JP4186515B2 - ドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムに関し、特に、透明性と滑り性に優れたポリエステルフィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
フォトレジスト、とくにドライフイルムフォトレジストにおいては、光透過性の基材フイルムの片面に感光性樹脂組成物を積層し、その上にポリエチレン等からなるカバーフイルムを設けたものが用いられる。フォトレジストに際しては、先ずカバーフイルムが除去され、露出された感光性樹脂組成物面がプリント配線板作製用基体等の対象物上に貼着される。この状態で、基材フイルム上にネガフイルムを密着させ、該ネガフイルム側から基材フイルムを透過させるように紫外線等の活性光線を照射し、感光性樹脂組成物を所定のパターンに露光させる。露光後に、ネガフイルムを除去するとともに、基材フイルムを剥離除去し、感光性樹脂組成物の硬化していない未露光部分を溶剤等によって除去することにより、基体上に目標とするパターンが形成される。従って、この基材フィルムとして用いられるポリエステルフィルムは、透明性が高く、ヘーズ値が低いことが要求される。フォトレジスト層を露光する場合、光は基材フィルムを通過するので、基材フィルムの透明性が低いと、フォトレジスト層が十分に露光されなかったり、光が散乱したりして、解像度が悪化するなどの問題が生ずる。このようなドライフォトレジストにおいて、近年、プリント配線板の回路の微細化等により、益々高解像度化が求められており、これに伴い基材フィルムとして使用されるポリエステルフィルムに対しても透明性の一層の向上が求められている。
【0003】
一方、基材フイルム製造面からみると、製膜性はもちろんのこと、フイルム製造メーカーから出荷される際の形態である巻取ロールに巻き取る際の巻き性、基材フィルムに感光性樹脂組成物を積層する等の製造工程での取扱い性あるいはフォトレジストフィルム自身の取扱い性などが重要である。これらの性能が劣ると、フイルムにしわが発生するなどの不具合が生じ、フォトレジスト用基材フイルムとしては致命的な問題となる。従って基材フィルムのポリエステルフィルムは、適度な滑り性を有していることが必要となる。
【0004】
従来、これらの両方の特性を満足せしめるために、ポリエステルフィルム中に無機又は有機の粒子を含有させ、フィルム表面に突起を形成させる方法が用いられている。
【0005】
例えば、特開平7−333853号公報には、少なくとも片側の最外層に、平均粒径0.01〜3.0μmの粒子(球状または不定形シリカ粒子、球状架橋高分子粒子等)を含有し、該最外層表面のRaが0.005μm以上、Rtが1.5μm未満であり、かつフィルムヘーズが1.5%以下であるフォトレジスト用二軸配向積層ポリエステルフィルムが提案されている。また特開平10−46012号公報には平均粒径が0.01〜0.1μmの一次粒子の凝集体であって、細孔容積が0.5〜2.0ml/g、平均粒径が0.1〜5μmの多孔質シリカ粒子を0.01〜0.1重量%含有し、該多孔質シリカ粒子のうち50μm以上の大きさの粗大凝集粒子の個数が10個/m2 以下であることを特徴とするフォトレジスト用ポリエステルフイルムが開示されている。
【0006】
しかしながら、これらのポリエステルフィルムでは、十分な取扱い性が得られる程度に粒子を添加すると、粒子自体の光散乱性、あるいはフィルム製膜時に発生するボイド等が阻害因子となり透明性が低下し、解像度が低下するという問題がある。フィルム製膜時に発生するボイドの改良手段については特開2000−275860号公報に開示されている様に凝集粒子を使用することも提案されているが、実質的に十分な取扱い性を付与させるためには所定の粒径の粒子を相当量添加する必要があり、このため粒子自体の光散乱を抑制しきれず、効果的に透明性と滑り性を十分に両立することができていない。また特開2001−117237号公報で、少なくとも2種類のポリエステル組成物が積層されてなり、不活性粒子の平均粒径、添加量を規定した二軸配向積層ポリエステルフィルムが開示されているが、本手法も実質的に粒子を添加することのみにより透明性と取扱い性を両立させようとするものであり、透明性を向上させた場合に良好な取扱い性を付与することは自ずと限界があり、取扱い性と透明性を効果的に満足させることはできていない。以上の通り、ドライフォトレジスト用フィルムとして滑り性等の取扱い性と透明性を効果的に、かつ高度に満足するための優れたポリエステルフィルムを得る方法は未だ見出されていないのが現状である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、透明性、滑り性および取扱い性を同時に満足するフォトレジスト用フィルムとして優れたポリエステルフィルムを提供することを課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため本発明のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムは主として次の構成を有する。すなわち、
エチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルからなるフィルムであって、少なくとも片面の最外層にステアリルステアレートを0.03〜1重量%含有してなるポリエステル層が設けられており、フィルムの融点が220〜270℃、フィルムヘイズが1%以下であることを特徴とするドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムである。
【0009】
また、本発明のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムにおいては、ステアリルステアレートをポリエステルの重合時に添加することによって、少なくとも片面の最外層にステアリルステアレートを含有せしめたこと、フィルム長手方向と幅方向の平均引裂き伝播抵抗が4000〜6000mN/mmであること、少なくとも片面の水との接触角が70〜85°であること、少なくとも片面の動摩擦係数が0.8以下であることが好ましい態様として含まれる。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムは、エチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルからなるものである。
【0011】
本発明におけるエチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルとは、80モル%以上をエチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位とするポリエステルであり、耐熱性等の点から85モル%以上であることが好ましく、さらには90モル%以上であることが好ましい。
【0012】
また、他のジカルボン酸成分および/またはグリコ−ル成分を共重合してもよく、ジカルボン酸成分としては、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマ−酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸等を使用することができる。一方、グリコ−ル成分としては、例えば、プロパンジオ−ル、ブタンジオ−ル、ペンタンジオ−ル、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール等が使用できる。なお、これらのジカルボン酸成分、グリコ−ル成分は2種以上を併用することもできる。
【0013】
また、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、本発明で用いられるポリエステルまたは共重合ポリエステルに、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメチロ−ルプロパン等の多官能化合物を共重合することもできる。
【0014】
本発明で、好ましく少量共重合される成分は、ブタンジオール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、セバシン酸、アジピン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の成分である。
【0015】
本発明のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルムの融点を230〜270℃、好ましくは240〜270℃、より好ましくは250〜270℃とするものである。フィルムの融点が230℃未満では耐熱性が不十分となり、270℃を越えると生産性の点で問題となる。なお、上記好ましい範囲とすると加工後の経時変化を抑制することができる。
【0016】
本発明のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムは、少なくとも片面の最外層に脂肪酸エステルたるステアリルステアレートを0.03〜1重量%、好ましくは0.07〜0.5重量%、より好ましくは0.08〜0.3重量%含有してなるポリエステル層を設けるものである。ステアリルステアレートの含有量が0.03重量%未満であると効果的に滑り性を発現せしめることができず、一方、ステアリルステアレートの含有量が1重量%を越えると生産性を損ないコストアップを引き起こしたり、ひいてはブリードアウトの懸念が生じることがある。
【0017】
