JP4174964B2 - 車両用油圧ポンプの駆動制御装置 - Google Patents

車両用油圧ポンプの駆動制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は、車両用油圧ポンプの駆動制御装置に関し、特にエンジン(車両)停止中において十分な油圧を確保する技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンおよび電動機によって選択的に駆動される入力軸とともに回転させられる第1油圧ポンプを油圧源として有する自動変速機と、車両停止時の油圧源として機能する電動式の(補助)油圧ポンプとを備えた車両が知られている。たとえば、特開平10−324177号公報に記載された車両用油圧ポンプの駆動制御装置がそれである。これによれば、車両停止中にはエンジンも自動的に停止させ、発進操作とともにエンジンを起動させるような車両において、エンジン停止に伴って第1油圧ポンプの作動が停止させられた状態であっても、電動式の油圧ポンプを作動させることにより自動変速機の油圧が維持されるので、車両の再発進時には自動変速機の油圧アクチュエータへの油圧供給の遅れによるショックを発生して運転性が損なわれることが好適に防止される。
【0003】
【発明が解決すべき課題】
しかしながら、上記従来の車両用油圧ポンプの駆動制御装置においては、電動式の油圧ポンプは、必要容量を設定すると比較的大型となって自動変速機の外部に設けねばならないために、その搭載性が低下するなどという可能性があった。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、電動式の油圧ポンプを用いなくてもエンジン停止中の油圧を維持できる車両用油圧ポンプの駆動制御装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、エンジンおよび電動機を駆動力源として走行し、かつそのエンジンおよびその電動機によって選択的に駆動される回転軸と共に機械的に回転駆動される油圧ポンプを油圧源として有する変速機を備えた車両において、その油圧ポンプの作動を制御するための車両用油圧ポンプの駆動制御装置であって、前記エンジンの停止後に前記変速機の油圧アクチュエータの油圧が低下した場合には、前記電動機によって油圧ポンプを駆動させる油圧ポンプ駆動制御手段を含むことにある。
【0006】
【発明の効果】
このようにすれば、エンジンおよび電動機を駆動力源として走行し、かつそのエンジンおよびその電動機によって選択的に駆動される回転軸と共に機械的に回転駆動される油圧ポンプを油圧源として有する変速機を備えた車両において、油圧ポンプ駆動制御手段により、前記エンジン停止後に前記変速機の油圧アクチュエータの油圧が低下した場合には前記電動機によって油圧ポンプが駆動されるので、電動式の油圧ポンプを設けなくてもエンジン停止中すなわち車両停止中において確実に油圧が維持される。これにより、車両再発進時におけるショックの発生が抑制されるとともに、電動式の油圧ポンプを変速機の外部に設けることによって搭載性が低下するなどといった不都合が解消される。
【0007】
【発明の他の態様】
ここで、好適には、前記油圧ポンプ駆動制御手段は、アイドル状態のエンジンにより回転駆動される回転速度よりも低い回転速度、たとえばアイドル回転速度の半分程度の回転速度で、前記油圧ポンプを前記電動機により回転駆動させるものである。このようにすれば、車両停止時に油圧ポンプを回転駆動するために発生する騒音が低下して運転性が高められる。また、上記油圧ポンプ駆動制御手段は、十分な油圧を発生させるに足る所定期間だけ油圧ポンプを回転駆動するものである。このようにすれば電動機により油圧ポンプを回転駆動するために消費される電気エネルギを必要最小限とすることができる。
【0008】
また、好適には、前記油圧アクチュエータの油圧低下は、前記油圧ポンプの回転停止からの経過時間が所定値を越えたことに基づいて判定されるものである。このようにすれば、油圧アクチュエータの油圧を検出する油圧センサが不要となる。
【0009】
また、好適には、上記所定時間は、予め記憶された関係から実際の作動油温度または作動油温度およびシフトレバーの操作位置に基づいて設定されるものである。このようにすれば、油圧アクチュエータの油圧の低下の判定精度が高められる。また、好適には、前記油圧ポンプから出力される油圧を蓄圧するためのアキュムレータが設けられない場合は、上記関係は所定時間と作動油温度およびシフトレバーの操作位置との関係が用いられ、そのアキュムレータが設けられる場合は、上記関係は所定時間と作動油温度との関係が用いられる。
【0010】
