JP2007136452A - スラグ材及びその製造方法並びにそのスラグ材を利用した環境改善材料、環境改善方法及び土木建築材料 - Google Patents

スラグ材及びその製造方法並びにそのスラグ材を利用した環境改善材料、環境改善方法及び土木建築材料 Download PDF

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Abstract

【課題】 高炉スラグ及び製鋼スラグを、水底及び水質を浄化するための環境改善材料、或いは路盤材などの土木建築材料として使用するに当たり、スラグ同士の固結を防止し且つpH上昇を抑制し、環境改善材料及び土木建築材料として十分に適用することのできるスラグ材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係るスラグ材は、104cells/g-slag以上の微生物を有しており、更に、この微生物によって形成された有機物或いは微生物によって形成された有機酸を有することを特徴とし、また、本発明に係るスラグ材の製造方法は、スラグに、微生物と養分、または養分を接触させて微生物を増殖させ、スラグに存在する微生物の数が104cells/g-slag以上であるスラグ材を製造することを特徴とする。
【選択図】 なし

Description

本発明は、雨水に曝されたり水中に敷設されたりしても固結しにくく且つpH上昇の抑制効果に優れたスラグ材及びその製造方法に関し、更に、このスラグ材を利用した、海、河川、湖沼などの水底の環境を改善するための環境改善材料及び環境改善方法、並びに、路盤材、土壌改良材、地盤改良材などに適用される土木建築材料に関するものである。
海、河川、湖沼などの水底を浄化する方法として、水底を覆砂する方法、即ち、水底を粉粒状材料で覆い、赤潮や青潮の原因となる、水底から溶出する硫化水素や栄養塩類を封じ込める方法が知られており、この覆砂に用いる材料としては、海砂や山砂などの天然砂のように水底を覆うことのみを目的とした材料の他に、石灰のように水底を覆うことに加えて水底の富栄養化成分を化学的に吸着する機能を持つものが用いられてきた。しかし、天然砂のような化学反応性を有しない材料では、覆砂効果が十分に得られないことが懸念され、一方、石灰のように化学反応性を有する材料では、費用が高価になること、及びpHの制御が困難で水質が高アルカリになる場合があるといった問題点があった。
そこで、上記の問題点を解決する手段として、覆砂材料として高炉スラグ或いは製鋼スラグを用い、水質や水底の浄化を図る技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、水底に形成された凹部内に、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグからなる覆砂材料を敷設し、これにより水底の環境を改善する方法が開示され、また、特許文献2には、貝類の既存漁場または漁場を造成すべき場所の水底または水浜に、貝類が生息する底質の少なくとも一部を構成するべく、鉄鋼製造プロセスで発生した、水中にCaイオンを溶出するスラグを敷設する方法が開示されている。
しかしながら、高炉スラグや製鋼スラグには水中で固まる(固結)という性質があり、固結した場合、砂泥中に生息する生物、つまり貝類やゴカイなどの主要な底生生物の生息場としては不適となり、また、アマモの根も張れない状況になってしまうという問題点があった。この固結は、スラグ粒子間の間隙水に溶出したCa2+イオンが沈殿し、水和物を形成してスラグ粒子を結合させる水和反応によって発生する。この固結反応は、間隙水のpHが上昇すると促進される。
従って、スラグ粒子が直接接触しないようにすれば、水和反応は起こらず、固結することはない。そのために、スラグに天然砂、浚渫土などを混合して、スラグ同士の接触を抑制させる方法が提案されているが(例えば特許文献3参照)、この方法には、スラグと天然砂、浚渫土などとを均一に混合させることが困難であり固結を十分に抑制できない、また、混合する浚渫土などの性質が一定でないことから、事前に浚渫土などを分析する必要がある、更には、地域によっては山砂のみならず浚渫土さえも入手しにくいなどの欠点がある。
また、特許文献4には、スラグの表面の一部或いは全てを、セメントまたはセメント含有物で覆い、これを覆砂材料とする方法が開示されている。しかしながら、この方法には、セメントはアルカリ性が強く、海底に敷いた場合に生物に悪影響を与える可能性がある、また、セメントを均一にスラグ粒子に被覆させることは極めて困難であるので固結を十分に防止できないという欠点がある。
このように、高炉スラグ或いは製鋼スラグを覆砂材料として有効利用する技術は未だ確率されていないのが現状である。
また、高炉スラグ及び製鋼スラグは上記の覆砂材料のみならず、様々な用途に使用されている。例えば、製鋼スラグは、土壌改良材、路盤材、地盤改良材、セメントやコンクリートの骨材などの土木建築材料として有効利用されている。しかしながら、製鋼スラグは、CaO成分などを始めとする水和性成分(遊離CaOや遊離MgO)を有しており、これらの成分が水分と接触して水和する際に体積が約2倍に増加することに起因するスラグの膨張現象、或いは、とりわけ遊離CaOが水に溶出することに起因するpHの上昇現象や、同じく海水に溶出してpHが増加し、Mg(OH)2 が析出することに起因する白濁現象などを生じさせることから、路盤材、骨材、石材といった土木建築材料や海洋での潜堤材などの土木建築材料として利用を図る際の阻害要因となっていた。
