JP4178333B2 - 脱酸素性単層体および多層体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、脱酸素性能に優れ、かつ乾燥状態から高湿度状態までの広い湿度範囲において使用可能なシート状またはフィルム状の脱酸素性単層体および多層体に関する。本発明の脱酸素性単層体および多層体は、食品、医薬品、金属製品や電子製品などの、酸素の影響を受けて変質し易い各種物品の酸化を防止して長期に保存する目的を持つ、各種の脱酸素製品を構成するために使用される。
【0002】
【従来の技術】
食品、医薬品、金属製品や電子製品に代表される、酸素の影響を受けて変質し易い各種物品の酸化を防止し長期に保存する目的で、これらを収納した包装容器や包装袋内の酸素除去を行う脱酸素剤が従来より使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現在も多く使用されている形態は、粉状または粒状の脱酸素成分を小袋に詰めたものである。また、より取扱いが容易で適用範囲が広く、誤食などの問題のない安全な脱酸素体として、フィルムまたはシート(以下、まとめてフィルムとする)の形状のものが考えられている。
脱酸素機能を持ちながらフィルムの形状とするためには、熱可塑性樹脂をマトリックス成分に利用して粒状または粉状の脱酸素成分と複合化し、脱酸素成分を固定する方法が簡便である。さらに、この複合物の単層フィルムをそのまま用いると、内容物との接触による内容物の汚染が生じるため、脱酸素層の両側を樹脂層で覆う多層構造が考案されている。また、この両側の樹脂層の一方をバリヤ性の材料として、その多層フィルムのみでバリヤ機能と脱酸素機能とを両立させることができる。これらの例として特公昭62−1824や特公昭63−2648などがある。
さらに、脱酸素層の酸素透過性を高めるためや、脱酸素層を覆うバリヤ層でない他方の樹脂層(またはバリヤ層のない場合には両方の樹脂層)の酸素透過性を高めるために、脱酸素層を微多孔化すること、脱酸素層を覆う樹脂層を微多孔化すること、薄い無孔質の樹脂層を用いること、薄い無孔質の樹脂層と微多孔化した樹脂層とを併用すること、などが考案されている。ここで、微多孔化させる方法として、脱酸素成分である鉄粉や難水溶性フィラーを添加した樹脂を延伸する。これらの例として、特開平2−72851、特開平5−162251、特開平5−318675、特開平9−234811などがある。
【0003】
以上のように、脱酸素機能を持つフィルムの構成やその酸素吸収の高速化については多くの提案があったが、それらで用いられている脱酸素成分は主に鉄粉などの金属または金属化合物であり、その酸化には水分が必要で、脱酸素の対象となる系に水分が少ない場合(以下、乾燥系と呼ぶ)には、脱酸素が生じないか、または脱酸素の速度が極めて低かった。すなわち、乾燥状態でも使用可能で、かつ樹脂に練り込むことも可能な具体的な脱酸素成分は見出されていなかった。
また、より積極的な脱酸素機能の実現以外に、包装材料のバリヤ性を実質的に向上させて外部からの酸素透過を減らすことも考案されている。具体的には、金属触媒を少量加えた種々の樹脂からなる樹脂層を用いる方法であり、さらにその樹脂層を他の樹脂層で覆うこともできる。これらの例として、特表平2−500846、特開平3−269044、特開平5−97163、特開平5−115776、特開平5−305973、特開平6−48474などがある。
以上のように、単層または、多層のうちの一部の樹脂層がその層全体で酸素吸収を行う包装材料についても多くの提案がある。しかし、この場合には、酸素吸収の進行につれてその吸収層全体が酸化、劣化することになり、包装材料としての強度が低下するという問題があった。
【0004】
ここまでに述べた脱酸素性の包装材料とは別に、本発明者らは、高湿度の系だけでなく乾燥系でも使用可能で、その全てが固体で扱い易い、粉状または粒状の脱酸素成分を先に提案した(特願平9−174348)。この脱酸素成分は、炭素−炭素不飽和結合を有する有機化合物に適度な架橋構造を導入したものであり、粉状または粒状としてその表面積を大きくすることで、同時に優れた脱酸素性能を得た。
以上のように、新規な脱酸素成分を得ることはできたが、粉または粒そのものの状態では食品等の各種物品に用いることはできず、実際に直接使用できる脱酸素フィルムや脱酸素シート等の形態にする必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、前記の問題点を解決して、脱酸素性能に優れ、乾燥系を含めた広い湿度範囲において使用可能で、酸素吸収後もその強度を保つ、脱酸素性の単層体または多層体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、先に提案した乾燥系で使用可能な脱酸素成分を樹脂に練り込み分散させて脱酸素性樹脂組成物とし、これを用いて脱酸素層とすることにより、乾燥系でも使用可能で、酸素吸収後もその強度を保つ、脱酸素性の単層体または多層体が得られることを見出して、本発明を完成した。
【0007】
本発明は、架橋高分子1g 当たり0.001〜0.025mol の炭素−炭素不飽和結合と0.0001〜0.02mol の架橋点とを含有する、ジエンの重合体又はジエンと他の不飽和化合物との共重合体を部分架橋させた架橋高分子からなる平均粒径が0.01〜5mmの粉状又は粒状の脱酸素成分を、熱可塑性樹脂中に分散させてなる脱酸素性樹脂組成物に関する。
また本発明は、上記の脱酸素性樹脂組成物からなるシート状又はフィルム状の脱酸素性単層体に関する。
また本発明は、上記の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層の、一方の側に酸素透過性が高い酸素透過層が積層され、他方の側に酸素透過性が低いバリヤ層が積層されてなるシート状又はフィルム状の脱酸素性多層体に関する。
また本発明は、上記の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層の両側のそれぞれに、酸素透過性が高い酸素透過層が積層されてなるシート状又はフィルム状の脱酸素性多層体に関する。
