JP4183926B2 - タンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法 - Google Patents

タンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法に係り、さらに詳しくは、タンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブを高収率で回収する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
タンタルは、その用途が広く、耐食性、耐熱性に優れているため化学工業用として蒸留塔、オートクレーブ、熱交換器、化学繊維用紡糸ノズルなど各種化学装置に用いられている。また、一般にタンタル酸化皮膜は、弁作用(電極が正極であれば誘電体に動作するが、逆に電極が負極であると誘電体として動作しないという特性、すなわち整流特性)と呼ばれる特性を有しているため電解コンデンサの電極材料として使用され、搬送機器、電子機器、電子制御機器などに用いられている。また、携帯電話のノイズ除去用の表面弾性波(SAW)フィルターとしてタンタル酸リチウム単結晶ウェハが使用されており、移動体通信市場の拡大に伴い、その需要が大幅に拡大している。さらに、炭化タンタルは超硬切削工具用材料として、酸化タンタルは光学レンズの添加剤として利用されており、タンタルの重要性は極めて大きく、その需要は増大している。
【0003】
一方、ニオブは、鋼中の炭素を安定化し、粒間腐食を防ぐ効果があるので、鉄鋼添加材として使用されており、これが最大の用途である。また、高圧ナトリウムランプのランプ発光部に付随する導電管として、ニオブ合金が実用化されており、さらに超伝導材料や超合金の添加元素などに利用され、さらには酸化ニオブは光学ガラス用あるいは電子セラミックス用、ニオブ酸リチウムの原料、炭化物の原料等に利用されている。
【0004】
酸化タンタルおよび/または酸化ニオブを製造する方法はいくつかあるが、以下に述べるフッ化水素酸溶解−溶媒抽出法が一般的である。図2に、酸化タンタルおよび酸化ニオブの一般的な製造工程を示す。図2に示すように、まず、タンタライト等の鉱石や、タンタルコンデンサのスクラップ等の原料を粉砕してフッ酸で溶解した後、硫酸を加えて溶液の濃度を調整する。次に、この調整液をフィルタープレスで濾過し、清浄な溶液にしてMIBK(メチルイソブチルケトン)による溶媒抽出にかけると、タンタルおよびニオブがMIBKに抽出される。この時、原料中に含まれている不純物の鉄、マンガン、シリコン等が抽残液に残ることにより、不純物が除去される。
【0005】
こうして得たタンタルおよびニオブを含むMIBKを、希硫酸で逆抽出すると、ニオブが水溶液に移り、純粋なタンタルがMIBKに残る。MIBK中のタンタルを精製し、水で逆抽出して水溶液に移し、MIBKを回収し再使用する。一方、水溶液中のニオブはMIBKで再度抽出し、少量含まれているタンタルを抽出し、水溶液中のニオブを純粋なものに精製する。このニオブ精製時のMIBKは、タンタル、ニオブ分離前の溶媒に合流される。このようにして精製されたタンタルおよびニオブの各溶液にアンモニア水を加えると、水酸化タンタルおよび水酸化ニオブが析出する。さらに、この水酸化物の沈殿を濾過、乾燥し、最後に仮焼することにより、酸化タンタルおよび酸化ニオブが得られる。
【0006】
ところで、このようなタンタル/ニオブは、希少品であるにも係わらず、近年、需要が大幅に増大しており、タンタル/ニオブ原料の供給が需要に追いつかない状況下にある。この状況はタンタルにおいて特に顕著である。このため、原料として、タンタルやニオブの製造工程で生じる廃棄物や不要になった製品を再利用することが試みられている。
【0007】
例えば、特開2000−7339号公報には、原料であるタンタル含有廃棄物を焙焼し、これによりタンタル含有廃棄物中の有機物を除去し、かつ金属タンタルおよび不純物を酸化物に変換し、その後フッ酸による溶解を行う方法が開示されている。
また、特開2000−7338号公報には、タンタル酸化物含有スラッジを原料とし、このスラッジに酸処理またはアルカリ処理を行ってタンタル品位を高めた後、フッ酸溶解を行う方法が開示されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これらの公報に開示されている方法では、使用済みの超硬工具等のタンタルおよび/またはニオブ含有の炭化物系原料からタンタルおよび/またはニオブを回収することは困難である。