製鋼スラグを土木建築材料として使用する場合、製鋼スラグの有する上記問題のうち、前者の膨張現象については、その原因である遊離CaOや遊離MgOを減少させてスラグの膨張性を安定化させるための処理方法として、大気雰囲気下に数ヶ月から数年の期間、暴露させて十分に水和反応を施す「大気エージング処理」や、大気圧下または加圧下で強制的に水蒸気と反応させて水和処理反応を促進させる「蒸気エージング処理」或いは「加圧エージング処理」が広く知られている(例えば特許文献5参照)。しかしながら、後者のpH上昇や白濁といったアルカリ溶出現象については、上記のエージング処理を施しても、残存する遊離CaOのみならず、エージング処理後の水和処理生成物であるCa(OH)2 も同じく可溶性であり、アルカリ溶出源としては何ら変わりなく存在するために、解決に至っていない。
また更に、製鋼スラグには、環境改善材料及び土木建築材料として製鋼スラグを使用するに当たり、破砕して所定のサイズに調製した製鋼スラグを例えば野外に積み上げて仮置きし、仮置き期間が長引くと、スラグ粒子同士が固結してしまい、再度破砕しなければ、環境改善材料や土木建築材料として使用できなくという問題点もある。
特開2003−286711号公報 特開2004−215533号公報 特開2005−52031号公報 特開2004−313818号公報 特開平10−338557号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、高炉スラグ及び製鋼スラグを、海、河川、湖沼などの水底及び水質を浄化するための環境改善材料、或いは、土壌改良材や路盤材などの土木建築材料として使用するに当たり、スラグ同士の固結を防止するとともにスラグからのアルカリの溶出を抑制して環境改善材料及び土木建築材料として十分に適用することのできるスラグ材を提供するとともに、そのスラグ材を得るための製造方法を提供することであり、更に、このスラグ材を利用した、長期間に亘って水底及び水質を浄化することのできる環境改善材料及び環境改善方法、並びに、アルカリの溶出に起因するpHの上昇現象や白濁現象を発生することのない土木建築材料を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究・検討を行った。その結果、スラグ表面で微生物を増殖させ、スラグ表面に大量の微生物を存在させることにより、この微生物によって形成される、バイオフィルムと呼ばれる有機物膜でスラグ粒子の表面が被覆され、スラグ粒子同士の接触が物理的に妨げられてスラグの固結が抑制される、或いは、スラグに存在する微生物によって形成される有機酸により、スラグから溶出したCa2+イオンが中和され、固結の原因であるCa2+イオンが減少して、スラグの固結が抑制されるとの知見を得た。また、Ca2+イオンが減少することで、pHの上昇現象も防止されるとの知見を得た。
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、第1の発明に係るスラグ材は、スラグと、該スラグに存在する104cells/g-slag以上の微生物と、を含むことを特徴とするものである。
第2の発明に係るスラグ材は、第1の発明において、更に、前記微生物によって形成された有機物を有することを特徴とするものである。
第3の発明に係るスラグ材は、第1の発明において、更に、前記微生物によって形成された有機酸を有することを特徴とするものである。
第4の発明に係るスラグ材は、第1ないし第3の発明の何れかにおいて、前記スラグは、高炉スラグ及び/または製鋼スラグであることを特徴とするものである。
第5の発明に係るスラグ材の製造方法は、スラグに、微生物と養分、または養分を接触させて微生物を増殖させ、スラグに存在する微生物の数が104cells/g-slag以上であるスラグ材を製造することを特徴とするものである。
第6の発明に係るスラグ材の製造方法は、スラグに、微生物と養分、または養分を接触させて微生物を増殖させ、スラグに存在する微生物の数が104cells/g-slag以上であり、且つ、前記微生物によって形成された有機物が存在するスラグ材を製造することを特徴とするものである。
第7の発明に係るスラグ材の製造方法は、スラグに、微生物と養分、または養分を接触させて微生物を増殖させ、スラグに存在する微生物の数が104cells/g-slag以上であり、且つ、前記微生物によって形成された有機酸が存在するスラグ材を製造することを特徴とするものである。
第8の発明に係るスラグ材の製造方法は、第5ないし第7の発明の何れかにおいて、前記スラグは、高炉スラグ及び/または製鋼スラグであることを特徴とするものである。
第9の発明に係る環境改善材料は、第1ないし第4の発明の何れか1つに記載のスラグ材を含有していることを特徴とするものである。
第10の発明に係る環境改善材料は、第5ないし第8の発明の何れか1つに記載のスラグ材の製造方法によって製造されたスラグ材を含有していることを特徴とするものである。
第11の発明に係る環境改善方法は、第9または第10の発明に記載の環境改善材料を、水中または水浜に敷設することを特徴とするものである。
第12の発明に係る土木建築材料は、第1ないし第4の発明の何れか1つに記載のスラグ材を含有していることを特徴とするものである。
第13の発明に係る土木建築材料は、第5ないし第8の発明の何れか1つに記載のスラグ材の製造方法によって製造されたスラグ材を含有していることを特徴とするものである。
本発明に係るスラグ材は、スラグ粒子表面及びスラグ粒子間に、104cells/g-slag以上の微生物が存在しているので、酸素が潤沢に存在する条件(「好気条件」という)では、微生物によって形成されるバイオフィルムと呼ばれる微生物の集合体からなる有機物がスラグ粒子の表面の少なくとも一部を被い、これにより、スラグヤードに仮置きしたり、水中或いは水浜に敷設したりしてもスラグ粒子同士の接触が妨げられて、スラグの固結が抑制される。また、スラグが有機物を有することにより、スラグから溶出するCa2+イオンも有機物膜中に留まるため、スラグ固結の原因となるCa2+イオン自体が少なくなり、固結がより一層抑制される。Ca2+が減少することにより、当然ながらpHが低下し、白濁現象を防止することができる。
