JP4189566B2 - 食肉製品用蛋白組成物およびそれを用いた食肉製品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食肉製品の製造におけるプロセスの改良および品質向上に関するものであり、具体的には作業性に優れ、高歩留り、高保水性、優れた食感および優れたスライス適性を製品へ付与し、なおかつ製品の外観上の品質低下を起こさない食肉製品用蛋白組成物、およびこれを原料肉に注入/混合して製造される食肉製品に関する。
【0002】
【従来の技術】
大豆蛋白は、乳化性、ゲル化性、保水性等の様々な機能特性を備えており、従来より種々の加工食品に広く利用されている。なかでも分離大豆蛋白、濃縮大豆蛋白等の大豆蛋白素材は、蛋白含量が高く、かつ上述した機能特性を良く備えていることから、食肉製品、惣菜、魚肉製品等に幅広く用いられてきた。ここに食肉製品としては、ハム、ソーセージ、ベーコン、その他これに類するもの(焼き豚など)、更には食肉フライ製品(とんかつ、てんぷら)等に適用される。このなかでもハム、ベーコン等の食肉製品の製造には、製品の物性、歩留、食感の改良等を目的に、大豆蛋白等の蛋白素材とともに食塩、糖類、香辛料、グルタミン酸ナトリウム等の調味剤、重合リン酸塩等の結着補強剤、亜硝酸塩等の発色剤、アスコルビン酸塩等の酸化防止剤、ソルビン酸カリ等の保存剤等を配合したいわゆるピックル液を肉に混合あるいは注入する方法が採用されている。ピックル液の注入に際しては、ピックルインジェクターと呼ばれる装置を用いることが多い。また、ピックルの浸透効果を高めるために、通常注入後にマッサージング操作が行われている。
【0003】
大豆蛋白のピックル液への配合により、保型性や保水性等の改良効果が得られるが、大豆蛋白自体、かなりの粘性を有するため、以下に挙げるような品質上の課題もあった。すなわち、ピックル液が高粘度になるため、インジェクターでの注入作業性を大きく悪化させたり、ピックル液が肉内へ充分に浸透せずにピックル溜りとなり、不均一なスライス面となってしまうといった問題、あるいは食肉製品の食感にぼそつきが生じたり、身割れしやすくなりスライス適性が低下するといった問題等である。そこで、大豆蛋白の粘度を低下させるため、蛋白を酵素的に加水分解する手法がこれまでに多く開発されてきた。
【0004】
例えば、酵素分解の方法に着目した発明として、エラスターゼを用いて分解処理を施す特開平5−328939号公報、蛋白の特定成分のみを分解する特開平10−155455号公報が提案されている。しかしながら、大豆蛋白の高度の加水分解は肉内へのピックルの保持力の低下、食肉製品の歩留りの低下、離水の上昇を引き起こす傾向にある。また、分解率の高い大豆蛋白加水分解物をハムにインジェクションした際に、白いピックル溜まりが生成し、ハムのスライス面が不自然な外観となる問題も発生している。したがって、大豆蛋白の加水分解のみによる蛋白の低粘度化には制限があるのが実状であった。
【0005】
また、食肉製品の品質改良の目的で、大豆蛋白素材とともに他素材を併用する提案もなされている。例えば、大豆蛋白の加水分解物と有機カルボン酸乃至はフィチン酸をピックル液中で併用する、特公平1ー42654号公報、トランスグルタミナーゼと併用させる特開平11−56303号公報が提案されている。しかしながらこれらの提案は、あくまでも、最終食肉製品の系中における併用効果を狙ったもので、大豆蛋白素材そのものの改質を期待したものではなかった。したがってこれらの方法では分解率の高い大豆蛋白加水分解物を原料に用いた場合、製品の歩留り低下、離水の上昇、テクスチャーの悪化、ピックル溜まりの生成等の問題を完全に解決することができなかった。
以上のごとき理由から、大豆蛋白素材の更なる低粘度化と品質の向上を同時に満足する新しい大豆蛋白素材が現在切望されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上の実情に鑑み、本発明の目的は、▲1▼食肉製品の製造の際、ピックル液にして低粘度でインジェクターでの注入作業性、肉組織内への浸透性に優れること、▲2▼高歩留り、高保水性、優れた食感および優れたスライス適性を製品へ付与し、ピックル溜まり等の製品の外観上の問題を起こさないこと、この二点を兼ね備えた食肉製品用大豆蛋白組成物、およびこれを原料肉に注入/混合して製造される食肉製品を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述のような課題を解決するために鋭意検討した結果、大豆蛋白の加水分解物と、リン酸基を有する物質の混合物を、加熱処理してなる大豆蛋白組成物が、上述の課題を解決できる素材であることを見出し、本発明の完成に至った。即ち、本発明は大豆蛋白加水分解物とリン酸基を有する物質を、共存状態で加熱処理してなる大豆蛋白組成物、およびこれを注入/混合して作られる食肉製品の提供である。以下に本発明を詳細に記す。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる大豆蛋白の種類は、全脂豆乳、脱脂豆乳、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白等であり、蛋白変性度が低い加工処理を行った大豆蛋白加工品が好ましい。
