JP4178718B2 - 固体発光デバイス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体発光デバイスに関し、特に、電子の注入によって発光するエレクトロルミネッセンスデバイスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
発光デバイスは、情報機器などのディスプレイや表示装置、照明などに幅広く用いられている。ここに、ディスプレイや表示装置に用いられる発光デバイスは、表示品質で有利な自発光型のディスプレイや表示装置を実現する上で非常に重要なデバイスである。特に、真空やガスを用いない固体の発光デバイス(以下、固体発光デバイスと称す)は、薄型化および軽量化に有利な上、耐環境性や信頼性に優れており、各所で盛んに研究、開発が行われている。
【0003】
ところで、固体発光デバイスには、発光層を高エネルギの電子によって励起することで発光を得る電界励起型エレクトロルミネッセンス(真性EL)と、発光ダイオード(LED)として知られ発光層に注入された電子と正孔との再結合によって発光を得るキャリア注入型のELとがある。
【0004】
平面薄型用のディスプレイ(フラットパネルディスプレイ)では、薄型化、軽量化、高精細化、低コスト化を図れる可能性の高い真性ELやキャリア注入型のELの一種である有機ELを用いることが各所で盛んに研究されている。
【0005】
真性EL、有機ELは、発光層が透明電極と裏面電極とで挟まれた形となっており、両電極間に電圧を印加することで上述のそれぞれの発光原理で発光層を発光させるようになっている。ドットマトリックス型ディスプレイに用いる場合には、複数の透明電極と複数の裏面電極とを交差する方向に設け、発光層のうちの発光させたい特定領域(以下、選択画素と称す)の両電極間に選択的に電圧を印加することで、特定領域のみを選択的に発光させるようになっている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述の従来の固体発光デバイスでは、発光層の電流電圧特性が基本的には抵抗性なので、発光層の選択画素のみが発光するだけでなく、発光層のうち選択した両電極のいずれか一方に重なる画素にリーク電流が流れて当該リーク電流が流れた画素で発光するクロストークが発生してしまうという不具合があった。例えば、図11に示すように、複数の透明電極3および複数の裏面電極4それぞれから1つずつ選択して裏面電極4に対して透明電極3を正極として直流電圧Eを印加した場合、選択画素の抵抗をRM、選択された透明電極3および裏面電極4のいずれか一方のみに重なる画素の抵抗をRS、選択された透明電極3および裏面電極4のいずれにも重ならない画素の抵抗をRNとすると、図11中に一点鎖線で示すように選択画素の抵抗RMを通る電流IMの他に同図中に破線で示すように抵抗RS,RNを通るリーク電流ILが流れて、抵抗RSの画素でも発光してしまうという不具合があった。また、クロストークによる電流のロスがあるので、大面積化が難しいという不具合もあった。
【0007】
このような固体発光デバイスでは、クロストークを防ぐために、各画素ごとにダイオードを設けたり、トランジスタからなるスイッチング素子を設けたものがあるが、ダイオードやスイッチング素子を設けるための領域が必要なので、実際に発光に寄与する部分の割合(画素の開口率)が小さくなったり、素子構造が複雑で製造プロセスが繁雑になってしまうという不具合があった。
【0008】
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、クロストークが少なく且つ画素の開口率の低下を防止できる新規な固体発光デバイスを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、上記目的を達成するために、発光層と、発光層の前面上に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面上に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層からなることを特徴とするものであり、裏面電極に対して透明電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極から注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した透明電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。また、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層に強電界ドリフト層を積層することでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができる。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0010】
請求項2の発明は、発光層と、発光層の前面上に設けられた透明電極と、発光層の裏面上に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層からなることを特徴とするものであり、裏面電極に対して中間電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達するから、中間電極の厚みを電子の平均自由行程以下の厚みに形成しておけば、強電界ドリフト層の表面に到達した高エネルギの電子がエネルギをほとんど失うことなく中間電極をトンネルして発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極を中間電極に対して正極として電圧を印加することで透明電極から注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した中間電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。特に、透明電極と中間電極との間に印加する電圧を発光層での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高い。また、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧、透明電極と中間電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層に中間電極および強電界ドリフト層を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができる。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、中間電極および強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0011】
請求項3の発明は、発光層と、発光層の前面側に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面上に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と透明電極との間には、正孔輸送層が積層されてなることを特徴とするものであり、裏面電極に対して透明電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極から正孔輸送層を通して注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、透明電極と発光層との間に正孔輸送層を設けたことにより、透明電極から発光層への正孔の注入が起こりやすくなるので、強電界ドリフト層から発光層へ注入された電子の再結合確率が高くなり、発光層の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となる。また、正孔輸送層を設けたことにより、発光層自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなる。また、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した透明電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。また、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層材料を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層に強電界ドリフト層を積層することでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができる。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0012】
請求項4の発明は、発光層と、発光層の前面側に設けられた透明電極と、発光層の裏面上に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と透明電極との間には、正孔輸送層が積層されてなることを特徴とするものであり、裏面電極に対して中間電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達するから、中間電極の厚みを電子の平均自由行程以下の厚みに形成しておけば、強電界ドリフト層の表面に到達した高エネルギの電子がエネルギをほとんど失うことなく中間電極をトンネルして発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極を中間電極に対して正極として電圧を印加することで透明電極から注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、透明電極と発光層との間に正孔輸送層を設けたことにより、透明電極から発光層への正孔の注入が起こりやすくなるので、強電界ドリフト層から発光層へ注入された電子の再結合確率が高くなり、発光層の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となる。また、正孔輸送層を設けたことにより、発光層自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなる。また、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した中間電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。特に、透明電極と中間電極との間に印加する電圧を発光層での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高い。また、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧、透明電極と中間電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層に中間電極および強電界ドリフト層を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができる。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、中間電極および強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0013】
請求項5の発明は、発光層と、発光層の前面上に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と前記強電界ドリフト層との間には、電子輸送層が積層されてなることを特徴とするものであり、裏面電極に対して透明電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極から正孔輸送層を通して注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、発光層と強電界ドリフト層との間に電子輸送層を設けたことにより、強電界ドリフト層から発光層への電子の注入が起こりやすくなるので、発光層の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となる。また、電子輸送層を設けたことにより、発光層自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなる。また、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した透明電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。また、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層に強電界ドリフト層を積層することでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができる。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0014】
請求項6の発明は、発光層と、発光層の前面上に設けられた透明電極と、発光層の裏面に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と前記強電界ドリフト層との間には、電子輸送層が積層されてなることを特徴とするものであり、裏面電極に対して中間電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印化された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達するから、中間電極の厚みを電子の平均自由行程以下の厚みに形成しておけば、強電界ドリフト層の表面に到達した高エネルギの電子がエネルギをほとんど失うことなく中間電極をトンネルして発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極を中間電極に対して正極として電圧を印加することで透明電極から注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、発光層と強電界ドリフト層との間に電子輸送層を設けたことにより、強電界ドリフト層から発光層への電子の注入が起こりやすくなるので、発光層の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となる。また、電子輸送層を設けたことにより、発光層自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなる。また、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した中間電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。特に、透明電極と中間電極との間に印加する電圧を発光層での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高い。また、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧、透明電極と中間電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層に中間電極および強電界ドリフト層を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができる。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、中間電極および強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0015】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記強電界ドリフト層は、隣り合う裏面電極間の領域に重なる部位の前部と後部との少なくとも一方に絶縁層が設けられているので、前記強電界ドリフト層のうち隣り合う裏面電極間の領域に重なる部位を通って透明電極へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、発光効率を高めることができる。
【0016】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7の発明において、前記強電界ドリフト層は、隣り合う透明電極間の領域に重なる部位上に絶縁層が設けられているので、前記強電界ドリフト層のうち隣り合う透明電極間の領域に重なる部位を通って透明電極へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、発光効率を高めることができる。
【0017】
請求項9の発明は、請求項2または請求項4または請求項6の発明において、前記強電界ドリフト層は、隣り合う中間電極間の領域に重なる部位上に絶縁層が設けられているので、前記強電界ドリフト層のうち隣り合う中間電極間の領域に重なる部位を通って透明電極へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、発光効率を高めることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本実施形態の固体発光デバイスは、図1および図2に示すように、無アルカリガラス基板からなる基板1の一表面上に、Al−Si/W/Tiからなる複数の裏面電極4が列設され、複数の裏面電極4を覆うように強電界ドリフト層6が形成され、強電界ドリフト層6上に発光層2が積層され、発光層2上にITO(インジウム−錫酸化物)からなる複数の透明電極3が裏面電極4に交差する方向に列設されている。各透明電極3は、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極13が形成されている。また、各裏面電極4も、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極14が形成されている。なお、本実施形態の固体発光デバイスでは、発光層2の発光が透明電極3を通して外部へ取り出されるので、発光層2のうち透明電極3が列設される側の一表面を前面、該前面と反対側の面を裏面と称する。したがって、複数の裏面電極4は、発光層2の裏面側において透明電極3に交差する方向に列設されていることになる。ここに、発光層2のうち透明電極3および裏面電極4に交差する各領域がそれぞれ画素2aを構成している。
【0019】
