JP4185569B2 - 海草藻場の造成方法及び海底での海草類の増殖方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アマモ類(例えば、アマモ、コアマモ、オオアマモ、リュウキュウスガモ)などの海草類による海草藻場を海底に造成するための方法及び海底で海草類を増殖させるための方法に関する。
海水中に生育する植物は、維管束をもたない海藻類(ホンダワラ類、コンブ類など)と、陸上植物と同様に維管束をもつ海草類(アマモ類など)に大別され、前者は岩礁に根を張って生育し、後者は砂質又は砂泥質中に地下茎を延ばして生育する。
海草類が群生している場所は海草藻場(通称、アマモ場)と呼ばれる。このような海草藻場は沿岸海域における海中動植物の生産場であり、有用魚介類の生息場、魚介類の産卵場、稚仔魚の生育場、餌場等として不可欠な場所であると言える。
しかし、近年、沿岸海域における海草藻場は海砂の流失、沿岸の埋め立てなどの影響により急速な消失、衰退が続いており、このため海草藻場を回復させるための造成法を早急に確立することが求められている。
衰退または消失した海草藻場を回復・造成する方法としては、他所で採取した砂を移設し、そこに海草類を移植し或いは播種する方法が考えられる。
しかし、このような海草藻場の造成には大量の良質な砂(海砂、川砂、山砂など)が必要であり、このような大量の天然資材を他の場所で採取(採掘)することは新たな環境破壊を招くことになり、望ましくない。
一方、海草藻場の造成用資材として、港湾建設や航路掘削(浚渫)などの海洋土木工事で大量発生する浚渫土を用いる方法も考えられるが、この種の浚渫土は品質が一定ではなく、有機泥などのヘドロを大量に含む場合がある。このようなヘドロを大量に含む浚渫土は、海草藻場の造成用資材として不適であるだけでなく、海底への敷設中や敷設後に微粒分が海水中に流出して海水を濁らせたり、海水中に栄養塩や硫化水素を溶出するなど、海域を汚染する原因になる場合がある。
また、海草藻場での海草類の繁殖形態は、海草類が基盤(天然の海草藻場であれば砂泥質)に地下茎を張り巡らせて生育・繁殖するものであるため、海草藻場の基盤には、基盤そのものが波浪などによって流失しにくく、しかも、波浪などによる強い水流が作用しても海草類が基盤から抜けにくいことが求められる。
しかし、天然の砂(海砂、川砂、山砂など)を基盤とする海草藻場は、砂そのものが波浪などによって流出しやすく、また、海草類が一旦着生しても波浪などによる強い水流が作用すると地下茎ごと抜けてしまい、海草類が増殖しにくいという問題がある。
従来、このような問題に対して、安定した基盤の確保と海草類の定着を図るための技術として、生分解性樹脂などのマットを海底に敷設して海草藻場を造成する方法(例えば、特許文献1など)、鋼製ネットなどで構成される構造物を設置する方法(例えば、特許文献2など)などが提案されている。
特開平10−181976号公報 特開2002−171852号公報
しかし、これら従来技術の方法では、広大な面積の海草藻場を造成するのに、多大な時間と労力がかかり、しかも造成コストも多大なものとなる。また、海底に設置される構造部材(例えば、特許文献2ではフレーム部やネット部)などに海藻類(例えば、ホンダワラ類などのような岩礁性藻場を形成するもの)が自然に着生・繁殖して、海草類に当たる光量を不足させ、成長を阻害する場合がある。
したがって本発明の目的は、基盤そのものが波浪などによって流失しにくく、しかも、波浪などによる強い水流が作用しても海草類が基盤から抜けにくい海草藻場を低コストで造成することができる海草藻場の造成方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、海底に海草類が安定して生育・繁殖できる基盤を形成し、その基盤に海草類を増殖させるための方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために、海草藻場造成用又は海草類増殖用として好適な基盤材について検討を行い、その結果、鉄鋼製造プロセスで発生する高炉水砕スラグが基盤材として最適な物理的性状を備えており、天然砂などの他の底質構成材に較べて、格段に優れた海草類定着基盤を形成できることを見出した。この高炉水砕スラグは鉄鋼製造プロセスで大量に発生するものであるため安価に且つ大量に入手することができ、広い水域に対しても海草藻場造成用又は海草類増殖用の基盤を低コストに形成することができる。
さらに、高炉水砕スラグを海底に敷設する場合、敷設初期において、(1)スラグからS(硫黄)が溶出すること、(2)スラグ粒子の周囲の水のpHが上昇すること、などが懸念されたが、高炉水砕スラグを予め炭酸水溶液等と接触させ、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成させることにより、敷設初期におけるこれらの問題が適切に回避できることが判った。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下のとおりである。
[1]スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグを海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、該基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することにより海草類を着生・増殖させ、海草藻場を形成することを特徴とする海草藻場の造成方法。
[2]スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物を海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、該基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することにより海草類を着生・増殖させ、海草藻場を形成することを特徴とする海草藻場の造成方法。
