JP2006008942A - 多孔性延伸樹脂フィルムおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 多孔性延伸樹脂フィルムであって、該フィルム中の細孔において、フィルム延伸方向の平均細孔径(A)と、これと直交する厚み方向の平均細孔径(B)の比(A/B)が2以下であり、該樹脂フィルム表面の算術平均荒さ(Ra)が5μm以下であることを特徴とする多孔性延伸樹脂フィルム。
【選択図】 図1
Description
この様な多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法としては、熱可塑性樹脂内に無機充填剤を多量に混合して二軸延伸してボイドを生成する方法、ポリエステルに非相溶のポリオレフィンを配合して延伸する方法、またポリプロピレン系樹脂中にβ晶核剤を用いてβ晶を生成させ、β晶の融点以下で延伸する方法などが知られている(例えば特許文献1〜3参照)。
更に、フィラーとして用いる無機充填剤は一般的に熱可塑性樹脂より比重が大きいので、これを含有する多孔性延伸樹脂フィルムは、製品の軽量化を実現し難いという問題があり、異種の核剤を混合した複合組成物であるが故にリサイクルにも不向きであった。
また本発明の今ひとつの要旨は、不活性ガスを含浸させた無孔樹脂フィルムを、該ガス含浸樹脂フィルムの軟化点未満の温度にて延伸することを特徴とする多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法に関する。
また本発明の製造方法によれば、フィルムの破断なしに十分な延伸倍率まで延伸することができ、また延伸速度を変化させることで細孔数密度や細孔径の制御が可能となる。
本発明の多孔性延伸樹脂フィルムは、フィルム中の細孔において、フィルム延伸方向の平均細孔径(A)と、これと直交する厚み方向の平均細孔径(B)の比(A/B)が2以下であり、表面の算術平均荒さ(Ra)が5μm以下であることを特徴とする。この平均細孔径の比(A/B)は2以下で有れば任意の正の数値を取りうるが、一般的には製造設備の規模や、延伸速度、延伸温度等の延伸条件の制御の容易さ等の理由から1.1以上である。この比(A/B)が大きすぎると、機械的異方性が過度に大きくなり、例えば引き裂き強度において、延伸方向の引き裂き強度が、それと垂直な方向における引き裂き強度に比べて著しく低下する場合がある。よってA/Bは、中でも1.8以下、特に1.7以下であることが好ましい。
本発明の多孔性延伸樹脂フィルムの表面荒さ(Ra)は、5μm以下で有れば任意の正の数値を取りうる。一般的には、表面荒さを過度に小さくするには、工業的製造設備が大掛かりとなり、また延伸速度、延伸温度等の延伸条件の制御が困難となる場合があるので、本発明においては通常、0.1μm以上である。また表面荒さ(Ra)が過度に大きすぎると、表面への印刷性低下や表面光沢の低下等の仕上がり性が低下するので、本発明の多孔性延伸樹脂フィルムの表面荒さは、中でも3.5μm以下、特に1μm以下であることが好ましい。
ここで二色指数とは、例えば以下の方法により求めることができる。フーリエ変換赤外分光法における全反射吸収測定法(FT−IR ATR法)を用い、KRS―5プリズム、入射角45°、分解能4cm―1とし、フィルム延伸方向と、これに垂直な方向に偏光を入射し、測定された赤外スペクトルについて、ベンゼン環のCH面内変角振動に由来する1015cm−1に現れる吸光ピーク強度を、フィルムの延伸方向と、これに垂直な方向の各々について求め、この二つの吸光度(A(延伸方向)、A(垂直方向))の比(A(垂直方向)/A(延伸方向)を二色指数とする。この二色指数が小さいほど、延伸樹脂フィルムにおける延伸が強いことを示し、2倍延伸で約0.65の値を示す。