また、タンタルおよび/またはニオブ含有炭化物系原料を、直接HF(フッ化水素酸)で溶解しても、タンタルおよび/またはニオブの回収率は10%程度と低い。
また、フッ化水素酸(フッ酸)以外の酸による酸洗浄では、タンタルおよび/またはニオブ含有炭化物系原料を処理することができない。
また、タンタルおよび/またはニオブ含有炭化物系原料を焙焼して酸化物化すると、上層部分は酸化物化するが、それ以外の部分は、溶融して固化してしまいほとんど酸化物にならないという問題がある。
さらに、特開2000−203841号公報には、タンタルおよび/またはニオブ含有合金を原料として、NaOH処理および鉱酸処理により鉄等の不純物を低減した後、フッ酸溶解を行う方法が開示されているが、NaOH処理および鉱酸処理では炭化物はほとんど分解されないため、この方法をタンタルおよび/またはニオブ含有炭化物系原料の処理に適用しても、タンタルおよび/またはニオブの大部分はフッ酸に溶解せず、回収率は直接フッ酸回収法と大差がなく低い。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、従来、タンタルおよび/またはニオブの回収が困難とされてきたタンタルおよび/またはニオブ含有の炭化物系原料から、高収率でタンタルおよび/またはニオブを回収する方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載のタンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法は、(a)タンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料を、粉砕する工程と、(b)この粉砕された原料を空気との接触が維持できる様に焙焼する工程と、(c)この焙焼された原料をフッ酸またはフッ酸とその他の鉱酸との混酸で溶解して、フッ酸溶液中または混酸溶液中にタンタルおよび/またはニオブを回収する工程と、を備えており、前記(a)工程において、粉砕された後のタンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料が目開き500μmのふるいを通過する割合が98wt%以上であること、ならびに、
前記(b)工程において、粉砕された原料を10mm以下の厚さに広げて焙焼すること、を特徴とする。
【0011】
請求項2に記載のタンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法は、(a)タンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料を、粉砕する工程と、(b)この粉砕された原料を空気との接触が維持できる様に焙焼する工程と、(c)この焙焼された原料をフッ酸またはフッ酸とその他の鉱酸との混酸で溶解して、フッ酸溶液中または混酸溶液中にタンタルおよび/またはニオブを回収する工程と、を備えており、前記(a)工程において、粉砕された後のタンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料が目開き500μmのふるいを通過する割合が98wt%以上であること、ならびに、前記(b)工程において、粉砕された原料を空気にて流動状態を保って焙焼する流動焙焼または炉内に噴霧して焙焼する噴霧焙焼を行うこと、を特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
[タンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法]最初に、本発明のタンタル/ニオブを含有する炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法を、図1を参照しつつ説明する。
本発明に用いられるタンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料は、タンタルおよびニオブの少なくともいずれか1成分を含有し、さらに炭素を含有するものである。原料の組成は特に限定されないが、原料の重量に対して、タンタルとニオブの合計量で5〜95%含有するのが好ましい。タンタルとニオブの合計量が5%未満では、不純物が多いため処理コストが高くなる。また、タンタルとニオブの合計量が95%を超えると原料価格が高くなる。