また本発明に規定される大豆蛋白加水分解物は、TCA可溶率が6%以上、好ましくは7〜50%程度になるように分解した処理物である。ここで、TCA可溶率とは全蛋白に対する0.22Mトリクロロ酢酸(TCA)可溶蛋白の割合をケルダール法、ローリー法等の蛋白定量法により測定したもので、分解率の尺度として用いられる。蛋白の低粘度化という観点から、TCA可溶率は7%以上が好ましい。TCA可溶率6%未満であると、蛋白が増粘傾向になるため、好ましくない。TCA可溶率50%以上では、食感およびスライス適性の向上効果はあるものの保水性が低下し、また苦味を呈する成分の割合が増えることから、好適ではない。
【0009】
蛋白の加水分解法としては、蛋白加水分解酵素(プロテアーゼ)を用いる方法、強酸・強アルカリ環境下で加水分解する方法等が挙げられ、特に限定されない。なかでも、大豆蛋白中の主要成分である7Sおよび11Sグロブリンのうち、片方か、もしくは両方を別々に加水分解して得られる部分加水分解物が、食感、スライス適性の改良効果、歩留り向上効果および保水性の向上効果に優れ、好適である。主要成分の酵素処理する場合のプロテアーゼの種類は特に限定されないが、遊離アミノ酸の過剰な生成は苦味を生じるため、エンド型プロテアーゼを主として用いるのが好ましい。リン酸基を有する物質を蛋白と混合させる時期は、加熱前であればいつでもよく、工程の都合に応じて、リン酸基を有する物質を添加後に、蛋白を加水分解しても良い。
【0010】
リン酸基を有する物質とは、例えばオルトリン酸、ポリリン酸、メタリン酸等、リン酸のモノ/ジエステルおよびこれらの塩を指し、これらを単独で用いても、併用してもよい。本発明に用いられるポリリン酸として、ピロリン酸、トリポリリン酸、テトラポリリン酸等が、またメタリン酸として、ヘキサメタリン酸等が挙げられる。リン酸のエステルとしては、フィチン酸に代表されるホスホイノシトール、ヌクレオチド、リン酸化糖、リン酸化澱粉、リン酸化蛋白、リン脂質等が挙げられ、特定の分子種に限定されない。これらのイオンは塩の形で添加することも可能であるが、蛋白共存下においてリン酸基の解離度が低い塩は好ましくない。
リン酸基を有する物質の量は、蛋白乾物重量に対し0.3重量%以上が好適で、それ未満では改質効果が充分には発現しない。より好ましい範囲は0.3〜20.0重量%である。
【0011】
次に加熱処理であるが、蛋白素材の改質という観点から、大豆蛋白加水分解物とリン酸基を有する物質を共存状態で水に分散させ、pH5.0〜10.0に調整して、95℃以上の温度で2〜90秒間、好ましくは120〜160℃の温度で3〜30秒間加熱することが肝要である。pH5.0未満で加熱を行うと蛋白は白濁凝集し、ゲル化性、保水性が低下してしまい、好ましくない。またpH9.0を越えての加熱は、食品としては適さない。加熱温度95℃未満では分解物の改質が不十分で、好ましくない。また、蛋白加水分解物を加熱後にリン酸残基を有する物質を添加しても、その後に再度加熱を施さない限り改質は起こらず、不適である。加熱方法は熱交換器等を利用した間接加熱、蒸気等による直接加熱のどちらでも構わない。必要があれば、分解物に油脂及び/又は乳化剤を加熱工程の前または後、あるいは乾燥工程の前に添加することも任意である。得られた組成物は、液体の状態でそのままピックル液の原料として用いることも、またいったん乾燥粉末化した後、適宜ピックル液中に分散させて用いることも可能である。
【0012】
以上の工程を経た大豆蛋白組成物は、従来の大豆蛋白素材に比してピックル液にして低粘度で、インジェクターでの注入作業性および肉内への浸透性に優れている。またこのものを注入したハムは、従来の加水分解物を注入したものと比較して、保水力に優れ、歩留りが高く、食感が滑らかで、スライス適性に優れ、且つ、外観上不自然なピックル溜まりの発生も認められない。
本発明において大豆蛋白組成物は、例えばピックル液中に含有させて用いることができ、配合率は特に限定されないが、風味の点からピックル液中12%以下が好ましく、必要に応じて他の蛋白素材や通常のピックル液に含まれる食塩、カラギーナンやカードラン等の多糖類、コーンシロップやトレハロース等の少糖類、ポリリン酸塩、亜硝酸塩、調味料を含むことができる。
【0013】
【実施例】
以下、実施例により本発明の実施様態を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例にその技術範囲が限定されるものではない。
【0014】
(実施例1)
n-ヘキサンを抽出溶媒として得られた低変性脱脂大豆(窒素可溶指数;NSI>80)10kgに12倍量の水を加え、室温、pH=7.2において1時間抽出後、遠心分離し、脱脂豆乳100kgを得た。これに塩酸を加えpH=4.5とし、遠心分離してホエー画分を除き酸沈澱カード7kgを得た。該酸沈澱カードの蛋白濃度をケルダール窒素定量法により測定した。該酸沈澱カードに加水して蛋白含量10重量%に調整した後、分散液より10kgを分取し、これに蛋白乾物重量の1.0重量%のトリポリリン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を加え、さらに苛性ソーダにてpH=7.2に中和した。該中和液を70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.06重量%のパパイン(日本バイオコン(株)製)を添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白組成物約800gを得た。組成物のTCA可溶率を測定したところ、15.5%であった。