本発明の多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法は、不活性ガスを含浸させた無孔樹脂フィルムを、該ガス含浸樹脂フィルムの軟化点未満の温度にて延伸することを特徴とする。
本発明の多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法に用いる無孔樹脂フィルムは、従来公知の任意の方法によって得られるものを使用できる。また無孔樹脂フィルムの厚さは任意であり特に制限は無いが、薄過ぎると延伸発泡工程に至るまでに、無孔樹脂フィルムへのガス含浸工程で含浸させたガスが抜けてしまい、延伸工程において樹脂中に気泡が生成しない場合がある。逆に厚過ぎても、無孔樹脂フィルム内部までガスを含浸させるのに多大な時間が必要となるなど、工業的製造の際に不利となる場合がある。よって無孔樹脂フィルムの厚さは10μm以上、中でも50μm以上、特に100μm以上であることが好ましく、1000μm以下、中でも500μm以下であることが好ましい。
本発明の多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法においては、まず、上述した様な無孔樹脂フィルムに不活性ガスを含浸させる(以下、この工程を不活性ガス含浸工程ということがある。)。含浸の方法は任意だが、通常、大気圧を超える加圧条件下にて、無孔樹脂フィルムの表面と不活性ガスを接触させ、不活性ガスをフィルム内部に含浸させる方法を用いる。具体的には例えば、耐圧容器内に無孔樹脂フィルムを置き、この耐圧容器に不活性ガスを注入、加圧し、接触させる方法が挙げられる。
尚、本発明における不活性ガス含浸後の無孔樹脂フィルムの軟化点は、B.Krause,et al.,Macromolecules,34,874(2001)に記載のガス含浸樹脂のガラス転移温度の測定方法に準ずる。つまり、無孔樹脂フィルムを加熱オイルバス中にて30秒保持後、目視により透明なフィルム内に白濁部分が確認できる、最も低い温度を示す。この軟化点は、無孔樹脂フィルムの樹脂種、不活性ガス種、またガス含浸時のガス圧力等によって変化するので、予備実験等によって不活性ガス含浸後の無孔樹脂フィルムの軟化点を確認することが好ましい。
(1)無孔樹脂フィルムを、大気圧を超える加圧条件下にて不活性ガスと接触させて樹脂フィルムに不活性ガスを含浸させる工程。
(2)不活性ガス含浸後、該不活性ガス含浸無孔樹脂フィルムをその軟化点未満の温度条件下にて大気圧に戻す工程。
(3)上述の工程(2)で得られた、不活性ガス含浸無孔樹脂フィルムをその軟化点未満の温度条件下にて延伸する工程。
なお、以下の実施例および比較例において、不活性ガス含浸樹脂フィルムの軟化点の測定、ガス含浸フィルムの延伸方法、平均気泡直径と気泡数密度の測定、収縮率の測定、表面の算術平均荒さRaの測定、印刷性、また引き裂き強度の異方性、は下記の方法で行った。
ガスを含浸させたフィルムを常温で圧力容器より取り出し、目視によりフィルム内部に気泡がないことを確認した。次いで、一定温度に加熱したオイルバスに、該フィルムを浸し、一定温度で30秒保持した。ついで該サンプルを取り出し、氷で冷却した冷水に60秒浸した。常温より徐々にオイルバス温度を昇温させ、目視により透明なフィルム内部に白濁部が観察できた最も低い温度を不活性ガス含浸樹脂フィルムの軟化点とした。この方法はB.Krause,et al.,Macromolecules,34,874(2001)に記載の、ガス含浸樹脂のガラス転移温度の測定方法に準ずる。
島津製作所製Autograph AGS−5kNGを用いて縦方向に一軸延伸した。初期チャック間距離は40mmとし、延伸によりチャック間が160mmになるまで延伸した。その時の引っ張り速度は5mm/分から1000mm/分であった。