ここで脂肪酸エステルとは、脂肪族カルボン酸化合物および脂肪族アルコール化合物などにより構成される脂肪族のエステル化合物である。この様な化合物としては、例えば、ステアリルステアレート、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ライスワックス、ペンタエリスリトールフルエステル、ベヘニルベヘネート、パルチルミリステート、ステアリルトリグリセリドといった脂肪族エステル等からなる合成あるいは天然ワックス等がポリエステルとの相溶性の点から好ましく挙げられる。
本発明では、ステアリルステアレートを、透明性、色調の点から、使用することが必要である。
【0018】
本発明におけるステアリルステアレートをポリエステルに添加含有する方法としては、ポリエステルの重合時に添加する方法、ポリエステルとステアリルステアレートをベント付押出機などにより混練添加する方法などが挙げられ、実施の使用に際しては、これらの方法によりあらかじめ高濃度添加チップを作成し、希釈チップと混合して、ポリエステル中に所定量含有せしめる方法で押出、製膜することなどができる。
【0019】
ステアリルステアレートが好ましい理由としては、光散乱の影響が極めて低いため、粒子を添加せしめることに対比して、圧倒的に優れた透明性を発現できることに起因する。またポリエステルフィルム中に添加されていることにより、ステアリルステアレート中のアルキル鎖が表面に存在するため、潤滑効果が発現され、透明性を損なうことなく、滑り性を高めることが可能となる。このことは表面が疎水化される傾向にあることを示しており、見かけ上、例えば水との接触角は増加し、表面自由エネルギーは低下する傾向となる。また更にはステアリルステアレートがエステル化合物であることから、ポリエステルとの相溶性に優れ、ブリードアウト等の弊害が極めて少ないという利点もある。これらの効果の発現は単独では勿論のこと、粒子と併用することも可能である。すなわち、ステアリルステアレートを添加し、その添加量を調整することにより、目標とする滑り性を発現させるために必要であった添加粒子量を、大幅に低減させることが可能となり、その結果、フィルムの透明性を向上させることができる。また例えば、良好な透明性とするために粒子添加量が制限され、そのために滑り性が不十分である場合などにおいては、ステアリルステアレートを添加することにより、透明性を維持したまま、滑り性を飛躍的に向上させることができる。さらには感光性樹脂を露光後、剥離する際にスムースな剥離性を付与することが可能となる。
【0020】
本発明においては、少なくとも片面の水との接触角が70〜85°であることが好ましい。少なくとも片面の水との接触角がかかる好ましい範囲であると、取扱い性に優れる一方、感光性樹脂の塗布性が損なわれることもない。水との接触角は両面とも上記好ましい範囲であっても良い。
【0021】
本発明において、フィルムヘイズは後述のとおりJIS K 7105にしたがって測定した値をいうが、本発明のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムは、フィルムヘイズが1%以下である必要がある。フィルムヘイズが1%を超えると、ポリエステルフィルム全体の透明性が低下するため、本発明のポリエステルフィルムを支持体として用いたフォトレジストフィルムにおいて、フォトレジスト層の解像度や露光に対する感度の低下が生じる。フォトレジストは、使用する用途に応じ解像度が必要となるが、高解像度が要求される用途においてはより高透明なポリエステルフィルムが必要となり、そのためポリエステルフィルムのヘイズは1%以下とすることが必要である。
【0022】
本発明のポリエステルフィルムに含有される粒子としては、本発明の作用を阻害しない範囲で特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、シリカ、カオリン、タルク、二酸化チタン、アルミナ、珪酸アルミ、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、ゼオライト等の無機粒子、架橋高分子粒子、シュウ酸カルシウム等の有機粒子を挙げることができる。中でも、シリカ、炭酸カルシウム、アルミナ、架橋高分子などを好適に使用することができる。粒子の平均粒径は0.005〜5.0μmであることが好ましく、0.01〜3.0μmがより好ましい。本発明においてはフィルム中に含有される粒子の平均粒径は小さければ小さいほど光の散乱が抑制されるために好ましいものであるが、実際の工業生産性などを勘案して、その下限は0.005μmとするのが好ましい。粒子の平均粒径をかかる好ましい範囲とすれば、露光後の欠点となることはなく、また、ポリエステルフィルム自体の透明性を優れたものに維持できる。なお、これらの無機粒子および/または有機粒子は二種以上を併用してもよい。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムは、フィルム長手方向と幅方向の平均引裂き伝播抵抗が4000〜6000mN/mmであることが好ましく、特に好ましくは4500〜6000mN/mmである。これにより、感光性樹脂を積層する工程におけるフィルムのばたつき防止、ドライフォトレジストフィルムを対象物に粘着させ引き剥がす際の均一な剥離性を発現させることができる。
