JP4185195B2 - 赤外線反射被膜付き光学物品及び電球 - Google Patents
赤外線反射被膜付き光学物品及び電球 Download PDFInfo
- Publication number
- JP4185195B2 JP4185195B2 JP26680198A JP26680198A JP4185195B2 JP 4185195 B2 JP4185195 B2 JP 4185195B2 JP 26680198 A JP26680198 A JP 26680198A JP 26680198 A JP26680198 A JP 26680198A JP 4185195 B2 JP4185195 B2 JP 4185195B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- refractive index
- layer
- multilayer film
- index material
- optical
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Optical Filters (AREA)
- Surface Treatment Of Optical Elements (AREA)
Description
【産業上の利用分野】
本発明は透光性の赤外線反射被膜を設けた光学物品に関するもので、特に、電球のガラスバルブ表面に赤外線反射被膜を設け、電球内に向かって赤外線を反射させることで、電球フィラメントの消費電力を低減させてランプ効率の向上を図った白熱電球等の電球の構成に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の赤外線反射被膜付き白熱電球90の構成の例を一部を拡大して模式的に示すものが図8である。透光性のガラスバルブ91の底部には口金92が設けてあり、ガラスバルブ91内部には口金92に取り付けられたフィラメント93が配設されている。また、ガラスバルブ91の表面には赤外線反射被膜94が設けられている。赤外線反射被膜94はフィラメント93から発生した赤外線をフィラメント93に帰還する目的で設けられ、これによりフィラメントと93の消費電力が抑えられ、ランプ効率が向上する。
【0003】
図9は赤外線反射被膜94を更に詳細に示すものである。ガラスバルブ91の外側表面に光学的膜厚n・dをλ/4としたTiO2、Ta2O5、ZnSe、ZnS等の高屈折率材料層95とSiO2、MgFなどの低屈折率材料層96とを交互に積層、例えば8層〜20層程度積層した構成とされている。例えば反射する赤外線の設計波長λを1000nmとし、高屈折率材料層95として屈折率nH=2.2のTa2O5をλ/4(=250nm)、低屈折率材料層96としてnL=1.46のSiO2をλ/4(=250nm)の光学的膜厚して、ガラスバルブ91表面上に低屈折率材料層96、高屈折率材料層95・・と合計10層となるように交互に積層した場合には図10に示したような分光透過率特性の赤外線反射被膜94となる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した従来の構成の赤外線反射被膜付き電球の場合には、図10に示したように光学的膜厚として設定した波長である1000nm付近にのみ反射特性を有する赤外線反射被膜であって、1500nm付近の赤外線を反射することはできない。
【0005】
そこで、この赤外線反射被膜の上に、更に光学的膜厚を設定する際の設計波長を1500nmとした赤外線反射被膜を設けることが考えられる。図11はこのようにして形成した赤外線反射被膜の分光透過特性を示すものである。具体的には、図10にて形成した被膜、すなわち、光学的膜厚n・dを設定する波長λを1000nmとし、高屈折率材料層95として屈折率nH=2.2のTa2O5をλ/4(=250nm)、低屈折率材料層96としてnL=1.46のSiO2をλ/4(=250nm)の厚みとして計10層交互に積層した被膜の上に、光学的膜厚を設定する設計波長λを1500nmとし、高屈折率材料層95として同じくTa2O5をλ/4(=375nm)、低屈折率材料層96として同じくSiO2をλ/4(=375nm)の厚みとして計10層交互に積層し、合計で20層設けた赤外線反射被膜94の場合である。
【0006】
この場合には、波長1500nm付近の波長域の赤外線も反射できるものとなり、図10の場合に比べて赤外線反射特性は向上した。しかしながら、可視域の透過率を低下させ、500nm付近の透過率は著しく減衰した。これは、設計波長として1500nmの波長を用いて作成した赤外線反射被膜を設けたことで可視光域の一部を反射するようになったためである。