ここにおいて、強電界ドリフト層6は、透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3を正極として電圧を印加したときに裏面電極4から注入された電子がドリフトして発光層2を発光させるための電子を発光層2へ供給する機能を有するものであり、強電界ドリフト層6は、裏面電極4にほぼ重なる領域が酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aにより構成され、それ以外の領域(つまり、裏面電極4に重ならない領域)が多結晶シリコン層からなる半導体層6bにより構成されている。本実施形態では、裏面電極4にほぼ重なる領域の全部が多孔質半導体層6aにより構成されているが、強電界ドリフト層6は、半導体層6bからなり、少なくとも透明電極3と裏面電極4とが交差する領域であって少なくとも厚み方向において発光層2側の部分が多孔質半導体層6aにより構成されていればよい。
【0020】
ところで、多孔質半導体層6aは、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの半導体微結晶である微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。
【0021】
また、本実施形態では、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いている。
【0022】
次に、本実施形態の固体発光デバイスの動作原理について説明する。
【0023】
本実施形態の固体発光デバイスでは、裏面電極4に対して透明電極3が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極4から強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aへ電子が注入される。多孔質半導体層6aは多数の半導体微結晶である微結晶シリコンから構成されているので、注入された電子は強電界ドリフト層6の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層6に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層6の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層2中に注入されて発光層を励起したり、透明電極3から注入された正孔と再結合したり、透明電極3に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層2が励起されることで発光層2が発光し、発光層2で発光した光は、透明電極3を通して外部へ取り出される。
【0024】
ここにおいて、強電界ドリフト層6中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイム(Fowler-Nordheim)プロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持ち、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層6に流れる電流は数桁も減少し、発光層2では、それぞれ選択した透明電極3および裏面電極4の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極3および裏面電極4のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。
【0025】
また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層6において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層6の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層2への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層6から発光層2への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。
【0026】
また、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2の材料を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層2を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。
【0027】
また、透明電極3と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層2に強電界ドリフト層6を積層することでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができる。また、透明電極3と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層6は発光層2に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層6を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易になる。
【0028】
以下、上述の固体発光デバイスの製造方法について簡単に説明する。
【0029】
まず、基板1の上記一表面上にAl−Si/W/Tiからなる所定膜厚(例えば、0.5μm)の電極層を例えばスパッタ法により堆積した後、フォトリソグラフィ法と反応性イオンエッチング法により該電極層をパターニングすることによって、基板1上に複数の裏面電極4を列設する。
【0030】
次に、基板1の上記一表面側の全面に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンドープの多結晶シリコン層を例えばプラズマCVD法により堆積する。
【0031】
その後、例えば、フッ化水素水溶液とエタノールとを所定混合比(例えば、1:1)で混合した混合液の入った陽極酸化処理槽を利用し、裏面電極4を正極、白金(Pt)からなる対向電極を負極として、多結晶シリコン層に光照射を行いながら所定の電流密度で所定の時間だけ陽極酸化処理を行うことによって、多結晶シリコン層のうち裏面電極4にほぼ重なる領域に所定厚さの多孔質多結晶シリコン層を形成する。多孔質多結晶シリコン層を形成した後(つまり、多結晶シリコン層の一部を多孔質化した後)、硫酸の水溶液中で、裏面電極4を正極、白金からなる対向電極を負極として、多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化することにより、酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aが形成される。ここに、多孔質半導体層6aは、上述のように、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。また、多結晶シリコン層のうち上述の陽極酸化処理にて多孔質化されなかった部分が半導体層6bとなる。
【0032】
続いて、基板1の上記一表面側の全面に、つまり、強電界ドリフト層6上に、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を例えば真空蒸着法により所定膜厚(例えば、0.5μm)だけ堆積させる。
【0033】
発光層2を形成した後、発光層2上に、ITOからなる透明電極3を、裏面電極4に交差する方向に列設されるように、例えばシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって所定膜厚(例えば、1μm)だけ堆積させる。
【0034】
その後、パッド電極13,14を形成することにより、本実施形態の固体発光デバイスが形成される。
【0035】
ところで、本実施形態では、半導体層6bを多結晶シリコン層により構成しているが、半導体層6bとしては、単結晶半導体、多結晶半導体、アモルファス半導体のいずれを用いてもよい。但し、多結晶半導体やアモルファス半導体を用いれば、単結晶半導体を用いる場合に比べて基板1の制約が少なくなるので、大面積化する場合には多結晶半導体やアモルファス半導体を用いることが好ましい。また、多結晶半導体、特に基板1の表面に略直交する柱状の結晶グレインからなる多結晶半導体を用いれば、当該多結晶半導体を多孔質化して形成される多孔質半導体層6aの結晶グレインが熱伝導の良い放熱部として働き、多孔質半導体層6aを流れる電子電流のポッピングノイズ現象が抑えられるので好ましい。また、半導体層6bとしては、基板1として上述の無アルカリガラス基板の代わりに半導体基板を用いて当該半導体基板の一部を半導体層6bとして利用するようにしてもよい。また、本実施形態における強電界ドリフト層6は、ほぼ裏面電極4に重なる領域のみに多孔質半導体層6aが形成されているが、透明電極3と裏面電極4とが交差する領域のみに多孔質半導体層6aを形成してもよいし、半導体層6bの面内の全ての領域を多孔質半導体層6aにより形成してもよい。ただし、多孔質半導体層6aの方が半導体層6bに比べて抵抗が高いので、発光層2の画素2a間の部分に重なる半導体層6bも多孔質化しておいた方が、隣り合う画素2a間で半導体層6bを通って流れるリーク電流を低減することができるので好ましい。また、強電界ドリフト層6のうち多孔質半導体層6aを除いた半導体層6bの一部あるいは全部を除去してもよく、半導体層6bの一部あるいは全部を除去しておくことにより、隣り合う画素2a間で半導体層6bを通って流れるリーク電流を低減することができるので好ましい。
【0036】
また、本実施形態では、多孔質多結晶シリコン層を酸化することで微結晶シリコンおよび結晶グレインの各表面にそれぞれ酸化膜(シリコン酸化膜)からなる絶縁膜を形成しているが、該絶縁膜としては酸化膜の代わりに窒化膜(シリコン窒化膜)を採用してもよい。
【0037】
また、半導体層6bとしては、シリコンやゲルマニウムのようなIV族元素に限らず、III−V族化合物半導体やII−VI族化合物半導体やSiCなども利用できる。
【0038】
半導体層6bの厚さは、100nm〜1mmの範囲で適宜設定すればよく、多孔質半導体層6aの厚さは、50nm〜100μmの範囲で適宜設定すればよいが、多孔質半導体層6aの厚さは10μm以下が好ましい。要するに、多孔質半導体層6aは、半導体層6bと同じ厚さに形成してもよいし、半導体層6bの表面側(つまり、発光層2側)の部分のみに形成してもよい。ただし、多孔質半導体層6a中での電子の散乱を少なくするためには、多孔質半導体層6aの厚さは小さい方が望ましく、また、多孔質半導体層6aの厚みも均一な方が望ましい。また、多孔質半導体層6aは、その厚み方向に沿って多孔度が高い層と多孔度が低い層とが交互に積層された構造となるように形成してもよいし、厚み方向に沿って多孔度が連続的に変わるように形成してもよい。
【0039】
ところで、本実施形態では、発光層2としてホスト材料がトリスアルミニウム錯体からなる有機薄膜を用いているが、発光層2としては、無機ELやPDP、VFD、CRT、FEDなどで用いられている蛍光体、有機ELで用いられている発光層を使用することができる。例えば、ZnSやSrS、CaS、CaGa24、ZnO、Y23、Y22S、(Y,Gd)2Bo3、ZnSiO4、BaAl1219、BaMgAl1423、BaO−MgO−Al23、(Zn,Cd)S、SrTiO3、ZnGa24、Y2SiO5、Zn(Ga,Al)24、Y3(Al,Ga)512などの母材に、Mn、Ce、Tb、Eu、Cu、Zn、Cl、Al、Ag、Prなどの発光中心となる元素をドープした無機材料や、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)、10−ベンゾ(h)キノリノール−ベリリウム錯体(Bebq2)、オキサジアノール(OXD)、アゾメチン−亜鉛錯体(AZM)、ピラゾリン(PYR)、ジスチリルアリーレン誘導体、8−キノリノール−亜鉛錯体(Znq2)、ポリフィリン−亜鉛錯体(ZnPr)、混合配位子型錯体(SAlq)、亜鉛錯体Zn(oxz)2、芳香族ジアミン系化合物のTTBND、α−NPD、PPDなどの低分子系発光層ホスト材料やポリパラフェニレンビニレン(PPV)、ポリフルオレン、ポリビニルカルバゾールなどの高分子系発光層ホスト材料にキナクリドンやクマリン、ベンゾチオキサンテン誘導体(BTX−2)、ルブレン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッドなどの蛍光色素をドープしたものが使用できる。なお、発光層2はできるだけ低電圧で発光する方が使用上便利であるので、有機ELで用いられている材料を使用するのが好ましい。
【0040】
また、本実施形態では、発光層2を強電界ドリフト層6の全面を覆うように形成してあるが、画素2aに対応した領域(つまり、透明電極3と裏面電極4とが交差する領域)のみに形成するようにしてもよい。また、発光層2の厚さは、注入された電子が発光層2を十分に励起でき、透明電極2から注入されるホールと再結合できる厚さが望ましく、発光層2の材料に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
また、カラーディスプレイなどのように複数の色表示をさせたい場合には、発光層2の発光波長が例えばそれぞれR(赤色)、G(緑色)、B(青色)というように異なる材料を選択し、それらを面内で交互に配置したり、青色発光の発光層材料と蛍光性の色変換膜とを組み合わせそれらを面内で交互に配置したり、白色発光の発光層材料とカラーフィルタとを組み合わせそれらを面内で交互に配置したりすればよい。
【0042】
透明電極3は、強電界ドリフト層6および発光層2に電界を印加することで裏面電極4から強電界ドリフト層6へ電子を注入させ、強電界ドリフト層6へ注入された電子を加速させる機能と、発光層2へ正孔を注入する機能と、電流の供給ラインとしての機能と、発光層2で発光した光を外部へ放出する窓層としての機能とを備えていればよい。したがって、透明電極3は、低抵抗で、発光層2とのエネルギ障壁が低く、発光層2の発光波長の光に対してできるだけ透明であることが好ましい。例えば、Auなどの金属を非常に薄く形成した半透明金属材料や、ITOや錫酸化物、インジウム酸化物、酸化亜鉛などの透明導電材料を用いることができる。ここに、透明電極3の厚さは、半透明金属材料の場合には100nm以下が好ましく、透明導電材料の場合には100nm〜10μm程度の範囲で適宜設定すればよい。また、抵抗を下げる目的で透明電極3とは別に、透明電極3と電気的に接続された低抵抗なバスライン電極を透明電極3と平行に設けてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、基板1として無アルカリガラス基板を用いているが、基板1としては石英ガラス基板やアルカリガラス基板を用いてもよいし、ガラス基板以外に、アルミナなどのセラミックスやポリイミドのような有機材料からなる絶縁基板、半導体基板を用いてもよい。
【0044】
本実施形態では、裏面電極4として、Al−Si/W/Tiを採用しているが、裏面電極4は、多孔質半導体層6aへ電子を注入できるものであればよく、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Al、Ti、W、Mo、Ir、Pdなどやそれらの合金、シリサイドのような半導体との化合物、あるいはそれらの複数の組み合わせで用いることができる。ここに、裏面電極4上に半導体層6bを形成する場合、特に多結晶や結晶性の半導体層6bを低温で形成する場合には、裏面電極4の最表面には結晶の成長が促進される材料を設けるのが好ましい。また、裏面電極4の抵抗は低い方が好ましく、膜厚は5nm〜1mmの範囲で適宜設定すればよい。また、抵抗を下げる目的で、裏面電極4とは別に、裏面電極4と電気的に接続された低抵抗なバスライン電極を裏面電極4と平行に設けてもよい。
【0045】
また、裏面電極4は、ガラスやセラミックスなどの絶縁基板の上に金属や半導体の拡散層で形成してもよいし、半導体基板の表面側に絶縁層を形成したものの上に金属や半導体の拡散層で形成してもよいし、半導体基板の表面側に半導体基板とは逆の導電形の不純物拡散層で形成してもよいし、半導体基板において発光層を形成する側の面とは反対の面(半導体基板の裏面)に金属で形成してもよい。なお、裏面電極4として、半導体基板の表面側に形成された半導体基板とは逆の導電形の不純物拡散層を採用する場合には、不純物拡散層間の電流リークを防止するために、不純物拡散層とは逆の導電形の高濃度不純物層を不純物拡散層間に設けるのが好ましい。また、この場合には、半導体基板をp形、不純物拡散層をn形とするのが、素子のバイアス方向を考えた場合の裏面電極4間の絶縁分離上、あるいは半導体層を不純物拡散層を利用して陽極酸化処理で多孔質化する上で、あるいは電子を強電界ドリフト層6へ注入する上で好ましい。
【0046】
また、上述の固体発光デバイスをガラスやセラミックスなどの無機材料あるいは樹脂などの有機材料で封止すれば、信頼性や耐環境性を向上させることができる。
【0047】
上述の半導体層6bは、プラズマCVD法により形成しているが、プラズマCVD法に限らず、LPCVD法やプラズマCVD法などのCVD法、あるいはスパッタなどのPVD法で形成することができる。
【0048】
半導体層6bを多孔質化するにあたっては、陽極酸化法を利用しているが、その他の多孔質化する方法でも良い。例えば、半導体の超微粒子を作製しそれを堆積するようにしても良いし、半導体微結晶とアモルファスからなる半導体層を形成したのち、アモルファス層を除去するように形成してもよい。
【0049】
陽極酸化の場合、混合溶液の濃度や温度、照射する光のパワー、電流密度、陽極酸化時間などの条件は所望の多孔度、微結晶サイズ、多孔質化領域の厚みとなるように適宜設定すればよい。ただし、多孔質化することで形成される半導体微結晶は、ナノオーダサイズ、特に10nm以下で構成するのが好ましく、基板1の表面に対して略垂直な方向にできるだけ整列しているのが好ましい。また、半導体層6bのうち多孔質化したい領域のみを陽極酸化で多孔質化する方法として、裏面電極4のパターンを利用して行っているが、半導体層6bの表面にマスク材料層をパターニング形成し、マスク材料層をマスクとして行ってもよいし、さらに裏面電極4のパターンとの組み合わせで行ってもよい。
【0050】
ところで、強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aにおいて微結晶シリコンの表面に形成されるシリコン酸化膜からなる絶縁膜は、欠陥が少なくて良質で且つ電子がトンネルするのに十分な薄さであることが好ましく、この絶縁膜の形成方法としては、酸素やオゾンガスを含むガス中での熱酸化、熱窒化のような熱処理プロセスや、酸素やオゾンガスを含むガスを用いたプラズマ処理、酸素やオゾンガスを含むガス中での紫外線処理、液体中での化学反応、特に電気化化学的なプロセスなどのような方法など、様々な方法を利用できる。
【0051】