このバイオフィルムは、微生物と養分または養分をスラグに接触するだけで、スラグ粒子の1粒1粒に簡単に形成させることができるので、極めて簡単に且つ安価にバイオフィルムを付着させることができる。また、有機物自体が燐や窒素といった養分を含んでいるので、本発明のスラグ材を環境改善材料としてアマモ基盤材などに用いた場合には、養分補給の役割も果たすことができる。更に、予め有機物を有しているので、海底などに沈設した際に天然の微生物も付着しやすくなり、既に海中に存在する天然石や砂の状態に、より早く近づきやすくなる。また更に、予め有機物を有していることによって、例えば海域の生物の親和性が高くなり、海底に本発明のスラグ材を敷設した場合には、貝やゴカイなどの底性生物が生息しやすくなる。
また、スラグに存在する微生物が出す代謝物によって、スラグ粒子の表面に変化がもたらされる。例えば、キレートの性質を持つ代謝物が出た場合には、スラグ粒子の表面から溶出したCa2+イオンなどが固定され、スラグ粒子表面からのアルカリ溶出が抑制される。また、代謝物が多糖類などの場合も、スラグ粒子表面からのイオンの溶出の抑制効果をもたらす。多糖類はまたスラグ粒子同士の接触を妨げるので、固結防止にも寄与する。
一方、酸素が潤沢にない条件(「嫌気条件」という)や、或いは好気条件であっても菌種によっては、スラグに存在する大量の微生物によって、酢酸、乳酸、蟻酸などの有機酸が形成され、生成される有機酸により、スラグ粒子表面から溶出するアルカリが中和されるという効果がもたらされる。即ち、アルカリが中和されることで、固結の原因となるCa2+イオンが減少し、固結が抑制される。当然ながら、pHの上昇現象も防止される。強い有機酸を出す微生物の場合は、中和の効果が大きく、スラグを水または海水に浸漬(スラグ:水=10:1)したときの間隙水のpHが9以下または8以下になる場合もある。また、死んだ微生物が分解するときに酸を生成する場合にも、同様な効果が認められる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明では、高炉スラグ或いは製鋼スラグに、微生物とこの微生物用の養分、または微生物の養分を接触させ、微生物を増殖させて、高炉スラグ或いは製鋼スラグの粒子表面及び粒子間に104cells/g-slag以上の微生物を存在させ、そのスラグを環境改善材料或いは土木建築材料として有効活用することのできるスラグ材とする。ここで、「104cells/g-slag以上の微生物」とは、「スラグ1g当たりで104cells以上の微生物」という意味である。また、自然界には種々の微生物が存在しており、養分のみを接触させてもこれらの微生物が増殖し、上記の数値の微生物を高炉スラグ或いは製鋼スラグの粒子表面及び粒子間に存在させることができる。尚、微生物の数の単位を「cells」と記載する理由は、微生物は単細胞であり、細胞(cell)の数と微生物個体の数とが一致するからである。
本発明のスラグ材においては、スラグに存在する微生物の数の上限値は特に規定する必要はないが、微生物単体が生育する上で微生物から排出される排泄物などによって自ずと或る程度の領域をその周囲に確保する必要がおり、これから判断して1014cells/g-slag程度が微生物の生育する上限値であると思われる。
このように大量の微生物を存在させることで、スラグを取り囲む雰囲気に酸素が潤沢に存在する場合には、この微生物が排出する糖類、増殖した微生物、死滅した微生物などによって、高炉スラグ或いは製鋼スラグの粒子表面の少なくとも一部には有機物膜即ちバイオフィルムが形成される。このバイオフィルムにより、スラグ粒子同時の接触が妨げられ、スラグの固結が防止される。
一方、スラグを取り囲む雰囲気に酸素が潤沢に存在しない場合には、バイオフィルムを形成するための主成分となる糖類は排出されないが、代わりに、乳酸、酢酸などの有機酸を微生物が生成し、高炉スラグ或いは製鋼スラグは有機酸を有することになる。この有機酸によってスラグ粒子表面から溶出するCa2+イオンが中和されて、固結の原因であるCa2+イオンが減少して固結が防止される。また、有機酸とCa2+イオンとの反応による化合物がスラグ粒子の表面に被膜を形成し、スラグからのCa2+イオンの溶出が抑制されることによっても、固結が防止される。尚、好気条件であっても有機酸を生成する菌種も存在する。
そして、本発明では、104cells/g-slag以上の微生物を存在させた、高炉スラグ或いは製鋼スラグからなるスラグ材を、換言すれば、微生物によって生成された有機物を有し固結しにくくなったスラグ材、或いは、微生物によって生成された有機酸を有し固結しにくくなったスラグ材を、海、河川、湖沼などの水底の環境を改善するための環境改善材料、または、土壌改良材、路盤材、地盤改良材などの土木建築材料として使用する。
本発明において、上記スラグ材を環境改善材料及び土木建築材料として使用するに当たり、スラグ材を構成する高炉スラグ及び製鋼スラグ(以下、これらを総称して「鉄鋼スラグ」と記す)のサイズは、特に限定する必要はない。ただ、環境改善材料として水底に敷設される場合には、余りに大きいと粒子間の隙間が大きくなって、水底を覆うためには敷設厚みを厚くする必要が生じるなどの不都合が生じるので、環境改善材料として使用する場合には、一般的に直径30mm以下とすることが好ましい。ここで、直径30mm以下とは、目開き寸法が30mmの篩分器を通過するという意味であり、目開き寸法が30mmの篩分器を通過する限り、長径が30mmを超える紡錘形であっても構わない。但し、環境改善材料として使用する場合でも、潜堤材などに用いる場合には大きさの制限はない。また、敷設した際に有機物が蓄積しやすい海域などでは、却って間隙が大きい方が好ましく、その場合には大きさの制限はない。
