図12は、従来の一般的な液晶表示装置を示す概略分解斜視図である。
図12に示すように、従来の液晶表示装置100は、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル104とを備えている。
このうち、偏光板102A、102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル104は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102A、102Bの間に配置されている。
ここで、このような液晶表示装置100において、液晶セル104が、負の誘電異方性を有するネマチック液晶が封止されたVA(Vertical Alignment)方式(図中、液晶のダイレクターを点線で模式的に図示)を採用している場合を例に挙げると、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光は、液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分を透過する際に、位相シフトされずに透過し、出射側の偏光板102Bで遮断される。これに対し、液晶セル104のうち駆動状態のセルの部分を透過する際には、直線偏光が位相シフトされ、この位相シフト量に応じた量の光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される。これにより、液晶セル104の駆動電圧を各セル毎に適宜制御することにより、出射側の偏光板102B側に所望の画像を表示することができる。なお、液晶表示装置100としては、上述したような光の透過及び遮断の態様をとるものに限らず、液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分から出射された光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される一方で、駆動状態のセルの部分から出射された光が出射側の偏光板102Bで遮断されるように構成された液晶表示装置も存在している。
ところで、上述したようなVA方式の液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分を直線偏光が透過する場合を考えると、液晶セル104は複屈折性を有しており、厚さ方向の屈折率と面方向の屈折率とが異なるので、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光のうち液晶セル104の法線に沿って入射した光は位相シフトされずに透過するものの、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光のうち液晶セル104の法線から傾斜した方向に入射した光は液晶セル104を透過する際に位相差が生じて楕円偏光となる。この現象は、VA方式の液晶セル104内のあるセルが非駆動状態であるときに、液晶セル104内で垂直方向に配向した液晶分子が、正のCプレートとして作用することに起因したものである。なお、液晶セル104を透過する光(透過光)に対して生じる位相差の大きさは、液晶セル104内に封入された液晶分子の複屈折値や、液晶セル104の厚さ、透過光の波長等にも影響される。
以上の現象により、液晶セル104内のあるセルが非駆動状態であり、本来的には直線偏光がそのまま透過され、出射側の偏光板102Bで遮断されるべき場合であっても、液晶セル104の法線から傾斜した方向に出射された光の一部が出射側の偏光板102Bから洩れてしまうことになる。
このため、上述したような従来の液晶表示装置100においては、正面から観察される画像に比べて、液晶セル104の法線から傾斜した方向から観察される画像の表示品位が悪化しやすいという問題(視角依存性の問題)がある。
上述したような従来の液晶表示装置100における視角依存性の問題を改善するため、現在までに様々な技術が開発されており、その一つとして、例えば特許文献1に記載されているように、コレステリック構造を有する位相差層(複屈折性を示す位相差層)を備えた位相差光学素子を用い、このような位相差光学素子を液晶セルと偏光板との間に配置することにより光学補償を行うようにした液晶表示装置が知られている。
ここで、コレステリック構造を有する位相差光学素子では、λ=nav・p(p:液晶分子の螺旋構造における螺旋(ヘリカル)ピッチ、nav:螺旋軸に直交する平面内での平均屈折率)で表される選択反射波長が、例えば特許文献2に記載されているように、透過光の波長よりも小さくなるか又は大きくなるように調整している。
また、上述した視角依存性の問題を改善するための他の技術として、例えば特許文献3に記載されているように、ディスコチック液晶からなる位相差層(複屈折性を示す位相差層)を備えた位相差光学素子を用い、このような位相差光学素子を液晶セルと偏光板との間に配置することにより光学補償を行うようにした液晶表示装置も知られている。
上述したような位相差光学素子においては、上述したVA方式の液晶セルの場合と同様に、位相差層の法線から傾斜した方向に入射する直線偏光は、位相差層を透過する際に位相差が生じて楕円偏光となる。この現象は、コレステリック液晶やディスコチック液晶が、負のCプレートとして作用することに起因したものである。なお、位相差層を透過する光(透過光)に対して生じる位相差の大きさは、位相差層内の液晶分子の複屈折値や、位相差層の厚さ、透過光の波長等にも影響される。
従って、上述したような位相差光学素子を用いれば、正のCプレートとして作用するVA方式の液晶セルで生じる位相差と、負のCプレートとして作用する位相差光学素子の位相差層で生じる位相差とが相殺するように、位相差光学素子の位相差層を適宜設計することにより、液晶表示装置の視角依存性の問題を大幅に改善することが可能である。
なお、このような液晶表示装置の視角依存性の問題は、例えば特許文献4に記載されているように、負のCプレートとして作用する位相差層(即ち、面方向の屈折率をNx、Ny、厚さ方向の屈折率をNzとしたときに、Nx=Ny>Nzの関係を有する位相差層)と、Aプレートとして作用する位相差層(即ち、面方向の屈折率をNx、Ny、厚さ方向の屈折率をNzとしたときに、Nx>Ny=Nzの関係を有する位相差層)とを併用すると、さらに大幅に改善することが可能である。
ところで、上述したようなVA方式の液晶セルを備えた液晶表示装置においては、電界を印加した際に傾斜する液晶分子の方向が複数あるような、いわゆるマルチドメインのVA方式の液晶セルを備えたものが存在している。そして、このような液晶表示装置においては、マルチドメインのVA方式の液晶セルに入射する光が直線偏光である場合には光透過率が低下するが、当該液晶セルに入射する光がλ/4位相差板により円偏光に変換されている場合には光透過率の低下を効果的に防止することが知られている(特許文献5や非特許文献1)。
しかしながら、特許文献5や非特許文献1に記載されているような液晶表示装置では、マルチドメインのVA方式の液晶セルに入射する光をλ/4位相差板により円偏光に変換することにより光透過率の低下を防止することができるものの、本発明者の知見として、上述した視角依存性の問題を改善することを目的として、マルチドメインのVA方式の液晶セルとλ/4位相差板と間に、負のCプレートとして作用する位相差層を配置した場合、コントラストが大幅に低下することが判明した。
一方、上述したような背景技術に関連して、λ/4位相差板の波長分散を改善するための方法として、例えば特許文献6に記載されているように、λ/2位相差板とλ/4位相差板とを所定の角度で貼り合わせる方法が知られている。また、位相差層をパターニングする方法に関しては、例えば特許文献7に記載されているように、3次元画像を目的としてパターニングしたλ/2位相差層上にパターニングしないλ/4位相差層を積層する方法が知られている。
さらに、本発明者は既に、入射した直線偏光を円偏光に変換するλ/2位相差層とλ/4位相差層とからなる位相差層(ネマチック液晶を主成分とするもの)と、位相差層で変換された円偏光を選択的に反射するコレステリック液晶フィルターとを備えたフィルター基板に関する特許出願(特許文献7参照)をしている。また、本発明者は既に、ネマチック層を形成し得る液晶材料をパターン状に形成した位相差積層体に関する特許出願(特許文献9参照)をしている。
特開平3−67219号公報
特開平4−322223号公報
特開平10−312166号公報
特開平11−258605号公報
特開2002−40428号公報
特開平10−68816号公報
特開平10−227998号公報
特願2001−342698号(特開2003−139941号公報参照)
特願2002−259150号(特開2003−207641号公報参照)
SID(Society for Information Display) '00, Digest of Tech. Papers, 902(2000)
本発明はこのような点を考慮してなされたものであり、液晶セルの光学特性の視角依存性を効果的に補償することができる積層位相差光学素子であって、液晶セルとλ/4位相差板との間に配置してもコントラストを低下させることがなく、従って表示品位を低下させることがない、積層位相差光学素子、その製造方法及び積層位相差光学素子を備えた液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明は、第1の解決手段として、Aプレートとして作用するAプレート型位相差層と、前記Aプレート型位相差層の表面に光学的に接合され、負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層とを備え、前記Aプレート型位相差層は架橋されたネマチック液晶からなり、前記Cプレート型位相差層は架橋されたカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶からなることを特徴とする積層位相差光学素子を提供する。