[3]上記[2]の造成方法において、他の底質構成材が、天然砂、浚渫土、当該敷設場所の底質土、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグ以外のスラグの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする海草藻場の造成方法。
[4]上記[2]又は[3]の造成方法において、混合物中での、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグの割合が20体積%以上であることを特徴とする海草藻場の造成方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの造成方法において、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグが、高炉水砕スラグを炭酸水溶液、炭酸塩の水溶液、炭酸ガスの中から選ばれる1種以上と接触させることにより、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を生成させた高炉水砕スラグであることを特徴とする海草藻場の造成方法。
[6]スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグを海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、該基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することにより海草類を着生・増殖させることを特徴とする海底での海草類の増殖方法。
[7]スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物を海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、該基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することにより海草類を着生・増殖させることを特徴とする海底での海草類の増殖方法。
[8]上記[7]の増殖方法において、他の底質構成材が、天然砂、浚渫土、当該敷設場所の底質土、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグ以外のスラグの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする海底での海草類の増殖方法。
[9]上記[7]又は[8]の増殖方法において、混合物中での、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグの割合が20体積%以上であることを特徴とする海底での海草類の増殖方法。
[10]上記[6][9]のいずれかの増殖方法において、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグが、高炉水砕スラグを炭酸水溶液、炭酸塩の水溶液、炭酸ガスの中から選ばれる1種以上と接触させることにより、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を生成させた高炉水砕スラグであることを特徴とする海草類の増殖方法。
高炉水砕スラグは、海中での安定性が海砂よりも格段に大きいため、波浪などによる流出が海砂よりも非常に少なく、しかも、せん断抵抗性が高いために波浪などに対する海草類の拘束力が強く、且つ海草類の地下茎や根が絡みやすいという特質がある。また、高炉水砕スラグは鉄鋼製造プロセスで大量に発生するものであるため、安価に且つ大量に入手することができる。このため本発明の海草藻場の造成方法によれば、基盤そのものが波浪などによって流失しにくく、しかも、波浪などによる強い水流が作用しても海草類が基盤から抜けにくい海草藻場を低コストに造成することができる。また、本発明の海草類の増殖方法によれば、海底に海草類が安定して生育・繁殖できる基盤を形成し、その基盤に海草類を効果的に増殖させることができる。
また、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグを用いることにより、スラグ敷設初期におけるSの溶出や水のpH上昇といった問題も適切に回避することができる。
まず、本発明の海草藻場の造成方法について説明する。本発明が造成の対象とする海草藻場とは、砂質又は砂泥質中に地下茎を延ばして生育・繁殖するアマモ類(例えば、アマモ、コアマモ、オオアマモ、リュウキュウスガモ)などの海草類が群生している海底のことであり、一般にはアマモ場と呼ばれる。
このような海草藻場を造成するために、本発明の海草藻場の造成方法では、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグ(以下、便宜上「炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグ」という)又はこの炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物を海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、この基盤に海草類を着生・増殖させることで海草藻場を形成する。
高炉水砕スラグは、製鉄系スラグ系の1つである高炉スラグを水砕化処理して固化させたスラグであり、その粒径は海砂よりも大きく(通常、D50が1.0〜2.0mm程度の粒度)、また、比重も海砂に較べてやや大きい。さらに、高炉水砕スラグの形態上の大きな特徴として、スラグ粒子が角張った形状をしていることが挙げられ、この形状のために内部摩擦角が大きく且つせん断抵抗性が高いという物理的な特性を有している。
高炉水砕スラグは鉄鋼製造プロセスで大量に発生するものであるため、安価に且つ大量に入手することができる基盤材であると言える。
