JP4175554B2 - 化粧シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築物の内装、建具の表面化粧、車両内装等に用いられ、これらの表面に意匠を賦与したり表面を保護する目的等で用いられる化粧シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から塩化ビニル系樹脂の基材シートの表面に印刷等により絵柄を設けた化粧シートが用いられてきた。しかし、近年、基材シートの材質が塩化ビニル系樹脂からポリオレフィン系樹脂に移行しつつある。
【0003】
ポリオレフィン系樹脂は、塩化ビニル系樹脂に比べ、表面のインキとの密着性が悪い。そこでポリオレフィン系樹脂を基材シートとして化粧シートを製造する際、基材シートと絵柄との密着性を向上させる為に、基材シートの表面に易接着プライマーを塗工した後、絵柄を印刷することが行われている(特公昭52−24552号公報、特開平10−71683号公報等)。従来、この種プライマーは、ポリエステルポリオール又は塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体等の主剤とイソシアネート系の硬化剤とからなる二液硬化型ウレタン樹脂が用いられていた。
【0004】
更に耐候性を考慮した二液硬化型ウレタン樹脂組成分として、メチルメタアクリレートと2−ヒドロキシエチルメタアクリレートを主成分として共重合させたアクリルポリオール、又はn−ブチルアクリレートと2−ヒドロキシエチルメタアクリレートを主成分として共重合させてなるアクリルポリオールと脂肪族又は脂環式イソシアネートからなる無黄変イソシアネートを用いることが公知である(岩田敬治編「ポリウレタン樹脂ハンドブック」第406頁〜第407頁 昭和62年9月25日 日刊工業新聞社発行)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリオレフィン系樹脂は塩化ビニル系樹脂と比較して前記のプライマー層の密着性が低く、プライマーが基材シートから剥離し易く絵柄の密着性が不十分であるという問題があった。
【0006】
また、化粧シートは屋外等で使用される場合には勿論のこと屋内で使用する場合にも窓際等の日光に曝される場所に使用されるものについては、耐候性に優れることが要求され、屋外にて紫外線、高温、高湿度下に1年間曝された後でも基材シートと絵柄層とが容易に剥がれない程度の絵柄と基材シートとの密着性(耐候密着性)が望まれている。
【0007】
本発明者らは従来公知の前記アクリルポリオールと無黄変イソシアネートからなる2液硬化型ウレタン樹脂をオレフィン系樹脂基材シートのプライマーとして用いることも試みた。しかしなお、十分な耐候密着は得られなかった。
【0008】
また、基材シートの両面に絵柄を印刷する場合には、基材シートの両面にインラインでプライマーの塗工を行うと、塗工直後のプライマーの基材に対する初期密着力が低く、シート同士がブロッキングし易いという問題があった。更に、前記の2液硬化型ウレタン樹脂の場合、Vカット加工等の折曲加工を行った際にプライマー層に龜裂が入り易いと云う問題もあった。
【0009】
本発明は上記従来技術の欠点に鑑みなされたものであり、ポリオレフィン系樹脂からなる基材シートを用いた化粧シートにおいて、プライマー層が基材シートから剥離しにくく、特に耐候密着性に優れ、絵柄層の密着性が長期にわたり良好であり、またプライマー層が基材シートに対して密着力を発現するのが早く、製造直後の初期密着性が良好であり、その上、可撓性に優れ折曲加工適性がある、化粧シート製造の際の作業性に優れた化粧シートを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート表面にプライマー層を塗工した後、絵柄層を設けてなる化粧シートにおいて、上記プライマー層が、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、及び分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレートを共重合させて得られるアクリルポリオールを主剤とし脂肪族又は脂環式イソシアネートを架橋剤とし、主剤と架橋剤とを混合して構成される2液硬化型アクリルウレタン樹脂からなるプライマー組成物を架橋硬化せしめて形成されたものであることを特徴とする化粧シート、(2)絵柄層の表面に保護層が積層されている上記(1)記載の化粧シート、(3)ポリオレフィン系樹脂からなる基材シートの表面のプライマー層側に活性水素原子含有極性官能基を有してなり、該極性官能基とプライマー層とがウレタン結合してなることを特徴とする上記(1)又は(2)記載の化粧シート、を要旨とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。