また本発明は、脱酸素成分を10〜60重量%含有した脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層を、一軸又は二軸方向に面積換算で2〜20倍に延伸して、連続微多孔化した脱酸素層を形成することを特徴とする脱酸素性多層体の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明における架橋高分子とは、分子内に炭素−炭素不飽和結合及び架橋点を有する高分子化合物のことである。
本発明における架橋とは、共有結合からなる架橋を言う。この場合、種々の共有結合を利用できるが、架橋高分子に耐熱性を与えるためには、C−C、C−O、C−Nなどの高い結合エネルギーを持つ結合による架橋構造が望ましい。このような架橋構造の導入により、分子が巨大化し不溶、不融となるため、扱い易い脱酸素成分になって、その応用範囲が広がる。また、担体などが不要となるため、単位重量当たりの酸素吸収量が増加する。
【0009】
本発明における架橋高分子の製造には、高分子化学において知られている各種の方法を用いることができる。例えば、比較的分子量が小さい単独種または複数種のモノマー(官能基数が3以上のものを一部含み、全体の平均官能基数は2よりも大きい)を直接重合して架橋高分子を得てもよいし、比較的分子量が大きなオリゴマーやポリマーを後から架橋して架橋高分子を得てもよい。これらのうち、重合熱の発生が少なく大量生産向きの後者の方法が適当である。
後から架橋を行う方法としては、通常の物理的または化学的な手段を用いることが可能である。物理的な架橋方法には、単純な高温加熱、電磁波(紫外線、γ線、マイクロ波など)、粒子線(電子線など)、超音波などの照射による方法があり、化学的な架橋方法には、開始剤や架橋剤として知られる各種のラジカル発生剤を用いた反応による方法がある。これらのうちでは、ラジカル発生剤として有機過酸化物を用いた架橋反応による方法が最も簡便である。また、ラジカル発生剤由来の低分子化合物の架橋高分子中への残留を防ぐことまで考慮するならば、電子線照射や酸素存在下での放電などで架橋を行えばよい。
化学的な架橋を用いた具体的な粉状または粒状の架橋高分子の製造方法は以下となる。すなわち、まず、架橋前の有機化合物(被架橋物)とラジカル発生剤との混合物に対して、塊状態での架橋、溶液状態での架橋、懸濁状態や乳化状態での架橋などのいずれかを行う。その後、粉状または粒状の固体とするために、塊状態での架橋であれば粉砕、溶液状態での架橋であれば乾燥と粉砕、懸濁状態や乳化状態での架橋であれば液相の分離と乾燥を行う。これらのうちの各単位操作については、化学工学的に知られている多くの手法と装置が使用可能である。
【0010】
本発明における架橋高分子は、平均粒径が0.01〜5mmの粉状または粒状であり、望ましい粒径の範囲は、0.03〜0.5mmである。粒径が大き過ぎると酸素吸収速度が低くなり過ぎ、粒径が小さ過ぎると粉塵爆発などの危険性が生じる。
本発明においては、脱酸素成分として平均粒径が0.01〜5mmの粉状または粒状の架橋高分子を用いる。
【0011】
本発明における架橋高分子中の架橋の程度は、粉または粒を得ることが容易であり、同時に適当な耐熱性や酸素吸収性能が得られるような範囲で設定される必要がある。このような適当な架橋の程度は被架橋物の分子構造や分子量によっても変化するが、架橋高分子1g 当たり0.0001〜0.02mol の架橋点を含む。その結果、たとえば塊状態での架橋の後に粉砕する場合には、適度な架橋により架橋高分子の可塑性が低下し、脆くなって粉砕が容易になる。
【0012】
架橋による物性の変化として、本発明における架橋高分子は、25℃における曲げ弾性率が0.1MPa 以上であることが好ましく、1MPa 以上がより好ましく、10MPa 以上が更に好ましい。また、本発明における架橋高分子は、25℃における曲げ強度(破壊強度)が少なくとも100MPa 以下であることが好ましく、10MPa 以下がより好ましい。また、本発明における架橋高分子は、25℃においてトルエンに1日浸漬した後の線膨張(一方向での増加分)が50%以下であることが好ましい。
【0013】
耐熱性と架橋の程度との関係では、本発明のように樹脂に練り込んで各種の形態で用いる場合には150℃以上まで、望ましくは200℃以上まで、流動または相互に付着しないように架橋する。これにより、各使用形態において脱酸素成分を固体状態に保たせることができ、鉄粉の場合と同じように各種の脱酸素性単層体や多層体に用いることができる。
【0014】
酸素吸収性能と架橋の程度との関係では、炭素−炭素不飽和結合を含む有機化合物を被架橋物に用いれば、主に同結合(正確には同結合の炭素とそれに隣接する炭素)が架橋に関与するが、同結合は酸素との反応にも必要であるため、同結合を適度に残す必要がある。具体的には、1分子中に複数の炭素−炭素不飽和結合を含む有機化合物を用い、同結合の一部のみを用いて架橋して、架橋後も1g 当たり0.001〜0.025mol の炭素−炭素不飽和結合を残す。
【0015】
本発明の脱酸素成分としては、架橋高分子に通常の有機化合物の自動酸化において知られている各種の金属または金属化合物を触媒として添加し、脱酸素成分の酸化反応を未添加の場合よりも促進させることが好ましい。ただし、粒径を小さくすることでも反応性が高まるため、十分に小さくすれば、この触媒を添加せずに適度な酸化速度を得ることも可能である。また、一般に、粒径が小さいほど触媒は少なくてよい。さらに、被架橋物として各種の重合体を用いる場合には、残留している微量の重合触媒のみで、有効な酸化触媒となる可能性もある。
触媒として用いる金属または金属化合物中の金属種としては、特に限定されないが、その電子状態が触媒向けであることからも特に遷移金属が望ましい。この金属種のうち、特に高活性の触媒作用を示すものとしてコバルトが好ましく、また、比較的安全なものとして鉄やマンガンが好ましい。
触媒は、架橋前に被架橋物と、特に化学的架橋では被架橋物およびラジカル発生剤と、混合される。これにより、触媒が均一に分散または溶解され、架橋後も均一に含まれることになる。ここで、触媒がさらに均一に分散または溶解できるように、被架橋物である有機化合物に対する溶解性の高い触媒を用いることが望ましい。具体的には金属の脂肪酸塩などである。その場合、脂肪酸部分に炭素−炭素不飽和結合を含んでいれば、架橋高分子中に組み込むことも可能となる。
脱酸素成分中の触媒は架橋構造中に取り込まれるため、脱酸素成分から触媒が漏れ出すことが少ない。その結果、この脱酸素成分をマトリックス成分となる熱可塑性樹脂に練り込んで使用する場合にも、触媒が脱酸素成分から漏れ出し難いために、マトリックス成分の酸化による劣化が最小限に抑えられる。
本発明の脱酸素成分では、同じく自動酸化において知られているように、光(主に紫外領域)の照射によっても酸化反応が促進される。しかし、粉または粒が小さいことにより、さらに触媒を添加する場合にはその触媒の作用もあることにより、光の照射は必須ではない。
【0016】
本発明の脱酸素成分では、特に触媒の量が少ない場合、酸素雰囲気に放置した後の、初期の酸素吸収速度が遅く、誘導期間が生じる。これは、本発明の脱酸素性単層体や多層体の形態を製造する時間に余裕ができるため、望ましい面もある。しかし、その誘導期間が長過ぎる場合には、脱酸素体として使用を開始してから短時間で酸素吸収を開始するように、例えば、予め誘導期間程度の間、酸素雰囲気で放置しておくなどの処理を行ってもよい。
【0017】
被架橋物としては、炭素−炭素不飽和結合を含む化合物が用いられる。単位重量当たりに含まれる炭素−炭素不飽和結合が多い化合物として、ジエン化合物の重合体(オリゴマー、ポリマーやコポリマー)が好ましく、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレンなどが挙げられる。
なお、ジエン化合物の重合体では、酸化防止剤が添加されていることが多い。このような酸化防止剤は、架橋して脱酸素体とした後における脱酸素を妨げるため、含まれていないことが望ましいが、少量であればあまり問題にはならず、また、架橋反応時に不活性化させることもできる。
【0018】
本発明による脱酸素成分では、架橋高分子そのものは低極性のために帯電し易く、特に微粉とした場合に周囲への付着が著しくなり、取扱いが困難となる。そこで、この帯電を防止するために、比較的高極性の化合物を加えることが望ましい。このような化合物は一般に帯電防止剤として知られており、特に食品添加物としても認められているものが、安全性の面から望ましい。さらに、本発明による脱酸素成分ではこのような化合物を架橋前から加えて、架橋構造中に取り込んでおくことが望ましい。
【0019】
本発明による脱酸素成分の誤食などに対する安全性は極めて高い。これは、架橋物であることにより、粉または粒の全体としての溶解性が極めて低く、また、個々の粉または粒からの、酸化で生じた低分子化合物や触媒の金属などの溶出も極めて少ないためである。
【0020】
一般に、有機化合物を主成分とする脱酸素成分では、酸化反応に伴って臭気のもとになる低分子化合物が生成する。しかし、本発明における架橋高分子は、内部の結合が密なために低分子化合物の生成が少なく、さらに粉または粒の外への低分子化合物の放出(揮散や溶出)も少ない。また、架橋構造により酸化反応時の体積増加が制限されるため、酸化反応が進み過ぎず、低分子化合物の生成が少なくなる。
さらなる臭気の改善として、まず、被酸化物の分子構造からの改善がある。これは、酸化反応で共有結合が切断されても、低分子化合物として脱離されない構造とすることに相当する。具体的には、例えばジエン化合物のオリゴマーやポリマーでは、側鎖が少ない1,2結合の比率が低い品種の利用、また、ポリイソプレンよりもポリブタジエンの利用が推奨される。また、酸素吸収性能は低くなるが、炭素−炭素不飽和結合が疎に含まれているジエンとオレフィンなどとの共重合体、ジエン化合物のオリゴマーやポリマーの部分水素添加物などの使用も有効である。また、化学的な架橋では、ラジカル発生剤由来の低分子化合物の存在があり、これについてもラジカル開裂後の分子ができるだけ大きなものを選ぶか、同じくできるだけ小さなものを選んで架橋後に除去する、などにより、臭気の発生を低減する。他方、酸化後において発生を避けられない臭気の除去方法としては、脱酸素成分と共に活性炭などの吸着成分を用いてもよい。
【0021】
本発明では、上記の架橋高分子からなる脱酸素成分を熱可塑性樹脂に練り込み分散させて脱酸素性樹脂組成物とし、これを用いて脱酸素機能のある単層体または多層体とする。尚、脱酸素性樹脂組成物を調製する際に、脱酸素成分と共に他の成分、具体的には、吸着成分、乾燥成分、抗菌成分のうち一種以上を同時に練り込むことも可能である。
脱酸素性樹脂組成物に用いる熱可塑性樹脂には、通常知られている多くのものが使用可能であり、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどの各種オレフィン類の単独重合体および共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物などが挙げられ、また、これらの変性物、グラフト体、混合物などでもよい。
【0022】
本発明のシート状又はフィルム状の脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体を得る際には、脱酸素成分として用いる架橋高分子の粒径は、最大粒径が脱酸素層の厚さ未満程度であれば特に粒度分布に制限はないが、酸化速度の点、および他の層を傷つけない(貫通などのない)点ではより細かいものが望ましい。ただし、細か過ぎる場合には粉塵爆発などの危険性から取扱いに慎重さが要求され、また、一般に高価となることから、結局、平均粒径として10〜100μm が好ましく、30〜50μm がより好ましい。
脱酸素成分である架橋高分子の脱酸素層中における体積分率は、有意な脱酸素性能を与え、脱酸素層の強度を保つとの要請から、0.01〜0.60が望ましい。この体積分率が高いほど、脱酸素性能は向上するが、層の強度は一般に低下する。
脱酸素層の厚さは、要求される酸素の総吸収量によりほぼ決定される。すなわち、対象とする雰囲気中の酸素を全て吸収できる最低量の脱酸素成分を含む厚さが最低の厚さとなる。通常は、内容物の長期保存時の若干の酸素流入をも考慮して、この最低量の脱酸素成分の2〜3倍を用いるため、厚さもこの最低の場合の2〜3倍が基本となる。通常は、20〜1000μm が好ましく、50〜200μm がより好ましい。
【0023】
架橋高分子を熱可塑性樹脂に練り込んで、一体の混合物である脱酸素層とすると、そのままでは熱可塑性樹脂の遮蔽により架橋高分子の酸素吸収速度が低下する。そこで、脱酸素層を連続微多孔化させることが望ましい(以下では、これを多孔質脱酸素層と呼ぶ)。この連続微多孔化の方法として、特に後述の延伸が有用である。また、他の方法として発泡なども可能である。
【0024】
本発明では、脱酸素層の保護、脱酸素成分による汚染の防止、外部からの酸素透過の防止などの目的で、脱酸素層の少なくとも一方の面に、他の層をさらに積層させることが可能である。すなわち、脱酸素成分による汚染のほぼ完全な防止と高い脱酸素速度を両立させるならば、無孔質の酸素透過性の高い樹脂からなる酸素透過層(以下では、これを無孔質層と呼ぶ)が必要であり、その層の酸素透過率は1×10-11 〜6×10-9 [cm3 /cm2 /s /Pa]が望ましい。また、脱酸素成分による汚染を適度に防止しつつ、さらに高い酸素透過性が要求されるならば、連続微多孔質の酸素透過層が望ましい(以下では、これを多孔質層と呼ぶ)。この多孔質層は、無孔質層が薄い場合にはその保護にも使用可能である。また、外部からの酸素透過を防止するならば、各種材料からなるバリヤ層が必要であり、その層の酸素透過率は1×10-12 [cm3 /cm2 /s /Pa]以下が望ましい。そして、これらの層を脱酸素層または多孔質脱酸素層と組み合わせるために、接着剤層、接着性樹脂層(それを溶融させるなら融着層)、あるいは保護層などの他の樹脂層を追加してもよい。これらの多層化のためには、通常知られている、共押出、押出コーティング、押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネートなどの手法を単独または組み合わせて用いることができる。
【0025】
酸素透過性の高い樹脂の例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテンなどのオレフィン類の単独重合体および共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体とその水素添加物、各種シリコン樹脂、などがあり、さらにこれらの変成物、グラフト体、混合物などであってもよい。
無孔質層に用いる樹脂は、これらの樹脂の中から、脱酸素性多層体に要求される脱酸素性能に対応して酸素透過係数が適当なものを選択する。要求性能が低い場合には特に制限がないが、より広い要求範囲に対応するためには酸素透過係数が1×10-13 [cm3 ・cm/cm2 /sec /Pa]以上、さらにできれば1×10-12 [cm3 ・cm/cm2 /sec /Pa]以上であることが望ましい。
無孔質層の厚さは、酸素透過率で表される脱酸素対象物の要求性能と樹脂の酸素透過係数とにより決定される。ただし、ピンホールなどが発生しないように安定して製造可能で、かつ、通常の使用において内容物との接触などでもピンホールや破れが生じないことが確実であれば、できるだけ薄いことが望ましく、一般的には厚さ5〜30μm が望ましく、5〜20μm がより望ましい。また、無孔質層を複数の層で構成してもよい。
【0026】
バリヤ層を構成する材料としては、バリヤ性の樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル類、ナイロン6、ナイロンMXDなどのポリアミド類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどの塩素含有樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体などや、それらのコート品、金属では、アルミニウムなどの箔または樹脂への蒸着品、無機化合物では、ケイ素酸化物などの樹脂への蒸着品などが用いられる。
バリヤ層の厚さは、要求されるバリヤ性と強度、バリヤ層の材質によって決定される。
バリヤ層を後から加える場合には、同層を熱ラミネート、ドライラミネート、押し出しコーティングなどの通常の方法により接着または融着して、最終的な多層構造とすることができる。ここで、多孔質脱酸素層を用いる場合には、この多孔質脱酸素層に直接に接着または融着を行うと、接着剤または溶融した接着性樹脂が連続孔に侵入し、酸素透過性が低下する危険性があり、また、脱酸素成分の凹凸で接着が困難となる危険性がある。これらの問題点を回避する方法として、連続孔を保護し表面を平滑化するための樹脂層(以下では、これを緩衝層と呼ぶ)を、脱酸素層のバリヤ層を積層したい側に、予め積層しておき、それを含めて延伸後、低酸素透過性のバリヤ層を接着または融着することが、より望ましい。
【0027】
延伸による連続微多孔化で、多孔質脱酸素層または、多孔質脱酸素層と多孔質層とを作る場合には、比較的高い体積分率で架橋高分子の粉または粒や、他のフィラーを、それぞれ熱可塑性樹脂に練り込む必要がある。その体積分率は概ね0.10〜0.60、より好ましくは0.20〜0.40であり、体積分率がより低い場合には延伸後の混合物が連続微多孔化せず、より高い場合には延伸後の混合物が脆くなる。ここで、架橋高分子の密度と熱可塑性樹脂の密度とが同じ程度の値を持つことから、架橋高分子の添加比率は、概ね10〜60wt%、より好ましくは20〜40wt%となる。また、架橋高分子と他の成分とを同時に練り込む場合には、それらを合わせた体積分率がこの範囲内であればよい。
多孔質脱酸素層と多孔質層とに用いる樹脂については、連続微多孔化すれば酸素透過性が向上するため、樹脂の酸素透過性については特に制限がない。
多孔質層の連続微多孔化に用いるフィラーとしては、水などに不溶または難溶で、不融の無機物または有機物であれば特に制限はないが、内容物が酸性などの液体の場合にも使用できる脱酸素フィルムとするならば、さらにそれらの条件下でも溶出しないことが必要となる。また、燃焼の危険性が低い酸化物などのフィラーが望ましい。
フィラーの粒径としては、樹脂への添加などを含めて扱い易い範囲であれば特に制限はないが、他の層を傷つけず、さらに多孔質層として無孔質層を保護する点から、無孔質層の厚さ未満で、より細かい方が望ましく、最大粒径で10μm 以下が好ましい。
多孔質層の厚さは、外部の力からの無孔質層の保護や補強、あるいは脱酸素成分粒子による無孔質層の損傷の防止ができる程度であることが必要で、架橋高分子の最大粒径程度以上が望ましい。他方、必要以上に厚いと、脱酸素フィルム全体が厚くなりすぎる。よって、この層の厚さの最大値は、架橋高分子粒子の最大粒径の10倍程度となる。
延伸においては、通常知られているように、1軸延伸、2軸同時延伸、2軸逐次延伸のいずれの手法を用いてもよい。このとき、延伸温度は用いている樹脂の溶融温度(樹脂を複数種使用していれば最も低いものとする)付近以下、延伸倍率は面積換算で2〜20倍、とするのが望ましい。
【0028】
本発明の脱酸素成分は、酸素吸収後の廃棄時に、焼却しても問題が少なく、さらに生物的な分解も期待できる。そこで、脱酸素体に用いる熱可塑性樹脂やバリヤ性の材料にも、生分解性樹脂などの環境調和型の各種素材を用いれば、脱酸素体全体での廃棄に関しても、問題が少なくなる。
本発明の脱酸素成分は、金属状態の金属元素を含まない。そのため、電磁波との相互作用が弱く、金属探知機を動作させることがなく、また、電子レンジ中でもほとんど加熱されない。これらの性質は脱酸素層の中でも保持され、また、脱酸素層は透明または半透明に保たれる。
【0029】
各層を構成する材料としては、前述の材料以外に種々の物質を加えることが可能である。この添加物としては、例えば、着色または隠蔽のための顔料や染料、酸化防止や分解防止などのための安定化成分、帯電防止成分、吸湿のための乾燥成分、脱臭のための吸着成分、抗菌成分、可塑化成分、難燃化成分などが挙げられる。さらに、架橋高分子と共に他の脱酸素成分を用いてもよい。これらを適宜、望ましい各層に加える。また、同様に、印刷層や易開封層、易剥離層などを追加することが可能である。
【0030】
本発明の脱酸素性多層体は、脱酸素包装材料として包装袋や包装容器の一部または全部に種々の形で使用される。具体的な形態としては、脱酸素性の袋、内袋、中仕切り、容器本体、トップシールフィルム(蓋)、ボトルなどである。また、特に無孔質層を含む層構成であれば、内容物は、固体だけでなく、液体、または固体と液体の両方にも適用できる。
【0031】
本発明の脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体の具体的な層構成は、脱酸素成分として架橋高分子を含む脱酸素層;A1、脱酸素成分として架橋高分子を含む多孔質脱酸素層;A2、無孔質層;B、多孔質層;C、バリヤ層;D、接着層(接着剤または接着性樹脂);E、緩衝層;F、と表すと、バリヤ層を含まない構成(両側吸収型)として、A1(単層)、A2(単層)、B/A1/B、B/A2/B、C/A2/C、B/C/A2/C/Bなど、また、片側にバリヤ層がある構成(片側吸収型)として、B/A1/D、B/A1/E/D、B/A2/D、B/A2/E/D、B/A2/F/E/D、B/C/A2/E/D、B/C/A2/F/E/Dなどがある。
両側吸収型の脱酸素多層体として、図1;無孔質層/脱酸素層/無孔質層、図2;無孔質層/多孔質脱酸素層/無孔質層、図3;無孔質層/多孔質層/多孔質脱酸素層/多孔質層/無孔質層、を示す。片側吸収型の脱酸素体として、図4;無孔質層/脱酸素層/接着層/バリヤ層、図5;無孔質層/多孔質脱酸素層/接着層/バリヤ層、図6;無孔質層/多孔質層/多孔質脱酸素層/緩衝層/接着層/バリヤ層、を示す。図7と図8は、両側吸収型の脱酸素フィルムをそれぞれ包装用の内袋、または中仕切りに使用した例である。なお、図8の例では、脱酸素フィルムに部分的な成形と端面の熱融着を加えている。図9と図10は、片側吸収型の脱酸素フィルムをそれぞれ包装用容器のトップシールフィルム、または、包装袋の一部に使用した例である。
【0032】
【実施例】
以下、実施例と比較例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
脱酸素成分である架橋高分子の作製に使用した化合物は以下である。
被架橋物、ブタジエンオリゴマー:日本ゼオン(株)製、商品名Polyoil 130 、平均分子量3000、1,4構造99%、20℃における粘度3000cPの液体、炭素−炭素二重結合の数はモノマーの分子量54より、1/54=0.0185mol/g と算定される。
有機過酸化物、α, α'-bis(tert-butylperoxy)diisopropylbenzene :日本油脂(株)製、商品名パーブチルP、分子量338、1mol 当たりの有効官能基数は2mol 、純度95%。
触媒、ステアリン酸鉄(III) :三津和化学薬品(株)製、純度95%以上。
帯電防止成分、ステアリン酸モノグリセリンエステル:日本油脂(株)製、商品名モノグリM、純度95%以上。
【0033】
架橋高分子の各種の性質の測定方法は以下である。
架橋高分子の曲げ弾性率と曲げ強度は、粉砕前の架橋物から試験片(例えば4cm×1cm×2mm程度)を切り出し、25℃にて3点曲げ試験を行って測定した。このとき、曲げ弾性率Eは比較的少ない変形を与えた場合において、式;E=FL3 /4WT3 Dを用いて、また、曲げ強度Sは破壊するまで変形を与えた場合において、式;S=3FL/2WT2 を用いて、それぞれ計算した。ここで、F;荷重、L;スパン、W;試験片の幅、T;試験片の厚さ、D;変位(たわみ)、である(JIS K 7203(1995))。なお、変形速度を約10cm/sとした。
架橋高分子の膨潤による線膨張(増加分の比率)は、粉砕前の架橋物から試験片(長さ5cm程度、厚さ2mm以下)を切り出し、25℃にてトルエン(特級品、試験片の100倍程度の体積を使用)中に1日間浸漬し、浸漬前後の長さ方向の寸法より、寸法の変化分を浸漬前の寸法で除して、求めた。なお、後述の試料はいずれも6時間以内に膨潤平衡に達していた。
