JP4184607B2 - 抗生剤の投与方法 - Google Patents

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Description

【0001】
(発明の技術分野)
本発明は、抗生剤耐性株を含むグラム陽性細菌に対して強力な殺菌性活性を有する、ダプトマイシン(daptomycin)のようなリポペプチド抗生剤投与の改善した方法に関する。本発明はまた、抗生剤耐性株を含むグラム陽性細菌に対して強力な殺菌性活性をまた有する、キヌプリスチン(quinopristin)/ダルホプリスチン(dalfopristin)投与の改善した方法に関する。
【0002】
(発明の背景)
グラム陽性感染(耐性細菌により起こる感染を含む)の頻度の迅速な増加は、新規なクラスの抗生剤の開発において、興味を再発生させた。このようなクラスの1つは、ダプトマイシンを含むリポペプチド抗生剤である。ダプトマイシンは、重篤かつ生命にかかわる疾患を生じる、臨床的に関連のあるグラム陽性細菌に対して、インビトロで強力な殺菌活性を有する。これらの細菌は、耐性病原体(例えば、バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)、メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)、糖ペプチド媒介感受性Staphylococcus aureus(GISA)、コアグラーゼ陰性staphylococci(CNS)、およびペニシリン耐性Streptococcus pneumoniae(PRSP))(これらには治療用の代替物がほとんど存在しない)を含む(Tallyら、1999、Exp.Opin.Invest.Drugs 8:1223〜1238頁、本明細書中において以降では「Tally」を参照のこと)。ダプトマイシンは、迅速な濃度依存性殺菌性効果を提供し、そしてインビボにおいて濃度依存性の抗生剤後の効果を相対的に延長した。
【0003】
ダプトマイシンは、BaltzのBiotechnology of Antibiotics、第2版、W.R.Strohl(New York:Marcel Dekker,Inc.)1997、415〜435、(本明細書以降では「Baltz」)に記載される。ダンプトマイシンは、Streptomyces reoseosporusの発酵から誘導され得る環状リポペプチド抗生剤である。これは、環状の13アミノ酸ペプチドのN末端トリプトファンに連結されるデカノイル側鎖から構成される(例えば、図1a、Baltzら(前出)を参照のこと)。この化合物は、現在、細菌により生じる重篤な感染を処置するため、静脈内処方物および経口処方物の両方において開発されている。この細菌としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:メチシリン耐性Staphylococcus aureus(MRSA)およびバンコマイシン耐性enterococci(VRE)。
【0004】
ダプトマイシンの作用機構は、βラクタム、アミノグリコシド、グリコペプチドおよびマクロライドを含む、他のクラスの抗生剤の作用機構とは異なる。いかなる理論にも拘束されることを望まないが、ダプトマイシンは、細胞質に浸透しないで、細菌の原形質膜機能の複数の局面を破壊することによりグラム陽性細菌を殺傷すると考えられている。ダプトマイシンの抗菌性機構は、ペプチドグリカン合成の阻害、リポテイコ酸合成の阻害、および細菌膜電位の消散を含み得る(例えば、Baltz(前出)を参照のこと)。
【0005】
ダプトマイシンの効力および安全性は、非臨床研究および第I相臨床試験および第II相臨床試験において試験されている。ダプトマイシンは、24時間ごとに1または2mg/kgで静脈内に投与される場合、ヒトボランティアにおいて十分耐容性であった。Baltz(前出)およびその引用文献を参照のこと。さらに、ダプトマイシンの単回用量は、0.5〜6mg/kgの用量範囲にわたり十分に耐容性であった。Baltz(前出)、Eli Lilly and Co.に対する欧州特許第386951号、およびWoodworthら、1992、Antimicrob.Agents Chemother.36:318〜25を参照のこと。ダプトマイシンの単回用量はまた、別の抗生剤であるトブラマイシンとともに投与された場合に十分に耐容性であった。Woodworthら、1994、J.Antimicrob.Chemother.33:655−59を参照のこと。しかし、12時間ごとの3mg/kgダプトマイシンでの長期処置は、偶発的な有害効果を起こすことが示されている(Baltz、前出)。6〜11日間、12時間ごとに4mg/kgダプトマイシンで処置した、5例のヒト患者の2例で、一過性の筋脱力および疼痛が観察された(Tally、前出)。筋脱力および疼痛を経験した2例の被験体において、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)レベルは、筋脱力の1〜2日前に増加していた。CPKの最初の上昇が観察された3〜4日後、処置を中止した。ダプトマイシン処置の中止1〜2日後、CPKレベルは、1例の被験体において10,000U/L以上のレベルのピークに達し、2例目の被験体において20,812U/Lに達した(Tally、前出)。これらの研究、およびより高用量のダプトマイシンが多くの型の細菌感染に対する効力に必要であるという理論的根拠に基づいて、ダプトマイシンの臨床研究は中止された(Baltz、前出)。
【0006】
上記の臨床試験および動物における一連の毒性学的研究において、骨格筋は、ダプトマイシン毒性の主な標的組織であることが見出された。ラットおよびイヌにおける高用量ダプトマイシンの毒性学的研究における毎日反復した静脈内投与(ラットでは75mg/kg/日、そしてイヌでは40mg/kg/日)は、骨格筋において、穏やかなミオパシーを生じた(Tally、前出)。CPKレベルの上昇は、ミオパシーの感受性の指標であり、従って、筋組織へのダプトマイシンの効果を測定するために用いられ得ることも見出された。Tallyら、前出を参照のこと。