電気化学的な酸化に用いる電解溶液は、硫酸に限らず、塩酸や硝酸のような無機酸あるいは酒石酸のような有機酸を用いることができる。また、溶媒も水に限らずエチレングリコールのような有機溶媒も利用できる。
【0052】
また、熱処理の場合の温度は、基板1、裏面電極4、半導体層6bなどの材料に応じて200〜1000℃の温度範囲で適宜設定すればよい。熱処理、特に高温プロセスでは、数秒〜数分で所定の酸化温度まで昇温させるのが好ましく、ランプアニール装置による急速加熱法を用いるのが好ましい。高温プロセスに対して低温プロセスでは、基板1の制約が少なくなるので、大面積化や低コスト化などの点で好ましい。
【0053】
また、裏面電極4のパターニングは、フォトリソグラフィ法とエッチング法との組み合わせだけでなく、フォトリソグラフィ法とリフトオフ法との組み合わせ、シャドウマスク法による方法などを利用できる。ここに、エッチング法は、反応性イオンエッチング法に限定されるものではなく、イオンミリング法、スパッタエッチング法、ウェットエッチング法などから適宜選択すればよい。
【0054】
また、発光層2の形成は真空蒸着やスパッタなどのPVD法、スクリーン印刷やインクジェット印刷のような印刷法など、材料に合わせ様々な方法を用いることができる。
【0055】
また、透明電極3の作製は、スパッタや真空蒸着などのPVD法やディップやスピンコートのような塗布法など様々な方法から適宜選択すればよい。また、そのパターニング法は、シャドウマスク法やフォトリソグラフィ法など様々な方法から材料や下地の発光層2あるいはパターン精度にあった方法を適宜選択すればよい。
【0056】
ところで、本実施形態の固体発光デバイスにおいて、発光層2のうち発光させたくない領域の画素2aにあたる裏面電極4および透明電極3はフローティングにしておいてもよいし、非選択である裏面電極4および透明電極3をそれぞれ選択画素の透明電極3および裏面電極4と同電位にしてもよい。
【0057】
(実施例1)
実施形態1にて説明した固体発光デバイスの製造方法で以下の条件により固体発光デバイスを作成した。
【0058】
基板1としては、無アルカリガラス基板を用いた。基板1の上に列設された複数の裏面電極4は、膜厚が0.5μmのAl−Si/W/Tiからなる電極層を基板1の一表面上にスパッタ法により堆積した後、フォトリソグラフィ法と反応性イオンエッチング法を用いて該電極層をパターニングすることにより形成した。
【0059】
半導体層としては、膜厚が1.5μmの多結晶シリコン層を採用し、多結晶シリコン層の成膜は、プラズマCVD法により行った。
【0060】
多孔質半導体層6aを形成するための多結晶シリコン層の一部の多孔質化は陽極酸化により行った。陽極酸化では電解液として、55w%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合し5℃に冷却した電解液を用いた。陽極酸化は、電解液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、500Wのタングステンランプを用いて多結晶シリコン層に一定の光パワーで光照射を行いながら、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、所定の電流を流した。ここに、陽極酸化期間における電流密度は25mA/cm2で一定とし、陽極酸化時間は6秒とした。この陽極酸化により、半導体層6bのうち裏面電極4にほぼ重なる部分の表面側が多孔質化され、ほぼ0.5μmの多孔質多結晶シリコン層が形成された。さらに、多孔質多結晶シリコン層の酸化は、硫酸の水溶液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、電気化学的に行った。多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化することにより、表面が薄いシリコン酸化膜で覆われたナノオーダサイズの微結晶シリコンと柱状の結晶グレインとからなる多孔質半導体層6aを形成した。
【0061】
発光層2としては、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を真空蒸着法にて堆積させた。ここに、有機薄膜からなる発光層2の厚さは、ほぼ0.5μmとした。
【0062】
発光層2上に裏面電極4に交差する方向に列設される複数の透明電極3としては、ITOを用い、透明電極3は、シャドウマスク法を用いたスパッタ法によって堆積した。ここに、透明電極3の厚さは略1μmとした。
【0063】
上述の条件で作成した固体発光デバイスのそれぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3が裏面電極4に対して正極となるように電圧を印加したところ、それぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との交差した領域の画素2aのみから発光が観測され、クロストークのない動作を確認することができた。
【0064】
また、本実施例の固体発光デバイスでは、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧を変化させることによって発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を当該発光層2の構成材料の発光に最適なエネルギで発光させることができ、より良好な発光特性を得ることができた。
【0065】
(実施形態2)
本実施形態の固体発光デバイスの基本構成は実施形態1と略同じであって、実施形態1では、基板1の一表面側に、裏面電極4、強電界ドリフト層6、発光層2、透明電極3の順に積層されていたのに対し、本実施形態では、基板1の一表面側に、透明電極3、発光層2、強電界ドリフト層6、裏面電極4の順に積層されている点に特徴がある。ところで、実施形態1では、基板1として、半導体基板などの透明でない基板を用いることもできるが、本実施形態では、発光層2で発光した光が透明電極3および基板1を通して外部へ取り出されるので、基板1として透明基板を用いる必要があることは勿論である。
【0066】
すなわち、本実施形態では、図3に示すように、無アルカリガラス基板からなる基板1の一表面上に、ITO(インジウム−錫酸化物)からなる複数の透明電極3が列設され、複数の透明電極3を覆うように発光層2が形成され、発光層2上に強電界ドリフト層6が積層され、強電界ドリフト層6上にAl−Si/W/Tiからなる複数の裏面電極4が透明電極3に交差する方向に列設されている。各透明電極3は、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極(図示せず)が形成されている。また、各裏面電極4も、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極(図示せず)が形成されている。なお、本実施形態の固体発光デバイスでは、発光層2の発光が透明電極3および基板1を通して外部へ取り出されるので、発光層2のうち透明電極3が列設される側の一表面を前面、該前面と反対側の面を裏面と称する。したがって、複数の裏面電極4は、発光層2の裏面側において透明電極3に交差する方向に列設されていることになる。また、基板1は、発光層2の前面側に配設されていることになる。
【0067】
ここにおいて、強電界ドリフト層6は、透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3を正極として電圧を印加したときに裏面電極4から注入された電子がドリフトして発光層2を発光させるための電子を発光層2へ供給する機能を有するものであり、強電界ドリフト層6は、透明電極3と裏面電極4とが交差する領域が酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aにより構成され、透明電極3および裏面電極4に重ならない領域が多結晶シリコン層からなる半導体層6bにより構成されている。本実施形態では、透明電極3と裏面電極4とが交差する領域の全部が多孔質半導体層6aにより構成されているが、強電界ドリフト層6は、半導体層6bからなり、透明電極3と裏面電極4とが交差する領域のうち少なくとも厚み方向において発光層2側の部分が多孔質半導体層6aにより構成されていればよい。
【0068】
ところで、多孔質半導体層6aは、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。
【0069】
また、本実施形態では、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いている。
【0070】
次に、本実施形態の固体発光デバイスの動作原理について説明する。
【0071】
本実施形態の固体発光デバイスでは、裏面電極4に対して透明電極3が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極4から強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aへ電子が注入される。多孔質半導体層6aは多数の半導体微結晶である微結晶シリコンから構成されているので、注入された電子は強電界ドリフト層6の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層6に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層6の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層2中に注入されて発光層2を励起したり、透明電極3から注入された正孔と再結合したり、透明電極3に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層2が励起されることで発光層2が発光し、発光層2で発光した光は、透明電極3および基板1を通して外部へ取り出される。
【0072】
ここにおいて、強電界ドリフト層6中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持ち、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層6に流れる電流は数桁も減少し、発光層2では、それぞれ選択した透明電極3および裏面電極4の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極3および裏面電極4のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。
【0073】
また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層6において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層6の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層2への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層6から発光層2への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。
【0074】
また、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2の材料を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層2を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。
【0075】
また、透明電極3と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層2に強電界ドリフト層6を積層することでクロストークを防止することができるので、画素2aの開口率の低下を防止することができる。また、透明電極3と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流を制御できてクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層6は発光層2に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層6を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易になる。
【0076】
また、発光層2の光を基板1を通して取り出すことができるので、固体発光デバイスをカバーする材料の選択肢が広がる上に発光層2と窓層を構成するガラス(基板1)との距離を離さずに構成でき、素子構成上、表示品質上、好都合であるというメリットがある。
【0077】
なお、裏面電極3、透明電極3、強電界ドリフト層6、発光層2はそれぞれ上記材料および形成方法に限定されるものではなく、実施形態1でそれぞれについて説明した種々の材料、形成方法の中から適宜選択すればよい。
【0078】
(実施例2)
実施形態2にて説明した固体発光デバイスを以下の条件で作成した。
【0079】
基板1としては、無アルカリガラス基板を用いた。基板1の上に列設された複数の透明電極3は、厚さが1μmのITOにより構成した。
【0080】
発光層2としては、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いた。ここに、有機薄膜からなる発光層2の厚さは、略0.5μmとした。
【0081】
強電界ドリフト層6は、膜厚が1.5μmの多結晶シリコン層よりなる半導体層6bと半導体層6bのうち透明電極3と裏面電極4とが重なる領域であって発光層2側の部分に形成された厚さ0.5μmの酸化した多孔質多結晶シリコンよりなる多孔質半導体層6aとで構成した。ここに、多孔質半導体層6aは、表面が薄いシリコン酸化膜で覆われたナノオーダサイズの微結晶シリコンと柱状の結晶グレインとからなる。
【0082】
強電界ドリフト層6上に透明電極3に交差する方向に列設される複数の裏面電極4としては、Al−Si/W/Tiを用いた。ここに、裏面電極4の厚さは、0.5μmとした。
【0083】
上述の条件で作成した固体発光デバイスのそれぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3が裏面電極4に対して正極となるように電圧を印加したところ、発光層2の多数の画素2aのうち、それぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との交差した領域(選択画素)のみから発光する様子が基板1を通して観測され、クロストークのない動作を確認することができた。
【0084】
また、本実施例の固体発光デバイスでは、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧を変化させることによって発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を当該発光層2の構成材料の発光に最適なエネルギで発光させることができ、より良好な発光特性を得ることができた。
【0085】
(実施形態3)
本実施形態の固体発光デバイスは、図4および図5に示すように、無アルカリガラス基板からなる基板1の一表面上に、Al−Si/W/Tiからなる複数の裏面電極4が列設され、複数の裏面電極4を覆うように強電界ドリフト層6が形成され、強電界ドリフト層6上に複数の中間電極5が裏面電極4に交差する方向に列設されるとともに、強電界ドリフト層6上で且つ隣り合う中間電極5間に絶縁層17(図4参照、図5では図示を省略してある)が形成され、複数の中間電極5および複数の絶縁層17を覆うように発光層2が積層され、発光層2上にITO(インジウム−錫酸化物)からなる複数の透明電極3が裏面電極4に交差する方向に列設されている。ここに、透明電極3は、中間電極5に平行であって、中間電極5に重なるように列設されている。各中間電極5は、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極15が形成されている。ところで、中間電極5は、電子の平均自由行程以下の厚さに形成されている。また、各裏面電極4も、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極14が形成されている。なお、本実施形態の固体発光デバイスでは、発光層2の発光が透明電極3を通して外部へ取り出されるので、発光層2のうち透明電極3が列設される側の一表面を前面、該前面と反対側の面を裏面と称する。したがって、複数の裏面電極4は、発光層2の裏面側において中間電極5および透明電極3に交差する方向に列設されていることになる。
【0086】
ここにおいて、強電界ドリフト層6は、中間電極5と裏面電極4との間に中間電極5を正極として電圧を印加したときに裏面電極4から注入された電子がドリフトして発光層2を発光させるための電子を発光層2へ供給する機能を有するものであり、強電界ドリフト層6は、裏面電極4にほぼ重なる領域が酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aにより構成され、裏面電極4に重ならない領域が多結晶シリコン層からなる半導体層6bにより構成されている。本実施形態では、裏面電極4にほぼ重なる領域の全部が多孔質半導体層6aにより構成されているが、強電界ドリフト層6は、半導体層6bからなり、少なくとも中間電極5と裏面電極4とが交差する領域であって厚み方向において発光層2側の部分が多孔質半導体層6aにより構成されていればよい。
【0087】
ところで、多孔質半導体層6aは、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。
【0088】
また、本実施形態では、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いている。
【0089】
次に、本実施形態の固体発光デバイスの動作原理について説明する。
【0090】
本実施形態の固体発光デバイスでは、裏面電極4に対して中間電極5が正極となるように電圧を印加するとともに中間電極5に対して透明電極3が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極4から強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aへ電子が注入される。多孔質半導体層6aは多数の半導体微結晶である微結晶シリコンから構成されているので、注入された電子は強電界ドリフト層6の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層6に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層6の表面に到達して高エネルギの電子が中間電極5をトンネルして発光層2中に注入されて発光層2を励起したり、透明電極3から注入された正孔と再結合したり、透明電極3に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層2が励起されることで発光層2が発光し、発光層2で発光した光は、透明電極3を通して外部へ取り出される。