【0007】
一般に多用されている白熱電球の放射エネルギースペクトルは、約400nm〜2800nmの広い範囲の波長の光をブロードに放射している。赤外線領域の1000nm付近に放射エネルギーのピークを有し、2400nmではピーク強度の30%程度の強度の光を放射する。そのため、この白熱電球に図10のような特性の赤外線反射被膜94を設けた場合には、1200nm以上の波長の放射光を反射できず効率の向上が思うように図れないという問題がある。また、その上に高屈折率材料層と低屈折率材料層のλ/4とした交互積層膜で1400m以上の波長の赤外線を反射するようにした赤外線反射被膜を設けると図11のように可視域の透過率が低下し、着色するという問題点がある。
【0008】
本発明は前記した問題点を解決し、可視領域の透過率に優れ、且つ、赤外領域の反射特性に優れた赤外線反射被膜を形成した光学物品、特に高効率の電球を提供することを目的とする。また、具体的には白熱電球から放射される400〜750nmにおいて全波長域の光に対し70%以上の光を透過し、且つ、800〜1800nmの赤外域の光に対し平均して50%以上の光を反射する赤外線反射被膜を設けた白熱電球を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明により、屈折率が約1.5の基体表面上に複数の多層膜からなる透光性赤外線反射被膜が形成されてなる光学物品において、
前記透光性赤外線反射被膜は、高屈折率材料(H)と低屈折率材料(L)の多層構造とした第1多層膜と、
高屈折率材料(H)と低屈折率材料(L)と中間の屈折率の中間屈折率材料(M)とからなる多層構造とした第2多層膜とを有し、
多層膜を形成する高屈折率材料(H)層の光学的膜厚:nHdH=λw/4をHとして表し、低屈折率材料(L)層の光学的膜厚:nLdL=λw/4をLとして表し、中間屈折率材料(M)層の光学的膜厚:nMdM=λw/4をMとして表したとき(ここでnH、nL、nMは高屈折率材料層、低屈折率材料層、中間屈折率材料層の屈折率、dH、dL、dMは高屈折率材料層、低屈折率材料層、中間屈折率材料層の物理的膜厚、λwは光学的膜厚の設計波長を示し、λ1は第1多層膜の設計波長、λ2は第2多層膜の設計波長である)、以下の条件(a)〜(d)を満足する赤外線反射被膜付き光学物品が提供される。
(a)第1多層膜は、前記基体表面側から順に光学的膜厚を(L/2)とした第1層、光学的膜厚をHとした第2層および光学的膜厚を(L/2)とした第3層の3層構造を基本構成とし、該基本構成をx周期繰り返した以下の式により表現される膜。
〔(L/2) H (L/2)〕x、(xは2以上の整数)
(b)第2多層膜は、前記基体表面側から順に光学的膜厚を(L/a2)とした第1層、光学的膜厚を(M/b2)とした第2層、光学的膜厚を(H/c2)とした第3層、光学的膜厚を(M/b2)とした第4層および光学的膜厚を(L/a2)とした第5層の5層構造を基本構成とし、該基本構成をy周期繰り返した以下の式により表現される膜。
〔(L/a2) (M/b2) (H/c2) (M/b2) (L/a2)〕y
ここで、yは2以上の整数、2<a2<4、2.5<b2<4.5、1<c2<2とする。
(c)第1多層膜の設計波長λ1、第2多層膜の設計波長λ2は、780≦λ1≦1200nm、1200nm≦λ2≦2200nmとする。
(d)中間屈折率材料(M)の屈折率nMを、0.32(nH−nL)+nL<nM<0.60(nH−nL)+nLとする。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の光学物品について、図1〜図7に示す実施例に基づいて詳細に説明する。図1に符号1で示すものは本発明に係る電球の要部であり、この電球はガラスバルブ2の表面に赤外線反射被膜3が形成されており、ガラスバルブ内面には図示しないフィラメントが配設されている。
【0011】
本発明では、基体となるガラスバルブ2の表面側から第1多層膜31、第2多層膜32、第3多層膜33とが順に積層された赤外線反射被膜3とされている。第1多層膜31は低屈折率材料層(L)、高屈折率材料層(H)、低屈折率材料層(L)の交互積層構造を1周期とし、これを複数周期設けた多層膜としている。第2多層膜32及び第3多層膜33は低屈折率材料層(L)、中間屈折率材料層(M)、高屈折率材料層(H)、中間屈折率材料層(M)、低屈折率材料層(L)の5層構造を1周期としている。このような多層膜からなる赤外線反射被膜3を形成するには、洗浄したガラスバルブ2を真空装置内に載置し、所望の屈折率を呈する金属酸化物等の材料を蒸着法、スパッタ法、CVD法等により膜厚を制御しながら順次成膜する等の方法で得ることができる。
