが、粒子にザラツキ感が出て好ましくない。更に100〜300μmとすると、光沢が強く剥離が容易である。
【0019】
具体的に、この粒子径の範囲に入りやすい薄片状基質1としては、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、シリカフレーク、アルミナフレーク、硫酸バリウム等が挙げられる。シリカフレークは、その形状、及び表面の平滑性の度合いを制御することが比較的容易であり、更に、その表面に均一な被覆層2を、光沢が得られる特定の厚さまで被覆させることも比較的容易である等の点において薄片状基質1として選択するには好ましい素材である。
【0020】
薄片状基質1の粒子の厚さは特に規定されないが、0.1μm〜10μmの範囲が好ましい。粒子の厚さが0.1μm以下の場合、基質の周辺が丸くカールし、被覆した酸化チタン、水酸化チタンの干渉光沢が十分に発揮できない。また、粒子の厚さが10μm以上になると、粒子の平面と厚さ方向に被覆した酸化チタン、水酸化チタンが平面と厚さとで剥離した酸化チタン、水酸化チタンの干渉色が異なるために、全体としての干渉光沢が不充分になる。
【0021】
被覆層2は、酸化チタン及び/又は水酸化チタン組成物を含む層であり、光沢が得られる特定の厚さまで被覆させる。これには、硫酸チタニルや四塩化チタンの可溶性水溶液またはチタンアルコラートの加水分解から得ることが好ましい。また、被覆層2は、シリカ及びまたはアルミナ・Zr・Ce・Zn等の補強剤を含むことにより、耐光性・剥離物の粉砕強度を向上させることができる。
【0022】
各粒子は、大きさ0.01〜0.05μm、好ましくは0.02〜0.04μmの集合体であるが、基質1の粒子の大きさ300μmの時に0.02μの酸化チタンまたは水酸化チタン組成物が最も剥離し易い。基質1の粒子の大きさが、800μmでは、被覆層2の粒子径は0.01μmと細かい粒子径でも剥離できるが、基質1の粒子径が100μm以下の大きさになると、被覆層2の粒子径も0.05μmの大きさにしないと剥離することができない。即ち、基質1の粒子径と被覆層2の粒子径とは逆比例の関係にある。
【0023】
本発明は、先ず、上記の図1に示す被覆物を形成し、次に、図2に示す如く、この被覆物から被覆層2を剥離し、これによって剥離物2aを最終的に得る。即ち、本発明に係わる高虹彩色酸化チタンは、この被覆物の被覆層2である金属酸化物または金属水酸化物を薄片状基質1の表面から剥離して形成された剥離物2aである。
【0024】
薄片状基質1は、市販の薄片状粉体の使用も可能であるが、天然マイカ、合成マイカ、硫酸バリウム、シリカフレーク、アルミナフレーク等が使用される。例えば、インドのチップ状天然マイカを大気中800℃の温度で2時間焼成し、この焼成チップ状天然マイカを上水に5日間浸す。このチップ状天然マイカをマスコロイダーで解砕し、分級してこれを得ることができる。
【0025】
また、剥離前に予め水ガラスや有機シリカ、可溶性アルミニウム塩等を用いて、シリカやアルミナ化合物で表面を更に被覆した後、被覆物を剥離することによって、耐候性が良く、しかもカールしない剥離物を得ることができる。
【0026】
被覆物は、上記の如く、先ず、薄片状基質1の表面に酸化チタンまたは水酸化チタン組成物を光沢が得られる特定の厚さまで被覆させて被覆層2を形成する。これには、硫酸チタニルや四塩化チタンの可溶性水溶液またはチタンアルコラートの加水分解から得ることが好ましい。
【0027】
剥離物を得るに際しては、予めこの被覆物を300〜800℃で焼成し、アルカリ中(pH8以上)にて薄板状基質から被覆層を剥離することにより、カールが無く平滑性に優れた剥離物を得ることができる。
【0028】
これにより、剥離物の光沢と干渉色が向上する。焼成温度が300℃より低い場合は、何れも、剥離物の粒子がカールし、800℃より高い場合は、剥離物の酸化チタンまたは水酸化チタンが凝集し、剥離後の光沢と干渉色が悪くなる。
【0029】
剥離物は、ろ過・水洗・乾燥後、500〜900℃にて焼成し、光沢保持、カールの防止を行う。また、その他、剥離後の後処理としては、酸化鉄・コバルト・ニッケル・リチウム・ナトリウム・カリウム、着色無機化合物でコートしたり、有機顔料をコートして有機顔料着色物とすることについては、各種の用途、実施態様により公知の方法により実現可能である。