本発明の化粧シートは図1に示すように、ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート1の片面にコロナ放電処理等の易接着処理を施して表面に水酸基等の活性水素原子を含む極性官能基を形成した後、該処理面に後述の特定組成の2液硬化型アクリルウレタン樹脂からなる易接着プライマー組成物を塗工して架橋硬化せしめて易接着プライマー層2(以下、単にプライマー層と呼称する)を設けた後、該プライマー層2の表面に印刷インキを用いて絵柄層3を形成してなるものである。尚、図1に示すように、本発明化粧シートは、絵柄層3の表面を保護層4で覆うことが好ましい。
【0012】
基材シート1は着色シート、非着色シート、透明シート、不透明(隠蔽性)シートのいずれでもよく、化粧シートの用途等に応じ適宜使用される。例えば図1に示す態様の化粧シートの場合は、一般に保護層が透明(絵柄等を見ることができる透明性)に形成され、基材シートは任意の着色シートが用いられる。該基材シートは、図示の如く単層でも良いが、2層、3層或いは、それ以上の積層体であっても良い。
【0013】
又、本発明化粧シートは図2に示すように、基材シートとして透明シートを用い、該透明シートの裏面側に易接着処理を施し、プライマー層2を塗工して形成した後、該プライマー層2の上に絵柄を設けて、基材シート1の裏面側に絵柄層3が形成された化粧シートとすることもできる。また本発明の化粧シートの層構成としては図1、図2の態様の他に、基材シートを2枚のシートから構成し、そのシートの層間に絵柄層を設けてもよい。また、基材シート1の両面にプライマー層を設け、基材シート1の両面に絵柄層3を印刷形成してもよい。
【0014】
本発明において基材シート1は、ポリオレフィン系樹脂が用いられる。ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン(低密度、又は高密度)、ポリプロピレン(アイソタクチック型、シンジオタクチック型、又はこれらの混合型)、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン樹脂、或いは下記に記載した各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。ポリオレフィン系樹脂シートは、延伸シート、未延伸シートのいずれも使用可能であるが、このシートには、必要に応じ、充填剤、発泡剤、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の各種の添加剤を添加する。また、基材シート1の厚みは、用途等によるが、20〜300μm程度が好ましい。
【0015】
オレフィン系熱可塑性エラストマーは、▲1▼主原料がハードセグメントである高密度ポリエチレン又はポリプロピレンのいずれかからなり、これにソフトセグメントとしてのエラストマー及び無機充填剤を添加してなるもの、▲2▼特公平6−23278号公報記載の、ハードセグメントであるアイソタクチックポリプロピレンとソフトセグメントとしてのアタクチックポリプロピレンとの混合物からなるもの、▲3▼特開平9−111055号公報、特開平5−77371号公報、特開平7−316358号公報等に記載のエチレン−プロピレン−ブテン共重合体からなるもの、が代表的なものである。必要に応じて着色剤等の添加剤をこれに添加して用いる。以下これらの詳細を述べる。
【0016】
▲1▼本発明における高密度ポリエチレンとしては、好ましくは、比重が0.94〜0.96のポリエチレンであって、低圧法で得られる結晶化度が高く分子に枝分かれ構造の少ない高分子である高密度ポリエチレンが用いられる。また、ポリプロピレンとしては、好ましくは、アイソタクチックポリプロピレンが用いられる。
【0017】
