JP4180719B2 - ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリカーボネート組成物に関するものであり、特に光学用ディスク、レンズ等の光学用成形品を製造するのに適したポリカーボネート組成物に関するものである。
さらに詳しくはポリマー色相、耐加水分解性に優れるとともに、成形時の分子量低下、色相保持等の熱安定性および離型性、転写性等の成形性にも優れたポリカーボネート組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリカーボネートは耐衝撃性などの機械的物性に優れ、しかも耐熱性、透明性などにも優れており、光学用部品、各種機械部品、自動車部品をはじめとする様々な用途に広く用いられている。
【0003】
ポリカーボネートは従来ビスフェノールAなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとをメチレンクロライト等の有機溶剤下直接重合させる方法(界面法)、あるいは芳香族ジヒドロキシ化合物と、炭酸ジエステルとをエステル交換反応させる方法(溶融重縮合法)によって製造されている。
【0004】
これらのうち、後者は、前者界面法と比較して安価にポリカーボネートを製造することができるという利点を有するとともに、ホスゲンなどの毒性物質を用いないので、環境衛生上好ましい。
【0005】
従来の溶融重縮合法によるポリカーボネートの製造方法では、通常触媒成分としてアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物などが用いられる。しかしかかる触媒を用いて得られるポリカーボネート樹脂では、残存する触媒のため熱安定性に欠け、溶融時その一部が分解して分子量が低下したり、着色したりすることがあった。
【0006】
これを解決する方法として特開平5−9285号公報には芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとより、得られたポリカーボネートに、下記式(2)
【0007】
【化3】
【0008】
(ここでA7はハロゲンで置換されていてもよいC1〜C6の炭化水素基であり、A8は水素原子またはハロゲンで置換されていてもよいC1〜C8の炭化水素基であり、nは0〜3の整数である。)
で表わされるスルホン酸化合物を0.05〜10ppmの量で添加してポリカーボネートを製造する方法が開示されている。
【0009】
英国特許808,488号公報あるいは英国特許808,489号公報にはジメチルサルフェート、ジブチルサルフェート等の酸性化合物を添加してポリカーボネートを製造する方法が開示されている。
【0010】
しかしながら該方法では残存する触媒に対し酸性化合物を過剰に添加、具体的には2倍モル以上添加しているため、残存する触媒は失活安定化されるものの、過剰分の酸性化合物が得られるポリカーボネート中に残存し、結果として得られるポリカーボネートの耐湿熱性を低下させたり、光学用ディスク成形品に蒸着されるアルミ膜を腐食させたりするという問題点があった。
【0011】
またポリカーボネートは近年光学用成形品としての需要は著しく、例えば光学用ディスク、情報ディスク、光学レンズ、プリズム等に広く用いられてきている。そして、それに伴い、熱安定性、離型性、転写性等の要求がこれまで以上に高まってきている。
【0012】
特にコンパクトディスク、レーザーディスク等の光学用ディスク成形品の製造においては、効率的な連続生産が要求されている。成形品が金型から離型する際に離型抵抗が大きいとそりを生じ、光学歪みの原因となるため、用いられるポリカーボネートは優れた離型性が必要である。離型性を向上させるためには離型剤の使用が必要となるが、剤およびその添加量によっては成形時の色相低下、また得られる成形品の透明性の低下等が生じるという問題点があった。
【0013】
また同時に特に光学用ディスク成形品においてはスタンパーの微細な凹凸を正確に転写することが要求され、特にデジタルビデオディスク(DVD)ではこの要求がいっそう激しいものとなる。
【0014】
高度な転写についても離型性が重要であることは言うまでもなく、同時に樹脂の流動性にも大きく影響されるため。そのため成形は従来より高い成形温度で行われる傾向にあるため、樹脂の熱安定性も同様に要求される。
【0015】
このため、通常、製造後ペレットなどに成形されたポリカーボネートを再溶融し、耐熱安定剤などを添加して、熱安定性を向上させている。しかしながら、この方法では、熱安定性が低い状態でポリカーボネートに加熱処理を施すことになり、また、ポリカーボネートが受ける熱履歴回数を増加させることになる。
【0016】
また上記耐熱安定剤の添加によって、ポリカーボネートの耐加水分解性が低下することがあり、このようなポリカーボネートから得られる成形体では使用中に透明性が低下してしまうことがあった。
【0017】
上記の理由によりポリマー色相、耐加水分解性に優れるとともに、成形時の分子量低下、色相保持等の熱安定性および離型性、転写性等の成形性にも優れたポリカーボネート組成物の製造方法の出現が望まれている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリカーボネート組成物の製造方法に関するものであり、特に光学用ディスク、レンズ等の光学用成形品を製造するのに適したポリカーボネート組成物に関するものである。
さらに詳しくはポリマー色相、耐加水分解性に優れるとともに、成形時の分子量低下、色相保持等の熱安定性および離型性、転写性等の成形性にも優れたポリカーボネート組成物である事を見出し本発明を完成するに至った。
【0019】
【課題を解決するための手段】