【0007】
低用量のダプトマイシンは、筋毒性を生じず、多数のグラム陽性細菌感染を処置する際において有効であるが、特定のタイプのグラム陽性細菌感染(例えば、深在性感染または特定の抗生剤耐性細菌株によって生じる感染)は、有効な処置のためにより高い用量のダプトマイシンを必要とし得る。例えば、特定のバンコマイシン耐性の細菌株は、ほとんどのバンコマイシン感受性株よりも2倍〜4倍高いダプトマイシン最小阻害濃度(MIC)を示す。従って、有効量のダプトマイシンを投与しながら、また骨格筋への有害効果を最小限にする投与方法の開発について大きな必要性が存在する。
【0008】
非リポペプチドストレプトグラミン(streptogramin)抗生剤の組み合わせであるキヌプリスチン(quinupristin)/ダルホプリスチン(dalfopristin)はまた、グラム陽性生物体に対する活性を示す。このグラム陽性生物体には、メチシリン耐性Staphylococcus aureus、糖ペプチド媒介S.aureusおよび糖ペプチド−耐性Enterococcus jaeciumのような抗生剤耐性細菌が挙げられる(Rubinsteinら、1999、J.Antimicrob.Chemother.44,Topic A,37〜46、本明細書中では以降「Rubinstein」)。キヌプリスチン/ダルホプリスチンは、院内肺炎の処置、救急使用研究、併発した皮膚および皮膚構造の感染および菌血症において効果的であることが示されている(Rubinstein,前出)。Bernardら、1994,Eur.J.Clin.Microbiol.Infect.Dis.13:768−771およびWO98/22107は、臨床研究におけるキヌプリスチン/ダルホプリスチンの投与を開示する。8時間または12時間ごとに7.5mg/kgのキヌプリスチン/ダルホプリスチンで処置した患者の約13%が、関節痛、および筋肉痛(筋肉の疼痛を含んだ)を経験し、そして約5%の患者がCPKレベルの上昇を示した(Rubinstein,前出)。従って、キヌプリスチン/ダルホプリスチンもまた、筋毒性を生じるようである。
【0009】
アミノグリコシド(抗生剤の別のクラスを構成する)もまた、高用量で毒性である。それらは、毒性を減弱するために、頻繁な間隔での低用量よりもむしろ、開いた間隔の高用量で投与されてきた(Barclayら、1994、Clin.Pharmacokinet.27:32〜48)。しかし、アミノグリコシドは、多数の点で、特に毒性の部位が異なるという事実において、ダプトマイシンと異なる。アミノグリコシドは、腎臓および中枢神経系に毒性であり、一方、骨格筋が、ダプトマイシンの毒性部位である。アミノグリコシドおよびダプトマイシンについては毒性の機構もまた異なる。さらに、アミノグリコシドは、ダプトマイシンと構造的に似ておらず、グラム陰性細菌にのみ作用し、ダプトマイシンと異なる殺菌作用の機構を有し、そして異なるメカニズムの耐性を示す。従って、アミノグリコシドの開いた間隔での投与が患者により低い毒性しか生じないという可能性は、ダプトマイシンについて同じ事が真であるとは予測しない。
【0010】
(発明の要旨)
本発明は、高用量のリポペプチド抗生剤(例えば、ダプトマイシン)およびキヌプリスチン/ダルホプリスチンでの骨格筋毒性の問題に取り組む。本発明は、骨格筋毒性を最小限にし、同時に十分な有効性レベルを維持する抗生剤の投与方法を提供する。
【0011】
本発明のプロセスは、より高濃度の抗生剤を含む用量の、開いた間隔の投与により特徴付けられる。このプロトコールは、より低い濃度でのより頻繁な用量の抗生剤投与よりも安全かつ有効の両方である。従って、本発明の1つの方法において、ダプトマイシンは、その必要な患者に、骨格筋毒性を最小限にする投薬間隔で、投与される。本発明の別の方法では、ダプトマイシン以外のリポペプチド抗生剤(例えば、ダプトマイシン誘導体、A54145、またはそれらの誘導体)がその必要な患者に、骨格筋毒性を最小限にする用量間隔で投与される。本発明の第3の方法において、キヌプリスチン/ダルホプリスチンは、その投与の必要な患者に、骨格筋毒性を最小限にする投与間隔で、投与される。
【0012】
本発明の方法は、24時間の投薬間隔〜毎週1回の投薬間隔で、骨格筋毒性を生じる高用量の抗生剤を投与することにより特徴付けられる。本発明の1つの実施態様において、ダプトマイシンは、24時間の投薬間隔〜毎週1回の投薬間隔で、3〜75mg/kgの用量で投与される。本発明の別の実施態様において、キヌプリスチン/ダルホプリスチンは、24時間の投薬間隔〜毎週1回の投薬間隔で、7.5〜75mg/kgの用量で投与される。
【0013】
(発明の詳細な説明)
毒性に対する用量細分化の潜在的効果を検討するため、イヌで2つの研究を行った。この研究では、毎日1回静脈内投与の反復(q24h)対8時間毎1回静脈内投与反復(q8h)の効果を比較する。これらの研究を、イヌで行ったのは、この種が、最も臨床効果の予測であるからである。この研究の目的は、骨格筋毒性についての可能性を最小限にする最適な臨床投薬レジメンを決定するために、薬物動態学(CmaxおよびAUC24hを含む)と骨格筋毒性との間の関係を評価することであった。
【0014】
Study Aは、ダプトマイシン関連骨格筋毒性が、投与後血流に生じるダプトマイシンのピーク濃度(Cmax)に関連するか否か、そして24時間の血流中におけるダプトマイシンの総濃度(AUC24h)に関係しないか否かを探った。Study Aにおいて、毎日のダプトマイシン用量は、1日に複数回の投与に細分化され、Cmaxを減少させた(実施例1および図2、上部パネルを参照のこと)。