【0030】
このようにして得られた剥離物である本発明の高虹彩色チタンは、0.05〜0.6μm粒子の厚みが選択されている。これは、虹彩色を呈する幾何学的膜厚と光学的膜厚(膜厚×屈折率)の関係で説明すると、概ね、幾何学的厚さが0.05〜0.5μmで、光学的厚さが0.1〜0.9μmの範囲で厚さを選択することが好ましいことを示している。
【0031】
剥離物が薄すぎると、所望する干渉色を生ずることが困難になり、好ましくない。逆に、剥離物が厚すぎると、干渉色強度が厚みの散乱により干渉の強度が低下するため、好ましくない。
【0032】
表1は、本発明に係わる高虹彩色チタンをテープ上に塗布し、この塗布テープを黒地上に置いた場合の干渉色と、チタンの幾何学的厚さとの関係を示している。
【0033】
本発明の高虹彩色チタンの粒径は、揃っているほど虹彩色の彩度は高くなる。即ち、薄板状の高虹彩色チタンの粒子の各々において、散乱光により所望する干渉色を得ることを可能にしたものである。
【0034】
尚、本発明において、具体的に高虹彩色チタンの粒径と薄板の形が揃っているとは、レーザー回折散乱径の平均粒径Aμmとすると、A±4μmの範囲に体積分布で60%以上、好ましくは、70%以上の頻度で分布すること、また、薄板の形は走査型電子顕微鏡で粒子を観察し、倍率2,000倍で粒子数を数えた時、薄板形が粒子に接線を引き、厚さの1.5倍以上離れた粒子の数が10%未満であることが望ましい。
【0035】
この粒径(形)の均一性を保つために、薄片状基質の平滑性を調整する際に、粉砕、分級を入念に行うことが望ましい。天然雲母を選択する場合には、2〜8メッシュの原鉱石を湿式で攪拌粉砕し、水簸分級することによって、均一性に優れるものを選択することが望ましい。
【0036】
更に、平滑で粒子径の揃った薄片状基質表面に、チタン組成物を均一に被覆して剥離することが、干渉色をより均質に得るということで好ましい。
【0037】
上記の如く得られた剥離物である、本発明の高虹彩色酸化チタンは、被覆物において光沢が得られる程度の特定の厚さとしたことから、これを塗料等の用途に使用するに際しては、直接的な表面反射光と入射して透過する際の反射された反射光とが干渉し合い、互いの位相のズレによる高虹彩色干渉色を得ることができる。
【0038】
本発明の高虹彩色酸化チタンを塗布面において均一に塗布した層を形成した場合、これに光が当たると、塗布面の粒子表面からの反射光と、屈折率の異なる媒体で反射されたチタンの粒子の透過光が互いに干渉を起こし、特定の干渉色の発色が得られる。この干渉色は、被覆物における被覆層の厚さを制御することにより決定される。
【0039】
(比較例1)図8は、本発明の剥離物である酸化チタンの三次元光沢計による分析結果を示すグラフである。
【0040】
本発明の剥離物を、アクリル系クリヤーラッカー30部に1部を混合し、白黒の隠蔽率試験紙、JISK5400に4ミルのアプリケーターで塗布し、隠蔽率試験紙の黒地において、三次元光沢計GCMS−4型で入射角45°、反射角(測色角)0〜75°の間を5°間隔で側色し、Labを求めた。
【0041】
比較顔料として、メルク社製イリオジン(以下、IRと略す)225、219、235を使用した。分析の結果から、本発明の酸化チタンが広い範囲で干渉色を示すことが判明した。
【0042】
以下具体的な製造例について記載する。尚、これらの製造例により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0043】
(製造例1)インド産のチップ状天然マイカ1.0キログラムを大気中800℃の温度で2時間燃成し、放冷後このチップ状焼成天然マイカを上水10リットルに浸漬させ、室温にて5日間放置した。このチップ状焼成天然マイカを間隔500μmの増幸産業社製マスコロイダーで2回通過、解砕し、解砕した焼成天然マイカを50リットル入れポリタンクに移し、これに0.02パーセントのヘキサメタ燐酸水溶液を加えて、全量を45リットルとした。
【0044】
プロペラ撹拌機で撹拌し、静置後5分で、上澄液を別の容器に移し、この操作を3回繰返し、0.1mm以上の大粒子を分級し、上澄液を標準篩10メッシュ(800μm)と65メッシュ(203μm)を用いて篩分級し、10〜65メッシュの粒子径が150g得た。
【0045】