なお、本発明の第1の解決手段において、前記Aプレート型位相差層は透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるλ/4位相差層であることが好ましい。
また、本発明の第1の解決手段において、前記Aプレート型位相差層としての前記λ/4位相差層のうち前記Cプレート型位相差層の反対側の表面に光学的に接合され、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるλ/2位相差層をさらに備えることが好ましい。
ここで、前記λ/2位相差層は架橋されたネマチック液晶からなることが好ましい。また、前記Aプレート型位相差層としての前記λ/4位相差層の進相軸と前記λ/2位相差層の進相軸とがなす角度が60±10度であることが好ましい。
また、本発明の第1の解決手段において、前記Cプレート型位相差層はその厚さが5μm以下であることが好ましい。
さらに、本発明の第1の解決手段においては、前記Cプレート型位相差層のうち前記Aプレート型位相差層の反対側の表面に光学的に接合され、負のCプレートとして作用する追加のCプレート型位相差層をさらに備え、前記追加のCプレート型位相差層は架橋されたカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶からなり、前記Cプレート型位相差層及び前記追加のCプレート型位相差層はその厚さの合計が6μm以上であり、それぞれの厚さが略同じであることが好ましい。
さらに、本発明の第1の解決手段においては、前記Aプレート型位相差層としての前記λ/4位相差層を透過する光の偏光状態を制御する偏光層をさらに備えることが好ましい。
ここで、前記Aプレート型位相差層としての前記λ/4位相差層の進相軸と前記偏光層の透過軸とがなす角度が45±2度(好ましくは45度)であることが好ましい。
さらに、本発明の第1の解決手段においては、前記λ/2位相差層を透過する光の偏光状態を制御する偏光層をさらに備えることが好ましい。
ここで、前記λ/2位相差層の進相軸と前記偏光層の透過軸とがなす角度が15±5度(好ましくは15±2度)であることが好ましい。
さらに、本発明の第1の解決手段においては、互いに隣接して接合された位相差層の平均屈折率の差が0.05以下であることが好ましい。ここで、好ましくは、互いに隣接して接合された各位相差層に含まれるネマチック液晶成分が実質的に同一であるとよい。
さらに、本発明の第1の解決手段において、前記Aプレート型位相差層は所定のパターンにパターニングされていることが好ましい。また、前記Cプレート型位相差層も所定のパターンにパターニングされていることが好ましい。
本発明は、第2の解決手段として、Aプレートとして作用するAプレート型位相差層と、前記Aプレート型位相差層の表面に光学的に接合され、正のCプレートとして作用するCプレート型位相差層とを備え、前記Aプレート型位相差層は、水平配向され且つ架橋されたネマチック液晶からなり、前記Cプレート型位相差層は、垂直配向され且つ架橋されたネマチック液晶からなることを特徴とする積層位相差光学素子を提供する。
なお、本発明の第2の解決手段において、前記Cプレート型位相差層はその厚さが5μm以下であることが好ましい。
また、本発明の第2の解決手段においては、前記Cプレート型位相差層のうち前記Aプレート型位相差層の反対側の表面に光学的に接合され、正のCプレートとして作用する追加のCプレート型位相差層をさらに備え、前記追加のCプレート型位相差層は架橋されたネマチック液晶からなり、前記Cプレート型位相差層及び前記追加のCプレート型位相差層はその厚さの合計が6μm以上であり、それぞれの厚さが略同じであることが好ましい。
さらに、本発明の第2の解決手段においては、前記Aプレート型位相差層を透過する光の偏光状態を制御する偏光層をさらに備えることが好ましい。
さらに、本発明の第2の解決手段においては、互いに隣接して接合された位相差層の平均屈折率の差が0.05以下であることが好ましい。ここで、好ましくは、互いに隣接して接合された各位相差層に含まれるネマチック液晶成分が実質的に同一であるとよい。
さらに、本発明の第2の解決手段において、前記Aプレート型位相差層は所定のパターンにパターニングされていることが好ましい。また、前記Cプレート型位相差層も所定のパターンにパターニングされていることが好ましい。
本発明は、第3の解決手段として、配向膜上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、Aプレートとして作用するフィルム状のAプレート型位相差層を形成する工程と、形成された前記Aプレート型位相差層上にカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、負のCプレートとして作用するフィルム状のCプレート型位相差層を形成する工程とを含むことを特徴とする、積層位相差光学素子の製造方法を提供する。
なお、本発明の第3の解決手段において、前記Aプレート型位相差層は透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるフィルム状のλ/4位相差層であることが好ましい。
また、本発明の第3の解決手段においては、配向膜上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるフィルム状のλ/2位相差層を形成する工程をさらに含み、前記Aプレート型位相差層を形成する工程において、前記配向膜ではなく前記λ/2位相差層上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、前記Aプレート型位相差層を形成することが好ましい。
また、本発明の第3の解決手段においては、形成された前記Cプレート型位相差層上にカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶をコーティングし、このコーティングされた液晶を架橋することにより、負のCプレートとして作用するフィルム状の追加のCプレート型位相差層を形成する工程をさらに含むことが好ましい。
なお、本発明の第3の解決手段においては、前記Aプレート型位相差層上に前記Cプレート型位相差層を形成する工程において、前記Aプレート型位相差層の表面の配向規制力を用いて前記Cプレート型位相差層を配向させることが好ましい。ここで、前記Aプレート型位相差層の表面にラビング処理を施すことにより当該Aプレート型位相差層の表面に配向規制力を与えるようにしてもよい。また、前記Aプレート型位相差層の表面に追加の配向膜を形成する工程をさらに含み、前記Cプレート型位相差層を形成する工程において、前記追加の配向膜の表面の配向規制力を用いて前記Cプレート型位相差層を配向させるようにしてもよい。なお、前記追加の配向膜の表面の配向規制力の方位角を、当該配向膜へのラビング処理又は当該配向膜の光配向によって具現化するとよい。
また、本発明の第3の解決手段においては、前記λ/2位相差層上に前記Aプレート型位相差層を形成する工程において、前記λ/2位相差層の表面の配向規制力を用いて前記Aプレート型位相差層を配向させることが好ましい。ここで、前記λ/2位相差層の表面にラビング処理を施すことにより当該λ/2位相差層の表面に配向規制力を与えるようにしてもよい。また、前記λ/2位相差層の表面に追加の配向膜を形成する工程をさらに含み、前記Aプレート型位相差層を形成する工程において、前記追加の配向膜の表面の配向規制力を用いて前記Aプレート型位相差層を配向させるようにしてもよい。なお、前記追加の配向膜の表面の配向規制力の方位角を、当該配向膜へのラビング処理又は当該配向膜の光配向によって具現化するとよい。
本発明は、第4の解決手段として、配向膜上にカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、負のCプレートとして作用するフィルム状のCプレート型位相差層を形成する工程と、形成された前記Cプレート型位相差層上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、Aプレートとして作用するフィルム状のAプレート型位相差層を形成する工程とを含むことを特徴とする、積層位相差光学素子の製造方法を提供する。
なお、本発明の第4の解決手段において、前記Aプレート型位相差層は透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるフィルム状のλ/4位相差層であることが好ましい。
本発明は、第5の解決手段として、VA方式の液晶セルと、前記液晶セルを挟むように配置された一対の偏光板と、前記液晶セルと前記一対の偏光板の少なくとも一方との間に配置された、上述した第1の解決手段に係る積層位相差光学素子(λ/4位相差層及びCプレート型位相差層を備えたもの)とを備え、前記Cプレート型位相差層が前記液晶セルに近い方の側にくるように前記積層位相差光学素子が配置されていることを特徴とする液晶表示装置を提供する。
なお、本発明の第5の解決手段においては、前記液晶セルのうち前記積層位相差光学素子が配置されている側とは反対側の位置に、透過する光に四分の一波長分の位相差を与える追加のλ/4位相差層が配置されていることが好ましい。
また、本発明の第5の解決手段においては、前記追加のλ/4位相差層のうち前記液晶セルが配置されている側とは反対側の位置に、前記追加のλ/4位相差層を透過する光の偏光状態を制御する追加の偏光層が配置されていることが好ましい。
