JP5116199B2 - 板状化合物粉体及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は板状化合物粉体及びその製造方法、特に板状粒子の平滑性、低光沢性及び粉体の安全性の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
板状化合物粉体は、粉体の滑りのよさ等に優れ、化粧品等に用いられている。
従来、板状化合物粉体は、結晶成長法で製造、または板状化合物結晶塊を通常の破砕機で細片化し、ハンマーミル、ロールミル及びボールミル等を用いて更に微粉化、分級して製造していた。
【0003】
また、結晶物質として合成フッ素雲母を用いてこのような従来の製造方法で得られた板状合成フッ素雲母粉体は、溶出しやすいフッ素を含有しており、粉体が水と接触するとフッ素が溶出するので、化粧品等のように人体に近いところで使用される場合には安全性の面から好ましいものではなかった。
【0004】
そこで、従来は板状合成フッ素雲母粉体の水中でのフッ素溶出量を抑えるために、従来の製造方法で得られた板状合成フッ素雲母粉体を焼成することで過剰なフッ素を飛ばしてフッ素の溶出量を抑えていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このような従来の製造方法で得られる板状化合物の形状は、図2に示すように端面側に向かい段差を有し、端面側には不揃いな凸凹が生じている。そして、このように段差や凹凸があると、層面の平滑性が損なわれてしまい、粉体の滑りのよさ等の特性に影響してしまうという問題があった。
また、現状の製造法では平滑性のある粒子含有量を増やし、滑り性を改良すると、光沢値も同時に高くなるため、低光沢で滑りの良い粉体を得ることは困難である。
【0006】
また、従来の製造方法で得られた板状合成フッ素雲母粉体を焼成処理した後も、過酷溶出試験法によるフッ素溶出量として、13〜20ppmのフッ素が粉体から溶出する。そこで、化粧品等の人体に近いところで使用されることを考慮すれば、フッ素の溶出量が極力少ない板状合成フッ素雲母が求められていた。
本発明は前記従来技術の問題に鑑みなされたものであり、その目的は板状粒子の平滑性が高く、低光沢で、且つ粉体の安全性が高い板状結晶化合物粉体及びその製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために本発明者らは鋭意検討した結果、高圧系ホモジナイザーを用いて差圧100kg/cm2以上で粉砕することで、平滑性が高く低光沢な板状合成フッ素雲母粉体が得られることを見出した。さらに500〜1200℃で熱処理を行うことでフッ素溶出量が10ppm未満の板状合成フッ素雲母粉体が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる板状合成フッ素雲母粉体は、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0である板状合成フッ素雲母を60%以上含むことを特徴とする。
【0008】
さらに前記粉体において、以下に記載の光沢値測定方法による光沢値が3.5以下であることを特徴とする。
<光沢値の測定方法>
白のボール紙上に、5〜6cmの長さに切った両面テープを貼り付ける。両面テープの上に、5〜6cmに切ったセロテープを、粘着面を上にして両面テープとセロテープの間に空気が入らないように貼り付ける。
セロテープの上に余剰の粉体を乗せてから、化粧品用ハケで、同一方向に10回馴らす。セロテープ上及びハケに付いた余分な粉体を払い落としてから、さらに10回同じ方向にハケで馴らす。馴らした方向に入射→反射が起こるようにして、光沢計 日本電色工業(株)製「VG−2PD」で測定する。入射−反射角は、60度−60度とする。なお、光沢計のゼロ点及びスパンの調整は、一連の測定毎に一回、測定前に必ず行う。スパンの調整は、光沢値89の反射板を使用する。
【0009】
また、本発明にかかる板状合成フッ素雲母粉体は、過酷溶出試験法による水中でのフッ素溶出量が10ppm未満であることを特徴とする。
また、前記板状合成フッ素雲母粉体を化粧料に配合するすることが好適である。
【0010】
また、本発明の板状合成フッ素雲母粉体の製造方法は、高圧系ホモジナイザーを用いて原料の板状合成フッ素雲母粉体を、差圧100kg/cm2以上で粉砕する粉砕工程を含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の板状合成フッ素雲母粉体の製造方法は、高圧系ホモジナイザーを用いて原料の板状合成フッ素雲母粉体を、差圧100kg/cm2以上で粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程の後に500〜1200℃で熱処理する熱処理工程を含むことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の板状合成フッ素雲母は、アスペクト比10以上の形状の板状化合物である合成フッ素雲母を原料として製造される。