【0015】
Study Bは、ダプトマイシン関連の骨格筋毒性について、血漿濃度域値が存在するか否かを試験した。この仮説のもとで、1日に複数回、24時間で、効果の観察されない用量レベル(NOELq24h)(それにより、ダプトマイシンの血漿レベルは、毒性の未決定の域値よりいくらか下のままである)の投与は、骨格筋毒性と関連しない(実施例2)。
【0016】
驚くべきことに、筋毒性は、主としてCmaxに関連しない。例えば、8時間毎に1回(q8h)25mg/kgの投与で観察された、血清クレアチンホスホキナーゼ(CPK)レベルおよび顕微鏡的ミオパシーの頻度の両方は、24時間毎に1回(q24h)75mg/kg投与で観察されたものよりも、q8h、25mg/kgについての低いCmaxにかかわらず、大きかった(実施例1、表2)。対照的に、用量間隔が、5mg/kgまたは25mg/kgのいずれかの用量でq24h〜q8hで変化した場合、Cmaxレベルが、q24hまたはq8hのいずれかの各用量に匹敵したにもかかわらず、ピークCPKレベルにおいて大きい増大が観察された(実施例1、表2、および実施例2、表4)。毒性はまた、AUC24hに関連しないようであった。なぜなら、25mg/kg q8hで観察された毒性は、ほぼ同じAUCで75mg/kg q24hより大きかったからである。
【0017】
Study AおよびBの結果は、イヌにおけるダプトマイシン関連骨格筋毒性を規定する薬物動態パラメーターが、Cmaxに関連しないことを示唆する。さらに、毒性は、AUC、または元来毒性の血漿濃度に関連しないようであったが、ダプトマイシンの投与間隔に関連するようであった。いずれの理論にも束縛されることを望まないが、骨格筋の効果は、筋線維への無症状性の損害の修復に利用可能な低血症濃度のダプトマイシンの持続時間に関連するようである。従って、このデータは、投与間隔が、用量自体の単なる大きさよりもむしろ筋毒性の重要な決定因子であることを示唆する。さらに、Cmaxおよび/またはAUCが、感染の根絶と関連する重要な薬物動態パラメーターであることが見出された(J.Leggettら、抄録番号154、第123頁、Program and Abstracts of the 27th Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy,American Society for Microbiology,Washington,D.C.,1987;A Louieら、抄録番号1769、N.Safdarら、抄録番号1770、Program and Abstracts of the 39th Interscience Conference on Antimicrobial Agents and Chemotherapy,American Society for Microbiology,San Francisco,CA,September 26〜29,1999)ため、ダプトマイシンの薬理学的活性は、毎日1回の投与に最適化される。これらの結果は、毎日1回の投与が、ダプトマイシンの抗菌性効力を可能性として最適化しながら、ダプトマイシンの筋毒性を最小化し得ることを示唆する(図3)。
【0018】
これらの観察は、臨床研究の結果によりさらに支持される。この研究により、3mg/kg q12hの引き続く用量を伴う、4mg/kg q24hの用量、6mg/kg q24hの用量または6mg/kgの初回用量でのダプトマイシン投与が、ダプトマイシン投与に関係するCPKレベルの増加を生じず、そしていずれの患者でもどんな筋脱力または疼痛を生じなかったことが示された(実施例4)。このCmaxは、4mg/kg q12h(69.2μg/mL)の用量レジメンよりも、6mg/kg q24hの用量レジメンでより高い(86.8μg/mL)と予想される。より高いCmaxを予想する投与レジメンで試験した9例の患者のうち薬物関連有害骨格筋効果を有した患者は0であったが(表、5)、より低いCmaxを予想する用量レジメンで試験した5例の患者のうち2例は、有害な骨格筋効果を有した(Tally,前出)。従って、実施例3に示された結果は、Cmaxがヒトにおける骨格筋毒性の原因でないことを示し、これは、さらに、イヌにおけるダプトマイシン投与に関する知見がヒトに適用可能であることを示す。
【0019】
どのような理論にも束縛されることを望まないが、これらの結果は、骨格筋毒性が骨格筋傷害の修復のための用量の間の時間に関するという仮説により説明され得る。例えば、実施例1は、イヌが1日あたり3回用量に細分化されて75mg/kg/日で投与(25mg/kg q8h)された場合、同じ用量を1日に1回投与(75mg/kg q24h)れた場合よりも、CPKレベルが、より高かったことを示す。毎日1回の投与は、ダプトマイシンに関連する無症状の筋損傷の修復のための用量の間のより長い時間(非毒性血中レベルでの)を可能にし得る。従って、1日1回の投与は、ほとんど毒性を生じない。新しい修復仮説は、長期間投与後の毒性の進行の欠如と一致する。例えば、ラットおよびイヌにおいて1ヶ月の投与研究と比較して、6カ月間の投与研究では、毒性の進行は存在しない。さらに、新しい修復仮説は、CPKレベルが、ダプトマイシンでの連続処置および骨格筋における再生変化の存在にもかかわらず低下するという観察と一致する(図1)。さらに、Cmaxおよび/またはAUCは、感染の動物モデルにおける有効性の重要な決定因子であるので、ダプトマイシンの薬理学的活性は、1日1回の投与により最適化される。従って、安全性および有効性は、同じ決定因子(Cmax)には依存しないので、ダプトマイシンについての安全性限界は、用量レジメンを変化することにより増大され得る。
【0020】