本発明におけるエラストマーとしては、ジエン系ゴム、水素添加ジエン系ゴム、オレフィンエラストマー等が用いられる。水素添加ジエン系ゴムは、ジエン系ゴム分子の二重結合の少なくとも一部分に水素原子を付加させてなるもので、ポリオレフィン系樹脂(本発明においては、高密度ポリエチレン又はポリプロピレン)の結晶化を抑え、柔軟性をアップさせる。ジエン系ゴムとしては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム等がある。オレフィンエラストマーとしては、2種類又は3種類以上のオレフィンと共重合しうるポリエンを少なくとも1種加えた弾性共重合体であり、オレフィンはエチレン、プロピレン、α−オレフィン等が使用され、ポリエンとしては、1,4ヘキサジエン、環状ジエン、ノルボルネン等が使用される。好ましいオレフィン系共重合体ゴムとしては、例えばエチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエンゴム、エチレン−ブタジエン共重合体ゴム等のオレフィンを主成分とする弾性共重合体が挙げられる。なお、これらのエラストマーは、必要に応じて有機過酸化物、硫黄等の架橋剤を用いて、適量架橋させてもよい。
【0018】
これらエラストマーの添加量としては、10〜60重量%、好ましくは30重量%程度である。10重量%より低いと一定荷重伸度の温度に対する変化が急峻になり過ぎ、また、破断時伸度、耐衝撃性、易接着性の低下が生じ、60重量%より高いと透明性、耐候性及び耐クリープ性の低下が生じる。
【0019】
本発明における無機充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、クレー、タルク等の平均粒径0.1〜10μm程度の粉末が用いられる。添加量としては、1〜60重量%程度、好ましくは5〜30重量%程度である。1重量%より低いと耐クリープ変形性及び易接着性の低下が生じ、60重量%より高いと破断時伸度及び耐衝撃性の低下が生じると共に製膜が難しくなる。
【0020】
▲2▼特公平6−23278号公報記載の、(A)ソフトセグメントとして、数平均分子量Mnが25000以上、且つ、重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90重量%と、(B)ハードセグメントとして、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10重量%、との混合物からなる軟質ポリプロピレン。此の種のオレフィン系熱可塑性エラストマーの中でも、所謂『ネッキング』を生じ難く、加熱、加圧を用いて各種形状に成形したりエンボス加工する際に適性良好なものとしては、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとの混合物からなり、且つアタクチックポリプロピレンの重量比が5重量%以上50重量%以下であるものである。ポリプロピレン系のオレフィン系熱可塑性エラストマー自体はすでに公知のものであるが、包装容器等従来公知の用途に用いられる場合は、強度を重視する為に、ソフトセグメントとなるアタクチックポリプロピレンの重量比が5重量%未満のものが専ら使用されていた。しかしながら三次元形状乃至凹凸形状に成形したり、エンボス加工する場合、前記の如くネッキングを生じて良好な加工が不可能である。これに対し、従来の組成設計とは逆に、ポリプロピレン系のオレフィン系熱可塑性エラストマーに於いて、アタクチックポリプロピレンの重量比が5重量%以上とする事によって、エンボス加工したり、三次元形状乃至凹凸形状の物品に成形する際のネッキングによる不均一なシートの変形、及びその結果としての皺、絵柄の歪み等の欠点が解消できる。特にアタクチックポリプロピレンの重量比が20重量%以上の場合が良好である。一方、アタクチックポリプロピレンの重量比が増加し過ぎると、シート自体が変形し、絵柄が歪んだり、多色刷りの場合に見当(Resister)が合わなくなる等の不良が発生し易くなる。又、成形時にも破れ易くなる為、好ましくない。アタクチックポリプロピレンの重量比の上限としては、輪転グラビア印刷等の通常の輪転印刷機を用いて絵柄層を印刷し、又、シートのエンボス加工、真空成形、Vカット加工、射出成形同時ラミネート等を採用する場合は50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0021】
▲3▼エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマー。ここで、そのブテンとして、1ブテン、2ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体で、非晶質の部分を一部含む。上記エチレン・プロピレン・ブテン共重合体の好ましい具体例としては次の(i) 〜(iii) が挙げられる。