【0091】
ここにおいて、強電界ドリフト層6中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持ち、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層6に流れる電流は数桁も減少し、発光層2では、それぞれ選択した中間電極5および裏面電極4の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極5および裏面電極4のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。
【0092】
また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層6において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層6の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層2への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。
【0093】
また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層6から発光層2への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。特に、透明電極3と中間電極5との間に印加する電圧を発光層2での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高い。
【0094】
また、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧、透明電極3と中間電極5との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層2を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。
【0095】
また、透明電極3と中間電極5と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層2に中間電極5および強電界ドリフト層6を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、画素2aの開口率の低下を防止することができる。
【0096】
また、透明電極3と中間電極5と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流を制御できクロストークを防止することができ、中間電極5および強電界ドリフト層6は発光層2に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層6を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0097】
以下、上述の固体発光デバイスの製造方法について簡単に説明する。
【0098】
まず、基板1の上記一表面上にAl−Si/W/Tiからなる所定膜厚(例えば、0.5μm)の電極層を例えばスパッタ法により堆積した後、フォトリソグラフィ法と反応性イオンエッチング法により該電極層をパターニングすることによって、基板1に列設された複数の裏面電極4を形成する。
【0099】
次に、基板1の上記一表面側の全面に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンドープの多結晶シリコン層を例えばプラズマCVD法により堆積する。
【0100】
その後、例えば、フッ化水素水溶液とエタノールとを所定混合比(例えば、1:1)で混合した混合液の入った陽極酸化処理槽を利用し、裏面電極4を正極、白金(Pt)からなる対向電極を負極として、多結晶シリコン層に光照射を行いながら所定の電流密度で所定の時間だけ陽極酸化処理を行うことによって、多結晶シリコン層のうち裏面電極4に重なる領域に所定厚さの多孔質多結晶シリコン層を形成する。多孔質多結晶シリコン層を形成した後(つまり、多結晶シリコン層の一部を多孔質化した後)、硫酸の水溶液中で、裏面電極4を正極、白金からなる対向電極を負極として、多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化することにより、酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aが形成される。ここに、多孔質半導体層6aは、上述のように、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。また、多結晶シリコン層のうち上述の陽極酸化処理にて多孔質化されなかった部分が半導体層6bとなる。
【0101】
次に、強電界ドリフト層6上に、膜厚が10nmの絶縁層17を形成し、フォトリソグラフィ法およびエッチング法を利用して該絶縁層17を裏面電極4に交差する方向に列設されるようにパターニングし、その後、膜厚が10nmの金からなる中間電極5を堆積させ、リフトオフ法を利用して中間電極5を裏面電極4に交差する方向に列設する。すなわち、隣り合う中間電極5間には絶縁層17が介在し、逆に隣り合う絶縁層17間に中間電極5が形成されている。
【0102】
続いて、基板1の上記一表面側の全面に、つまり、全ての中間電極5および絶縁層17を覆うように、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を例えば真空蒸着法により所定膜厚(例えば、0.5μm)だけ堆積させる。
【0103】
発光層2を形成した後、発光層2上に、ITOからなる透明電極3を、裏面電極4に交差する方向に列設されるように、例えばシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって所定膜厚(例えば、1μm)だけ堆積させる。ここに、透明電極3は、中間電極5と平行な方向であって中間電極5に重なる位置に形成する。
【0104】
その後、パッド電極14,15を形成することにより、本実施形態の固体発光デバイスが形成される。
【0105】
ところで、本実施形態では、中間電極5として、膜厚が10nmの金薄膜を用いているが、強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aで加速された電子がトンネルでき且つ多孔質半導体層6aの全面をある程度均一に覆うことができ低抵抗となるような厚みであればよく、100nm以下、好ましくは15nm以下とすることが望ましい。
【0106】
また、中間電極5の材料としては、電子がトンネルしやすく低抵抗で化学的に安定であり、また多孔質半導体層6aおよび発光層2との密着性が良いものが好ましく、Au、Pt、Ag、Cu、Ni、Cr、Al、Ti、W、Mo、Ir、Pdなどの金属やそれらの合金、あるいはそれらの複数の組み合わせで用いることができる。
【0107】
また、中間電極5の抵抗を下げる目的および断線を防止する目的で、中間電極5と電気的に接続された膜厚が厚く低抵抗なバスライン電極を中間電極5と平行に設けてもよい。
【0108】
なお、裏面電極3、透明電極3、強電界ドリフト層6、発光層2はそれぞれ上記材料および形成方法に限定されるものではなく、実施形態1で説明した種々の材料および形成方法の中からそれぞれ適宜選択すればよい。また、絶縁層17の材料、厚み、形成方法も上記のものに限定されない。
【0109】
また、中間電極5のパターニング法もフォトリソグラフィ法とエッチング法あるいはリフトオフ法との組み合わせ、シャドウマスク法による方法などを適宜選択すればよい。また、エッチング法も反応性イオンエッチング法をはじめ、イオンミリング法、スパッタエッチング法、ウエットエッチング法などから適宜選択すればよい。
【0110】
ところで、本実施形態では、透明電極3を発光層2上に列設してあるが、透明電極3は発光層2上の全面に形成してもよい。
【0111】
また、本実施形態の固体発光デバイスを駆動するにあたっては、発光層2のうち発光させない領域の画素にあたる裏面電極4と中間電極5、透明電極3はフォローティングにしておいてもよいし、非選択である裏面電極4と中間電極5あるいはまた透明電極3をそれぞれ選択画素の中間電極5および裏面電極4あるいはまた中間電極5と同電位にして用いてもよい。
【0112】
(実施例3)
実施形態3にて説明した固体発光デバイスの製造方法で以下の条件により固体発光デバイスを作成した。
【0113】
基板1としては、無アルカリガラス基板を用いた。基板1の上に列設された複数の裏面電極4は、膜厚が0.5μmのAl−Si/W/Tiからなる電極層を基板1の一表面上にスパッタ法により堆積した後、フォトリソグラフィ法と反応性イオンエッチング法を用いて該電極層をパターニングすることにより形成した。
【0114】
半導体層6bとしては、膜厚が1.5μmの多結晶シリコン層を採用し、多結晶シリコン層の成膜は、プラズマCVD法により行った。
【0115】
多孔質半導体層6aを形成するための多結晶シリコン層の一部の多孔質化は陽極酸化により行った。陽極酸化では電解液として、55w%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合し5℃に冷却した電解液を用いた。陽極酸化は、電解液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、500Wのタングステンランプを用いて多結晶シリコン層に一定の光パワーで光照射を行いながら、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、所定の電流を流した。ここに、陽極酸化期間における電流密度は25mA/cm2で一定とし、陽極酸化時間は6秒とした。この陽極酸化により、半導体層6bのうち裏面電極4に重なる部分の表面側が多孔質化され、略0.5μmの多孔質多結晶シリコン層が形成された。さらに、多孔質多結晶シリコン層の酸化は、硫酸の水溶液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、電気化学的に行った。多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化することにより、表面が薄いシリコン酸化膜で覆われたナノオーダサイズの微結晶シリコンと柱状の結晶グレインとからなる多孔質半導体層6aを形成した。
【0116】
中間電極5としては、膜厚が10nmの金薄膜をシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって裏面電極4に交差する方向に列設した。
【0117】
発光層2としては、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を真空蒸着法にて堆積させた。ここに、有機薄膜からなる発光層の厚さは、略0.5μmとした。
【0118】
発光層2上に裏面電極4に交差する方向に列設される複数の透明電極3としては、ITOを用い、透明電極3は、シャドウマスク法を用いたスパッタ法によって堆積した。ここに、透明電極3の厚さは略1μmとした。
【0119】
上述の条件で作成した固体発光デバイスのそれぞれ選択した中間電極5と裏面電極4との間に中間電極5が裏面電極4に対して正極となるように電圧を印加するとともに、透明電極3と中間電極5との間に透明電極3が正極となるように数ボルトの電圧を印加したところ、発光層2のうち選択した中間電極5と裏面電極4と透明電極3との交差した領域のみから発光が観測され、クロストークのない動作を確認することができた。
【0120】
また、本実施例の固体発光デバイスでは、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧および透明電極3と中間電極5との間に印加する印加電圧を変化させることによって発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を当該発光層2の構成材料の発光に最適なエネルギで発光させることができ、より良好な発光特性を得ることができた。
【0121】
(実施形態4)
本実施形態の固体発光デバイスの基本構成は実施形態3と略同じであって、実施形態3では、基板1の一表面側に、裏面電極4、強電界ドリフト層6、中間電極5、発光層2、透明電極3の順に積層されていたのに対し、本実施形態では、基板1の一表面側に、透明電極3、発光層2、中間電極5、強電界ドリフト層6、裏面電極4の順に積層されている点に特徴がある。ところで、実施形態3では、基板1として、半導体基板などの透明でない基板を用いることもできるが、本実施形態では、発光層2で発光した光が透明電極3および基板1を通して外部へ取り出されるので、基板1として透明基板などの透光性を有する基板を用いる必要があることは勿論である。
【0122】
すなわち、本実施形態では、図6に示すように、無アルカリガラス基板からなる基板1の一表面上に、ITOからなる複数の透明電極3が列設され、複数の透明電極3を覆うように発光層2が形成され、発光層2上に複数の中間電極5が透明電極3に重なるように透明電極5に平行な方向に列設されている。さらに、複数の中間電極5を覆うように強電界ドリフト層6が積層され、強電界ドリフト層6上にAl−Si/W/Tiからなる複数の裏面電極4が透明電極3に交差する方向に列設されている。なお、本実施形態の固体発光デバイスでは、発光層2の発光が透明電極3および基板1を通して外部へ取り出されるので、発光層2のうち透明電極3が列設される側の一表面を前面、該前面と反対側の面を裏面と称する。したがって、複数の裏面電極4は、発光層2の裏面側において透明電極3に交差する方向に列設されていることになる。また、基板1は、発光層2の前面側に配設されていることになる。また、発光層2のうち裏面電極4と中間電極5との交差する領域に重なる部位がそれぞれ画素2aを構成している。
【0123】
ここにおいて、強電界ドリフト層6は、中間電極5と裏面電極4との間に中間電極5を正極として電圧を印加したときに裏面電極4から注入された電子がドリフトして発光層2を発光させるための電子を発光層2へ供給する機能を有するものであり、強電界ドリフト層6は、中間電極5と裏面電極4とが交差する領域が酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aにより構成され、中間電極5と裏面電極4とが交差しない領域が多結晶シリコン層からなる半導体層6bにより構成されている。本実施形態では、中間電極5と裏面電極4とが交差する領域の全部が多孔質半導体層6aにより構成されているが、強電界ドリフト層6は、半導体層6bからなり、少なくとも中間電極5と裏面電極4とが交差する領域であって厚み方向において発光層2側の部分が多孔質半導体層6aにより構成されていればよい。
【0124】
ところで、多孔質半導体層6aは、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。
【0125】
また、本実施形態では、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いている。
【0126】
次に、本実施形態の固体発光デバイスの動作原理について説明する。
【0127】
本実施形態の固体発光デバイスでは、裏面電極4に対して中間電極5が正極となるように電圧を印加するとともに中間電極5に対して透明電極3が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極4から強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aへ電子が注入される。多孔質半導体層6aは多数の半導体微結晶である微結晶シリコンから構成されているので、注入された電子は強電界ドリフト層6の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層6に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層6の表面に到達して高エネルギの電子が中間電極5をトンネルして発光層2中に注入されて発光層2を励起したり、透明電極3から注入された正孔と再結合したり、透明電極3に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層2が励起されることで発光層2が発光し、発光層2で発光した光は、透明電極3および基板1を通して外部へ取り出される。
【0128】
ここにおいて、強電界ドリフト層6中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持ち、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層6に流れる電流は数桁も減少し、発光層2では、それぞれ選択した中間電極5および裏面電極4の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極5および裏面電極4のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。
【0129】
また、発光層2の画素2aのうち非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層6において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層6の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層2への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。
【0130】
また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層6から発光層2への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。特に、透明電極3と中間電極5との間に印加する電圧を発光層2での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高い。
【0131】
また、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧、透明電極3と中間電極5との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層2を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。
【0132】
また、透明電極3と中間電極5と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層2に中間電極5および強電界ドリフト層6を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができる。
【0133】
また、透明電極3と中間電極5と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流を制御できクロストークを防止することができ、中間電極5および強電界ドリフト層6は発光層2に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層6を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0134】
また、発光層2の光を基板1を通して取り出すことができるので、固体発光デバイスをカバーする材料の選択肢が広がる上に発光層2と窓層を構成するガラス(基板1)との距離を離さずに構成でき、素子構成上、表示品質上、好都合であるというメリットがある。
【0135】
なお、裏面電極3、透明電極3、強電界ドリフト層6、中間電極5、発光層2はそれぞれ上記材料および形成方法に限定されるものではなく、実施形態3で説明した種々の材料および形成方法の中からそれぞれ適宜選択すればよい。
【0136】
(実施例4)
実施形態4にて説明した固体発光デバイスを以下の条件で作成した。
【0137】
基板1としては、無アルカリガラス基板を用いた。基板1の上に列設された複数の透明電極3は、厚さが1μmのITOにより構成した。
【0138】
発光層2としては、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いた。ここに、有機薄膜からなる発光層2の厚さは、略0.5μmとした。
【0139】
中間電極5としては、膜厚が10nmの金薄膜をシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって透明電極5に平行な方向に列設した。
【0140】
強電界ドリフト層6は、膜厚が1.5μmの多結晶シリコン層よりなる半導体層6bと半導体層6bのうち透明電極3と裏面電極4とが重なる領域であって発光層2側の部分に形成された厚さ0.5μmの酸化した多孔質多結晶シリコンよりなる多孔質半導体層6aとで構成した。ここに、多孔質半導体層6aは、表面が薄いシリコン酸化膜で覆われたナノオーダサイズの微結晶シリコンと柱状の結晶グレインとからなる。
【0141】
強電界ドリフト層6上に透明電極3に交差する方向に列設される複数の裏面電極4としては、Al−Si/W/Tiを用いた。ここに、裏面電極4の厚さは、0.5μmとした。
【0142】
上述の条件で作成した固体発光デバイスのそれぞれ選択した中間電極5と裏面電極4との間に中間電極5が裏面電極4に対して正極となるように電圧を印加するとともに、透明電極3と中間電極5との間に透明電極3が正極となるように数ボルトの電圧を印加したところ、選択した中間電極5と裏面電極4と透明電極3との交差した領域の画素2aのみから発光が観測され、クロストークのない動作を確認することができた。
【0143】
また、本実施例の固体発光デバイスでは、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧および透明電極3と中間電極5との間に印加する印加電圧を変化させることによって発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を当該発光層2の構成材料の発光に最適なエネルギで発光させることができ、より良好な発光特性を得ることができた。
【0144】
(実施形態5)
本実施形態の固体発光デバイスは、図7に示すように、p形シリコン基板からなる基板1の一表面側に、n形拡散層からなる複数の裏面電極4が列設され、複数の裏面電極4が形成された基板1の上記一表面を覆うように強電界ドリフト層6が形成され、強電界ドリフト層6上に発光層2が積層され、発光層2上にITO(インジウム−錫酸化物)からなる複数の透明電極3が裏面電極4に交差する方向に列設されている。また、隣り合う裏面電極4間には高濃度のp形不純物層8が形成されている。各透明電極3は、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極13が形成されている。また、各裏面電極4も、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極14が形成されている。なお、本実施形態の固体発光デバイスでは、発光層2の発光が透明電極3を通して外部へ取り出されるので、発光層2のうち透明電極3が列設される側の一表面を前面、該前面と反対側の面を裏面と称する。したがって、複数の裏面電極4は、発光層2の裏面側において透明電極3に交差する方向に列設されていることになる。
【0145】
ここにおいて、強電界ドリフト層6は、透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3を正極として電圧を印加したときに裏面電極4から注入された電子がドリフトして発光層2を発光させるための電子を発光層2へ供給する機能を有するものであり、強電界ドリフト層6は、裏面電極4にほぼ重なる領域が酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aにより構成され、裏面電極4に重ならない領域が多結晶シリコン層からなる半導体層6bにより構成されている。本実施形態では、裏面電極4にほぼ重なる領域の全部が多孔質半導体層6aにより構成されているが、強電界ドリフト層6は、半導体層6bからなり、少なくとも透明電極3と裏面電極4とが交差する領域であって厚み方向において発光層2側の部分が多孔質半導体層6aにより構成されていればよい。また、隣り合う多孔質半導体層6a間の半導体層6bと基板1との間にはシリコン酸化膜からなる絶縁層7が形成されている。
【0146】
ところで、多孔質半導体層6aは、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。
【0147】
また、本実施形態では、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いている。
【0148】
次に、本実施形態の固体発光デバイスの動作原理について説明する。
【0149】
本実施形態の固体発光デバイスでは、裏面電極4に対して透明電極3が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極4から強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aへ電子が注入される。多孔質半導体層6aは多数の半導体微結晶である微結晶シリコンから構成されているので、注入された電子は強電界ドリフト層6の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層6に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層6の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層2中に注入されて発光層2を励起したり、透明電極3から注入された正孔と再結合したり、透明電極3に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層2が励起されることで発光層2が発光し、発光層2で発光した光は、透明電極3を通して外部へ取り出される。
【0150】
ここにおいて、強電界ドリフト層6中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持ち、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層6に流れる電流は数桁も減少し、発光層2では、それぞれ選択した透明電極3および裏面電極4の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極3および裏面電極4のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。
【0151】
また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層6において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層6の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層2への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層6から発光層2への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。
【0152】
また、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2の材料を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層2を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。
【0153】
また、透明電極3と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層2に強電界ドリフト層6を積層することでクロストークを防止することができるので、発光層2の画素2aの開口率の低下を防止することができる。また、透明電極3と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層6は発光層2に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層6を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易になる。
【0154】
また、強電界ドリフト層6は、隣り合う裏面電極4間の領域に重なる部位の後部に絶縁層7が設けられているので、強電界ドリフト層6のうち隣り合う裏面電極4間の領域に重なる部位を通って透明電極3へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、発光層2の発光効率を高めることができる。
【0155】
以下、上述の固体発光デバイスの製造方法について簡単に説明する。
【0156】
まず、p形シリコン基板からなる基板1の上記一表面上に所定膜厚(例えば、0.5μm)のシリコン酸化膜を形成した後、裏面電極4を配設するための領域をエッチング除去することでパターニングされたシリコン酸化膜からなる絶縁層7を形成する。なお、隣り合う裏面電極4間の高濃度のp形不純物層8は予め形成してある。
【0157】
その後、絶縁層7をマスクとして基板1の上記一表面側に複数のn形拡散層からなる裏面電極4を列設する。
【0158】
次に、基板1の上記一表面側の全面に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンドープの多結晶シリコン層を例えばLPCVD法により堆積する。
【0159】
その後、例えば、フッ化水素水溶液とエタノールとを所定混合比(例えば、1:1)で混合した混合液の入った陽極酸化処理槽を利用し、裏面電極4を正極、白金(Pt)からなる対向電極を負極として、多結晶シリコン層に光照射を行いながら所定の電流密度で所定の時間だけ陽極酸化処理を行うことによって、多結晶シリコン層のうち裏面電極4にほぼ重なる領域に所定厚さの多孔質多結晶シリコン層を形成する。多孔質多結晶シリコン層を形成した後(つまり、多結晶シリコン層の一部を多孔質化した後)、乾燥酸素ガス中でランプアニール装置を用いた急速加熱法で多孔質多結晶シリコン層を酸化することにより、酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aが形成される。ここに、多孔質半導体層6aは、上述のように、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。また、多結晶シリコン層のうち上述の陽極酸化処理にて多孔質化されなかった部分が半導体層6bとなる。
【0160】
続いて、基板1の上記一表面側の全面に、つまり、強電界ドリフト層6上に、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を例えば真空蒸着法により所定膜厚(例えば、0.5μm)だけ堆積させる。
【0161】
発光層2を形成した後、発光層2上に、ITOからなる透明電極3を、裏面電極4に交差する方向に列設されるように、例えばシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって所定膜厚(例えば、1μm)だけ堆積させる。
【0162】
その後、パッド電極13,14を形成することにより、本実施形態の固体発光デバイスが形成される。
【0163】
なお、透明電極3、強電界ドリフト層6、発光層2はそれぞれ上記材料および形成方法に限定されるものではなく、実施形態1で説明した種々の材料および形成方法の中からそれぞれ適宜選択すればよい。また、絶縁層7の材料、厚み、形成方法も上記のものに限定されない。
【0164】
(実施例5)
実施形態5にて説明した固体発光デバイスの製造方法で以下の条件により固体発光デバイスを作成した。
【0165】
基板1としては、p形シリコン基板を用いた。基板1の上記一表面側に列設された複数のn形拡散層からなる裏面電極4は、基板1の上記一表面上の絶縁層7をパターニングした後に形成した。
【0166】
半導体層としては、膜厚が1.5μmの多結晶シリコン層を採用し、多結晶シリコン層の成膜は、LPCVD法により行った。
【0167】
多孔質半導体層6aを形成するための多結晶シリコン層の一部の多孔質化は陽極酸化により行った。陽極酸化では電解液として、55w%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合し5℃に冷却した電解液を用いた。陽極酸化は、電解液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、500Wのタングステンランプを用いて多結晶シリコン層に一定の光パワーで光照射を行いながら、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、所定の電流を流した。ここに、陽極酸化期間における電流密度は25mA/cm2で一定とし、陽極酸化時間は6秒とした。この陽極酸化により、半導体層6bのうち裏面電極4にほぼ重なる部分(絶縁層7で覆われていない部分)の表面側が多孔質化され、略0.5μmの多孔質多結晶シリコン層が形成された。
【0168】
さらに、多孔質多結晶シリコン層の酸化は、乾燥酸素ガス中でランプアニール装置を用いた急速加熱法で行った。酸化の条件は、酸化温度を900℃、酸化時間を1時間、酸化温度までの昇温時間を1分とした。このような条件で多孔質多結晶シリコン層を酸化することにより、表面が薄いシリコン酸化膜で覆われたナノオーダサイズの微結晶シリコンと柱状の結晶グレインとからなる多孔質半導体層6aを形成した。
【0169】
発光層2としては、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を真空蒸着法にて堆積させた。ここに、有機薄膜からなる発光層2の厚さは、略0.5μmとした。
【0170】
発光層2上に裏面電極4に交差する方向に列設される複数の透明電極3としては、ITOを用い、透明電極3は、シャドウマスク法を用いたスパッタ法によって堆積した。ここに、透明電極3の厚さは略1μmとした。
【0171】
上述の条件で作成した固体発光デバイスのそれぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3が裏面電極4に対して正極となるように電圧を印加したところ、それぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との交差した領域(選択画素)のみから発光が観測され、クロストークのない動作を確認することができた。
【0172】
また、本実施例の固体発光デバイスでは、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧を変化させることによって発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を当該発光層2の構成材料の発光に最適なエネルギで発光させることができ、より良好な発光特性を得ることができた。
【0173】
(実施形態6)
本実施形態の固体発光デバイスは、図8に示すように、絶縁基板であるアルミナセラミックスからなる基板1の一表面上に、タングステン(W)からなる複数の裏面電極4が列設され、複数の裏面電極4を覆うように強電界ドリフト層6が形成され、強電界ドリフト層6のうち隣り合う裏面電極4間の領域に重なる部位上に絶縁層7が設けられ、強電界ドリフト層6および絶縁層7を覆うように発光層2が積層され、発光層2上にITO(インジウム−錫酸化物)からなる複数の透明電極3が裏面電極4に交差する方向に列設されている。各透明電極3は、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極13が形成されている。また、各裏面電極4も、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極14が形成されている。なお、本実施形態の固体発光デバイスでは、発光層2の発光が透明電極3を通して外部へ取り出されるので、発光層2のうち透明電極3が列設される側の一表面を前面、該前面と反対側の面を裏面と称する。したがって、複数の裏面電極4は、発光層2の裏面側において透明電極3に交差する方向に列設されていることになる。
【0174】
ここにおいて、強電界ドリフト層6は、透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3を正極として電圧を印加したときに裏面電極4から注入された電子がドリフトして発光層2を発光させるための電子を発光層2へ供給する機能を有するものであり、強電界ドリフト層6は、裏面電極4にほぼ重なる領域が酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aにより構成され、裏面電極4に重ならない領域が多結晶シリコン層からなる半導体層6bにより構成されている。本実施形態では、裏面電極4にほぼ重なる領域の全部が多孔質半導体層6aにより構成されているが、強電界ドリフト層6は、半導体層6bからなり、少なくとも透明電極3と裏面電極4とが交差する領域であって厚み方向において発光層2側の部分が多孔質半導体層6aにより構成されていればよい。
【0175】
ところで、多孔質半導体層6aは、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。
【0176】
また、本実施形態では、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いている。
【0177】
本実施形態の固体発光デバイスの動作原理は実施形態1と略同じなので説明を省略する。ただし、本実施形態の固体発光デバイスでは、実施形態1と同様に、クロストークの問題がなく、しかも、強電界ドリフト層6は、隣り合う裏面電極4間の領域に重なる部位の前部に絶縁層7が設けられているので、強電界ドリフト層6のうち隣り合う裏面電極4間の領域に重なる部位を通って透明電極3へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、発光効率を高めることができる。なお、裏面電極3、透明電極3、強電界ドリフト層6、発光層2の材料および形成方法はそれぞれ実施形態1で説明した種々の材料および形成方法の中からそれぞれ適宜選択すればよい。また、絶縁層7の材料、厚み、形成方法も上記のものに限定されない。
【0178】
以下、上述の固体発光デバイスの製造方法について簡単に説明する。
【0179】
まず、基板1の上記一表面上にWからなる所定膜厚(例えば、0.5μm)の電極層を例えばスパッタ法により堆積した後、フォトリソグラフィ法と反応性イオンエッチング法により該電極層をパターニングすることによって、基板1に複数の裏面電極4を列設する。
【0180】
次に、基板1の上記一表面側の全面に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンドープの多結晶シリコン層をLPCVD法により堆積する。
【0181】
その後、例えば、フッ化水素水溶液とエタノールとを所定混合比(例えば、1:1)で混合した混合液の入った陽極酸化処理槽を利用し、裏面電極4を正極、白金(Pt)からなる対向電極を負極として、多結晶シリコン層に光照射を行いながら所定の電流密度で所定の時間だけ陽極酸化処理を行うことによって、多結晶シリコン層のうち裏面電極4にほぼ重なる領域に所定厚さの多孔質多結晶シリコン層を形成する。多孔質多結晶シリコン層を形成した後(つまり、多結晶シリコン層の一部を多孔質化した後)、乾燥酸素ガス中でランプアニール装置を用いて急速加熱法で多孔質多結晶シリコン層を酸化することにより、酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aが形成される。ここに、多孔質半導体層6aは、上述のように、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。また、多結晶シリコン層のうち上述の陽極酸化処理にて多孔質化されなかった部分が半導体層6bとなる。
【0182】
続いて、基板1の上記一表面側の全面に、つまり、強電界ドリフト層6上に、所定膜厚(例えば、0.5μm)のシリコン酸化膜をPCVD法により形成した後、当該シリコン酸化膜のうち裏面電極4に重なる部分を除去することによりシリコン酸化膜からなる絶縁層7を形成する。
【0183】
次に、基板1の上記一表面側の全面に、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を例えば真空蒸着法により所定膜厚(例えば、0.5μm)だけ堆積させる。
【0184】
発光層2を形成した後、発光層2上に、ITOからなる透明電極3を、裏面電極4に交差する方向に列設されるように、例えばシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって所定膜厚(例えば、1μm)だけ堆積させる。
【0185】
その後、パッド電極13,14を形成することにより、本実施形態の固体発光デバイスが形成される。
【0186】
(実施例6)
実施形態6にて説明した固体発光デバイスの製造方法で以下の条件により固体発光デバイスを作成した。
【0187】
基板1としては、アルミナセラミックス基板を用いた。基板1の上に列設された複数の裏面電極4は、膜厚が0.5μmのWからなる電極層を基板1の一表面上にスパッタ法により堆積した後、フォトリソグラフィ法と反応性イオンエッチング法を用いて該電極層をパターニングすることにより形成した。
【0188】
半導体層としては、膜厚が1.5μmの多結晶シリコン層を採用し、多結晶シリコン層の成膜は、LPCVD法により行った。
【0189】
多孔質半導体層6aを形成するための多結晶シリコン層の一部の多孔質化は陽極酸化により行った。陽極酸化では電解液として、55w%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合し5℃に冷却した電解液を用いた。陽極酸化は、電解液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、500Wのタングステンランプを用いて多結晶シリコン層に一定の光パワーで光照射を行いながら、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、所定の電流を流した。ここに、陽極酸化期間における電流密度は25mA/cm2で一定とし、陽極酸化時間は6秒とした。この陽極酸化により、半導体層6bのうち裏面電極4に重なる部分の表面側が多孔質化され、略0.5μmの多孔質多結晶シリコン層が形成された。
【0190】
さらに、多孔質多結晶シリコン層の酸化は、乾燥酸素ガス中でランプアニール装置を用いた急速加熱法で行った。酸化の条件は、酸化温度を900℃、酸化時間を1時間、酸化温度までの昇温時間を1分とした。このような条件で多孔質多結晶シリコン層を酸化することにより、表面が薄いシリコン酸化膜で覆われたナノオーダサイズの微結晶シリコンと柱状の結晶グレインとからなる多孔質半導体層6aを形成した。
【0191】
発光層2としては、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を真空蒸着法にて堆積させた。ここに、有機薄膜からなる発光層2の厚さは、略0.5μmとした。
【0192】
発光層2上に裏面電極4に交差する方向に列設される複数の透明電極3としては、ITOを用い、透明電極3は、シャドウマスク法を用いたスパッタ法によって堆積した。ここに、透明電極3の厚さは略1μmとした。
【0193】
上述の条件で作成した固体発光デバイスのそれぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3が裏面電極4に対して正極となるように電圧を印加したところ、それぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との交差した領域(選択画素)のみから発光が観測され、クロストークのない動作を確認することができた。
【0194】
また、本実施例の固体発光デバイスでは、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧を変化させることによって発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を当該発光層2の構成材料の発光に最適なエネルギで発光させることができ、より良好な発光特性を得ることができた。
【0195】
(実施形態7)
本実施形態の固体発光デバイスは、図9に示すように、無アルカリガラス基板からなる基板1の一表面上に、Al−Si/W/Tiからなる複数の裏面電極4が列設され、複数の裏面電極4を覆うように強電界ドリフト層6が形成され、強電界ドリフト層6上において後述の透明電極3間の領域に重なる部位上にシリコン酸化膜よりなる絶縁層17が形成され、強電界ドリフト層6および絶縁層17を覆うように発光層2が積層され、発光層2上にITO(インジウム−錫酸化物)からなる複数の透明電極3が裏面電極4に交差する方向に列設されている。各透明電極3は、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極13が形成されている。また、各裏面電極4も、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極14が形成されている。なお、本実施形態の固体発光デバイスでは、発光層2の発光が透明電極3を通して外部へ取り出されるので、発光層2のうち透明電極3が列設される側の一表面を前面、該前面と反対側の面を裏面と称する。したがって、複数の裏面電極4は、発光層2の裏面側において透明電極3に交差する方向に列設されていることになる。
【0196】
ここにおいて、強電界ドリフト層6は、透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3を正極として電圧を印加したときに裏面電極4から注入された電子がドリフトして発光層2を発光させるための電子を発光層2へ供給する機能を有するものであり、強電界ドリフト層6は、裏面電極4にほぼ重なる領域が酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aにより構成され、裏面電極4に重ならない領域が多結晶シリコン層からなる半導体層6bにより構成されている。本実施形態では、裏面電極4にほぼ重なる領域の全部が多孔質半導体層6aにより構成されているが、強電界ドリフト層6は、半導体層6bからなり、少なくとも透明電極3と裏面電極4とが交差する領域であって厚み方向において発光層2側の部分が多孔質半導体層6aにより構成されていればよい。
【0197】
ところで、多孔質半導体層6aは、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。
【0198】
また、本実施形態では、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いている。
【0199】
本実施形態の固体発光デバイスの動作原理は実施形態1と略同じなので説明を省略する。ただし、本実施形態の固体発光デバイスでは、実施形態1と同様に、クロストークの問題がなく、しかも、強電界ドリフト層6は、隣り合う透明電極3間の領域に重なる部位の上に絶縁層17が設けられているので、裏面電極4から強電界ドリフト層6、発光層2を通って透明電極3へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、さらに高効率な固体発光デバイスを実現することができる。なお、裏面電極3、透明電極3、強電界ドリフト層6、発光層2の材料および形成方法はそれぞれ実施形態1で説明した種々の材料および形成方法の中からそれぞれ適宜選択すればよい。また、絶縁層17の材料、厚み、形成方法も上記のもに限定されない。
【0200】
以下、上述の固体発光デバイスの製造方法について簡単に説明する。
【0201】
まず、基板1の上記一表面上にAl−Si/W/Tiからなる所定膜厚(例えば、0.5μm)の電極層を例えばスパッタ法により堆積した後、フォトリソグラフィ法と反応性イオンエッチング法により該電極層をパターニングすることによって、基板1上に複数の裏面電極4を列設する。
【0202】
次に、基板1の上記一表面側の全面に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンドープの多結晶シリコン層を例えばプラズマCVD法により堆積する。
【0203】
その後、例えば、フッ化水素水溶液とエタノールとを所定混合比(例えば、1:1)で混合した混合液の入った陽極酸化処理槽を利用し、裏面電極4を正極、白金(Pt)からなる対向電極を負極として、多結晶シリコン層に光照射を行いながら所定の電流密度で所定の時間だけ陽極酸化処理を行うことによって、多結晶シリコン層のうち裏面電極4に重なる領域に所定厚さの多孔質多結晶シリコン層を形成する。多孔質多結晶シリコン層を形成した後(つまり、多結晶シリコン層の一部を多孔質化した後)、硫酸の水溶液中で、裏面電極4を正極、白金からなる対向電極を負極として、多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化することにより、酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aが形成される。ここに、多孔質半導体層6aは、上述のように、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。また、多結晶シリコン層のうち上述の陽極酸化処理にて多孔質化されなかった部分が半導体層6bとなる。
【0204】
続いて、基板1の上記一表面側の全面に、つまり、強電界ドリフト層6上に、所定膜厚(例えば、0.5μm)のシリコン酸化膜をPCVD法により形成した後、当該シリコン酸化膜のうち透明電極3の形成予定領域に重なる部分を除去することによりシリコン酸化膜からなる絶縁層17を形成する。
【0205】
続いて、基板1の上記一表面側の全面に、つまり、強電界ドリフト層6および絶縁層17を覆うように、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を例えば真空蒸着法により所定膜厚(例えば、0.5μm)だけ堆積させる。
【0206】
発光層2を形成した後、発光層2上に、ITOからなる透明電極3を、裏面電極4に交差する方向に列設されるように、例えばシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって所定膜厚(例えば、1μm)だけ堆積させる。
【0207】
その後、パッド電極13,14を形成することにより、本実施形態の固体発光デバイスが形成される。
【0208】
(実施例7)
実施形態7にて説明した固体発光デバイスの製造方法で以下の条件により固体発光デバイスを作成した。
【0209】
基板1としては、無アルカリガラス基板を用いた。基板1の上に列設された複数の裏面電極4は、膜厚が0.5μmのAl−Si/W/Tiからなる電極層を基板1の一表面上にスパッタ法により堆積した後、フォトリソグラフィ法と反応性イオンエッチング法を用いて該電極層をパターニングすることにより形成した。
【0210】
半導体層としては、膜厚が1.5μmの多結晶シリコン層を採用し、多結晶シリコン層の成膜は、プラズマCVD法により行った。
【0211】
多孔質半導体層6aを形成するための多結晶シリコン層の一部の多孔質化は陽極酸化により行った。陽極酸化では電解液として、55w%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合し5℃に冷却した電解液を用いた。陽極酸化は、電解液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、500Wのタングステンランプを用いて多結晶シリコン層に一定の光パワーで光照射を行いながら、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、所定の電流を流した。ここに、陽極酸化期間における電流密度は25mA/cm2で一定とし、陽極酸化時間は6秒とした。この陽極酸化により、半導体層6bのうち裏面電極4に重なる部分の表面側が多孔質化され、略0.5μmの多孔質多結晶シリコン層が形成された。さらに、多孔質多結晶シリコン層の酸化は、硫酸の水溶液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、電気化学的に行った。多孔質多結晶シリコン層を電気化学的に酸化することにより、表面が薄いシリコン酸化膜で覆われたナノオーダサイズの微結晶シリコンと柱状の結晶グレインとからなる多孔質半導体層6aを形成した。
【0212】
発光層2としては、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を真空蒸着法にて堆積させた。ここに、有機薄膜からなる発光層2
の厚さは、略0.5μmとした。
【0213】
発光層2上に裏面電極4に交差する方向に列設される複数の透明電極3としては、ITOを用い、透明電極3は、シャドウマスク法を用いたスパッタ法によって堆積した。ここに、透明電極3の厚さは略1μmとした。
【0214】
上述の条件で作成した固体発光デバイスのそれぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との間に透明電極3が裏面電極4に対して正極となるように電圧を印加したところ、それぞれ選択した透明電極3と裏面電極4との交差した領域(選択画素)のみから発光が観測され、クロストークのない動作を確認することができた。
【0215】
また、本実施例の固体発光デバイスでは、透明電極3と裏面電極4との間に印加する印加電圧を変化させることによって発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を当該発光層2の構成材料の発光に最適なエネルギで発光させることができ、より良好な発光特性を得ることができた。
【0216】
(実施形態8)
本実施形態の固体発光デバイスは、図10に示すように、p形シリコン基板からなる基板1の一表面側に、n形拡散層からなる複数の裏面電極4が列設され、隣り合う裏面電極4間における基板1上にはシリコン酸化膜よりなる絶縁層7が形成され、複数の裏面電極4および絶縁層7が形成された基板1の上記一表面側を覆うように強電界ドリフト層6が形成され、強電界ドリフト層6上に裏面電極4に交差する方向に複数の中間電極5が形成されるとともに隣り合う中間電極5間(隣り合う透明電極3間の領域に重なる部位)および隣り合う裏面電極4間の領域に重なる部位の上それぞれにシリコン酸化膜よりなる絶縁層17が形成され、全ての中間電極5および絶縁層17を覆うように発光層2が積層され、発光層2上にITO(インジウム−錫酸化物)からなる複数の透明電極3が中間電極5に平行な方向であって中間電極5に重なるように列設されている。また、隣り合う裏面電極4間には高濃度のp形不純物層8が形成されている。各透明電極3は、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極13が形成されている。また、各裏面電極4も、短冊状に形成され、長手方向の両端部上にそれぞれパッド電極14が形成されている。なお、本実施形態の固体発光デバイスでは、発光層2の発光が透明電極3を通して外部へ取り出されるので、発光層2のうち透明電極3が列設される側の一表面を前面、該前面と反対側の面を裏面と称する。したがって、複数の裏面電極4は、発光層2の裏面側において透明電極3に交差する方向に列設されていることになる。
【0217】
ここにおいて、強電界ドリフト層6は、中間電極5と裏面電極4との間に中間電極5を正極として電圧を印加するとともに、透明電極3を中間電極5に対して正極として電圧を印加したときに裏面電極4から注入された電子がドリフトして発光層2を発光させるための電子を発光層2へ供給する機能を有するものであり、強電界ドリフト層6は、裏面電極4にほぼ重なる領域が酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aにより構成され、裏面電極4に重ならない領域が多結晶シリコン層からなる半導体層6bにより構成されている。本実施形態では、裏面電極4にほぼ重なる領域の全部が多孔質半導体層6aにより構成されているが、強電界ドリフト層6は、半導体層6bからなり、少なくとも中間電極5と裏面電極4とが交差する領域であって厚み方向において発光層2側の部分が多孔質半導体層6aにより構成されていればよい。ここにおいて、中間電極5の厚みは、電子の平均自由行程以下の厚さに設定してある。
【0218】
ところで、多孔質半導体層6aは、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。
【0219】
また、本実施形態では、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を用いている。
【0220】
次に、本実施形態の固体発光デバイスの動作原理について説明する。
【0221】
本実施形態の固体発光デバイスでは、裏面電極4に対して中間電極5が正極となるように電圧を印加するとともに中間電極5に対して透明電極3が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極4から強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aへ電子が注入される。多孔質半導体層6aは多数の半導体微結晶である微結晶シリコンから構成されているので、注入された電子は強電界ドリフト層6の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層6に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層6の表面に到達して高エネルギの電子が中間電極5をトンネルして発光層2中に注入されて発光層2を励起したり、透明電極3から注入された正孔と再結合したり、透明電極3に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層2が励起されることで発光層2が発光し、発光層2で発光した光は、透明電極3を通して外部へ取り出される。
【0222】
ここにおいて、強電界ドリフト層6中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持ち、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層6に流れる電流は数桁も減少し、発光層2では、それぞれ選択した中間電極5および裏面電極4の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極5および裏面電極4のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がない。
【0223】
また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層6において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層6の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層2への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなる。
【0224】
また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層6から発光層2への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層2が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しない。特に、透明電極3と中間電極5との間に印加する電圧を発光層2での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高い。
【0225】
また、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧、透明電極3と中間電極5との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層2を発光させることができ、良好な発光特性が得られる
また、透明電極3と中間電極5と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層2に中間電極5および強電界ドリフト層6を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、発光層2の画素の開口率の低下を防止することができる。
【0226】
また、透明電極3と中間電極5と裏面電極4と強電界ドリフト層6とで発光層2に流れる電流を制御できクロストークを防止することができ、中間電極5および強電界ドリフト層6は発光層2に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層6を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易である。
【0227】
しかも、強電界ドリフト層6は、隣り合う中間電極5間(隣り合う透明電極3間の領域に重なる部位の上)および隣り合う裏面電極4間の領域に重なる部位の上に絶縁層17が、隣り合う裏面電極4間の領域に重なる部位の下に絶縁層7がそれぞれ設けられているので、基板1あるいは裏面電極4から強電界ドリフト層6を通って中間電極5へ、あるいはさらに裏面電極4から強電界ドリフト層6、発光層2を通って透明電極3へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、さらに高効率な固体発光デバイスを実現することができる。
【0228】
なお、透明電極3、強電界ドリフト層6、発光層2の材料および形成方法はそれぞれ実施形態1で説明した種々の材料および形成方法の中からそれぞれ適宜選択すればよい。また、絶縁層7,17の材料、厚み、形成方法も上記のものに限定されない。
【0229】
以下、上述の固体発光デバイスの製造方法について簡単に説明する。
【0230】
まず、p形シリコン基板からなる基板1の上記一表面上に所定膜厚(例えば、0.5μm)のシリコン酸化膜を形成した後、裏面電極4を配設するための領域をエッチング除去することでパターニングされたシリコン酸化膜からなる絶縁層7を形成する。なお、隣り合う裏面電極4間の高濃度のp形不純物層8は予め形成してある。
【0231】
次に、絶縁層7をマスクとして基板1の上記一表面側に複数のn形拡散層からなる裏面電極4を列設する。
【0232】
次に、基板1の上記一表面側の全面に所定膜厚(例えば、1.5μm)のノンドープの多結晶シリコン層を例えばプラズマCVD法により堆積する。
【0233】
その後、例えば、フッ化水素水溶液とエタノールとを所定混合比(例えば、1:1)で混合した混合液の入った陽極酸化処理槽を利用し、裏面電極4を正極、白金(Pt)からなる対向電極を負極として、多結晶シリコン層に光照射を行いながら所定の電流密度で所定の時間だけ陽極酸化処理を行うことによって、多結晶シリコン層のうち裏面電極4にほぼ重なる領域に所定厚さの多孔質多結晶シリコン層を形成する。多孔質多結晶シリコン層を形成した後(つまり、多結晶シリコン層の一部を多孔質化した後)、乾燥酸素ガス中でランプアニール装置を用いた急速加熱法で多孔質多結晶シリコン層を酸化することにより、酸化した多孔質多結晶シリコン層からなる多孔質半導体層6aが形成される。ここに、多孔質半導体層6aは、上述のように、基板1の上記一表面に略直交する柱状の結晶グレインと、結晶グレインの表面に形成された薄いシリコン酸化膜と、結晶グレインの間に介在するナノオーダサイズの微結晶シリコンと、微結晶シリコンの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とで構成されている。また、多結晶シリコン層のうち上述の陽極酸化処理にて多孔質化されなかった部分が半導体層6bとなる。
【0234】
続いて、強電界ドリフト層6上に所定膜厚(例えば、0.5μm)のシリコン酸化膜をPCVD法により形成した後、中間電極5を配設する領域および裏面電極4を配設した領域のシリコン酸化膜を除去することによりシリコン酸化膜からなる絶縁層17を形成する。その後、膜厚が10nmの金薄膜よりなる複数の中間電極5をシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって裏面電極4と交差する方向に形成する。
【0235】
続いて、基板1の上記一表面側の全面に、つまり、全ての中間電極5および絶縁層17を覆うように、発光層2として、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を例えば真空蒸着法により所定膜厚(例えば、0.5μm)だけ堆積させる。
【0236】
発光層2を形成した後、発光層2上に、ITOからなる透明電極3を、裏面電極4に交差する方向に列設されるように、例えばシャドウマスク法を用いたスパッタ法によって所定膜厚(例えば、1μm)だけ堆積させる。
【0237】
その後、パッド電極14,15を形成することにより、本実施形態の固体発光デバイスが形成される。
【0238】
(実施例8)
実施形態8にて説明した固体発光デバイスの製造方法で以下の条件により固体発光デバイスを作成した。
【0239】
基板1としては、p形シリコン基板を用いた。基板1の上記一表面側に列設された複数のn形拡散層からなる裏面電極4は、基板1の上記一表面上の絶縁層7をパターニングした後に形成した。
【0240】
半導体層としては、膜厚が1.5μmの多結晶シリコン層を採用し、多結晶シリコン層の成膜は、LPCVD法により行った。
【0241】
多孔質半導体層6aを形成するための多結晶シリコン層の一部の多孔質化は陽極酸化により行った。陽極酸化では電解液として、55w%のフッ化水素水溶液とエタノールとを略1:1で混合し5℃に冷却した電解液を用いた。陽極酸化は、電解液中に白金電極よりなる対向電極を浸し、500Wのタングステンランプを用いて多結晶シリコン層に一定の光パワーで光照射を行いながら、裏面電極4を正極、対向電極を負極として、所定の電流を流した。ここに、陽極酸化期間における電流密度は25mA/cm2で一定とし、陽極酸化時間は6秒とした。この陽極酸化により、半導体層6bのうち裏面電極4にほぼ重なる部分の表面側が多孔質化され、略0.5μmの多孔質多結晶シリコン層が形成された。
【0242】
さらに、多孔質多結晶シリコン層の酸化は、乾燥酸素ガス中でランプアニール装置を用いた急速加熱法で行った。酸化の条件は、酸化温度を900℃、酸化時間を1時間、酸化温度までの昇温時間を1分とした。このような条件で多孔質多結晶シリコン層を酸化することにより、表面が薄いシリコン酸化膜で覆われたナノオーダサイズの微結晶シリコンと柱状の結晶グレインとからなる多孔質半導体層6aを形成した。
【0243】
絶縁層17は、強電界ドリフト層6上にPCVD法で堆積したシリコン酸化膜をパターニングすることにより形成した。
【0244】
中間電極5は、膜厚が10nmの金薄膜をシャドウマスク法を用いたスパッタ法により形成した。
【0245】
発光層2としては、ホスト材料がトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)からなる有機薄膜を真空蒸着法にて堆積させた。ここに、有機薄膜からなる発光層2の厚さは、略0.5μmとした。
【0246】
発光層2上に裏面電極4に交差する方向に列設される複数の透明電極3としては、ITOを用い、透明電極3は、シャドウマスク法を用いたスパッタ法によって堆積した。ここに、透明電極3の厚さは略1μmとした。
【0247】
上述の条件で作成した固体発光デバイスのそれぞれ選択した中間電極5と裏面電極4との間に中間電極5が裏面電極4に対して正極となるように電圧を印加するとともに、透明電極3と中間電極5との間に透明電極3が正極となるように数ボルトの電圧を印加したところ、発光層2のうち選択した中間電極5と裏面電極4と透明電極3との交差した領域(選択画素)のみから発光が観測され、クロストークのない動作を確認することができた。
【0248】
また、本実施例の固体発光デバイスでは、中間電極5と裏面電極4との間に印加する印加電圧および透明電極3と中間電極5との間に印加する印加電圧を変化させることによって発光層2へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層2を当該発光層2の構成材料の発光に最適なエネルギで発光させることができ、より良好な発光特性を得ることができた。
【0249】
ところで、上記各実施形態の固体発光デバイスにおいて、発光層2の強電界ドリフト層6とは反対側、つまり、発光層2と透明電極3との間に正孔輸送層を設ければ、透明電極3から発光層2への正孔の注入がより起こりやすくなるので、強電界ドリフト層6から発光層2へ注入された電子の再結合確率が高くなり、発光層2の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光層2の発光に必要な電圧の低減が可能となる。また、正孔輸送層を設けたことにより、発光層2自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなる。
【0250】
ここにおいて、正孔輸送層は、銅フタロシアニン(CuPc)などの金属フタロシアニンや無金属フタロシアニン(H2Pc)といったフタロシアニン系材料、TPAC、2Me−TPD、α−NPD、TPTE、MTDATA、FTPD、OTPACといった芳香族アミン系材料などを1層あるいは複数層積層したものを用いればよい。
【0251】
正孔輸送層の膜厚は、10nm〜10μmの範囲で適宜設定すればよく、正孔輸送層の形成には、真空蒸着法などのPVD法や湿式塗工などの方法を適宜選択すればよい。
【0252】
また、上記各実施形態の固体発光デバイスにおいて、発光層2の強電界ドリフト層6側、つまり、発光層2と強電界ドリフト層6の多孔質半導体層6aとの間に電子輸送層を設ければ、強電界ドリフト層6から発光層2への電子の注入が起こりやすくなるので、発光層2の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となる。また、電子輸送層を設けたことにより、発光層2自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなる。
【0253】
ここにおいて、電子輸送層としては、例えばAlq3などを用いればよい。
【0254】
電子輸送層の膜厚は、5nm〜10μmの範囲で適宜設定すればよく、電子輸送層の形成には、真空蒸着法などのPVD法や湿式塗工などの方法を適宜選択すればよい。
【0255】
【発明の効果】
請求項1の発明は、発光層と、発光層の前面上に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面上に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層からなるものであり、裏面電極に対して透明電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極から注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した透明電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がないという効果がある。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなるという効果がある。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しないという効果がある。また、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層に強電界ドリフト層を積層することでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができるという効果がある。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易であるという効果がある。
【0256】
請求項2の発明は、発光層と、発光層の前面上に設けられた透明電極と、発光層の裏面上に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層からなるものであり、裏面電極に対して中間電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達するから、中間電極の厚みを電子の平均自由行程以下の厚みに形成しておけば、強電界ドリフト層の表面に到達した高エネルギの電子がエネルギをほとんど失うことなく中間電極をトンネルして発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極を中間電極に対して正極として電圧を印加することで透明電極から注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した中間電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がないという効果がある。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなるという効果がある。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しないという効果がある。特に、透明電極と中間電極との間に印加する電圧を発光層での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高い。また、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧、透明電極と中間電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られるという効果がある。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層に中間電極および強電界ドリフト層を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができるという効果がある。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、中間電極および強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易であるという効果がある。
【0257】