次に、分級したマイカ150gに硫酸チタニル400gと上水7.5リットルを加えて、プロペラ撹拌しながら硫酸チタニルを溶解した。硫酸チタニルの溶解後、撹拌しながら加熱し、90℃以上の温度で4時間加水分解処理した。放冷後、水洗、ろ過し、150℃で乾燥した。更に、300℃で2時間焼成した。表面状態を観察するために1部を取り、日立S−2100B型電子顕微鏡(SEM)20,000倍で観察した。その結果は図4に示したように被覆物の粒子径が0.02μmの集合体であった。
【0046】
また、水洗粉末に10パーセントの荷性ソーダー水溶液を加えてpH11に調整し浸漬静置した。上澄に浮離した粉末をデカンテーション法で分級し、分級粉末をろ過、水洗した。水洗分級粉末に硫酸アルミニウム8.325グラムを5リットルに溶解した水溶液を加え、更にオキシ塩化ジルコニウム4グラムと尿素18グラム加えた。プロペラ撹拌しながら加熱し、80℃以上で5時間加水分解処理を行った。放冷後、水洗、ろ過し150℃で乾燥した。この乾燥粉末を大気中700℃2時間焼成した。得られた粉末は140グラムであった。
【0047】
この粉末を理学電機社製X線回折装置ミニフレックスで測定した。X線回折パターンは図3の(C)に示したようにブロードではあるが酸化チタンのアナターゼであった。また、走査型電子顕微鏡(SEM)2,000倍と20,000倍の結果図6に示したように薄片状の形で、板径の平均が10μm板の厚さが0.24μmであった。アクリル系のクリヤーラッカー30部に本品1グラムを混合し、白黒の隠厳率試験紙JISK5400に4ミルのアプリケーターで塗布し、黒地において、掘場製グロスチェッカIG−330型で光沢を求めた値が60°で85であった。
【0048】
また、黒地の色調角度依存性を調べるために村上色彩研究所製の3次元光沢度計GCMS−4型で入射度45°、測色取出し角0°〜75°において5°間隔で側色し、L・a・b変換して、色相であるabプロットした。結果を図8に示したように、緑色から青緑色、青色へと幅広い範囲で変化した。
【0049】
本品の組成を調べるために、0.2グラムを正確に秤量し、硫酸および硫酸アンモニウムを加え、加熱して溶解した。冷却後、水および塩酸を加えて、金属アルミニウムを加えて、チタンを還元し、冷却後チオシアン酸カリウム溶液を指示薬として、硫酸アンモニウム鉄(III)溶液で滴定して、酸化チタン量(パーセント)を求めた。この結果酸化チタンは95.0パーセントであった。また、アルミニウムとジルコニウムを定量するために、理学電機社製波長分散型蛍光X線分析装置ZSX100e型で、アルミニウムは394.40nmとジルコニウムは343.82nmのピーク高さを用いて、検量線法により定量した。その結果アルミニウムは酸化アルミニウムとして1.15パーセント、また、ジルコニウムは酸化ジルコニウムとして1.08パーセントであった。すなわち、本品の組成は酸化チタン95.0パーセント、酸化アルミニウム1.15パーセント、酸化ジルコニウム1.08パーセントの組成物であった。
【0050】
(製造例2)合成マイカ(トピー工業製)のレーザー径150〜650μm平均径300μm、10キログラムを600リットルのジャケット付グラスライニングタンクに入れ、上水400リットルと塩化第二スズ175グラム及び1モル/リットル硫酸水溶液を加えて、PHを1.9に調製した。撹拌しながら加熱し、温度80℃に達してから3分の1モル/リットルの四塩化チタン塩酸水溶液と15パーセント荷性ソーダー水溶液を用いてPHを保持しながら四塩化チタン塩酸水溶液毎分0.12キログラムの流速で滴下し、10時間反応させた。
【0051】
放冷後、撹拌を止めて、上澄をデカンテーションした。残りの粉末に上水400リットルを加えて撹拌し、これに15パーセント荷性ソーダー水溶液を加えてPH6.5〜7.5に調製後ろ過、水洗し、150℃で乾燥した。乾燥粉末を大気中800℃で2時間焼成した。製造例1と同様に表面状態をSEMで観察した被覆粒子の大きさは0.016μmの集合体であった。
【0052】
焼成粉末を炭酸ナトリウム水溶液PH12の液400リットルに浸漬した。5日間浸漬後プロペラ撹拌で十分に分散させ、ヘキサメラ燐酸ソーダーの2パーセント水溶液2リットルを加え撹拌した。十分に分散後、上澄中の微粉末をデカンテーション法で分離した。この操作を繰り返し,上澄中の粉末を回収した。
【0053】