【0024】
本発明のポリエステルフィルムのフィルム構成としては、少なくとも片面の最外層にステアリルステアレートを0.03〜1重量%含有してなるポリエステル層(A層とする)が設けられている必要があり、例えばA/Bの2層、A/B/AあるいはA/B/Cの3層、さらには3層より多層の積層構成であってもよく、積層厚み比も任意に設定することができるが、好ましくはA/Bの2層あるいはA/B/Aの3層である。ここでB層あるいはC層がA層と同様にステアリルステアレートを0.03〜1重量%含有してなるポリエステル層であっても良く、また含有していなくても良い。
【0025】
本発明のフィルムは、ドライフォトレジスト用フィルムとして好適に使用できる。特に高解像度が求められ、高い透明性が必要となる用途では好適である。
【0026】
本発明においては、透明性、滑り性、耐熱性、耐薬品性などの点から、二軸延伸化することが必要である。二軸延伸の方法としては、同時二軸延伸、あるいは逐次二軸延伸、チューブラー延伸のいずれであってもよいが、特に同時二軸延伸、逐次二軸延伸が好ましい。
【0027】
本発明では、加工性、耐熱性、生産性の点で、フィルムの固有粘度が0.5〜1dl/gが好ましく、さらに好ましくは、0.55〜0.8dl/g、特に好ましくは0.55〜0.7dl/gである。
【0028】
本発明のポリエステルを製造する際には、反応触媒を使用することができる。反応触媒としては、例えば、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、亜鉛化合物、鉛化合物、マンガン化合物、コバルト化合物、アルミニウム化合物、アンチモン化合物、チタン化合物等、着色防止剤としては例えばリン化合物等を使用することができ、通常ポリエステルの製造が完結する以前の任意の段階において、重合触媒としてアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物、チタン化合物を添加することが好ましく、一層の透明性を向上せしめるためには重合触媒による異物の発生が少ないゲルマニウム化合物を重合触媒として使用することが最も好ましい。このような方法としては、例えば、ゲルマニウム化合物を例にすると、ゲルマニウム化合物粉体をそのまま添加する方法や、あるいは特公昭54−22234号公報に記載されているように、ポリエステルの出発原料であるグリコ−ル成分中にゲルマニウム化合物を溶解させて添加する方法等を挙げることができる。ゲルマニウム化合物としては、例えば、二酸化ゲルマニウム、結晶水含有水酸化ゲルマニウム、あるいはゲルマニウムテトラメトキシド、ゲルマニウムテトラエトキシド、ゲルマニウムテトラブトキシド、ゲルマニウムエチレングリコキシド等のゲルマニウムアルコキシド化合物、ゲルマニウムフェノレ−ト、ゲルマニウムβ−ナフトレ−ト等のゲルマニウムフェノキシド化合物、リン酸ゲルマニウム、亜リン酸ゲルマニウム等のリン含有ゲルマニウム化合物、酢酸ゲルマニウム等を使用することができる。中でも二酸化ゲルマニウムが好ましい。アンチモン化合物としては、例えば、三酸化アンチモンなどのアンチモン酸化物、酢酸アンチモンなどが使用できる。チタン化合物としては、テトラエチルチタネート、テトラブチルチタネートなどのアルキルチタネート化合物などが好ましく使用される。次に、ポリエチレンテレフタレ−トを製造する際に、ゲルマニウム化合物として二酸化ゲルマニウムを添加する場合で説明する。テレフタル酸成分とエチレングリコ−ルをエステル交換またはエステル化反応せしめ、次いで二酸化ゲルマニウム、リン化合物を添加し、引き続き高温、減圧下で一定のエチレングリコール含有量になるまで重縮合反応せしめ、ゲルマニウム元素含有重合体を得る。さらに、好ましくは得られた重合体をその融点以下の温度において減圧下または不活性ガス雰囲気下で固相重合反応せしめ、アセトアデルヒドの含有量を減少させ、所定の固有粘度、カルボキシル末端基を得る方法等を挙げることができる。
【0029】
本発明では、ステアリルステアレートとの相溶性、感光性樹脂との積層性を一層向上させる点から、ポリエステルのカルボキシル末端基量が25〜55当量/トンであることが好ましく、より好ましくは30〜50当量/トン、特に好ましくは35〜45当量/トンである。
【0030】
また、本発明におけるポリエステルは、ポリマー中のジエチレングリコール成分量が好ましくは0.01〜4重量%、さらに好ましくは0.01〜3重量%、特に好ましくは0.01〜2重量%であることが衛生性、経時後や加工で熱履歴を受けても良好な特性を維持する上で望ましい。さらに、酸化防止剤を0.0001〜1重量%添加してもよい。
