JP4174788B2 - 不飽和アルコールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、不飽和アルコールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
α,β−不飽和カルボニル化合物の水素化による不飽和アルコールの製法に関しては、分子状水素を水素化剤として用いて、固体触媒の存在下に気相において水素化を行う方法(Chem. Commun. 1999年、2151頁)、液相において均一又は不均一触媒の存在下に水素化を行う方法(Organometallics, 1991年、10巻、2126頁)等が知られている。これらの方法の内で、分子状水素を水素化剤として液相で不均一触媒の存在下に水素化反応を行う方法が最も簡便であり、経済性も高い方法と考えられるが、不飽和アルコールであるアリルアルコール類以外に、副生成物として飽和カルボニル化合物、飽和アルコール等が生成するという欠点がある。
【0003】
また、分子状水素を用いて液相で不飽和アルコールを製造する際に、Cu系触媒、Os系触媒等の存在下に水素化反応を行うと比較的高い選択率で不飽和アルコールが得られることが知られている(Tetrahedron Lett., 1969年、1579頁)。しかしながら、これらの触媒を用いる場合には、高温高圧下で反応を行う必要があるために、工業的な実用化には不利であり、しかもその触媒性能も充分とはいえない。
【0004】
また、α,β−不飽和カルボニル化合物であるクロトンアルデヒドを原料として、金超微粒子触媒の存在下に、溶媒を用いることなく、400〜500K程度の反応温度で1MPa程度の水素雰囲気中で部分水素化を行う方法が報告されている(第86回触媒討論会予稿集414頁、2000年9月)。しかしながら、この方法では、不飽和アルコールの選択率は充分ではなく、20%程度に過ぎない。
【0005】
芳香族カルボニル化合物の水素化による不飽和アルコールの製法としては、一般に、分子状水素を水素化剤として液相で不均一触媒の存在下に水素化反応を行う方法が知られている。しかしながら、この方法では、不飽和アルコールの選択性が十分ではなく、不飽和アルコールであるベンジルアルコール類以外に、副生成物として飽和カルボニル化合物、飽和アルコール、飽和炭化水素等が生成するという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の主な目的は、不飽和カルボニル化合物を原料として用い、比較的温和な条件下であっても、選択性良く高収率で不飽和アルコールを製造できる方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記した目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、溶媒中において、金を担持した触媒を用いて不飽和カルボニル化合物を水素化する方法によれば、比較的温和な条件下であっても、選択性良く且つ高い転化率で不飽和アルコールを製造できることを見出し、ここに本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、下記の不飽和アルコールの製造方法を提供するものである。1.平均粒子径10nm以下の金の超微粒子を無機酸化物担体に担持してなる触媒の存在下に、水及びアルコール類から選ばれた少なくとも一種の溶媒中でα,β−不飽和アルデヒド類及び芳香族アルデヒド類から選ばれた少なくとも一種の不飽和カルボニル化合物を水素化することを特徴とする不飽和アルコールの製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明方法は、溶媒中で、金を無機酸化物担体に担持した触媒(以下、「金担持触媒」という場合がある)の存在下に、不飽和カルボニル化合物を水素化することによる不飽和アルコールの製造方法である。以下、この方法について、詳細に説明する。
原料化合物
本発明では、原料としては、α,β−不飽和カルボニル化合物、芳香族カルボニル化合物等の不飽和カルボニル化合物を用いる。特に、アクロレイン、メタクロレイン、クロトンアルデヒド、3−メチル−2−ブテナール、シンナミルアルデヒド等の炭素数3〜10程度のα,β−不飽和アルデヒド類、ベンズアルデヒド、アニスアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド、フルフラール等の炭素数6〜20程度の芳香族アルデヒド類等を原料とする場合には、選択性良く、高収率で対応する不飽和アルコールを製造することができ、特に、アクロレイン、メタクロレイン、ベンズアルデヒド、テレフタルアルデヒド等が好ましい。
金担持触媒
本発明方法では、金を無機酸化物担体に担持してなる触媒(金担持触媒)を用いることが必要である。以下、この触媒について具体的に説明する。
【0010】
該触媒では、無機酸化物担体に担持される金(Au)の粒径については限定的ではないが、平均粒子径10nm程度以下の超微粒子であることが好ましく、平均粒子径6nm程度以下であることがより好ましく、平均粒子径5nm程度以下であることが更に好ましい。この様な金の超微粒子を無機酸化物担体上に担持させる場合には、特に、無機酸化物担体との相乗的な効果により高い触媒活性を達成することができる。平均粒子径の下限値は特に制限されないが、物理的安定性の見地より約1nm程度とすれば良い。なお、該触媒における金超微粒子の平均粒子径は、担体上の金超微粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)により観察し、任意に選んだ100個の粒子径の算術平均値である。