上澄液中の粉末は水洗、ろ過した。ろ過した粉末を荷性ソーダー水溶液PH9.2の液400リットルに浸潰させプロペラ撹拌で分散させた。PH9.2を保持しながら80℃に加熱し3モル/リットルの水ガラスの水溶液と6Nの塩酸水溶液を、水ガラスの水溶液の流速を毎分0.085リットルとし、2時間水ガラスの水溶液を加えた。更に2時間熟成させた後、放冷した。ろ過、水洗後、150℃乾燥し、粉末18キログラム得た。
【0054】
製造例1と同様な装置でX線回折を測定した。X線回折の結果ルチル型酸化チタンであった。SEM観察は図7に示したように薄片状の形で板径の平均が15μmで板の厚さが0.45μmであった。
【0055】
製造例1と同様に白黒隠蔽率試験紙JISK5400及び三次元光沢度計での測色、更には組成分析を行った。これらの結果グロスチェック値が60°において80で、測色の色調角度依存性も黄緑色から緑色、青緑色と幅広い範囲で変化した。また、組成分析の結果、酸化チタンが88.5パーセント、シリカが10.3パーセントであった。
【0056】
(製造例3)レーザー径が50〜200μm、平均140μmのガラスフレーク(日本板硝子社製RCF140)1キログラムを40リットルの琺瑯引き容器に入れ、10パーセント硫酸チタニル水溶液17リットルと、0.06モル/リットルの硫酸水溶液5リットル、これに尿素100グラム、更に上水10リットルを加えて、プロペラ撹拌しながら、加熱し90℃以上の温度で6時間加水分解処理した。
【0057】
放冷後、デカンテーションを繰り返し水洗した。10パーセント荷性ソーダーと上水30リットルを加えて、液のPHを8.8とし加熱して80℃とした。PHと温度を保持しながら1モル/リットルの水ガラス水溶液0.85リットルと1N塩酸水溶液を、水ガラス水溶液が毎分0.014リットルの流速で1時間加えた。更に3時間熟成した。
【0058】
放冷後、製造例1と同様に表面状態をSEMで観察した処、被覆粒子の大きさは0.04μmとかなり大きい粒子であった。
【0059】
熟成した分散液に1モル/リットル炭酸ソーダー水溶液を加えてPH12とし4日間放置した。放置後プロペラ撹拌し静置後上澄液中の粉末をデカンテーション法で分離した。この操作を繰り返して上澄液中の粉末を回収した。回収した粉末を水洗、ろ過し150℃にて乾燥した。乾燥後更に大気中300℃で1時間焼成し、粉末650グラム得た。
【0060】
得られた粉末はX線回折の結果、かなりブロードのアナターゼ型であった。
SEM観察の結果、薄板状の形をなし板径が平均8μmで厚さが0.05μmであった。
【0061】
製造例1と同様に物性試験を行った。その結果グロスチェッカ値が60°において60で測色の色調角度依存性も赤紫色から赤色・黄色と幅広い範囲で変化した。また、組成分析の結果、酸化チタンが70パーセント、シリカが2.8パーセント、他は水分であった。
【0062】
本発明は、上記の如く製造された剥離物を前述の用途として使用するものであり、以下、その代表的な用途例を記載する。尚、これらの用途により本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0063】
(用途例1)化粧料粉末ファンデーション下記1〜6をヘンシェルミキサーで混合し、これに7〜11を加熱溶解混合したものを添加混合後、粉砕し、これを中皿に成型し、所望する粉末ファンデーションを得た。
配合成分配合量(重量部)
1.本発明の製造例3の剥離物粉末20.02.タルク21.03.白雲母44.24.赤酸化鉄0.75.黄酸化鉄1.06.黒酸化鉄0.17.ジメチルポリシロキサン1.08. 2−エチルヘキサン酸セチル9.09.ソルビタンセスキオレート1.010.パラベン適量11.香料適量この用途例のパウダファンデーションは、伸びが軽く、顔料色と本発明複合粉末から生じる干渉色との作用により、肌色を美しく改善する効果が認められた。
【0064】
(用途例2)印刷用インキ組成物下記成分を混合し、サンドミルで混練して印刷用インキ組成物を得た。
配合成分配合量(重量部)
1.本発明の製造例2の剥離物粉末15.02.アクリル樹脂20.03.ナフサ35.04.ブチルセロソルブ30.0この用途例の印刷用インキ組成物を用いて、塗膜厚(乾燥後)50μmで黒紙上に印刷を行ったところ、塗装体は黄緑から緑・青緑色と角度によって色が変化する鮮やかな干渉色を有していた。
【0065】