【0031】
本発明におけるポリエステルフィルムの製造方法としては、例えば、各ポリエステルを必要に応じて乾燥した後、公知の溶融押出機に供給し、スリット状のダイからシート状に押出し、静電印加などの方式によりキャスティングドラムに密着させ、冷却固化して未延伸シートを得る。延伸方式としては、同時二軸または逐次二軸延伸のいずれでもよいが、該未延伸シートをフイルムの長手方向および幅方向に延伸、熱処理して、目的とするフィルムを得る。好ましくはフィルムの品質の点でテンター方式によるものが好ましく、長手方向に延伸した後、幅方向に延伸する逐次二軸延伸方式、長手方向、幅方向をほぼ同時に延伸していく同時二軸延伸方式が望ましい。延伸倍率としては、それぞれの方向に1.5〜4.0倍、好ましくは1.8〜4.0倍である。長手方向、幅方向の延伸倍率はどちらを大きくしてもよく、同一としてもよい。
【0032】
また、延伸速度は1,000%/分〜200,000%/分であることが望ましく、延伸温度は、ポリエステルのガラス転移温度以上ガラス転移温度+80℃以下であれば任意の温度とすることができるが、通常は80〜150℃が好ましい。更に、二軸延伸の後にフイルムの熱処理を行なうが、この熱処理はオ−ブン中、加熱されたロ−ル上等、従来公知の任意の方法で行なうことができる。熱処理温度は通常120℃以上245℃以下の任意の温度とすることができるが、好ましくは120〜240℃である。また、熱処理時間は任意とすることができるが、通常1〜60秒間行なうことが好ましい。熱処理は、フイルムをその長手方向および/または幅方向に弛緩させつつ行なってもよい。さらに、再延伸を各方向に対して1回以上行ってもよく、その後熱処理を行なっても良い。
【0033】
発明のポリエステルフイルムには、帯電防止剤、熱安定剤、酸化防止剤、結晶核剤、耐候剤、紫外線吸収剤などの添加剤を本発明の目的を損なわない程度において用いることができる。また、コロナ放電処理、プラズマ処理、アルカリ処理などの表面処理を必要に応じて施してもよい。さらに、本発明のフイルムに易接着処理剤、帯電防止剤離型剤、粘着剤、接着剤、難燃剤、紫外線吸収剤、顔料、染料などのコーティングや印刷を行なってもよく、その目的、方法については上記に限定されない。
【0034】
【実施例】
〔物性、特性の測定、評価方法〕
以下に、本発明の実施例の説明に用いた各物性、特性の測定、および評価方法について説明する。
(1)融点(Tm)
示差走査型熱量計DSC2(パーキンエルマー社製)を用いて測定した。サンプル10mgを窒素気流下で280℃、5分間溶融保持し、ついで液体窒素で急冷した。得られたサンプルを10℃/分の速度で昇温する過程で確認される結晶融解に基づく吸熱ピーク温度を融点(Tm)とした。
(2)カルボキシル末端基量
フィルムをオルトクレゾール/クロロホルム(重量比7/3)に95℃で溶解し、アルカリで電位差測定して求めた。
(3)固有粘度
ポリエステルをオルソクロロフェノールに溶解し,25℃において測定した。
(4)水との接触角
公知の方法により、測定液としては水を使用し、接触角計(協和界面科学(株)製CA−D型)を用いてフィルム表面に対する静的接触角を求めた。
(5)表面粗さ
JIS B 0601にしたがって中心線平均粗さRaを測定した。
(6)ヘイズ
JIS K 7105にしたがってフイルムのヘイズを測定した。
(7)引裂き伝播抵抗
軽加重式引裂試験機(東洋精機製)を用いてASTM−D−1922にしたがい、フィルム長手方向と幅方向について、各々5回測定を行い、平均値を求めた。
(8)滑り性(動摩擦係数)
フィルムの片面と相対するもう一方の面との動摩擦係数μdをASTM−D1894−63にしたがって測定した。
(9)取扱い性(巻き性)
幅300mm、長さ3000mにフイルムをスリットし、長さ320mm、内径6インチ、肉厚12mmの紙コアに巻き取り、巻き状態を観察し、次の基準で判定した。
【0035】
しわ等の欠点の無い巻き姿のもの : ○
しわ等の欠点のあるもの : ×
(10)剥離性
公知の感光性樹脂をB層側に(外層が両面ともA層の場合はA層側に)厚さ45μmに塗布したフイルムを銅貼り積層板にラミネート後、露光しフイルムを剥がす際の伸びによる剥離不良を確認し、次の基準で判定した。
【0036】
均一な剥離性、伸び無し : ◎
均一な剥離性、若干伸び無し(全く問題なし) : ○
良好な剥離性、若干伸びあり(実用上問題なし) : △
不均一な剥離性、大幅な伸び有り : ×
(11)解像度
公知の感光性樹脂をB層側に(外層が両面ともA層の場合はA層側に)厚さ45μmに塗布したフォトレジストフィルムを用い、パターニングを行い、解像度を評価した。即ち、銅板に、保護層を剥離したフォトレジストフィルムのフォトレジスト層を密着させ、更にその上からパターンマスクを印刷したガラス板を密着させて、ガラス板側から紫外線の露光を行った後、フォトレジストフィルムを剥離し、洗浄、エッチングを行い、顕微鏡で観察し、下記の基準で評価した。なお作成したパターンはLSが15μm、30μmである。