また、本発明においてスラグ材として使用する鉄鋼スラグは、溶融状態の鉄鋼スラグをスラグ処理ヤードに流して空冷し、冷却固化した塊状のスラグを破砕機によって破砕して得たスラグでも、溶融状態の鉄鋼スラグに大量の水を噴射・混合攪拌して急冷する或いは溶融状態の鉄鋼スラグを大量の水の中に流し込んで急冷する方法(これらの冷却方法を「水砕法」という)によって得た、粒径がおよそ6mm以下の粒状のスラグ(「水砕スラグ」と呼ぶ)でも、溶融状態の鉄鋼スラグを空気などの気体とともに空気中に吹き飛ばして急冷する方法(この冷却方法を「風砕法」という)によって得た、粒径がおよそ6mm以下の球状のスラグ(「風砕スラグ」と呼ぶ)でも、どの方法により粒度を調整したスラグであっても構わない。また、その組成も所謂「高炉スラグ」及び所謂「製鋼スラグ」であるならば、組成に多少の違いがあっても構わない。ここでいう、高炉スラグとは、溶鉱炉から溶銑とともに排出されるスラグであり、製鋼スラグとは、溶銑予備処理工程で発生する脱珪スラグ、脱硫スラグ、脱燐スラグ、並びに、転炉における溶銑の脱炭精錬時に発生する脱炭スラグである。
この鉄鋼スラグに接触させる微生物としては、つまり鉄鋼スラグの表面に有機物膜を形成させる或いは有機酸を付着させるための微生物としては、バクテリア、放線菌、菌類界に含まれる麹菌などのカビ、白色腐朽菌などのキノコや酵母、を使用することができる。
好気的な菌として、バクテリアでは、特にpH8以上のアルカリ環境でも生育できる好アルカリ性細菌がスラグ上での成育という観点から好ましい。主にバチルス属細菌がこれに該当する。バチルス属細菌の例として、バチルス・コーニー(Bacillus cohnii )、バチルス・アルカロフィラス(Bacillus alcalophilus)、バチルス・アガラドハエレンス(Bacillus agaradhaerens sp.)、バチルス・クラーキー(Bacillus clarkii sp.)、バチルス・クラウジー(Bacillus clausii sp.)、バチルス・ギブソニー(Bacillus gibsonii sp.)、バチルス・ハルマパラス(Bacillus halmapalus sp.)、バチルス・ハロデュランス(Bacillus halodurans comb.)、バチルス・ホリコジー(Bacillus horikosii sp.)、バチルス・シュードアルカロフィラス(Bacillus pseudoalcalophilus sp.)、バチルス・シュードファームス(Bacillus pseudofirmus sp.)、バチルス・ベッデリ(Bacillus vedderi sp.)などが上げられる。納豆菌(Bacillus subtilis natto)もこの属に属し、増殖速度が速く大量に培養しやすいことから有効に利用できる。アンモニア酸化細菌などは増殖速度が遅いために使用しにくいという欠点がある。
また一般に好気的な菌の方が、増殖速度が速いために使用しやすいが、嫌気的な菌はpHを低下させる効果がある。嫌気的な菌の例として乳酸菌が挙げられる。乳酸菌にはラクトバチルス(Lactbacillus)、スポロラクトバチルス(Sporolactobacillus)、スプレプトコッカス(Streptococcus)、エンテロコッカス(Enterococcus)、ラクトコッカス(Lactcoccus)、リュウコノストック(Leuconostoc)、ペディノコッカス(Pediococcus)などの属がある。
また、乳酸菌以外にも酸を生成する嫌気性菌を用いると、炭水化物などを嫌気的に発酵し、酢酸や乳酸や酪酸などの有機酸を菌体外に生成し、それらの有機酸はpHが低く、スラグのアルカリ成分を中和する効果が得られるので好ましい。このような酸を生成する嫌気性の菌としては、ペプトコッカス属(Peptococcus属)、ルミノコッカス属(Ruminococcus属)、ザルチナ属(Sarcina属)、オウロピオニバクテリウム属(Propionibacterium属)、ビフイドバクテリウム属(Bifidobacterium属)、ユウバクテリウム属(Eubacterium属)、ブチリビブリオ属(Butyrivibrio属)、アセトバクテリウム属(Acetobacterium属)などが挙げられる。
また、好気的に酸を生成する菌である酢酸菌の例として、グルコノバクター属(Gluconobacter属)やアセトバクター属(Acetobacter属)などが挙げられ、これらの菌も活用できる。
更に、微生物としては、光合成細菌や微細藻類なども含まれる。但し、これらを増殖させるためには光を必要とする。
また、上記の微生物から選ばれる2種以上を併用することが好ましい。2種以上を併用することにより、バイオフィルムが形成されやすくなったり、しっかりとしたバイオフィルムが形成されたりする効果が得られる。これは、様々な場所で形成されているバイオフィルムにおける微生物叢を考えた場合、その多くは複合系で存在しているからである。例えば、古川等(Furukawa et al.,Proc.ASM Biofilm Conf.,p.93,2003.参照)は、複合微生物系バイオフィルムの形成機構解明に関して、43種類の食品関連微生物の2種ずつの複合培養系におけるバイオフィルム形成について検討を行った結果、全903通り中で30.6%の組み合わせでバイオフィルムの形成量が増加し、9.7%の組み合わせでバイオフィルム形成量が減少したことを報告している。
この結果から複合微生物系においては、バイオフィルム形成量は増加する傾向にあることが明らかである。また、バイオフィルム形成量が増加した複合微生物系の組み合わせには、酵母と乳酸菌との組み合わせが含まれていた。酵母及び乳酸菌は単独系ではほとんどバイオフィルムを形成しないことから判断して、単独系ではバイオフィルムを形成しない菌種でも、或る特定の菌種と共存した場合にはバイオフィルムが形成されることが分かった。特に、サッカロマイセス・セレビザ協会10号(Saccharomyces cerevisae 協会10号)とラクトバチルス・カゼイ・サブスペシーズ・ラムノザス(Lactobacillus casei subsp. Rhamnosus)との組み合わせにおいては、乳酸菌の培養上清を添加することにより、酵母のバイオフィルム形成が促進されること、及び、培養上清は加熱処理によってバイオフィルム形成促進活性を失うこと、などが本発明者等によって確認されている。以上のことから、特に2種以上の微生物を用いる場合には、酵母や乳酸菌との組み合わせが好ましいと考えられる。また、特定の菌種ではなく、土壌、下水汚泥、ヘドロなどをスラグに接触させるための複合微生物群として用いることもできる。
