JPH11347399A - 脱酸素性単層体および多層体 - Google Patents

脱酸素性単層体および多層体

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JPH11347399A
JPH11347399A JP15285998A JP15285998A JPH11347399A JP H11347399 A JPH11347399 A JP H11347399A JP 15285998 A JP15285998 A JP 15285998A JP 15285998 A JP15285998 A JP 15285998A JP H11347399 A JPH11347399 A JP H11347399A
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和弘 大津
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紀之 木村
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 乾燥状態で使用可能な、優れた脱酸素性能を
有し取扱い易い、シート状又はフィルム状の脱酸素性単
層体および多層体を提供する。 【解決手段】 炭素−炭素不飽和結合を有する架橋高分
子からなる脱酸素成分を熱可塑性樹脂に練り込んで分散
させた脱酸素性樹脂組成物を用いて脱酸素性単層体およ
び多層体とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、脱酸素性能に優
れ、かつ乾燥状態から高湿度状態までの広い湿度範囲に
おいて使用可能なシート状またはフィルム状の脱酸素性
単層体および多層体に関する。本発明の脱酸素性単層体
および多層体は、食品、医薬品、金属製品や電子製品な
どの、酸素の影響を受けて変質し易い各種物品の酸化を
防止して長期に保存する目的を持つ、各種の脱酸素製品
を構成するために使用される。
【0002】
【従来の技術】食品、医薬品、金属製品や電子製品に代
表される、酸素の影響を受けて変質し易い各種物品の酸
化を防止し長期に保存する目的で、これらを収納した包
装容器や包装袋内の酸素除去を行う脱酸素剤が従来より
使用されている。この脱酸素剤として初期に開発され現
在も多く使用されている形態は、粉状または粒状の脱酸
素成分を小袋に詰めたものである。また、より取扱いが
容易で適用範囲が広く、誤食などの問題のない安全な脱
酸素体として、フィルムまたはシート(以下、まとめて
フィルムとする)の形状のものが考えられている。脱酸
素機能を持ちながらフィルムの形状とするためには、熱
可塑性樹脂をマトリックス成分に利用して粒状または粉
状の脱酸素成分と複合化し、脱酸素成分を固定する方法
が簡便である。さらに、この複合物の単層フィルムをそ
のまま用いると、内容物との接触による内容物の汚染が
生じるため、脱酸素層の両側を樹脂層で覆う多層構造が
考案されている。また、この両側の樹脂層の一方をバリ
ヤ性の材料として、その多層フィルムのみでバリヤ機能
と脱酸素機能とを両立させることができる。これらの例
として特公昭62−1824や特公昭63−2648な
どがある。さらに、脱酸素層の酸素透過性を高めるため
や、脱酸素層を覆うバリヤ層でない他方の樹脂層(また
はバリヤ層のない場合には両方の樹脂層)の酸素透過性
を高めるために、脱酸素層を微多孔化すること、脱酸素
層を覆う樹脂層を微多孔化すること、薄い無孔質の樹脂
層を用いること、薄い無孔質の樹脂層と微多孔化した樹
脂層とを併用すること、などが考案されている。ここ
で、微多孔化させる方法として、脱酸素成分である鉄粉
や難水溶性フィラーを添加した樹脂を延伸する。これら
の例として、特開平2−72851、特開平5−162
251、特開平5−318675、特開平9−2348
11などがある。
【0003】以上のように、脱酸素機能を持つフィルム
の構成やその酸素吸収の高速化については多くの提案が
あったが、それらで用いられている脱酸素成分は主に鉄
粉などの金属または金属化合物であり、その酸化には水
分が必要で、脱酸素の対象となる系に水分が少ない場合
(以下、乾燥系と呼ぶ)には、脱酸素が生じないか、ま
たは脱酸素の速度が極めて低かった。すなわち、乾燥状
態でも使用可能で、かつ樹脂に練り込むことも可能な具
体的な脱酸素成分は見出されていなかった。また、より
積極的な脱酸素機能の実現以外に、包装材料のバリヤ性
を実質的に向上させて外部からの酸素透過を減らすこと
も考案されている。具体的には、金属触媒を少量加えた
種々の樹脂からなる樹脂層を用いる方法であり、さらに
その樹脂層を他の樹脂層で覆うこともできる。これらの
例として、特表平2−500846、特開平3−269
044、特開平5−97163、特開平5−11577
6、特開平5−305973、特開平6−48474な
どがある。以上のように、単層または、多層のうちの一
部の樹脂層がその層全体で酸素吸収を行う包装材料につ
いても多くの提案がある。しかし、この場合には、酸素
吸収の進行につれてその吸収層全体が酸化、劣化するこ
とになり、包装材料としての強度が低下するという問題
があった。
【0004】ここまでに述べた脱酸素性の包装材料とは
別に、本発明者らは、高湿度の系だけでなく乾燥系でも
使用可能で、その全てが固体で扱い易い、粉状または粒
状の脱酸素成分を先に提案した(特願平9−17434
8)。この脱酸素成分は、炭素−炭素不飽和結合を有す
る有機化合物に適度な架橋構造を導入したものであり、
粉状または粒状としてその表面積を大きくすることで、
同時に優れた脱酸素性能を得た。以上のように、新規な
脱酸素成分を得ることはできたが、粉または粒そのもの
の状態では食品等の各種物品に用いることはできず、実
際に直接使用できる脱酸素フィルムや脱酸素シート等の
形態にする必要があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記
の問題点を解決して、脱酸素性能に優れ、乾燥系を含め
た広い湿度範囲において使用可能で、酸素吸収後もその
強度を保つ、脱酸素性の単層体または多層体を提供する
ことにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】発明者らは、鋭意検討を
重ねた結果、先に提案した乾燥系で使用可能な脱酸素成
分を樹脂に練り込み分散させて脱酸素性樹脂組成物と
し、これを用いて脱酸素層とすることにより、乾燥系で
も使用可能で、酸素吸収後もその強度を保つ、脱酸素性
の単層体または多層体が得られることを見出して、本発
明を完成した。
【0007】本発明は、架橋高分子1g 当たり0.00