また、高炉水砕スラグを海底に敷設すると、敷設状況や海域の状況によって敷設初期に表面からカルシウムイオンが溶解し、これによりスラグ粒子周囲の水のpHが高くなる結果、スラグのケイ酸塩ネットワークが腐食切断され、さらに周囲の水のpHが上昇するとともに、スラグ中のS(硫黄)が水中に溶出する場合がある。このようにスラグ敷設直後にスラグ粒子周囲の水のpHが高くなったり、スラグからSが溶出したりすることは、海草類の生育にとって望ましいことではない。また、スラグ敷設厚みが厚くなると、pH上昇により溶解したケイ酸塩イオン、アルミネートイオン、カルシウムイオンの濃度が高まり、スラグ粒子どうしが固結することもある。
以上のような敷設初期におけるスラグ粒子からのS溶出やスラグ粒子周囲の水のpH上昇といった問題は、予め高炉水砕スラグの表面を炭酸化処理し、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成しておくことにより適切に回避することができる。すなわち、高炉水砕スラグのスラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成しておくことにより、炭酸カルシウム皮膜がバリアとなって海底に敷設した際のスラグからのSの溶出が阻止され、また、スラグ粒子周囲の水のpH上昇も抑えられる。また、スラグ粒子表面に形成された水和物皮膜によって水中でのスラグ粒子どうしの固結も生じにくい。
高炉水砕スラグのスラグ粒子表面を炭酸化処理することによりスラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成するには、例えば、高炉水砕スラグを炭酸水溶液(炭酸水)、炭酸塩の水溶液、炭酸ガスの中から選ばれる1種以上と接触させる方法が採られる。このスラグ粒子表面の炭酸化処理では、スラグ粒子表面近傍に存在する水(上記水溶液やスラグが含有している水)にスラグからカルシウムイオンが溶出し、このカルシウムイオンと同じく水に溶解した炭酸成分(CO 2−又は/及びHCO )とが反応してスラグ粒子表面に極めて薄い炭酸カルシウム皮膜が生成する。この炭酸化処理の具体的な方法については後に詳述する。
本発明法において海草藻場を造成する場合、基盤材として炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグのみを敷設することもできるが、基盤材の一部を他の底質構成材とし、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグとこの他の底質構成材との混合物を基盤材として用いてもよい。この他の底質構成材としては、天然砂、浚渫土、当該敷設場所の底質土、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグ以外のスラグの中から選ばれる1種以上を用いることができる。上記天然砂としては海砂、川砂、山砂などを、浚渫土としては、港湾建設や航路掘削などの海洋土木工事(浚渫)で発生したものなどを、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグ以外のスラグとしては、炭酸化処理が施されていない通常の高炉水砕スラグ、製鋼スラグ、都市ゴミ溶融スラグ、都市ゴミ焼却灰溶融スラグなどの各種スラグを、それぞれ用いることができる。
なお、高炉水砕スラグは生成ままの粒度で用いるのが最も好ましいが、軽破砕したものを用いてもよい。
但し、後述するような高炉水砕スラグを基盤材として用いることによる作用効果を得るという観点からは、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグを単独で用いることが好ましく、他の底質構成材と混合する場合でも、混合物中での炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグの割合は20体積%以上、好ましくは40体積%以上、さらに好ましくは60体積%以上、特に好ましくは80体積%以上とすることが望ましい。なお、ここでいう体積%とは、混合する前の単味の材料どうしの体積割合を意味するものとする(請求項4,も同様)。
一方、アマモなどの海草類は地下茎の根から窒素やリンなどの栄養分を吸収するため、海草類の生育性の面からは、それらが生育する基盤はある程度の量の有機物を含んでいた方がよい。この点、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグは実質的に有機物を含まないため、海草類による栄養分の吸収という面では不利であるが、基盤材として炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグを単独で用いても、海水中の懸濁物質の沈降などにより基盤に対して有機物が供給されるので大きな問題はない。
但し、予め基盤中に有機物を含有させ、海草類の生育を促進させるという観点からは、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグと有機物を含む底質構成材、好ましくは強熱減量が5〜30mass%程度、好ましくは10〜20mass%程度の底質構成材(例えば、海砂、浚渫土など)との混合物であって、その底質構成材の割合が1〜40体積%、好ましくは10〜30体積%程度の混合物を用いることが望ましい。
基盤材を敷設する海底は、アマモなどの海草類の生育に適した場所が好ましく、特に、海底に光が十分に届く比較的水深の浅い海底、具体的には、海水の透明度がある程度高い水深2〜10m程度の海底であって、望ましくは光量年平均が3.0E/m/day以上の海底であることが好ましい。また、他の好ましい条件としては、潮流が穏やかであること、波浪が少ないこと、水温が10〜25℃程度であること、海底面の傾斜が小さいこと、などが挙げられる。
炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグ又は炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグと他の底質構成材の混合物の海底での敷設厚(形成される基盤厚さ)は、海草類の地下茎の深さなどに応じて適宜決めればよいが、一般には20cm以上の厚さとするのがよい。