これらの微生物を生育させるために鉄鋼スラグに添加する養分としては、グルコース溶液(グルコース濃度:0.5〜10質量%)、たんぱく質加水分解物、肉や酵母のエキス、血液や卵、焼酎やビールの絞り粕、サトウキビの絞り粕、糖蜜、廃糖蜜、剪定材や海藻や植物系廃棄物やその醗酵物などを使用することができる。また、鉄鋼スラグに元々存在していたスラグ常在菌が養分を与えられることにより増加し、その代謝物、例えば有機酸によりpHを低下させることも本発明の範囲に含まれる。
鉄鋼スラグに104cells/g-slag以上の微生物を存在させるには、例えばスラグヤードに堆積させた鉄鋼スラグに上記の微生物と養分または養分を散布し、好ましくは掻き混ぜ、1週間程度を費やして微生物を育成・生長して増殖させる。この場合、微生物は乾燥状態になると育成・生長しないので、鉄鋼スラグの周囲に土手を形成する、或いは、鉄鋼スラグをシートで覆うなどして、養分の流出並びに乾燥を防止してもよい。乾燥した場合には、水分を添加することが好ましい。また、微生物によりバイオフィルム有機物或いは有機酸が鉄鋼スラグに形成されるまでの日数は、添加する微生物の個数及び養分の量に影響されるので、1週間程度で有機物或いは有機酸を形成させるためには、鉄鋼スラグ1m3に対して、1mL当たり107 cells(以下、「cells/mL」と記す)程度の微生物を含有する、5質量%のグルコース溶液を0.15m3程度添加することが好ましい。通常、培養した微生物は106 〜108 cells/mL存在するので、存在する個数に応じて前記関係を維持するようにすればよい。同様に、グルコース溶液の濃度に応じて前記関係を維持するようにすればよい。この場合、鉄鋼スラグをスラグヤードに堆積させる必要はなく、密閉した底を有する容器の中で有機物或いは有機酸を形成させることもできる。また、乾燥した場合には水を添加することとする。この場合、水とともに微生物及び養分を再度添加してもよい。
鉄鋼スラグに存在する微生物の数を、微生物の生死に拘わらず計数する方法としては計数盤法がある。計数盤法とは、スライドグラスの表面を極薄く削って低くした部分に、小さな溝を刻んでつくった格子を描いたものを用い、そこに、スラグ5gを生理的食塩水10mLに入れて超音波で2分間程度処理してスラグから微生物を剥離し、剥離した微生物を含む生理的食塩水を滴下し、カバーグラスをかけて一定の間隙が液で満たされるようにし、顕微鏡でスライドグラスにある格子状の最少区画内にいる微生物の数を数え、そこから単位容量当たりの数を計算で求める方法である。また、スラグから遺伝子を抽出し、リアルタイムPCR法と呼ばれる遺伝子解析手法を用いて、遺伝子の数を計測して微生物の数を求める手法も用いることができる。具体的には、0.5gのスラグを抽出キットに装入し、DNAを抽出する方法である。
微生物、或いは、微生物及び栄養源から由来した有機物と判断するには、元素分析において、炭素量及び窒素量がスラグ自体の含有量より明らかに多いことから識別できる。また微生物の形態がはっきりしていれば識別することができる。また、スラグ粒子表面に付着している微生物は、採取したスラグ粒子をグルタールアルデヒド溶液に浸漬して固定し、その後、濃度の異なるアルコール溶液で主に微生物体からなる有機物中の水分をアルコールと置換し、CO2 臨界点乾燥を行うなどのように、形態が崩れないような前処理と乾燥とを行った後、オスミウム(Os)を蒸着し、高分解能型の走査型電子顕微鏡(FE−SEM)でスラグ粒子表面を観察し、FE−SEM付帯の特性X線分析装置(EDX)で、炭素及び窒素が多く検出されるかどうかによって判断できる。
スラグに所定量の微生物を存在せしめた後に乾燥させ、微生物、有機物或いは有機酸を鉄鋼スラグ粒子の表面に密着させることが好ましい。乾燥して密着させることで効果が高まるが、必ずしも乾燥させる必要はない。鉄鋼スラグを乾燥するには、スラグをスラグヤードにそのまま放置する、或いは、スラグヤードから掻き出してコンテナに収容するなどして行うことができる。鉄鋼スラグを乾燥することで、微生物の大半は死滅するが、有機物或いは有機酸として鉄鋼スラグに存在しており、スラグ粒子の固結は防止される。
本発明のスラグ材では、鉄鋼スラグが104cells/g-slag以上の微生物を一旦有すればよく、その後微生物は死んでもその細胞が有機物として残るので効果は保たれる。104cells/g-slag以上の微生物を含む有機物または微生物や養分由来の有機物が付着することによって、スラグの固結を防止でき、更にスラグからのアルカリ成分の溶出を防止できる。但し、これらの効果をより一層発揮させるために、望ましくは107cells/g-slag以上の微生物がスラグに存在していることが好ましい。
このようにして製造したスラグ材を、海、河川、湖沼などの水底の環境及び水質を改善するための環境改善材料として適用し、或いは、路盤材、土壌改良材、地盤改良材、セメントやコンクリートの骨材、石材、及び、海洋における、潜堤材、裏ごめ材、裏埋め材、盛土材、サンドコンパクション、SCPサンドマット、浅場造成材などの土木建築材料として適用する。また、この環境改善材料を、海、河川、湖沼などの水底或いは水辺に敷設して環境の改善を図る。