【0012】
以下、具体的な実施例に沿って説明する。
(実施例1)
図2に、赤外線反射被膜3を拡大して示す。赤外線反射被膜3は屈折率が1.52のガラスバルブ2表面側から第1多層膜31、第2多層膜32、第3多層膜33とが順に積層されている。
【0013】
第1多層膜31は、ガラスバルブ側から〔(L/2) H (L/2)〕4の構成としている。ここで、Lとは前述したように低屈折率材料層(L)をλ31/4の光学的膜厚n・dとして形成したことを示し、(L/2)は低屈折率材料層の膜厚を光学的膜厚λ31/4の1/2倍、すなわち(λ31/4)×(1/2)=λ31/8の光学的膜厚となるように設けることを意味している。Hは高屈折率材料層(H)を示し、λ31/4の光学的膜厚として形成したことを示す。また、〔(L/2) H (L/2)〕4の4とは〔 〕内記載の3層の交互積層構造を1周期とする基本構成を4周期積層したことを表す。なお、λ31は第1多層膜31による反射特性を設計する際に用いた設計波長で、ここでは950nmの赤外線とした。また、複数周期積層する時に前の周期の上層と次の周期の下層の低屈折率材料層(L)が繰り返して形成されるが、その際は同一の低屈折率材料層(L/2)×2の光学的膜厚、即ちL=λ31/4の光学的膜厚にて形成したものとすれば良い。
【0014】
第2多層膜32は、ガラスバルブ2の表面側から〔(L/3.2) (M/3.2) (H/1.6) (M/3.2) (L/3.2)〕4の基本構成とした。ここでMとは、低屈折率材料層(L)と高屈折率材料層(H)の中間の屈折率を持つ中間屈折率材料層(M)をλ32/4の光学的膜厚にて形成したこと示す。他の設計条件は第1多層膜31と同様に示している。したがって、例えば(L/3.2)とは(λ32/4)×(1/3.2)=λ32/12.8の光学的膜厚として形成したことを意味している。なお、λ32は第2多層膜32による反射特性を設計する際に用いた設計波長で、ここでは1280nmの赤外線とした。また、〔 〕内記載の5層の交互積層構造を1周期として4周期積層している。
【0015】
第3多層膜33は、ガラスバルブ2表面側から〔(L/3.2) (M/3.2) (H/1.6) (M/3.2) (L/3.2)〕4の基本構成としている。低屈折率材料層(L)、中間屈折率材料層(M)、高屈折率材料層(H)等は前記した第1多層膜31、第2多層膜32と同様に表記している。但し、ここでは光学的膜厚を設計する際に用いた設計波長λ33は1600nmの赤外線とした。
【0016】
上記条件に基づいてガラスバルブ2上に所定の光学的膜厚となるようにして第1多層膜31、第2多層膜32、第3多層膜33を連続して赤外線反射被膜3を成膜した。具体的には、図示しない真空蒸着装置内にガラスバルブを設置し、第1多層膜31、32、33における低屈折率材料層(L)の蒸着源として屈折率1.46のSiO2を用い、高屈折率材料層(H)の蒸着源として屈折率2.2のTa2O5を用いた。中間屈折率材料層(M)は、SiO2とTa2O5の両方の材料を蒸着源として用い、屈折率が1.8となるように夫々の蒸着速度等を調整して同時に蒸着することにより形成した。また、各層の厚みは、真空蒸着装置内に設けた光学的測定装置により所定波長の光を形成している膜面に照射し、その反射率を測定しながら蒸着を行なうことで制御した。例えば、第1多層膜31の高屈折率材料層(H)の物理的な厚みdHは、光学的膜厚n・dをλ31/4として形成するものであるから、(950nm/4)÷2.2=約108nmとした。なお、図3はこのようにして形成する赤外線反射被膜3の分光透過率カーブを示すもので、赤外線反射被膜3を形成したガラス基体2の大気中における分光透過率を計算により求めたものである。
【0017】
測定用のサンプルとして同じ材質のガラス基体上に、上記条件にて赤外線反射被膜3を形成し、大気中における分光透過率及び反射率をガラス基体側から測定光を照射して測定した。可視光領域400nm〜750nmの波長域の全ての波長において80%以上の高い透過率とフラットな特性を示し、着色のない良好な透過特性が得られた。赤外光域においては900〜1800nmという広い赤外光領域の光に対して平均して50%以上の反射率を示した。透過率の測定結果は図3の計算結果とよく一致し、また、[1−反射率≒透過率]であり、赤外線反射被膜での吸収は殆どなかった。また、第1多層膜31のガラスバルブ1と接する(L/2)の低屈折率材料層(L)を省略して形成した場合についても作成したが、その場合においても同様の特性を示した。