(i)特開平9−111055号公報記載のもの。これはエチレン、プロピレン及びブテンの3元共重合体によるランダム共重合体である。単量体成分の重量比はプロピレンが90重量%以上とする。メルトフローレートは、230℃、2.16kgで1〜50g/10分のものが好適である。そして、このような3元ランダム共重合体100重量部に対して、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50重量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3重量部を熔融混練してなるものである。
(ii)特開平5−77371号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン、1ブテンの3元共重合体であって、プロピレン成分含有率が50重量%以上の非晶質重合体20〜100重量%に、非晶質ポリプロピレンを80〜0重量%添加してなるものである。
(iii) 特開平7−316358号公報記載のもの。これは、エチレン・プロピレン・1ブテン3元共重合体であって、プロピレン及び/又は1ブテン含有率が50重量%以上の低結晶質重合体20〜100重量%に対して、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶性ポリオレフィン80〜0重量%に混合した組成物100重量部に対してNアシルアミノ酸アミン塩、Nアシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を5重量%添加してなるものである。
エチレン・プロピレン・ブテン共重合体樹脂は、単独で用いてもよいし、上記(i) 〜(iii)に必要に応じ他のポリオレフィン樹脂を混合して用いてもよい。
【0022】
基材シート1には着色剤を添加してもよい。着色剤は、基材シートに化粧シートとして必要な色彩を持たせるためのものであり、チタン白、亜鉛華、弁柄、朱、群青、コバルトブルー、チタン黄、黄鉛、カーボンブラック等の無機顔料、イソインドリノン、ハンザイエローA、キナクリドン、パーマネントレッド4R、フタロシアニンブルー等の有機顔料或いは染料、アルミニウム、真鍮等の箔粉からなる金属顔料、二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸亜鉛等の箔粉からなる真珠光沢顔料等が用いられる。着色は透明着色、不透明(隠蔽)着色いずれでも可であるが、図1の様な構成の化粧シートの場合には被着体を隠蔽するために不透明着色が好ましい。又、図2の様な構成の化粧シートの場合には絵柄層を透視する為に、無色透明又は着色透明とする。
【0023】
さらに、基材シート1には必要に応じて、熱安定剤、難燃剤、ラジカル捕捉剤等を添加する。熱安定剤は、フェノール系、サルファイト系、フェニルアルカン系、フォスファイト系、アミン系等公知のものであり、熱加工時の熱変色等の劣化の防止性をより向上させる場合に用いられる。難燃剤としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末が用いられ、これらは難燃性を付与する必要がある場合に添加する。
【0024】
これらの材料をブレンドしたものをカレンダー製法等の常用の方法により製膜して基材シートを得る。基材シートの厚みは50〜200μm程度、好ましくは100μm程度である。尚、基材シートとして着色剤、無機充填剤、又はその両方を添加した組成物を用い、熔融押出法で製膜する場合、薄膜に製膜すると製膜適性が低下し、基材シート表面が平滑に仕上がらない。一般的には着色剤等を計10重量部程度以上添加し、80μm以下に製膜する場合、此の傾向が目立つ。そこで此の様な場合、3層共押出とし中心の層のみに着色剤を添加し、表裏の最外層には顔料等は無添加にすると良い。
【0025】
基材シート1の表面には、好ましくはコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン処理等の易接着処理が施される。これらの易接着処理は、この種のシートに於いて通常使用される方法を用いることができる。
此の様な易接着処理を行うことによって、基材シートの表面に、水酸基、カルボキシル基等の活性水素原子含有官能基を生成出来る。尚、基材シートを熔融押出法で製膜する場合には、製膜時に表面に或る程度、これら極性官能基が生成される。よって製膜時に生成される極性官能基が十分であれば、易接着処理は省いても良い。
基材シートの表面に易接着処理を行った後、該処理面に特定のプライマー組成物を塗工して乾燥、硬化させて、プライマー層2を設ける。易接着処理又は製膜時に生成した活性水素原子含有官能基は、プライマー組成物中のイソシアネート基ともウレタン結合を形成し、それによって基材シートとプライマー層との密着が、より良好となる。
【0026】