また、好適には、前記エンジンおよび電動機は、クラッチを介して相互に連結されており、その電動機によって前記油圧ポンプが回転駆動される場合は、そのクラッチが開放状態とされて電動機からエンジンへの動力伝達が遮断されるものである。このようにすれば、電動機による油圧ポンプの回転駆動時の駆動損失が低下させられる。
【0011】
また、好適には、前記油圧ポンプから出力される油圧を蓄圧するアキュムレータと、そのアキュムレータと油圧ポンプとの間に設けられ、電動機によって前記油圧ポンプが回転駆動されるアキュムレータの蓄圧期間に開放されるアキュムレータ制御弁とが設けられ、前記エンジンの再始動時すなわち車両再発進時にはそのアキュムレータに蓄圧された油圧が前記油圧アクチュエータへ供給されるものである。このようにすれば、蓄圧されたアキュムレータの油圧はアキュムレータ制御弁しか洩れる要素がないため、油圧アクチュエータへの油路全体の油圧を保持する構成に比べ、はるかに油圧の保持性能が高いものとなる。このアキュムレータに蓄圧された油圧は、エンジンの再始動時すなわち車両発進時において、アキュムレータ制御弁が解放されて油圧アクチュエータへ速やかに供給される。
【0012】
また、好適には、エンジンの始動指令が出されたか否かを判定するエンジン始動指令判定手段と、そのエンジン始動指令判定手段によりエンジンの始動指令が出されたと判定された場合は、前記入力クラッチを係合させる入力クラッチ制御手段と、そのエンジン始動指令判定手段によりエンジンの始動指令が出されたと判定された場合は、前記電動機による油圧ポンプの駆動を終了させる駆動終了手段とが設けられる。このようにすれば、エンジンの始動に伴って油圧ポンプの駆動源が電動機からエンジンへ移行されるので、エンジンにより油圧ポンプが駆動可能な状態であるにも関わらず無駄に電動機を駆動し続けることによる電気エネルギの浪費を抑制することができる。
【0013】
また、好適には、前記クラッチ制御手段は、エンジンの再始動時すなわち車両再発進時において、前記クラッチの入力側回転部材および出力側回転部材の回転を同期させてから両者を係合させるものである。このようにすれば、エンジンの再始動時すなわち車両再発進時においてクラッチ係合時のショックが好適に防止される。
【0014】
また、好適には、たとえば車速が5km/h程度の所定車速以下である車両の停止状態を判定する車両停止状態判定手段と、シフトレバーが駆動ポジションすなわち走行位置に操作されているか否かを判定するシフトレバー操作位置判定手段と、前記エンジンの停止中であるか否かを判定するエンジン停止中判定手段とが設けられ、車両停止状態判定手段により車両が停止状態であることが判定され、そのシフトレバー操作位置判定手段によりシフトレバーが走行位置に操作されていることが判定され、且つエンジン停止中判定手段により前記エンジンの停止中であることが判定された場合に、前記油圧ポンプ駆動制御手段により、前記自動変速機の油圧アクチュエータの油圧が低下した場合に前記電動機によって油圧ポンプが駆動されるものである。
【0015】
【発明の好適な実施の形態】
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施例の制御装置が適用された車両用動力伝達装置の構成を説明する図であり、図2は図1の自動変速機の骨子図である。図1において、動力源としてのエンジン10の出力は、入力クラッチ12、トルクコンバータ14を介して自動変速機16に入力され、図示しない差動歯車装置および車軸を介して駆動輪へ伝達されるようになっている。上記入力クラッチ12とトルクコンバータ14との間には、電動モータおよび発電機として機能する第1モータジェネレータMG1が配設されている。また、エンジン10には、たとえばクラッチ付連結装置17を介して第2モータジェネレータMG2が作動的に連結されている。この第2モータジェネレータMG2は、エンジン10の始動モータ、エンジン停止時におけるエアコンなどの補機の駆動モータ、或いはエンジン10により回転駆動される発電機などとして機能する。
【0017】
上記トルクコンバータ14は、エンジン10のクランク軸18に連結されたポンプ翼車20と、自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車24と、それらポンプ翼車20およびタービン翼車24の間を直結するためのロックアップクラッチ26と、一方向クラッチ28によって一方向の回転が阻止されているステータ翼車30とを備えている。
【0018】