ただし、タンタルとニオブの合計量が5%未満であっても、コバルト等の有価物を含有しており、例えば、本発明の(a)工程または(b)工程の後で、コバルトを塩酸にて選択的に溶解して回収可能な場合等においては、本発明を適用する価値が十分ある。また、炭素の含有量としては、原料の重量に対して0.2〜15%が一般的である。具体的な原料の例としては、炭化タンタルおよび/または炭化ニオブの製造工程あるいは超硬合金や超硬工具の製造時に発生するスクラップや、使用済みの超硬工具、さらに詳細は不明だが本発明の実施例に使用したようなタンタルおよび/またはニオブ含有フェロ合金を炭化処理したと思われるもの等がある。
【0016】
先ず、タンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料を、振動ミル、ボールミル等で粉砕する。粉砕品は目開き500mμのふるいを通過する割合が98wt%以上であることが好ましく、99wt%以上がより好ましく、全量通過するのが最も好ましい。粉砕品の粒度が上記の範囲のように細かければ、後の焙焼工程において炭化物の酸化速度が速くしかも均一に酸化しやすくなるためである。また、粉砕された原料を目開き45〜500μmのふるいを通過させ、ふるいを通過した部分を後の焙焼工程に併用し、ふるい上に残留した部分は再粉砕する構成としてもよい。ふるいを通すことによりふるいの目開きより大きい粒子を含まない細粒となるため非常に好ましい。粒度の点からはさらに小さな目開きのふるいを通過させてもよいが、粉砕およびふるいのコストが高くなるため、好ましくない。
【0017】
次に、粉砕された原料を空気との接触が維持できる様に焙焼する。焙焼するのは、タンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料は炭化物を含有しており、フッ酸に溶解し難いため、焙焼により炭化物を酸化物にしてフッ酸に溶解しやすくするためである。しかし、例えば、原料の層厚を約100mmにして静置焙焼する等、原料と空気の接触が維持できないように焙焼すると、酸化が不十分で炭化物が多く残留してしまう。原料と空気の接触が維持できる様に焙焼することによって、炭化物の速やかな燃焼が可能になると同時に、過剰な発熱の蓄積によりメタル成分の溶融が発生し、その溶融した固まりの内部に未反応の炭化物が残存するといった不均一な焙焼を防止することができる。したがって、原料と空気の接触が維持できるように焙焼することが重要である。
粉砕された原料を空気との接触が維持できるように焙焼する方法としては、原料を薄く広げて焙焼する方法、流動焙焼する方法、噴霧焙焼する方法、回転炉にて焙焼する方法等がある。このうち、薄く広げて焙焼する方法、流動焙焼または噴霧焙焼する方法が好ましい。以下、この好適な2種類の焙焼方法について説明する。
【0018】
薄く広げて焙焼する方法は、スクレーパー等により層厚を20mm程度以下にして、焙焼する方法である。このように炭化物形原料を薄く広げて焙焼すると、この原料が酸素に均一に触れて均一な酸化が行われる。また、焙焼時に、炭素(C)の影響で発熱し、温度が上昇して、メタル成分が溶融し、固化することが防止される。この焙焼後、層厚は焙焼前よりかなり厚くなるが、炭化物やメタルは少なくなり、酸化物が主体となる。しかし、焙焼前の層厚が20mm程度を超えると、2回焙焼を実施してもほぼ完全に酸化物にすることは困難となる。
層厚については、10mm以下が好ましく、5mm以下がより好ましく、2mm以下がさらに好ましい。10mmを超えると、1回の焙焼では炭化物の残留のため溶解率が極端に低下してしまい、2回以上の焙焼が必要となる。5mm以下であれば、ほぼ完全に酸化物となり1回の焙焼で十分であり、2mm以下であれば、さらに溶解効率を高めるために溶解工程の前に通常実施される粉砕が非常に容易になる、あるいは粉砕が不要になるからである。また、層厚5mmを超えて10mm以下で焙焼する場合は、長時間1回焙焼してもよいが、炭化物やメタルがわずかに残留してしまい、溶解率が低くなる可能性がある。したがって、比較的短時間焙焼した原料を粉砕後、再度比較的短時間焙焼すればほぼ完全に酸化物になるため好ましい。また、この2回焙焼する方法によれば、層厚10mmを超えて20mm程度までであれば適用可能である。
【0019】
また、別の好ましい焙焼方法として、流動焙焼または噴霧焙焼がある。
流動焙焼は、空気等にて流動状態を保って焙焼するため、空気との接触面積が大きく固化もしにくいため、ほぼ完全に酸化物となり、しかも、溶解工程の前に通常実施される粉砕が非常に容易になる、あるいは粉砕が不要になるという利点がある。
また、噴霧焙焼も空気等と共に炉内に噴霧され、大部分は空気等に均一に分散した状態で焙焼が終了するため、空気との接触面積が大きく固化もしにくいため、ほぼ完全に酸化物となり、しかも、溶解工程の前に通常実施される粉砕が非常に容易になる、あるいは粉砕が不要になるという利点がある。