【0018】
(実施例2)
赤外線反射被膜3の第1多層膜31、第2多層膜32を実施例1と同一構成にてガラスバルブ2上に成膜し、第3多層膜を省略して第1多層膜と第2多層膜のみからなる赤外線反射被膜3とした。その際、低屈折率材料層(L)として屈折率1.46のSiO2を蒸着源として用い、高屈折率材料層(H)として屈折率2.2のTa2O5を蒸着源とした。中間屈折率材料層(M)としては、SiO2とTa2O5の両方の材料を蒸着源として用いて屈折率が1.8となるように調整した。また、第1多層膜31における各層の光学的膜厚を規定するための設計波長λ31は実施例1と同じ950nmとしたが、第2多層膜32の設計波長λ32は1500nmとした。他の条件は実施例1と全く同一とした。
【0019】
上記条件の場合の赤外線反射被膜の分光透過率特性の計算結果を図4に示す。ガラスバルブ2上に上記条件にて形成した赤外線反射被膜は、400nm〜750nmにかけてフラットな80%以上の透過率を示し、900〜1600nmにかけて50%以上の反射率を示し、1600〜1800nmにおいても約40%の反射率を示し、広い赤外線波長領域において平均して50%以上の反射特性を示し、計算結果と良く一致した。
【0020】
(実施例3)
赤外線反射被膜3の第1多層膜31、第2多層膜32を実施例1と同一の基本構成とし、第3多層膜33を、〔(L/3.1) (M/3.2) (H/1.6) (M/3.2) (L/3.1)〕4の基本構成とした。第1〜3層の低屈折率材料層(L)として、実施例1、2と同じ屈折率1.46のSiO2を蒸着源として用い、高屈折率材料層(H)としては、実施例1、2の場合より大きな屈折率2.46を示すTiO2を蒸着源として用いた。また、中間屈折率材料層(M)は、SiO2とTiO2の両方の材料を蒸着源として用いて屈折率が1.96となるように調整して2元蒸着により形成した。更に、第1多層膜31、第2多層膜32及び第3多層膜33における各多層膜の光学的膜厚を規定するための設計波長λ31、λ32及びλ33は、夫々950nm、1280nm、1600nmとした。
【0021】
上記条件にて設計した赤外線反射被膜の分光透過率特性を図5に示す。ガラスバルブ上に上記条件にて形成した赤外線反射被膜は、380nm〜780nmの全ての波長光に対してほぼ80%以上の透過率という良好な透過特性を示し、800〜1800nmという広い赤外線領域において平均して50%という高い反射特性を示し、計算結果と良く一致した。なお、高屈折率膜(H)を実施例1、2と同じTa2O5を用いても同様の反射特性を示した。
【0022】
(実施例4)
実施例2の赤外線反射被膜3の第1多層膜31、第2多層膜32の各多層膜における基本構成、積層する周期数、多層膜内での積層順、設計波長等には変更を加えずに、多層膜の積層順を逆にして形成した。すなわち、ガラスバルブ2上に設計波長λ32を1280nmとした第2多層膜32、設計波長λ31を950nmとした第1多層膜31を順に積層するものとした。
【0023】
上記条件にて設計した赤外線反射被膜の分光透過率特性を図6に示す。ガラスバルブ上に上記条件にて形成した赤外線反射被膜は、380nm〜780nmにかけてほぼ80%以上の良好な透過特性を示し、800〜1800nmという広い赤外線領域において高い反射特性を示した。
【0024】
(実施例5)
また、実施例1の多層膜の積層順を逆にして形成した。すなわち、ガラスバルブ2表面上に第3多層膜33を形成し、次いで第2多層膜32、第1多層膜31を順に積層した。その場合の分光透過率特性を図7に示す。この場合においても380nm〜780nmにかけて良好な透過特性を示し、800〜1800nmという広い赤外線領域において高い反射特性を示し、計算結果と良く一致した。
【0025】
以上説明したように、本発明によれば、ガラスバルブ上に形成する赤外線反射被膜として、従来は低屈折率材料と高屈折率材料の光学的膜厚ndをλ/4を基本膜厚としたn・d=m・(λ/4) (m=0、1、2・・)として交互に重ねた多重反射膜として形成していたが、本発明においては、上記低屈折率材料(L)と高屈折率材料(H)以外に中間屈折率材料層(M)を加えた3層構造を基本構成とし、且つ、その光学的膜厚ndを(λ/4)の整数倍ではなく、所定の範囲内のものとした多層膜を併設したことで、単に整数倍とした多重反射膜を積層したものに比べ、広い範囲で良好な反射特性を示すことができた。