【0013】
前記板状化合物を高圧系ホモジナイザーを用いて差圧100kg/cm2以上、好ましくは300kg/cm2以上の圧力降下をかけることで粒子は加速され、そのときにかかるせん断力、加速した粒子を壁面もしくは液体同士でぶつけることによる衝撃力で原料の板状化合物を粉砕する。
そのとき原料の板状化合物は、急激な圧力降下、せん断力、衝撃力によって面方向での割れにより微粒子化する。それと共に、急激な圧力降下、せん断力によって粒子表面の凹凸を剥がすことで、図2に示すような通常の板状結晶に見られる層面の段差や端面の不揃いな凹凸は取り除かれ、図1に示すような略平板状になると考えられる。
【0014】
ここで板状化合物の粉砕に用いられる高圧系ホモジナイザーは、増圧ポンプと、チャンバーまたはユニットと呼ばれる微細なオリフィス管によって構成される。微細なオリフィス管の管径は、処理前後の物質の特性を考慮して適宜決定される。
高圧系ホモジナイザーは、キャビテーション、衝撃力、剪断力を粉砕の要素とするものであり、これらの相互作用により粉砕処理後の粒子が得られる。以下、これらの各要素について説明する。
【0015】
キャビテーション
キャビテーションは、流体の速い流れと共に高圧下となった状態からの開放により液体に圧力降下が起きて、発生する気泡である。液体は、圧力が下がれば気化しやすくなり、1atm、100℃で沸騰する水も0.03atmになると沸点は15℃になる。
急激な圧力降下を起こした液体は、蒸気となり水中で気泡を形成し、気泡は、圧力が元に戻れば、破壊する。このとき、数千度以上、1000気圧以上の衝撃力を発生する。
高圧系ホモジナイザーは、液体を微細なオリフィス管内に高速で、しかも高圧な状態で流す機構である。そのため、オリフィス管内(液体の高速流動)、オリフィス管出口(液体の圧力降下)でキャビテーションが起こり、液体中に混在する物質に大きな衝撃力を与えることができ、粉砕または剥離、混合、分散の力が働く。
【0016】
衝撃力
チャンバーまたはユニットと呼ばれる部分の微細なオリフィス管の形状は、処理する液により変更可能である。液体同士を衝突させる場合には、管を2方向に分岐させた後、1経路に収束させる。衝突する液体同士には衝撃が加わり、混在する物質に粉砕または剥離、混合、分散の力が働く。
また、オリフィス管経路に角度をつけることで液体を壁面に衝突させ、衝撃力を加える方法によっても上記のような効果を得ることができる。
【0017】
せん断力
微細なオリフィス管を液体が高速移動することで、液体中に混在する物質も高速移動する。
流れには部分的速度差が生じるため、混在物質に剪断力が加わる。また、混在物質同士の擦れ合いによってもずり応力と共に剪断力が働き、液体中に混在する物質を粉砕または剥離、混合、分散する。
【0018】
高圧系ホモジナイザーの上記した作用により得られた板状化合物粉体は低光沢でありながら、その平滑性から粉体の滑りが向上する。また、粒子表面の活性が低減していると予想され、凝集もおこりにくく、発生したとしても容易に凝集を解くことができる。
さらに、従来の製法に比較して、本発明の製法で得られた粉体は、粒度分布の分散が非常に小さいので、分級後に高い収率を示し、工業的に効果が大きい。
以上の特性からこの板状化合物粉体は化粧品の原料、樹脂への充填剤、パール光沢顔料等広い用途に好適である。
【0019】
また、原料の板状化合物として板状合成フッ素雲母を用い、高圧系ホモジナイザーを用いて差圧100kg/cm2以上、好ましくは500kg/cm2以上の圧力降下をかけることで、高圧系ホモジナイザーによる処理過程で合成フッ素雲母の表面近くにある溶出しやすいフッ素の相当量が水中に溶かし出される。これは、キャビテーションによる加熱効果と衝撃力、加速された粒子にかかるせん断力、加速した粒子を壁面もしくは液体同士でぶつけることによる衝撃力等によると考えられる。そして、処理後のスラリーを分級して乾燥し、500〜1200℃で熱処理することで、後述の過酷溶出試験法による水中でのフッ素溶出量を10ppm未満に抑えた板状合成フッ素雲母粉体が得られる。
【0020】
このような板状合成フッ素雲母粉体の製造方法によれば、従来の焼成工程でフッ素溶出量を大幅に抑えることが可能となり、工業的に効果が大きい。
また、このようにして得られた板状合成フッ素雲母粉体は、その低いフッ素溶出量から化粧品のファンデーション、口紅、クリーム等の用途に好適である。
【0021】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