架橋高分子の密度は、架橋物を沈める液体にエタノール(特級品)を用いて、比重瓶にて25℃で測定した。
架橋高分子の架橋度は、膨潤による体積変化により、架橋鎖(2つの架橋点で挟まれた部分鎖)の密度νを、式;ν=−(v+μv2 +log e (1−v))/(ρV0 (v1/3 −v/2))+2/Mで計算することで推定した(古川淳二, 山下晋三, 日本ゴム協会誌, 30,955(1957))。ここで、v;膨潤後の体積に対する膨潤前の体積の分率、膨潤による線膨張(増加分の比率、前述のように実測)をαとして、v=1/(1+α)3 となる、μ;高分子(ここでは架橋物)と溶媒との相互作用パラメータ(後述の個々の対象系に対する値は、例えば、R.G.Beaman, J.Polymer Sci., 9,470(1952) )、ρ;架橋物の密度(前述のように実測)、V0 ;溶媒の分子容(25℃のトルエンでは107cm3/mol )、M;架橋前の被架橋物の分子量、である。これから得られるνより、架橋点の数はνの1/2と計算される。
架橋物中の炭素−炭素二重結合の数は、架橋反応によりその一部が使用される(ただし、一般に架橋反応分の全てが同結合に由来するものではない)ことから、架橋前の同結合の数から架橋点の数を減じた数になると仮定して算出した。
架橋高分子の耐熱性は、所定の温度に加熱した金属板の上に粉または粒を約30秒間(長時間では変形や酸化による変色などがある)置き、その流動や変形または相互の付着を観察して判断した。
【0034】
脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体とするために用いた化合物と材料は以下である。
熱可塑性樹脂、ポリプロピレン:日本ポリケム(株)製、商品名NOVATEC PP FG3D 、商品分類上はポリプロピレンであるが、実際はエチレンを若干含む共重合体、メルトフローレート7.0g/10min (230℃)、25℃における酸素透過係数1.3×10-13 [cm3 ・cm/cm2 /sec /Pa]。
熱可塑性樹脂、ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン):三井化学(株)製、商品名EVOLUE SP2040 、商品分類上はポリエチレンであるが、実際は他のα−オレフィンを若干含む共重合体、メルトフローレート4.0g/10min (190℃)、融点116℃、25℃における酸素透過係数3.0×10-13 [cm3 ・cm/cm2 /sec /Pa]。
熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン共重合体:三井化学(株)製、商品名TAFMER P-0680 、エチレン成分のmol 分率は約0.75、メルトフローレート0.4g/10min (190℃)、25℃における酸素透過係数1.4×10-12 [cm3 ・cm/cm2 /sec /Pa]。
熱可塑性樹脂、スチレンブタジエン共重合体の水素添加物:日本合成ゴム(株)製、商品名DYNARON 1320P 、スチレン含有率10%、メルトフローレート3.5g/10min (230℃)、25℃における酸素透過係数は約1×10-12 [cm3 ・cm/cm2 /sec /Pa]。
接着性樹脂、接着性ポリオレフィン:三井化学(株)製、商品名ADMER NF300 、メルトフローレート1.3g/10min (190℃)。
バリヤ性樹脂、ナイロンMXD:三菱ガス化学(株)製、商品名MX-NYLON 6007 、メルトフローレート2.0g/10min (275℃)、融点240℃、25℃(相対湿度0%)における酸素透過係数2.7×10-14 [cm3 ・cm/cm2 /sec /Pa]。
バリヤフィルム:(株)エムエーパッケージング製、アルミニウム(7μm )とポリエチレンテレフタレート(25μm )の積層品、アルミニウム側をさらに他の層と積層する。
接着剤:東洋モートン(株)製、ドライラミネート用、商品名AD-585とCAT-10。
吸着剤、活性炭:武田薬品工業(株)製、商品名は白鷺Fac-10、平均粒径10μm 。
無機フィラー、合成シリカ:龍森(株)製、商品名CRYSTALITE VX-S2、平均粒径5μm 。
【0035】
脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体の酸素吸収性能の測定は、脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体と所定量の空気を、ポリ塩化ビニリデンをコートしたナイロン層を含む透明な酸素バリヤ性の袋に入れて、または、脱酸素性多層体をヒートシールして作製した袋に所定量の空気を入れて、25℃における酸素濃度の経時変化をガスクロマトグラフで追跡することで行った。そして、酸素濃度が0.1体積%に達するまでの時間を脱酸素時間とした。ここで、酸素濃度の経時変化は単調減少となるため、酸素吸収性能はこの脱酸素時間で表現すれば十分である。
臭気は、袋内部の気体を嗅ぐことで、感覚的に判断した。
【0036】
実施例1
ブタジエンオリゴマー(Polyoil 130 );93重量部、パーブチルP;7重量部、ステアリン酸鉄(III) ;1重量部、ステアリン酸モノグリセリンエステル;1重量部を約60℃で均一に混合した後、窒素置換した容器中で180℃、30分加熱して、架橋高分子を得た。これを室温まで冷却してから取り出し、一部を測定用の試料として、他を回転刃型の粉砕機で粉砕して最大粒径300μm 、平均粒径180μm の粉状とした。架橋高分子が脆いため、粉砕は極めて容易であった。
各種測定より、架橋高分子の曲げ弾性率は2.8MPa 、曲げ強度は1.0MPa 、比重は0.95g/cm3 、トルエン浸漬時の膨潤による線膨張は32%であった。μ=0.37を用いてν=0.0019mol/g 、架橋点の数は0.0010mol/g と算出された。また、架橋物の炭素−炭素二重結合の数は、0.0185×(93/102)−0.0010=0.0159mol/g と算出された。また、耐熱性は150℃以上であった。