【0026】
本発明の赤外線反射被膜を多層膜を形成する高屈折率材料(H)層の光学的膜厚:nHdH=λw/4をHとして表し、低屈折率材料(L)層の光学的膜厚:nLdL=λw/4をLとして表し、中間屈折率材料(M)層の光学的膜厚:nMdM=λw/4をMとして表したとき(ここでnH、nL、nMは高屈折率材料層、低屈折率材料層、中間屈折率材料層の屈折率、dH、dL、dMは高屈折率材料層、低屈折率材料層、中間屈折率材料層の物理的膜厚、wは1、2、3でλ1は第1多層膜の設計波長、λ2は第2多層膜の設計波長、λ3は第3多層膜の設計波長である)、一般式により表現すると次のように表すことができる。
【0027】
〔(L/2) H (L/2)〕x〔(L/a2) (M/b2) (H/c2) (M/b2) (L/a2)〕y〔(L/a3) (M/b3) (H/c3) (M/b3) (L/a3)〕z
【0028】
ここで、xおよびyは2以上の整数、zは0以上の整数(x=0とは、その多層膜を形成しないことを示す)で、2<a2、a3<4、2.5<b2、b3<4.5、1<c2、c3<2、第1多層膜、第2多層膜、第3多層膜の設計波長λ1、λ2、λ3は、780≦λ1≦1200nm、1200nm≦λ2、λ3≦2200nm(但し、λ2≠λ3)とし、中間屈折率材料(M)の屈折率nMを、0.32(nH−nL)+nL<nM<0.60(nH−nL)+nLとし、nHは被膜を形成する光学物品屈折率より大きくnLは光学物品屈折率より小さいものとする。
【0029】
第1多層膜31、第2多層膜32、第3多層膜33を積層する順は、前記した実施例に記載した順に限るものではない。要は、少なくとも第1多層膜と第2多層膜を形成して、少なくとも450〜700nmの可視域光のすべての波長域の光に対し70%以上の光を透過率を示し、且つ、950〜1450nmの赤外域光のすべての波長域の光に対し40%以上、平均して50%以上の光を反射する光学特性を満たすような構造ならば良い。なお、その際にガラスバルブ基体2表面に該基体と接するように設ける低屈折率膜(L)を省略することもできる。また、好ましくは、ガラス基体表面上に設計波長を1200nm以下とし、低屈折率材料層(L)の材料をSiO2とした第1多層膜を形成し、その上に設計波長を1200nm以上とした第2多層膜、第3多層膜を順に形成するものとすると、光学特性およびガラス基体との密着性に優れた赤外線反射被膜が形成でき好ましいものとなる。
【0030】
さらに、第1多層膜31において使用する高屈折率材料層(H)及び低屈折率材料層(L)と、第2多層膜32もしくは第3多層膜33において使用する高屈折率材料層(H)、低屈折率材料層(L)及び中間屈折率材料層(M)を同じ材料により形成すると、蒸着源を2種類のみ用意すればよく、形成工程、蒸着装置が簡略化され好ましいものであるが、例えば、応力等の関係から第1多層膜にて用いる低屈折率材料層(L)と第2多層膜にて用いる低屈折率材料層(L)とを異なる材料により形成するものとしても良い。また、中間屈折率材料層として2源蒸着により形成する例を示したがSiNやSiO材料のように、1.8前後の屈折率を示す他の単一材料を用いるものであっても良い。また、基体は屈折率が約1.5のものならば、ガラス以外の他の材料、例えば屈折率1.63のAl2O3結晶基体や、屈折率1.46のSiO2結晶基体等でも良く、赤外線反射被膜と基体との物理的特性が近似する透光性材料を用いることが好ましい。
【0031】
また、前記した実施形態においては、白熱電球におけるガラスバルブ表面に赤外線反射被膜を形成したものとしたが、ガラスバルブ内に不活性ガスとともに微量のハロゲン元素を封入したハロゲン電球と称す白熱電球の場合であっても、フィラメントからガラスバルブに放射される媒体である不活性ガスの屈折率は空気と略等しい約1.0であるから同様の赤外線反射被膜を形成することで、高い赤外線反射特性と、良好な可視光透過率特性を得ることができる。また、赤外線反射被膜は電球内側表面に設けることも、外側に設けることもできるが、外側に設ける場合の方が成膜工程を施し易く好ましい。
【0032】
更にまた、赤外線反射被膜を電球以外の光学物品、例えば、ミラー等に形成してコールドミラーとすることもでき、電球以外の他の光学物品にも適用することができる。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の赤外線反射被膜付き光学物品によれば、従来のように可視域の分光透過特性において色付きを示すようなことのない、高い透過率と無着色性を有し、且つ、少なくとも900nmから1500nmの広い赤外線領域において50%以上の高い反射特性を有するものとすることができる。