本発明は[A]芳香族ジヒドロキシ化合物と該芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1.005〜1.1モルの炭酸ジエステルとを、10-6〜10-8モルの量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の存在下反応させる事により得られる、末端ヒドロキシル基濃度が1〜30モル%であり、かつGPCで測定した分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が2.0〜2.6であるポリカーボネート100重量部と、
[B]下記式(1)
【0020】
【化4】
A1―SO3X1 ……(1)
(ここでA1は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、X1はアンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンである。)
で示されるスルホン酸化合物0.00001〜0.01重量部、および
[C]脂肪族カルボン酸と多価アルコールとの部分エステル0.005〜0.1重量部とからなるポリカーボネート系樹脂組成物である。
【0021】
ここで溶融重縮合生成物とは芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1.01〜1.1モルの炭酸ジエステルを10-6〜10-8モルの量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の存在下反応させる事により得られるすべてのポリカーボネートを包含する。
【0022】
本発明で使用される芳香族ジヒドロキシ化合物としては特に制限はなく種々の公知のものを使用する事ができる。芳香族ジヒドロキシ化合物は、例えば下記式(3)
【0023】
【化5】
【0024】
中に示される化合物であり、上記式(3)中、R1、R2は同一または異なり、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1から12の炭化水素基である。炭化水素基としてはアルキル基等の炭素数1から12の脂肪族炭化水素基あるいはフェニル基等の炭素数6から12の芳香族炭化水素基が好ましい。ハロゲン原子としては塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0025】
R5は炭素数3から8のアルキレン基である。アルキレン基としては、ペンチレン基等が挙げられる。式中、R3、R4は同一または異なり、ハロゲン原子、または炭素数1から12の1価の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基等の炭素数1から12の脂肪族炭化水素基あるいはフェニル基等の炭素数6から12の芳香族炭化水素基を挙げることができる。ハロゲン原子としては塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。式中、m、nは同一または異なり、0または1から4の整数を表わす。
【0026】
具体的にはビス(4―ヒドロキジフェニル)メタン、2,2―ビス(4―ヒドロキジフェニル)プロパン、2,2―ビス(4―ヒドロキシ―3―メチルフェニル)プロパン、4,4―ビス(4―ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2―ビス(4―ヒドロキシ―3,5―ジクロロフェニル)プロパン、2,2―ビス(4―ヒドロキシ―3,5―ジブロモフェニル)プロパン、ビス(4―ヒドロキジフェニル)オキサイド、ビス(3,5―ジクロロ―4―ヒドロキジフェニル)オキサイド、p,p’―ジヒドロキシジフェニル、3,3’―ジクロロ―4,4’―ジヒドロキシジフェニル、ビス(ヒドロキシフェニル)スルホン、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,4―ジヒドロキシ―2,5―ジクロロベンゼン、1,4―ジヒドロキシ―3―メチルベンゼン、ビス(4―ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4―ヒドロキジフェニル)スルホキシド、スピログリコール等が挙げられる。
【0027】
これらの内で特に2,2―ビス(4―ヒドロキシフェニル)プロパンが好ましく用いられる。これらの芳香族ジヒドロキシ化合物は単独で用いても良く、また二種以上組み合わせて用いても良い。
【0028】
本発明で使用される炭酸ジエステルについても特に制限はなく種々の公知のものを使用する事ができる。
【0029】
具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m―クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが用いられる。これらの内で特にジフェニルカーボネートが好ましく用いられる。これらの炭酸ジエステルは単独で用いても良く、また二種以上組み合わせて用いても良い。
【0030】
本発明でポリカーボネートを製造するに際しては、上記炭酸ジエステルは芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1.005〜1.1モル、好ましくは1.01〜1.09モル、さらに好ましくは1.01〜1.08モルの量で用いられるのが望ましい。
【0031】
上記使用量を逸脱すると、得られるポリカーボネートの色相が低下したり、所望のポリカーボネートを得るのに著しく時間を要するため好ましくない。
【0032】