本発明においてプライマー層2を形成するプライマー組成物は、オクチル(メタ)アクリレート又はシクロヘキシル(メタ)アクリレートのモノマーを共重合成分として形成されたアクリルポリオールを主剤とし、該主剤と脂肪族又は脂環式イソシアネート系硬化剤とを混合して構成される2液硬化型アクリルウレタン樹脂が用いられる。尚、ここで(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタアクリレートと云う意味の表記である。
【0027】
アクリルポリオールは、モノマーとして、少なくとも(A)オクチル(メタ)アクリレート又はシクロヘキシル(メタ)アクリレートのいずれか一方又は両方、(B)汎用アクリレート、(C)ヒドロキシル基含有アクリレートを含む組成物を共重合させて得られる。上記オクチル(メタ)アクリレートとしてはn−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートのいずれも用いられるが、通常は2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートを用いる。上記汎用アクリレートモノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、n−(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸プロピル等が挙げられる。また、上記ヒドロキシル基含有アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1−クロル−2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0028】
アクリルポリオール中の上記モノマー成分の組成は下記の範囲が好ましい。
成分(A)30〜65重量%
成分(B)10〜45重量%
成分(C)10〜40重量%
また、上記モノマー成分のなかでも(A)はオクチルアクリレートとシクロヘキシルアクリレートの併用〔通常配合比は1:2〜2:1(重量比)程度〕が好ましく、(B)はメチルメタアクリレートが好ましく、(C)は2−ヒドロキシエチルメタアクリレートが好ましい。
【0029】
成分Aを増やすことによって、耐候密着、及び可撓性は向上するが、一方で耐ブロッキング性は低下する。成分Bを増やすことによって、耐ブロッキング性は向上するが、耐候密着と可撓性は低下する。又、成分Cを増やすことによって初期密着、耐候密着は増すが、可撓性が低下する。その為、各成分を上記割合で混合し、各成分の長所を引き出し短所を抑える。
【0030】
アクリルポリオールの製造例を以下に示す。攪拌装置、滴下装置、還流冷却機を備える反応容器中に下記の成分組成の溶剤を仕込み、N2 シールし、80〜90℃に昇温し、下記成分組成のモノマーを3時間かけて連続滴下した後、2時間加熱攪拌した。次いで攪拌しながら滴下装置から重合開始剤(アゾイソブチロニトリル)を1.2重量部滴下した後、80〜90℃で3時間加熱攪拌して反応させてアクリルポリオールを得た。得られたアクリルポリオールは、水酸基価10mgKOH/g、平均分子量12,000であった。
【0031】
〔モノマー組成〕
・メタクリル酸メチル 25重量部
・メタクリル酸2−ヒドロキシエチル 15重量部
・オクチルアクリレート 15重量部
・シクロヘキシルアクリレート 20重量部
・スチレン 22重量部
〔溶剤組成〕
キシレン 80重量部
酢酸ブチル 20重量部
【0032】
硬化剤として用いられるイソシアネートは2価以上の脂肪族イソシアネート、脂環式イソシアネート、又は芳香族イソシアネートが用いられる。耐候性が良好であり、変色防止に優れる点から脂肪族イソシアネートが好ましい。脂肪族イソシアネート又は脂環式イソシアネートとしては、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4(2,4,4)−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、4,4´−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(HMDI)、1,4−シクロヘキシルジイソシアネート(CHDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート(LDI)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等が挙げられる。また芳香族イソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)等が挙げられる。また、イソシアネートは上記イソシアネートの付加体、又は多量体等を用いてもよい。
【0033】
プライマー組成物は、アクリルポリオール、イソシアネート以外に、溶剤、添加剤等の成分を混合して構成することができる。
【0034】
プライマー層の密着性の耐候劣化を更に良好に防止するには、プライマー層中に紫外線吸収剤、又は光安定剤等の耐候性添加剤を添加するのが好ましい。耐候性添加剤は、例えばベンゾトリアゾール系、ヒドロキシベンゾフェノン系、サリチレート系、アクリロニトリル系、金属錯塩系、或いは、酸化亜鉛、酸化セリウム等の金属酸化物の粒径0.2μm以下の微粒子からなる紫外線吸収剤、ピベリジン系のラジカル捕捉剤、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤が挙げられる。中でもビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジニル)セバケートが好ましい。上記耐候性添加剤のプライマー層中への添加量は、0.1〜5重量%が好ましい。一般的には紫外線吸収剤と光安定剤を両方併用することが好ましい。その場合には、各々を0.1〜5重量%添加する。
【0035】
プライマー層2は、プライマー組成物をグラビアロールコート、ロールコート等の方法で塗工して形成される。プライマー層2の塗布量は、1〜20g/m2 (乾燥時)が好ましく、更に好ましくは、5〜10g/m2 (乾燥時)である。
【0036】
絵柄層3は、木目模様、石目模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形、文字、記号、線画、各種抽象模様等の柄層、又は全面ベタ印刷等のベタ層等からなる。絵柄層2は柄層のみ、ベタ層のみ或いは、柄層とベタ層との2層構成のいずれでもよい。
【0037】
絵柄層3は、一般的な絵柄印刷用のインキを用いて印刷、塗工することで形成できる。インキとしては、バインダーと着色剤からなるもので、例えば、バインダーとして、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等の塩素化ポリオレフィン、ポリエステル、ポリウレタン(2液硬化型ウレタン樹脂、又は熱可塑性ウレタン樹脂)、アクリル、ポリ酢酸ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等を、一種又は二種以上混合したものが用いられる。着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青、フタロシアニンブルー、キナクリドン、イソインドリノン等の顔料又は染料、アルミニウム、真鍮等の金属箔粉、二酸化チタン被覆雲母の箔粉からなる光輝性顔料を一種又は二種以上混合したものを用いる。
【0038】
化粧シートの耐摩耗性、耐薬品性を向上せると共に、表面の艶の調整等の為に透明な樹脂からなる保護層4を設けるのが好ましい。保護層4は、図1に示すように絵柄層3の表面に塗工、又は予め製膜したシートの貼着(ラミネート)によって形成し絵柄層3を覆うように形成することができる。また、図2に示すように基材シート1の裏面側に絵柄層3を設けた場合には、基材シート1の表面側に形成してもよい(図示しない)。保護層4は、ポリオレフィン系樹脂(基材シートの材料として列記したものと同様のもの)、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、或いは不飽和(メタ)アクリレート系、又はエポキシ系の電離放射線硬化性樹脂等の、透明又は半透明な樹脂が使用される。保護層4は塗工による場合は、グラビアロールコート、ロールコート、カーテンフローコート、コンマコート、エクストルージョン(熔融押出)コート等の方法を用い、又、貼着の場合は、2液硬化型ウレタン樹脂等の接着剤を用いたドライラミネート、熱プレスによる融着等の方法を用いて形成する。
【0039】
保護層4の厚みは、乾燥時の厚みが1〜100μm程度になるように形成するのが好ましい。保護層4には、必要に応じ、各種添加剤、例えば艶消しにするための艶消剤(光拡散剤)、減摩剤、耐候性添加剤、滑剤等を添加してもよい。艶消剤は、炭酸カルシウム、シリカ、硫酸バリウム、ウレタン樹脂ビーズ、ポリカーボネート樹脂ビーズ等の、粒径1〜30μm程度の微粒子が有効である。減摩剤としては、球状α−アルミナ等の粒径5〜30μm程度の粒子か用いられる。耐候性添加剤としては、前記のものが用いられる。滑剤としては、ワックス等が用いられる。
【0040】