設置された基盤に海草類を生成・繁殖させて海草藻場を形成するには、特別なことをせず自然に海草類が着生するのを待ってもよいが、早期に海草藻場を形成するには基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することが好ましい。
以上述べた本発明の造成方法により形成される海草藻場は、(a) 炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグを海底に敷設して設けた基盤に海草類群が着生・増殖した海草藻場、又は、(b) 炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物を海底に敷設して設けた基盤に海草類群が着生・増殖した海草藻場であり、このように人工的に造成された海草藻場は、沿岸海域における海中動植物の生産場(有用魚介類の生息場、魚介類の産卵場、稚仔魚の生育場、餌場等)として有効に機能する。
次に、本発明の海草類の増殖方法は、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグ又は炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物を海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、この基盤に海草類を着生・増殖させる。この本発明法は、海草藻場の造成に限られるものではないが、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物の好ましい条件、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグ又は炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物の敷設条件などは、先に述べた海草藻場の造成方法と同様である。
本発明の海草藻場の造成方法及び海草類の増殖方法において、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグを海草類を生育・増殖させる基盤として用いた場合、以下のような特有の作用効果が得られる。
(1)耐波浪安定性
海底に海草藻場を形成するために或いは海草類を増殖させるために他所で採取した砂等を移設した場合、砂が波浪などで流出し、海草類を生育させるための基盤を維持できなくなるという根本的な問題がある。これに対して、炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグは角張った形状を有するために内部摩擦角が大きく、しかも海砂に較べて粒径が大きく且つ比重もやや大きいため、水中での安定性は海砂よりも格段に大きく、波浪などによる流出が海砂よりも非常に少ない。このため海草類を生育させる基盤を安定して維持することができる。
(2)海草類の定着性
アマモ等の海草類は、底質に地下茎や根を伸ばしてそれを底質構成材に絡めることにより、波浪などによって底質から容易に抜けないようにしながら成長・増殖する。しかし、底質が砂の場合には、波浪などによって底質から地下茎が抜けやすく、海草類が増殖しにくいという問題がある。これに対して炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグは、上述した粒子形状のために海砂よりもせん断抵抗性が高いため、波浪などに対する海草類の拘束力が強く、波浪などにより強い水流が作用しても海草類が引き抜かれにくい。また、その特有の粒子形状と適度な粗さのために、海砂に較べて海草類の地下茎や根が絡みやすく、それらのアンカーの役目を果たすことによっても、海草類を抜けにくくする。特に、後者は発芽直後の海草類の定着に大きく寄与する。
なお、細粒分を多く含んだ高炉水砕スラグを海底に敷設すると、敷設層中で細粒部分が次第に偏在し、この偏在した細粒部分が固結しやすい問題があるが、比較的粗い粒度構成とすることにより、そのような細粒部分の固結も生じにくい。このため本発明法で用いる炭酸カルシウム被覆高炉水砕スラグは、粒径0.5mm以上のスラグ粒子の割合が90mass%以上、好ましくは粒径1.0mm以上のスラグ粒子の割合が70mass%以上のものが好ましい。このような粒度構成の高炉水砕スラグを得るために、通常、高炉水砕スラグの篩い分けを行う。篩い分け法は、乾式篩い、湿式篩い、気流分離などのいずれでもよい。
次に、高炉水砕スラグのスラグ粒子の表面を炭酸化処理することにより、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成する方法について説明する。
この高炉水砕スラグのスラグ粒子の表面を炭酸化処理する方法としては、先に述べたように高炉水砕スラグを炭酸水溶液、炭酸塩の水溶液、炭酸ガスの中から選ばれる1種以上と接触させる方法を採ることができる。
まず、高炉水砕スラグを炭酸水溶液(炭酸水)と接触させることにより、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成する方法について説明する。
この方法では、高炉水砕スラグを炭酸水溶液中に浸漬し、若しくは高炉水砕スラグに炭酸水溶液を散布することにより、高炉水砕スラグを炭酸水溶液と接触させ、高炉水砕スラグのスラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成させる。この処理では、高炉水砕スラグのスラグ粒子から炭酸水溶液中に溶出したカルシウムイオンと炭酸水溶液中の炭酸成分(CO 2−又は/及びHCO )とがスラグ粒子の表面近傍で反応し、高炉水砕スラグの粒子表面に難溶性の炭酸カルシウム皮膜が形成(析出)される。
高炉水砕スラグを炭酸水溶液中に浸漬させる方法では、例えば炭酸水溶液が入れられた貯留槽に高炉水砕スラグを投入して液中に浸漬させる。