【0034】
該赤外線反射被膜を白熱電球のガラスバルブに設けた場合には、高い可視域透過率特性と、高い赤外域反射特性を有することから、フィラメントにて発せられたエネルギーをフィラメントに有効に帰還させることができる。特に、白熱電球の放射エネルギーが高い1000nm付近を中心に800〜1800nmの広い範囲内で高い反射率を有するようにしているので、白熱電球の効率をより一層向上できる等の優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の赤外線反射被膜を設けた電球の要部を示す説明図である。
【図2】 赤外線反射被膜を設けた要部を拡大して示す説明図である。
【図3】 実施例1の赤外線反射被膜の透過率特性を示す説明図である。
【図4】 実施例2の赤外線反射被膜の透過率特性を示す説明図である。
【図5】 実施例3の赤外線反射被膜の透過率特性を示す説明図である。
【図6】 実施例4の赤外線反射被膜の透過率特性を示す説明図である。
【図7】 実施例5の赤外線反射被膜の透過率特性を示す説明図である。
【図8】 従来の赤外線反射被膜を設けた電球の説明図である。
【図9】 図8の電球の赤外線反射被膜を設けた箇所を拡大して示す説明図である。
【図10】 従来の赤外線反射被膜の透過率特性の説明図である。
【図11】 従来の別の赤外線反射被膜の透過率特性の説明図である。
【符号の説明】
1 電球
2 ガラスバルブ
3 赤外線反射被膜
31 第1多層膜
32 第2多層膜
33 第3多層膜
90 白熱電球
91 ガラスバルブ
92 口金
93 フィラメント
94 赤外線反射被膜
95 高屈折率材料層
96 低屈折率材料層
Claims (6)
- 屈折率が約1.5の基体表面上に複数の多層膜からなる透光性赤外線反射被膜が形成されてなる光学物品において、
前記透光性赤外線反射被膜は、高屈折率材料(H)と低屈折率材料(L)の多層構造とした第1多層膜と、
高屈折率材料(H)と低屈折率材料(L)と中間の屈折率の中間屈折率材料(M)とからなる多層構造とした第2多層膜とを有し、
多層膜を形成する高屈折率材料(H)層の光学的膜厚:nHdH=λw/4をHとして表し、低屈折率材料(L)層の光学的膜厚:nLdL=λw/4をLとして表し、中間屈折率材料(M)層の光学的膜厚:nMdM=λw/4をMとして表したとき(ここでnH、nL、nMは高屈折率材料層、低屈折率材料層、中間屈折率材料層の屈折率、dH、dL、dMは高屈折率材料層、低屈折率材料層、中間屈折率材料層の物理的膜厚、λwは光学的膜厚の設計波長を示し、λ1は第1多層膜の設計波長、λ2は第2多層膜の設計波長である)、以下の条件(a)〜(d)を満足することを特徴とする赤外線反射被膜付き光学物品。
(a)第1多層膜は、前記基体表面側から順に光学的膜厚を(L/2)とした第1層、光学的膜厚をHとした第2層および光学的膜厚を(L/2)とした第3層の3層構造を基本構成とし、該基本構成をx周期繰り返した以下の式により表現される膜。
〔(L/2) H (L/2)〕x、(xは2以上の整数)
(b)第2多層膜は、前記基体表面側から順に光学的膜厚を(L/a2)とした第1層、光学的膜厚を(M/b2)とした第2層、光学的膜厚を(H/c2)とした第3層、光学的膜厚を(M/b2)とした第4層および光学的膜厚を(L/a2)とした第5層の5層構造を基本構成とし、該基本構成をy周期繰り返した以下の式により表現される膜。
〔(L/a2) (M/b2) (H/c2) (M/b2) (L/a2)〕y
ここで、yは2以上の整数、2<a2<4、2.5<b2<4.5、1<c2<2とする。
(c)第1多層膜の設計波長λ1、第2多層膜の設計波長λ2は、780≦λ1≦1200nm、1200nm≦λ2≦2200nmとする。
(d)中間屈折率材料(M)の屈折率nMを、0.32(nH−nL)+nL<nM<0.60(nH−nL)+nLとする。 - 前記光学物品に形成した赤外線反射被膜は、前記第1多層膜及び第2多層膜と共に、高屈折率材料(H)と低屈折率材料(L)と中間の屈折率の中間屈折率材料(M)とからなる多層構造とした第3多層膜とを有し、
前記(a)〜(d)の条件と共に以下の条件(e)〜(f)を満足することを特徴とする請求項1記載の赤外線反射被膜付き光学物品。
(e)第3多層膜は、前記基体表面側から順に光学的膜厚を(L/a3)とした第1層、光学的膜厚を(M/b3)とした第2層、光学的膜厚を(H/c3)とした第3層、光学的膜厚を(M/b3)とした第4層および光学的膜厚を(L/a3)とした第5層の5層構造を基本構成とし、該基本構成をz周期繰り返した以下の式により表現される膜。