ここで、前記追加のλ/4位相差層の進相軸と前記追加の偏光層の透過軸とがなす角度が45±2度(好ましくは45度)であることが好ましい。
さらに、本発明の第5の解決手段においては、前記追加のλ/4位相差層の進相軸と前記積層位相差光学素子に含まれるλ/4位相差層の進相軸とがなす角度が実質的に90度であることが好ましい。
なお、本発明の第5の解決手段において、前記液晶セル内に封入された液晶分子は、電界を印加した際に2つ以上の異なる方向に傾斜することが好ましい。
本発明は、第6の解決手段として、VA方式の液晶セルと、前記液晶セルを挟むように配置された一対の偏光板と、前記液晶セルと前記一対の偏光板の少なくとも一方との間に配置された、上述した第1の解決手段に係る積層位相差光学素子(λ/2位相差層、λ/4位相差層及びCプレート型位相差層を備えたもの)とを備え、前記Cプレート型位相差層が前記液晶セルに近い方の側にくるように前記積層位相差光学素子が配置されていることを特徴とする液晶表示装置を提供する。
なお、本発明の第6の解決手段においては、前記液晶セルのうち前記積層位相差光学素子が配置されている側とは反対側の位置に、透過する光に四分の一波長分の位相差を与える追加のλ/4位相差層が配置され、且つ、前記追加のλ/4位相差層のうち前記液晶セルが配置されている側とは反対側の位置に、透過する光に二分の一波長分の位相差を与える追加のλ/2位相差層が配置されていることが好ましい。
ここで、前記追加のλ/4位相差層の進相軸と前記追加のλ/2位相差層の進相軸とがなす角度が60±10度であることが好ましい。
また、本発明の第6の解決手段においては、前記追加のλ/2位相差層のうち前記液晶セルが配置されている側とは反対側の位置に、前記追加のλ/2位相差層を透過する光の偏光状態を制御する追加の偏光層が配置されている。
ここで、前記追加のλ/2位相差層の進相軸と前記追加の偏光層の透過軸とがなす角度が15±5度(好ましくは15±2度)であることが好ましい。
さらに、本発明の第6の解決手段においては、前記追加のλ/2位相差層の進相軸と前記積層位相差光学素子に含まれるλ/2位相差層の進相軸とがなす角度が実質的に90度であることが好ましい。
なお、本発明の第6の解決手段において、前記液晶セル内に封入された液晶分子は、電界を印加した際に2つ以上の異なる方向に傾斜することが好ましい。
本発明の第1の解決手段によれば、Aプレートとして作用するAプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)と、負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層とを光学的に接合し、且つ、Aプレート型位相差層が架橋されたネマチック液晶からなり、Cプレート型位相差層が架橋されたカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶からなるようにしているので、偏光板を透過することで得られた直線偏光をAプレート型位相差層で円偏光等に変換した上で、Cプレート型位相差層によりVA方式の液晶セルで生じる位相差を相殺することができ、このため、積層位相差光学素子が組み込まれる液晶表示装置のVA方式の液晶セルがいわゆるマルチドメインのVA方式の液晶セルである場合であっても視角依存性を効果的に補償することができる。また、本発明の第1の解決手段によれば、Aプレート型位相差層及びCプレート型位相差層が光学的に接合され、且つ、Aプレート型位相差層及びCプレート型位相差層が架橋された液晶からなっているので、両者の層が積層された積層位相差光学素子の薄膜化が可能であり、且つ、液晶表示装置に組み込んでも積層位相差光学素子の界面反射が原因で生じるコントラストの低下を効果的に抑制することができる。
なお、本発明の第1の解決手段において、Aプレート型位相差層としてのλ/4位相差層のうちCプレート型位相差層の反対側の表面に、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるλ/2位相差層を光学的に接合するようにすれば、λ/2位相差層によりλ/4位相差層での波長分散を効果的に補正して、全体として広帯域なλ/4位相差層を実現することができる。
ここで、λ/2位相差層が架橋されたネマチック液晶からなるようにすれば、コントラストの低下をさらに効果的に抑制することができる。
また、Aプレート型位相差層としてのλ/4位相差層の進相軸とλ/2位相差層の進相軸とがなす角度が60±10度であるようにすれば、λ/4位相差層での波長分散を確実に補正することができる。
さらに、本発明の第1の解決手段において、Cプレート型位相差層の厚さを5μm以下であるようにすれば、Cプレート型位相差層を形成するための液晶層の片側の表面のみを、Aプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)の表面の配向規制力、又はAプレート型位相差層上に形成された配向膜の表面の配向規制力によって配向させた場合でも、Cプレート型位相差層中の液晶分子を良好に配向させることができる。
さらに、本発明の第1の解決手段において、Cプレート型位相差層のうちAプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)の反対側の表面に、負のCプレートとして作用する追加のCプレート型位相差層を光学的に接合し、且つ、この追加のCプレート型位相差層が架橋されたカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶からなり、Cプレート型位相差層及び追加のCプレート型位相差層の厚さの合計が6μm以上であり、それぞれの厚さが略同じであるようにすれば、負のCプレートとしてのCプレート型位相差層により補償する必要があるVA方式の液晶セルのリターデーションが高い場合でも効果的に対応することができる。
さらに、本発明の第1の解決手段において、Aプレート型位相差層としてのλ/4位相差層を透過する光の偏光状態を制御する偏光層を設けるようにすれば、例えば直線偏光を円偏光へ、又は、円偏光を直線偏光へ変換することができ、積層位相差光学素子に所望の偏光作用を与えることができる。
さらに、本発明の第1の解決手段において、Aプレート型位相差層としてのλ/4位相差層とともに用いられるλ/2位相差層を透過する光の偏光状態を制御する偏光層を設けるようにすれば、例えば直線偏光を円偏光へ、又は、円偏光を直線偏光へ変換することができ、λ/4位相差層及びλ/2位相差層により広帯域のλ/4位相差層を実現しながら、積層位相差光学素子に所望の偏光作用を与えることができる。
さらに、本発明の第1の解決手段において、互いに隣接して接合された位相差層の平均屈折率の差が0.05以下であるようにすれば、積層位相差光学素子内の界面反射を防止してコントラストの低下をより効果的に抑制することができる。
ここで、互いに隣接して接合された各位相差層に含まれるネマチック液晶成分が実質的に同一であるようにすれば、上述した効果をより確実に得ることができる。
さらに、本発明の第1の解決手段において、Aプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)(又はλ/2位相差層)を所定のパターンにパターニングするようにすれば、積層位相差光学素子が組み込まれる液晶表示装置において、電界を印加して駆動させる液晶セルに入射する円偏光を、例えば右円偏光と左円偏光といった少なくとも2種類のものにすることができ、これにより、いわゆる3次元ディスプレイを作製することも可能となる。また、Cプレート型位相差層(又は追加のCプレート型位相差層)をAプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)(又はλ/2位相差層)のパターン等に合わせて所定のパターンにパターニングするようにすれば、視角依存性の異なる少なくとも2種類の位相差領域を形成することができ、使用用途に応じた積層位相差光学素子を提供することが可能となる。
本発明の第2の解決手段によれば、正のCプレートとして作用するCプレート型位相差層が、(正の)Aプレートとして作用するAプレート型位相差層の表面に光学的に接合され、Aプレート型位相差層が、水平配向され且つ架橋されたネマチック液晶からなり、Cプレート型位相差層が、垂直配向され且つ架橋されたネマチック液晶からなるようにしているので、液晶表示装置に組み込まれて用いられた場合に、クロスニコル状態の偏光板の法線から傾斜した方向に入射する光の位相シフト量を、Cプレート型位相差層及びAプレート型位相差層で補償することができる。このため、このような積層位相差光学素子が組み込まれた液晶表示装置において、偏光板から洩れてしまう斜め方向の洩れ光をなくし、液晶表示装置の視野角特性を向上させることができる。また、本発明の第2の解決手段によれば、Cプレート型位相差層及びAプレート型位相差層が光学的に接合され、且つ、Cプレート型位相差層及びAプレート型位相差層が架橋された液晶からなっているので、両者の層が積層された積層位相差光学素子の薄膜化が可能であり、且つ、液晶表示装置に組み込んでも積層位相差光学素子の界面反射が原因で生じるコントラストの低下を効果的に抑制することができる。
なお、本発明の第2の解決手段において、Cプレート型位相差層の厚さを5μm以下であるようにすれば、Cプレート型位相差層を形成するための液晶層の片側の表面のみを、Aプレート型位相差層の表面の配向規制力、又はAプレート型位相差層上に形成された配向膜の表面の配向規制力によって配向させた場合でも、Cプレート型位相差層中の液晶分子を良好に配向させることができる。