本発明に係るスラグ材を環境改善材料として使用した場合には、スラグは有機物或いは有機酸を有しているので、水中或いは水浜に敷設した際に、有機物によってスラグ粒子同士の接触が妨げられる、或いは、有機酸によってスラグ粒子表面から溶出するCa2+イオンが中和されることによって、スラグ粒子同士の固結が抑制される。また、有機物を食べに水中の微生物や生物が集まってくるので、スラグ粒子の表面には更に微生物層が形成され、この微生物層によってもスラグ粒子同士の固結が防止される。また、その微生物や有機物を捕食するゴカイなどが集まり増殖することで、生物攪拌が行われ、常にスラグが動かされるので、更に固結しにくくなる。更に、スラグ粒子には有機物が付着しているので、鉄鋼スラグから溶出するCa2+イオンも有機物中に留まるため、固結の原因となるイオン自体が少なくなり、固結がより一層抑制され、長期間に亘って海、河川、湖沼などの水底の環境を改善する効果が持続される。また更に、スラグが有する有機物は、本来生物の集合体であり、水中に敷設した場合には、他の生物の養分となったり、生物親和力が高いので、その他の生物の生息環境を良好に保ったりすることができる。
上記の有機物或いは有機酸は、微生物と養分、または養分をスラグに接触するだけで、鉄鋼スラグに存在せしめることができるので、極めて簡単に且つ安価に環境改善材料を得ることができる。また、有機物自体が燐や窒素といった養分を含んでいるため、この環境改善材料をアマモ基盤材などに用いた場合には、養分補給の役割も果たす。この場合、敷設厚みは20cm程度以上であれば十分である。
本発明においては、有機物或いは有機酸を有する上記スラグ材のみを環境改善材料とする必要はなく、上記スラグ材に、有機物或いは有機酸が付着していない通常の鉄鋼スラグを混合したものを環境改善材料として敷設しても構わない。但し、この場合には上記の固結防止効果は自ずと低下するので、所望する効果に応じて配合量を決定すればよい。
また、本発明に係るスラグ材を土木建築材料として使用した場合には、スラグは有機物或いは有機酸を有しているので、有機物層によってスラグからのアルカリイオンの溶出が妨げられる、或いは、有機酸によってスラグから溶出するアルカリイオンが中和されてpHの上昇が抑えられることにより、pH上昇に起因する白濁現象などを防止することができる。
本発明においては、有機物或いは有機酸を有する上記スラグ材のみを土木建築材料とする必要はなく、上記スラグ材に、有機物或いは有機酸が付着していない通常の鉄鋼スラグを混合したものを土木建築材料として使用しても構わない。但し、この場合には上記のpH上昇防止効果は自ずと低下するので、所望する効果に応じて配合量を決定すればよい。
スラグヤードに堆積させた体積10m3 の高炉水砕スラグに対し、バチルス菌個数が107 cells/mLの濃度で含まれる、グルコース濃度が5質量%のグルコース溶液を1.5m3散布した後、シャベルローダーで攪拌した。
3日に一度の毎に1m3 の水を散布して乾燥を防ぎながら、そのまま1週間放置した。このとき好気性を保つために、堆積させたスラグの下方から毎分1m3の通気を行った。1週間経過した時点で、微生物が高炉水砕スラグ粒子の表面に付着したことを電子顕微鏡によって確認し、確認後はそのままスラグヤードに放置して乾燥させ、本発明のスラグ材を製造した。そして、このスラグ材を環境改善材料Aとした。リアルタイムPCR法(抽出キッドとしてSpinkit 使用)で測定した結果、環境改善材料Aは107 cells/g-slagの微生物を有していた。
図1に、製造したスラグ材つまり環境改善材料Aの表面を、高分解能型の走査型電子顕微鏡((株)日立製作所製:S−4800)を用いて5.0kVの加速電圧、5000倍の倍率で観察した結果を示す。電子顕微鏡観察試料は、CO2 臨界点乾燥法により上記スラグ材を乾燥し、乾燥後、その表面にオスミウム(Os)をプラズマコーティングして作製した。図1において、図の中央上段部と左側下段部とにバチルス菌が存在しているのが確認できる。図2は、図1の左側下段部に示すバチルス菌を倍率30000倍で拡大した図である。棒状のバチルス菌がスラグの表面に存在する様子が分かる。
図3に、図2に示すバチルス菌のEDX定性分析結果を示す(使用した装置は、エダックス・ジャパン(株)製のGenesis4000である)。図3に示すように、検体物は、炭素(C)が高い強度で検出されると同時に窒素(N)が検出されることから、有機物であることが確認できた。その他にO、Si、Al、Mg、Ca、Osなどが検出されたが、O、Si、Al、Mg、Caなどはスラグを構成する元素であり、Osは電子顕微鏡観察試料の蒸着層である。
また、平坦なコンクリート路面に体積10m3 の高炉水砕スラグを平坦にならし、その脇に、水が流れ出ないように土手を作り、そこに、バチルス菌個数が107cells/mLの濃度で含まれる、グルコース濃度が5質量%のグルコース溶液を15m3 流し込んだ。その後、2日に1度の毎にグルコース溶液を交換し、1週間経過時点で、微生物が高炉水砕スラグ粒子の表面に付着したことを電子顕微鏡によって確認した後、高炉水砕スラグを掻き出し、コンテナに装入して乾燥させ、本発明のスラグ材を製造した。そして、このスラグ材を環境改善材料Bとした。リアルタイムPCR法で測定した結果、環境改善材料Bは108cells/g-slagの微生物を有していた。
こうして作製した環境改善材料A及び環境改善材料Bを海底に敷設し、高炉水砕スラグをそのまま敷設した場合及び天然の海底の場合とで、底生生物及びアマモの生育状況について比較調査した。
[試験1]
環境改善材料A及び環境改善材料Bを水深5mの海底に厚み30cmで1m平方(縦1m×横1m)の範囲に敷設した。また、比較区として無処理の高炉水砕スラグを同様に海底に敷設した。その後、2週間毎に潜水し、金属棒を敷設部に突き刺して固結の状況を調べた。また、2ヵ月後には、縦15cm、横15cm、厚み30cmの敷設部を回収し、回収した敷設部中にどのような底生生物がどの程度生息しているかを調査した。底生生物は天然区でも調査した。
その結果、無処理の高炉水砕スラグを敷設した箇所では、1ヵ月後に固結が発生したが、本発明の環境改善材料A及び環境改善材料Bを敷設した箇所では、半年間固結が起こらなかった。また、底生生物の調査結果では、表1に示すように、無処理の高炉水砕スラグを敷設した箇所では、底生生物の種類及び個体数がともに天然区に比較して少なかったが、これに対して環境改善材料A及び環境改善材料Bを敷設した箇所では、底生生物の種類及び個体数がともに天然区と同等以上であることが分かった。