〔(L/a3) (M/b3) (H/c3) (M/b3) (L/a3)〕z
ここで、zは1以上の整数、2<a3<4、2.5<b3<4.5、1<c3<2とする。
(f)第3多層膜の設計波長λ3は、1200nm≦λ3≦2200nmとする(但し、λ2≠λ3)。 - 前記赤外線反射被膜が、第1多層膜と第2多層膜を積層したものであり、
第1多層膜の設計波長λ1が約950nm、第2多層膜の設計波長λ3が約1500nmであることを特徴とする請求項1記載の赤外線反射被膜付き光学物品。 - 前記赤外線反射被膜が、第1多層膜、第2多層膜及び第3多層膜を連続して積層したものであり、
第1多層膜の設計波長λ1が約950nm、第2多層膜の設計波長λ2が約1280nm、第3多層膜の設計波長λ3が約1600nmであることを特徴とする請求項2記載の赤外線反射被膜付き光学物品。 - 前記赤外線反射被膜は、前記基体と接する低屈折率材料層(L)が省略された多層膜とされていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか記載の赤外線反射被膜付き光学物品。
- 前記基体が電球のバルブであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか記載の赤外線反射被膜付き電球。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26680198A JP4185195B2 (ja) | 1998-09-21 | 1998-09-21 | 赤外線反射被膜付き光学物品及び電球 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP26680198A JP4185195B2 (ja) | 1998-09-21 | 1998-09-21 | 赤外線反射被膜付き光学物品及び電球 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2000100391A JP2000100391A (ja) | 2000-04-07 |
JP4185195B2 true JP4185195B2 (ja) | 2008-11-26 |
Family
ID=17435878
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP26680198A Expired - Fee Related JP4185195B2 (ja) | 1998-09-21 | 1998-09-21 | 赤外線反射被膜付き光学物品及び電球 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP4185195B2 (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104459833A (zh) * | 2014-12-13 | 2015-03-25 | 中国科学技术大学先进技术研究院 | 一种新型光学聚合物复合薄膜及其制作方法和应用 |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010037787A1 (en) * | 2008-10-03 | 2010-04-08 | Heraeus Quartz Uk Limited | High temperature-resistant narrow band optical filter |
US8179030B2 (en) * | 2009-11-30 | 2012-05-15 | General Electric Company | Oxide multilayers for high temperature applications and lamps |
CN103443667B (zh) * | 2011-03-18 | 2016-09-28 | 柯尼卡美能达株式会社 | 热线反射膜、其制造方法及热线反射体 |
CN103389561B (zh) * | 2012-05-11 | 2016-03-30 | 玉晶光电(厦门)有限公司 | 具有阻挡红外线功能的光学镜头与其光学镜片 |
WO2013183557A1 (ja) * | 2012-06-04 | 2013-12-12 | 旭硝子株式会社 | 近赤外線カットフィルタ |
-
1998