初期平均粒子径48.47μmの合成フッ素金雲母の10%懸濁液をみずほ工業株式会社製マイクロフルイダイザーM−210EH型を用いて粉砕した。粉砕条件は差圧1500kg/cm2、流量分速1.0リットル、Zチャンバー(加速した粒子を壁面にぶつけて粉砕するチャンバー)で処理した。その結果、粒径14.87μm(σ2.36μm)に粉砕された。粉砕後、分級して得られた平均粒子径12μmの粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その写真を図3((A)面方向、(B)端面方向)に、また、端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。なお、端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量は、走査型電子顕微鏡により得られた粒子の写真をn数50で観察し、算出したものである。また、粉体の光沢値は以下の方法で測定した。
【0022】
<光沢値の測定方法>
白のボール紙上に、約5〜6cmの長さに切った両面テープを貼り付ける。両面テープの上に、約5〜6cmに切ったセロテープを、粘着面を上にして貼り付ける。この時両面テープとセロテープの間に空気が入らないように注意する。また、セロテープの粘着面を荒らさないように注意して行う。
セロテープの上に余剰の粉体を乗せてから、化粧品用ハケで、同一方向に10回馴らす。セロテープ上及びハケに付いた余分な粉体を払い落としてから、さらに10回同じ方向にハケで馴らす。馴らした方向に入射→反射が起こるようにして、光沢計(日本電色工業(株)製「VG−2PD」)で測定する。入射−反射角は、60度−60度とする。なお、光沢計のゼロ点及びスパンの調整は、一連の測定毎に一回、測定前に必ず行う。スパンの調整は、光沢値89の反射板を使用する。
【0023】
実施例2
実施例1と同様の合成フッ素金雲母20%懸濁液を実施例1と同じ条件で粉砕、分級を行った。その結果、粒径12.78μm(σ2.16μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径10μmの粒子を得た。実施例1と同様の方法で得た端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。
【0024】
実施例3
実施例1と同様の合成フッ素金雲母10%懸濁液を、差圧を2100kg/cm2に変え、それ以外は同じ条件で粉砕、分級を行った。その結果、粒径11.55μm(σ2.03μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径10μmの粒子を得た。実施例1と同様の方法で得た端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。
【0025】
実施例4
初期平均粒子径32.15μmの天然タルク10%懸濁液を実施例1と同じ条件で粉砕、分級を行った。その結果、粒径12.16μm(σ1.76μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径13μmの粒子を得た。実施例1と同様の方法で得た端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。
【0026】
実施例5
初期平均粒子径36.05μmの合成フッ素金雲母の10%懸濁液を株式会社ジーナス社製ジェットミルジーナスPYPRE03−15型を用いて粉砕した。粉砕条件は差圧2200kg/cm2、流量分速0.30リットル、ジーナスPYユニット(液相ジェット流を発生させ、ジェット流同士を衝突させて微粒化を行うユニット)で処理した。その結果、粒径14.87μm(σ1.80μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径13μmの粒子を得た。実施例1と同様の方法で得た端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。
【0027】
実施例6
実施例5と同様の合成フッ素金雲母20%懸濁液を粉砕条件のみ350kg/cm2とし、他条件は実施例5と同じにして粉砕、分級を行った。その結果、粒径27.18μm(σ1.55μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径25μmの粒子を得た。処理後の粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その代表的な写真を図4((A)面方向、(B)端面方向)に、また実施例1と同様の方法で得た端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。
【0028】
比較例1
実施例1と同様の合成フッ素金雲母10%懸濁液1リットルをボールミルを用いて6時間かけて粉砕した。その結果、粒径11.98μm(σ4.36μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径11μmの粒子を得た。処理後粒子を走査型電子顕微鏡で観察した。その写真を図5((A)面方向、(B)端面方向)に、また実施例1と同様の方法で得た端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。