【0037】
◎:極めて鮮明なパターニングであり、滑らかな壁が形成されている。
【0038】
○:鮮明なパターニングであり、壁に多少凹凸があるが問題にならないレベルである。
【0039】
×:不鮮明なパターニングであり、壁に多数の凹凸があり欠陥として認められる。
【0040】
以下、実施例によって本発明を説明する。なお、実施例にて使用した樹脂は以下の通りである。
樹脂1:ポリエチレンテレフタレート(PET)固有粘度0.63dl/g、融点256℃
樹脂2:上記樹脂1に球状シリカを2重量%含有せしめたPET
樹脂3:上記樹脂1に炭酸カルシウムを2重量%含有せしめたPET
樹脂4:上記樹脂1に有機粒子(スチレン−ジビニルベンゼン架橋体)を2重量%含有せしめたPET
樹脂5:重合反応時添加によりステアリルステアレートを2重量%含有せしめたPET(固有粘度0.61dl/g、融点255℃)
樹脂6:重合反応時添加によりカルナウバワックスを2重量%含有せしめたPET(固有粘度0.61dl/g、融点255℃)
(実施例1、2)
樹脂1と樹脂2、樹脂3、5を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機I(主層:B層)に、同様に樹脂1と樹脂2、樹脂3、樹脂5を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機II(副層:A層)に供給し、B層/A層の2層構成により通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度95℃にて長手方向に3.5倍延伸、40℃に冷却後、温度95℃で5秒予熱後に105℃で幅方向に3.9倍延伸した後、210℃にてリラックス5%、5秒間熱処理し、二軸延伸された厚み16μm(A層厚み2μm、B層厚み14μm)のポリエステルフィルムを得た。フィルムヘイズは0.8%、フィルムの融点は255℃、フィルムの固有粘度(IV)は0.61dl/g、カルボキシル末端基量は35当量/トンであった。このフィルムは表1に示すとおり、優れた特性を発現することを確認した。
【0041】
【表1】
(実施例3)
樹脂1と樹脂2、樹脂3、樹脂5を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機I(主層:B層)に、同様に樹脂1と樹脂2、樹脂3、樹脂5を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機II(副層:A層)に供給し、B層/A層の2層構成により通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度95℃にて長手方向に3.5倍延伸、40℃に冷却後、温度95℃で5秒予熱後に105℃で幅方向に3.9倍延伸した後、210℃にてリラックス5%、5秒間熱処理し、二軸延伸された厚さ16μm(A層厚み2μm、B層厚み14μm)のポリエステルフィルムを得た。フィルムヘイズは0.8%、フィルムの融点は255℃、フィルムの固有粘度(IV)は0.61dl/g、カルボキシル末端基量は38当量/トンであった。このフィルムは表1に併せて示すとおり、優れた特性を発現することを確認した。
(比較例1)
樹脂1と樹脂2、樹脂3を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機I(主層:B層)に、同様に樹脂1と樹脂2、樹脂3を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機II(副層:A層)に供給し、B層/A層の2層構成により通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度90℃にて長手方向に3.7倍延伸、40℃に冷却後、温度95℃で5秒予熱後に105℃で幅方向に4.2倍延伸した後、210℃にてリラックス5%、5秒間熱処理し、二軸延伸された厚さ16μm(A層厚み2μm、B層厚み14μm)のポリエステルフイルムを得た。フィルムヘイズは0.8%、フィルムの融点は255℃、フィルムの固有粘度(IV)は0.61dl/g、カルボキシル末端基量は34当量/トンであった。このフィルムは表1に併せて示すとおり、A層、B層のいずれにも脂肪酸エステル化合物が含まれていないために、取扱い性が明らかに劣っており、剥離性については実用上問題はないが優れたレベルではなかった。
(実施例4)
樹脂1と樹脂2、樹脂3、樹脂5を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機I(主層:B層)に、同様に樹脂1と樹脂2、樹脂3、樹脂5を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機II(副層:A層)に供給し、A層/B層/A層の3層構成により通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度90℃にて長手方向に3.7倍延伸、40℃に冷却後、温度95℃で5秒予熱後に105℃で幅方向に4.2倍延伸した後、210℃にてリラックス5%、5秒間熱処理し、二軸延伸された厚さ16μm(A層厚み1μm、B層厚み14μm)のポリエステルフイルムを得た。フィルムヘイズは0.8%、フィルムの融点は255℃、フィルムの固有粘度(IV)は0.61dl/g、カルボキシル末端基量は35当量/トンであった。このフィルムは表2に示すとおり、優れた特性を発現することを確認した。
【0042】
【表2】
(比較例3、4)
樹脂1と樹脂3、樹脂4を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機I(主層:B層)に、同様に樹脂1と樹脂3、樹脂4、樹脂6を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機II(副層:A層)に供給し、A層/B層/A層の3層構成により通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度95℃にて長手方向に3.5倍延伸、40℃に冷却後、温度95℃で5秒予熱後に105℃で幅方向に3.9倍延伸した後、210℃にてリラックス5%、5秒間熱処理し、二軸延伸された厚さ16μm(A層厚み0.8μm、B層厚み14.4μm)のポリエステルフイルムを得た。フィルムヘイズは2.6%、フィルムの融点は255℃、フィルムの固有粘度(IV)は0.59dl/g、フィルムカルボキシル末端基量は41当量/トンであった。このフィルムは表2に併せて示すとおり、優れた特性を発現することを確認した。
(比較例2)
樹脂1と樹脂3、樹脂4を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機I(主層:B層)に、同様に樹脂1と樹脂3、樹脂4を所定量計量後、180℃で3時間真空乾燥して押出機II(副層:A層)に供給し、A層/B層/A層の3層構成により通常の口金から吐出後、静電印加(7kv)しながら鏡面冷却ドラムにて冷却固化して未延伸フィルムを得た。この未延伸フィルムを、温度90℃にて長手方向に3.7倍延伸、40℃に冷却後、温度95℃で5秒予熱後に105℃で幅方向に4.2倍延伸した後、190℃にてリラックス5%、2秒間熱処理し、二軸延伸された厚さ16μm(A層厚み0.8μm、B層厚み14.4μm)のポリエステルフイルムを得た。フィルムヘイズは2.6%、フィルムの融点は255℃、フィルムの固有粘度(IV)は0.59dl/g、カルボキシル末端基量は39当量/トンであった。このフィルムは両外層となるA層に脂肪酸エステル化合物が含まれていないために、取扱い性、剥離性が明らかに劣っており、引裂き伝播抵抗も低めであった。
【0043】
【発明の効果】
本発明により、透明性、滑り性および取扱い性を同時に満足するドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムを得ることができる。
Claims (4)
- エチレンテレフタレート単位および/またはエチレンナフタレート単位を主たる構成成分とするポリエステルからなるフィルムであって、少なくとも片面の最外層にステアリルステアレートを0.03〜1重量%含有してなるポリエステル層が設けられており、フィルムの融点が230〜270℃、フィルムヘイズが1%以下であることを特徴とするドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- ステアリルステアレートをポリエステルの重合時に添加することによって、少なくとも片面の最外層にステアリルステアレートを含有せしめたことを特徴とする請求項1に記載のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- フィルム長手方向と幅方向の平均引裂き伝播抵抗が4000〜6000mN/mmであり、かつ少なくとも片面の水との接触角が70〜85°であることを特徴とする請求項1または2に記載のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルム。
- ステアリルステアレートをポリエステルの重合時に添加することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のドライフォトレジスト用二軸延伸ポリエステルフィルムの製造方法。
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