JP4175508B2 - 易開封性積層フイルム及びその用途 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の材料に対し、優れた密封性と易開封性を示す耐熱性、耐油性に優れた易開封性樹脂積層フィルム及びその用途に関する。とりわけプロピレン系重合体層との易剥離性、開封時のソフト感、耐ブロッキング性、衛生性、製膜加工性、ラミネート加工性等に優れ、且つ油脂及び脂肪性食品の包装に適応した易開封性積層フィルム、該熱融着性積層フィルムからなる蓋材及びそれを用いた包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
せんべい、ポテトチップス等のスナック菓子包装、あるいはゼリー、ミルク、ヨーグルト、プリン、豆腐、乳酸飲料等の食品包装や、ブリスター包装、その他、医薬品、医療器具、日用品、雑貨等の包装として、ボトル、カップ乃至トレー状のプラスチック容器をプラスチックラミネートフィルム乃至アルミ箔ラミネートフィルムからなる蓋材でシールした包装が広く採用されている。このような包装に要求されることは、流通経路に耐える機械的な強度、衛生性の保持ができるシール強度及び使用時における開封性の良さである。
【0003】
そのような包装に使われる資材の一つとして、一方を易開封性(易剥離性、イージーピール性)フィルムと呼ばれる範疇のフィルムを、最内層である熱融着層とした袋に、あるいは蓋材に用いた包装体が広く利用されている。しかし、これまで提案されている各種の熱融着層は、密封するためのヒートシール強度は高いが、開封時のイージーピール性は必ずしも十分ではなく、両者の間に適度なバランスをとることが求められている。ここでイージーピール性に求められている特性は、単に開封性の容易さのみならず、開封後に開封部に糸曳き現象等による樹脂断片の付着残留物がなく、開封部の外観の良さをも含めた総合評価であり、それによってその良否が判定されている。
【0004】
かかる易開封性(易剥離性)を有するフィルムとして、例えば、易剥離層をポリプロピレン系樹脂とポリエチレン樹脂との混合物層と高密度ポエチレン樹脂層とからなる易開封性包装体(特許文献1参照)、ポリプロピレンとポリエチレンとの混合樹脂からなる接着剤層(易剥離層)と支持層(ラミネート層)からなるポリプロピレン容器の蓋材シーラントフィルム(特許文献2参照)、エチレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−エチレン共重合体及び低密度ポリエチレンからなる易開封性ヒートシール用樹脂組成物(特許文献3参照)、ポリプロピレン系樹脂、密度が930kg/m3以下のエチレン・α−オレフィンランダム共重合樹脂及びポリエチレン樹脂組成物からなるシール層を有する多層シート(特許文献4参照)等、数多く提案されている。しかしながら、単にポリプロピレン系樹脂とポリエチレン樹脂との混合物層を熱融着層としたフィルムは、未だ密封性と易開封性のバランスの点で必ずしも満足できるものではない。
【0005】
とくに近年、包装容器素材として透明性、耐熱性、衛生性、強度、コストなどを勘案してプロピレン系重合体が多用されるようになってきており、また内容物の種類によっては、包装充填後に高温滅菌処理することが行なわれるようになってきている。そのためプロピレン系重合体に対して、密封性と易開封性のバランスが優れると共に、耐熱性に優れる、すなわち高温滅菌処理時の包装体内部の空気膨張に耐えるシール強度を保有し、しかも高温処理によるシール強度の変動が少ないという易開封性熱融着材料が強く求められているが、上記各提案のものはこれら要請に応えるものではなかった。
【0006】
【特許文献1】
特公平5−64593号公報
【特許文献2】
特公平5−6513号公報
【特許文献3】
特開平2−185547号公報
【特許文献4】
特開2000−355358号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者らは、上記要求性能を全て満足し、とくにプロピレン系重合体に対して密封性、易開封性、開封時の外観に優れ、ヒートシール強度の温度依存性が少なく、また高温滅菌処理によってもシール強度の変動が少ない、油脂及び脂肪性食品の包装に適応した易開封性熱融着材料を開発すべく検討を行なった。その結果、プロピレン系重合体とエチレン系重合体に特定のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体及び粘着付与樹脂を添加したポリオレフィン組成物を熱融着層とし、中間層及びラミネート層に特定のプロピレン系重合体及びその組成物若しくはエチレン系重合体を積層することにより、プロピレン系重合体層との易剥離性、開封時のソフト感、耐ブロッキング性、衛生性、製膜加工性、ラミネート加工性に優れた易剥離性熱融着材料が得られることが分かり、本発明に到達した。
【0008】
【課題を解決するための手段】
【発明の概要】
本発明は、プロピレン系重合体(A−1)20〜90重量部、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−1)80〜10重量部、(A−1)+(B−1)の合計100重量部に対し、密度が860kg/m3以上900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)10〜50重量部及び粘着付与樹脂(D−1)0.5〜10重量部からなるポリオレフィン組成物(E)で構成される熱融着層、プロピレン系重合体(A−2)60〜95重量部、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−2)40〜5重量部、(A−2)+(B−2)の合計100重量部に対し、密度が860kg/m3以上900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−2)5〜30重量部及び粘着付与樹脂(D−2)0.1〜5重量部からなるポリオレフィン組成物(F)で構成され、ポリオレフィン組成物(F)のプロピレン系重合体(A−2)の含有率がポリオレフィン組成物(E)中のプロピレン系重合体(A−1)の含有率よりも大きい中間層及びプロピレン系重合体(A−3)から構成されるラミネート層からなることを特徴とする易開封性積層フィルム、容器蓋材及び包装体に関する。
【0009】