本発明で使用されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物についても得られるポリカーボネートの色相を低下させるものでなければ特に制限はなく種々の公知のものを使用する事ができる。
【0033】
例えばアルカリ金属の水酸化物、炭酸水素化物、炭酸塩、酢酸塩、硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、シアン酸塩、チオシアン酸塩、ステアリン酸塩、水素化ホウ素塩、安息香酸塩、リン酸水素化物、ビスフェノール、フェノールの塩等が挙げられる。
【0034】
具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸リチウム、亜硝酸ナトリウム、亜硝酸カリウム、亜硝酸リチウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜硫酸リチウム、シアン酸ナトリウム、シアン酸カリウム、シアン酸リチウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸リチウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、水素化ホウ素リチウム、フェニル化ホウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素ジナトリウム、リン酸水素ジカリウム、リン酸水素ジリチウム、ビスフェノールAのジナトリウム塩、ジカリウム塩、ジリチウム塩、フェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
【0035】
上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物は芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して10-6〜10-8モル、好ましくは10-6〜5×10-7モルの量で用いられるのが望ましい。
【0036】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の使用量が上記範囲内であると芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルの重縮合反応活性を維持できるとともに、得られるポリカーボネートの、色相等の品質に悪影響を起こさない。また触媒として使用するアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の使用量が上記範囲内であれば、これらの化合物の活性を上記スルホン酸化合物で低下もしくは失活させることができ、色相、耐熱性、耐加水分解性等の品質に優れたポリカーボネートを得ることができる。
【0037】
アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の使用量が上記範囲を逸脱すると得られるポリカーボネートの品質が低下する傾向にある。
【0038】
本発明においては触媒として上記アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物とともに、所望により他の塩基性化合物を用いる事が出来る。
【0039】
上記塩基性化合物としては、例えば高温で易分解性あるいは揮発性の等が好ましく使用される。
【0040】
含窒素化合物として具体的にはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(Me4NOH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(Et4NOH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(Bu4NOH)、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシド(φ―CH2(Me)3NOH)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどのアルキル、アリール、アルキルアリール基などを有するアンモニウムヒドロオキシド類、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ヘキサデシルジメチルアミンなどの3級アミン類、あるいはテトラメチルアシモニウムボロハイドライド(Me4NBH4)、テトラブチルアンモニウムボロハイドライド(Bu4NBH4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Me4NBPh4)、テトラブチルアンモニウムテトラフェニルボレート(Bu4NBPh4)などが挙げられる。
【0041】
本発明で使用される[B]スルホン酸化合物は下記式(1)
【0042】
【化6】
A1―SO3X1 ……(1)
(ここでA1は置換基を有していてもよい炭素数1〜20の炭化水素基であり、X1はアンモニウムカチオンまたはホスホニウムカチオンである。)
で示され、アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の活性を低下もしくは失活させることができ、色相、耐熱性、耐加水分解性等の品質に優れたポリカーボネートを得ることができる。
なかでも、スルホン酸化合物が下記式(1)−1
【0043】
【化7】
【0044】
(ここでA2、A3、A4、A5、およびA6は互いに独立に炭素数1〜20の1価の炭化水素基である。)
に示されるスルホン酸ホスホニウム塩であることが好ましい。
【0045】