これらの結果に基づいて、本発明は、ダプトマイシン投与の先行の方法と比べて骨格筋毒性を最小化する、ダプトマイシン投与のための方法を提供する。この方法は、臨床適用においてヒト患者のためにおよび獣医の適用において用いられ得る。この方法のための用量および投薬間隔は、臨床または獣医適用において安全かつ有効であるものである。本発明の方法は、一般に、投与間隔が長くなるほど、より高用量のダプトマイシンの投与を提供しうることを教示する。
【0021】
本発明の1つの実施態様では、この用量は、3〜75mg/kgのダプトマイシンである。好ましい実施態様では、この用量は、6〜2.5mg/kgである。より好ましい実施態様では、ヒト患者のための用量は、6〜12mg/kgである。用いられ得る用量としては、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、22、または25mg/kgが挙げられる。獣医適用のための好ましい実施態様では、用量は3〜25mg/kgである。これらの用量よりもより高い、中間の、または未満の他の用量もまた、本発明の方法に従って、当業者に用いられ得、そして決定され得る。
【0022】
本発明の1つの実施態様において、投薬間隔は、24時間〜毎週1回である。好ましい実施態様において、ダプトマイシンは24時間毎に1回、48時間毎に1回、72時間毎に1回、96時間毎に1回または毎週1回の投薬間隔で投与される。より長い投薬間隔(例えば、96時間毎に1回、または毎週1回)での投与が、腎機能を障害したかまたは透析の必要な患者に所望され得る。より好ましい実施態様では、投薬間隔は24〜48時間である。なおより好ましい実施態様では、投薬間隔は24時間である。獣医適用のために好ましい投薬間隔は、ダプトマイシンがヒトにおいてよりも特定の動物種において、それぞれより短い半減期かまたはより長い半減期を有するかに依存して、ヒト患者に好ましい投薬間隔よりもいくらか短いかまたは長いかであり得る。本発明はまた、本明細書において記載された用量および投薬間隔で、患者の細菌感染を処置するための医薬の調製のためのダプトマイシンの使用を提供する。臨床適用および獣医適用の両方のためのこれらの投薬間隔の間にあるかまたはそれより短い他の投薬間隔は、本発明の方法に従って、当業者により使用され得るかまたは決定され得る。
【0023】
本発明の1つの実施態様において、本発明の方法は、24時間毎に1回〜毎週1回の3〜75mg/kgの用量のダプトマイシンの投与工程を含む。好ましい実施態様において、ダプトマイシンは、24時間、48時間、72時間または96時間ごとに1回3〜25mg/kgの用量で投与される。より好ましい実施態様において、ダプトマイシンは、24時間〜48時間ごとに3〜12mg/kgの用量でヒト患者に投与される。なおより好ましい実施態様において、ダプトマイシンは、24時間毎に1回3、4、5、6、7、8、9、10、11または12mg/kgの用量で投与される。獣医適用において、ダプトマイシンは、24時間毎に3〜25mg/kgの用量で投与される。
【0024】
ダプトマイシンは、細菌感染が根絶されるかまたは減少されるまでこの方法に従って、投与され得る。1つの実施態様では、ダプトマイシンは、3日〜6ヶ月の期間で投与される。好ましい実施態様では、ダプトマイシンは、7〜56日間投与される。より好ましい実施態様では、ダプトマイシンは、7〜28日間投与される。なおより好ましい実施態様では、ダプトマイシンは、7〜14日間投与される。ダプトマイシンは、所望の場合は、より長い時間またはより短い時間で投与され得る。
【0025】
さらに、本発明は、ダプトマイシンを用いて実証されているが、本発明の結果および方法はまた、他のリポペプチド抗生剤およびキヌプリスチン/ダルホプリスチン、または骨格筋毒性を生じる他の抗生剤に適用可能である。従って、本発明はまた、有効性を維持しながら骨格筋毒性を最小限にする他のリポペプチド抗生剤投与のための方法を提供する。本発明はまた、患者における細菌感染の処置のための医薬調製のためのリポペプチド抗生剤のための使用を提供する。ここで、この用量は、筋毒性を生じない投薬間隔でのリポペプチド抗生剤の治療的有効量である。リポペプチド抗生剤としては、制限しないが、ダプトマイシン、ダプトマイシン誘導体、およびタンパク質分解性ドメインおよび脂質ドメインを含む他の抗生剤(例えば、A54145(Baltz,前出)またはA54145誘導体)が挙げられる。
【0026】
本発明はまた、有効性を維持しながら、骨格筋毒性を最小限にするキヌプリスチン/ダルホプリスチン投与の方法を提供する。この方法は、臨床適用および獣医適用において、ヒト患者に用いられ得る。この方法のための用量および投与間隔は、臨床適用または獣医適用において安全かつ有効なものである。本発明の方法は、一般に、投与の間隔を延長することにより、より高い用量のキヌプリスチン/ダルホプリスチンが投与され得ることを教示する。1つの実施態様において、この用量は、24時間〜毎週一回の投薬間隔で、7.5〜75mg/kgのキヌプリスチン/ダルホプリスチンである。好ましい実施態様では、この用量は、7.5〜30mg/kgである。より好ましい実施態様では、ヒト患者用の用量は、7.5〜20mg/kgである。獣医適用のためのより好ましい実施態様では、この用量は、7.5〜50mg/kgである。好ましい実施態様では、この投薬間隔は、24時間、48時間、72時間または96時間である。より好ましい実施態様では、投薬間隔は24時間である。獣医適用のための好ましい投薬間隔は、キヌプリスチン/ダルホプリスチンがそれぞれ、ヒトよりも特定の動物種において、より短いかまたはより長い半減期を有するか否かに依存して、ヒト患者用の好ましい投薬間隔よりもいくらか短いかまたは長くてもよい。本発明はまた、患者における細菌感染を処置するための医薬の調製のためのキヌプリスチン/ダルホプリスチンの使用を提供する。ここで、この用量は、筋毒性を生じない投薬間隔でキヌプリスチン/ダルホプリスチンの治療上有効な量である。
【0027】