【0011】
無機酸化物担体としては特に限定されず、例えば、金属酸化物(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、酸化亜鉛等)、複合金属酸化物(シリカ・アルミナ、チタニア・シリカ、シリカ・マグネシア等)、ゼオライト(ZSM−5等)、メソポーラスシリケート(MCM−41等)、天然鉱物(粘土、珪藻土、軽石等)等の各種担体を用いることができる。
【0012】
本発明では、特に、Ti、Zr、Al及びZnから選ばれた少なくとも1種の元素を含む酸化物からなる無機酸化物担体を用いることが好ましい。これらの酸化物は、単体元素の酸化物が2以上混合された混合酸化物であっても良いし、あるいは複酸化物(又は複合酸化物)であっても良い。
【0013】
特に、無機酸化物担体としてTiO2、ZrO2等を用いる場合に、非常に高い触媒活性を発揮することができる。
【0014】
本発明では、無機酸化物担体は多孔質であることが好ましく、特にその比表面積(BET法)が通常1m2/g程度以上であることが好ましく、特に10m2/g以上であることがより好ましい。担体の形状・大きさは限定的でなく、最終製品の用途等に応じて適宜決定すれば良い。
【0015】
金担持触媒における金の担持量は、最終製品の用途、担体の種類等に応じて適宜決定すれば良いが、通常は無機酸化物担体100重量部に対して0.01〜20重量部程度とすることが好ましく、0.1〜10重量部とすることがより好ましい。
【0016】
本発明で用いる金担持触媒では、更に、金以外にVIII族元素やIB族元素等等の第二成分が担持されていても良い。これらの第二成分の具体例としては、VIII族元素として、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Pd、Os、Ir、Ptなどを挙げることができ、IB族元素として、Cu、Ag等を挙げることができる。第二成分は、一種のみが含まれてよく、或いは二種以上が含まれても良い。第二成分元素は、担体上に金と離れて存在しても良いし、金粒子中に合金等の形態で含まれていても良いが、合金や金属間化合物のように金と何らかの相互作用を持ちうる状態で担持されることが好ましい。第二成分の担持量については、多すぎると第二元素独自の性質が過度に発揮されて、不飽和アルコール製造用触媒として適した性能が現れない場合があるので、通常、金に対して原子比で0.3程度以下であることが好ましく、0.2程度以下であることがより好ましい。
【0017】
本発明で用いる金担持触媒の製造方法については、特に限定的ではなく、上記した無機酸化物担体上に所定量に金、及び必要に応じて第二成分が担持される方法であれば公知の方法を適宜適用できる。
【0018】
以下においては、本発明で用いる好ましい触媒である金超微粒子が担持された触媒の製造方法について具体的に説明する。
【0019】
該触媒の製造方法は、無機酸化物担体上に所定の金超微粒子を担持できれる方法であれば特に限定されない。担持方法自体は、例えば共沈法、析出沈殿法、含浸法、気相蒸着法等の公知の方法を利用できる。これらの方法の内で、共沈法、析出沈殿法等が好ましく、特に析出沈殿法が好ましい。
【0020】
析出沈殿法を用いて本発明触媒を製造する場合、例えば金を含む水溶性化合物の水溶液と無機酸化物担体とを混合し、金化合物を担体表面に析出沈殿させた後、回収された固形分を焼成することによって本発明方法で使用する触媒を得ることができる。
【0021】
この方法で用いる金を含む水溶性化合物は水溶性であれば限定されない。例えば、テトラクロロ金(III)酸「H〔AuCl4〕」、テトラクロロ金(III)酸ナトリウム「Na〔AuCl4〕」、ジシアノ金(I)酸カリウム「K〔Au(CN)2〕」、ジエチルアミン金(III)三塩化物「(C2H5)2NH〔AuCl3〕」等の錯体;シアン化金(I)等の金化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種単独又は二種以上混合して用いることができる。
【0022】
上記水溶液の金濃度は、用いる化合物の種類等によって異なるが、通常は0.1〜100mmol/l程度とすれば良い。また、上記水溶液のpHは、通常5〜10程度、好ましくは6〜9の範囲内に設定すれば良い。上記pHは、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、アンモニア等のアルカリにより調節することができる。また、必要により、塩酸等の酸を使用することもできる。これらのアルカリ又は酸は、必要に応じて水溶液の形態で使用しても良い。
【0023】
必要により、上記水溶液に界面活性剤を添加することもできる。界面活性剤は、上記水溶液に応じて公知のもの又は市販品の中から適宜選択すれば良い。例えば、長鎖アルキルスルホン酸及びその塩、長鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、長鎖アルキルカルボン酸及びその塩、アリールカルボン酸及びその塩等のアニオン性界面活性剤;長鎖アルキル4級アンモニウム塩等のカチオン性界面活性剤;ポリアルキレングリコール、ポリオキシエチレンノニルフェノール等のノニオン性界面活性剤;等が挙げられる。これら界面活性剤は少なくとも1種を用いることができる。これらの内で、アニオン性界面活性剤及びノニオン性界面活性剤が好ましく、特にアニオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤の中でも、とりわけ、炭素数8以上の長鎖アルキルスルホン酸及びその塩、炭素数8以上の長鎖アルキルベンゼンスルホン酸及びその塩、炭素数8以上の長鎖アルキルカルボン酸及びその塩、アリールカルボン酸及びその塩等がより好ましい。