本発明の他の態様は、プロピレン系重合体(A−1)20〜90重量部、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−1)80〜10重量部、(A−1)+(B−1)の合計100重量部に対し、密度が860kg/m3以上900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)10〜50重量部及び粘着付与樹脂(D−1)0.5〜10重量部からなるポリオレフィン組成物(E)から構成される熱融着層、密度が905kg/m3以上のエチレン系重合体(B−3)から構成される中間層及び密度が900kg/m3以上であって、エチレン系重合体(B−3)より密度の小さいエチレン系重合体(B−4)から構成されるラミネート層からなることを特徴とする易開封性積層フィルム、容器蓋材及び包装体に関する。
【0010】
【発明の具体的説明】
プロピレン系重合体(A−1)
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるポリオレフィン組成物(E)の構成成分の一つであるプロピレン系重合体(A−1)は、一般にポリプロピレンの名称で製造・販売されている樹脂で、通常、密度が890〜930kg/m3程度のプロピレンの単独重合体若しくはプロピレンと他の少量のα−オレフィンとの共重合体である。共重合体においては、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。プロピレンの共重合体における他のα−オレフィンとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜20程度のα−オレフィンを例示することができる。このような他のα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上組合わせて共重合させてもよい。
【0011】
これらプロピレン系重合体(A−1)の中では、プロピレンとα−オレフィンのランダム共重合体、とりわけプロピレンと炭素原子数が2〜4のα−オレフィンのランダム共重合体、例えばエチレン及び/又は1−ブテンの含量が20モル%以下、好ましくは10モル%以下のランダム共重合体を使用することが好ましい。また熱融着材料として充分な耐熱性と熱融着性を両立させるためには、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が125℃以上、とくに130〜145℃のランダム共重合体であることが好ましい。また耐熱性、押出加工性などを考慮すると、メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)が0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分のものを使用するのが好ましい。このようなプロピレン系重合体は、立体特異性触媒の存在下で、プロピレンを重合するかあるいはプロピレンと1種以上の他のα−オレフィンを共重合することによって得ることができる。プロピレン系重合体(A)としてはまた、2種以上組合せて使用することができる。
【0012】
プロピレン系重合体(A−2)
本発明の易開封性積層フィルムの中間層となるポリオレフィン組成物(F)の構成成分の一つであるプロピレン系重合体(A−2)は、前記プロピレン系重合体(A−1)と同じ範疇のプロピレンを主体とした重合体である。ポリオレフィン組成物(F)を構成するプロピレン系重合体(A−2)としては、プロピレンの単独重合体と示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が125℃以上、とくに130〜145℃のプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体との二成分の組合せが、良好な共押出特性と易開封性積層フイルムに充分な剛性を付与する点において好ましい。プロピレン系重合体(A−2)としてとくに好適には、プロピレン単独重合体50〜90重量部、とくに60〜80重量部に対して、上記プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を50〜10重量部、とくに40〜20重量部(両者の合計で100重量部)の割合で混合使用することである。
【0013】
エチレン系重合体(B−1)、(B−2)
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるポリオレフィン組成物(E)の構成成分及び中間層となるポリオレフィン組成物(F)の構成成分の一つであるエチレン系重合体(B−1)及び(B−2)は、それぞれ密度が900kg/m3以上、好ましくは910〜970kg/m3、更に好ましくは940kg/m3〜970kg/m3の、エチレンの単独重合体若しくはエチレンと少量の炭素数が3〜10のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどとのランダム共重合体であって、いわゆる、高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE)、直鎖状あるいは線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)と呼ばれているエチレン単独重合体若しくはエチレン・α−オレフィン共重合体、更にはエチレンと少量の極性モノマーとの共重合体、例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸などとの共重合体又はそのNa、Li、ZnもしくはMgなどのアイオノマー、エチレンと不飽和カルボン酸エステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸グリシジル、マレイン酸ジメチルなどとの共重合体、エチレンと上記のような不飽和カルボン酸と不飽和カルボン酸エステルの共重合体又はそのNa、Li、ZnもしくはMgなどのアイオノマー、エチレンと一酸化炭素と任意に不飽和カルボン酸エステルや酢酸ビニルとの共重合体等のエチレンを主体とした重合体である。これらエチレン系重合体(B−1)及び(B−2)は、それぞれ単一の重合体であっても、2種以上のエチレン系重合体の組成物(混合物)であってもよい。
【0014】