1〜0.025mol の炭素−炭素不飽和結合と0.00
01〜0.02mol の架橋点とを含有する、ジエンの重
合体又はジエンと他の不飽和化合物との共重合体を部分
架橋させた架橋高分子からなる平均粒径が0.01〜5
mmの粉状又は粒状の脱酸素成分を、熱可塑性樹脂中に分
散させてなる脱酸素性樹脂組成物に関する。また本発明
は、上記の脱酸素性樹脂組成物からなるシート状又はフ
ィルム状の脱酸素性単層体に関する。また本発明は、上
記の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層の、一方の側
に酸素透過性が高い酸素透過層が積層され、他方の側に
酸素透過性が低いバリヤ層が積層されてなるシート状又
はフィルム状の脱酸素性多層体に関する。また本発明
は、上記の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層の両側
のそれぞれに、酸素透過性が高い酸素透過層が積層され
てなるシート状又はフィルム状の脱酸素性多層体に関す
る。また本発明は、脱酸素成分を10〜60重量%含有
した脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層を、一軸又は
二軸方向に面積換算で2〜20倍に延伸して、連続微多
孔化した脱酸素層を形成することを特徴とする脱酸素性
多層体の製造方法に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明における架橋高分子とは、
分子内に炭素−炭素不飽和結合及び架橋点を有する高分
子化合物のことである。本発明における架橋とは、共有
結合からなる架橋を言う。この場合、種々の共有結合を
利用できるが、架橋高分子に耐熱性を与えるためには、
C−C、C−O、C−Nなどの高い結合エネルギーを持
つ結合による架橋構造が望ましい。このような架橋構造
の導入により、分子が巨大化し不溶、不融となるため、
扱い易い脱酸素成分になって、その応用範囲が広がる。
また、担体などが不要となるため、単位重量当たりの酸
素吸収量が増加する。
【0009】本発明における架橋高分子の製造には、高
分子化学において知られている各種の方法を用いること
ができる。例えば、比較的分子量が小さい単独種または
複数種のモノマー(官能基数が3以上のものを一部含
み、全体の平均官能基数は2よりも大きい)を直接重合
して架橋高分子を得てもよいし、比較的分子量が大きな
オリゴマーやポリマーを後から架橋して架橋高分子を得
てもよい。これらのうち、重合熱の発生が少なく大量生
産向きの後者の方法が適当である。後から架橋を行う方
法としては、通常の物理的または化学的な手段を用いる
ことが可能である。物理的な架橋方法には、単純な高温
加熱、電磁波(紫外線、γ線、マイクロ波など)、粒子
線(電子線など)、超音波などの照射による方法があ
り、化学的な架橋方法には、開始剤や架橋剤として知ら
れる各種のラジカル発生剤を用いた反応による方法があ
る。これらのうちでは、ラジカル発生剤として有機過酸
化物を用いた架橋反応による方法が最も簡便である。ま
た、ラジカル発生剤由来の低分子化合物の架橋高分子中
への残留を防ぐことまで考慮するならば、電子線照射や
酸素存在下での放電などで架橋を行えばよい。化学的な
架橋を用いた具体的な粉状または粒状の架橋高分子の製
造方法は以下となる。すなわち、まず、架橋前の有機化
合物(被架橋物)とラジカル発生剤との混合物に対し
て、塊状態での架橋、溶液状態での架橋、懸濁状態や乳
化状態での架橋などのいずれかを行う。その後、粉状ま
たは粒状の固体とするために、塊状態での架橋であれば
粉砕、溶液状態での架橋であれば乾燥と粉砕、懸濁状態
や乳化状態での架橋であれば液相の分離と乾燥を行う。
これらのうちの各単位操作については、化学工学的に知
られている多くの手法と装置が使用可能である。
【0010】本発明における架橋高分子は、平均粒径が
0.01〜5mmの粉状または粒状であり、望ましい粒径
の範囲は、0.03〜0.5mmである。粒径が大き過ぎ
ると酸素吸収速度が低くなり過ぎ、粒径が小さ過ぎると
粉塵爆発などの危険性が生じる。本発明においては、脱
酸素成分として平均粒径が0.01〜5mmの粉状または
粒状の架橋高分子を用いる。
【0011】本発明における架橋高分子中の架橋の程度
は、粉または粒を得ることが容易であり、同時に適当な
耐熱性や酸素吸収性能が得られるような範囲で設定され
る必要がある。このような適当な架橋の程度は被架橋物
の分子構造や分子量によっても変化するが、架橋高分子
1g 当たり0.0001〜0.02mol の架橋点を含
む。その結果、たとえば塊状態での架橋の後に粉砕する
場合には、適度な架橋により架橋高分子の可塑性が低下
し、脆くなって粉砕が容易になる。
【0012】架橋による物性の変化として、本発明にお
ける架橋高分子は、25℃における曲げ弾性率が0.1
MPa 以上であることが好ましく、1MPa 以上がより好ま
しく、10MPa 以上が更に好ましい。また、本発明にお
ける架橋高分子は、25℃における曲げ強度(破壊強
度)が少なくとも100MPa 以下であることが好まし
く、10MPa 以下がより好ましい。また、本発明におけ
る架橋高分子は、25℃においてトルエンに1日浸漬し
た後の線膨張(一方向での増加分)が50%以下である
ことが好ましい。
【0013】耐熱性と架橋の程度との関係では、本発明
のように樹脂に練り込んで各種の形態で用いる場合には
150℃以上まで、望ましくは200℃以上まで、流動
または相互に付着しないように架橋する。これにより、
各使用形態において脱酸素成分を固体状態に保たせるこ
とができ、鉄粉の場合と同じように各種の脱酸素性単層
体や多層体に用いることができる。
【0014】酸素吸収性能と架橋の程度との関係では、
炭素−炭素不飽和結合を含む有機化合物を被架橋物に用
いれば、主に同結合(正確には同結合の炭素とそれに隣
接する炭素)が架橋に関与するが、同結合は酸素との反
応にも必要であるため、同結合を適度に残す必要があ
る。具体的には、1分子中に複数の炭素−炭素不飽和結
合を含む有機化合物を用い、同結合の一部のみを用いて
架橋して、架橋後も1g当たり0.001〜0.025m
ol の炭素−炭素不飽和結合を残す。
【0015】本発明の脱酸素成分としては、架橋高分子
に通常の有機化合物の自動酸化において知られている各
種の金属または金属化合物を触媒として添加し、脱酸素
成分の酸化反応を未添加の場合よりも促進させることが
好ましい。ただし、粒径を小さくすることでも反応性が
高まるため、十分に小さくすれば、この触媒を添加せず
に適度な酸化速度を得ることも可能である。また、一般
に、粒径が小さいほど触媒は少なくてよい。さらに、被