また、高炉水砕スラグに炭酸水溶液を散布する方法では、例えば、搬送手段(ベルトコンベア等)による搬送途中の高炉水砕スラグにその上方から炭酸水溶液を散布し、或いは山積みされた高炉水砕スラグや貯槽に貯留された高炉水砕スラグに上方から炭酸水溶液を散布するなど、適宜な実施形態で高炉水砕スラグに炭酸水溶液を散布してよい。これらの方法うち、搬送手段による搬送途中の高炉水砕スラグに炭酸水溶液を散布する方法は、高炉水砕スラグに炭酸水溶液を均一にむらなく散布できる利点がある。また、散布後の高炉水砕スラグを撹拌すれば、スラグ中での炭酸水溶液の分布をより均一化することができる。
また、高炉水砕スラグは元々数%程度の水分を含有しており、過剰に散布した炭酸水溶液は高炉水砕スラグから流出して無効となるため、散布する炭酸水溶液の量は高炉水砕スラグの30mass%程度、好ましくは10mass%程度を上限とすることが適当である。したがって、高炉水砕スラグを炭酸水溶液に浸漬する方法に較べて処理に要する炭酸水溶液の量が格段に少なく、またこのため炭酸水溶液の製造のために大規模な設備を必要とせず、且つ簡便かつ迅速な処理を行うことができる利点がある。
また、高炉水砕スラグに炭酸水溶液を散布する方法は、以下に述べるような理由により、スラグ粒子表面に炭酸カルシウム皮膜を適切に形成するという面で、高炉水砕スラグを炭酸水溶液に浸漬する方法に較べて有利である。すなわち、高炉水砕スラグ粒子の表面に形成される炭酸カルシウム皮膜は非常に薄く、皮膜形成のために必要な炭酸量は極めて微量であるため、上記のように少量(例えば、高炉水砕スラグの30mass%以下、好ましくは10mass%以下)の炭酸水溶液で十分に皮膜を形成することができる。さらに、その皮膜生成の速度も極めて速いため、高炉水砕スラグと炭酸水溶液との接触時間は極めて短くてよい。逆に、高炉水砕スラグと炭酸水溶液との接触時間が長過ぎ、高炉水砕スラグの周囲に過剰な炭酸成分が存在していると、下記式(1)に示すような反応が進み、一旦生成した難溶性の炭酸カルシウムが可溶性の炭酸水素カルシウムに変化してしまう。
CaCO+HCO→Ca(HCO …(1)
高炉水砕スラグを炭酸水溶液に浸漬する方法では、不可避的に高炉水砕スラグと炭酸水溶液との接触時間が長く、スラグ粒子表面近傍に過剰な炭酸成分が存在することになるため上記式(1)の反応が生じやすく、この点がスラグ粒子表面に適切な炭酸カルシウム皮膜を形成させる上で不利に働く。これに対して高炉水砕スラグに炭酸水溶液を散布する方法によれば、高炉水砕スラグのスラグ粒子の表面近傍に適量の炭酸成分が供給されるため上記式(1)の反応が生じにくく、このためスラグ粒子の表面に難溶性の炭酸カルシウム皮膜を適切に生成させることができる。
炭酸水溶液は、例えば炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスが流れる吸収塔内に水を噴霧したり、或いは吸収塔内に貯留された水に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹き込んでバブリングすることなどによって容易に製造することができる。炭酸ガスは水に溶けやすく、25℃大気圧での飽和溶解度は0.037規定(0.16g/100g水)になる。炭酸ガスは下記式(2)にしたがい水に溶解する。溶解後の形態は、炭酸(HCO)、炭酸水素イオン(HCO )、炭酸イオン(CO 2−)であり、酸性領域で炭酸、中性領域で炭酸水素イオン、アルカリ性領域では炭酸イオンが安定であり、pHによってそれぞれの存在比が変化する。
CO+HO→HCO→H+HCO →2H+CO 2− …(2)
次に、高炉水砕スラグを炭酸塩の水溶液と接触させることによりスラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成する方法について説明する。
この方法では、高炉水砕スラグを炭酸塩の水溶液中に浸漬し、若しくは高炉水砕スラグに炭酸塩の水溶液を散布することにより、高炉水砕スラグを炭酸塩の水溶液と接触させ、高炉水砕スラグのスラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成させる。この処理においても、高炉水砕スラグのスラグ粒子から水溶液中に溶出したカルシウムイオンと水溶液中の炭酸成分(CO 2−又は/及びHCO )とがスラグ粒子の表面近傍で反応し、高炉水砕スラグの粒子表面に難溶性の炭酸カルシウム皮膜が形成(析出)される。
水溶液に使用する炭酸塩としては、例えば炭酸水素塩を用いることもでき、水に溶解して炭酸イオン又は炭酸水素イオンを生成するものであれば特に制限はない。簡便に使用できるものとしては、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムなどが挙げられ、これらの2種以上を用いることもできる。この方法で使用する水溶液は、固体状の炭酸塩を水に溶解させるだけで比較的簡単に得ることができる。
上記各種炭酸塩の水に対する溶解度は、炭酸ナトリウム:24.9g/100g水(25℃)、炭酸カリウム:112.1g/100g水(25℃)、炭酸アンモニウム(一水和物):55.8g/100g水(0℃)、炭酸水素ナトリウム:10.3g/100g水(25℃)、炭酸水素カリウム:36.24g/100g水(25℃)、炭酸水素アンモニウム:24.8g/100g水(25℃)であり、いずれも大きい値を示す。したがって、これら炭酸塩の水溶液は、例えば水の貯槽と撹拌機とを有する簡単な設備で容易に製造することができる。
高炉水砕スラグを炭酸塩の水溶液中に浸漬させる方法では、例えば炭酸塩の水溶液が入れられた貯留槽に高炉水砕スラグを投入して高炉水砕スラグを水溶液中に浸漬させる。
また、高炉水砕スラグに炭酸塩の水溶液を散布する方法では、例えば、搬送手段(ベルトコンベア等)による搬送途中の高炉水砕スラグにその上方から水溶液を散布し、或いは山積みされた高炉水砕スラグや貯槽に貯留された高炉水砕スラグに上方から水溶液を散布するなど、適宜な実施形態で高炉水砕スラグに水溶液を散布してよい。これらの方法うち、搬送手段による搬送途中の高炉水砕スラグに水溶液を散布する方法は、高炉水砕スラグに水溶液を均一にむらなく散布することができる利点がある。また、散布後の高炉水砕スラグを撹拌すれば、スラグ中での炭酸水溶液の分布をより均一化することができる。