エチレン系重合体(B−1)及び(B−2)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、プロピレン系重合体(A−1)若しくはプロピレン系重合体(A−2)、後述のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)、(C−2)及び粘着付与樹脂(D−1)、(D−2)と混合してポリオレフィン組成物(E)又はポリオレフィン組成物(F)にした際に、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分の範囲にある。
【0015】
かかるエチレン系重合体(B−1)又は(B−2)としては、エチレンの単独重合体若しくはエチレンとα−オレフィンとの共重合体を使用することが好ましく、特に、密度が940〜970kg/m3のエチレン系重合体、即ち、高密度ポリエチレンの範疇に入るものが好適である。
【0016】
前記、エチレン系重合体(B−1)あるいは(B−2)として使用可能な線状低密度ポリエチレン(LLDPE)としては、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布(Mw/Mn)が通常1.5〜4.0、好ましくは1.8〜3.5の範囲にある。線状低密度ポリエチレン(LLDPE)はまた、示差走査熱量計(DSC)の昇温速度10℃/分で測定した吸熱曲線から求めた鋭い吸熱ピークが1個ないし複数個あり、該ピークの最高温度、すなわち融点が通常70〜130℃、好ましくは80〜120℃の範囲にある。
【0017】
上記のような線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、チーグラー型触媒を代表例とするマルチサイト触媒、メタロセン触媒を代表例とするシングルサイト触媒を用いた従来公知の製造法により調製することができる。たとえば線状低密度ポリエチレン(LLDPE)は、遷移金属のメタロセン化合物を含む触媒を用いて調製することができる。このメタロセン化合物を含む触媒は、(a)遷移金属のメタロセン化合物と、(b)有機アルミニウムオキシ化合物と、(c)担体とから形成されることが好ましく、さらに必要に応じて、これらの成分と(d)有機アルミニウム化合物および/または有機ホウ素化合物とから形成さていてもよい。なお、このようなメタロセン化合物を含むオレフィン重合用触媒、および触媒を用いた線状低密度ポリエチレン(LLDPE)の調製方法は、たとえば特開平8−269270号公報に記載されている。
【0018】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)、(C−2)
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるポリオレフィン組成物(E)の構成成分及び中間層となるポリオレフィン組成物(F)の構成成分の一つでエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)及び(C−2)は、それぞれ密度が900kg/m3未満、好ましくは860〜895kg/m3のエチレンと炭素数3〜10のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどのα−オレフィンとのランダム共重合体である。
【0019】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)、(C−2)としてはまた、得られる易開封性積層フィルムの熱融着特性を考慮すると、密度が880〜895kg/m3の範囲にあり、好ましくはエチレン含有量が85〜93モル%、X線による結晶化度が7〜30%及び示差走査熱量計(DSC)による昇温速度10℃/分での吸熱曲線から求めた融点が60〜90℃の範囲にある低結晶性のエチレン・1−ブテンランダム共重合体と、密度が865〜875kg/m3の範囲にあり、好ましくはエチレン含有量が75〜85モル%、X線による結晶化度が5%未満の範囲にある非晶性若しくは僅かに結晶性を有するエチレン・プロピレンランダム共重合体との二成分を組み合わせることができ、例えば上記低結晶性エチレン・1−ブテンランダム共重合体10〜90重量部と上記エチレン・プロピレンランダム共重合体90〜10重量部からなる混合成分を使用することができる。
【0020】
エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)又は(C−2)としてはまた、さらにポリオレフィン組成物の加工性、耐油性等を考慮すると、メルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)が、好ましくは0.01〜20g/10分、更に好ましくは0.1〜10g/10分の範囲のものが好適である。このような共重合体は、例えば遷移金属化合物触媒成分、例えばバナジウム化合物やジルコニウム化合物と、有機アルミニウム化合物触媒成分とからなる触媒を用いて、エチレンとα−オレフィンを共重合することによって得ることができる。
【0021】
粘着付与樹脂(D−1)、(D−2)
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるポリオレフィン組成物(E)の構成成分及び中間層となるポリオレフィン組成物(F)の構成成分の一つである粘着付与樹脂(D−1)及び(D−2)としては、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などを挙げることができる。脂肪族系炭化水素樹脂の例としては、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなど炭素数4〜5のモノ又はジオレフィンの少なくとも1種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。脂環族系炭化水素樹脂の例として、スペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化二量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などを挙げることができる。
【0022】
芳香族系炭化水素樹脂の例として、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC8〜C10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種以上含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と上記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。ポリテルペン系樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α−ピネン・フェノール共重合体、これらの水素添加物などを挙げることができる。