具体的には、ヘキシルスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、ヘキシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ヘキシルスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、ドデシルスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、ドデシルスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、トルエンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、トルエンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、トルエンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラメチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラオクチルホスホニウム塩等が挙げられる。
【0046】
上記スルホン酸化合物の使用量としては、使用されるアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の活性を低下もしくは失活させるのに十分な量であればよく、具体的にはポリカーボネート樹脂100重量部に対し0.00001〜0.01重量部、好ましくは0.0005〜0.005重量部の範囲で用いられるのが望ましい。
【0047】
また上記スルホン酸化合物は通常アルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の活性を低下もしくは失活させる目的でアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物に対し過剰モル添加するため得られるポリカーボネート中に過剰分が残存することとなるが、上記スルホン酸化合物はそれ自身中性もしくは弱酸性であるため、得られるポリカーボネートの品質を低下させることなく、かつ触媒の活性を低下もしくは失活することができる。
【0048】
本発明で使用される脂肪族カルボン酸と多価アルコールとの部分エステルは0.005〜0.1重量部、好ましくは0.007〜0.08重量部、さらに好ましくは0.01〜0.01重量部で使用しうる。上記範囲を逸脱すると得られるポリカーボネート系樹脂組成物の耐熱性低下、もしくは十分な離型性およびミクロンオーダーの高度な転写を得ることができないという欠点を有するため好ましくない。
【0049】
脂肪族カルボン酸と多価アルコールとの部分エステルとは、多価アルコールの少なくとも1つの水酸基が未反応であるものを言い、炭素数12〜24の飽和一価脂肪酸のモノグリセリドおよび/またはジグリセリドが好ましい。
【0050】
上記脂肪族カルボン酸としては特に限定されず、また飽和及び不飽和脂肪族カルボン酸を共に用いることができる。上記脂肪族カルボン酸としては飽和一価脂肪酸が好ましく炭素数12〜24のものが特に好ましい。炭素数が上記範囲より少ないと、製造されたポリカーボネート系樹脂組成物が上記範囲のものに比べ劣り、またガスの発生が起こるので好ましくない。一方炭素数が上記範囲より大きいとポリカーボネート系樹脂組成物の離型性が上記範囲内のものに比べ劣るので好ましくない。上記脂肪族カルボン酸としては、具体的には、ドデシル酸、ペンダデシル酸、パルチミン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などが挙げられる。
【0051】
上記多価アルコールとしては、特に限定されず、2価、3価、4価、5価、6価いずれも用いることができるが、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが好ましく、グリセリンが特に好ましい。
【0052】
本発明で用いる脂肪族カルボン酸と多価アルコールとの部分エステルは、慣用のエステル化反応によって得ることができる。
【0053】
上記離型剤を添加した際に、その剤がポリマー中に残存する各種の物質、例えば、残存触媒、あるいは触媒失活剤と影響を与え合うが、その際に本発明において特定の触媒失活剤と離型剤の組み合わせを選択することにより、互いの悪影響を最小限に抑えて、成形時の分子量低下、色相保持等の熱安定性および離型性、転写性等の成形性にも優れたポリカーボネート組成物を提供することができる。さらに本発明においては、特定の原料の仕込み割合、特定量の特定触媒を用いて製造し、特定の末端ヒドロキシル基濃度、特定の分子量をもったポリカーボネートにより、成形時の分子量低下、色相保持等の熱安定性および離型性、転写性等の成形性にも優れたポリカーボネート組成物を提供することができる。
【0054】
本発明では得られるポリカーボネートに本発明の目的を損なわない範囲で通常のその他の添加剤、例えば加工安定剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、金属石鹸類、造核剤、帯電防止剤、滑剤、難燃剤、離型剤、防黴剤、着色剤、防曇剤、天然油、合成油、ワックス、有機系充填剤、無機系充填剤などを添加してもよい。
【0055】
これらの添加剤としては、具体的には次のようなものが挙げられる。ここで加工安定剤としては、例えば2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルbゲンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0056】
