JP4176240B2 - クロマト分離装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロマト分離装置に関し、更に詳しくは、間欠移動層式クロマト分離装置及び擬似移動層式クロマト分離装置における循環路及びポンプの制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
クロマト分離装置は、製糖業や製薬業などの製造業において、天然又は化学反応によって得られる複数の成分からなる原材料の流体から一種以上の成分を抽出する目的で広く用いられている。クロマト分離装置には、従来から用いられている回分固定層方式の他に、最近では移動層方式の装置が種々提案されている。
【0003】
図8は、一般的な移動層方式のクロマト分離装置の原理を示す分離塔の断面模式図である。分離塔60には、予め充填剤(吸着剤)62を充填し、これに溶離液を満たしておく。2種の成分A及びCを有する原料液を原料供給口Fから導入し、溶離液を溶離液供給口Dから一定の線速度となるように供給する。各成分A及びCは、充填剤との親和力の差により、分離塔60内を異なる線速度で移動し、例えば親和力の小さな成分Aは大きな線速度で移動し、親和力が大きな成分Cは小さな線速度で移動する。このため、適当な位置の2箇所で循環液を引き抜くことにより、原料液を、成分Aを多く含む液体(以下、単に成分Aと呼ぶ)と成分Cを多く含む液体(以下、単に成分Cと呼ぶ)とに分離できる。
【0004】
移動層方式のクロマト分離装置では、成分Aの移動速度と成分Cの移動速度との中間の速度で、溶離液の流れと逆の方向に充填剤を移動させる状態を作り出す。このようにすることにより、図示のように、原料液の供給位置を境にして成分Aは、循環液の流れ方向で見て原料供給位置Fの前方で、また、成分Cは原料供給位置Fの後方で取り出すことができる。この方式は、充填剤を均一に移動させることの困難性から、実際に工業的に用いるには難点がある。
【0005】
充填剤を移動させることなく、上記移動層方式と同等の分離性能を得ることが出来る分離装置が実用化されている。図9にこの型式の分離装置の原理を示した。この方式では、分離塔60を複数(図の例では12個)のカラム64に分割し、これを無端の循環路に接続している。充填剤の移動に代えて、原料液F及び溶離液Dの供給位置と、成分A及びCの引抜き位置とを溶離液の流れ方向に移動させる。これにより、時間の経過と共に、系内の液の分布は循環液の流れ方向に移動する。一定時間経過後でこの濃度分布が1カラム分移動した後に、原料液及び溶離液の供給位置と、成分A及びCの引抜き位置とを循環液の流れ方向に1カラム分移動させる。この操作を繰り返せば、常に最適な位置で各液の供給と引抜きとを行うことが出来る。原料液及び溶離液の供給位置並びに成分A及びCの引抜き位置の移動には三つの方式が用いられ、電磁弁等から成る液注入弁及び液引出し弁を組み合せこれを順次に切り替える擬似移動層方式、多数のノズルを有する回転弁を用いる擬似移動層方式、及び、多数のノズルを有する回転弁を用い充填塔を移動させる間欠移動層方式が実用化されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記無端の循環路を有するクロマト分離装置における流体の駆動には、一般に、原料液の注入ポンプ及び溶離液の注入ポンプによる駆動力の他に、循環路中に配設した、例えば1台以上の循環ポンプによる駆動力が利用される。ここで、循環路中の圧力変動を抑えるためには、循環路に対する原料液及び溶離液の合計注入量と、循環路からの成分A及びCの合計引抜き量とを常に等しく保つ必要があり、ポンプの幾つかは定量性を有するポンプによって構成される。また、場合によっては流量制御機構が併用される。しかし、定量性を有するポンプや流量制御機構は高価であり、このためクロマト分離装置の価格を上昇させる。
【0007】
また、循環路中の圧力を正確に所定値に保つために、多くの分離装置では、循環路の圧力が高まったときに開となる背圧弁を、例えば成分Cの引抜きラインに使用する。この場合には、循環路系内の圧力は、この背圧弁で設定された圧力よりも低くはならず、その圧力に耐え得るカラムやポンプが必要となる。このような圧力仕様のカラムやポンプの使用により、クロマト分離装置の価格が更に上昇する。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、擬似移動層式又は間欠移動層式クロマト分離装置におけるポンプの個数を削減し、且つ、循環路の圧力を所定値に維持しながらも背圧弁を省くことによって循環路系内の圧力を低減し、もって分離性能を維持したままクロマト分離装置の価格を低減することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のクロマト分離装置は、入口及び出口を有する4つ以上のカラムの前記入口及び出口を順次に連結して無端の循環路を形成し、前記循環路中に2種以上の成分を含む原料液と溶離液とを注入し、前記循環路中から前記原料液中の第1成分及び第2成分を分離して引き抜くクロマト分離装置であって、前記循環路中の原料液の注入口、溶離液の注入口、第1成分の引抜き位置、及び、第2成分の引抜き位置を順次に下流側に切り替える流路切替え手段を備えるクロマト分離装置において、