この粉状の架橋高分子35wt%、活性炭2wt%、ポリプロピレン(FG3D)63wt%を混合、押出して、厚さ2mmのシート状単層体とした。この単層体を120℃に加熱し、1軸方向に約6倍に延伸して、多孔質脱酸素層のみからなる厚さ0・7mmのシート状脱酸素性単層体を得た。延伸前後の寸法変化から求めた、延伸微多孔化後の脱酸素性単層体の空隙率は0.45であった。
この脱酸素性単層体の小片5cm×10cm(50cm2 、約3g )を、300cm3 の空気と共に酸素バリヤ性の袋に入れて、25℃で放置した。脱酸素時間は3.1日であった。また、臭気は殆ど感じられなかった。
【0037】
実施例2
実施例1と同じ粉状の架橋高分子から、粒径50μm 未満のものを篩別した。脱酸素層として、この粒径50μm 未満の架橋高分子40wt%、活性炭2wt%、ポリエチレン58wt%の混合物、無孔質層としてポリエチレン50wt%、エチレン−プロピレン共重合体50wt%の混合物を用い、共押出にて、無孔質層(50μm )/脱酸素層(300μm )/無孔質層(50μm )の構成と各厚さを持つ半透明のフィルム状の脱酸素性多層体(両側吸収型)を得た。
この脱酸素性多層体の小片10cm×20cm・5枚(1000cm2 、複数の小片同士が密着しないように紙のスペーサーを間に配置)を、100cm3 の空気と共に酸素バリヤ性の袋に入れて、25℃で放置した。脱酸素時間は15日であった。また、臭気は殆ど感じられなかった。
【0038】
実施例3
脱酸素層(延伸後に多孔質脱酸素層となる)として粒径50μm 未満の架橋高分子35wt%、活性炭2wt%、ポリプロピレン63wt%の混合物、無孔質層としてポリプロピレン50wt%、スチレンブタジエン共重合体の水素添加物50wt%の混合物、フィラー含有層(延伸後に多孔質層となる)としてポリプロピレン50wt%、合成シリカ50wt%の混合物を用い、共押出にて、無孔質層(50μm )/フィラー含有層(150μm )/脱酸素層(300μm )/フィラー含有層(150μm )/無孔質層(50μm )の構成と各厚さを持つ5層品とした。さらに、この5層品を120℃に加熱し、1軸方向に約6倍に延伸して、多孔質脱酸素層と多孔質層を形成させ、また無孔質層を薄くして、無孔質層(約10μm )/多孔質層(約50μm )/多孔質脱酸素層(約100μm )/多孔質層(約50μm )/無孔質層(約10μm )の構成と各厚さを持つフィルム状の脱酸素性多層体(両側吸収型)を得た。
この多層体の小片10cm×20cm・5枚(1000cm2 、複数の小片同士が密着しないように紙のスペーサーを間に配置)を、500cm3 の空気と共に酸素バリヤ性の袋に入れて、25℃で放置した。脱酸素時間は5.2日であった。また、臭気は殆ど感じられなかった。
【0039】
実施例4
脱酸素層として、粒径50μm 未満の架橋高分子40wt%、活性炭2wt%、ポリエチレン58wt%の混合物、無孔質層としてポリエチレン50wt%、エチレン−プロピレン共重合体50wt%の混合物、接着層として接着性ポリオレフィン、バリヤ層としてナイロンMXDを用いて、無孔質層50μm /脱酸素層300μm /接着層10μm /バリヤ層50μm の構成と各厚さを持つフィルム状の脱酸素性多層体(片側吸収型)を得た。
この多層体から21cm×26cmの小片2枚を切り出し、無孔質層側を合わせて2枚の小片の周囲(幅5mm)をヒートシールして袋を作製し(実効面積は1000cm2 )、100cm3 の空気を入れて密封後、25℃で放置した。脱酸素時間は18日であった。また、臭気は殆ど感じられなかった。
【0040】
実施例5
脱酸素層(延伸後に多孔質脱酸素層となる)、無孔質層、フィラー含有層(延伸後に多孔質層となる)に実施例3と同じ組成を用い、また緩衝層にポリプロピレンを用いて、共押出にて、無孔質層50μm /フィラー含有層150μm /脱酸素層300μm /緩衝層40μm の構成と各厚さを持つ4層品とした。そして、この5層品を120℃に加熱し、1軸方向に約6倍に延伸して、多孔質脱酸素層と多孔質層とを形成させ、また無孔質層と緩衝層とを薄くして、無孔質層約10μm /多孔質層約50μm /脱酸素層約100μm /緩衝層約8μm の構成と各厚さを持つ4層品とした。さらに、この4層品の緩衝層側の表面を3.6kJ/m2 でコロナ放電処理してから、バリヤ層としてバリヤフィルムを接着剤で積層して、無孔質層/多孔質層/多孔質脱酸素層/緩衝層/接着層/バリヤ層の構成のフィルム状の脱酸素性多層体(片側吸収型)を得た。
この多層体から21cm×26cmの小片2枚を切り出し、無孔質層側を合わせて2枚の小片の周囲(幅5mm)をヒートシールして袋を作製し(実効面積は1000cm2 )、500cm3 の空気を入れて密封後、25℃で放置した。脱酸素時間は6.1日であった。また、臭気は殆ど感じられなかった。
【0041】
比較例1
実施例1と同じ粉状の架橋高分子1g を、空気300cm3 と共に、酸素バリヤ性の袋に入れた。
当然のことながら、袋の内部は表面に粉が少し付着した状態となり、脱酸素の対象となる各種物品と共に用いることは困難であった。
【0042】
比較例2
平均粒径約50μm の鉄粉に、塩化カルシウム(鉄粉100重量部に対して2重量部)を水溶液で噴霧、乾燥させたものを脱酸素成分として、架橋高分子の替わりに添加比率70wt%で用いた以外は実施例1と同様にして脱酸素性単層体を作り、脱酸素時間を測定した。
この脱酸素成分は乾燥状態では機能しないため、15日後でも脱酸素していなかった。
【0043】
比較例3
実施例1と同じ架橋高分子を用いて、粉砕前の塊から、厚さ約300μm 、面積約5cm2 の小片を切り出し、空気中に放置した。酸化が進行するにつれて、この小片は脆くなっていった。
この例では架橋構造が含まれているため、比較的劣化が抑えられているが、一般に、金属触媒で酸化させ易くした樹脂では、強度低下が防止できない。
【0044】
【発明の効果】