上記自動変速機16は、ハイおよびローの2段の切り換えを行う第1変速機32と、後進変速段および前進4段の切り換えが可能な第2変速機34とを備えている。第1変速機32は、サンギヤS0、リングギヤR0、およびキャリアK0に回転可能に支持されてそれらサンギヤS0およびリングギヤR0に噛み合わされている遊星ギヤP0から成るHL遊星歯車装置36と、サンギヤS0とキャリアK0との間に設けられたクラッチC0および一方向クラッチF0と、サンギヤS0およびハウジング38間に設けられたブレーキB0とを備えている。
【0019】
第2変速機34は、サンギヤS1、リングギヤR1、およびキャリアK1に回転可能に支持されてそれらサンギヤS1およびリングギヤR1に噛み合わされている遊星ギヤP1から成る第1遊星歯車装置40と、サンギヤS2、リングギヤR2、およびキャリアK2に回転可能に支持されてそれらサンギヤS2およびリングギヤR2に噛み合わされている遊星ギヤP2から成る第2遊星歯車装置42と、サンギヤS3、リングギヤR3、およびキャリアK3に回転可能に支持されてそれらサンギヤS3およびリングギヤR3に噛み合わされている遊星ギヤP3から成る第3遊星歯車装置44とを備えている。
【0020】
上記サンギヤS1とサンギヤS2は互いに一体的に連結され、リングギヤR1とキャリアK2とキャリアK3とが一体的に連結され、そのキャリアK3は出力軸46に連結されている。また、リングギヤR2がサンギヤS3に一体的に連結されている。そして、リングギヤR2およびサンギヤS3と中間軸48との間にクラッチC1が設けられ、サンギヤS1およびサンギヤS2と中間軸48との間にクラッチC2が設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2の回転を止めるためのバンド形式のブレーキB1がハウジング38に設けられている。また、サンギヤS1およびサンギヤS2とハウジング38との間には、一方向クラッチF1およびブレーキB2が直列に設けられている。この一方向クラッチF1は、サンギヤS1およびサンギヤS2が入力軸22と反対の方向へ逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0021】
キャリアK1とハウジング38との間にはブレーキB3が設けられており、リングギヤR3とハウジング38との間には、ブレーキB4と一方向クラッチF2とが並列に設けられている。この一方向クラッチF2は、リングギヤR3が逆回転しようとする際に係合させられるように構成されている。
【0022】
以上のように構成された自動変速機16では、例えば図3に示す係合作動表に従って後進1段および変速比が順次異なる前進5段の変速段のいずれかに切り換えられる。図3において「○」は係合状態を表し、空欄は解放状態を表し、「◎」はエンジンブレーキのときの係合状態を表し、「△」は動力伝達に関与しない係合を表している。この図3から明らかなように、シフトレバー68が駆動ポジッションすなわち走行位置(R、D、4、3、2、L)に操作されると、クラッチC2またはC1が係合させられてエンジン10の動力が図示しない駆動輪へ伝達され、車両が後進走行或いは前進走行させられる。上記クラッチおよびブレーキは何れも油圧アクチュエータによって係合させられる油圧式摩擦係合装置である。上記シフトレバー68は、たとえば、車両の前後方向に位置するPポジション、Rポジション、Nポジション、Dおよび4ポジション、3ポジション、2およびLポジションへ択一的に操作されるように、その支持機構が構成されている。
【0023】
また、図4に示すように、自動変速機16のハウジング38内には、入力軸22と共に回転させられる油圧ポンプ52が設けられている。この油圧ポンプ52は、たとえばベーン型ポンプであって、たとえば入力クラッチ12が係合させられているときにはエンジン10により回転駆動され、入力クラッチ12が係合させられていないときにはMG1により回転駆動される。この油圧ポンプ52は、ハウジング38の底を構成するオイルパン58内に還流した作動油を圧送する。
【0024】
図5は、前記自動変速機16の変速制御のための油圧制御回路66の一部を説明する図である。図5において、オイルパン58内のオイルタンク78に還流させられた作動油は、油圧ポンプ52により圧送され、ライン圧制御用電磁弁70からの指令に従って調圧するプライマリレギュレータ72によって調圧された後、シフトレバー68に対して機械的に連結されることによりそのシフトレバー68の操作に連動させられるマニュアル弁77を通して、シフトレバー68がDポジションのような前進走行位置であるときには電磁弁74により制御される切換弁76を通して、滑らかに係合させるためのアキュムレータ79が接続されたクラッチC1へ供給され、シフトレバー68がRポジションのような後進走行位置であるときにはクラッチC2へ供給されるようになっている。流量制御のために、上記マニュアル弁77と切換弁76との間には大オリフィス80が設けられ、その切換弁76をバイパスするバイパス油路82には、クラッチC1内の作動油を速やかに排出させる逆止弁84および小オリフィス86が並列に設けられている。