また、本発明の第2の解決手段において、Cプレート型位相差層のうちAプレート型位相差層の反対側の表面に、正のCプレートとして作用する追加のCプレート型位相差層を光学的に接合し、且つ、この追加のCプレート型位相差層が架橋されたネマチック液晶からなり、Cプレート型位相差層及び追加のCプレート型位相差層の厚さの合計が6μm以上であり、それぞれの厚さが略同じであるようにすれば、正のCプレートとしてのCプレート型位相差層により補償する必要がある位相シフト量が高い場合でも効果的に対応することができる。
さらに、本発明の第2の解決手段において、Aプレート型位相差層を透過する光の偏光状態を制御する偏光層を設けるようにすれば、積層位相差光学素子に所望の偏光作用を与えることができる。
さらに、本発明の第2の解決手段において、互いに隣接して接合された位相差層の平均屈折率の差が0.05以下であるようにすれば、積層位相差光学素子内の界面反射を防止してコントラストの低下をより効果的に抑制することができる。
ここで、互いに隣接して接合された各位相差層に含まれるネマチック液晶成分が実質的に同一であるようにすれば、上述した効果をより確実に得ることができる。
さらに、本発明の第2の解決手段において、Aプレート型位相差層を所定のパターンにパターニングするようにすれば、積層位相差光学素子が組み込まれる液晶表示装置において、電界を印加して駆動させる液晶セルに入射する円偏光を、例えば右円偏光と左円偏光といった少なくとも2種類のものにすることができ、これにより、いわゆる3次元ディスプレイを作製することも可能となる。また、Cプレート型位相差層(又は追加のCプレート型位相差層)をAプレート型位相差層のパターン等に合わせて所定のパターンにパターニングするようにすれば、視角依存性の異なる少なくとも2種類の位相差領域を形成することができ、使用用途に応じた積層位相差光学素子を提供することが可能となる。
本発明の第3の解決手段によれば、配向膜上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、Aプレートとして作用するフィルム状のAプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)を形成し、次いで、形成されたAプレート型位相差層上にカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、負のCプレートとして作用するフィルム状のCプレート型位相差層を形成するようにしているので、Aプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)及びCプレート型位相差層を備えた積層位相差光学素子であって、液晶セルの光学特性の視角依存性を効果的に補償することができる、薄膜で、且つ、界面反射によるコントラストの低下を抑制することが可能な積層位相差光学素子を、高い生産性で製造することができる。
また、本発明の第3の解決手段において、配向膜上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるフィルム状のλ/2位相差層を形成する工程をさらに含み、Aプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)を形成する工程において、配向膜ではなくλ/2位相差層上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、Aプレート型位相差層を形成するようにすれば、λ/2位相差層、Aプレート型位相差層及びCプレート型位相差層を備えた積層位相差光学素子であって、Aプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)での波長分散を効果的に補正することができる積層位相差光学素子が得られる。
さらに、本発明の第3の解決手段において、形成されたCプレート型位相差層上にカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶をコーティングし、このコーティングされた液晶を架橋することにより、負のCプレートとして作用するフィルム状の追加のCプレート型位相差層を形成するようにすれば、負のCプレートとして作用する比較的厚膜なCプレート型位相差層を備えた積層位相差光学素子が得られる。
なお、本発明の第3の解決手段においては、Aプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)上にCプレート型位相差層を形成する工程において、Aプレート型位相差層の表面の配向規制力を用いてCプレート型位相差層を配向させるようにすれば、Aプレート型位相差層上に配向膜を形成することなく積層位相差光学素子を製造することができる。
また、本発明の第3の解決手段においては、λ/2位相差層上にAプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)を形成する工程において、λ/2位相差層の表面の配向規制力を用いてAプレート型位相差層を配向させるようにすれば、λ/2位相差層上に配向膜を形成することなく積層位相差光学素子を製造することができる。
本発明の第4の解決手段によれば、配向膜上にカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、負のCプレートとして作用するフィルム状のCプレート型位相差層を形成し、次いで、形成されたCプレート型位相差層上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、Aプレートとして作用するフィルム状のAプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)を形成するようにしているので、Aプレート型位相差層(好ましくはλ/4位相差層)及びCプレート型位相差層を備えた積層位相差光学素子であって、液晶セルの光学特性の視角依存性を効果的に補償することができる、薄膜で、且つ、界面反射によるコントラストの低下を抑制することが可能な積層位相差光学素子を、高い生産性で製造することができる。
本発明の第5の解決手段によれば、液晶表示装置のVA方式の液晶セルと偏光板との間に、透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるλ/4位相差層及び負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層を備えた積層位相差光学素子を、Cプレート型位相差層が液晶セルに近い方の側にくるように配置し、液晶セルへ入射及び/又は液晶セルから出射された所定の偏光状態の光のうち当該液晶セルの法線から傾斜した方向に出射される光の偏光状態を補償するので、Cプレート型位相差層によりVA方式の液晶セルで生じる位相差を相殺することができ、このため、VA方式の液晶セルがいわゆるマルチドメインのVA方式の液晶セルである場合であっても視角依存性を効果的に補償することができる。また、本発明の第5の解決手段によれば、積層位相差光学素子のλ/4位相差層及びCプレート型位相差層が光学的に接合され、且つ、λ/4位相差層及びCプレート型位相差層が架橋された液晶からなっているので、両者の層が積層された積層位相差光学素子の薄膜化が可能であり、且つ、積層位相差光学素子の界面反射が原因で生じるコントラストの低下を効果的に抑制することができる。
なお、本発明の第5の解決手段において、液晶セルのうち積層位相差光学素子が配置されている側とは反対側の位置に、透過する光に四分の一波長分の位相差を与える追加のλ/4位相差層を配置するようにすれば、一対のλ/4位相差層によりVA方式の液晶セルとCプレート型位相差層とを挟み込むことができ、一方のλ/4位相差層により直線偏光を円偏光へ変換し、さらに、別のλ/4位相差層により円偏光を直線偏光へ変換することが可能となり、円偏光VAモードの液晶表示装置を実現することができる。
また、本発明の第5の解決手段によれば、例えば直線偏光を円偏光へ、又は、円偏光を直線偏光へ変換することができ、積層位相差光学素子に所望の偏光作用を与えてVA方式の液晶セルを光シャッターとして効果的に使用することができる。
さらに、本発明の第5の解決手段において、追加のλ/4位相差層の進相軸と積層位相差光学素子に含まれるλ/4位相差層の進相軸とがなす角度が実質的に90度であるようにすれば、高いコントラストの液晶表示装置が得られる。
なお、本発明の第5の解決手段において、VA方式の液晶セルが、液晶セル内に封入された液晶分子が電界を印加した際に2つ以上の異なる方向に傾斜するものである場合には、液晶セルを透過する光として円偏光を用いることが可能となり、上述した効果をより顕著に得ることができる。
本発明の第6の解決手段によれば、液晶表示装置のVA方式の液晶セルと偏光板との間に、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるλ/2位相差層、透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるλ/4位相差層及び負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層を備えた積層位相差光学素子を、Cプレート型位相差層が液晶セルに近い方の側にくるように配置し、液晶セルへ入射及び/又は液晶セルから出射された所定の偏光状態の光のうち当該液晶セルの法線から傾斜した方向に出射される光の偏光状態を補償するので、Cプレート型位相差層によりVA方式の液晶セルで生じる位相差を相殺することができ、このため、VA方式の液晶セルがいわゆるマルチドメインのVA方式の液晶セルである場合であっても視角依存性を効果的に補償することができる。また、本発明の第5の解決手段によれば、積層位相差光学素子のλ/2位相差層、λ/4位相差層及びCプレート型位相差層が光学的に接合され、且つ、λ/2位相差層、λ/4位相差層及びCプレート型位相差層が架橋された液晶からなっているので、両者の層が積層された積層位相差光学素子の薄膜化が可能であり、且つ、積層位相差光学素子の界面反射が原因で生じるコントラストの低下を効果的に抑制することができる。