又、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤としては、例えば、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンジホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フルオロホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ジラウリル3,3’−チオジプロピオネート、ジスナアリル3,3’−チオジプロピオネート、テトラキス(3−ラウリルチオプロピオニルオキシメチル)メタン等が挙げられる。
【0057】
光安定剤としては、例えば2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジt−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)フェニル〕ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、等のベンゾトリアゾール系化合物、2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンホゾフェノン等のベンゾフェノン系化合物、2,4−ジ−t−ブチルフェニル、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のヒドロキシベンゾフェノン系化合物、エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系化合物などの紫外線吸収剤、ニッケルジブチルジチオカーバメート、[2,2’−チオビス(4−t−オクチルフェノラート)]−2−エチルヘキシルアミンニッケル、等のニッケル系クエンチャーなどが挙げられる。
【0058】
金属不活性化剤としては、例えばN,N’−[3−(3,5−ジ−t−ブチル4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン等が、金属石鹸類としては例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸ニッケル等が挙げられる。
【0059】
又造核剤としては、例えばジ(4−t−ブチルフェニル)ホスホン酸ナトリウム、ジベンジリデンソルビトール、メチレンビス(2,4−ジ−t−ブチルフェノール)アシッドホスフェートナトリウム塩等のソルビトール系、リン酸塩系化合物が挙げられる。
【0060】
帯電防止剤としては、例えば(β−ラウラミドプロピル)トリメチルアンモニウムメチルスルフェート等の第4級アンモニウム塩系、アルキルホスフェート系化合物が挙げられる。
【0061】
難燃剤としては、例えばトリス(2−クロロエチル)ホスフェートなどの含ハロゲンリン酸エステル類、ヘキサブロモシクロドデカン、デカブロモフェニルオキサイドなどのハロゲン化物、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウムなどの金属無機化合物類、これらの混合物等が挙げられる。
【0062】
上記の各成分から本発明の樹脂組成物を製造する方法に特に制限はない。各成分の配合順序も、任意である。例えば、溶融状態にあるポリカーボネートにエステル及び他の任意的成分を加えて混練しても良く、また、ポリカーボネートの溶液にエステル及び他の任意的成分を加えて混練しても良い。より具体的には、重合反応が終了して得られる溶融状態にある反応器内または押出機内の反応生成物であるポリカーボネートに、直接、エステル及び他の任意的成分を別々にまたは同時的に加えて混練する方法、あるいは、得られたポリカーボネートをペレット化し、このペレットをエステル及び他の任意的成分と共に一軸または二軸押出機などに供給して溶融混練する方法、さらに、得られたポリカーボネートを適当な溶媒(例えば塩化メチレン、クロロホルム、トルエン、テトラヒドロフラン等)に溶解させ、この溶液にエステル及び他の任意的成分を別々にまたは同時的に加えて攪拌する方法などをあげることができるが、溶融状態の熱履歴時間および再溶融回数を減らすという点から、溶融重合で得られた溶融状態のポリカーボネートにスルホン酸化合物、エステル等の成分を添加混練しペレット化するのが好ましい。
【0063】
本発明では、ポリカーボネート系樹脂組成物は、減圧処理を施されていることが好ましい。減圧処理に際しては、処理、装置は特に限定されないが、例えば減圧装置付反応器、減圧装置付押出機を用いることができる。減圧装置付反応器は、縦型槽型反応器、横型槽型反応器のいずれでも良いが、横型槽型反応器が好ましい。減圧装置付押出機は、ベント付の一軸押出機、二軸押出機のいずれでも良く、押出機で減圧処理をしながらペレタイズすることもできる。その際の圧力は、減圧処理を反応器において行う場合には、0.05〜750mmHg、特に0.05〜5mmHgとするのが好ましく、また、押出機を用いて行う場合には、1〜750mmHg、特に5〜700mmHgとするのが好ましい。このような減圧処理は、240〜350℃で行うのが好ましく、また、反応器を用いる場合には5分〜3時間程度、押出機を用いる場合には10秒〜15分間程度の時間で行うのが好ましい。このようにしてポリカーボネート系組成物に減圧処理を施すと、残留モノマーやオリゴマーを低減させたポリカーボネート系組成物を得ることができる。また減圧処理を施す際、残留モノマーやオリゴマーを低減させる目的で水もしくは飽和脂肪族炭化水素、チッ素等を加圧添加後減圧処理を行うことも必要に応じて実施しうる。例えば、炭酸ジエステルとしてジフェニルカーボネートを用いて溶融重合を行った場合、減圧処理によってポリカーボネート中のジフェニルカーボネートの残留量を減少させることができる。
【0064】