【0025】
上記油圧制御回路66には、蓄圧機能を有し、エンジン10の停止を伴う車両停止時において油圧を維持し或いはエンジン10の再始動時などにおいて油圧源として機能するアキュムレータ(蓄圧装置)88と、このアキュムレータ88と油圧ポンプ52およびプライマリレギュレータ72との間に設けられた電磁式のアキュムレータ制御弁90とが設けられている。上記アキュムレータ制御弁90は、エンジン10の停止を伴う車両停止時においては油圧ポンプ52からの作動油の供給を受ける間を除いて常時閉じられているが、エンジン10の再始動時においては作動油圧を供給するために開かれる。
【0026】
図6は、電子制御装置92に入力される信号およびその電子制御装置92から出力される信号を例示している。たとえば、電子制御装置92には、アクセルペダルの操作量であるアクセル開度θA を表すアクセル開度信号、スロットル弁のスロットル開度θTHを表すスロットル開度信号、自動変速機16の出力軸46の回転速度NOUT に対応する車速信号、エンジン回転速度NE を表す信号、入力軸回転速度センサ94により検出された入力軸回転速度NINを表す信号、エンジン10の吸気配管内の負圧PINを表す信号、空燃比A/Fを表す信号、シフトレバーの操作位置PSHを表す信号などが供給されている。また、電子制御装置92からは、燃料噴射弁からエンジン10の気筒内へ噴射される燃料の量を制御するための噴射信号、自動変速機16のギヤ段を切り換えるために油圧制御回路66内のシフト弁を駆動するシフトソレノイドを制御する信号、ロックアップクラッチ26を開閉制御するために油圧制御回路66内のロックアップコントロールソレノイドを制御する信号、スロットル開度θTHを制御するスロットル制御信号、燃料噴射弁を制御する燃料噴射量制御信号、MG1により油圧ポンプ52を駆動する信号などが出力される。
【0027】
上記電子制御装置92は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、ロックアップクラッチ26の係合、解放、或いはスリップを実行する制御、上記自動変速機16の変速制御、ハイブリッド原動機切換制御、車両停止時にエンジン10を自動的に停止させ再発進時には自動的に再始動させる停車中エンジン停止制御、車両停車中におけるクラッチC1またはC2の油圧アクチュエータの油圧を維持するために油圧ポンプ52を制御する停車中油圧ポンプ駆動制御などを実行するものである。
【0028】
図7は、上記電子制御装置92の制御機能の要部すなわち停車中エンジン停止制御および停車中油圧ポンプ駆動制御などを説明する機能ブロック線図である。図9において、エンジン自動停止制御手段100は、エコラン停止或いはハイブリッド停止などと称されるように、車両の停止状態ではエンジン10を自動的に停止させる。たとえば車速Vが零であり、スロットル開度θA が零であり、冷却水温度TW が所定値たとえば70℃以上であり、自動変速機16の作動油温度TOIL が所定値たとえば65℃以上であり、フットブレーキがオンであり、且つシフトレバー68の操作位置がたとえばD乃至Lであるという自動停止条件が成立した場合は、エンジン10を自動的に停止させ、発進操作が行われることによりその自動停止条件が成立しなくなった場合はエンジン10を自動的に再始動させる。
【0029】
車両停止状態判定手段104は、車両の停止状態であるか否かをたとえば車速Vが5km/h以下であるか否かに基づいて判定する。エンジン停止中判定手段106は、上記エンジン自動停止制御手段100により車両停止に伴ってエンジンが停止させられているエンジン停止中であるか否かを判定する。シフトレバー操作位置判定手段108は、シフトレバー68が駆動ポジションすなわちR、D、4、3、2、Lなどの前進或いは後進の走行位置に操作されているか否かを判断する。
【0030】
油圧低下判定手段すなわち経過時間判定手段110は、車両の停止に伴うエンジン10の停止中において自動変速機16の油圧低下を、エンジン10の停止或いは油圧ポンプ52の回転停止からの経過時間tELが予め決定された判断基準時間T1 を越えたか否かに基づいて判断する。この判断基準時間T1 は、たとえば図8に示す予め記憶された関係から実際の作動油温度TOIL に基づいて決定される。この関係は、作動油の漏れにより油圧が低下する現象を利用して、たとえばアクセル開度θA および車速Vが略零であるときにプライマリーレギュレータ72により調圧されるライン圧よりも所定値だけ低い値となる迄の時間が実験的に求められたものである。なお、シフトレバー68がD位置のような前進走行位置へ操作されている場合は、R位置のような後進走行位置へ操作されている場合に比較して、油圧アクチュエータの数が多く、作動油の漏れ量も多いので、図8に示すように、同じ油温TOIL ではR位置の場合よりも判断基準値T1 が大きい値となるように設定された関係が用いられる。