【0020】
本発明の焙焼工程における焙焼温度は、400〜1200℃が好ましく、500〜1000℃がさらに好ましい。400℃未満であると、温度が低いため酸化反応が不十分になりやすい。1200℃を超えると、層厚を薄くしても初期に溶融、固化してしまい、また流動焙焼や噴霧焙焼でも、流動または分散状態にある粒子が溶融して粒子同士が引っ付いてしまい、酸化反応が不十分になりやすい。
また、本発明における焙焼時間は、焙焼方法によって異なるが、薄く広げて焙焼する場合には、1〜24時間が好ましく、流動焙焼および噴霧焙焼の場合には、0.05〜10時間が好ましい。下限時間未満であれば酸化反応が不十分になりやすく、上限時間焙焼すれば、特に原料が目開き500μmのふるいを通過する割合が98wt%以上であるような場合には、ほぼ酸化が終了しており、上限時間を超えて焙焼してもエネルギーの無駄になるためである。
【0021】
焙焼された原料はそのまま溶解に供用してもよいが、溶解に供用する前にボールミル、振動ミル等にて粉砕することができる。粉砕により粒子が細かくなり、フッ酸で溶解されやすくなるため、タンタルおよび/ニオブの回収率が高くなる。特に、焙焼された原料が少し固まりを含む場合、焙焼品を粉砕する効果が大きい。層厚2mm以下で焙焼した場合や、流動焙焼または噴霧焙焼した場合は、ほとんど固まりを含んでおらずかなり微粒であるため、焙焼された原料を粉砕しなくても、タンタルおよび/またはニオブの回収率はかなり高く、焙焼された原料の粉砕は実施しなくてもよい。
また、焙焼された原料あるいはさらに粉砕された原料は、溶解に供用する前に、フッ酸を含まない酸にて洗浄して不純物を低減してもよい。洗浄に使用する酸としては、硫酸、塩酸等があげられる。酸濃度としては、一塩基酸に換算して0.5〜15mol/lが好ましい。洗浄処理時は加温しなくてもよいが、不純物低減効率およびコストの点から30〜70℃が好ましい。洗浄処理時間は、不純物低減量および生産効率の点から1〜48時間が好ましい。硫酸以外の酸にて洗浄した場合は、溶解前に水洗して洗浄に使用した酸を低減しておくことが好ましい。後で溶媒抽出による分離・精製を実施する場合、例えば塩酸が残っていると、ニオブと鉄の分離が難しくなる等の悪影響を及ぼす可能性があるためである。
酸洗浄による不純物の低減率を高めるために、過酸化水素等の酸化剤あるいは還元剤を酸と共に使用してもよい。
【0022】
次に、この焙焼された、あるいはさらに粉砕および/または洗浄された原料を、フッ酸(フッ化水素酸)またはフッ酸とその他の鉱酸との混酸で溶解する。このようにすると、フッ酸溶液(溶解液)中または混酸溶液中にタンタルおよび/またはニオブが高収率で回収され、一方不溶解残渣中には酸化鉄、酸化スズ等の酸化物などが残る。
その他の鉱酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、過塩素酸が例示されるが、硫酸が低価格で後の溶媒抽出工程に悪影響を及ぼさないため最も好ましい。
【0023】
このような回収方法により得られるタンタルおよび/またはニオブが高収率で回収されているフッ酸溶液または混酸溶液を用いて、酸化タンタル、酸化ニオブのほか、炭化タンタル、炭化ニオブ、フッ化タンタル酸カリウム、フッ化ニオブ酸カリウム、タンタル、ニオブ、窒化タンタルおよび窒化ニオブを始めとする、各種のタンタル/ニオブ製品を製造することができる。
【0024】
以下に、上記回収方法により得られるタンタルおよび/またはニオブが高収率で回収されているフッ酸溶液または混酸溶液を用いて、酸化タンタルおよび/または酸化ニオブ、炭化タンタルおよび/または炭化ニオブ、フッ化タンタル酸カリウムおよび/またはフッ化ニオブ酸カリウム、タンタルおよび/またはニオブならびに窒化タンタルおよび/または窒化ニオブを製造する方法を説明するが、これらのタンタル/ニオブ製品を製造する方法は公知の方法を採用すればよく、特に限定されない。
【0025】
[酸化タンタル/酸化ニオブの製造方法]
酸化タンタルおよび/または酸化ニオブを製造するには、先ず、上記回収方法により得られたフッ酸溶液中または混酸溶液中のタンタルおよび/またはニオブを溶媒で抽出する。溶媒で抽出する方法は、公知の方法によって行うことができ、特に限定されない。例えば、前述した図2に示す手順に従い、MIBK、希硫酸、または水等の溶媒を用いて好ましく行うことができる。これにより、不純物のさらなる除去やTa/Nbの分離精製を行うことができる。
【0026】