【0015】
(実施例2)
実施例1と同様に調製した中和液10kgを70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.1重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白組成物約800gを得た。組成物のTCA可溶率を測定したところ、21.4%であった。
【0016】
(実施例3)
実施例1と同様に調製した中和液10kgを70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.1重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより110℃、30秒間加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白組成物約800gを得た。組成物のTCA可溶率を測定したところ、21.0%であった。
【0017】
(実施例4)
実施例1と同様に調製した中和液10kgを70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.1重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより160℃、5秒間加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白組成物約800gを得た。組成物のTCA可溶率を測定したところ、21.0%であった。
【0018】
(実施例5)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに対し、蛋白乾物重量の2.0重量%のリン酸三ナトリウム・12水和物(和光純薬工業(株)製)を加え、さらに苛性ソーダにてpH=7.2に中和した。該中和液を70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.1重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白組成物約800gを得た。組成物のTCA可溶率を測定したところ、22.1%であった。
【0019】
(実施例6)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに対し、蛋白乾物重量の2.0重量%のイノシトールー6ーリン酸ナトリウム(別名フィチン酸ナトリウム、シグマ アルドリッチ ジャパン(株)製)を加え、さらに苛性ソーダにてpH=7.2に中和した。該中和液を70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.1重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白組成物約800gを得た。組成物のTCA可溶率を測定したところ、22.5%であった。
【0020】
(実施例7)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに加水し塩酸を加えてpH=3.5に調整した。該蛋白懸濁液に対し、蛋白乾物重量の0.2重量%のペプシン(日本バイオコン(株)製)を添加し、70℃で30分間酵素反応させた。該反応液を37℃まで冷却して塩酸を加えてpH=2.0に調整し、蛋白乾物重量の0.2重量%のペプシンを加え、30分間反応させた。反応液に対し、蛋白乾物重量の5.0重量%のトリポリリン酸ナトリウム(和光純薬工業(株)製)を加え、さらに苛性ソーダにてpH=7.2に中和した。反応液に苛性ソーダを加えてpH=7.2に調整したのち蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白加水分解物約800gを得た。分解物のTCA可溶率は38.0%であった。
【0021】
(比較例1)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに苛性ソーダを加え、pH=7.2に調整した。該中和液を70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.01重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白加水分解物約800gを得た。分解物のTCA可溶率を測定したところ、5.8%であった。
【0022】
(比較例2)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに苛性ソーダを加え、pH=7.2に調整した。該中和液を70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.06重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白加水分解物約800gを得た。分解物のTCA可溶率を測定したところ、15.9%であった。