- 1998-09-21 JP JP26680198A patent/JP4185195B2/ja not_active Expired - Fee Related
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN104459833A (zh) * | 2014-12-13 | 2015-03-25 | 中国科学技术大学先进技术研究院 | 一种新型光学聚合物复合薄膜及其制作方法和应用 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2000100391A (ja) | 2000-04-07 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
US6534903B1 (en) | Broad spectrum reflective coating for an electric lamp | |
JPH05503372A (ja) | D.c.反応性スパッタリングされた反射防止被覆 | |
JP2003515196A (ja) | 熱フィルタおよびこのフィルタの製造方法 | |
JPH04295801A (ja) | ダイクロイックコーティングを備える光学ミラーを使用するランプの製造方法 | |
JPH0370202B2 (ja) | ||
JPH03129304A (ja) | 光学干渉被膜およびそれを用いたランプ | |
KR20210035771A (ko) | 방사 냉각 장치 | |
JPS5865403A (ja) | 高温で使用するに適したオプチカルコ−テイング | |
US8436519B2 (en) | Incandescent lamp incorporating infrared-reflective coating system, and lighting fixture incorporating such a lamp | |
JP4185195B2 (ja) | 赤外線反射被膜付き光学物品及び電球 | |
JPH05502738A (ja) | マグネシウム膜反射材 | |
JP2691651B2 (ja) | 反射鏡 | |
JPH05341122A (ja) | 紫外線照射装置の多層膜フィルタ | |
JPH05241017A (ja) | 黄色フィルター機能を有する光干渉多層膜 | |
JP3031625B2 (ja) | 熱線吸収反射鏡 | |
JP3054663B2 (ja) | 多層膜反射鏡 | |
JPH0380205A (ja) | 多層光干渉膜 | |
JP3153050B2 (ja) | 白熱電球 | |
JP2928784B2 (ja) | 多層膜反射鏡 | |
JP2602033B2 (ja) | 赤外線反射フィルタ付き白熱電球 | |
JPS61190853A (ja) | 白熱電球 | |
JP2971773B2 (ja) | 多層膜 | |
JPS63269103A (ja) | 反射体 | |
JP3110131B2 (ja) | 高耐久性薄膜 | |
JP2000260397A (ja) | 赤外線反射膜付き白熱電球 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20050615 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20060512 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20080826 |
|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20080905 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110912 Year of fee payment: 3 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110912 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120912 Year of fee payment: 4 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130912 Year of fee payment: 5 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |