JP4178567B2 - 樹脂発泡体の製法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、樹脂体に不活性ガスを含浸させ、ついでこれを加熱して樹脂発泡体を製造する方法に関し、樹脂体の厚み方向に不活性ガスの含浸量の濃度勾配を形成することにより、2種の異なるセル構造を同時に有する特殊発泡構造の樹脂発泡体を得るようにしたものである。
【0002】
【従来の技術】
炭酸ガス等の不活性ガスを熱可塑性樹脂からなるシート、フィルムなどに液状または超臨界状で含浸させ、ついでこれを加熱して表面のスキン層と内部のセル層とからなる樹脂発泡シートなどを得る方法が知られている。
このものは、樹脂シートなどの内部の不活性ガスの含浸量がその厚み方向にほぼ均一とされるため、内部の発泡したセル層のセル構造は、ほぼ均一であり、表面のスキン層に近いセル層の部分において若干セル径が小さくなる程度である。
【0003】
このため、この方法によって製造された樹脂発泡シートなどでは、機械的特性は均一ではあるものの用途が限定され、特殊な用途には不向きであった。
また、発泡倍率を高めて樹脂発泡シートなどの低比重化を図ろうとすると、剛性、曲げ強度などの機械的強度が同時に低下し、低比重でかつ高機械的強度の樹脂発泡シートなどを得ることができなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
よって、本発明における課題は、2種の異なるセル構造を有し、これによって機械的強度の低下を防止しうる特殊発泡構造の樹脂発泡体を容易に製造できるようにすることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかかる課題を解決するために、請求項1にかかる発明は、スキン層と、このスキン層の内側の微細発泡層と、この微細発泡層の内側の細長気泡層を有する樹脂発泡体の製法であって、樹脂体に圧力下で不活性ガスを液状もしくは超臨界状で含浸し、樹脂体の厚み方向に不活性ガスの含浸量の濃度勾配を放物線状となるように形成し、ついでこれを大気開放した後、樹脂体の表面から不活性ガスを揮発させ、次いで加熱して樹脂体を発泡させて、前記樹脂発泡体を得ることを特徴とする樹脂発泡体の製法である。
また、請求項2にかかる発明は、前記加熱の条件を、前記樹脂体のガラス転移温度以上で溶融温度以下とし、樹脂体を軟化させるとともに、樹脂体の内部に含浸されている不活性ガスを気化させることを特徴とする請求項1記載の樹脂発泡体の製法である。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明で用いられる樹脂体としては、熱可塑性樹脂からなるフィルム、シート、プレートなどやこれらを成形加工したものなどが用いられる。
熱可塑性樹脂としては、特に限定されることはなく、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアセタールなどの結晶性樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ABS樹脂、AS樹脂などの非結晶性樹脂などが用いられる。
また、不活性ガスとしては、樹脂体と化学反応を起こさない不燃性のガス、例えば炭酸ガス、窒素ガスなどが用いられ、なかでも液化もしくは超臨界化が容易な炭酸ガスが好適である。
【0007】
具体的な製造方法としては、圧力容器に樹脂体を入れ、圧力容器内に不活性ガスを導入し、加圧もしくは加圧、加熱状態として不活性ガスを液状もしくは超臨界状とし、樹脂体中に含浸させる。
樹脂体への不活性ガスの含浸量は、含浸時の圧力、温度、時間の含浸条件、樹脂体をなす熱可塑性樹脂の種類、樹脂体の厚みなどによって変化する。
このため、樹脂体の厚み方向での不活性ガスの含浸量の濃度勾配を形成するには、上記圧力、温度、時間の含浸条件を適宜定めることによって行われる。
【0008】
不活性ガスの樹脂体への含浸が、所望の濃度勾配に達したならば、圧力容器から樹脂体を取り出し、これを樹脂体をなす樹脂のガラス転移温度以上で溶融温度以下の温度で、時間10秒〜5分程度、オイルバス、オーブンなどに入れて加熱し、樹脂体を軟化させると同時に内部に含浸されている不活性ガスを気化させて発泡させる。
ついで、この樹脂体を冷水等に浸すなどして急速冷却し、気泡の成長を停止させて、目的とする樹脂発泡体を得る。
【0009】
図1は、樹脂体の厚み方向の不活性ガス含浸量の濃度勾配の一例を示すグラフである。この例では、樹脂体の厚み方向の中心部分に向けて両表面側から徐々に含浸濃度が放物線状に低下しているもので、含浸時の圧力、温度、時間の含浸条件を温和にしたものである。
このような濃度勾配を有する樹脂体を加熱して発泡させた樹脂発泡体は、図2に模式的に示すような特殊なセル構造を有するものとなる。
【0010】
図2において、符号1はスキン層であり、このスキン層1は樹脂発泡体の両表面層に形成され、実質的に発泡していない層である。このスキン層1、1の内側にはそれぞれ微細気泡層2、2が形成されている。
この微細気泡層2は、そのセル径が0.1〜10μmで、セル密度が109〜1015個/cm3で、セルの外形がほぼ球状のものであって、不活性ガス濃度の高い領域の部分が発泡したものである。
また、2つの微細気泡層2、2に挿まれた中間部分は、細長気泡層3となっている。この細長気泡層3は、個々のセルの形状が概略円筒状となっており、その径(短径)が10〜100μm、長さ(長径)が100〜1000μmであり、セル密度が105〜109個/cm3のものであって、不活性ガスの含浸濃度の低い領域の部分が発泡したものである。
【0011】
樹脂発泡体の表面に未発泡のスキン層1が形成される理由は、不活性ガスの含浸後の樹脂体を圧力容器を取り出した直後から加熱するまでの間に、含浸されている不活性ガスがその表面から速やかに揮散して行き、その後加熱しても不活性ガスが抜けた表面部分は発泡しないためである。
また、ポリエチレンテレフタレートなどの結晶性樹脂を非晶化(アモルファス化)した樹脂で樹脂体を構成した場合には、不活性ガスの含浸によって樹脂のガラス転移温度が低下し、含浸条件下において表面部分から結晶化が進行する。結晶部分は溶融温度程度にまで加熱しない限り、軟化することはないので、結晶化した表面部分は発泡せず、スキン層となる。
【0012】
また、不活性ガス含浸量の大きい部分では、この部分を加熱すると、ガスの圧力低下が大きく、多数の核が発生し、この核に流入するガスの量が少なくなるため、核から生成するセルは微細で、かつ多数のセルが生成し、これによって微細気泡層2が形成される。逆に、不活性ガス含浸量の小さい部分では、ガスの圧力低下が小さく、小数の核が発生し、核に流入するガスの量が多くなるため、核から生成するセルは大型化し、細長気泡層3が形成される。
【0013】
図3は、樹脂体の厚み方向の不活性ガス含浸量の濃度勾配の他の例を示すもので、図1に示したものに比べて、含浸条件をさらに温和なものとし、厚み方向の中央部分には不活性ガスが含浸されていない部分を形成したものである。
図4は、図3に示した濃度勾配を有する樹脂体を加熱して得られた樹脂発泡体を模式的に示したもので、このものでは、表面のスキン層1、1の内側に微細気泡層2、2が形成され、この微細気泡層2、2の内側には細長気泡層3、3が形成され、これの内側に未発泡層4が形成されている。未発泡層4は不活性ガスが含浸されていない部分に対応している。
【0014】
このような樹脂発泡体の製造方法にあっては、図2および図4に示すような2種の異なるセル構造を有する特殊発泡構造の樹脂発泡体を、単に不活性ガスの含浸条件を制御して厚み方向に濃度勾配を形成するだけの操作によって、簡単に製造することができる。
また、得られる樹脂発泡体は、その特殊な発泡構造に起因して機械的強度、特に剛性、曲げ強度が高く、しかも低比重のものとなる。
【0015】
以下、実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
樹脂体として、非晶化した厚さ1mmのポリエチレンテレフタレートシートを50×50mmの大きさに切断して圧力容器に入れ、密閉した。圧力容器の温度40℃に保ちながら、炭酸ガスを導入して圧力容器内を120atmまで加圧した。圧力容器の温度、圧力を15時間保持し、ポリエチレンテレフタレートシートに炭酸ガスを含浸させた。
【0016】
15時間後、圧力容器内の炭酸ガスを放出して大気圧とし、ポリエチレンテレフタレートシートを取り出し、このシートを150℃のオイルバスに10秒間浸して加熱し、発泡させた。
以上の操作によって得られた発泡ポリエチレンテレフタレートシートの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、図5に示す写真が得られた。
また、発泡シートの全厚みは2.9mmでスキン層の厚みは0.18mm、微細気泡層の厚みは0.8mm、細長気泡層の厚みは0.94mmであり、比重は0.4であった。
【0017】
【実施例2】
実施例1において、炭酸ガスの含浸時の含浸時間を1時間とした以外は同様にして発泡ポリエチレンテレフタレートシートを製造した。図6に示す写真は、この発泡シートの断面構造を示すものである。このものでは、含浸時間が短時間であるので、中央部分には炭酸ガスの未含浸部分に対応する未発泡層が形成されている。
また、発泡シートの全厚みは1.5mmで、スキン層の厚みは0.025mm、微細気泡層の厚みは0.32mm、細長気泡層の厚みは0.18mm、未発泡層の厚みは0.45mmであり、比重は0.5であった。
【0018】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の樹脂発泡体の製法によれば、特殊な発泡構造を有する樹脂発泡体を極めて簡単な操作によって製造することができる。また、この製法によって得られる樹脂発泡体は、機械的強度が良好でしかも低比重であり、しかもその特殊な発泡構造を有することにより、スピーカやマイクロフォンなどの振動板などの特殊な用途にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の製法における樹脂体の不活性ガス含浸量の濃度勾配の例を示すグラフである。
【図2】 図1に示す濃度勾配を有する樹脂体を加熱、発泡させた樹脂発泡体の断面構造を模式的に示す断面図である。
【図3】 本発明の製法における樹脂体の不活性ガス含浸量の濃度勾配の他の例を示すグラフである。
【図4】 図2に示す濃度勾配を有する樹脂体を加熱発泡させた樹脂発泡体の断面図を模式的に示す断面図である。
【図5】 実施例1で得られた発泡シートの断面の発泡構造を示す顕微鏡写真である。
【図6】 実施例2で得られた発泡シートの断面の発泡構造を示す顕微鏡写真である。
Claims (2)
- スキン層と、このスキン層の内側の微細発泡層と、この微細発泡層の内側の細長気泡層を有する樹脂発泡体の製法であって、
樹脂体に圧力下で不活性ガスを液状もしくは超臨界状で含浸し、樹脂体の厚み方向に不活性ガスの含浸量の濃度勾配を放物線状となるように形成し、ついでこれを大気開放した後、樹脂体の表面から不活性ガスを揮発させ、次いで加熱して樹脂体を発泡させて、前記樹脂発泡体を得ることを特徴とする樹脂発泡体の製法。 - 前記加熱の条件を、前記樹脂体のガラス転移温度以上で溶融温度以下とし、樹脂体を軟化させるとともに、樹脂体の内部に含浸されている不活性ガスを気化させることを特徴とする請求項1記載の樹脂発泡体の製法。
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