【0023】
(比較例3)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに苛性ソーダを加え、pH=7.2に調整した。該中和液を70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.1重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白加水分解物約800gを得た。分解物のTCA可溶率を測定したところ、21.8%であった。
【0024】
(比較例4)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに対し、蛋白乾物重量の1.0重量%のトリポリリン酸ナトリウムを加え、さらに苛性ソーダにてpH=7.2に中和した。該中和液を70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.1重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより90℃、60秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白組成物約800gを得た。組成物のTCA可溶率を測定したところ、21.2%であった。
【0025】
(比較例5)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに蛋白乾物重量の1.0重量%のトリポリリン酸ナトリウムを加え、さらに苛性ソーダにてpH=7.2に中和した。該中和液を蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して未分解の大豆蛋白組成物約800gを得た。TCA可溶率を測定したところ、3.9%であった。
【0026】
(比較例6)
実施例1と同様に調整した酸沈澱カード希釈液(蛋白含量10%)10kgに苛性ソーダを加え、pH=7.2に調整した。該中和液を70℃に温調し、蛋白乾物重量の0.1重量%のパパインを添加して20分酵素反応後、苛性ソーダにてpH=7.2に調整し、蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。加熱後の液に蛋白乾物重量の1.0重量%のトリポリリン酸ナトリウムを加え、これを噴霧乾燥して大豆蛋白加水分解物約800gを得た。分解物のTCA可溶率を測定したところ、21.4%であった。
【0027】
(比較例7)
実施例1と同様に調製した酸沈澱カード1kgに加水し塩酸を加えてpH=3.5、蛋白含量10重量%に調整した。該蛋白懸濁液に対し、蛋白乾物重量の1.0重量%のペプシン(日本バイオコン(株)製)を添加し、70℃で30分間酵素反応させた。該反応液を37℃まで冷却して塩酸を加えてpH=2.0に調整し、蛋白乾物重量の1.0重量%のペプシンを加え、30分間反応させた。反応液に対し、蛋白乾物重量の5.0重量%のトリポリリン酸ナトリウムを加え、さらに苛性ソーダにてpH=7.2に中和した。このものを蒸気の直接吹き込みにより140℃、7秒加熱した。これを噴霧乾燥して大豆蛋白加水分解物約800gを得た。分解物のTCA可溶率は62.1%であった。
【0028】
(試験例1)
モデルロースハム試験により、実施例1、実施例2、比較例1、比較例2および比較例3の大豆蛋白加水分解物の効果を試験した。表1に示したピックル液の配合にて、大豆蛋白加水分解物の種類だけを変え、ハムを作成した。
【0029】
【表1】
【0030】
ハムの調製法は以下の通りである。即ち、ピックルインジェクター((株)トーニチ製TP18型)を用いて、同一部位の豚ロース肉塊120gに対し、肉塊重量の100%のピックル液を注入し、ロータリーマッサージ機((株)筒井製作所製)で低温下にて18時間マッサージング(回転撹拌)した後、ケーシングに充填した。60℃で30分熟成後、乾燥させ60℃で30分燻煙下におき、73℃でボイルし、中心温度72℃に達温後、冷却してハムを調製した。1試験区につき4点のハムを調製し、分析値はこれらの平均値として表した。
【0031】
調製したピックル液の粘度は、一夜冷蔵後B型粘度計で測定した。また所定量の注入率(元の肉重量に対する注入後のハム重量の割合)が200%に達するまでのインジェクターの打ち込み回数を測定した。調製したハムのかたさは、厚さ5mmのサンプルをテクスチャー解析ソフトを用いてレオメーター((株)山電製)にて測定し、保水力はサンプル(厚さ5mm)に1kg/cm2で30分荷重したときに、元の重量に対する離水量の割合(%)を圧出離水率として表した。ハム歩留りは、元の肉重量に対する注入後、マッサージング後および加熱後のハム重量の割合を、元の重量を100%として表した。また、ハムの外観および食感を、熟練したパネラー6名の協力を得て5段階(5点良い、4点やや良い、3点普通、2点やや悪い、1点悪い)で評価した。さらに、ハムのスライス適性を、折り曲げた時の身割れの状態より、5段階(5点適性高い、4点やや高い、3点普通、2点やや低い、1点低い)で評価した。その結果を図1、図2及び表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