本発明で使用するポリカーボネートは、このようなジフェニルカーボネートを0.1重量部以下、特に0.02重量部以下の量で含有(残存)していることが好ましい。
【0065】
【発明の効果】
このようにして得られる本発明の樹脂組成物はポリマー色相、耐加水分解性に優れるとともに成形時の分子量低下色相保持等の熱安定性および離型性、転写性等の成形性にも優れる。
【0066】
【実施例】
以下実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0067】
[実施例1〜3、比較例3〜5]
ビスフェノールA(以下BPA)228重量部、ジフェニルカーボネート(以下DPC)223重量部、およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.009重量部、ビスフェノールAジナトリウム塩0.00014重量部を攪拌装置、蒸留塔及び減圧装置を備えた反応槽に仕込み窒素置換した後、140℃で溶解した。30分間攪拌後、内温を180℃に昇温し、内圧100mmHg30分間反応させ、生成するフェノールを溜去した。
【0068】
ついで内温を200℃に昇温しつつ徐々に減圧し50mmHgで30分間フェノールを溜去しつつ反応させた。更に0℃、30mmHgまで徐々に昇温、減圧し、同温度、同圧下で30分間、更に、240℃、10mmHg、260℃、1mmHgまで上記と同じ手順で昇温、減圧を繰り返し反応を続行した。最終的に270℃の温度でポリカーボネートの重縮合を継続した。
【0069】
得られたポリカーボネートの粘度平均分子量は15,500であり、末端ヒドロキシル濃度は15%、GPC測定による分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)は2.2である。
【0070】
次いで溶融状態のままで、このポリマーをギアポンプにて二軸押出機(L/D17.5、バレル温度270℃)に挿入し、ポリマーに対して表1記載のスルホン酸化合物および脂肪族カルボン酸と多価アルコールとの部分エステルおよび必要に応じ表1記載の添加剤を所定量添加混練し、ダイを通してストランド状とし、カッターで切断しペレットとした。
【0071】
[比較例1]
BPA 228重量部、DPC 217重量部を用いた以外は実施例1と同様にして行った。
得られたポリカーボネートの分子量は15,500であり末端ヒドロキシ濃度は50%、GPC測定による分子量分布は2.2であった。
【0072】
[比較例2]
BPA 228重量部、DPC 231重量部およびテトラメチルアンモニウムヒドロキシド0.009重量部、ビスフェノールAジナトリウム塩0.000034重量部を用いた以外は実施例1と同様にして行った。
得られたポリカーボネートの分子量は15,500であり末端ヒドロキシ濃度は3モル%、GPC測定による分子量分布は3.0であった。
【0073】
[比較例6、7]
エステル化合物として、グリセリントリステアレートペンタエリスリトールテトラステアレートを用いた以外は実施例1と同様にして行った。
【0074】
[得られたペレットの評価]
上記により得られたペレットについて以下の評価を行った。
(1)色相:b値
得られたペレットから射出成形により(シリンダー温度320℃、金型温度80℃、サイクルタイム35秒)厚さ2mmの成形板作成し、日本電色工業(株)製のColor and Color Deference Meter Z−300Aを用いてb値を測定した。
【0075】
(2)離型性
ニッケル製のスタンパーを用い、シリンダー温度340、金型温度80℃、1サイクル7秒の条件で、CD成形機にて、φ120のコンパクトディスク基板を連続1000ショット成形し、ディスク又はスプルーの金型への残りを不良率(%)として評価した。
【0076】
(3)転写性
(l)の方法にて得たディスク基板に転写されたピットを光学顕微鏡(800倍)で観察し、評価した。実施例及び比較例のそれぞれについて、ディスク基板10枚を評価した。
【0077】
(4)スタンパーの汚れ
(l)の方法にて、10,000ショット成形後の金型及びスタンパーの状態を目で観察し、評価した。
【0078】
(5)熱安定性
(1)の成形条件で、15分間成形を止め樹脂を滞留させた後、再び成形を開始し、得られたディスク基板の色相と表面状態を評価した。表面状態は、目視にて観察した。色相(YI)は、日本電色工業(株)製のColor and Color Deference Meter ND−1001DPを用いて測定した。
【0079】
(6)湿熱安定性(耐沸水性)
(1)の方法にて得たディスク基板について120℃×50時間湿熱処理後の分子量低下を評価した。
【0080】
【表1】
【0081】
【表2】
Claims (2)
- [A]芳香族ジヒドロキシ化合物と該芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して1.005〜1.1モルの炭酸ジエステルとを、10-6〜10-8モルの量のアルカリ金属またはアルカリ土類金属化合物の存在下反応させる事により得られる、末端ヒドロキシル基濃度が1〜30モル%であり、かつGPCで測定した分子量分布が2.0〜2.6であるポリカーボネート100重量部と、[B]下記式(1)−1
で示されるスルホン酸ホスホニウム塩0.00001〜0.01重量部、および[C]脂肪族カルボン酸と多価アルコールとの部分エステル0.005〜0.1重量部とからなるポリカーボネート樹脂組成物。 - [C]脂肪族カルボン酸と多価アルコールとの部分エステルが炭素数12〜24の飽和一価脂肪酸のモノグリセリドおよび/またはジグリセリドであることを特徴とする請求項1記載のポリカーボネート系樹脂組成物。
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