本発明の方法は、ダプトマイシン、他のリポペプチド抗生剤、またはキヌプリスチン/ダルホプリスチンを、その投与の必要な患者に、ダプトマイシン、他のリポペプチド抗生剤、またはキヌプリスチン/ダルホプリスチン投与の他の方法と比較して、グラム陽性細菌感染を減弱または排除するのに有効であり、かつ骨格筋毒性を軽減させる量で、投与する工程を含む。この抗生剤は、経口的に、非経口的に、吸引により、局所的に、直腸的に、経鼻的に、口腔内に、経膣的に、または移植リザーバー、外部ポンプ、もしくはカテーテルにより投与され得る。ダプトマイシン、他のリポペプチド抗生剤、またはキヌプリスチン/ダルホプリスチンはまた、膿瘍、心室または関節に直接注射または投与され得る。非経口投与としては、皮下、筋肉内、動脈内、滑膜内、槽に、髄腔に、肝内に、病巣内におよび頭蓋内への注射または注入が挙げられる。好ましい実施態様では、抗生剤投与は、静脈内投与、皮下投与、または経口投与を介する。
【0028】
本発明による方法は、感染が任意の型のグラム陽性細菌により生じるか、または増悪する、細菌感染を有する患者の処置に使用され得る。好ましい実施態様では、ダプトマイシン、リポペプチド抗生剤、またはキヌプリスチン/ダルホプリスチンは、本発明の方法により患者に投与される。別の好ましい実施態様では、細菌感染は、以下を含むがこれらに限定されない細菌により生じ得るかまたは増悪され得る:メチシリン感受性ブドウ球菌およびメチシリン耐性ブドウ球菌(Staphylococcus aureus、Staphylococcus epidermidis、Staphylococcus haemolyticus、Staphylococcus hominis、Staphylococcus saprophyticus、およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌を含む)、糖ペプチド媒介−感受性Staphylococcus aureus(GISA)、ペニシリン−感受性連鎖球菌およびペニシリン耐性連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae、Streptococcus pygenes、Streptococcus agalactiae、Streptococcus avium、Streptococcus bovis、Streptococcus lactis、Streptococcus sangiusならびにC群Streptococci、G群Streptococci、および緑色連鎖球菌を含む)、腸球菌(Enterococcus faecalisおよびEnterococcus faeciumのようなバンコマイシン感受性株およびバンコマイシン耐性株を含む)、Clostridium difficile、Clostridium clostridiiforme、Clostridium innocuum、Clostridium perfringens、Clostridium ramosum、Haemophilius influenzae、Listeria monocytogenes、Corynebacterium jeikeium、Bifidobacterium種、Eubacterium aerofaciens、Eubacterium lentum、Lactobacillus acidophilus、Lactobacillus coasei、Lactobacillus plantarum、Lactococcus種、Leuconostoc種、Pediococcus、Peptostreptococcus anaaerobius、Peptostreptosoccus asaccarolyticus、Peptostreptococcus magnus、Peptostreptococcus micros、Peptostreptococcus prevotii、Peptostreptococcus productus、Propionibacterium acnes、およびActinomyces種。
【0029】
古典的に「耐性」株に対するダプトマイシンの殺生活性は、インビトロ実験では、古典的に「感受性」株に対する活性と匹敵する。さらに、感受性株に対するダプトマイシンの最小阻害濃度(MIC)は、代表的には、バンコマイシンの1/4である。従って、好ましい実施態様では、ダプトマイシンは、本発明の方法に従って、バンコマイシンを含む他の抗生剤に耐性である細菌感染を示す患者に投与される。さらに、糖ペプチド抗生剤と異なり、ダプトマイシンは、グラム陽性生物に対する濃度依存性の、迅速な殺菌性活性を示す。このように好ましい実施態様では、ダプトマイシンは、迅速に作用する抗生剤療法の必要な患者に、本発明の方法に従って、投与される。キヌプリスチン/ダルホプリスチンはまた、抗生剤耐性株の細菌を処置するために有用であり、そして緊急使用状況において使用され得る。
【0030】
本発明の方法は、身体における任意の器官または組織のグラム陽性細菌感染のために用いられ得る。これらの器官または組織としては、限定はしないが、以下が挙げられる:骨格筋、皮膚、血流、腎臓、心臓、肺および骨。本発明の方法は、限定はしないが、皮膚および軟性組織の感染、細菌血症および尿路感染を処置するために用いられ得る。本発明の方法は、限定はしないが、中耳炎、副鼻腔炎、慢性気管支炎および肺炎(薬物耐性Streptococcus pneumoniaeまたはHaemophilus influenzaeによりおこる肺炎を含む)を含む院外感染性後天性呼吸器感染を処置するために用いられ得る。本発明の方法は、異なる型のグラム陽性細菌を含むか、またはグラム陽性細菌およびグラム陰性細菌の両方を含む混合感染を処置するために用いられ得る。これらの型の感染は、腹膜内感染および産科/婦人科感染を含む。本発明の方法は、限定しないが、肺炎、腹腔内敗血症、皮膚および軟性組織の感染ならびに骨および関節の感染を含む、院内感染のためのステップダウン療法において用いられ得る。本発明の方法はまた、限定しないが、心内膜炎、敗血症関節炎および骨髄炎を含む感染の処置に用いられ得る。好ましい実施態様では、任意の上記疾患が、本発明の方法によりダプトマイシンを用いて処置され得る。別の好ましい実施態様では、任意の上記疾患が、本発明の方法に従う、リポペプチド抗生剤またはキヌプリスチン/ダルホプリスチンを用いて処置され得る。