本発明の脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体は、乾燥状態から高湿度状態までの広い湿度範囲において使用可能であり、酸素吸収速度が高いだけでなく、取扱いも容易である。この脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体は、各種容器、包装体の形態として、食品、医薬品、金属製品や電子製品などの、酸素の影響を受けて変質し易い各種物品の酸化を防止し長期に保存する目的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無孔質層/脱酸素層/無孔質層の内部構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図2】無孔質層/多孔質脱酸素層/無孔質層の内部構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図3】無孔質層/多孔質層/多孔質脱酸素層/多孔質層/無孔質層の内部構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図4】無孔質層/脱酸素層/接着層/バリヤ層の内部構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図5】無孔質層/多孔質脱酸素層/接着層/バリヤ層の内部構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図6】無孔質層/多孔質層/多孔質脱酸素層/緩衝層/接着層/バリヤ層の内部構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図7】両側吸収型の脱酸素性多層体を包装用の内袋に使用した例の断面図
【図8】両側吸収型の脱酸素性多層体を中仕切りに使用した例の断面図
【図9】片側吸収型の脱酸素性多層体を包装用容器のトップシールフィルムに使用した例の断面図
【図10】片側吸収型の脱酸素性多層体を包装袋の一部に使用した例の断面図
【符号の説明】
1 脱酸素層(脱酸素成分として架橋高分子を含む)
2 多孔質脱酸素層(脱酸素成分として架橋高分子を含む、連続微多孔質)
3 無孔質層(無孔質の酸素透過層)
4 多孔質層(連続微多孔質の酸素透過層)
5 接着層(接着剤、接着性樹脂など)
6 バリヤ層
7 緩衝層
10 フィルム状の脱酸素性多層体(両側吸収型)
20 フィルム状の脱酸素性多層体(片側吸収型)
30 内容物(固体、液体、固体と液体など)
40 バリヤ性のある容器本体
50 脱酸素機能のない一般のバリヤフィルムまたはバリヤ袋

Claims (15)

  1. 架橋高分子1g 当たり0.001〜0.025mol の炭素−炭素不飽和結合と0.0001〜0.02mol の架橋点とを含有する、ジエンの重合体又はジエンと他の不飽和化合物との共重合体を部分架橋させた架橋高分子からなる平均粒径が0.01〜5mmの粉状又は粒状の脱酸素成分を、熱可塑性樹脂中に分散させてなる脱酸素性樹脂組成物。
  2. 架橋高分子が、酸化反応の触媒となる金属または金属化合物と帯電を防止する化合物とのうち一つ以上を含有することを特徴とする請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物。
  3. 架橋高分子が、25℃における曲げ弾性率が0.1MPa 以上、曲げ強度が100MPa 以下、且つトルエンに1日浸漬して膨潤させた後の線膨張が50%以下であることを特徴とする請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物。
  4. 脱酸素性樹脂組成物が、吸着成分、乾燥成分、抗菌成分から選んだ一種以上を含むことを特徴とする請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物。
  5. 請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物からなるシート状又はフィルム状の脱酸素性単層体。
  6. 脱酸素性単層体が、連続微多孔質化されていることを特徴とする請求項5記載の脱酸素性単層体。
  7. 請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層の、一方の側に酸素透過性が高い酸素透過層が積層され、他方の側に酸素透過性が低いバリヤ層が積層されてなるシート状又はフィルム状の脱酸素性多層体。
  8. 請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層の両側のそれぞれに、酸素透過性が高い酸素透過層が積層されてなるシート状又はフィルム状の脱酸素性多層体。
  9. 脱酸素層が、連続微多孔質化されていることを特徴とする請求項7又は8記載の脱酸素性多層体。
  10. 酸素透過層が、無孔質の酸素透過層と連続微多孔質の酸素透過層のいずれか一方又は両方の層からなることを特徴とする請求項7又は8記載の脱酸素性多層体。
  11. 無孔質の酸素透過層の酸素透過率が、1×10-11 〜6×10-9[cm3 /cm2 /s /Pa]であることを特徴とする請求項10記載の脱酸素性多層体。
  12. バリヤ層の酸素透過率が、1×10-12 [cm3 /cm2 /s /Pa]以下であることを特徴とする請求項7記載の脱酸素性多層体。
  13. 請求項7記載の脱酸素性多層体が、容器壁面のすくなくとも一部に使用されてなる脱酸素性包装容器。
  14. 脱酸素成分を10〜60重量%含有した請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層を、一軸又は二軸方向に面積換算で2〜20倍に延伸して、連続微多孔化した脱酸素層を形成することを特徴とする請求項9記載の脱酸素性多層体の製造方法。
  15. 請求項14記載の連続微多孔化した脱酸素層を形成すると同時に、無機または有機フィラーを10〜60体積%含有した熱可塑性樹脂からなる樹脂複合層を、一軸又は二軸方向に面積換算で2〜20倍に延伸して、連続微多孔化した酸素透過性層を形成することを特徴とする請求項10記載の脱酸素性多層体の製造方法。
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