なお、本発明の第6の解決手段において、液晶セルのうち積層位相差光学素子が配置されている側とは反対側の位置に、透過する光に四分の一波長分の位相差を与える追加のλ/4位相差層を配置し、且つ、追加のλ/4位相差層のうち液晶セルが配置されている側とは反対側の位置に、透過する光に二分の一波長分の位相差を与える追加のλ/2位相差層を配置するようにすれば、一対のλ/4位相差層によりVA方式の液晶セルとCプレート型位相差層とを挟み込むことで円偏光VAモードの液晶表示装置を実現するとともに、λ/2位相差層によりλ/4位相差層での波長分散を効果的に補正して、全体として広帯域なλ/4位相差層を実現することができる。
ここで、追加のλ/4位相差層の進相軸と追加のλ/2位相差層の進相軸とがなす角度が60±10度であるようにすれば、λ/4位相差層での波長分散を確実に補正することができる。
また、本発明の第6の解決手段において、追加のλ/2位相差層のうち液晶セルが配置されている側とは反対側の位置に、追加のλ/4位相差層とともに用いられるλ/2位相差層を透過する光の偏光状態を制御する追加の偏光層を設けるようにすれば、例えば直線偏光を円偏光へ、又は、円偏光を直線偏光へ変換することができ、λ/4位相差層及びλ/2位相差層により広帯域のλ/4位相差層を実現しながら、積層位相差光学素子に所望の偏光作用を与えてVA方式の液晶セルを光シャッターとして効果的に使用することができる。
さらに、本発明の第6の解決手段において、追加のλ/2位相差層の進相軸と積層位相差光学素子に含まれるλ/2位相差層の進相軸とがなす角度が実質的に90度であるようにすれば、高いコントラストの液晶表示装置が得られる。
なお、本発明の第6の解決手段において、VA方式の液晶セルが、液晶セル内に封入された液晶分子が電界を印加した際に2つ以上の異なる方向に傾斜するものである場合には、液晶セルを透過する光として円偏光を用いることが可能となり、上述した効果をより顕著に得ることができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
まず、図1により、本発明の一実施の形態に係る積層位相差光学素子が組み込まれて用いられる液晶表示装置について説明する。
図1に示すように、液晶表示装置90は、入射側の偏光板102Aと、出射側の偏光板102Bと、液晶セル104とを備えている。
このうち、偏光板102A、102Bは、所定の振動方向の振動面を有する直線偏光のみを選択的に透過させるように構成されたものであり、それぞれの振動方向が相互に直角の関係になるようにクロスニコル状態で対向して配置されている。また、液晶セル104は画素に対応する多数のセルを含むものであり、偏光板102A、102Bの間に配置されている。
ここで、液晶表示装置90において、液晶セル104は、負の誘電異方性を有するネマチック液晶が封止されたVA方式を採用しており、入射側の偏光板102Aを透過した直線偏光は、液晶セル104のうち非駆動状態のセルの部分を透過する際には、位相シフトされずに透過し、出射側の偏光板102Bで遮断される。これに対し、液晶セル104のうち駆動状態のセルの部分を透過する際には、直線偏光が位相シフトされ、この位相シフト量に応じた量の光が出射側の偏光板102Bを透過して出射される。これにより、液晶セル104の駆動電圧を各セル毎に適宜制御することにより、出射側の偏光板102B側に所望の画像を表示することができる。VA方式の液晶セル104は、電界を印加した際に傾斜する液晶分子の方向が複数あるような、いわゆるマルチドメインのVA方式の液晶セルであることが好ましい。
このような構成からなる液晶表示装置90において、入射側の偏光板102Aと液晶セル104との間には積層位相差光学素子10が配置されており、出射側の偏光板102Bと液晶セル104との間にはλ/4位相差板102Cが配置されている。また、積層位相差光学素子10は、透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるλ/4位相差層(Aプレートとして作用するAプレート型位相差層)14と、負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層16とを備えている。なお、λ/4位相差層14により与えられる位相差(リターデーション)は、対象となる光の波長に合わせて適宜設計されるものであり、具体的には例えば、可視光域(400〜800nm)内のうち視感度等を考慮して選択された任意の波長に合わせて設計される。また、積層位相差光学素子10は、図1に示すように、λ/4位相差層14が入射側の偏光板102A側を向き、Cプレート型位相差層16が液晶セル104側を向くように配置されていることが好ましく、これにより、所望の性能を効果的に得ることができる。
ここで、積層位相差光学素子10は、上述したようにλ/4位相差層14を備えているので、VA方式の液晶セル104は、入射側の偏光板102A側に配置された積層位相差光学素子10のλ/4位相差層14と、出射側の偏光板102B側に配置されたλ/4位相差板102Cとに挟まれた状態で駆動される。なお、VA方式の液晶セル104に入射する光が円偏光である液晶ディスプレイ駆動モードは、円偏光VAモードと呼ばれる。
また、積層位相差光学素子10は、上述したように負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層16を備えているので、液晶セル104に入射する光のうち液晶セル104の法線から傾斜した方向に入射する光の偏光状態を補償することができる。
次に、図2により、図1に示す液晶表示装置において積層位相差光学素子10により行われる光学補償の原理について説明する。
ここで、図2は、液晶表示装置90の液晶セル104が非駆動状態である場合における光学補償の原理を模式的に示した図であり、光源(図示せず)から出射された無偏光W1、W2が液晶表示装置90に入射した場合を示す図である。なお、図中、「←→」、「・」はともに直線偏光を示しており、「←→」は直線偏光の電界振動ベクトルが紙面の面内方向を向いている状態、「・」は直線偏光の電界振動ベクトルが紙面に垂直な方向を向いている状態を示している。一方、矢印付きの円は円偏光を示している。
図2において、光源(図示せず)から出射され液晶セル104の法線に沿って入射する無偏光W1は、入射側の偏光板102Aによって「・」方向の直線偏光成分が吸収される一方で、残りの「←→」方向の直線偏光成分が透過し、直線偏光となる。
このような直線偏光は、積層位相差光学素子10のλ/4位相差層14によって円偏光に変換され、積層位相差光学素子10のCプレート型位相差層16及び電界が印加されていない液晶セル104をそのままの偏光状態(円偏光)で透過する。
そして、このようにして液晶セル104を透過した円偏光は、λ/4位相差板102Cによって「←→」方向の直線偏光に変換され、「・」方向の直線偏光成分のみを透過する出射側の偏光板102Bによって遮断される。
一方、液晶セル104の法線から傾斜した方向に入射する無偏光W2は、入射側の偏光板102Aによって「・」方向の直線偏光成分が吸収される一方で、「←→」方向の直線偏光成分が透過し、直線偏光となる。
このような直線偏光は、積層位相差光学素子10のλ/4位相差層14によって円偏光に変換されるが、VA方式の液晶セル104は正のCプレートとして作用するので、液晶セル104の法線から傾斜した方向に入射した光は液晶セル104を透過する際に位相差が生じて楕円偏光となる。
しかしながら、図2に示す液晶表示装置90では、積層位相差光学素子10のCプレート型位相差層16により、電界が印加されていない液晶セル104が正のCプレートとして作用することに起因する位相シフト量を予め減じた楕円偏光としているので、電界が印加されていない液晶セル104を透過した時点では円偏光に戻る。
このため、このようにして液晶セル104を透過した円偏光は、液晶セル104の法線に沿って無偏光W1が入射する場合と同様に、λ/4位相差板102Cによって「←→」方向の直線偏光に変換され、「・」方向の直線偏光成分のみを透過する出射側の偏光板102Bによって遮断される。
以上のとおり、図1及び図2に示す液晶表示装置90によれば、入射側の偏光板102Aと液晶セル104との間に積層位相差光学素子10を配置し、液晶セル104で生じる位相シフト(リターデーション)を光学的に補償しているので、液晶セル104の法線から傾斜した方向に出射された光の一部が出射側の偏光板102Bから洩れてしまうことを防止し、液晶表示装置90の視角依存性の問題を改善して視野角特性を向上させることができる。
なお、図1及び図2に示す液晶表示装置90は、光が厚さ方向の一方の側から他方の側へ透過する透過型であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、上述した実施の形態に係る積層位相差光学素子10を反射型の液晶表示装置や半透過型(反射/透過両用型)の液晶表示装置に組み込んで用いることもできる。