このように、有機物を付着させることで高炉水砕スラグの固結が防止され、底生生物に対して天然区と同等の環境であることが確認できた。
[試験2]
水深5mの海底のアマモ場において、試験区に使用する面積分のアマモを抜き取り、アマモを抜き取った部位に、厚み30cmで1m平方(縦1m×横1m)の範囲に環境改善材料A及び環境改善材料Bを敷設した。また、比較区として無処理の高炉水砕スラグを同様に海底に敷設した。また更に、アマモを抜き取った後の天然区(縦1m×横1m)も試験区とした。冬季にこれらの試験区にアマモを40本ずつ移植し、夏季に半年後のアマモの株数を調査した。調査結果を表2に示す。
表2に示すように、高炉水砕スラグを敷設した箇所は、養分が少なく株数がほとんど増加しなかったが、本発明の環境改善材料A及び環境改善材料Bを敷設した箇所では、有機物膜の有する養分があるため、天然区と同様に、アマモの株数が増加することが確認できた。
スラグヤードに堆積させた体積10m3 の高炉水砕スラグに対し、廃糖蜜濃度が5質量%の廃糖蜜溶液を1.5m3 散布した後にシャベルローダーで攪拌し、2日間静置した。2日間の静置後、廃糖蜜とスラグ粒子とが十分混合され、廃糖蜜によりスラグの間隙水のpHが10以下になったことを確認した後、5質量%の廃糖蜜濃度の廃糖蜜溶液で培養した乳酸菌の個数が108cells/mLの濃度で含まれる培養液を1.5m3 散布し、その後、ショベルローダーで攪拌し放置した。
3日に一度の毎に1m3 の水を散布して乾燥を防ぎながら、そのまま1週間放置した。1週間経過時点で、堆積させた高炉水砕スラグの表面及び内部の、それぞれ任意の6箇所の位置から100gの高炉水砕スラグをサンプリングし、スラグの間隙水の平均pHが9.5以下に低下したこと確認し、本発明のスラグ材を製造した。そして、このスラグ材を環境改善材料Cとした。リアルタイムPCR法で測定した結果、環境改善材料Cは107cells/g-slagの微生物を有していた。また、各サンプルの間隙水に乳酸菌の活動により酢酸などの有機酸が10ppm以上存在していることも分析して確認した。
水深2mの海底に、20cmの厚みで環境改善材料Cを敷設した、深さ30cm、縦60cm、横50cmのコンテナを設置した。また、比較区として無処理の高炉水砕スラグを敷設したコンテナを設置した。試験期間は4月から9月の期間で平均水温は20℃、8月及び9月は30℃であった。
6ヶ月経過後の固結の状態について調査を行った結果、環境改善材Cでは全く固結が起こっていなかったが、高炉水砕スラグ区では固結が起こっており、全体積の約3割が固まっていた。
平坦なコンクリート路面に、体積が10m3 、平均粒径が30mmの製鋼スラグを平坦にならし、その脇に、水が流れ出ないように土手を作り、そこに、一般的な土壌や下水汚泥に生息しているシュードモナス(Pseudomonas)、フローバクテリウム(Flavobacterium)、アルカリゲネス(Alcaligenes)、コリネバクテリウム(Colinebacterium)の各属が各々107cells/mLの濃度で含まれる培養液を15m3 流し込んだ。その後、2日に1度の毎に培養液を交換し、1週間経過時点で、微生物が製鋼スラグ粒子の表面に付着したことを電子顕微鏡によって確認した後、製鋼スラグを掻き出し、コンテナに装入して乾燥させ、本発明のスラグ材を製造した。そして、このスラグ材を環境改善材料Dとした。リアルタイムPCR法で測定した結果、環境改善材料Dは107cells/g-slagの微生物を有していた。
環境改善材料Dを、厚み10cmで1m2 の区画で海底に敷設した。比較区として無処理の平均粒径が30mmの製鋼スラグも敷設した。敷設の際に、比較区の周辺はスラグからのアルカリ溶出によって白濁現象が生じたが、環境改善材料Dを敷設した際には白濁現象は起きなかった。このように、環境改善材料Dではアルカリ溶出が抑えられ白濁現象が抑制された。
平坦なコンクリート路面に、体積が10m3 、平均粒径が30mmの製鋼スラグを平坦にならし、その脇に、水が流れ出ないように土手を作り、そこに、5質量%の廃糖蜜濃度の廃糖蜜溶液で培養した酵母及び乳酸菌が各々107cells/mLの濃度で含まれる培養液を15m3 流し込んだ。その後、1日に1度の毎に、培養液の半分の量を新鮮な5質量%の廃糖蜜濃度の廃糖蜜溶液で交換し、4日後に糖蜜濃度が5質量%の廃糖蜜溶液で培養した、バチルス菌が107cells/mLの濃度で含まれる培養液を投入した。その後、1週間経過時点で、微生物が製鋼スラグ粒子の表面に付着したことを電子顕微鏡によって確認し、本発明のスラグ材を製造した。そして、このスラグ材を環境改善材料Eとした。リアルタイムPCR法で測定した結果、環境改善材料Eは109cells/g-slagの微生物を有していた。
水深5mの海底のアマモ場において、試験区に使用する面積分のアマモを抜き取り、アマモを抜き取った部位に、厚み30cmで1m平方(縦1m×横1m)の範囲に、環境改善材料Eを海砂に体積比で40%混合した混合物を敷設した。また、比較区として無処理の製鋼スラグを同様に海底に敷設した。また更に、アマモを抜き取った後の天然区(縦1m×横1m)も試験区とした。
冬季にこれらの試験区にアマモを40本ずつ移植し、夏季に半年後のアマモの株数を調査した。移植直後の各区画の間隙水のpHは、環境改善材料Eでは8、製鋼スラグ区では10.5、天然区では8であった。アマモの株数の調査結果を表3に示す。
表3に示すように、製鋼スラグを敷設した箇所は、初期のpHが高かったためにほとんどのアマモが枯れてしまったが、本発明の環境改善材料Eを敷設した箇所では、底質の間隙水のpHも適正で且つ有機物膜の有する養分があるため、アマモの株数が天然区以上に増加することが確認できた。更に、生育したアマモを抜き取ってみると、根が環境改善材料Eに絡みついており、アマモが流されにくくするために環境改善材料Eをアンカー材として利用していたことが分かった。