次に、得られた抽出溶媒中にアンモニアを添加して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブを沈殿させる。このアンモニアは、ガス状で添加することもできるが、アンモニア水溶液(NHOH)の形で添加するのが好ましい。また、重炭酸アンモニウムや炭酸アンモニウムを水溶液で添加することもできる。アンモニア水溶液の濃度およびその添加量は、抽出溶媒中のタンタルおよび/またはニオブ量に応じて適宜決定すればよく、特に限定されない。
さらに、このようにして得られた沈殿含有溶液を濾過して、水酸化タンタルおよび/または水酸化ニオブからなる沈殿物を濾別する。得られた沈殿物を乾燥した後、仮焼することにより酸化タンタルおよび/または酸化ニオブが得られる。
【0027】
[炭化タンタル/炭化ニオブの製造方法]
炭化タンタルおよび/または炭化ニオブは、上述の方法により酸化タンタルおよび/または酸化ニオブを得た後、得られた酸化物を炭素により還元焙焼することにより得ることができる。例えば、酸化タンタルとカーボンブラックをボールミル等で混合し、これを成形して小さな団鉱にし、これを1600〜1800℃で加熱することにより製造することができる。
【0028】
[フッ化タンタル酸カリウム/フッ化ニオブ酸カリウムの製造方法]
フッ化タンタル酸カリウムおよび/またはフッ化ニオブ酸カリウムを製造するためには、先ず、上記回収方法により得られたフッ酸溶液中または混酸溶液中のタンタルおよび/またはニオブを溶媒で抽出する。溶媒で抽出する方法は、公知の方法によって行うことができ、特に限定されない。例えば、前述した図2に示す手順に従い、MIBK、希硫酸、または水等の溶媒を用いて好ましく行うことができる。これにより、不純物のさらなる除去やTa/Nbの分離精製を行うことができる。
【0029】
次に、得られた抽出溶媒にカリウム塩を添加してフッ化タンタル酸カリウムおよび/またはフッ化ニオブ酸カリウム結晶を沈殿させ、この沈殿物を濾別して乾燥する。なお、濾別して得たフッ化タンタル酸カリウムおよび/またはフッ化ニオブ酸カリウム結晶を再結晶して、純度を上げてもよい。
好ましいカリウム塩としては、フッ化カリウム、塩化カリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0030】
[タンタル/ニオブの製造方法]
タンタルおよび/またはニオブは、上述の方法により得られたフッ化タンタル酸カリウムおよび/またはフッ化ニオブ酸カリウムを還元して、タンタルおよび/またはニオブを得る。この際の還元は、ナトリウム還元によって行われるのが一般的である。ナトリウム還元は、例えば、次のようにして行われる。先ず、反応容器内を不活性ガス(例えば、Arガス)で充たした状態で加熱し、200℃程度に昇温した時点で、金属Naの所定量を導入する。そして、さらに加熱昇温させて金属Naを蒸発させてフッ化タンタル酸カリウムの表面に到達させて、その表面から還元反応を進行させる。
【0031】
[窒化タンタル/窒化ニオブの製造方法]
窒化タンタルおよび/または窒化ニオブは、上述の方法により得られたタンタルおよび/またはニオブを窒化処理して、窒化タンタルおよび/または窒化ニオブを得る。窒化処理は、例えば、粉末状あるいはペレット状のタンタルおよび/またはニオブを、窒素雰囲気下で800〜1100℃で加熱することにより行うことができるが、これに限定されない。
【0032】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明する。
(実施例1)
タンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料として、NTCを使用した。このNTCは、鉄鋼の添加剤などとして使用されるフェロニオブタンタルを処理したものと推定されるが詳細は不明である。このNTC約8000gを、最初にジョークラッシャーにて2mm角程度に粗砕した。ジョークラッシャー粉砕品のうち5000gを振動ミルにて粉砕した。この振動ミルにて粉砕した細粒NTC(サンプル1)は、目開き500μmのふるいを通過する割合が乾式で99.9%以上であった。また、その成分組成を、Cについては酸素気流中燃焼−赤外吸収法にて、その他の成分についてはIPC発光分光法にて分析した。このうち、Nb、TaおよびCについては表1に記載の通りであった。その他の成分は、Fe、Sn、Tiを比較的多く含んでいた。
【0033】
【表1】
Figure 0004183926
【0034】
また、サンプル1のXRD(X線回折)測定を行ったところ、炭化タンタル(TaC)、炭化ニオブ(NbC)、セメンタイト(FeC)、スズ(Sn)等のピークが確認された。
【0035】
次に、この細粒NTC(サンプル1)のうち2100gを、300gずつ7回に分けて焙焼した。焙焼は、スクレーパーにより層厚2mmに薄く広げてから、マッフル炉により800℃で10時間行った。焙焼後層厚は約10倍になり、重量は2765gであった。この焙焼NTC(サンプル2)について、その成分組成を上記同様にして分析したところ、表1の通りであった。また、サンプル2のXRD測定を行ったところ、炭化物やメタルに起因する結晶相はなくなり、酸化鉄(Fe)、酸化スズ(SnO)、酸化ニオブ(Nb)の酸化物に起因する結晶のみが認められた。
【0036】
次に、この焙焼NTC(サンプル2)のうち500gに、55%のフッ酸(HF)1500mlを加え、攪拌しながら溶解温度70℃で6時間保持して、溶解した。その後、これを濾過・水洗して溶解液と不溶解残渣とに分けた。この溶解液は純水を加えて全液量を2000mlとした。この2000mlにした溶解液(サンプル3A)についてその成分組成を上記同様に分析したところ、表1に示すように、溶解液中に略98%以上の分布率でタンタルおよびニオブがそれぞれ回収された。
一方、不溶解残渣は全量を120℃で8時間乾燥した後、800℃にて焙焼したところ142gとなった。この不溶解残渣の焙焼品(サンプル3)についてその成分組成を上記同様に分析した結果を表1に示す。また、サンプル3のXRD測定を行ったところ、確認された結晶相は、酸化鉄(Fe)、酸化スズ(SnO)のみであった。
【0037】
(実施例2)
実施例1の焙焼NTC(サンプル2)のうち2000gを振動ミルにて、目開き45μmのふるいを通過する割合が99.9wt%以上となるまで粉砕して、細粒の焙焼NTC(サンプル4)を得た。この細粒の焙焼NTC(サンプル4)のうち500gをフッ酸にて溶解する以降の操作は実施例1と同様に操作し、溶解液(サンプル5A)2000mlと不溶解残渣の焙焼品(サンプル5)127gを得た。また、成分組成分析とXRD測定も実施例1と同様に実施した。
焙焼を層厚2mmとして開始したため、焙焼NTC(サンプル2)は酸化が十分進んでおり、固まりもない。したがって、焙焼品を粉砕しても、表1に示したように、タンタルおよびニオブの回収率はほとんど上昇していない。
また、不溶解残渣の焙焼品(サンプル5)のXRD測定結果は、実施例1の不溶解残渣の焙焼品(サンプル3)の場合とほぼ同じであった。
【0038】
(実施例3)
実施例2の細粒の焙焼NTC(サンプル4)のうち790gを半量ずつ2回に分けて再焙焼した。その他の焙焼条件は、実施例1に記載の初回の焙焼条件と同じとした。この際焙焼したNTCを振動ミルにて、目開き45μmのふるいを通過する割合が99.9%以上となるまで粉砕した。この細粒の再焙焼NTC(サンプル6)についてのXRD測定を実施した。この細粒の再焙焼NTC(サンプル6)のうち500gをフッ酸にて溶解する以降の操作は実施例1と同様に操作し、溶解液(サンプル7A)2000mlと不溶解残渣の焙焼品(サンプル7)122gを得た。また、成分組成分析とXRD測定も実施例1と同様に実施した。
表1より、再焙焼した結果タンタルおよびニオブの溶解液への回収率は若干向上したが、その程度は小さい。
また、不溶解残渣の焙焼品(サンプル7)のXRD測定結果は、再焙焼する前の焙焼NTC(サンプル2)のXRD測定結果とほとんど同じであった。
また、不溶解残渣の焙焼品(サンプル7)のXRD測定結果についても、実施例1および実施例2の不溶解残渣の焙焼品(サンプル3およびサンプル5)の場合とほぼ同じであった。
【0039】
(実施例4)
実施例2における細粒の焙焼NTC(サンプル4)のうち500gを2mol/lの硫酸(一塩基酸換算では4mol/l)1200mlにて50℃で12時間洗浄した後、濾過した。得られた洗浄液(サンプル8A*)は1050mlであった。この洗浄された細粒の焙焼NTCの全量をフッ酸にて溶解する以降の操作は実施例1と同様に操作し、溶解液(サンプル8A)2000mlと不溶解残渣の焙焼品(サンプル8)93gを得た。また、成分組成分析も実施例1と同様に実施した。
表1より、タンタルおよびニオブの溶解液への回収率は若干高いが大差はない。また、表1には記載していないが、鉄の分析結果から、硫酸洗浄により鉄が約50%低減されており、酸洗浄が鉄の低減に効果があることが分かった。
【0040】
(比較例1)
実施例1における振動ミルで粉砕した細粒NTC(サンプル1)のうち380gを焙焼しないで、フッ酸1500mlにて実施例1と同様の条件にて溶解した。細粒NTCを380gとしたのは、タンタルおよびニオブの量が焙焼品500g中に含まれる量とほぼ一致させるためである。溶解液へのタンタルおよびニオブの回収率は、ニオブで11%、タンタルで3%と低かった。