【0031】
本発明の方法はまた、リポペプチド抗生剤以外の1つ以上の抗生剤を同時に投与しながら実行され得る。ダプトマイシンは、高い血症タンパク質結合を示し、そして細胞膜を通過し得ない。従って、ダプトマイシンおよびこれらの特徴を示す他のリポペプチド抗生剤は、他の抗生剤と相互作用をおこす可能性は低い。このプロフィールを考慮すれば、ダプトマイシンは、1つ以上の同時投与される抗生剤と相乗的に働くと予想される。さらに、ダプトマイシンは、1つ以上の同時投与される抗生剤の毒性プロフィールを改善し得る。ダプトマイシンおよびアミノグリコシドの投与は、アミノグリコシドによりおこる腎毒性を寛解させ得ることが示されている。キヌプリスチン/ダルホプリスチンはまた、特定の他の抗生剤とともに、本発明に従って投与され得る。キヌプリスチン/ダルホプリスチンは、特定の薬物(例えば、ミダゾラム、ニフェジピン、テルフェナジンおよびシクロスポリン)のチトクロームP450 3A4媒介代謝を阻害するため、これらの薬物はキヌプリスチン/ダルホプリスチンと同時投与されるべきではない。好ましい実施態様では、抗生剤は、本発明の方法を実行しながら同時投与され得る。ダプトマイシンまたは別のリポペプチド抗生剤と同時投与され得る抗生剤およびそれらのクラスは、限定しないが、ペニシリンおよび関連薬物、カルバペネム、セファロスポリンおよび関連薬物、アミノグリコシド、バシトラシン、グラミシジン、ムピロシン、クロラムフェニコール、チアムフェニコール、フシジン酸ナトリウム、リンコマイシン、クリンダマイシン、マクロライド、ノボビオシン、ポリミキシン、リファミシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、バンコマイシン、テイコプラニン、ストレプトグラミン、スルホンアミドを含む抗葉酸剤、トリメトプリムおよびその組み合わせ、およびピリメタミン、ニトロフランを含む合成抗菌剤、マンデル酸メテナミン、および馬尿酸メテナミン、ニトロイミダゾール、キノロン、フルオロキノロン、イソニアジド、エタンブトール、ピラジナミド、パラアミノサリチル酸(PAS)、サイクロセリン、カプレオマイシン、エチオナミド、プロチオナミド、チアセタゾン、ならびにバイオマイシンを含む。好ましい実施態様では、本発明によりダプトマイシンまたは他のリポペプチド抗生剤と同時投与され得る抗生剤としては、限定しないが、イミペネム、アミカシン、ネチルミシン、ホスホマイシン、ゲンタマイシン、セフトリキアソンおよびテイコプラニンが挙げられる。
【0032】
(実施例1)
(Study A:CPKおよび骨格筋毒性に対するCmaxの効果)
骨格筋毒性に対するCmaxの効果を研究するため、イヌ(1群あたり雄性イヌ4匹)に、生理食塩水q8h、ダプトマイシン25mg/kg q24h、ダプトマイシン75mg/kg q24hおよびダプトマイシン25mg/kg q8hの用量レジメンで20日間、静脈内投与した。イヌにおいて、CPKレベルの正常範囲以上の増加、および骨格組織における顕微鏡的変化により骨格筋毒性を測定した。
【0033】
投与18日目に、ダプトマイシンの定常血漿濃度をHPLCにより決定した。Cmaxレベルは、25mg/kg q24hと比べて、25mg/kg q8hでほぼ同じ(1.23倍高い)であった。Cmaxレベルは、25mg/kg q8hと比べて、75mg/kg q24hでほぼ2.8倍高かった。図1、上パネル(StudyA)を参照のこと。AUCは、75mg/kg q24hと比べて、25mg/kg q8hでほぼ同じ(0.37倍高い)であった(表2および図2、上パネルを参照のこと)。
【0034】
Study Aにおける処置期間を通じて、ピークCPK活性における用量比例増加は、用量が一定のq24h投与間隔で25mg/kg〜75mg/kgに増加した場合、明白であった。しかし、75mg/kg q24hで投与された動物と比較して25mg/kg q8hで投与された動物において、これらの2つのレジメンについての1日総用量が同じであったにもかかわらず、CPKレベルにけるさらなる4倍の増加が、観察された。すべての用量レジメンについて、処置の約1週間後に、CPKはピークとなり、次いで処置の継続にもかかわらず低下した。
【0035】
処置した動物を、最終投与後、約1回の投与間隔で屠殺し、そして筋組織をミオパシーの指標のために顕微鏡的に試験した。表1を参照のこと。
【0036】
【表1】
Figure 0004184607
骨格筋線維(skeletal myofiber)変性は、75mg/kg q75hに比較して25mg/kg q8hで約2倍に増加した。さらに、骨格筋線維変性は、25mg/kg q24hに比較して25mg/kg q8hで約5倍に増加した。骨格筋線維変性は、血清CPKにおける3〜25倍の増加に相関して、重篤度が最小であった。心筋に対する顕微鏡的変性効果はStudy Aでは観察されなかった。
【0037】
Study Aの知見を表2にまとめる。
【0038】
【表2】
Figure 0004184607
さらに、毒性は、AUC024hまたは非毒性血漿濃度閾値に関連しないようであった。CPKおよびミオパシーの頻度の増加は、75mg/kg q24hよりも25mg/kg q8hで、より低いCmaxにもかかわらず大きかった。さらに、25mg/kgを1日に3回投与した場合は、1日1回と比較して匹敵するCmaxレベルにもかかわらず顕微鏡的ミオパシーの頻度により測定して、毒性の5倍の増加、およびCPKレベルの10倍を超える増加が存在した。AUCは、75mg/kg q24hと比べて、25mg/kg q8hの用量レジメンでは0.37倍に低いのみであり、CPK活性およびミオパシーの頻度は2〜4倍増加した。