【0031】
油圧ポンプ駆動制御手段112は、エンジン10の停止後において自動変速機10の油圧アクチュエータの油圧が低下した場合、すなわちエンジン10の停止からの経過時間tELが上記判断基準時間T1 を越えた場合には、電動機として機能するMG1によって油圧ポンプ52を駆動し、車両停止に伴うエンジン10の停止期間中において油圧を維持させる。すなわち、上記油圧ポンプ駆動制御手段112は、車両停止状態判定手段104により車両の停止状態であると判定され、エンジン停止中判定手段106によりエンジン10の停止中であると判定され、シフトレバー操作位置判定手段108によりシフトレバー68が駆動ポジションに操作されていると判定され、且つ上記油圧低下判定手段すなわち経過時間判定手段110によりエンジン10の停止からの経過時間tELが上記判断基準時間T1 を越えて自動変速機16の油圧低下が判定された場合は、油圧を維持するためにMG1により油圧ポンプ52を、アイドル回転速度よりも半分程度の低い回転速度、たとえば400回転/分程度の回転速度で駆動する。
【0032】
上記油圧ポンプ駆動制御手段112は、シフトレバー68が前進走行位置へ操作されている場合は前進走行時に係合させられる摩擦係合装置の油圧すなわち油圧センサ96により検出されるクラッチC1の油圧が予め設定された判断基準値を上回るまで、また、シフトレバー68が後進走行位置へ操作されている場合は後進走行時に係合させられる摩擦係合装置の油圧すなわち油圧センサ98により検出されるクラッチC2の油圧が予め設定された判断基準値を上まわるようにすなわち十分な油圧を発生させるように予め設定された所定期間だけ油圧ポンプ52を回転駆動する。同時に、油圧ポンプ駆動制御手段112は、油圧ポンプ52の駆動中はアキュムレータ制御弁90を開いてアキュムレータ88内に蓄圧させる一方で、入力クラッチ制御手段120は、入力クラッチ12を開放させる。
【0033】
エンジン始動指令判定手段118は、エンジン10の停止に伴うMG1による油圧ポンプ52の駆動中にたとえば前記自動停止条件が成立しなくなったことに基づくエンジンの再始動指令が入ったか否かを判定する。エンジン再始動手段116は、上記エンジン始動指令判定手段118によりエンジンの再始動指令が入ったと判定された場合は、エンジン10を再始動させる。同時に、入力クラッチ制御手段120は、上記エンジン始動指令判定手段118によりエンジンの再始動指令が入ったと判定された場合は、エンジン10の駆動力を自動変速機16側へ伝達させるために入力クラッチ12を係合させる。この入力クラッチ12の係合は、MG1或いはエンジン10の回転速度を制御して入力クラッチ12の入力側回転体および出力側回転体の回転を同期させた状態で実行させる。また、ポンプ駆動終了手段122は、上記エンジン始動指令判定手段118によりエンジンの再始動指令が入ったと判定された場合は、エンジン停止中の自動変速機16の油圧を維持するためのMG1による油圧ポンプ52の駆動を終了させる。
【0034】
図9は、電子制御装置92の制御作動の要部すなわち車両停止且つエンジン停止中の油圧ポンプ駆動制御作動を説明するフローチャートであって、所定のサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。図9において、前記車両停止状態判定手段104に対応するステップ(以下、ステップを省略する)SA1では、車速Vがたとえば5km/h以下の停止状態であるか否かが判断される。このSA1の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記シフトレバー操作位置判定手段108に対応するSA2において、シフトレバー68が駆動位置すなわち走行位置に操作されているか否かが判断される。このSA2の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記エンジン停止中判定手段106に対応するSA3において、エンジン10の停止中であるか否かが判断される。