平均気泡直径と気泡数密度は、走査型電子顕微鏡(SEM)で発泡サンプル断面を延伸方向と平行に切り出し、その断面を200倍の倍率で写真撮影した後、画像解析ソフトWin Roof(三谷商事製)で統計処理して求めた。平均気泡径は、各気泡径を上記ソフトで計測することより、気泡数密度Nは同様の方法で気泡数を計測し、次式により求めた。
N=(n/A)3/2/(1−4/3π(D/2)3・(n/A)3/2)
式中、Nは数密度[個/cm3]、Aは統計処理領域の面積、nはA中の気泡数、Dは平均直径である。
延伸したサンプルを、延伸方向に70mm、延伸と直角方向に10mmに切り出し、80℃の温水に10秒間浸し、すぐに取り出して30秒間23℃の冷水に浸漬冷却した。その際の延伸方向のフィルム長さ(A)を測定し、下式により収縮率を算出した。
収縮率(%)=100×(70−A)/70
JIS―B0601―1994に準じ、超深度形状測定顕微鏡VK−8500(KEYENCE社製)を用い対物レンズ倍率10倍、光学ズーム1倍で、表面の3次元形状の測定を行い、観察測定範囲1390μm×1053μmの平均表面粗さを求めた。
フィルム上にグラビア印刷を行い、印刷ムラを目視にて観察した。ムラが無く良好なら○、不良なら×とした。
[引き裂き強度の異方性]
JISK7128に記載の、エレメンドルフ引裂法の2号試験片を切り出し、スリットが加工方向に対して横方向での試験結果(T)とスリットが縦方向での試験結果(M)の比をとり、次式で異方性をT/Mにて表した。
PETG(イーストマン・ケミカル社製EASTAR PETG Copolyester6763、Tg約80℃)を用い、プラスチック工学研究所社製「BT−30」二軸スクリューのフィルム成形機により、温度270℃、真空ベントを引きつつ時間吐出量16kgにて幅300mmのTダイ口金から、40℃に冷却されたロール上に押出し、密着させて急冷することにより、幅250mm、厚さ0.2mmのフィルムを得た。このフィルムの内部には気泡は認められなかった。次いで、このフィルムを縦60mm横45mmの大きさに切り出し、PETGフィルムのサンプルを作製した。このサンプルを容量500mlの耐圧容器に収容し、雰囲気温度を15℃とし、12MPaに加圧した二酸化炭素を注入し、この温度と圧力下で30分保持した。その後、上記雰囲気温度下で加圧二酸化炭素を5分かけて常圧に戻し、PETGフィルム内部に二酸化炭素を含浸させたサンプルを得た。尚、この時点でもこのサンプルの内部には気泡は認められなかった。また、この不活性ガス含浸無孔樹脂フィルムの軟化点は30℃であった。
延伸速度を50mm/分とした以外は、実施例1と同様にして、厚さ120μmの多孔性延伸樹脂フィルムを得た。延伸工程においては、延伸が進むにつれてフィルムが白濁し、発泡が進行することが確認された。このサンプルの断面を、実施例1と同様に画像処理した結果、平均気泡径は、延伸方向が61.5μm、厚み方向が36.5μm、また気泡数密度が3.38×106個/cm3であった。この断面を図2に示す。該多孔性延伸フィルムを水中に沈めると浮かび上がってきたことから、比重は1以下で十分な発泡倍率であることを確認した。またこのサンプルの収縮率を測定すると53%であった。また表面の算術平均荒さRaは3.06μm、印刷性は良好であり、異方性はT/M=1.3であった。
延伸速度を5mm/分とした以外は、実施例1と同様にして、厚さ130μmの多孔性延伸樹脂フィルムを得た。延伸工程においては、延伸が進むにつれてフィルムが白濁し、発泡が進行することが確認された。このサンプルの断面を、実施例1と同様に画像処理した結果、平均気泡径は、延伸方向が256.6μm、厚み方向が48.4μm、また気泡数密度が5.25×105個/cm3であった。この断面を図3に示す。該多孔性延伸フィルムを水面に浮かべると沈んだことから、比重は1以上であり発泡倍率は不十分であることを確認した。また表面の算術平均荒さRaは6.77μm、印刷性は不良であり、異方性はT/M=1.8であった。