(用途例3)塗料組成物熱可塑性アクリル樹脂と本発明の剥離物粉末を混合した後、トルエンで希釈し、下記の塗料組成物を得た。
配合成分配合量(重量部)
1.熱可塑性アクリル樹脂90.0 2.本発明の製造例1の剥離物粉末10.0 3.トルエン10.0この用途例3の塗料組成物を0.8mm軟鋼板に膜厚が30〜35μmになるようにバーコーターで塗装し、常温で10分放置後、80℃、20分焼き付け処理した。得られた塗膜は緑から青緑。青色と角度によって色が変わる鮮やかな干渉色を有していた。
【0066】
また、この剥離物を、松下電工株式会社製シリコーンコーティング材「フレッセラNA」に添加してコーティング組成物を調製した。ここで、全固形分に対する割合が80重量%になるように添加した。このように調製したコーティング組成物を塗膜厚みが10μmとなるようにガラス板の表面にスプレーコートして塗装品を得た。
【0067】
この塗装品について、光触媒性能評価を次のようにして行った。まず25cm2の塗装品を300ccの透明容器に入れ、容器内の濃度が約50ppmになるようにアセトアルデヒドを注入し、これにブラックライトを照射してアセトアルデヒド濃度の半減期で光触媒性能を評価した処、半減期42分であり、光触媒活性を高く得ることができた。
【0068】
【発明の効果】
本発明は、上記の通り、干渉色による色彩が認められ得る新規で卓越した光輝感、色の鮮明度を発現し、しかも余色が濁らない高虹彩色酸化チタンを提供することを可能とした。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の高虹彩色酸化チタンに係わる被覆物の概念図である。
【図2】本発明の高虹彩色酸化チタンの製法を示す概要図である。
【図3】本発明の被覆物のX線回折による分析結果のグラフである。
【図4】本発明の被覆物における酸化チタンの表面状態を示す顕微鏡写真である。
【図5】本発明の剥離物である酸化チタンの干渉色とチタン層の膜厚の関係を示す表である。
【図6】剥離物である酸化チタンの顕微鏡写真である。
【図7】剥離物である酸化チタンの顕微鏡写真である。
【図8】本発明の剥離物である酸化チタンの三次元光沢計による分析結果を示すグラフである。
【符号の説明】
1 薄片状基質
2 被覆層
2a 剥離物
Claims (12)
- 板形の大きさが50〜800μmの薄片状基質の表面上に、70重量%〜95重量%の酸化チタンまたは水酸化チタンを含有し、且つ被覆層の厚さが0.05〜0.6μmである被覆物に対して、該被覆層を剥離した後の剥離物であることを特徴とする高虹彩色酸化チタン。
- 前記薄片状基質が、天然マイカ、合成マイカ、ガラスフレーク、シリカフレーク、アルミナフレーク、硫酸バリウムから選択されることを特徴とする請求項1記載の高虹彩色酸化チタン。
- 前記被覆層が、二酸化チタン、水酸化チタンから選択されたチタン組成物であり、粒子の粒径が均一であることを特徴とする請求項1記載の高虹彩色酸化チタン。
- 前記被覆層が、5〜20重量%の補強剤を含むことを特徴とする請求項1記載の高虹彩色酸化チタン。
- 前記補強剤がシリカ、アルミナ、ジルコニウムから選択される請求項4記載の高虹彩色酸化チタン。
- 大きさ50〜800μmの薄片状基質の表面上に、厚さ0.05〜0.6μmで且つ70〜95重量%の酸化チタンまたは水酸化チタンを含む被覆層を形成し、該被覆層を剥離したことを特徴とする高虹彩色酸化チタンの製法。
- 前記被覆層は、5〜20重量%の補強剤を含むことを特徴とする請求項6記載の高虹彩色酸化チタンの製法。
- 前記補強剤がシリカ、アミナ、ジルコニウムから選択される請求項6記載の高虹彩色酸化チタンの製法。
- 可溶性チタン塩水溶液又はチタンアルコラートの加水分解により剥離されることを特徴とする請求項6記載の高虹彩色酸化チタンの製法。
- ろ過・水洗・乾燥後300〜800℃で焼成されて剥離されることを特徴とする請求項6記載の高虹彩色酸化チタンの製法。
- アルカリ水溶液中で剥離されることを特徴とする請求項6記載の高虹彩色酸化チタンの製法。
- 可溶性炭酸塩、水酸化物、アンモニウム塩のアルカリ水溶液のpHが8以上の水溶液中で剥離されることを特徴とする請求項6記載の高虹彩色酸化チタンの製法。
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