また、図1及び図2に示す液晶表示装置90では、上述した実施の形態に係る積層位相差光学素子10を液晶セル104と入射側の偏光板102Aとの間に配置しているが、光学補償の態様によっては、積層位相差光学素子10を液晶セル104と出射側の偏光板102Bとの間に配置してもよい。また、積層位相差光学素子10を液晶セル104の両側(液晶セル104と入射側の偏光板102Aとの間、及び液晶セル104と出射側の偏光板102Bとの間)に配置してもよい。なお、液晶セル104と入射側の偏光板102Aとの間、又は液晶セル104と出射側の偏光板102Bとの間に配置される積層位相差光学素子は一つに限らず、複数配置されていてもよい。
次に、図3(A)により、図1に示す液晶表示装置90に組み込まれて用いられる積層位相差光学素子10の構成について説明する。
図3(A)に示すように、積層位相差光学素子10は、透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるλ/4位相差層(第1の位相差層)14と、負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層(第2の位相差層)16とを備えている。なお、λ/4位相差層14及びCプレート型位相差層16は、透明基板12上にこの順番で順に積層されており、λ/4位相差層14及びCプレート型位相差層16は互いに光学的に接合されている。
なお、図3(A)に示す積層位相差光学素子10では、透明基板12上にλ/4位相差層14及びCプレート型位相差層16がこの順番で順に積層されているが、これに限らず、図3(B)に示す積層位相差光学素子10′のように、透明基板12上にCプレート型位相差層16及びλ/4位相差層14がこの順番で順に積層されていてもよい。
ここで、λ/4位相差層14は、水平配向され且つ架橋されたネマチック液晶を主成分とし、Cプレート型位相差層16は架橋されたカイラルネマチック液晶(架橋されたネマチック液晶及び架橋されたカイラル剤)又は架橋されたディスコチック液晶を主成分としている。
なお、ネマチック液晶の材料としては、3次元架橋可能な液晶性モノマー又は液晶性オリゴマーを用いることができ、このネマチック液晶に任意のカイラル剤を数%〜10%程度添加すれば、カイラルネマチック液晶(コレステリック液晶)となる。ここで、「3次元架橋」とは、液晶性モノマー又は液晶性オリゴマーを互いに3次元的に重合して、網目(ネットワーク)構造の状態にすることを意味する。このような状態にすることにより、液晶分子をコレステリック構造又はネマチック構造の状態に保持したままで光学的に固定することができ、光学膜としての取り扱いが容易な、常温で安定したフィルム状の膜とすることができる。
ここで、3次元架橋可能なモノマー分子としては、例えば特開平7−258638号公報や特表平10−508882号公報、特開2003−167126号公報、特開2003−185827号公報で開示されているような、液晶性モノマー及びキラル化合物の混合物を用いることができる。より具体的な例を示すと、例えば一般化学式(1)〜(11)、(11−2)に示されるような液晶性モノマーを用いることができる。なお、一般化学式(11)で示される液晶性モノマーの場合には、Xは2〜5(整数)であることが好ましい。
また、カイラル剤としては、例えば一般化学式(12)〜(14)、(14−2)に示されるようなカイラル剤を用いることができる。なお、一般化学式(12)、(13)で示されるカイラル剤の場合、Xは2〜12(整数)であることが好ましく、また、一般化学式(14)で示されるカイラル剤の場合、Xは2〜5(整数)であることが望ましい。なお、一般化学式(12)において、R
4は水素又はメチル基を示す。
一方、3次元架橋可能なオリゴマー分子としては、例えば特開昭57−165480号公報で開示されているような、コレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等が望ましい。
ここで、λ/4位相差層14を構成するネマチック液晶は、ネマチック規則性の構造に起因して、Aプレートとして作用する複屈折性を有しており、液晶分子のダイレクターの方向の屈折率と、ダイレクターに垂直な方向の屈折率とが異なる。即ち、λ/4位相差層14は面方向に光軸を有し、3次元直交座標系で、λ/4位相差層14の面方向の屈折率をNx、Ny、厚さ方向の屈折率をNzとすると、Nx>Ny=Nzの関係となっている。従って、面に沿う方向でも、液晶分子のダイレクターの方向の屈折率(例えばNx)と、ダイレクターに垂直な方向の屈折率(例えばNy)とは異なる。なお、面に沿うダイレクターに垂直な方向の屈折率(例えばNy)と、厚さ方向の屈折率Nxとは等しい。
これに対し、Cプレート型位相差層16を構成するコレステリック液晶は、コレステリック規則性の構造に起因して、負のCプレートとして作用する複屈折性を有しており、厚さ方向の屈折率と面方向の屈折率とが異なる。即ち、Cプレート型位相差層16は厚さ方向に光軸を有し、3次元直交座標系で、Cプレート型位相差層16の面方向の屈折率をNx、Ny、厚さ方向の屈折率をNzとすると、Nx=Ny>Nzの関係となっている。従って、積層位相差光学素子10の法線から傾斜した方向に透過する円偏光には位相差を生じさせて楕円偏光とし、逆に、法線から傾斜した方向に透過する楕円偏光を円偏光とすることが可能である。なお、法線の方向に透過する円偏光には位相差を生じさせることなく円偏光としてそのまま透過させる。
本実施の形態に係る積層位相差光学素子10は、このような、複屈折の態様が方向的に異なる2種類の位相差層(Aプレートとして作用するλ/4位相差層14及び負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層16)が併用されて構成されているので、各々の位相差層で異なる位相シフトが可能であるとともに、各々の位相差層の相乗効果によって、液晶セル104によって生じる光学特性の変化(位相シフト等)を極めて効果的に補償することができる。
しかも、積層位相差光学素子10は、λ/4位相差層14、Cプレート型位相差層16の主成分をそれぞれ、架橋されたネマチック液晶、架橋されたカイラルネマチック液晶(架橋されたネマチック液晶及び架橋されたカイラル剤)又は架橋されたディスコチック液晶としたので、十分な強度、耐熱性及び耐衝撃性を備えたものとすることができ、100℃以上の厳しい環境においても使用可能で、また、積層する場合にもλ/4位相差層14及びCプレート型位相差層16の層間で混じり合うことがなく、高い光学特性を得ることができる。
なお、積層位相差光学素子10において、カイラルネマチック液晶からなるCプレート型位相差層16はその厚さが5μm以下であることが好ましい。これは、Cプレート型位相差層16の厚さが5μmよりも厚くなると、Cプレート型位相差層16に配向不良が発生しやすくなるからである。
次に、図4(A)(B)(C)により、図3(A)に示す積層位相差光学素子10の変形例について説明する。
まず、図4(A)に示す積層位相差光学素子10Aについて説明する。
図4(A)に示す積層位相差光学素子10Aは、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるλ/2位相差層26をさらに備えるものである。なお、λ/2位相差層26は、λ/4位相差層14のうちCプレート型位相差層16の反対側の表面に光学的に接合されている。なお、λ/4位相差層14は、入射した直線偏光を円偏光に変換し、又は、その逆に円偏光を直線偏光に変換する作用を備えており、一方、λ/2位相差層26は、偏光の極性を反転する作用を備えている。なお、λ/2位相差層26により与えられる位相差(リターデーション)は、対象となる光の波長に合わせて適宜設計されるものであり、具体的には例えば、可視光域(400〜800nm)内のうち視感度等を考慮して選択された任意の波長に合わせて設計される。
ここで、λ/2位相差層26は、水平配向され且つ架橋されたネマチック液晶を主成分としている。
また、λ/4位相差層14及びλ/2位相差層26は、図4(C)に示すように、λ/4位相差層14の進相軸L1とλ/2位相差層26の進相軸L2とがなす角度θ1が60±10度であることが好ましい。このようにすることにより、λ/4位相差層14及びλ/2位相差層26が積層された積層体により、広帯域なλ/4位相差層が得られる。なお、λ/4位相差層14の進相軸L1とλ/2位相差層26の進相軸L2とがなす角度θ1の具体的な値については、上記特許文献6に記載されているような所望の波長範囲から選択することが可能であり、例えば、短波長側の特性が重視される場合は、60±10度よりも55±10度の方が好ましく用いられる。
このように、図4(A)に示す積層位相差光学素子10Aによれば、λ/4位相差層14に対して所定の角度で接合されたλ/2位相差層26により、結果的に、λ/4位相差層14の有する波長分散の影響を最小限に抑え、全体として広帯域のλ/4位相差層を得ることができる。
次に、図4(B)に示す積層位相差光学素子10Bについて説明する。
図4(B)に示す積層位相差光学素子10Aは、Cプレート型位相差層16と同様に負のCプレートとして作用する追加のCプレート型位相差層28をさらに備えるものである。なお、追加のCプレート型位相差層28は、Cプレート型位相差層16のうちλ/4位相差層14の反対側の表面に光学的に接合されている。
ここで、追加のCプレート型位相差層28は、Cプレート型位相差層16と同様に、架橋されたカイラルネマチック液晶(架橋されたネマチック液晶及び架橋されたカイラル剤)又は架橋されたディスコチック液晶を主成分としている。
なお、Cプレート型位相差層16及び追加のCプレート型位相差層28はそれぞれ、その厚さh1、h2が5μm以下であることが好ましい。これは、Cプレート型位相差層16及び追加のCプレート型位相差層28の厚さh1、h2が5μmよりも厚くなると、それぞれに配向不良が発生しやすくなるからであり、また、その上層にCプレート型位相差層28が積層されるCプレート型位相差層16の表面の配向規制力も弱まるからである。