【0029】
比較例2
実施例4と同様の天然タルク10%懸濁液1リットルをボールミルを用いて6時間かけて粉砕した。その結果、粒径10.12μm(σ3.92μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径11μmの粒子を得た。実施例1と同様の方法で得た端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。。
【0030】
比較例3
合成された板状アルミニウム粉体を比較例1と同じ条件で粉砕した。その結果、粒径23μm(σ3.36μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径25μmの粒子を得た。実施例1と同様の方法で得た端面の厚み/層面中央部の厚みの平均と、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0の粒子の含有量、及び粉体の光沢値を表1に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
表1に示した結果より明らかなように、実施例1〜6はその平滑性において比較例1〜2と比較して40〜50%高く、端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0である板状化合物を60%以上含む。また、同時にその光沢値が3.5以下と低光沢になっている。また、図3及び図4に示した実施例1と実施例6の走査型電子顕微鏡写真においても、図5に示した比較例1の走査型電子顕微鏡写真に見られるような端面の凹凸はほとんど見られない。
【0033】
さらに、分級前の実施例1〜6のσ(分散)の値を比較例1〜3のそれと比較すると、実施例1〜6のσの値は小さく、粒径のばらつきが少ないことがわかる。すなわち、本発明の製法により得られる板状結晶化合物粉体では、一定の粒度範囲における収率が向上していることがわかる。
【0034】
実施例7
実施例1と同様の合成フッ素金雲母を、実施例1と同じ条件で粉砕、分級した。得られた合成フッ素金雲母をフィルタープレスによって回収した後、乾燥機中に入れ300℃で乾燥させた。乾燥した合成フッ素金雲母を解砕し、1000℃で1時間熱処理を施して試料を得た。フッ素溶出量の評価は「化粧品種別許可基準」記載の「合成金雲母 過酷溶出試験法」に基づいて、下記方法によって、フッ素溶出量試験を行った。その結果を表2に示す。
【0035】
<過酷溶出試験法>
製品5gと蒸留水100mlをフラスコに入れ、1時間加熱還流を行った。冷却後、濾紙及びメンブランフィルターで濾過した。濾液全量をフッ素試験法に従って蒸留を行い、試験溶液を作成した。その後のフッ素分析は、ランタン・アリザリンコンプレキソンを用いた吸光光度法により行った。尚、許容フッ素溶出量の規格値は、20ppm以下である。
【0036】
実施例8
実施例2と同様の合成フッ素金雲母を、実施例2と同じ条件で粉砕、分級した。得られた合成フッ素金雲母をフィルタープレスによって回収した後、乾燥機中に入れ300℃で乾燥させた。乾燥した合成フッ素金雲母を解砕し、1000℃で1時間熱処理を施して試料を得た。フッ素溶出量の評価は実施例7と同様に行った。結果を表2に示す。
【0037】
実施例9
実施例3と同様の合成フッ素金雲母を、実施例3と同じ条件で粉砕、分級した。得られた合成フッ素金雲母をフィルタープレスによって回収した後、乾燥機中に入れ300℃で乾燥させた。乾燥した合成フッ素金雲母を解砕し、1000℃で1時間熱処理を施して試料を得た。フッ素溶出量の評価は実施例7と同様に行った。結果を表2に示す。
【0038】
比較例4
実施例1と同様の合成フッ素金雲母10%懸濁液1リットルをボールミルを用いて6時間かけて粉砕した。その結果、粒径は11.98μm(σ4.36μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径10μmの粒子を得た。同フッ素金雲母をフィルタープレスによって回収した後、乾燥機中に入れ300℃で乾燥させた。乾燥した合成フッ素金雲母を解砕し、1000℃で1時間熱処理を施して試料を得た。フッ素溶出量の評価は実施例7と同様に行った。結果を表2に示す。
【0039】
比較例5
実施例1と同様の合成フッ素金雲母10%懸濁液1リットルをボールミルを用いて6時間かけて粉砕、した。その結果、粒径11.98μm(σ4.36μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径13μmの粒子を得た。同フッ素金雲母をフィルタープレスによって回収した後、乾燥機中に入れ300℃で乾燥させた。乾燥した合成フッ素金雲母を解砕し、1000℃で24時間熱処理を施したところ、合成フッ素金雲母は焼結していた。同焼結体をハンマーで粗砕した後にサンプルミルを用いて粉砕して試料を得た。同試料はガラス化しており、合成フッ素金雲母特有の光沢感はなくなっていた。フッ素溶出量の評価は実施例7と同様に行った。結果を表2に示す。