架橋物として各種の重合体を用いる場合には、残留して
いる微量の重合触媒のみで、有効な酸化触媒となる可能
性もある。触媒として用いる金属または金属化合物中の
金属種としては、特に限定されないが、その電子状態が
触媒向けであることからも特に遷移金属が望ましい。こ
の金属種のうち、特に高活性の触媒作用を示すものとし
てコバルトが好ましく、また、比較的安全なものとして
鉄やマンガンが好ましい。触媒は、架橋前に被架橋物
と、特に化学的架橋では被架橋物およびラジカル発生剤
と、混合される。これにより、触媒が均一に分散または
溶解され、架橋後も均一に含まれることになる。ここ
で、触媒がさらに均一に分散または溶解できるように、
被架橋物である有機化合物に対する溶解性の高い触媒を
用いることが望ましい。具体的には金属の脂肪酸塩など
である。その場合、脂肪酸部分に炭素−炭素不飽和結合
を含んでいれば、架橋高分子中に組み込むことも可能と
なる。脱酸素成分中の触媒は架橋構造中に取り込まれる
ため、脱酸素成分から触媒が漏れ出すことが少ない。そ
の結果、この脱酸素成分をマトリックス成分となる熱可
塑性樹脂に練り込んで使用する場合にも、触媒が脱酸素
成分から漏れ出し難いために、マトリックス成分の酸化
による劣化が最小限に抑えられる。本発明の脱酸素成分
では、同じく自動酸化において知られているように、光
(主に紫外領域)の照射によっても酸化反応が促進され
る。しかし、粉または粒が小さいことにより、さらに触
媒を添加する場合にはその触媒の作用もあることによ
り、光の照射は必須ではない。
【0016】本発明の脱酸素成分では、特に触媒の量が
少ない場合、酸素雰囲気に放置した後の、初期の酸素吸
収速度が遅く、誘導期間が生じる。これは、本発明の脱
酸素性単層体や多層体の形態を製造する時間に余裕がで
きるため、望ましい面もある。しかし、その誘導期間が
長過ぎる場合には、脱酸素体として使用を開始してから
短時間で酸素吸収を開始するように、例えば、予め誘導
期間程度の間、酸素雰囲気で放置しておくなどの処理を
行ってもよい。
【0017】被架橋物としては、炭素−炭素不飽和結合
を含む化合物が用いられる。単位重量当たりに含まれる
炭素−炭素不飽和結合が多い化合物として、ジエン化合
物の重合体(オリゴマー、ポリマーやコポリマー)が好
ましく、具体的には、ポリブタジエン、ポリイソプレン
などが挙げられる。なお、ジエン化合物の重合体では、
酸化防止剤が添加されていることが多い。このような酸
化防止剤は、架橋して脱酸素体とした後における脱酸素
を妨げるため、含まれていないことが望ましいが、少量
であればあまり問題にはならず、また、架橋反応時に不
活性化させることもできる。
【0018】本発明による脱酸素成分では、架橋高分子
そのものは低極性のために帯電し易く、特に微粉とした
場合に周囲への付着が著しくなり、取扱いが困難とな
る。そこで、この帯電を防止するために、比較的高極性
の化合物を加えることが望ましい。このような化合物は
一般に帯電防止剤として知られており、特に食品添加物
としても認められているものが、安全性の面から望まし
い。さらに、本発明による脱酸素成分ではこのような化
合物を架橋前から加えて、架橋構造中に取り込んでおく
ことが望ましい。
【0019】本発明による脱酸素成分の誤食などに対す
る安全性は極めて高い。これは、架橋物であることによ
り、粉または粒の全体としての溶解性が極めて低く、ま
た、個々の粉または粒からの、酸化で生じた低分子化合
物や触媒の金属などの溶出も極めて少ないためである。
【0020】一般に、有機化合物を主成分とする脱酸素
成分では、酸化反応に伴って臭気のもとになる低分子化
合物が生成する。しかし、本発明における架橋高分子
は、内部の結合が密なために低分子化合物の生成が少な
く、さらに粉または粒の外への低分子化合物の放出(揮
散や溶出)も少ない。また、架橋構造により酸化反応時
の体積増加が制限されるため、酸化反応が進み過ぎず、
低分子化合物の生成が少なくなる。さらなる臭気の改善
として、まず、被酸化物の分子構造からの改善がある。
これは、酸化反応で共有結合が切断されても、低分子化
合物として脱離されない構造とすることに相当する。具
体的には、例えばジエン化合物のオリゴマーやポリマー
では、側鎖が少ない1,2結合の比率が低い品種の利
用、また、ポリイソプレンよりもポリブタジエンの利用
が推奨される。また、酸素吸収性能は低くなるが、炭素
−炭素不飽和結合が疎に含まれているジエンとオレフィ
ンなどとの共重合体、ジエン化合物のオリゴマーやポリ
マーの部分水素添加物などの使用も有効である。また、
化学的な架橋では、ラジカル発生剤由来の低分子化合物
の存在があり、これについてもラジカル開裂後の分子が
できるだけ大きなものを選ぶか、同じくできるだけ小さ
なものを選んで架橋後に除去する、などにより、臭気の
発生を低減する。他方、酸化後において発生を避けられ
ない臭気の除去方法としては、脱酸素成分と共に活性炭
などの吸着成分を用いてもよい。
【0021】本発明では、上記の架橋高分子からなる脱
酸素成分を熱可塑性樹脂に練り込み分散させて脱酸素性
樹脂組成物とし、これを用いて脱酸素機能のある単層体
または多層体とする。尚、脱酸素性樹脂組成物を調製す
る際に、脱酸素成分と共に他の成分、具体的には、吸着
成分、乾燥成分、抗菌成分のうち一種以上を同時に練り
込むことも可能である。脱酸素性樹脂組成物に用いる熱
可塑性樹脂には、通常知られている多くのものが使用可
能であり、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテ
ン、4−メチル−1−ペンテンなどの各種オレフィン類
の単独重合体および共重合体、エチレン−酢酸ビニル共
重合体、スチレン−ブタジエン共重合体の水素添加物な
どが挙げられ、また、これらの変性物、グラフト体、混
合物などでもよい。
【0022】本発明のシート状又はフィルム状の脱酸素
性単層体又は脱酸素性多層体を得る際には、脱酸素成分
として用いる架橋高分子の粒径は、最大粒径が脱酸素層
の厚さ未満程度であれば特に粒度分布に制限はないが、
酸化速度の点、および他の層を傷つけない(貫通などの
ない)点ではより細かいものが望ましい。ただし、細か
過ぎる場合には粉塵爆発などの危険性から取扱いに慎重
さが要求され、また、一般に高価となることから、結
局、平均粒径として10〜100μm が好ましく、30
〜50μm がより好ましい。脱酸素成分である架橋高分
子の脱酸素層中における体積分率は、有意な脱酸素性能
を与え、脱酸素層の強度を保つとの要請から、0.01
〜0.60が望ましい。この体積分率が高いほど、脱酸
素性能は向上するが、層の強度は一般に低下する。脱酸