このSA3の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記油圧低下判定手段110に対応するSA4において、たとえばエコラン停止である車両停止且つエンジン停止中の自動変速機16の油圧たとえばクラッチC1或いはC2の油圧が低下したか否かが、経過時間tELが判断基準時間T1 を越えたことに基づいて判断される。このSA4の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記入力クラッチ制御手段120に対応するSA5において入力クラッチ12が開放されるとともに、前記油圧ポンプ駆動制御手段112に対応するSA6においてMG1による油圧ポンプ52の駆動が所定時間だけ実行される。この所定時間は、クラッチC1或いはC2の油圧がたとえば本来のライン油圧に到達するように予め設定された値である。このMG1による油圧ポンプ52の駆動は、アイドル回転よりも半分程度の低い回転速度、たとえば400回転/分の回転速度で行われる。
【0035】
次いで、前記エンジン始動指令判定手段118に対応するSA7において、停車中のエンジン停止条件が不成立となってエンジン10の始動指令が出されたか否かが判断される。このSA7の判断が否定される場合は本ルーチンが終了させられるが、肯定される場合は、前記エンジン再始動手段116に対応するSA8においてエンジン10が再始動させられるとともに、前記入力クラッチ制御手段120に対応するSA9およびSA10が実行される。SA9では、入力クラッチ12の入力側回転体および出力側回転体の回転速度が同期するようにエンジン10或いはMG1の回転速度が制御されるとともに、その回転速度の同期が行われたか否かが判断される。このSA9の判断が否定される間は上記同期制御が実行されるが、肯定されると、SA10において入力クラッチ12が係合させられる。そして、前記オンプ駆動終了手段122に対応するSA11において、MG1による油圧ポンプ52の回転駆動が停止させられる。
【0036】
上述のように、本実施例によれば、エンジン10およびMG1(電動機)によって選択的に駆動される入力軸22とともに回転させられる油圧ポンプ52を油圧源として有する自動変速機16を備えた車両において、その油圧ポンプ52の作動を制御するための電子制御装置92(車両用油圧ポンプの駆動制御装置)が、エンジン10の停止後に自動変速機16の油圧が低下した場合には、MG1によって油圧ポンプ52を駆動させる油圧ポンプ駆動制御手段112(SA6)を含むものであることから、電動式の油圧ポンプを用いなくてもエンジン10が停止させられる車両停止中において確実に油圧が維持されるので、再発進時におけるショックの発生が抑制される。また、電動式の油圧ポンプを自動変速機16の外部に設けることによって搭載性が低下するなどといった不都合が解消される。
【0037】
また、本実施例によれば、油圧ポンプ駆動制御手段112(SA6)は、アイドル状態のエンジン10により回転駆動される回転速度よりも低い回転速度、たとえばアイドル回転の半分程度の回転速度で、油圧ポンプ52をMG1によって回転駆動させるものであるので、車両停止時に油圧ポンプ52を回転駆動するために発生する騒音が低下して運転性が高められる。また、上記油圧ポンプ駆動制御手段112は十分な油圧を発生させるに足る所定期間だけ油圧ポンプ52を回転駆動するので、油圧ポンプ52が必要かつ十分な期間だけ間欠的に作動させられる利点がある。
【0038】
また、本実施例によれば、クラッチC1或いはC2などの油圧アクチュエータの油圧低下は、エンジン10の停止或いは油圧ポンプ52の回転停止からの経過時間tELが所定の判断基準値T1 を越えたことに基づいて判定されるものであるので、油圧アクチュエータの油圧を検出する油圧センサが不要となる。
【0039】
また、本実施例によれば、上記所定の判断基準値T1 は、たとえば図8に示す予め記憶された関係から実際の作動油温度TOIL およびシフトレバー68の操作位置に基づいて設定されるものであるので、油圧アクチュエータの油圧低下の判定精度が高められる。
【0040】
また、本実施例によれば、エンジン10およびMG1は、入力クラッチ12を介して直列に連結されており、そのMG1によって油圧ポンプ52が回転駆動される場合は、その入力クラッチ12が開放状態とされてMG1からエンジン10への動力伝達が遮断されるので、油圧ポンプ52を駆動するときのMG1の損失が低下させられる。
【0041】
また、本実施例によれば、油圧ポンプ52から出力される油圧を蓄圧するアキュムレータ88と、そのアキュムレータ88と油圧ポンプ52との間に設けられ、MG1によって油圧ポンプ52が回転駆動されるアキュムレータ88の蓄圧期間に開放されるアキュムレータ制御弁90とが設けられ、エンジン10の再始動時すなわち車両再発進時にはそのアキュムレータ88に蓄圧された油圧がクラッチC1或いはC2などの油圧アクチュエータへ供給されるので、エンジン10の再始動時すなわち車両再発進時において、アキュムレータ制御弁90が開放されて油圧アクチュエータへ油圧が速やかに供給される。
【0042】
また、本実施例によれば、エンジン10の始動指令が出されたか否かを判定するエンジン始動指令判定手段118と、そのエンジン始動指令判定手段118によりエンジン10の始動指令が出されたと判定された場合は、入力クラッチ12を係合させる入力クラッチ制御手段120と、そのエンジン始動指令判定手段118によりエンジンの始動指令が出されたと判定された場合は、MG1による油圧ポンプ52の駆動を終了させる駆動終了手段122とが設けられるため、エンジン10の始動に伴って油圧ポンプ52の駆動源がMG1からエンジン10へ移行され、エンジン10により油圧ポンプ52が駆動可能な状態であるにも関わらず無駄にMG1を駆動し続けることによる電気エネルギの浪費を抑制することができる。
【0043】
また、本実施例によれば、入力クラッチ制御手段120は、エンジンの再始動時すなわち車両再発進時において、入力クラッチ12の入力側回転部材および出力側回転部材の回転を同期させてから両者を係合させるものであるので、エンジン10の再始動時すなわち車両再発進時において入力クラッチ12の係合時のショックが好適に防止される。
【0044】
また、本実施例によれば、たとえば車速が5km/h程度の所定車速以下である車両の停止状態を判定する車両停止状態判定手段104と、シフトレバー68が駆動ポジションすなわち走行位置に操作されているか否かを判定するシフトレバー操作位置判定手段108と、エンジン10の停止中であるか否かを判定するエンジン停止中判定手段106とが設けられ、車両停止状態判定手段104により車両が停止状態であることが判定され、そのシフトレバー操作位置判定手段108によりシフトレバー68が走行位置に操作されていることが判定され、且つエンジン停止中判定手段106によりエンジン10の停止中であることが判定された場合に、油圧ポンプ駆動制御手段112により、自動変速機16の油圧アクチュエータの油圧が低下した場合にMG1によって油圧ポンプ52が駆動されるものである。
【0045】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0046】
たとえば、前述の実施例では複数組の遊星歯車から成る有段式の自動変速機 16について説明されていたが、有効径が可変な1対の可変プーリに巻き掛けられた伝動ベルトを介して動力が伝達され且つ自動的に変速比が変化させられるベルト式無段変速機などであってもよい。この場合、無段変速機の伝動ベルトを挟圧する油圧アクチュエータ内の油圧が油圧センサを用いて検出され、その油圧が維持されるように、車両停止に伴うエンジン停止中にMG1が油圧ポンプ52が駆動する。
【0047】
また、前述の実施例では、車両停止に伴うエンジン停止中において、油圧ポンプ52は専らMG1により回転駆動されていたが、MG2により回転駆動されるようにしてもよい。また前述の実施例では、MG1およびMG2を備えた車両であったが、MG1およびMG2のうちの一方のモータジェネレータを備えた車両であってもよい。さらに、上記MG1およびMG2に替えて、電動機が設けられていてもよい。
【0048】
また、前述の実施例では、アキュムレータ88およびアキュムレータ制御弁90が設けられていたが、それらは必ずしも設けられていなくてもよい。また、アキュムレータ88は図示した構成に限定されるものではなく、蓄圧機能を備えたものであれば他の構成を有するものであってもよい。
【0049】
また、前述の実施例では、車両停止に伴うエンジン停止中が、車両停止状態判定手段104およびエンジン停止中判定手段106により判定されていたが、エンジン自動停止制御手段100からの信号に基づいて判定されてもよい。
【0050】
また、前述の実施例では、所定の判断基準値T1 は、たとえば図8に示す予め記憶された関係から実際の作動油温度TOIL およびシフトレバー68の操作位置に基づいて決定されていたが、特にアキュムレータ88内の油圧を維持しようとする場合には、作動油温度TOIに基づいて決定されてもよい。
【0051】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更,改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である車両用油圧ポンプの駆動制御装置が適用された車両用動力伝達装置を概略説明する図である。