実施例1で得られたガス含浸未発泡PETGフィルムを、60℃のオイルバスに30秒浸し、発泡フィルムを得た。その発泡フィルムを加熱後すぐに、延伸速度50mm/分とした以外は実施例と同様に延伸したが、50mmまで延伸した時点で破断した。
実施例1で得られたガス含浸未発泡PETGフィルムを、80℃のオイルバスに30秒浸し、発泡フィルムを得た。その発泡フィルムを加熱後すぐに、延伸速度50mm/分とした以外は実施例と同様に延伸したが、80mmまで延伸した時点で破断した。
実施例1で得られたガス含浸未発泡PETGフィルムを、90℃のオイルバスに30秒浸し、発泡フィルムを得た。その発泡フィルムを加熱後すぐに、延伸速度50mm/分とした以外は実施例と同様に延伸したが、90mmまで延伸した時点で破断した。
実施例1で得られたガス含浸未発泡PETGフィルムを、90℃のオイルバスに30秒浸し、発泡フィルムを得た。その発泡フィルムを加熱後すぐに、延伸速度5mm/分とした以外は実施例と同様に延伸し、多孔性延伸樹脂フィルムを得た。
この多孔性延伸樹脂フィルムの断面を画像処理した結果、平均気泡径は、延伸方向が285.2μm、厚み方向が38.8μm、また気泡数密度が4.25×105個/cm3であった。該多孔性延伸フィルムを水面に浮かべると沈んだことから、比重は1以上であり発泡倍率は不十分であることを確認した。また表面の算術平均荒さRaは8.25μm、印刷性は不良であり、異方性はT/M=2.5であった。
更に本発明の製造方法によれば、フィルムの破断なしに十分な延伸倍率まで延伸することができ、また延伸速度を変化させることで細孔数密度や細孔径の制御が可能となる。つまり延伸速度によって断熱性や軽量化、更には表面状態を制御でき、例えばシュリンクフィルム等に用いる際には、シュリンク性もこの延伸速度で制御することができる。
Claims (7)
- 多孔性延伸樹脂フィルムであって、該フィルム中の細孔において、フィルム延伸方向の平均細孔径(A)と、これと直交する厚み方向の平均細孔径(B)の比(A/B)が2以下であり、該樹脂フィルム表面の算術平均荒さ(Ra)が5μm以下であることを特徴とする多孔性延伸樹脂フィルム。
- フィルム厚みが500μm以下であり、細孔数密度が1.0×106個/cm3以上であることを特徴とする請求項1に記載の多孔性延伸樹脂フィルム。
- 多孔性延伸フィルムがポリエステル系樹脂からなることを特徴とする請求項1または2に記載の多孔性延伸樹脂フィルム。
- 不活性ガスを含浸させた無孔樹脂フィルムを、該ガス含浸樹脂フィルムの軟化点未満の温度にて延伸することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法。
- 以下の工程(1)〜(3)を含む請求項4に記載の多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法
(1)無孔樹脂フィルムを、大気圧を超える加圧条件下にて不活性ガスと接触させて樹脂フィルムに不活性ガスを含浸させる工程。
(2)不活性ガス含浸後、該ガス含浸樹脂フィルムをその軟化点未満の温度条件下にて大気圧に戻す工程。
(3)工程(2)で得られた不活性ガス含浸樹脂フィルムをその軟化点未満の温度条件下にて延伸する工程。 - 工程(1)を無孔樹脂フィルムの軟化点未満の温度にて行うことを特徴とする請求項5に記載の多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法。
- 延伸速度が10mm/min以上であることを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の多孔性延伸樹脂フィルムの製造方法。
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