素層の厚さは、要求される酸素の総吸収量によりほぼ決
定される。すなわち、対象とする雰囲気中の酸素を全て
吸収できる最低量の脱酸素成分を含む厚さが最低の厚さ
となる。通常は、内容物の長期保存時の若干の酸素流入
をも考慮して、この最低量の脱酸素成分の2〜3倍を用
いるため、厚さもこの最低の場合の2〜3倍が基本とな
る。通常は、20〜1000μm が好ましく、50〜2
00μm がより好ましい。
【0023】架橋高分子を熱可塑性樹脂に練り込んで、
一体の混合物である脱酸素層とすると、そのままでは熱
可塑性樹脂の遮蔽により架橋高分子の酸素吸収速度が低
下する。そこで、脱酸素層を連続微多孔化させることが
望ましい(以下では、これを多孔質脱酸素層と呼ぶ)。
この連続微多孔化の方法として、特に後述の延伸が有用
である。また、他の方法として発泡なども可能である。
【0024】本発明では、脱酸素層の保護、脱酸素成分
による汚染の防止、外部からの酸素透過の防止などの目
的で、脱酸素層の少なくとも一方の面に、他の層をさら
に積層させることが可能である。すなわち、脱酸素成分
による汚染のほぼ完全な防止と高い脱酸素速度を両立さ
せるならば、無孔質の酸素透過性の高い樹脂からなる酸
素透過層(以下では、これを無孔質層と呼ぶ)が必要で
あり、その層の酸素透過率は1×10-11 〜6×10-9
[cm3 /cm2 /s /Pa]が望ましい。また、脱酸素成
分による汚染を適度に防止しつつ、さらに高い酸素透過
性が要求されるならば、連続微多孔質の酸素透過層が望
ましい(以下では、これを多孔質層と呼ぶ)。この多孔
質層は、無孔質層が薄い場合にはその保護にも使用可能
である。また、外部からの酸素透過を防止するならば、
各種材料からなるバリヤ層が必要であり、その層の酸素
透過率は1×10-12 [cm3 /cm2 /s /Pa]以下が望
ましい。そして、これらの層を脱酸素層または多孔質脱
酸素層と組み合わせるために、接着剤層、接着性樹脂層
(それを溶融させるなら融着層)、あるいは保護層など
の他の樹脂層を追加してもよい。これらの多層化のため
には、通常知られている、共押出、押出コーティング、
押出ラミネート、熱ラミネート、ドライラミネートなど
の手法を単独または組み合わせて用いることができる。
【0025】酸素透過性の高い樹脂の例としては、エチ
レン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペン
テンなどのオレフィン類の単独重合体および共重合体、
エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリブタジエン、ポリ
イソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体とその水素
添加物、各種シリコン樹脂、などがあり、さらにこれら
の変成物、グラフト体、混合物などであってもよい。無
孔質層に用いる樹脂は、これらの樹脂の中から、脱酸素
性多層体に要求される脱酸素性能に対応して酸素透過係
数が適当なものを選択する。要求性能が低い場合には特
に制限がないが、より広い要求範囲に対応するためには
酸素透過係数が1×10-13 [cm3 ・cm/cm2 /sec /
Pa]以上、さらにできれば1×10-1 2 [cm3 ・cm/cm
2 /sec /Pa]以上であることが望ましい。無孔質層の
厚さは、酸素透過率で表される脱酸素対象物の要求性能
と樹脂の酸素透過係数とにより決定される。ただし、ピ
ンホールなどが発生しないように安定して製造可能で、
かつ、通常の使用において内容物との接触などでもピン
ホールや破れが生じないことが確実であれば、できるだ
け薄いことが望ましく、一般的には厚さ5〜30μm が
望ましく、5〜20μm がより望ましい。また、無孔質
層を複数の層で構成してもよい。
【0026】バリヤ層を構成する材料としては、バリヤ
性の樹脂、例えば、ポリエチレンテレフタレートなどの
ポリエステル類、ナイロン6、ナイロンMXDなどのポ
リアミド類、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなど
の塩素含有樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体
などや、それらのコート品、金属では、アルミニウムな
どの箔または樹脂への蒸着品、無機化合物では、ケイ素
酸化物などの樹脂への蒸着品などが用いられる。バリヤ
層の厚さは、要求されるバリヤ性と強度、バリヤ層の材
質によって決定される。バリヤ層を後から加える場合に
は、同層を熱ラミネート、ドライラミネート、押し出し
コーティングなどの通常の方法により接着または融着し
て、最終的な多層構造とすることができる。ここで、多
孔質脱酸素層を用いる場合には、この多孔質脱酸素層に
直接に接着または融着を行うと、接着剤または溶融した
接着性樹脂が連続孔に侵入し、酸素透過性が低下する危
険性があり、また、脱酸素成分の凹凸で接着が困難とな
る危険性がある。これらの問題点を回避する方法とし
て、連続孔を保護し表面を平滑化するための樹脂層(以
下では、これを緩衝層と呼ぶ)を、脱酸素層のバリヤ層
を積層したい側に、予め積層しておき、それを含めて延
伸後、低酸素透過性のバリヤ層を接着または融着するこ
とが、より望ましい。
【0027】延伸による連続微多孔化で、多孔質脱酸素
層または、多孔質脱酸素層と多孔質層とを作る場合に
は、比較的高い体積分率で架橋高分子の粉または粒や、
他のフィラーを、それぞれ熱可塑性樹脂に練り込む必要
がある。その体積分率は概ね0.10〜0.60、より
好ましくは0.20〜0.40であり、体積分率がより
低い場合には延伸後の混合物が連続微多孔化せず、より
高い場合には延伸後の混合物が脆くなる。ここで、架橋
高分子の密度と熱可塑性樹脂の密度とが同じ程度の値を
持つことから、架橋高分子の添加比率は、概ね10〜6
0wt%、より好ましくは20〜40wt%となる。また、
架橋高分子と他の成分とを同時に練り込む場合には、そ
れらを合わせた体積分率がこの範囲内であればよい。多
孔質脱酸素層と多孔質層とに用いる樹脂については、連
続微多孔化すれば酸素透過性が向上するため、樹脂の酸
素透過性については特に制限がない。多孔質層の連続微
多孔化に用いるフィラーとしては、水などに不溶または
難溶で、不融の無機物または有機物であれば特に制限は
ないが、内容物が酸性などの液体の場合にも使用できる
脱酸素フィルムとするならば、さらにそれらの条件下で
も溶出しないことが必要となる。また、燃焼の危険性が
低い酸化物などのフィラーが望ましい。フィラーの粒径
としては、樹脂への添加などを含めて扱い易い範囲であ
れば特に制限はないが、他の層を傷つけず、さらに多孔
質層として無孔質層を保護する点から、無孔質層の厚さ
未満で、より細かい方が望ましく、最大粒径で10μm
以下が好ましい。多孔質層の厚さは、外部の力からの無
孔質層の保護や補強、あるいは脱酸素成分粒子による無
孔質層の損傷の防止ができる程度であることが必要で、
架橋高分子の最大粒径程度以上が望ましい。他方、必要
以上に厚いと、脱酸素フィルム全体が厚くなりすぎる。
よって、この層の厚さの最大値は、架橋高分子粒子の最
大粒径の10倍程度となる。延伸においては、通常知ら
れているように、1軸延伸、2軸同時延伸、2軸逐次延
伸のいずれの手法を用いてもよい。このとき、延伸温度
は用いている樹脂の溶融温度(樹脂を複数種使用してい
れば最も低いものとする)付近以下、延伸倍率は面積換
算で2〜20倍、とするのが望ましい。
【0028】本発明の脱酸素成分は、酸素吸収後の廃棄
時に、焼却しても問題が少なく、さらに生物的な分解も
期待できる。そこで、脱酸素体に用いる熱可塑性樹脂や
バリヤ性の材料にも、生分解性樹脂などの環境調和型の
各種素材を用いれば、脱酸素体全体での廃棄に関して
も、問題が少なくなる。本発明の脱酸素成分は、金属状
態の金属元素を含まない。そのため、電磁波との相互作
用が弱く、金属探知機を動作させることがなく、また、
電子レンジ中でもほとんど加熱されない。これらの性質
は脱酸素層の中でも保持され、また、脱酸素層は透明ま
たは半透明に保たれる。
【0029】各層を構成する材料としては、前述の材料
以外に種々の物質を加えることが可能である。この添加
物としては、例えば、着色または隠蔽のための顔料や染
料、酸化防止や分解防止などのための安定化成分、帯電
防止成分、吸湿のための乾燥成分、脱臭のための吸着成
分、抗菌成分、可塑化成分、難燃化成分などが挙げられ
る。さらに、架橋高分子と共に他の脱酸素成分を用いて
もよい。これらを適宜、望ましい各層に加える。また、
同様に、印刷層や易開封層、易剥離層などを追加するこ
とが可能である。
【0030】本発明の脱酸素性多層体は、脱酸素包装材
料として包装袋や包装容器の一部または全部に種々の形
で使用される。具体的な形態としては、脱酸素性の袋、
内袋、中仕切り、容器本体、トップシールフィルム
(蓋)、ボトルなどである。また、特に無孔質層を含む
層構成であれば、内容物は、固体だけでなく、液体、ま
たは固体と液体の両方にも適用できる。
【0031】本発明の脱酸素性単層体又は脱酸素性多層
体の具体的な層構成は、脱酸素成分として架橋高分子を
含む脱酸素層;A1、脱酸素成分として架橋高分子を含
む多孔質脱酸素層;A2、無孔質層;B、多孔質層;
C、バリヤ層;D、接着層(接着剤または接着性樹
脂);E、緩衝層;F、と表すと、バリヤ層を含まない
構成(両側吸収型)として、A1(単層)、A2(単
層)、B/A1/B、B/A2/B、C/A2/C、B
/C/A2/C/Bなど、また、片側にバリヤ層がある
構成(片側吸収型)として、B/A1/D、B/A1/
E/D、B/A2/D、B/A2/E/D、B/A2/
F/E/D、B/C/A2/E/D、B/C/A2/F
/E/Dなどがある。両側吸収型の脱酸素多層体とし
て、図1;無孔質層/脱酸素層/無孔質層、図2;無孔
質層/多孔質脱酸素層/無孔質層、図3;無孔質層/多
孔質層/多孔質脱酸素層/多孔質層/無孔質層、を示
す。片側吸収型の脱酸素体として、図4;無孔質層/脱
酸素層/接着層/バリヤ層、図5;無孔質層/多孔質脱
酸素層/接着層/バリヤ層、図6;無孔質層/多孔質層
/多孔質脱酸素層/緩衝層/接着層/バリヤ層、を示
す。図7と図8は、両側吸収型の脱酸素フィルムをそれ
ぞれ包装用の内袋、または中仕切りに使用した例であ
る。なお、図8の例では、脱酸素フィルムに部分的な成
形と端面の熱融着を加えている。図9と図10は、片側
吸収型の脱酸素フィルムをそれぞれ包装用容器のトップ
シールフィルム、または、包装袋の一部に使用した例で
ある。
【0032】
【実施例】以下、実施例と比較例を用いて本発明をさら
に詳しく説明するが、本発明はこれによって限定される
ものではない。脱酸素成分である架橋高分子の作製に使
用した化合物は以下である。被架橋物、ブタジエンオリ
ゴマー:日本ゼオン(株)製、商品名Polyoil 130、平
均分子量3000、1,4構造99%、20℃における
粘度3000cPの液体、炭素−炭素二重結合の数はモノ
マーの分子量54より、1/54=0.0185mol/g
と算定される。有機過酸化物、α, α'-bis(tert-butyl
peroxy)diisopropylbenzene :日本油脂(株)製、商品
名パーブチルP、分子量338、1mol 当たりの有効官
能基数は2mol 、純度95%。触媒、ステアリン酸鉄(I
II) :三津和化学薬品(株)製、純度95%以上。帯電
防止成分、ステアリン酸モノグリセリンエステル:日本
油脂(株)製、商品名モノグリM、純度95%以上。
【0033】架橋高分子の各種の性質の測定方法は以下
である。架橋高分子の曲げ弾性率と曲げ強度は、粉砕前
の架橋物から試験片(例えば4cm×1cm×2mm程度)を
切り出し、25℃にて3点曲げ試験を行って測定した。
このとき、曲げ弾性率Eは比較的少ない変形を与えた場
合において、式;E=FL3 /4WT3 Dを用いて、ま
た、曲げ強度Sは破壊するまで変形を与えた場合におい
て、式;S=3FL/2WT2 を用いて、それぞれ計算
した。ここで、F;荷重、L;スパン、W;試験片の
幅、T;試験片の厚さ、D;変位(たわみ)、である
(JIS K 7203(1995))。なお、変形速
度を約10cm/sとした。架橋高分子の膨潤による線膨張
(増加分の比率)は、粉砕前の架橋物から試験片(長さ
5cm程度、厚さ2mm以下)を切り出し、25℃にてトル
エン(特級品、試験片の100倍程度の体積を使用)中
に1日間浸漬し、浸漬前後の長さ方向の寸法より、寸法
の変化分を浸漬前の寸法で除して、求めた。なお、後述
の試料はいずれも6時間以内に膨潤平衡に達していた。
架橋高分子の密度は、架橋物を沈める液体にエタノール
(特級品)を用いて、比重瓶にて25℃で測定した。架
橋高分子の架橋度は、膨潤による体積変化により、架橋
鎖(2つの架橋点で挟まれた部分鎖)の密度νを、式;
ν=−(v+μv2 +log e (1−v))/(ρV
0 (v1/3 −v/2))+2/Mで計算することで推定
した(古川淳二,山下晋三, 日本ゴム協会誌, 30,955(19
57))。ここで、v;膨潤後の体積に対する膨潤前の体
積の分率、膨潤による線膨張(増加分の比率、前述のよ
うに実測)をαとして、v=1/(1+α)3 となる、
μ;高分子(ここでは架橋物)と溶媒との相互作用パラ
メータ(後述の個々の対象系に対する値は、例えば、R.
G.Beaman, J.Polymer Sci., 9,470(1952) )、ρ;架橋
物の密度(前述のように実測)、V0 ;溶媒の分子容
(25℃のトルエンでは107cm3/mol )、M;架橋前
の被架橋物の分子量、である。これから得られるνよ
り、架橋点の数はνの1/2と計算される。架橋物中の
炭素−炭素二重結合の数は、架橋反応によりその一部が
使用される(ただし、一般に架橋反応分の全てが同結合
に由来するものではない)ことから、架橋前の同結合の
数から架橋点の数を減じた数になると仮定して算出し
た。架橋高分子の耐熱性は、所定の温度に加熱した金属
板の上に粉または粒を約30秒間(長時間では変形や酸
化による変色などがある)置き、その流動や変形または
相互の付着を観察して判断した。
【0034】脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体とする
ために用いた化合物と材料は以下である。熱可塑性樹
脂、ポリプロピレン:日本ポリケム(株)製、商品名NO
VATEC PP FG3D 、商品分類上はポリプロピレンである
が、実際はエチレンを若干含む共重合体、メルトフロー
レート7.0g/10min (230℃)、25℃における
酸素透過係数1.3×10-13 [cm3 ・cm/cm2 /sec
/Pa]。熱可塑性樹脂、ポリエチレン(直鎖状低密度ポ
リエチレン):三井化学(株)製、商品名EVOLUE SP204
0 、商品分類上はポリエチレンであるが、実際は他のα
−オレフィンを若干含む共重合体、メルトフローレート
4.0g/10min (190℃)、融点116℃、25℃
における酸素透過係数3.0×10-13 [cm3 ・cm/cm
2 /sec /Pa]。熱可塑性樹脂、エチレン−プロピレン
共重合体:三井化学(株)製、商品名TAFMER P-0680 、
エチレン成分のmol 分率は約0.75、メルトフローレ
ート0.4g/10min (190℃)、25℃における酸
素透過係数1.4×10-12 [cm 3 ・cm/cm2 /sec /
Pa]。熱可塑性樹脂、スチレンブタジエン共重合体の水
素添加物:日本合成ゴム(株)製、商品名DYNARON 1320
P 、スチレン含有率10%、メルトフローレート3.5
g/10min (230℃)、25℃における酸素透過係数
は約1×10-12 [cm 3 ・cm/cm2 /sec /Pa]。接着
性樹脂、接着性ポリオレフィン:三井化学(株)製、商
品名ADMER NF300、メルトフローレート1.3g/10min
(190℃)。バリヤ性樹脂、ナイロンMXD:三菱
ガス化学(株)製、商品名MX-NYLON 6007 、メルトフロ
ーレート2.0g/10min (275℃)、融点240
℃、25℃(相対湿度0%)における酸素透過係数2.
7×10-14 [cm3 ・cm/cm2 /sec /Pa]。バリヤフ
ィルム:(株)エムエーパッケージング製、アルミニウ
ム(7μm )とポリエチレンテレフタレート(25μm
)の積層品、アルミニウム側をさらに他の層と積層す
る。接着剤:東洋モートン(株)製、ドライラミネート
用、商品名AD-585とCAT-10。吸着剤、活性炭:武田薬品
工業(株)製、商品名は白鷺Fac-10、平均粒径10μm
。無機フィラー、合成シリカ:龍森(株)製、商品名C
RYSTALITE VX-S2、平均粒径5μm 。
【0035】脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体の酸素
吸収性能の測定は、脱酸素性単層体又は脱酸素性多層体
と所定量の空気を、ポリ塩化ビニリデンをコートしたナ
イロン層を含む透明な酸素バリヤ性の袋に入れて、また
は、脱酸素性多層体をヒートシールして作製した袋に所
定量の空気を入れて、25℃における酸素濃度の経時変
化をガスクロマトグラフで追跡することで行った。そし
て、酸素濃度が0.1体積%に達するまでの時間を脱酸
素時間とした。ここで、酸素濃度の経時変化は単調減少
となるため、酸素吸収性能はこの脱酸素時間で表現すれ
ば十分である。臭気は、袋内部の気体を嗅ぐことで、感
覚的に判断した。
【0036】実施例1 ブタジエンオリゴマー(Polyoil 130 );93重量部、
パーブチルP;7重量部、ステアリン酸鉄(III) ;1重
量部、ステアリン酸モノグリセリンエステル;1重量部
を約60℃で均一に混合した後、窒素置換した容器中で
180℃、30分加熱して、架橋高分子を得た。これを
室温まで冷却してから取り出し、一部を測定用の試料と
して、他を回転刃型の粉砕機で粉砕して最大粒径300
μm 、平均粒径180μm の粉状とした。架橋高分子が
脆いため、粉砕は極めて容易であった。各種測定より、
架橋高分子の曲げ弾性率は2.8MPa 、曲げ強度は1.