図1および表2に示すように、実施例1および実施例2におけるピックル液粘度は比較例1に比べ低く、また所定の注入率に達するまでのインジェクター打ち込み回数も少なかった。比較例2および3においてはピックル液粘度は低かったが、ピックルの肉内への保持率が低く、所定の注入率に達するまでに数多くの打ち込み回数を必要とした。ピックル液の泡消えは、全ての調製品において、作業上問題とならないレベルであった。
また、図2に示すように、実施例1および実施例2調製品を使用したハムはマッサージング後の歩留りの低下が抑えられた。
更に、表3に示すように、ハムの食感およびスライス適性については、比較例1調製品は身割れ程度が激しく、また食感も紙の様にぼそついていたのに対し、実施例1、2調製品は身割れが少なく、しなやかで、食感は弾力性がある好ましい食感であった。
圧出離水率を比較したところ、実施例1および2調製品は比較例1、2および3調製品に比べ離水率低く、製品の保水性が向上したことが明らかとなった。
ハムの外観を評価した結果、実施例1、2および比較例1においては外観上特に問題は認められなかったのに対し、比較例2および3においては筋状のピックル溜まりが認められ、不自然な外観であった。
【0034】
試験例2
試験例1と同様のロースハム試験により、実施例3、実施例4、および比較例4の大豆蛋白加水分解物の効果を試験した。ピックル液の配合は試験例2と同様に、表1に示したピックル液の配合にて、大豆蛋白加水分解物の種類だけを変え、ハムを作成した。また、ピックル注入率は試験例1に準じた。これらの結果を表3に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
表3からも明らかなとおり、実施例3および実施例4調製品は製品歩留りが高く、またかたさ、保水力、食感およびスライス適性の点で優れていた。これに対し、比較例4は歩留り、保水力が低く、かたさの点でも劣った。また比較例4においては若干量のピックル溜まりが観察され、外観上不自然であった。
【0037】
試験例3
試験例1と同様のロースハム試験により、実施例5、実施例6、比較例5および比較例6の大豆蛋白組成物の効果を試験した。ピックル液の配合は試験例1と同様に、表1に示したピックル液の配合にて、大豆蛋白組成物の種類だけを変え、ハムを作成した。また、ピックル注入率は試験例1に準じた。これらの結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
【0039】
その結果、表4からも明らかなとおり、実施例5および実施例6調製品は、所定の注入率に達するまでのピックル液打ち込み回数が少なく、肉内への浸透性および保持力に優れていた。またハムのマッサージング歩留り、保水力、かたさ、スライス適性ともに高く、また食感はしなやかで、弾力性がある好ましい食感であった。一方、比較例5調製品はピックル液粘度が高く、所定の注入率に達するまでに多数の打ち込み回数を要した。さらにスライス面の身割れ程度が激しく、また食感も紙の様にぼそついていた。
また、比較例6調製品はピックル液粘度は低いものの、所定の注入率に達するまでの打ち込み回数は多く、ハムのかたさ、離水率ともに劣っていた。またハム中にピックル溜まりが多数観察され、外観上不自然であった。リン酸塩を加熱後に添加した比較例6調製品は、リン酸塩を加熱前に添加した試験例2における実施例2調製品にくらべ歩留り、物性、食感、外観全てにおいて劣っていた。
【0040】
試験例4
試験例1と同様のロースハム試験により、実施例7および比較例7の大豆蛋白加水分解物の効果を試験した。ピックル液の配合は試験例1と同様に、表1に示したピックル液の配合にて、大豆蛋白加水分解物の種類だけを変え、ハムを作成した。また、ピックル注入率は試験例1に準じた。これらの結果を表5に示す。
【0041】
【表5】
【0042】
その結果、表5からも明らかなとおり、実施例7調製品は身割れが非常に少なく、優れたスライス適性と食感を有しており、ハムの歩留りおよび保水力の向上効果も高いものであった。一方比較例6調製品はハムの歩留りおよび保水力の点で劣り、ハムとしては適さない、苦みを感じた。両調製品において、ハムの外観上の品質低下は認められなかった。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明における蛋白組成物により、高歩留りおよび高品質を製品へ付与し、なおかつピックル液注入時の作業性に優れる食肉製品の製造が可能になったものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】ピックル液打ち込み回数と歩留まりを表す
【図2】マッサージ前後での歩留まりとの関係
Claims (3)
- TCA可溶率が6〜50%である大豆蛋白加水分解物とリン酸基を有する物質の混合物を、95℃以上に加熱してなる、ピックル液用蛋白組成物。
- 混合物の加熱時のpHが5.0〜9.0、加熱時間が2〜90秒である請求項1記載のピックル液用蛋白組成物。
- 請求項1記載の蛋白組成物を原料肉に注入/混合させて得られる食肉製品
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