請求項3の発明は、発光層と、発光層の前面側に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面上に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と透明電極との間には、正孔輸送層が積層されてなるものであり、裏面電極に対して透明電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極から正孔輸送層を通して注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、透明電極と発光層との間に正孔輸送層を設けたことにより、透明電極から発光層への正孔の注入が起こりやすくなるので、強電界ドリフト層から発光層へ注入された電子の再結合確率が高くなり、発光層の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となるという効果がある。また、正孔輸送層を設けたことにより、発光層自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなるという効果がある。また、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した透明電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がないという効果がある。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなるという効果がある。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しないという効果がある。また、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られるという効果がある。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層に強電界ドリフト層を積層することでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができるという効果がある。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易であるという効果がある。
【0258】
請求項4の発明は、発光層と、発光層の前面側に設けられた透明電極と、発光層の裏面上に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と透明電極との間には、正孔輸送層が積層されてなるものであり、裏面電極に対して中間電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達するから、中間電極の厚みを電子の平均自由行程以下の厚みに形成しておけば、強電界ドリフト層の表面に到達した高エネルギの電子がエネルギをほとんど失うことなく中間電極をトンネルして発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極を中間電極に対して正極として電圧を印加することで透明電極から注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、透明電極と発光層との間に正孔輸送層を設けたことにより、透明電極から発光層への正孔の注入が起こりやすくなるので、強電界ドリフト層から発光層へ注入された電子の再結合確率が高くなり、発光層の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となるという効果がある。また、正孔輸送層を設けたことにより、発光層自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなるという効果がある。また、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した中間電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がないという効果がある。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなるという効果がある。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しないという効果がある。特に、透明電極と中間電極との間に印加する電圧を発光層での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高いという効果がある。また、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧、透明電極と中間電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層材料を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られるという効果がある。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層に中間電極および強電界ドリフト層を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができるという効果がある。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、中間電極および強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易であるという効果がある。
【0259】
請求項5の発明は、発光層と、発光層の前面上に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と前記強電界ドリフト層との間には、電子輸送層が積層されてなるものであり、裏面電極に対して透明電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達して高エネルギの電子がそのまま発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極から正孔輸送層を通して注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、発光層と強電界ドリフト層との間に電子輸送層を設けたことにより、強電界ドリフト層から発光層への電子の注入が起こりやすくなるので、発光層の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となるという効果がある。また、電子輸送層を設けたことにより、発光層自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなるという効果がある。また、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した透明電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた透明電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がないという効果がある。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなるという効果がある。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しないという効果がある。また、透明電極と裏面電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子をクロストークを防止するために別途に設けることなく、発光層に強電界ドリフト層を積層することでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができるという効果がある。また、透明電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易であるという効果がある。
【0260】
請求項6の発明は、発光層と、発光層の前面上に設けられた透明電極と、発光層の裏面に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と前記強電界ドリフト層との間には、電子輸送層が積層されてなるものであり、裏面電極に対して中間電極が正極となるように電圧を印加すると、裏面電極から強電界ドリフト層へ電子が注入されるが、強電界ドリフト層のうち少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分は多孔質半導体層からなっており、当該多孔質半導体層は多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有するので、注入された電子は強電界ドリフト層の微結晶シリコン中でほとんど散乱されることなく微結晶シリコン間を多重トンネルしながら強電界ドリフト層に印加された電圧で加速され、最終的に高いエネルギに励起されて強電界ドリフト層の表面に到達するから、中間電極の厚みを電子の平均自由行程以下の厚みに形成しておけば、強電界ドリフト層の表面に到達した高エネルギの電子がエネルギをほとんど失うことなく中間電極をトンネルして発光層中に注入されて発光層を励起したり、透明電極を中間電極に対して正極として電圧を印加することで透明電極から注入された正孔と再結合したり、透明電極に印加された電圧でさらに加速され高エネルギとなった電子によって発光層が励起されることで発光層が発光し、発光層で発光した光は、透明電極を通して外部へ取り出される。ここにおいて、発光層と強電界ドリフト層との間に電子輸送層を設けたことにより、強電界ドリフト層から発光層への電子の注入が起こりやすくなるので、発光層の発光量および発光効率の向上が可能になるとともに、発光に必要な電圧の低減が可能となるという効果がある。また、電子輸送層を設けたことにより、発光層自身のダイオード特性が顕著になるので、逆バイアス電流が流れ難くなり、クロストークを防ぐ効果も大きくなるという効果がある。また、強電界ドリフト層中に流れる電流はトンネル現象で流れ、その電流電圧特性はファウラ−ノルドハイムプロットにほぼ乗るような極めて高い非線形性を持つので、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧が半分になれば強電界ドリフト層に流れる電流は数桁も減少し、発光層では、それぞれ選択した中間電極および裏面電極の交差する領域である選択画素にかかる電圧に比べて、選択画素を除いた中間電極および裏面電極のいずれか一方のみに重なる非選択画素にかかる電圧が十分に小さいので、非選択画素にはほとんど電流が流れず、非選択画素はほとんど発光しないから、クロストークの問題がないという効果がある。また、非選択画素では、当該非選択画素にかかる電圧が低いので、強電界ドリフト層において非選択画素に重なる領域では電子が加速されにくく、強電界ドリフト層の表面に到達した電子のエネルギが小さいので、発光層への電子の注入量が少なくなる上、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなくなり、結果としてさらにクロストークの問題がなくなるという効果がある。また、非選択画素のうち逆バイアスがかかる非選択画素では、強電界ドリフト層から発光層への高エネルギの電子の注入は生じないので、電子によって発光層が励起されて発光することがほとんどなく、また逆バイアスがかかっていることで電子と正孔との再結合も生じないので、クロストークの問題が発生しないという効果がある。特に、透明電極と中間電極との間に印加する電圧を発光層での注入キャリアの再結合による発光開始電圧と同等かそれよりも小さくしておけば、さらにクロストーク防止の効果が高いという効果がある。また、中間電極と裏面電極との間に印加する印加電圧、透明電極と中間電極との間に印加する印加電圧を調整することで、発光層へ注入される電子のエネルギを調整できるので、発光層を発光させるために適当なエネルギの電子を利用して発光層を発光させることができ、良好な発光特性が得られる。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流が制御されるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を設けることなく、発光層に中間電極および強電界ドリフト層を積層した構造とすることでクロストークを防止することができるので、画素の開口率の低下を防止することができるという効果がある。また、透明電極と中間電極と裏面電極と強電界ドリフト層とで発光層に流れる電流を制御できるとともにクロストークを防止することができ、中間電極および強電界ドリフト層は発光層に積層されるものであるから、従来のようなダイオードやスイッチング素子を別途に設ける必要がなく、構造が単純で、強電界ドリフト層を設けない場合と同じデザインルールで形成できるので、作製プロセスが容易であるという効果がある。
【0261】
請求項7の発明は、請求項1ないし請求項6の発明において、前記強電界ドリフト層は、隣り合う裏面電極間の領域に重なる部位の前部と後部との少なくとも一方に絶縁層が設けられているので、前記強電界ドリフト層のうち隣り合う裏面電極間の領域に重なる部位を通って透明電極へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、発光効率を高めることができるという効果がある。
【0262】
請求項8の発明は、請求項1ないし請求項7の発明において、前記強電界ドリフト層は、隣り合う透明電極間の領域に重なる部位上に絶縁層が設けられているので、前記強電界ドリフト層のうち隣り合う透明電極間の領域に重なる部位を通って透明電極へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、発光効率を高めることができるという効果がある。
【0263】
請求項9の発明は、請求項2または請求項4または請求項6の発明において、前記強電界ドリフト層は、隣り合う中間電極間の領域に重なる部位上に絶縁層が設けられているので、前記強電界ドリフト層のうち隣り合う中間電極間の領域に重なる部位を通って透明電極へリーク電流が流れるのを防ぐことができ、発光効率を高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1を示す一部破断した斜視図である。
【図2】同上の分解斜視図である。
【図3】実施形態2示す分解斜視図である。
【図4】実施形態3を示す一部破断した斜視図である。
【図5】同上の分解斜視図である。
【図6】実施形態4を示す分解斜視図である。
【図7】実施形態5を示す一部破断した斜視図である。
【図8】実施形態6を示す一部破断した斜視図である。
【図9】実施形態7を示す一部破断した斜視図である。
【図10】実施形態8を示す一部破断した斜視図である。
【図11】従来例の動作説明図である。
【符号の説明】
1 基板
2 発光層
3 透明電極
4 裏面電極
6 強電界ドリフト層
6a 多孔質半導体層
6b 半導体層

Claims (9)

  1. 発光層と、発光層の前面上に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面上に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層からなることを特徴とする固体発光デバイス。
  2. 発光層と、発光層の前面上に設けられた透明電極と、発光層の裏面上に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層からなることを特徴とする固体発光デバイス。
  3. 発光層と、発光層の前面側に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面上に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と透明電極との間には、正孔輸送層が積層されてなることを特徴とする固体発光デバイス。
  4. 発光層と、発光層の前面側に設けられた透明電極と、発光層の裏面上に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と透明電極との間には、正孔輸送層が積層されてなることを特徴とする固体発光デバイス。
  5. 発光層と、発光層の前面上に列設された複数の透明電極と、発光層の裏面側において透明電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも透明電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され透明電極と裏面電極との間に透明電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも透明電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい 膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と前記強電界ドリフト層との間には、電子輸送層が積層されてなることを特徴とする固体発光デバイス。
  6. 発光層と、発光層の前面上に設けられた透明電極と、発光層の裏面に列設された複数の中間電極と、発光層の裏面側において中間電極に交差する方向に列設された複数の裏面電極と、少なくとも中間電極と裏面電極との交差する領域で発光層の裏面側に積層され中間電極と裏面電極との間に中間電極を正極として電圧を印加したときに裏面電極から注入された電子がドリフトして発光層を発光させるための電子を発光層へ供給する強電界ドリフト層とを備え、前記強電界ドリフト層は、半導体層からなり、少なくとも中間電極と裏面電極とが交差する領域であって厚み方向において発光層側の部分が、多数のナノメータサイズの微結晶シリコンと、各微結晶シリコンそれぞれの表面に形成され微結晶シリコンの結晶粒径よりも小さい膜厚のシリコン酸化膜とを有する多孔質半導体層であり、発光層と前記強電界ドリフト層との間には、電子輸送層が積層されてなることを特徴とする固体発光デバイス。
  7. 前記強電界ドリフト層は、隣り合う裏面電極間の領域に重なる部位の前部と後部との少なくとも一方に絶縁層が設けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の固体発光デバイス。
  8. 前記強電界ドリフト層は、隣り合う透明電極間の領域に重なる部位上に絶縁層が設けられてなることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の固体発光デバイス。
  9. 前記強電界ドリフト層は、隣り合う中間電極間の領域に重なる部位上に絶縁層が設けられてなることを特徴とする請求項2または請求項4または請求項6記載の固体発光デバイス。
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