【0039】
どのような理論にも束縛されることを望まないが、骨格筋効果は、筋線維への臨床的損傷以下の修復に利用可能な低い血漿濃度の持続時間と関連するようである。用量細分化と比較して、1日1回投与は、最小血漿濃度の時間より延長する。このことは修復のための時間をより長くさせ、それにより毒性を減少させる。例えば、25mg/kg q8hの用量レジメンで、血漿濃度は、このレジメンについての値を通じて、決して27μg/ml未満に下がらない。対照的に、75mg/kg q24hレジメンの血漿濃度は、次の用量の投与の約12時間前にこのレベル未満であった。この毎日の期間の最小曝露は、1日1回の投与レジメン(75mg/kg q24h)が細分化された投与(25mg/kg q8h)よりも低い毒性である理由を説明し得る。
【0040】
(実施例2)
(Study B:骨格筋毒性に対する血漿濃度閾値の効果)
骨格筋毒性に対する血漿濃度閾値の効果を研究するため、イヌ(1群あたり雄性イヌ4匹)に、生理食塩水q8h、ダプトマイシン 5mg/kg q24h(約NOEL q24h)およびダプトマイシン5mg/kg q8hの用量レジメンで、20日間静脈内投与した。
【0041】
実施例1のように、投与18日目のダプトマイシンの定常血漿濃度をHPLCにより決定した。q8hの間隔は、イヌにおける3半減期(t1/2=2.5時間)を示し、そしてq24hレジメンと比較して定常状態Cmaxに最小の影響であるはずである。5mg/kg q8hおよび5mg/kg q24hについてのCmaxは、両方の用量レジメンについてほぼ同じであった。図1の下パネルを参照のこと(Study B)。しかし、AUCは、5mg/kg q24hに比べて、5mg/kg q8hでほぼ3倍(2.6倍)高かった(表4、および図2、下パネルを参照のこと)。
【0042】
血清CPKレベルを実施例1に開示のように決定した。生理食塩水コントロールと比較して、5mg/kg q24hでのCPKのレベルには変化はなかった。対照的に、5mg/kg q8hでのCPKレベルは、5mg/kg q24hまたは生理食塩水コントロールと比べて増加していた。5mg/kg q8hで、CPKレベルは、ダプトマイシン処置の1週間後にベースラインより3〜4倍高いレベルでピークに達し、そしてその後、継続した処置にもかかわらず、Study Aにみられたのと同様に、低下した。図1、下パネル(Study B)を参照のこと。
【0043】
処置した動物を、最終用量後、ほぼ1投与間隔で屠殺し、そして実施例1のようにミオパシーの指標について筋組織を顕微鏡的に試験した。これを表3に示す。
【0044】
【表3】
Figure 0004184607
骨格筋線維変性は、5mg/kg q24hに比較して5mg/kg q8hで4倍に増加した。変性は、CPKレベルにおける0〜4倍の増加に相関して、罹患した線維が非常にわずかである、非常にわずかな重篤度であった。筋線維変性は、Study Aで用いた高用量よりも、Study Bにおいて重篤度が低かった。Study Bでは、心筋に対する変性効果は観察されなかった。
【0045】
Study Bの知見を表4にまとめる。
【0046】
【表4】
Figure 0004184607
q24hの投与間隔では、NOELは、約5mg/kgである。このNOELq24hは、CPKの変化を生じず、そして骨格筋毒性のごくわずかな最小限の組織病理学的証拠しか生じなかった。しかし、これらの実験は、NOELq24hが毒性についての血漿濃度閾値を規定しないことを示す。なぜなら、8時間ごとの投与(すなわち、5mg/kg q8h)は、Cmaxが5mg/kg q24hレジメンのCmaxと同様であったにもかかわらずCPKおよび顕微鏡的ミオパシーの増加により明白な骨格筋毒性を導くからである。毒性は、所定の血漿濃度未満の時間と関連し得る。例えば、10μg/mL未満の時間は、5mg/kg q24hでの18時間に比べて5mg/kg q8hでは6時間である。図1、下パネルを参照のこと。これらの結果は、骨格筋毒性が観察されないダプトマイシンのピーク血漿濃度は、投与頻度依存性であることを示唆する。
【0047】
(実施例3)
骨格筋毒性に対するキヌプリスチン/ダルホプリスチンのCmaxの効果を研究するため、イヌ(1群あたり雄性イヌ4匹)に、生理食塩水q8h、キヌプリスチン/ダルホプリスチン25mg/kg q24h、キヌプリスチン/ダルホプリスチン75mg/kg q24hおよびキヌプリスチン/ダルホプリスチン25mg/kg q8hの用量レジメンで20日間、静脈内投与した。
【0048】
投与18日目に、キヌプリスチン/ダルホプリスチンの定常血漿濃度をHPLCにより決定した。CmaxレベルおよびAUCを、25mg/kg q8h、25mg/kg q24hおよび75mg/kg q24hについて実施例1に記載のように、測定した。同様に、CPKレベルおよび筋関連組織病理学所見の頻度を、25mg/kg q8h、25mg/kg q24hおよび75mg/kg q24hについて実施例1に記載のように、決定した。骨格筋については、全部で24の部位について、4匹のイヌそれぞれにおいて6つの部位を試験する。どのような用量レジメンでも顕微鏡的ミオパシーまたはCPKレベルに対する効果が観察されない場合は、この用量は増加してもよい。例えば、CmaxレベルおよびAUCを、50mg/kg q8h、50mg/kg q24hおよび150mg/kg q24hについて測定し得る。
【0049】