【図2】図1の車両用動力伝達装置の自動変速機の構成の要部を説明する骨子図である。
【図3】図1の自動変速機において、その摩擦係合装置の作動の組み合わせとそれにより得られるギヤ段との関係を示す係合表である。
【図4】油圧ポンプが内蔵された図1の自動変速機の構成を概略説明する図である。
【図5】図1の自動変速機に設けられた油圧制御回路の要路を説明する油圧回路図である。
【図6】図1の自動変速機を制御するための電子制御装置の入力信号および出力信号を説明する図である。
【図7】図6の電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。
【図8】図7の経過時間判定手段において判断基準時間T1 を決定するために用いられる関係を示す図である。
【図9】図6の電子制御装置による制御作動の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
10:エンジン
16:自動変速機
22:入力軸
52:油圧ポンプ
92:電子制御装置(車両用油圧ポンプの駆動制御装置)
112:油圧ポンプ駆動制御手段
MG1:第1モータジェネレータ(電動機)

Claims (9)

  1. エンジンおよび電動機を駆動力源として走行し、かつ該エンジンおよび電動機によって選択的に駆動される回転軸と共に機械的に回転駆動される油圧ポンプを油圧源として有する変速機を備えた車両において、該油圧ポンプの作動を制御するための車両用油圧ポンプの駆動制御装置であって、
    前記エンジンの停止後に前記変速機の油圧アクチュエータの油圧が低下した場合には、前記電動機によって油圧ポンプを駆動させる油圧ポンプ駆動制御手段を含むことを特徴とする車両の制御装置。
  2. 前記油圧ポンプ駆動制御手段は、アイドル状態の前記エンジンにより回転駆動される回転速度よりも低い回転速度にて、前記油圧ポンプを前記電動機により回転駆動させるものである請求項1に記載の車両の制御装置。
  3. 前記油圧アクチュエータの油圧低下は、前記油圧ポンプの回転停止からの経過時間が所定値を越えたことに基づいて判定されるものである請求項1又は2に記載の車両の制御装置。
  4. 前記所定値は、予め記憶された関係から実際の作動油温度または作動油温度およびシフトレバーの操作位置に基づいて設定されるものである請求項3記載の車両の制御装置。
  5. 前記エンジンおよび電動機は、クラッチを介して相互に連結されており、該電動機によって前記油圧ポンプが回転駆動される場合は、前記クラッチが開放状態とされて前記電動機から前記エンジンへの動力伝達が遮断されるものである請求項1から4の何れか1項に記載の車両の制御装置。
  6. 前記油圧ポンプから出力される油圧を蓄圧するアキュムレータと、該アキュムレータと前記油圧ポンプとの間に設けられ、前記電動機によって前記油圧ポンプが回転駆動される前記アキュムレータの蓄圧期間に開放されるアキュムレータ制御弁とが設けられ、前記エンジンの再始動時には該アキュムレータに蓄圧された油圧が前記油圧アクチュエータへ供給されるものである請求項1から5の何れか1項に記載の車両の制御装置。
  7. 前記エンジンの始動指令が出されたか否かを判定するエンジン始動指令判定手段と、該エンジン始動指令判定手段により前記エンジンの始動指令が出されたと判定された場合は、前記クラッチを係合させるクラッチ制御手段と、前記エンジン始動指令判定手段により前記エンジンの始動指令が出されたと判定された場合は、前記電動機による前記油圧ポンプの駆動を終了させる駆動終了手段とを、備えたものである請求項5又は6に記載の車両の制御装置。
  8. 前記クラッチ制御手段は、前記エンジンの再始動時において、前記クラッチの入力側回転部材および出力側回転部材の回転を同期させてから両者を係合させるものである請求項7に記載の車両の制御装置。
  9. 車両の停止状態を判定する車両停止状態判定手段と、シフトレバーが走行位置に操作されているか否かを判定するシフトレバー操作位置判定手段と、前記エンジンの停止中であるか否かを判定するエンジン停止中判定手段とが設けられ、前記車両停止状態判定手段により車両が停止状態であることが判定され、前記シフトレバー操作位置判定手段により前記シフトレバーが走行位置に操作されていることが判定され、且つ前記エンジン停止中判定手段により前記エンジンの停止中であることが判定された場合には、前記油圧ポンプ駆動制御手段により、前記変速機の油圧アクチュエータの油圧が低下した場合に前記電動機によって前記油圧ポンプを駆動するものである請求項1から8の何れか1項に記載の車両の制御装置。
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