スラグヤードに堆積させた体積10m3 の高炉水砕スラグに対し、廃糖蜜濃度が5質量%の廃糖蜜溶液を1.5m3 散布し、その後、シャベルローダーで攪拌して2日間静置した。廃糖蜜とスラグ粒子とが十分混合され、廃糖蜜によりスラグの間隙水のpHが10以下になったことを確認した後、更にそのまま1週間放置した。
1週間経過時点で、堆積させた高炉水砕スラグの表面及び内部の、それぞれ任意の6箇所の位置から100gの高炉水砕スラグをサンプリングし、スラグの間隙水の平均pHが9.5以下に低下したことを確認し、本発明のスラグ材を製造した。そして、このスラグ材を環境改善材料Fとした。リアルタイムPCR法で測定した結果、環境改善材料Fは107 cells/g-slagの微生物を有していた。
また、各サンプルの間隙水には高炉水砕スラグに由来する微生物の活動により、酢酸などの有機酸が10ppm以上存在していることも分析して確認した。また、この微生物には高炉水砕スラグを製造するときの水砕水に含まれている微生物も含まれていた。
水深2mの海底に、20cmの厚みで環境改善材料Fを敷設した、深さ30cm、縦60cm、横50cmのコンテナを設置した。また、比較区として無処理の高炉水砕スラグを敷設したコンテナを設置した。試験期間は4月から9月の期間で平均水温は20℃、8月及び9月は30℃であった。
6ヶ月経過後の固結の状態について調査を行った結果、環境改善材Fでは全く固結が起こっていなかったが、高炉水砕スラグ区では固結が起こっており、全体積の約3割が固まっていた。
スラグヤードに堆積させた、体積が10m3 、粒径が5〜10mmの製鋼スラグに対し、乳酸菌個数が103cells/mLの濃度で含まれる焼酎廃液を5m3 散布した後、シャベルローダーで攪拌した。
3日に一度の毎に1m3 の水を散布して乾燥を防ぎながら、そのまま1週間放置した。1週間経過時点で、製鋼スラグのpHを測定し、9.5以下であることを確認し、コンテナに装入して乾燥させ、本発明のスラグ材を製造した。そして、このスラグ材を土木建築材料Aとした。リアルタイムPCR法で測定した結果、土木建築材料Aは107 cells/g-slagの微生物を有していた。
緻密な粘土質の土壌の物性を改良するために、土木建築材料Aを面積2m2で深さ0.5mの土壌に350kg混合した。比較区として無処理の粒径5〜10mmの製鋼スラグを面積2m2 で深さ0.5mの土壌に350kg混合した。また、何も混合しない同じ面積の区画も設けた。これらの試験区に茄子の苗を80本ずつ植えた。
製鋼スラグを混合した区では、2週間後に70%が枯れ、1月後には全て枯れてしまった。また何も混合しない区では50%の苗が生長したが、茄子の実が結実したのは全体の20%に留まった。本発明の土木建築材料Aを混合した区では、90%の苗が順調に生育し且つ茄子の実が結実した。
何も混合しない区では、土壌が緻密なために根がうまく張れず、このような結果となり、また、製鋼スラグを混合した区では、土壌に適度な空隙ができたが、土壌のアルカリ性が高まったために根に悪影響をもたらし、枯れてしまった。これに対して、本発明の土木建築材料Aを混合した区では、土壌に適度な空隙ができ、更に土壌のpHも変化しなかったため、茄子が順調に生育した。更に、微生物が生成する有機酸などの酸性物質も有機物からできているため、それが養分になったものと考えられる。
環境改善材料Aの表面を、走査型電子顕微鏡を用いて5000倍の倍率で観察した結果を示す図である。 図1の拡大図である。 図2に示すバチルス菌のEDX定性分析結果を示す図である。

Claims (13)

  1. スラグと、該スラグに存在する104cells/g-slag以上の微生物と、を含むことを特徴とするスラグ材。
  2. 更に、前記微生物によって形成された有機物を有することを特徴とする、請求項1に記載のスラグ材。
  3. 更に、前記微生物によって形成された有機酸を有することを特徴とする、請求項1に記載のスラグ材。
  4. 前記スラグは、高炉スラグ及び/または製鋼スラグであることを特徴とする、請求項1ないし請求項3の何れか1つに記載のスラグ材。
  5. スラグに、微生物と養分、または養分を接触させて微生物を増殖させ、スラグに存在する微生物の数が104cells/g-slag以上であるスラグ材を製造することを特徴とする、スラグ材の製造方法。
  6. スラグに、微生物と養分、または養分を接触させて微生物を増殖させ、スラグに存在する微生物の数が104cells/g-slag以上であり、且つ、前記微生物によって形成された有機物が存在するスラグ材を製造することを特徴とする、スラグ材の製造方法。
  7. スラグに、微生物と養分、または養分を接触させて微生物を増殖させ、スラグに存在する微生物の数が104cells/g-slag以上であり、且つ、前記微生物によって形成された有機酸が存在するスラグ材を製造することを特徴とする、スラグ材の製造方法。
  8. 前記スラグは、高炉スラグ及び/または製鋼スラグであることを特徴とする、請求項5ないし請求項7の何れか1つに記載のスラグ材の製造方法。
  9. 請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載のスラグ材を含有していることを特徴とする環境改善材料。
  10. 請求項5ないし請求項8の何れか1つに記載のスラグ材の製造方法によって製造されたスラグ材を含有していることを特徴とする環境改善材料。
  11. 請求項9または請求項10に記載の環境改善材料を、水中または水浜に敷設することを特徴とする環境改善方法。
  12. 請求項1ないし請求項4の何れか1つに記載のスラグ材を含有していることを特徴とする土木建築材料。
  13. 請求項5ないし請求項8の何れか1つに記載のスラグ材の製造方法によって製造されたスラグ材を含有していることを特徴とする土木建築材料。
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