25mg/kgキヌプリスチン/ダルホプリスチン q8hの投薬レジメンは、CPKレベルの上昇および/または顕微鏡的ミオパシーの頻度の増加で測定した場合、75mg/kgキヌプリスチン/ダルホプリスチン q24hの投薬レジメンより大きい筋毒性を生じると予期される。しかし、Cmaxレベルは、25mg/kg q8hについてのCmaxレベルよりも75mg/kg q24hについて、より高く、これにより25mg/kgキヌプリスチン/ダルホプリスチンq 8hよりも75mg/kgキヌプリスチン/ダルホプリスチン q24hでより大きい有効性を生じると予期される。
【0050】
(実施例4)
投薬間隔の延長が患者における一過性骨格筋毒性を予防するか否かを研究するため、重篤なグラム陽性細菌血症、またはグラム陽性細菌に起因する種種の感染(バンコマイシンに耐性である)を有するか、さもなければ現在利用可能な治療に抵抗性であるか、またはその治療が禁忌である、入院している成体被験体にダプトマイシンを静脈内投与した。この被験体を7〜21日間処置した。血清CPKレベルを、最初の抗生剤処置の前、そして処置の最初の7日間1日おきに、そしてその後は毎日決定した。
【0051】
この結果は、24時間ごとの4mg/kg用量での8例の患者へのダプトマイシンの投与、または24時間ごとの6mg/kgの用量での9例の患者へのダプトマイシンの投与が、ほとんどの患者で、正常範囲(20〜198U/L)以上の血清CPKレベルの上昇を起こさなかったことを示す。表5を参照のこと。さらに、正常以上のCPKレベルのいくらかの上昇を経験したわずかな患者においてさえ、この上昇は、ダプトマイシン処置に関連するとは考えられなかった。いずれの筋肉痛または筋脱力も経験した患者はおらず、そして全ての患者がダプトマイシン処置の経過を終了し得た。同様に、3例のヒト患者への6mg/kgダプトマイシンの初回用量投与後の12時間ごとの3mg/kgの投与は、正常値以上へのCPKレベルの上昇を生じなかった。
【0052】
【表5】
Figure 0004184607
(実施例5)
ダプトマイシンの種々の投薬間隔の異なる投薬レベルをヒト被験体に投与する。ダプトマイシンを、バンコマイシンに耐性であるグラム陽性細菌株に起因する感染の診断を有するか、さもなければ現在利用可能な治療に抵抗性であるか、またはその治療が禁忌である、成体被験体に静脈内投与する。この被験体を7〜14日間処置する。この処置は、28〜56日まで延長され得る。異なる用量のダプトマイシンを、24時間ごとに1回、48時間ごとに1回、72時間ごとに1回、96時間ごとに1回、または毎週1回の投薬間隔で投与する。これらの投与間隔の中間かまたはより短い他の投薬間隔がまた用いられ得る。用いられ得る投薬レベルとしては、7、8、9、10、11、12、14、16、18、20、22、または25mg/kgが挙げられる。これらの投薬レベルより低用量か、その中間か、またはより高用量である他の投薬レベルもまた用いられ得る。この処置の有効性は、以下の基準の1つ以上により測定される:微生物学検査による研究のための入院で単離されるグラム陽性細菌血液濃度の根絶または減少;細菌感染の微生物学的解決または改善までの日数;入院時に報告された臨床徴候および症状の解決または改善;ならびに抗生剤の最終用量の3〜4週後の生存率。投薬レベルおよび投薬間隔は、上記基準の1つ以上が満たされる場合、有効である。血清CPKレベルを、最初の抗生剤処置の前に決定し、そして処置の最初の7日間は1日おきに、そしてその後は毎日決定した。投薬レベルおよび投薬間隔は、それが血清CPKレベルを正常レベル以上に有意に上昇させないか、または処置が骨格筋疼痛もしくは脱力を生じない場合、安全である。
【0053】
(実施例6)
この手順は、キヌプリスチン/ダルホプリスチンがダプトマイシンの代わりに患者に投与されること、および投薬レベルが7.5〜30mg/kg q24hの範囲であることを除けば、本質的に、実施例5に記載されるとおりである。用いられ得る投薬レベルとしては、7.5、10、12、14、16、18、20、22、24、26、28または30mg/kgが挙げられる。これらの投薬レベルより低いか、中間か、またはより高い他の投薬レベルもまた用いられ得る。
【0054】
本明細書に引用される全ての刊行物および特許出願は、それぞれの個々の刊行物または特許出願が参考として援用されることが具体的かつ個々に示されるように、本明細書において参考として援用される。上記発明を、理解の明確化のための例示および実施例により、いくぶん詳細に記載してきたが、特定の変化および改変が、上記の特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく、本発明に対してなされ得ることは、本発明の教示に照らして、当業者には容易に明白である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1は、Dog StudyA(上パネル)およびDog StudyB(下パネル)についての血清クレアチンホスホキナーゼ(CPK)レベルである。血清CPKレベルは、筋毒性の指標として、ダプトマイシン投与後2時間で決定された。
【図2】 図2は、Dog StudyA(上パネル)およびDog StudyB(下パネル)についての、HPLCにより決定された、投薬18日目のダプトマイシンの定常血漿濃度である。
【図3】 図3は、ダプトマイシンの異なる投薬間隔とその骨格筋毒性(CPKレベルと関連)とその有効性(ダプトマイシンの最小阻止濃度MICをこえる、ピーク血清濃度Cmaxと関連)との間の関係である。

Claims (1)

  1. 3〜75mg/kgのダプトマイシンの反復投与を必要とするグラム陽性細菌感染ヒト患者を治療するための抗生剤であって、該抗生剤は、3〜75mg/kgの投与が可能な量のダプトマイシンを含み、ここでダプトマイシンの投薬間隔が24時間ごとに1回〜48時間ごとに1回であって、骨格筋毒性を最小限にした、前記抗生剤。
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