【0040】
比較例6
実施例1と同様の合成フッ素金雲母1kgをサンプルミルを用いて粉砕した。その結果、粒径13.12μm(σ4.75μm)に粉砕され、その後の分級により平均粒子径11μmの粒子を得た。同フッ素金雲母を電気炉に入れ1000℃で4時間かけて焼成した。フッ素溶出量の評価は実施例7と同様に行った。結果を表2に示す。
【0041】
【表2】
【0042】
表2に示した結果より明らかなように、各実施例、比較例について処理前後の粒子径は同程度の条件であったにもかかわらず実施例7〜9のフッ素溶出量はいずれも10ppm未満であり、比較例4と比較するとフッ素溶出量を大幅に抑えていることがわかる。また、比較例6と比較してもフッ素溶出量を約半分にまで抑えていることがわかる。また、比較例5のようにフッ素溶出量を低くするために長時間焼成すると、構造が分解してしまい合成フッ素金雲母ではなくなってしまう。
【0043】
次に、実施例1または比較例1の合成フッ素金雲母を用いて下記処方のパウダリーファンデーションを常法により製造した。パネル10名により、ファンデーション塗布の際の使用感(塗布のしやすさ)及び塗布後の仕上がり(マット感)について、以下の評価基準により評価した。
評価基準
○:実施例1の合成フッ素金雲母を用いた場合(実施例10)のほうが比較例1の合成フッ素金雲母を用いた場合(比較例7)に比して塗布のしやすさ及びマット感に優れると回答したパネルが8名以上。
×:実施例1の合成フッ素金雲母を用いた場合(実施例10)のほうが比較例1の合成フッ素金雲母を用いた場合(比較例7)に比して塗布のしやすさ及びマット感に優れると回答したパネルが8名未満。
評価結果を表3に示す。
【0044】
【表3】
【0045】
表3の結果より明らかなように、実施例1の合成フッ素金雲母を用いた場合には、その平滑性、低光沢性により塗布感及びファンデーションのマットな仕上がり感に優れている。
【0046】
【発明の効果】
以上説明したように本発明にかかる板状合成フッ素雲母粉体及びその製造方法によれば、板状粒子の平滑性が高く、低光沢な板状合成フッ素雲母粉体が得られ、また粉体の安全性が高い板状合成フッ素雲母粉体が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の板状結晶化合物粉体の説明図である。
【図2】従来の板状結晶化合物粉体の説明図である。
【図3】本発明の製造方法により得られた板状結晶化合物粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図4】本発明の製造方法により得られた板状結晶化合物粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
【図5】本発明外の製造方法により得られた板状結晶化合物粉体の走査型電子顕微鏡写真である。
Claims (6)
- 端面の厚み/層面中央部の厚みが0.9〜1.0である板状合成フッ素雲母を60%以上含むことを特徴とする板状合成フッ素雲母粉体。
- 請求項1記載の粉体において、以下に記載の光沢値測定方法による光沢値が3.5以下であることを特徴とする板状合成フッ素雲母粉体。
<光沢値の測定方法>
白のボール紙上に、5〜6cmの長さに切った両面テープを貼り付ける。両面テープの上に、5〜6cmに切ったセロテープ(登録商標)を、粘着面を上にして両面テープとセロテープの間に空気が入らないように貼り付ける。
セロテープの上に余剰の粉体を乗せてから、化粧品用ハケで、同一方向に10回馴らす。セロテープ上及びハケに付いた余分な粉体を払い落としてから、さらに10回同じ方向にハケで馴らす。馴らした方向に入射→反射が起こるようにして、光沢計 日本電色工業(株)製「VG−2PD」で測定する。入射−反射角は、60度−60度とする。なお、光沢計のゼロ点及びスパンの調整は、一連の測定毎に一回、測定前に必ず行う。スパンの調整は、光沢値89の反射板を使用する。 - 過酷溶出試験法による水中でのフッ素溶出量が10ppm未満であることを特徴とする請求項1又は2記載の板状合成フッ素雲母粉体。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の板状合成フッ素雲母粉体を含有することを特徴とする化粧料。
- 高圧系ホモジナイザーを用いて原料の板状合成フッ素雲母粉体を、差圧100kg/cm2以上で粉砕する粉砕工程を含むことを特徴とする板状合成フッ素雲母粉体の製造方法。
- 高圧系ホモジナイザーを用いて原料の板状合成フッ素雲母粉体を、差圧100kg/cm2以上で粉砕する粉砕工程と、
前記粉砕工程の後に500〜1200℃で熱処理する熱処理工程を含むことを特徴とする板状合成フッ素雲母粉体の製造方法。
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