また、先に述べたように高炉水砕スラグは元々数%程度の水分を含有しており、過剰に散布した炭酸塩の水溶液は高炉水砕スラグから流出して無効となるため、散布する水溶液の量は高炉水砕スラグの30mass%以下、好ましくは10mass%以下とすることが適当である。したがって、高炉水砕スラグを水溶液に浸漬する方法とに較べて処理に要する水溶液の量が格段に少なくて済む利点がある。
また、高炉水砕スラグに炭酸塩の水溶液を散布する方法は、先に述べた炭酸水溶液を用いる場合と同様に、スラグ粒子表面に炭酸カルシウム皮膜を適切に形成するという面で、高炉水砕スラグを炭酸塩の水溶液に浸漬する方法に較べて有利である。すなわち、高炉水砕スラグのスラグ粒子の表面に形成される炭酸カルシウム皮膜は非常に薄く、皮膜形成のために必要な炭酸量は極めて微量であるため、上記のように少量(例えば、高炉水砕スラグの30mass%以下、好ましくは10mass%以下)の水溶液で十分に皮膜を形成することができる。さらに、その皮膜生成の速度も極めて速いため、高炉水砕スラグと水溶液との接触時間は極めて短くてよい。逆に、高炉水砕スラグと水溶液との接触時間が長過ぎ、高炉水砕スラグの周囲に過剰な炭酸成分が存在していると、先に挙げた式(1)に示す反応が進み、一旦生成した難溶性の炭酸カルシウムが可溶性の炭酸水素カルシウムに変化してしまう。
高炉水砕スラグを炭酸塩の水溶液に浸漬する方法では、不可避的に高炉水砕スラグと炭酸水溶液との接触時間が長く、スラグ粒子表面近傍に過剰な炭酸成分が存在することになるため上記式(1)の反応が生じやすく、この点がスラグ粒子表面に適切な炭酸カルシウム皮膜を形成させる上で不利に働く。これに対して高炉水砕スラグに炭酸塩の水溶液を散布する方法によれば、高炉水砕スラグのスラグ粒子の表面近傍に適量の炭酸成分が供給されるため上記式(1)の反応が生じにくく、このためスラグ粒子の表面に難溶性の炭酸カルシウム皮膜を適切に生成させることができる。
また、上記のような炭酸塩の水溶液には酸を添加するか、若しくは高炉水砕スラグを上記水溶液と接触させた後に酸で処理することが好ましい。上記水溶液の多くはアルカリ性を示すため、これを高炉水砕スラグに接触させるとスラグにアルカリ刺激を与えて固結反応を促進してしまうおそれがあるが、このように酸で中和処理することにより、高炉水砕スラグにアルカリ刺激を与えることを防止することができる。また、このような中和処理により生成される塩自体が高炉水砕スラグ表面に吸着して固結防止剤として作用するため、固結防止効果をより向上させることができる。用いる酸としてはカルボン酸が特に好ましい。
以下、この中和処理について具体的に説明する。
炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウムなどの炭酸塩の多くは、水和反応によってその水溶液がアルカリ性を示す性質を有している。下記式(3)および式(4)に炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムの水和反応を示すが、いずれの場合も水和反応により炭酸と水酸化ナトリウムとなり、水酸化ナトリウムがナトリウムイオンと水素イオンに電離することによりアルカリ性を示す。
NaCO+2HO→2Na+HCO+2OH …(3)
NaHCO+HO→Na+HCO+OH …(4)
このようにアルカリ性を示す水溶液を高炉水砕スラグに接触させると、いわゆるアルカリ刺激によって高炉水砕スラグの固結が促進される現象が生じてしまい、高炉水砕スラグの固結防止効果が阻害されるおそれがある。これを防止するためには、上記水溶液に酸を添加して中和処理してから高炉水砕スラグと接触させるか、または、高炉水砕スラグを上記水溶液と接触させた後、さらに酸と接触させて中和処理することが有効である。このようにして中和処理する場合には、中和処理によって生成された塩自体が高炉水砕スラグ表面に吸着して固結防止剤として機能することにより、固結防止効果がより向上する。このような中和処理に用いる酸は特に限定されるものではないが、クエン酸、フマル酸、コハク酸、フタル酸、酢酸、グルコン酸等のカルボン酸が特に好ましく、このようなカルボン酸を用いることにより上記効果をより一層高めることができる。上記カルボン酸は、2種以上を併用してもよい。以下、この中和処理について具体的に説明する。
まず、炭酸ナトリウム水溶液をクエン酸で中和処理する場合の反応を下記式(5)に示す。この反応で生成するクエン酸ナトリウムは高炉水砕スラグ表面に吸着され、固結防止剤として機能する。
3NaCO+2HOOC−C(OH)(CHCOOH)
→2NaOOC−C(OH)(CHCOONa)+3HCO
→2NaOOC−C(OH)(CHCOONa)+3HO+3CO …(5)
次に、炭酸ナトリウム水溶液をフマル酸で中和処理する場合の反応を下記式(6)に示す。この反応で生成するフマル酸ナトリウムも、クエン酸ナトリウムと同様に高炉水砕スラグ表面に吸着され、固結防止剤として機能する。
NaCO+HOCOCH=CHCOOH
→NaOCOCH=CHCOONa+HCO
→NaOCOCH=CHCOONa+HO+CO …(6)
次に、炭酸水素ナトリウム水溶液をクエン酸で中和処理する場合の反応を下記式(7)に示す。この場合も、生成するクエン酸ナトリウムは固結防止剤として機能する。
3NaHCO+HOOC−C(OH)(CHCOOH)
→NaOOC−C(OH)(CHCOONa)+3HCO
→NaOOC−C(OH)(CHCOONa)+3HO+3CO …(7)
次に、炭酸水素ナトリウム水溶液をフマル酸で中和処理する場合の反応を下記式(8)に示す。この場合も、生成するフマル酸ナトリウムは固結防止剤として機能する。
2NaHCO+HOCOCH=CHCOOH
→NaOCOCH=CHCOONa+2HCO
→NaOCOCH=CHCOONa+2HO+2CO …(8)