【0023】
ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示することができる。スチレン系炭化水素樹脂としては、純度の高いスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体の1種又は2種以上を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0024】
本発明のポリオレフィン組成物を飲食品包装用の易開封性シール材料として使用する場合には、無臭性、食品衛生性、他成分との混和性などを考慮すると、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂あるいはポリテルペン系樹脂を使用することが好ましい。
【0025】
プロピレン系重合体(A−3)
本発明の易開封性積層フィルムにおいて、中間層としてポリオレフィン組成物(F)の層を使用する場合にラミネート層に用いるプロピレン系重合体(A−3)は、熱融着層の構成成分であるプロピレン系重合体(A−1)あるいは中間層の構成成分であるプロピレン系重合体(A−2)の範疇に属するプロピレンの単独重合体又はプロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、4−メチル−1−ペンテンなどの炭素原子数が2〜20程度のα−オレフィンとのプロピレンを主体とする共重合体である。ラミネート特性及び積層フイルムの透明性などを考慮すると、示差走査熱量計(DSC)に基づく融点が125〜150℃、とくに130〜145℃のプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体を使用するのが好ましい。プロピレン系重合体(A−3)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、230℃、2160g荷重)はフィルム形成能がある限り、とくに限定はされないが、通常、0.5〜50g/10分、好ましくは3〜20g/10分の範囲ものを使用するのが好ましい。
【0026】
エチレン系重合体(B−3)及び(B−4)
本発明の易開封性積層フィルムにおいてはまた中間層として密度が905kg/m3以上のエチレン系重合体(B−3)を使用することができ、その場合はラミネート層としてエチレン系重合体(B−3)より密度が小さく、かつ密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−4)が使用される。エチレン系重合体(B−3)及び(B−4)は、前記エチレン系重合体(B−1)及び(B−2)と同じ範疇のエチレンを主体とした重合体であり、とりわけエチレンの単独重合体若しくはエチレンと少量の炭素数が3〜10のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどとのランダム共重合体である各種ポリエチレンを好適に使用することができる。この内、中間層を構成するエチレン系重合体(B−3)としては、積層フイルムの剛性及びヒートシール特性を考慮すると、密度が940kg/m3〜970kg/m3の範囲にあるエチレン系重合体又は該エチレン系重合体とそれと同量以下の他のエチレン系重合体(B)との混合物を使用するのが好ましい。上記密度が940kg/m3〜970kg/m3の範囲にあるエチレン系重合体の典型的なものが一般に高密度ポリエチレンと称されているものあり、また上記他のエチレン系重合体(B)の典型的なものが、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレンあるいは中密度ポリエチレンなどと称せられているものである。またラミネート層を構成するエチレン系重合体(B−4)としては、ラミネート特性及び積層フイルムの透明性などを考慮すると、線状低密度ポリエチレンとして知られている密度が900〜930kg/m3、好ましくは910kg/m3〜925kg/m3の範囲にあるエチレン・α−オレフィンランダム共重合体の使用が好ましい。エチレン系重合体(B−3)及び(B−4)のメルトフローレート(MFR)(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)は、フィルム形成能がある限り特に限定はされないが、通常、0.01〜100g/10分、好ましくは0.1〜70g/10分の範囲にある。
【0027】
ポリオレフィン組成物(E)
本発明の易開封性積層フィルムの熱融着層となるポリオレフィン組成物(E)は、前記プロピレン系重合体(A−1)20〜90重量部、好ましくは50〜80重量部、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−1)80〜10重量部、好ましくは50〜20重量部、(A−1)+(B−1)の合計100重量部に対し、密度が860kg/m3以上900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)10〜50重量部、好ましくは30〜50重量部、及び粘着付与樹脂(D−1)0.5〜10重量部、好ましくは1〜6重量部からなる。かかるポリオレフィン組成物(E)はまた、押出加工性、シール強度、耐熱性等を考慮すると、MFR(ASTM D1238、190℃、2160g荷重)が0.01〜100g/10分、とくに0.1〜70g/10分となるように調製されていることが望ましい。
【0028】
プロピレン系重合体(A−1)とエチレン系重合体(B−1)の合計量を100重量部とするときに、プロピレン系重合体(A−1)の配合量が20重量部未満では、得られる易開封性積層フィルムをプロピレン系重合体層と熱融着した際に、シール強度が弱くなり、また耐熱性も低下する虞がある。またその配合量が90重量部を越えると、広範囲なシール温度領域において適正なシール強度を示さなくなる虞がある。また上記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C)の配合量が、(A−1)と(B−1)の合計量100重量部に対し10重量部未満では、得られる易開封性積層フィルムをプロピレン系重合体層と熱融着した際に、シール性、糸曳き性等が劣る傾向にあり、一方50重量部を越えると加工性が損なわれる場合があり、また耐油性が損なわれる虞がある。さらに粘着付与樹脂(D)の配合量が(A−1)と(B−1)の合計量100重量部に対し0.5重量部未満では、得られる熱融着性フィルムをプロピレン系重合体層と熱融着した際に、シール強度が強くなりすぎて易開封性に劣る虞があり、一方10重量部を越える程多量に配合すると得られる易開封性積層フィルムの加工性や耐油性が損なわれる虞がある。
【0029】
本発明のポリオレフィン組成物(E)には、本発明の目的を損なわない範囲で各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤としてシリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等を挙げることができる。また有機化合物型のアンチブロッキング剤やスリップ剤等の配合もフィルム成形時、ラミネート加工時、包装作業時等における加工性や作業性の向上に有効である。このような有機化合物型のアンチブロッキング剤やスリップ剤として、例えばパルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油などを例示することができる。
【0030】
本発明のポリオレフィン組成物(E)は、プロピレン系重合体(A−1)、エチレン系重合体(B−1)、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−1)及び粘着付与樹脂(D−1)の各成分、及び任意に配合される添加剤を、同時に又は逐次的に混合することによって調製することができる。この樹脂組成物の調製に際しては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましく、その混合順序にとくに制限は無い。
【0031】
ポリオレフィン組成物(F)
本発明の易開封性積層フィルムの中間層として使用できるポリオレフィン組成物(F)は、前記プロピレン系重合体(A−2)60〜95重量部、好ましくは75〜95重量部、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−2)40〜5重量部、好ましくは25〜5重量部、(A−2)+(B−2)の合計100重量部に対し、密度が860kg/m3以上900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−2)5〜30重量部、好ましくは5〜20重量部及び粘着付与樹脂(D−2)0.1〜5重量部、好ましくは0.3〜4重量部からなり、ポリオレフィン組成物(E)中のプロピレン系重合体(A−1)の含有率より、ポリオレフィン組成物(F)中のプロピレン系重合体(A−2)の含有率を高めるように配合される。このようなポリオレフィン組成物(F)を中間層に使用することにより、積層フイルムに充分な剛性を付与すると共に、耐熱性、ヒートシール特性、ラミネート特性に優れた積層フイルムを形成することができる。
【0032】
ポリオレフィン組成物(F)において、プロピレン系重合体(A−2)とエチレン系重合体(B−2)の合計を100重量部とするときに、プロピレン系重合体(A−2)の配合量が60重量部未満では、得られる易開封性積層フィルムのシール強度(剥離強度)が弱く、耐熱性が低下する虞がある。またその配合量が95重量部を越えると、ヒートシール強度が強く、開封性に劣る虞がある。また上記エチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−2)の配合量が、(A−2)と(B−2)の合計量100重量部に対し5重量部未満では、得られる易開封性積層フィルムを容器蓋材等に用いた際に、開封時に糸曳きがないソフトな開封性が得られず、またヒートシール強度が強すぎて易開封性が損なわれる虞があり、一方30重量部を越えると加工性や耐油性が損なわれる虞がある。さらに粘着付与樹脂(D−2)が(A−2)と(B−2)の合計量100重量部に対し0.1重量部未満では、開封時に糸曳きがないソフトな開封性が得られず、またヒートシール強度が強すぎて易開封性が損なわれる虞があり、一方5重量部を越える程多量に配合すると得られる易開封性積層フィルムの加工性や耐油性が損なわれる虞がある。
【0033】
本発明のポリオレフィン組成物(F)には、本発明の目的を損なわない範囲で前記したような各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤としてシリカ、タルクなどの無機充填剤、酸化防止剤、耐候安定剤、帯電防止剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、顔料等を挙げることができる。
【0034】
このようなポリオレフィン組成物(F)は、熱融着層に使用するポリオレフィン組成物(E)に(A−2)として例示したプロピレン系重合体、好ましくはプロピレン単独重合体を添加することによって容易に調製することができる。ポリオレフィン組成物(F)はまた、プロピレン系重合体(A−2)、エチレン系重合体(B−2)及びエチレン・α−オレフィンランダム共重合体(C−2)、任意に粘着付与樹脂及び任意に配合される添加剤を、同時に又は逐次的に混合することによって調製することができる。この樹脂組成物の調製に際しては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましく、その混合順序にとくに制限は無い。
【0035】
易開封性積層フィルム
本発明の易開封性積層フィルムは、前記ポリオレフィン組成物(E)から構成される熱融着層、ポリオレフィン組成物(F)から構成される中間層及びプロピレン系重合体(A−3)から得られるラミネート層からなる。かかる中間層は一層でも二層以上の多層であってもよい。勿論、ラミネート層にも前記したような添加剤を任意に配合することができる。
【0036】
本発明の易開封性積層フィルムはまた、前記ポリオレフィン組成物(E)から構成される熱融着層、エチレン系重合体(B−3)から構成される中間層及びエチレン系重合体(B−4)から構成されるラミネート層からなる。かかる中間層は一層でも二層以上の多層であってもよい。勿論、この場合の中間層及びラミネート層においても、上記したような添加剤を任意に配合することができる。
【0037】
本発明の易開封性積層フィルムは、多くの場合、厚生省告示370号に定められた条件で処理したn―ヘプタン溶出試験における蒸発残留物量が30ppm以下、好ましくは25ppm以下となり、油脂及び脂肪性食品用途で100℃を越えて使用可能な包装材料となる。
【0038】
易開封性積層フィルムの厚さは用途により種々決定されるが、三層構成の場合は、通常熱融着層の厚さが1〜80μm、好ましくは2〜50μm、中間層の厚さが8〜498μm、好ましくは16〜96μm、ラミネート層の厚さが1〜80μm、好ましくは2〜50μmの範囲にあり、積層フィルム全体の厚さが、10〜500μm、好ましくは20〜100μmの範囲にある。
【0039】
本発明の易開封性積層フィルムは、低温ヒートシ−ル性、耐ブロッキング性、包装材料に好適な耐衝撃性、スリップ性、剛性、透明性等を有する易開封性積層フィルムとしてそのままでも包装用フィルム、中でも食品包装用、特に油脂及び脂肪性食品包装用フィルムとして好適に使用し得るし、蓋材として使用できる。また用途によっては、易開封性積層フィルムのラミネート層に後述の基材層を貼り合せて種々の用途に用いることもできる。
【0040】
本発明の易開封性積層フィルムは、印刷性あるいは基材層等との接着性を改良するために、ラミネート層の表面を、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理等で表面活性化処理を行っておいてもよい。
【0041】
本発明の易開封性積層フィルムは、公知の種々のフィルム成形方法によって製造することができる。その際、フィルム成形するには、熱融着層を構成するポリオレフィン組成物(E)を用いる際には、予めプロピレン系重合体(A−1)、エチレン系重合体(B−1)、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)及び粘着付与樹脂(D−1)とを所定量計量してをドライブレンドあるいは溶融混練してポリオレフィン組成物(E)を用意しておいてもよいし、プロピレン系重合体(A−1)、エチレン系重合体(B−1)、エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)及び粘着付与樹脂(D−1)とを所定量計量して直接フィルム成形機に投入してもよい。また、中間層としてポリオレフィン組成物(F)を用いる際には、予めプロピレン系重合体(A−2)、エチレン系重合体(B−2)及びエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−2)、任意に粘着付与樹脂(D−2)とを所定量計量してドライブレンドあるいは溶融混練してポリオレフィン組成物(F)を用意しておいてもよいし、プロピレン系重合体(A−2)、エチレン系重合体(B−2)及びエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−2)、任意に粘着付与樹脂(D−2)とを所定量計量して直接フィルム成形機に投入してもよい。またポリオレフィン組成物(E)とプロピレン系重合体をポリオレフィン組成物(F)となるように所定量計量して直接フィルム成形機に投入してもよい。かかる積層フィルムは夫々別個にフィルムを成形後貼り合せてもよいが、三層以上の多層ダイを用いて共押出し成形による方法が最も好ましい。
【0042】
基材層
本発明に係わる基材層は、熱可塑性樹脂からなるシート状またはフィルム状のもの、紙、アルミニウム箔等からなる。熱可塑性樹脂としては、種々公知の熱可塑性樹脂、例えば、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル・1−ペンテン、ポリブテン等)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリアミド(ナイロン−6、ナイロン−66、ポリメタキシレンアジパミド等)、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、エチレン・酢酸ビニル共重合体もしくはその鹸化物、ポリビニルアルコール、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリスチレン、アイオノマー、あるいはこれらの混合物等を例示することができる。これらのうちでは、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド等、延伸性、透明性が良好な熱可塑性樹脂が好ましい。又、かかる熱可塑性樹脂フィルムからなる基材は、無延伸フィルムであっても、延伸フィルムであっても良いし、1種或いは2種以上の共押し出し品、押出しラミ品、ドライラミ品等の積層体であっても良い。
【0043】
又、基材層の片面あるいは両面を、本発明の易開封性積層フィルムのラミネート層との接着性を改良するために、例えば、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、アンダーコート処理、フレーム処理等の表面活性化処理を行っておいてもよい。基材層の厚さは、通常5〜1000μm、好ましくは9〜100μmの範囲にある。
【0044】
容器蓋材
上記した本発明の易開封性積層フィルムあるいは基材層と積層した易開封性積層フィルムは各種包装材料として使用することができる。好適な包装材料の例として、熱融着層を容器最内層として用いる容器蓋材がある。容器蓋材として用いる場合は、易開封性積層フィルムをそのまま蓋材として用いても良いし、印刷して用いても良い。更に印刷されたあるいはされていない紙、アルミ箔等と貼り合せて蓋材にしても良い。又、用途によっては予め容器形状に合わせてカットして蓋材にしても良い。容器蓋材とする場合には、基材層を設けた熱融着性積層フィルムを使用するのが好ましい。
【0045】
被着体
本発明の易開封性積層フィルムは、各種被着体に熱融着させることにより熱シール層を形成させることができる。このような被着体としてプロピレン系重合体、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等を例示することができる。これら被着体は、フィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等、種々の形状のものであることができる。この中では特にプロピレン系重合体を被着体とすると、熱シール層の密封性、易開封性、耐熱性、耐油性などに優れており好ましい。かかるプロピレン系重合体は、プロピレン系重合体(A−1)、(A−2)と同一の範疇のものであるが、個々の物性は同一であっても異なっていてもよい。例えばプロピレン系重合体からなる被着体においては、被包装材料に合わせてプロピレン系重合体を公知の方法でフィルム、シート、トレー、カップ、ボトル等の種々の形状に成形したものを使用することができる。フィルム若しくはシートの場合は、上記易開封性積層フィルムと同様な方法で製造し得る。トレー若しくはカップの場合は、一旦上記方法でシートを製造した後、真空成形、圧空成形等の熱成形によりトレー、カップ等の容器とすることにより製造し得る。又、カップあるいはボトルの場合は射出成形、射出中空成形(インジェクションブロー)、中空成形等により容器として成形し得る。
【0046】
包装体
本発明の易開封性積層フィルムを包装材料として使用する場合、易開封性積層フィルムそのものを、例えば、折りたたんで三方シールしたり、2枚の易開封性積層フィルムを四方シールして包装体としてもよいし、易開封性積層フィルムを上記各種被着体と熱シール層を形成して包装体を形成してもよい。本発明の包装体の形状は、被包装材料の形状、形態あるいは用途に応じて種々の形状を取り得る。例えば、フレキシブルな軟包装体としては、易開封性積層フィルムとプロピレン系重合体層からなる熱シール層を備えたフィルムとからなる三方シール袋に被包装材料を充填した後、口部をヒートシールしてなる四方シール包装体、プロピレン系重合体層からなる熱シール層を備えたシート、トレー、カップ、ボトル等に、被包装材料を充填した後、易開封性積層フィルムの熱融着層を最内層としてなる蓋材(シール材)で上面をシールしてなる包装体等が挙げられる。
【0047】
【発明の効果】
本発明の易開封性積層フィルムは、プロピレン系重合体層と熱融着した場合、幅広い温度領域で安定したヒートシール強度(剥離強度)を有し、且つ剥離時(開封時)に容易に剥離でき、しかも剥離面に糸曳きがなく、ソフト感を有している。したがって、かかる特徴を活かして、包装用フィルムとして、特に、ポリプロピレン製のシート、トレー、カップ、ボトル等の蓋材として好適であり、せんべい、ポテトチップス等のスナック菓子包装、あるいはゼリー、ミルク、ヨーグルト、プリン、豆腐、乳酸飲料等の食品包装や、医薬品、医療用器具等の包装、ブリスター包装、その他日用品や雑貨等の包装の包装材料、特に油脂及び脂肪性食品の包装に適応しており、当該用途にも好適に用いることができる。
【0048】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその趣旨を越えない限りこれらの実施例に制約されるものではない。
【0049】
実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。
(1)熱融着層用ポリオレフィン組成物(E)
プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(エチレン含有量3.6モル%(2.4重量%)、1−ブテン含有量1.9モル%(2.5重量%)、密度910kg/m3、メルトフローレート(MFR)(230℃)6g/10分)40重量部、高密度ポリエチレン(密度954kg/m3、MFR(190℃)1.1g/10分)27重量部、低結晶性エチレン・1−ブテンランダム共重合体(エチレン含有量89.1モル%、結晶化度10%、密度886kg/m3、MFR(190℃)4.0g/10分)20重量部、非晶性エチレン・プロピレン共重合体(エチレン含有量82.6モル%、密度870kg/m3、MFR(190℃)2.9g/10分)10重量部及び水素添加芳香族炭化水素樹脂(商品名:アルコンP115(荒川化学(株)製、環球法軟化点115℃)3重量部を溶融混練することにより調製した。
【0050】
(2)プロピレン・エチレン・1−ブテンランダム共重合体(R−PP):密度;910kg/m3、MFR;8.0g/10分、融点;143℃、エチレン含有量2.5モル%、1−ブテン含有量1.5モル%
(3)ポリプロピレン単独重合体(H−PP):密度;910kg/m3、MFR;7.0g/10分、融点;161℃
(4)高密度ポリエチレン(HDPE):密度;954kg/m3、MFR;1.1g/10分
(5)高圧法低密度ポリエチレン(HP−LDPE):密度;917kg/m3、MFR;7.2g/10分
(6)線状低密度ポリエチレン(L−LDPE):密度;915kg/m3、MFR;2.3g/10分
【0051】
[実施例1]
熱融着層として上記ポリオレフィン組成物(E)を用い、中間層としてHDPE;85重量%及びHP−LDPE;15重量%とをドライブレンドしたエチレン系重合体組成物を用い、ラミネート層としてL−LDPEを用い、夫々別々の押出機に供給し、Tダイ法によって熱融着層/中間層/ラミネ−ト層となる構成の三層共押出フィルムからなる積層フィルムを成形し、ラミネ−ト層にコロナ処理を施した。フィルムの総厚は50μmで、各層の厚みは熱融着層/中間層/ラミネ−ト層=7.5/35.0/7.5μmであった。
【0052】
[実施例2]
熱融着層として上記ポリオレフィン組成物(E)を用い、中間層として上記ポリオレフィン組成物(E);50重量%及びH−PP;50重量%とをドライブレンドしたプロピレン系重合体組成物を用い、ラミネート層としてR−PPを用い、夫々別々の押出機に供給し、Tダイ法によって熱融着層/中間層/ラミネ−ト層となる構成の三層共押出フィルムからなる積層フィルムを成形し、ラミネ−ト層にコロナ処理を施した。フィルムの総厚は50μmで、各層の厚みは熱融着層/中間層/ラミネ−ト層=5.5/39.0/5.5μmであった。
【0053】
実施例1及び実施例2で得られた積層フイルムを以下の方法により評価した。(1)易剥離性の評価
易剥離性を評価するために、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタ−トフィルム(PET)に、上記各実施例1及び2で得られたフィルムのコロナ処理を施した面にウレタン系接着剤を用いてドライラミネ−ションにより積層して積層フィルムを準備し、熱シール層として厚さ300μmのポリプロピレンシ−トを準備した。
【0054】
ついで、各積層フィルムの熱融着層とポリプロピレンシ−トを重ね合わせ、表1に記載の所定の温度で、幅5mmのシ−ルバ−を用い、0.2MPaの圧力で1秒間シ−ルした後放冷した。これから15mm幅の試験片を切り取りクロスベット速度500mm/分でヒ−トシ−ル部を剥離し、その強度をヒ−トシ−ル強度(N/15mm)とした。またヒートシールした試験片を高温高圧殺菌装置(レトルト殺菌装置)を用いて、110℃で30分間処理した後、試験片を冷却し、該試験片のヒートシール強度を測定した。