【0041】
(比較例2)
実施例1における振動ミルで粉砕した細粒NTC(サンプル1)のうち2000gを、層厚50mmとしたこと以外は実施例1と同様の条件にて焙焼して、実施例2と同様に粉砕した。この細粒の焙焼NTCの全量を、層厚50mmとした以外は実施例3と同様に再焙焼した。以後も実施例3と同様に処理して、溶解液を得た。タンタルおよびニオブの溶解液への回収率は、ニオブで38%、タンタルで22%と低かった。
【0042】
参考例、比較例3)
実施例1におけるジョークラシャーにて2mm角程度に粗砕したNTCのうち600gを、2回に分けて半量ずつ、実施例1とほぼ同じ面積に広げて、800℃にて20時間焙焼した。以降は実施例2と同様に処理した。また、焙焼時間を50、80時間とした以外は同じ条件での試験を実施した。
別に、NTC約2200gをジョークラシャーのギャップ幅を実施例1の場合よりも広げて粗砕して、5mm角程度にした。この5mm角程度に粗砕したNTCを使用して、2mm角の場合と同様、焙焼時間を20、50、80時間とした試験を実施した。これらの結果を、表2に示す。
【0043】
【表2】
Figure 0004183926
【0044】
表2より、2mm角程度の大きさであれば、50時間以上焙焼すれば回収率は90%を超えるが、5mm角程度の大きさでは、長時間焙焼しても回収率は50%以下と低い。したがって、焙焼時、空気との接触を維持するためには2mm角程度以下が必要である。
このように、2mm角程度以下であれば本法は適用可能である。しかしながら、粒子が大きいと長時間の焙焼が必要となり、タンタルおよびニオブの回収率も若干低いため、乾式ふるい試験にて、目開き500μmのふるいを通過する割合が、98%以上であるような粉砕品を使用したほうが、粉砕および焙焼のトータルコストおよびタンタルおよびニオブの回収率の点で断然有利である。
【0045】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の回収方法によれば、従来、タンタルおよび/またはニオブの回収が困難とされてきたタンタル炭化物および/またはニオブ炭化物含有の炭化物系原料から、高収率でタンタルおよび/またはニオブを回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法を示す工程図である。
【図2】フッ化水素酸溶解−溶媒抽出法による酸化タンタルおよび酸化ニオブの製造方法を示す工程図である。

Claims (2)

  1. (a)タンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料を、粉砕する工程と、(b)この粉砕された原料を空気との接触が維持できる様に焙焼する工程と、(c)この焙焼された原料をフッ酸またはフッ酸とその他の鉱酸との混酸で溶解して、フッ酸溶液中または混酸溶液中にタンタルおよび/またはニオブを回収する工程と、を備えており、
    前記(a)工程において、粉砕された後のタンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料が目開き500μmのふるいを通過する割合が98wt%以上であること、
    ならびに、 前記(b)工程において、粉砕された原料を10mm以下の厚さに広げて焙焼すること、
    を特徴とするタンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法。
  2. (a)タンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料を、粉砕する工程と、(b)この粉砕された原料を空気との接触が維持できる様に焙焼する工程と、(c)この焙焼された原料をフッ酸またはフッ酸とその他の鉱酸との混酸で溶解して、フッ酸溶液中または混酸溶液中にタンタルおよび/またはニオブを回収する工程と、を備えており、
    前記(a)工程において、粉砕された後のタンタルおよび/またはニオブを含有する炭化物系原料が目開き500μmのふるいを通過する割合が98wt%以上であること、
    ならびに、前記(b)工程において、粉砕された原料を空気にて流動状態を保って焙焼する流動焙焼または炉内に噴霧して焙焼する噴霧焙焼を行うこと、
    を特徴とするタンタル/ニオブ含有の炭化物系原料からのタンタル/ニオブの回収方法。
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