また、上記水溶液を接触させた後の高炉水砕スラグに酸を接触させる場合には、上記水溶液の場合と同様に、高炉水砕スラグを酸に浸漬させ、或いは高炉水砕スラグに酸を散布する方法を採ることができる。また後者の場合には、搬送中の高炉水砕スラグ、山積みされた高炉水砕スラグ、貯槽に貯留された高炉水砕スラグ等の上方から酸を散布すればよい。酸の散布後に高炉水砕スラグを撹拌すれば、スラグ中での酸の分布をより均一化することができる。
次に、高炉水砕スラグを炭酸ガスと接触させることにより、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を形成する方法について説明する。
この炭酸ガスを用いる方法では、例えば、(1)山積みされ或いは充填層を形成した高炉水砕スラグ中に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹込むことでスラグと炭酸ガスを接触させる方法、(2)高炉水砕スラグを入れた処理槽に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹き込み、スラグの流動層を形成させることによりスラグと炭酸ガスを接触させる方法、(3)高炉水砕スラグが定量供給されたローターキルン内に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹き込むことでスラグと炭酸ガスを接触させる方法、(4)容器内に高炉水砕スラグと炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスとを入れ、容器を回転または振とうさせることでスラグと炭酸ガスを接触させる方法、(5)炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスが入れられた容器内で高炉水砕スラグを落下させることでスラグと炭酸ガスを接触させる方法、(6)高炉水砕スラグの搬送手段(例えばベルトコンベヤなど)のケーシング内に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹込み、スラグの輸送中に炭酸ガスと接触させる方法、(7)破砕装置により高炉水砕スラグを破砕する工程で炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを吹込み、スラグと炭酸ガスを接触させる方法など、適宜な方法を用いることができ、要は高炉水砕スラグと炭酸ガスとが均等に無駄なく接触反応し、スラグ粒子表面に炭酸カルシウム皮膜を形成し得る方法であればよい。
炭酸ガスを高炉水砕スラグと接触させることで、スラグ粒子表面に炭酸カルシウム皮膜を短時間に生成させるためには、高炉水砕スラグが適当な水分(好ましくは含水率:3〜20%)を含んでいることが必要であり、特にスラグ粒子の表面に水膜状の表面付着水が存在していることが好ましい。この表面付着水とは、スラグ粒子とともに存在する水分のうち、粒子内部に含有される水分以外、すなわちスラグ粒子外表面に存在する水のことである。スラグ粒子が水分、特に表面付着水を有している場合、炭酸ガスとスラグ粒子との反応は、スラグ粒子から表面付着水中に溶出(拡散)したカルシウムイオンと炭酸ガス中から表面付着水中に溶解した炭酸イオンとの反応となるが、このようなスラグ粒子の表面付着水を介した反応が、スラグ粒子表面での炭酸カルシウムの迅速な生成に特に有効である。
上記のようなスラグの水分を確保するために、必要に応じて事前に高炉水砕スラグに水分を添加することが好ましい。
高炉水砕スラグと接触させるべき炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスは、その温度をある程度高くすることによりスラグ粒子との反応性が高まるが、高炉水砕スラグと接触させる空間(以下、反応空間という)内に導入するガス温度が、当該反応空間内での水の沸点を超えるとスラグ粒子に付着した水を蒸発させ、却って反応性を阻害する。このため炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスの温度は反応空間内での水の沸点以下とすることが好ましい。
また同様の理由から、反応空間内の温度を水の沸点以下に保つこと、さらに、高炉水砕スラグの温度も反応空間内での水の沸点以下に保つことが好ましい。
また、同様の観点から、炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガス中の水蒸気濃度は高い方が好ましく、このため予め炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを水中に通すことでHOを飽和させ、しかる後、高炉水砕スラグと接触させるようにすることが好ましい。
さらに、処理効率を上げるためには、反応空間内に供給する炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを加圧した状態とすることが好ましい。このガス圧力は特に限定しないが、CO分圧が高いほど高炉水砕スラグの表面付着水中への炭酸ガス溶解速度が大きくなるので、加圧した状態で高炉水砕スラグと接触させれば、大気圧での接触に較べて処理効率を効果的に向上させることができる。
炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスとしては、例えば、製鉄所において発生するガスを例に挙げると、CaCO焼成炉の排ガス、熱風炉ガス、ボイラー排ガス、コークス炉排ガス、焼結炉排ガス、スラブ加熱炉排ガス、焼鈍炉排ガス等が挙げられる。
以上の説明では、高炉水砕スラグを炭酸水溶液、炭酸塩の水溶液、炭酸ガスと各々接触させる場合について述べたが、高炉水砕スラグをそれらの2種以上と接触させてもよく、また、場合によっては炭酸水溶液にさらに上述した炭酸塩を添加したものを用いてもよい。
以下の方法により高炉水砕スラグのスラグ粒子表面に炭酸カルシウム皮膜を生成させ、これら高炉水砕スラグをアマモ場基盤材として用いた。
(1)本発明例1:高炉水砕スラグ100kgに対して25℃大気圧での飽和炭酸水溶液(水1Lに対して炭酸ガス1.6gを溶解させた水溶液)5Lを均一に散布した。
(2)本発明例2:25℃大気圧での飽和炭酸水溶液(水1Lに対して炭酸ガス1.6gを溶解させた水溶液)100L中に、高炉水砕スラグ100kgを10分浸漬した後、取り出した。
(3)本発明例3:高炉水砕スラグ100kgに対して0.1規定の炭酸水素ナトリウム水溶液5Lを均一に散布した。
(4)本発明例4:高炉水砕スラグ100kgに対して、0.1規定の炭酸水素ナトリウム水溶液にフマル酸を中和等量混合した水溶液5Lを均一に散布した。
(5)本発明例5:0.1規定の炭酸水素ナトリウム水溶液100L中に、高炉水砕スラグ100kgを10分浸漬した後、取り出した。
(6)本発明例6:0.1規定の炭酸水素ナトリウム水溶液にフマル酸を中和等量混合した水溶液中100L中に、高炉水砕スラグ100kgを10分浸漬した後、取り出した。
(7)本発明例7:水分含有率15%に調整した高炉水砕スラグ100kgの充填層に、CO濃度20%の排ガスを60L/minの供給量で1時間吹き込んだ。
平坦な海底に、2m×2mの区画を複数設け、各区画に上記本発明例(1)〜(7)のアマモ場基盤材(底質)と比較例の海砂を50cm厚みで敷設し、そこにアマモを各30株移植した。各区画の間隔は2mとした。1年後にアマモ株数を調査した結果を表1に示す。
Figure 0004185569
平坦な海底に、2m×2mの区画を複数設け、各区画に上記本発明例(1)のアマモ場基盤材(底質)と比較例の海砂を50cm厚みで敷設し、そこにアマモの種子を各100粒播種した。100粒の種子は約5等分し、1区画の中に5箇所に分けて播種した。各区画の間隔は2mとした。3ヶ月後に発芽、生育した株数を調査した。結果を表2に示す。
Figure 0004185569

Claims (10)

  1. スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグを海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、該基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することにより海草類を着生・増殖させ、海草藻場を形成することを特徴とする海草藻場の造成方法。
  2. スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物を海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、該基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することにより海草類を着生・増殖させ、海草藻場を形成することを特徴とする海草藻場の造成方法。
  3. 他の底質構成材が、天然砂、浚渫土、当該敷設場所の底質土、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグ以外のスラグの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項2に記載の海草藻場の造成方法。
  4. 混合物中での、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグの割合が20体積%以上であることを特徴とする請求項2又は3に記載の海草藻場の造成方法。
  5. スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグが、高炉水砕スラグを炭酸水溶液、炭酸塩の水溶液、炭酸ガスの中から選ばれる1種以上と接触させることにより、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を生成させた高炉水砕スラグであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の海草藻場の造成方法。
  6. スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグを海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、該基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することにより海草類を着生・増殖させることを特徴とする海底での海草類の増殖方法。
  7. スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグと他の底質構成材との混合物を海底に敷設して海草類の地下茎又は根を定着させるための基盤を設け、該基盤に海草類を移植し又は海草類の種子を播種することにより海草類を着生・増殖させることを特徴とする海底での海草類の増殖方法。
  8. 他の底質構成材が、天然砂、浚渫土、当該敷設場所の底質土、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグ以外のスラグの中から選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項7に記載の海底での海草類の増殖方法。
  9. 混合物中での、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグの割合が20体積%以上であることを特徴とする請求項7又は8に記載の海底での海草類の増殖方法。
  10. スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜が形成された高炉水砕スラグが、高炉水砕スラグを炭酸水溶液、炭酸塩の水溶液、炭酸ガスの中から選ばれる1種以上と接触させることにより、スラグ粒子の表面に炭酸カルシウム皮膜を生成させた高炉水砕スラグであることを特徴とする請求項6〜9のいずれかに記載の海草類の増殖方法。
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