また、Cプレート型位相差層16及び追加のCプレート型位相差層28はその厚さの合計(h1+h2)が6μm以上であることが好ましい。このようにすることにより、Cプレート型位相差層16及び追加のCプレート型位相差層28により行われる光学補償の効果を有効に得ることができる。
さらに、Cプレート型位相差層16及び追加のCプレート型位相差層28はそれぞれの厚さが略同じであることが好ましい。このようにすることにより、積層位相差光学素子10の生産が容易となり、生産性の向上を図ることができる。
このように、図4(B)に示す積層位相差光学素子10Bによれば、Cプレート型位相差層16及び追加のCプレート型位相差層28のそれぞれの厚さを抑えつつ、Cプレート型位相差層の全体の厚さを大きくすることができるので、配向不良が発生を防止しつつ、光学補償の効果を有効に得ることができる。
なお、図4(B)に示す積層位相差光学素子10Bは、図3(A)に示すような積層位相差光学素子10を前提としたものであるが、図3(B)に示すような積層位相差光学素子10′や、図4(A)に示すような積層位相差光学素子10Aにも同様にして追加のCプレート型位相差層28を設けることが可能である。
次に、図5に示す積層位相差光学素子20について説明する。
図5に示す積層位相差光学素子20は、図3(A)に示すような積層位相差光学素子10において、透明基板12のうちλ/4位相差層14の反対側の表面に直線偏光層等の偏光層52が接合されたものである。このようにすることにより、積層位相差光学素子20に直線偏光作用等の所望の偏光作用を与えることができる。
ここで、このような積層位相差光学素子20においては、図6(A)に示すように、λ/4位相差層14の進相軸L3と、λ/4位相差層14を透過する光の偏光状態を制御する偏光層52の透過軸L4とがなす角度θ2が45±2度であることが好ましい。
なお、図5に示す積層位相差光学素子20は、図3(A)に示すような積層位相差光学素子10を前提としたものであるが、図3(B)に示すような積層位相差光学素子10′や、図4(A)(B)に示すような積層位相差光学素子10A、10Bにも同様にして偏光層52を設けることが可能である。
この場合、図4(A)に示すような積層位相差光学素子10Aにおいて、透明基板12のうちλ/2位相差層26の反対側の表面に偏光層52を接合する場合には、図6(B)に示すように、λ/2位相差層26の進相軸L5と、λ/2位相差層26を透過する光の偏光状態を制御する偏光層52の透過軸L4とがなす角度θ3が15±5度であることが好ましい。
次に、図7(A)(B)に示す積層位相差光学素子30A、30Bについて説明する。
図3(A)(B)、図4(A)(B)及び図5に示す積層位相差光学素子10、10′、10A、10B、20においては、Aプレートとして作用するλ/4位相差層14上に光学的に接合される位相差として、負のCプレートとして作用するCプレート型位相差層16を用いているが、図1に示すような液晶表示装置90においてクロスニコル状態で用いられる偏光板102A、102Bにおける斜め方向の洩れ光を防止するため、Cプレート型位相差層16の代わりに、正のCプレートとして作用するCプレート型位相差層16′を用いるようにしてもよい。
具体的には、図7(A)に示す積層位相差光学素子30Aは、Aプレートとして作用するAプレート型位相差層14′と、正のCプレートとして作用するCプレート型位相差層16′とを備えており、両者が互いに光学的に接合されている。ここで、Aプレート型位相差層14′は、水平配向され且つ架橋されたネマチック液晶を主成分とするものであり、その水平配向されたネマチック規則性の構造に起因して、面方向に光軸(遅相軸)(図7(B)の符号L7参照)を有するAプレートとして作用する。一方、Cプレート型位相差層16′は、垂直配向され且つ架橋されたネマチック液晶を主成分とするものであり、その垂直配向されたネマチック規則性の構造に起因して、厚さ方向に光軸(遅相軸)(図7(A)の符号L6参照)を有する正のCプレートとして作用する。なお、正のCプレートとして作用するCプレート型位相差層16′は厚さ方向に光軸を有し、3次元直交座標系で、Cプレート型位相差層16′の面方向の屈折率をNx、Ny、厚さ方向の屈折率をNzとすると、Nx=Ny<Nzの関係となっている。
なお、図7(A)に示す積層位相差光学素子30Aでは、透明基板12上にAプレート型位相差層14′及びCプレート型位相差層16′がこの順番で順に積層されているが、これに限らず、図7(B)に示す積層位相差光学素子30Bのように、透明基板12上にCプレート型位相差層16′及びAプレート型位相差層14′がこの順番で順に積層されていてもよい。
また、図7(A)に示す積層位相差光学素子30Aにおいて、Cプレート型位相差層16′が積層されるAプレート型位相差層14′は、(正)のAプレートとして作用するものであればよく、透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるλ/4位相差層や、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるλ/2位相差層等の各種の層を用いることができる。なお、λ/4位相差層及びλ/2位相差層により与えられる位相差(リターデーション)は、対象となる光の波長に合わせて適宜設計されるものであり、具体的には例えば、可視光域(400〜800nm)内のうち視感度等を考慮して選択された任意の波長に合わせて設計される。
このように、図7(A)(B)に示す積層位相差光学素子30A、30Bによれば、正のCプレートとして作用するCプレート型位相差層16′が、層の厚さ方向に光軸(遅相軸)を有するように配向された一軸複屈折層として構成され、(正の)Aプレートとして作用するAプレート型位相差層14′の表面に光学的に接合されているので、図1に示すような液晶表示装置90に組み込まれた用いられた場合に、クロスニコル状態の偏光板102A、102Bの法線から傾斜した方向に入射する光の位相シフト量を、Cプレート型位相差層16′及びAプレート型位相差層14′で補償することができる。このため、このような積層位相差光学素子30A、30Bが組み込まれた液晶表示装置90において、偏光板102A、102Bから洩れてしまう斜め方向の洩れ光をなくし、液晶表示装置90の視野角特性を向上させることができる。
次に、図8(A)(B)(C)に示す積層位相差光学素子40A、40B、40Cについて説明する。
図8(A)(B)(C)に示すように、積層位相差光学素子40A、40B、40Cは、図3(A)(B)及び図4(A)(B)に示すような積層位相差光学素子10、10′、10A、10Bにおいて、透明基板12上に積層されるλ/4位相差層14、Cプレート型位相差層16、28及びλ/2位相差層26を、液晶表示装置90の画素領域に対応する所定のパターンにパターニングしたものである。
このようにしてλ/4位相差層14又はλ/2位相差層26をパターニングすることにより、積層位相差光学素子40A、40B、40Cが組み込まれる液晶表示装置90において、電界を印加して駆動させる液晶セル104に入射する円偏光を、例えば右円偏光と左円偏光といった少なくとも2種類のものにすることができ、これにより、いわゆる3次元ディスプレイを作製することも可能となる。
また、Cプレート型位相差層16、28をパターニングすることにより、視角依存性の異なる少なくとも2種類の位相差領域を形成することができ、使用用途に応じた積層位相差光学素子を提供することが可能となる。
なお、図3(A)(B)及び図4(A)(B)に示すような積層位相差光学素子10、10′、10A、10B、図5に示すような積層位相差光学素子20、図7(A)(B)に示すような積層位相差光学素子30A、30B、及び、図8(A)(B)(C)に示すような積層位相差光学素子40A、40B、40Cにおいて、互いに隣接して接合された位相差層(λ/4位相差層14、Cプレート型位相差層16、16′、28、λ/2位相差層26)の平均屈折率の差は0.05以下であることが好ましい。これにより、積層位相差光学素子10、10A、10B、20、30A、30B、40A、40B、40C内の界面反射を効果的に防止して、図1に示すような液晶表示装置90に組み込んで用いられる場合のコントラストの低下を効果的に抑制することができる。
ここで、互いに隣接して接合された各位相差層(λ/4位相差層14、Cプレート型位相差層16、16′、28、λ/2位相差層26)に含まれるネマチック液晶成分が実質的に同一であるようにすれば、上述した効果をより確実に得ることができる。
次に、このような構成からなる本実施の形態に係る積層位相差光学素子の製造方法について、図3(A)に示す積層位相差光学素子10を製造する場合を例に挙げて説明する。
最初に、透明基板12上に配向膜18を形成する(図9(A))。ここで、透明基板12としては、ガラスや石英等の板状の無機材料の他、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリイミド、ポリエチレン等の各種の樹脂を用いることができる。また、配向膜18は、透明基板12の表面に積層されるものであり、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリビニルアルコール等の高分子膜を用いることができる。
次に、このようにして形成された配向膜18の表面18aにラビング処理等を施して配向させる(図9(B))。なお、このようにしてラビング処理等が施された配向膜18は、その表面18a近傍の分子が概略一方向に揃うとともに、その表面18aに微細な溝が一方向(図中のH1方向)に形成され、この表面18aに接触する液晶分子を配向させる。