前記流路切替え手段を介して前記循環路中の相互に関連した位置に挿入される第1及び第2のポンプと、前記第1のポンプを循環路の液を循環させる循環モードと原料液を注入する原料液注入モードの何れかに選択的に切り替える第1切替え弁と、前記第2のポンプを循環路の液を循環させる循環モードと溶離液を注入する溶離液注入モードの何れかに選択的に切り替える第2切替え弁とを有することを特徴とする。
【0010】
本発明のクロマト分離装置では、循環路内における原料液及び溶離液を含む循環液の移動と、原料液及び溶離液の循環路内への注入、及び、循環路からの第1及び第2成分の引抜きとを、第1及び第2の切替え弁の切替え、並びに、第1及び第2のポンプの駆動によって行うことができ、このため、クロマト分離装置におけるポンプの個数を2つに減らすことが出来る。また、背圧弁を使用しなくとも通常の弁によって各成分の引抜きが可能となるので、循環路系内の圧力仕様を低下させることができる。
【0011】
本発明のクロマト分離装置は、擬似移動層式クロマト分離装置及び間欠移動層式クロマト分離装置の何れにも適用できる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照し本発明の実施形態例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態例の間欠移動層式クロマト分離装置(以下、分離装置とも呼ぶ)の構成を示す模式的ブロック図である。本分離装置では、2台のポンプ20、30を有し、各ポンプを循環路に挿入する循環モード、又は、各ポンプの吸入口に液注入管を接続する液注入モードの何れかを選択する切替え弁23、33を配設している。
【0013】
本分離装置では、その一工程中において、第1及び第2切替え弁23、33を循環モードに選択することで、吸着剤を充填した8個のカラム14が、回転弁10の各ノズル13、及び、第1及び第2のポンプ20、30を介して無端の環状に連結されて循環路16を形成する。循環路16における液流は図示A方向(時計方向)である。第1及び第2のポンプ20、30は、流体に対して同じ流量を与える定量ポンプとして構成される。
【0014】
循環路16は、液流方向Aに見て第1のポンプの吐出口21から第2のポンプ30の吸入口32迄の、第1〜第4のカラム14を含む第1循環半路16Aと、第2のポンプ30の吐出口31から第1のポンプ20の吸入口迄の、第5〜第8のカラム14を含む第2循環半路16Bとから成る。原料液貯槽25は、原料液注入管24及び第1切替え弁23を介して第1のポンプ20の吸入側22に接続され、第1のポンプ20を経由して第1の循環半路16Aの一端に接続される。溶離液貯槽35は、溶離液注入管34及び第2切替え弁33を介して第2のポンプ30の吸入口32に接続され、第2のポンプ30を介して第2循環半路16Bの一端に接続される。原料注入管24及び溶離液注入管34は、対応する切替え弁23又は33が、液注入モードに切り替えられることで、循環路16に接続され、原料液又は溶離液を注入する。
【0015】
成分Aの引抜き管42は、成分A引抜き弁41を介して、第1循環半路16Aの第3カラム14の出口と第4カラム14の入口とを接続する管路から引き出され、その末端が成分A貯槽43に接続される。成分Cの引抜き管52は、成分C引抜き弁51を介して、第2循環半路16Bの第1カラム14の出口と第2カラム14の入口とを接続する管路から引き出され、その末端が成分C貯槽53に接続される。
【0016】
回転弁10は、中空円筒形状の固定部11と、その内側に回転可能に配置され、固定部11の内壁上を褶動する外壁を有する円筒状の回転部12とを有する。回転部12には、8つのカラム14が搭載され、各カラム14は、回転部12の間欠回転に従って1回に1カラム分づつ回転する。回転弁10の静止中において、各カラム14の入口及び出口は夫々、各循環半路16A、16B中において、先行するカラム14の出口及び後続するカラム14の入口と、回転弁10の各ノズルを介して接続される。
【0017】