0MPa、比重は0.95g/cm3 、トルエン浸漬時の膨潤
による線膨張は32%であった。μ=0.37を用いて
ν=0.0019mol/g 、架橋点の数は0.0010mo
l/g と算出された。また、架橋物の炭素−炭素二重結合
の数は、0.0185×(93/102)−0.001
0=0.0159mol/g と算出された。また、耐熱性は
150℃以上であった。この粉状の架橋高分子35wt
%、活性炭2wt%、ポリプロピレン(FG3D)63wt%を
混合、押出して、厚さ2mmのシート状単層体とした。こ
の単層体を120℃に加熱し、1軸方向に約6倍に延伸
して、多孔質脱酸素層のみからなる厚さ0・7mmのシー
ト状脱酸素性単層体を得た。延伸前後の寸法変化から求
めた、延伸微多孔化後の脱酸素性単層体の空隙率は0.
45であった。この脱酸素性単層体の小片5cm×10cm
(50cm2 、約3g )を、300cm3の空気と共に酸素
バリヤ性の袋に入れて、25℃で放置した。脱酸素時間
は3.1日であった。また、臭気は殆ど感じられなかっ
た。
【0037】実施例2 実施例1と同じ粉状の架橋高分子から、粒径50μm 未
満のものを篩別した。脱酸素層として、この粒径50μ
m 未満の架橋高分子40wt%、活性炭2wt%、ポリエチ
レン58wt%の混合物、無孔質層としてポリエチレン5
0wt%、エチレン−プロピレン共重合体50wt%の混合
物を用い、共押出にて、無孔質層(50μm )/脱酸素
層(300μm )/無孔質層(50μm )の構成と各厚
さを持つ半透明のフィルム状の脱酸素性多層体(両側吸
収型)を得た。この脱酸素性多層体の小片10cm×20
cm・5枚(1000cm2 、複数の小片同士が密着しない
ように紙のスペーサーを間に配置)を、100cm3 の空
気と共に酸素バリヤ性の袋に入れて、25℃で放置し
た。脱酸素時間は15日であった。また、臭気は殆ど感
じられなかった。
【0038】実施例3 脱酸素層(延伸後に多孔質脱酸素層となる)として粒径
50μm 未満の架橋高分子35wt%、活性炭2wt%、ポ
リプロピレン63wt%の混合物、無孔質層としてポリプ
ロピレン50wt%、スチレンブタジエン共重合体の水素
添加物50wt%の混合物、フィラー含有層(延伸後に多
孔質層となる)としてポリプロピレン50wt%、合成シ
リカ50wt%の混合物を用い、共押出にて、無孔質層
(50μm)/フィラー含有層(150μm )/脱酸素
層(300μm )/フィラー含有層(150μm )/無
孔質層(50μm )の構成と各厚さを持つ5層品とし
た。さらに、この5層品を120℃に加熱し、1軸方向
に約6倍に延伸して、多孔質脱酸素層と多孔質層を形成
させ、また無孔質層を薄くして、無孔質層(約10μ
m)/多孔質層(約50μm )/多孔質脱酸素層(約1
00μm )/多孔質層(約50μm )/無孔質層(約1
0μm )の構成と各厚さを持つフィルム状の脱酸素性多
層体(両側吸収型)を得た。この多層体の小片10cm×
20cm・5枚(1000cm2 、複数の小片同士が密着し
ないように紙のスペーサーを間に配置)を、500cm3
の空気と共に酸素バリヤ性の袋に入れて、25℃で放置
した。脱酸素時間は5.2日であった。また、臭気は殆
ど感じられなかった。
【0039】実施例4 脱酸素層として、粒径50μm 未満の架橋高分子40wt
%、活性炭2wt%、ポリエチレン58wt%の混合物、無
孔質層としてポリエチレン50wt%、エチレン−プロピ
レン共重合体50wt%の混合物、接着層として接着性ポ
リオレフィン、バリヤ層としてナイロンMXDを用い
て、無孔質層50μm /脱酸素層300μm /接着層1
0μm /バリヤ層50μm の構成と各厚さを持つフィル
ム状の脱酸素性多層体(片側吸収型)を得た。この多層
体から21cm×26cmの小片2枚を切り出し、無孔質層
側を合わせて2枚の小片の周囲(幅5mm)をヒートシー
ルして袋を作製し(実効面積は1000cm2 )、100
cm3 の空気を入れて密封後、25℃で放置した。脱酸素
時間は18日であった。また、臭気は殆ど感じられなか
った。
【0040】実施例5 脱酸素層(延伸後に多孔質脱酸素層となる)、無孔質
層、フィラー含有層(延伸後に多孔質層となる)に実施
例3と同じ組成を用い、また緩衝層にポリプロピレンを
用いて、共押出にて、無孔質層50μm /フィラー含有
層150μm /脱酸素層300μm /緩衝層40μm の
構成と各厚さを持つ4層品とした。そして、この5層品
を120℃に加熱し、1軸方向に約6倍に延伸して、多
孔質脱酸素層と多孔質層とを形成させ、また無孔質層と
緩衝層とを薄くして、無孔質層約10μm /多孔質層約
50μm /脱酸素層約100μm /緩衝層約8μm の構
成と各厚さを持つ4層品とした。さらに、この4層品の
緩衝層側の表面を3.6kJ/m 2 でコロナ放電処理してか
ら、バリヤ層としてバリヤフィルムを接着剤で積層し
て、無孔質層/多孔質層/多孔質脱酸素層/緩衝層/接
着層/バリヤ層の構成のフィルム状の脱酸素性多層体
(片側吸収型)を得た。この多層体から21cm×26cm
の小片2枚を切り出し、無孔質層側を合わせて2枚の小
片の周囲(幅5mm)をヒートシールして袋を作製し(実
効面積は1000cm2 )、500cm3 の空気を入れて密
封後、25℃で放置した。脱酸素時間は6.1日であっ
た。また、臭気は殆ど感じられなかった。
【0041】比較例1 実施例1と同じ粉状の架橋高分子1g を、空気300cm
3 と共に、酸素バリヤ性の袋に入れた。当然のことなが
ら、袋の内部は表面に粉が少し付着した状態となり、脱
酸素の対象となる各種物品と共に用いることは困難であ
った。
【0042】比較例2 平均粒径約50μm の鉄粉に、塩化カルシウム(鉄粉1
00重量部に対して2重量部)を水溶液で噴霧、乾燥さ
せたものを脱酸素成分として、架橋高分子の替わりに添
加比率70wt%で用いた以外は実施例1と同様にして脱
酸素性単層体を作り、脱酸素時間を測定した。この脱酸
素成分は乾燥状態では機能しないため、15日後でも脱
酸素していなかった。
【0043】比較例3 実施例1と同じ架橋高分子を用いて、粉砕前の塊から、
厚さ約300μm 、面積約5cm2 の小片を切り出し、空
気中に放置した。酸化が進行するにつれて、この小片は
脆くなっていった。この例では架橋構造が含まれている
ため、比較的劣化が抑えられているが、一般に、金属触
媒で酸化させ易くした樹脂では、強度低下が防止できな
い。
【0044】
【発明の効果】本発明の脱酸素性単層体又は脱酸素性多
層体は、乾燥状態から高湿度状態までの広い湿度範囲に
おいて使用可能であり、酸素吸収速度が高いだけでな
く、取扱いも容易である。この脱酸素性単層体又は脱酸
素性多層体は、各種容器、包装体の形態として、食品、
医薬品、金属製品や電子製品などの、酸素の影響を受け
て変質し易い各種物品の酸化を防止し長期に保存する目
的に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】無孔質層/脱酸素層/無孔質層の内部構成を持
つ脱酸素性多層体の断面図
【図2】無孔質層/多孔質脱酸素層/無孔質層の内部構
成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図3】無孔質層/多孔質層/多孔質脱酸素層/多孔質
層/無孔質層の内部構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図4】無孔質層/脱酸素層/接着層/バリヤ層の内部
構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図5】無孔質層/多孔質脱酸素層/接着層/バリヤ層
の内部構成を持つ脱酸素性多層体の断面図
【図6】無孔質層/多孔質層/多孔質脱酸素層/緩衝層
/接着層/バリヤ層の内部構成を持つ脱酸素性多層体の
断面図
【図7】両側吸収型の脱酸素性多層体を包装用の内袋に
使用した例の断面図
【図8】両側吸収型の脱酸素性多層体を中仕切りに使用
した例の断面図
【図9】片側吸収型の脱酸素性多層体を包装用容器のト
ップシールフィルムに使用した例の断面図
【図10】片側吸収型の脱酸素性多層体を包装袋の一部
に使用した例の断面図
【符号の説明】
1 脱酸素層(脱酸素成分として架橋高分子を含む) 2 多孔質脱酸素層(脱酸素成分として架橋高分子を含
む、連続微多孔質) 3 無孔質層(無孔質の酸素透過層) 4 多孔質層(連続微多孔質の酸素透過層) 5 接着層(接着剤、接着性樹脂など) 6 バリヤ層 7 緩衝層 10 フィルム状の脱酸素性多層体(両側吸収型) 20 フィルム状の脱酸素性多層体(片側吸収型) 30 内容物(固体、液体、固体と液体など) 40 バリヤ性のある容器本体 50 脱酸素機能のない一般のバリヤフィルムまたはバ
リヤ袋
フロントページの続き (72)発明者 関 高宏 東京都葛飾区新宿6丁目1番1号 三菱瓦 斯化学株式会社東京研究所

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 架橋高分子1g 当たり0.001〜0.
    025mol の炭素−炭素不飽和結合と0.0001〜
    0.02mol の架橋点とを含有する、ジエンの重合体又
    はジエンと他の不飽和化合物との共重合体を部分架橋さ
    せた架橋高分子からなる平均粒径が0.01〜5mmの粉
    状又は粒状の脱酸素成分を、熱可塑性樹脂中に分散させ
    てなる脱酸素性樹脂組成物。
  2. 【請求項2】 架橋高分子が、酸化反応の触媒となる金
    属または金属化合物と帯電を防止する化合物とのうち一
    つ以上を含有することを特徴とする請求項1記載の脱酸
    素性樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 架橋高分子が、25℃における曲げ弾性
    率が0.1MPa 以上、曲げ強度が100MPa 以下、且つ
    トルエンに1日浸漬して膨潤させた後の線膨張が50%
    以下であることを特徴とする請求項1記載の脱酸素性樹
    脂組成物。
  4. 【請求項4】 脱酸素性樹脂組成物が、吸着成分、乾燥
    成分、抗菌成分から選んだ一種以上を含むことを特徴と
    する請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物から
    なるシート状又はフィルム状の脱酸素性単層体。
  6. 【請求項6】 脱酸素性単層体が、連続微多孔質化され
    ていることを特徴とする請求項5記載の脱酸素性単層
    体。
  7. 【請求項7】 請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物から
    なる脱酸素層の、一方の側に酸素透過性が高い酸素透過
    層が積層され、他方の側に酸素透過性が低いバリヤ層が
    積層されてなるシート状又はフィルム状の脱酸素性多層
    体。
  8. 【請求項8】 請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物から
    なる脱酸素層の両側のそれぞれに、酸素透過性が高い酸
    素透過層が積層されてなるシート状又はフィルム状の脱
    酸素性多層体。
  9. 【請求項9】 脱酸素層が、連続微多孔質化されている
    ことを特徴とする請求項7又は8記載の脱酸素性多層
    体。
  10. 【請求項10】 酸素透過層が、無孔質の酸素透過層と
    連続微多孔質の酸素透過層のいずれか一方又は両方の層
    からなることを特徴とする請求項7又は8記載の脱酸素
    性多層体。
  11. 【請求項11】 無孔質の酸素透過層の酸素透過率が、
    1×10-11 〜6×10-9[cm3 /cm2 /s /Pa]であ
    ることを特徴とする請求項10記載の脱酸素性多層体。
  12. 【請求項12】 バリヤ層の酸素透過率が、1×10
    -12 [cm3 /cm2 /s/Pa]以下であることを特徴とす
    る請求項7記載の脱酸素性多層体。
  13. 【請求項13】 請求項7記載の脱酸素性多層体が、容
    器壁面のすくなくとも一部に使用されてなる脱酸素性包
    装容器。
  14. 【請求項14】 脱酸素成分を10〜60重量%含有し
    た請求項1記載の脱酸素性樹脂組成物からなる脱酸素層
    を、一軸又は二軸方向に面積換算で2〜20倍に延伸し
    て、連続微多孔化した脱酸素層を形成することを特徴と
    する請求項9記載の脱酸素性多層体の製造方法。
  15. 【請求項15】 請求項14記載の連続微多孔化した脱
    酸素層を形成すると同時に、無機または有機フィラーを
    10〜60体積%含有した熱可塑性樹脂からなる樹脂複
    合層を、一軸又は二軸方向に面積換算で2〜20倍に延
    伸して、連続微多孔化した酸素透過性層を形成すること
    を特徴とする請求項10記載の脱酸素性多層体の製造方
    法。
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