その後、このようにしてラビング処理等が施された配向膜18上に、重合性モノマー分子又は重合性オリゴマー分子等を材料とした架橋可能なネマチック液晶をコーティングし(図9(C))、この重合性モノマー分子又は重合性オリゴマー分子等を、予め添加しておいた光重合開始剤と外部から照射した紫外線とによって重合を開始させるか、又は電子線で直接重合を開始させ、3次元架橋(ポリマー化)して固化すれば、透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるフィルム状のλ/4位相差層14が形成される(図9(D))。このとき、λ/4位相差層14中の液晶分子は配向膜18の表面18aが有する配向規制力によって図中のH1方向に配向される。なお、配向膜18の表面の配向規制力の方向を配向膜18の表面18aの全範囲で実質的に一致させておけば、これと接触するλ/4位相差層14の表面における液晶分子のダイレクターの方向を、その表面内で実質的に一致させることができる。なお、λ/4位相差層14のリターデーションRは、R=Δn・d(Δn:複屈折値、d:厚さ)として表されるので、λ/4位相差層14の厚さdによってリターデーションRを調整することができる。具体的には例えば、λ/4位相差層14の複屈折値Δnが0.1である場合に100nmのリターデーションRが必要であれば、λ/4位相差層14の厚さdを1μmとすればよい。
次に、このようにして形成されたλ/4位相差層14上に、重合性モノマー又は重合性オリゴマー等を材料とした架橋可能なカイラルネマチック液晶(架橋可能なネマチック液晶及びカイラル剤)又はディスコチック液晶をコーティングし(図9(F))、上述したλ/4位相差層14の場合と同様の手法により3次元架橋して固化すれば、負のCプレートとして作用するフィルム状のCプレート型位相差層16が形成される(図9(G))。このとき、Cプレート型位相差層16中の液晶分子は、λ/4位相差層14の表面14aが有する配向規制力によって図中のH2方向に配向される。
なお、λ/4位相差層14及びCプレート型位相差層16を形成するための重合性モノマー分子又は重合性オリゴマー分子は、コーティングし易いように粘度を低下させるため、必要に応じて、トルエン等の溶媒に溶かしたコーティング液としてもよい。ただし、この場合には、紫外線や電子線を照射して3次元架橋する前に溶媒を蒸発させるための乾燥工程が必要となる。
以上により、λ/4位相差層14及びCプレート型位相差層16が互いに光学的に接合された積層位相差光学素子10が容易に製造される。しかも、λ/4位相差層14の表面14aの配向規制力を用いてCプレート型位相差層16中の液晶分子を配向させることができるので、生産性を向上させることができる。
ここで、λ/4位相差層14の表面14a自体の配向規制力が弱い場合には、λ/4位相差層14の表面14aにラビング処理を施して当該λ/4位相差層14の表面14aに配向規制力を与えるようにしてもよい。
また、図10(D′)〜(G)に示すように、λ/4位相差層14の表面14aに配向膜19を成膜した後(図9(D′))、この配向膜19の表面19aにラビング処理等を施して図中のH2方向に配向させ、この配向膜19の表面19aが有する配向規制力を用いてCプレート型位相差層16中の液晶分子を配向させるようにしてもよい(図9(E)(F)、(G))。
なお、以上においては、配向膜18、19の表面18a、19a及びλ/4位相差層14の表面14aの配向規制力の方位角をラビング処理によって具現化したが、本発明はこれに限定されるものではなく、光配向によって具現化してもよい。なおここで、「光配向」とは、アドベンゼン系ポリマーやポリビニルシンナメート等の光活性分子を含む光配向膜の表面に、光化学反応を起こす波長の直線偏光や斜め無偏光を照射して異方性を生成させるものであり、入射した光によって光配向膜の最表面の分子長軸の配向が生成され、この最表面の分子に接触する液晶分子を配向させる。
なお、以上においては、透明基板12上に形成された配向膜18上にて、最初にネマチック液晶からなるλ/4位相差層14を形成した後、このλ/4位相差層14上にカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶からなるCプレート型位相差層16を形成するようにしているが、本発明はこれに限定されるものでなく、最初にカイラルネマチック液晶又はディスコチック液晶からなるCプレート型位相差層16を形成した後、このCプレート型位相差層16上にネマチック液晶からなるλ/4位相差層14を形成するようにしてもよい。なお、この場合には、Cプレート型位相差層16上にネマチック液晶を直接コーティングしたり、配向膜を介してネマチック液晶をコーティングすることにより、λ/4位相差層14のCプレート型位相差層16側の表面における液晶分子のダイレクターの方向をCプレート型位相差層16の表面の配向規制力又は配向膜の表面の規制力によって規制した状態でネマチック液晶を固化させることとなる。なお、このような製造方法におけるその他の手順及び条件等は、上述した製造方法の場合と基本的に同様であるので、詳細な説明は省略する。
また、以上においては、図3(A)に示す積層位相差光学素子10を製造する方法を例に挙げて説明したが、これに限らず、図3(B)、図4(A)(B)、図5、図7(A)(B)及び図8(A)(B)(C)に示す積層位相差光学素子10′、10A、10B、20、30A、30B、40A、40B、40Cについても同様の手法により製造することができる。
具体的には例えば、図4(A)に示す積層位相差光学素子10Aを製造する場合には、透明基板12上に形成された配向膜上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるフィルム状のλ/2位相差層26を形成した後、この形成されたλ/2位相差層26上にネマチック液晶をコーティングし、当該液晶を架橋することにより、透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるフィルム状のλ/4位相差層14を形成する。このとき、λ/4位相差層14中の液晶分子はλ/2位相差層26の表面が有する配向規制力によって配向される。
ここで、λ/2位相差層26の表面の配向規制力が弱い場合には、λ/2位相差層26の表面にラビング処理を施して当該λ/2位相差層26の表面に配向規制力を与えるようにしてもよい。また、λ/2位相差層26の表面に配向膜を成膜した後、この配向膜の表面にラビング処理等を施して配向させ、この配向膜の表面が有する配向規制力を用いてλ/4位相差層14中の液晶分子を配向させるようにしてもよい。なお、λ/2位相差層26の表面の配向規制力の方位角をラビング処理によって具現化したが、これ以外にも、光配向によって具現化してもよい。
また、図4(B)に示す積層位相差光学素子10Bを製造する場合には、形成されたCプレート型位相差層16上に、さらに、カイラルネマチック液晶(架橋可能なネマチック液晶及びカイラル剤)又はディスコチック液晶をコーティングし、3次元架橋して固化することにより、負のCプレートとして作用するフィルム状のCプレート型位相差層28を形成する。
なお、上述した実施の形態に係る積層位相差光学素子10(10A、10B、20、30A、30B、40A、40B、40C)は、上述したように、図1に示すような液晶表示装置90に組み込んで用いることができる。
この場合、図1に示すように、液晶セル104のうち積層位相差光学素子10が配置されている側とは反対側の位置に、透過する光に四分の一波長分の位相差を与えるλ/4位相差板(追加のλ/4位相差層)102Cが配置されている。また、λ/4位相差板102Cのうち液晶セル104が配置されている側とは反対側の位置に、偏光板(追加の偏光層)102Bが配置されている。さらに、必要に応じて、λ/4位相差板102Cのうち液晶セル104が配置されている側とは反対側の位置(λ/4位相差板102Cと偏光板102Bとの間の位置)に、透過する光に二分の一波長分の位相差を与えるλ/2位相差板(追加のλ/2位相差層)102Dが配置されている。
ここで、λ/2位相差板102Dが配置されている場合には、λ/4位相差板102Cの進相軸とλ/2位相差板102Dの進相軸とがなす角度は60±10度であることが好ましい。なお、λ/4位相差板102Cの進相軸とλ/2位相差板102Dの進相軸とがなす角度の具体的な値については、前記特許文献6に記載されているような所望の波長範囲から選択することが可能であり、例えば、短波長側の特性が重視される場合は、60±10度よりも55±10度の方が好ましい。また、λ/4位相差板102Cの進相軸と偏光板102Bの透過軸とがなす角度は45±2度であることが好ましい。さらに、λ/2位相差板102Dの進相軸と偏光板102Bの透過軸とがなす角度は15±5度であることが好ましい。
なお、このような液晶表示装置90において、λ/4位相差板102Cの進相軸と積層位相差光学素子10に含まれるλ/4位相差層14の進相軸とがなす角度は実質的に90度であることが好ましい。また、λ/2位相差板102Dが配置され、且つ、積層位相差光学素子10として、図4(A)に示すようにλ/2位相差層26を備えた積層位相差光学素子10Aが用いられる場合には、λ/2位相差板102Dの進相軸と積層位相差光学素子10A含まれるλ/2位相差層26の進相軸とがなす角度は実質的に90度であることが好ましい。これにより、これにより、最初に通過したλ/4位相差層14又はλ/2位相差層26で変換された不完全な円偏光が次のλ/4位相差板102C又はλ/2位相差板102Dで相殺されることとなり、コントラストの向上を図ることができる。