本発明の化粧シートは、絵柄層に加えて絵柄層以外の装飾を施してもよい。例えば、上記した基材シートに染料、顔料を添加して透明着色又は不透明着色を施す方法以外に、保護層4の表面に木目板導管溝、石板表面凹凸(花崗岩劈開面等)、布表面テクスチャア、梨地、砂目、ヘアライン、万線条溝等の凹凸模様を形成する方法が挙げられる。凹凸模様を形成するには、例えば、加熱・加圧によるエンボス加工法、ヘアライン加工法、賦形フィルム法等がある。エンボス加工法は、保護層表面を加熱軟化させ、該表面をエンボス版で加圧してエンボス版の凹凸模様を賦形し、冷却して固定化するもので、公知の枚葉式、或いは輪転式のエンボス機等が用いられる。
【0041】
更に、上記の凹凸模様の凹陥部にはワイピング法により、着色層を形成してもよい。ワイピング法としては、ドクターブレードコート法またはナイフコート法にて凹陥部を含む表面全面に着色剤インキを塗布した後、凹陥部以外の表面から着色剤インキを除去することにより、凹陥部のみに着色層を形成する。着色層を形成する着色剤インキは、前記の如き染料、顔料、光輝性顔料等の着色剤と、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化型樹脂等のバインダー樹脂と、ベヒクルとからなるインキ、エマルジョン型の水系タイプインキ等を使用できる。
【0042】
また化粧シートに難燃性を付与するために、基材シート1や保護層3等に、難燃剤として水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等の粉末を添加してもよい。
【0043】
また化粧シートに抗菌性を付与するために、基材シート1や保護層3等に銀イオン担持ゼオライト粉末等の抗菌剤や、10,10’−オキシビスフエノキシアルシン等の防黴剤等を添加してもよい。
【0044】
本発明の化粧シート1は各種被着体に積層し、所定の成形加工等を施して、各種装飾用等として用いることができる。例えば、壁、天井、床等建築物の内装、窓枠、扉、手摺等の建具の表面化粧、箪笥等の家具又はテレビジョン受像機等の弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車等の車輌内装、航空機内装、窓硝子の化粧用等の用途が挙げられる。
【0045】
【実施例】
実施例1
基材シートとして両面にコロナ放電処理が施され活性水素原子含有官能基を表面に生成した厚さ100μmのポリプロピレン樹脂シート(アイソタクチックポリプロピレンを主体とする結晶質ポリプロピレン100重量部に水素添加スチレンブタジエンゴムを25重量部、炭酸カルシウム10重量部、チタン白、弁柄、黄鉛を主成分とする顔料を計5重量部混合)を用い、該シートのコロナ放電処理を行った面の表面に下記組成の2液硬化型アクリルウレタン系樹脂プライマーを下記の塗工条件で塗布して厚さ2μmのプライマー層を設けた後、アクリル系樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体の8対2重量比混合物をバインダーとし、弁柄とカーボンブラックを主成分とする顔料からなるインキを用いて木目絵柄をグラビア輪転印刷機で印刷して化粧シートを得た。印刷後の化粧シートは、3インチ直径の紙管に巻m数100mで巻取って、40℃雰囲気中で3日間養生してプライマー層を完全に架橋、硬化せしめた。
【0046】
〔2液硬化型ウレタン樹脂プライマー組成〕
・アクリルポリオール(※1) 100重量部
・ヘキサメチレイジイソシアネート 8重量部
・溶剤(酢酸エチル:トルエン=1:1重量比) 10重量部
※1:アクリルポリオールは前記製造例に示したものを用いた。
【0047】
〔プライマー塗工条件〕
グラビアロールコーターで塗工。
【0048】
比較例1
比較の為に下記組成のポリエステルポリオール系ウレタン樹脂プライマーを用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
〔ポリエステルポリオール系ウレタン樹脂プライマー組成〕
・ポリエステルポリオール(※2) 100重量部
・ヘキサメチレンジイソシアネート 8重量部
・溶剤(酢酸エチル:トルエン=1:1重量比) 10重量部
※2〔ポリエステルポリオール組成〕
・ネオペンチルグリコール 150重量部
・TMP 22重量部
・アジピン酸 72重量部
・イソフタル酸 123重量部
上記成分を反応させて得た平均分子量1000のもの。
【0049】
比較例2
下記組成の塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体/イソシアネート系プライマーを用いた以外は実施例1と同様にして化粧シートを得た。