【0055】
易剥離性の評価は、ヒートシール強度以外にもシール部分の剥離状態と糸曳き状態を観察して行なった。凝集剥離で糸曳きのないものを○とした。結果を表1に示す。
【0056】
(2)耐ブロッキング性
耐ブロッキング性を評価するために、厚さ12μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタ−トフィルム(PET)に、上記各実施例1及び2で得られたフィルムのコロナ処理を施した面にウレタン系接着剤を用いてドライラミネ−ションにより積層して積層フィルムを準備した。その後、20mm×100mm幅の短冊状の試験片を切り取り、熱融着層(シーラント)面を重ね合せたものと熱融着層面とPET面とを重ね合わせたものを別々に5部ずつ作製し、試験片の中央付近において十字方向で直角に市販のプレパラ−トではさむ。試験片とプレパラ−トが重なった5.2cm2の面積部分に荷重4kgをのせて、所定の温度条件で2日間エ−ジングし、放冷する。その後熱融着層面を重ね合せたものと熱融着層面とPET面とを重ね合わせたものを、別々にクロスヘッド速度300mm/min、剪断剥離方法で強度を評価し、その最大強度をブロッキング力とした。ブロッキング力をn=5で評価し、平均値をブロッキング力(N/5.2cm2)とした。結果を表1に示す。
【0057】
(3)食品衛生性の評価
昭和34年12月28日付け厚生省告示第370号、食品・添加物等の規格基準第三器具及び容器包装Dの2の(1)及びDの2の(2)の3による試験方法により、使用温度100℃を超える・熱融着層の片面溶出試験で蒸発残留物n−ヘプタン溶出量を公的試験機関において評価した。100℃を超えて油脂脂肪性食品に使用できるものは、蒸発残留物n−ヘプタン溶出量が30ppm以下ものである。結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
表1から明らかなように、本発明の易開封性積層フイルムは、良好なヒートシール性能を有すると共に耐ブロッキング性に優れ、また油脂及び脂肪性食品に対する衛生性においても優れている。
Claims (13)
- プロピレン系重合体(A−1)20〜90重量部、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−1)80〜10重量部、(A−1)+(B−1)の合計100重量部に対し、密度が860kg/m3以上900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)10〜50重量部及び粘着付与樹脂(D−1)0.5〜10重量部からなるポリオレフィン組成物(E)で構成される熱融着層、プロピレン系重合体(A−2)60〜95重量部、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−2)40〜5重量部、(A−2)+(B−2)の合計100重量部に対し、密度が860kg/m3以上900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−2)5〜30重量部及び粘着付与樹脂(D−2)0.1〜5重量部からなるポリオレフィン組成物(F)で構成され、ポリオレフィン組成物(F)中のプロピレン系重合体(A−2)の含有率がポリオレフィン組成物(E)中のプロピレン系重合体(A−1)の含有率よりも大きい中間層及びプロピレン系重合体(A−3)から構成されるラミネート層からなることを特徴とする易開封性積層フィルム。
- プロピレン系重合体(A−1)20〜90重量部、密度が900kg/m3以上のエチレン系重合体(B−1)80〜10重量部、(A−1)+(B−1)の合計100重量部に対し、密度が860kg/m3以上900kg/m3未満のエチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)10〜50重量部及び粘着付与樹脂(D−1)0.5〜10重量部からなるポリオレフィン組成物(E)から構成される熱融着層、密度が905kg/m3以上のエチレン系重合体(B−3)から構成される中間層及び密度が900kg/m3以上であって、エチレン系重合体(B−3)より密度の小さいエチレン系重合体(B−4)から構成されるラミネート層からなることを特徴とする易開封性積層フィルム。
- プロピレン系重合体(A−1)が、プロピレン・α―オレフィンランダム共重合体である請求項1又は2記載の易開封性積層フィルム。
- エチレン系重合体(B−1)が、密度が940kg/m3〜970kg/m3のエチレン系重合体である請求項1〜3の何れかに記載の易開封性積層フィルム。
- エチレン・α―オレフィンランダム共重合体(C−1)が、密度が860〜875kg/m3のものと密度が880〜895kg/m3のものとの混合成分である請求項1〜4の何れかに記載の易開封性積層フィルム。
- プロピレン系重合体(A−2)が、プロピレン単独重合体とプロピレン・α―オレフィンランダム共重合体との混合成分である請求項1、3、4又は5に記載の易開封性積層フィルム。
- エチレン系重合体(B−3)が、密度が940kg/m3〜970kg/m3のエチレン系重合体又は該エチレン系重合体とそれと同量以下の他のエチレン系重合体(B)との混合成分である請求項2〜5の何れかに記載の易開封性積層フィルム。
- エチレン系重合体(B−4)が、密度が900〜930kg/m3のエチレン・α−オレフィンランダム共重合体である請求項2、3、4、5又は7に記載の易開封性積層フィルム。
- 熱融着層、中間層及びラミネート層が共押出し成形して得られるものである請求項1〜8の何れかに記載の易開封性積層フィルム。
- 請求項1〜9の何れかに記載の易開封性積層フィルムのラミネート層に基材層が積層されてなる易開封性積層フィルム。
- 厚生省告示370号に定められた条件で処理したn―ヘプタン溶出試験における蒸発残留物量が30ppm以下である請求項1〜10の何れかに記載の易開封性積層フィルム。
- 請求項1〜11の何れかに記載の易開封性積層フィルムからなる容器蓋材。
- 請求項1〜11の何れかに記載の易開封性積層フィルムとプロピレン系重合体層を有する被着部とからなり、該積層フィルムとプロピレン系重合体層間の熱シール構造を有することを特徴とする包装体。
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