図2は、上記分離装置の各工程中における機器の作動状態を表形式で示している。分離装置は、溶離液の注入及び成分Aの引抜きを行う約20秒の第1工程、原料液の注入及び成分Aの引抜きを行う約20秒の第2工程、液流の循環を行う約40秒の第3工程、溶離液の注入及び成分Cの引抜きを行う約40秒の第4工程、及び、液流を停止してカラム(分離塔)14を含む回転弁10の1カラム分の回転を行う約5秒の第5工程を、順次に且つ繰り返し行う。
【0018】
図3は上記第1工程(溶離液注入、及び、成分A引抜きモード)における各部の状態を示している。第1切替え弁23を循環モードとし、第2切替え弁33を液注入モードとし、引抜き弁41を開、引抜き弁51を閉にして、ポンプ20、30の運転によって、溶離液を導入しつつ、溶離液と等量の成分Aを引き抜く。
【0019】
次いで、切替え弁23を液注入モードに切り替え、且つ、引抜き弁41、51をそのままにして、第2ポンプ30の運転を停止し、図4に示す第2工程(原料液注入、及び、成分A引抜きモード)に移る。この工程では、原料液を貯槽25から導入しつつ、引抜きライン42を経由して成分Aを成分A貯槽43に引き抜く。
【0020】
引き続き、図5に示すように、第1及び第2切替え弁23、33を何れも循環モードとし、弁41、51を閉とし、第1及び第2のポンプ20、30を運転して液循環モードに移行する。このモードでは、原料液及び溶離液を含む液体を、2台のポンプ20、30の少なくとも一方によって循環路内で循環させ、原料液を、各カラム内の吸着剤と親和力が高いC成分と、親和力が低いA成分とに分離する。これによって、各成分の濃度分布の山が大きくなり、成分A及びCの引抜きに適した状態になる。
【0021】
次いで、第1のポンプ20を停止し、引抜き弁41を閉としたまま、引抜き弁51を開とし、第2切替え弁を液注入モードに切り替えて、図6に示す第4工程(溶離液注入、及び、成分C引抜きモード)に移行する。このモードでは、溶離液を導入しつつ、そのすぐ下流で成分Cを引き抜く。双方のポンプ20、30の容量を同じとし、且つ、第1工程の継続時間を20秒、第2工程の継続時間を20秒、第4工程の継続時間を40秒としたことにより、循環路内に導入される流体は、原料液と溶離液の比率で約1:3となる。このモードの終了時点では、成分Aと成分Cの濃度分布の山は、第1工程の開始時点に比して約1カラム分下流方向に移動している。
【0022】
次いで、2台のポンプ20、30を何れも停止とし、切替え弁23、33を循環モードに選択し、且つ、引抜き弁41、51を何れも閉にして、図7に示す第5工程に移行する。このモードでは、カラム14を搭載する回転弁10の回転部12を、単に1カラム分だけ反時計方向に回転させて、固定部11と回転部12の各ノズルの組合せを次のカラム位置に移す。これによって、カラム側から見ると、循環路16への原料液及び溶離液の導入口、並びに、循環路16からの各成分の引抜き位置を下流方向に1カラム分移動させたことになる。この後は、再び図3の第1工程に移行し、ポンプ30によって溶離液を注入しつつ成分Aを引き抜く。以降、各工程を順次に繰り返すことによって、2種以上の成分を含む原料液は、2つの成分A及びCに分離して抽出される。
【0023】
上記実施形態例では、2台のポンプ20、30の接続を切替え弁23、33の選択によって切り換えることで、各ポンプ20、30をある時は循環ポンプとして作動させ、また、ある時は液注入ポンプとして作動させる。これによって、ポンプの台数が削減でき、クロマト分離装置のコストが低減できる。また、背圧弁を使用しなくとも、循環路の圧力変動が抑えられるので、循環路系内の機器の圧力仕様を低く選定でき、同様にクロマト分離装置のコスト低減が可能である。
【0024】
以上、本発明をその好適な実施形態例に基づいて説明したが、本発明のクロマト分離装置は、上記実施形態例の構成にのみ限定されるものではなく、上記実施形態例の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【0025】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明のクロマト分離装置によると、ポンプの個数を削減し、且つ、循環路からの引抜きに際して背圧弁の使用を必要としないので、循環路系内の圧力仕様を低くできることから、本発明は、間欠移動層式クロマト分離装置及び擬似移動層式クロマト分離装置の価格を低減した顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態例に係る移動層式クロマト分離装置の構成を示す模式的ブロック図。
【図2】図1の分離装置の各工程段階における各部の作動状態を示す表。
【図3】 図2の第1工程における分離装置の液の流れを示す系統図。
【図4】図2の第2工程における分離装置の液の流れを示す系統図。
【図5】図2の第3工程における分離装置の液の流れを示す系統図。
【図6】図2の第4工程における分離装置の液の流れを示す系統図。
【図7】図2の第5工程における分離装置の状態を示す系統図。
【図8】一般的な移動層方式のクロマト分離装置の原理を示す、分離塔の模式的断面図。
【図9】一般的な擬似移動層式クロマト分離装置の原理を示す、分離塔の模式的断面図。
【符号の説明】
10:回転弁
11:固定部
12:回転部
13:回転方向
14:液流方向
15:管路
16:循環路
16A:循環半路
16B:循環半路
20:第1ポンプ
21:吐出口
22:吸入口
23:第1切替え弁
24:原料液注入管
25:原料液貯槽
30:第2ポンプ
31:吐出口
32:吸入口
33:第2切替え弁
34:溶離液注入管
35:溶離液貯槽
41:成分A引抜き弁
42:成分A引抜き管
43:成分A貯槽
51:成分C引抜き弁
52:成分C引抜管
53:成分C貯槽

Claims (4)

  1. 入口及び出口を有する4つ以上のカラムの前記入口及び出口を順次に連結して無端の循環路を形成し、前記循環路中に2種以上の成分を含む原料液と溶離液とを注入し、前記循環路中から前記原料液中の第1成分及び第2成分を分離して引き抜くクロマト分離装置であって、前記循環路中の原料液の注入口、溶離液の注入口、第1成分の引抜き位置、及び、第2成分の引抜き位置を順次に下流側に切り替える流路切替え手段を備えるクロマト分離装置において、前記流路切替え手段を介して前記循環路中の相互に関連した位置に挿入される第1及び第2のポンプと、前記第1のポンプを循環路の液を循環させる循環モードと原料液を注入する原料液注入モードの何れかに選択的に切り替える第1切替え弁と、前記第2のポンプを循環路の液を循環させる循環モードと溶離液を注入する溶離液注入モードの何れかに選択的に切り替える第2切替え弁とを有することを特徴とするクロマト分離装置。
  2. 前記第1及び第2の切替え弁の選択を夫々循環モード及び溶離液注入モードとし、前記第1及び第2のポンプの少なくとも一方を運転して、前記溶離液を注入すると共に前記第1成分を引き抜く第1工程、
    前記第1の切替え弁の選択を原料液注入モードとし、前記第1のポンプを運転して、前記原料液を注入しつつ前記第1成分を引き抜く第2工程、
    前記第1及び第2の切替え弁の選択を何れも循環モードとし、前記第1及び第2のポンプの少なくとも一方を運転して、前記循環路内で液を循環させる第3工程、
    前記第2の切替え弁の選択を溶離液注入モードとし、前記第2のポンプを運転して、前記溶離液を注入すると共に前記第2成分を引き抜く第4工程、及び、
    前記流路切替え手段を介して、前記原料液の注入口、溶離液の注入口、第1成分の引抜き位置、及び、第2成分の引抜き位置を下流側に1カラム分移動させる第5工程を順次に有する、請求項1に記載のクロマト分離装置。
  3. 前記流路切替え手段が回転弁によって構成される、請求項1又は2に記載のクロマト分離装置。
  4. 略円筒状の固定面を有する固定部と、前記固定面上を褶動する回転面を有し所定のタイミングで間欠的に回転する回転部とを備える回転弁であって、前記回転部は入口及び出口を有する4つ以上のカラムを一体的に支持すると共に、前記入口及び出口に連通する回転ノズルを前記回転面に有し、前記固定部は、前記回転ノズルに対応して配置される固定ノズルを前記固定面に有し、該固定ノズルに連通する管路によって前記カラムを2群に分けて第1の循環半路及び第2の循環半路に接続する回転弁と、
    2種以上の成分を含む原料液を供給する原料液注入管、及び、溶離液を供給する溶離液注入管と、
    吐出口が前記第1の循環半路の一端に接続される第1のポンプ、及び、前記第1のポンプの吸入口に、前記第2の循環半路の一端又は前記原料注入管を選択的に接続する第1の切替え弁と、
    吐出口が前記第2の循環半路の他端に接続される第2のポンプ、及び、前記第2のポンプの吸入口に、前記第1の循環半路の他端又は前記溶離液注入管を選択的に接続する第2の切替え弁と、
    前記第1の循環半路中の何れかの位置に接続され該第1の循環半路から前記原料液中の第1成分を抜き出す第1の引抜き管と、
    前記第2の循環半路中の何れかの位置に接続され該第2の循環半路から前記原料液中の第2成分を抜き出す第2の引抜き管とを有することを特徴とするクロマト分離装置。
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