〔プライマー組成〕
・塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体 100重量部
・ヘキキサメチレンジイソシアネート 8重量部
・溶剤(酢酸エチル:トルエン=1:1重量比) 10重量部
【0050】
実施例及び比較例の化粧シートについて、印刷し、養生後の巻取を巻戻し、プライマー層及び絵柄層の基材シートの裏面への付着、即ちブロッキングの有無を目視で確認した。又、絵柄印刷を行った直後の初期密着性、スーパーUV耐候性試験機100時間経過後の耐候密着性を印刷面の上からセロハン粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名セロテープ・幅24mm・産業用)を貼着した後、剥離して試験した。試験結果を表1に示す。スーパーUV耐候性試験機は、岩崎電気株式会社製SUV−W13型を用い、295〜450nmの帯域の紫外線強度60mW/cm2 、試験温度(ブラックパネル温度)63℃、湿度70%で、紫外線照射20時間と4時間の結露とを交互に行った。この条件での100時間の曝露は、米国フロリダ州での屋外曝露1年分にほぼ匹敵する。
【0051】
又、実施例及び比較例の化粧シートをともに、耐候性試験機未照射の状態で、酢酸ビニル系エマルジョンの接着剤を用いて、厚さ10mmのラワン合板表面に接着し、合板の化粧シート非貼着面側に接着剤層に迄達する横断面V字型の溝を切削し、150℃雰囲気中で、合板を溝が閉じるように折り曲げてVカット加工した。
【0052】
【表1】
Figure 0004175554
※1:折曲部でのプライマーの龜裂発生の有無
【0053】
【発明の効果】
以上説明したように本発明化粧シートは、プライマー層としてオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、及び分子中に水酸基を含有する(メタ)アクリレートとを共重合成分として含むアクリルポリオールを主剤とし、脂肪族又は脂環式イソシアネートを架橋剤とする2液硬化型アクリルウレタン樹脂を用いたことにより、ポリオールとしてポリエステルポリオール又は塩化ビニル−酢酸ビニル−マレイン酸共重合体を用いた2液硬化型ウレタン樹脂からなるプライマーを用いた従来の化粧シートと比較して、プライマー層のポリオレフィン系樹脂からなる基材シートに対する密着性が、初期密着性は勿論のこと耐候性試験後でも良好であり、屋外等で使用された場合でも長期にわたり絵柄層の剥離の虞れ等のない良好な意匠性を有する化粧シートが得られる。
【0054】
また、プライマー層を基材シートに塗工した直後であっても、プライマー層の密着力の発現が早く初期密着性が良好である為、基材シートの両面にインラインコートを行ってもブロッキングする虞れがなく、化粧シートを製造する際の作業性に優れる。またプライマー層の可撓性も良好で、Vカット加工等の折り曲げ加工時にプライマー層に龜列や、剥離を生じ難い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明化粧シートの一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明化粧シートの他の態様を示す縦断面図である。
【符号の説明】
1 ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート
2 プライマー層
3 絵柄層

Claims (3)

  1. ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート表面にプライマー層を塗工した後、絵柄層を設けてなる化粧シートにおいて、
    上記プライマー層が、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、及び分子中に水酸基を有する(メタ)アクリレートを共重合させて得られるアクリルポリオールを主剤とし脂肪族又は脂環式イソシアネートを架橋剤とし、主剤と架橋剤とを混合して構成される2液硬化型アクリルウレタン樹脂からなるプライマー組成物を架橋硬化せしめて形成されたものであることを特徴とする化粧シート。
  2. 絵柄層の表面に保護層が積層されている請求項1記載の化粧シート。
  3. ポリオレフィン系樹脂からなる基材シートの表面のプライマー層側に活性水素原子含有極性官能基を有してなり、該極性官能基とプライマー層とがウレタン結合してなることを特徴とする請求項1又は2記載の化粧シート。
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