【0024】
界面活性剤の使用量は、所望の分散性、用いる界面活性剤の種類等により適宜決定することができるが、通常は界面活性剤の濃度が0.1〜10mmol/l程度とすれば良い。
【0025】
上記水溶液と混合する無機酸化物担体は、顆粒状、造粒体等のいずれの形態で使用しても良い。上記担体の使用量は、上記水溶液の濃度、用いる担体の種類等に応じて適宜設定すれば良い。上記水溶液と無機酸化物担体とを混合する際には、必要に応じて上記水溶液を加温しても良い。この場合の温度は、通常10〜100℃程度とすれば良い。また、pHは4〜10程度の中性付近が好ましい。
【0026】
続いて、この無機酸化物担体と金を含む水溶性化合物の水溶液とを混合した後、固形分を回収する。固形分の回収方法は限定的でなく、例えば上澄液の回収により行ったり、あるいは公知の固液分離法に従って実施することができる。回収された固形分は、残留イオンが実質的になくなるまでイオン交換水等で洗浄することが好ましい。
【0027】
次いで、上記固形分(金固定化物)の焼成を行う。必要に応じて、焼成に先立って予め所定温度に加熱して乾燥しても良い。乾燥温度は、通常150℃未満とすれば良い。焼成温度は、通常150〜800℃程度、好ましくは200〜700℃、最も好ましくは250〜600℃とすれば良い。この温度範囲内で所定の金超微粒子が得られるように適宜設定すれば良い。焼成雰囲気は空気(大気)中又は酸化性雰囲気中でも良く、またアルゴンガス、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気中、水素ガス等の還元性雰囲気中のいずれであっても良い。また、焼成時間は、焼成温度、固形分の大きさ等に応じて適宜決定すれば良い。かかる焼成によって、金超微粒子担持触媒を得ることができる。
不飽和アルコールの製造方法
本発明の不飽和アルコールの製造方法は、上記した金担持触媒の存在下に、溶媒中で不飽和カルボニル化合物を水素化する方法である。
【0028】
この様に、金担持触媒という特定の触媒を用い、更に、溶媒中で水素化反応を行うことによって、不飽和カルボニル化合物のカルボニル基のみを選択性良く水素化して、高い選択率で対応する不飽和アルコールを得ることができる。しかも、高圧や高温を要することなく、比較的低温低圧の穏和な条件下においても、高選択率且つ高転化率で目的とする不飽和アルコールを製造することができる。
【0029】
これに対して、無溶媒下で水素化反応を行う場合には、水素化活性が低くなり、高温で反応を行うことが必要となるが、高温下で反応を行うと不飽和アルコールの選択率が大きく低下する。また、金担持触媒以外の触媒、例えば、銅系の触媒等を用いる場合には、低温低圧の穏和な条件下では、十分な活性を得ることができず、高温高圧下で反応を行うことが必要になる。
【0030】
本発明では、溶媒としては、原料である不飽和カルボニル化合物を溶解でき、且つ水素化反応に関与しないものであれば特に限定なく使用できる。この様な溶媒の具体例としては、水;メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、1−オクタノール、1,2−エタンジオール等のアルコール類;酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン等の飽和炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、塩化ベンゼン等のハロゲン化合物等を使用できる。これらの内で、特に、メタノール、2−プロパノール等の脂肪族飽和アルコール類及び水を一種単独又は二種以上混合して用いることが好ましい。
【0031】
原料とする不飽和カルボニル化合物は、溶媒中に溶解させて反応に供する。不飽和カルボニル化合物の濃度については特に限定的ではないが、通常、0.1〜60重量%程度とすることが好ましく、1〜30重量%程度とすることがより好ましい。
【0032】
不飽和カルボニル化合物の水素化反応は、水素化剤として、金属水素化物、分子状水素等を用いて、溶媒中で公知の方法に従って行えばよい。これらの水素化剤の内で、金属水素化物としては、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウム、水素化アルミニウムリチウム等を例示できる。
【0033】
これらの水素化剤の内で、特に分子状水素を用いる場合に、最も簡便で経済性良く水素化反応を行うことができる。
【0034】
水素化反応の方法については、特に限定されるものではなく、連続式、回分式、半回分式のいずれの方法で行っても良く、必要に応じて、撹拌下に反応を行えばよい。
【0035】
以下、分子状水素を用いる水素化反応について、より具体的に説明する。
【0036】
触媒の使用方法については、特に限定はなく、反応時に原料である不飽和カルボニル化合物と水素が触媒に充分に接触できる方法であればよい。
【0037】
例えば、回分式で反応を行う場合には、溶媒中に原料と共に触媒を一括して仕込み、撹拌下に反応を行えばよい。また、連続式で反応を行う場合には、溶媒中に原料とともに触媒を仕込み、これを連続的に反応装置に供給するか、或いは反応装置に予め触媒を仕込んでおき、ここに原料を含む溶媒を連続的に供給すればよい。反応装置に触媒を仕込む場合には、反応装置は、固定床、流動床、懸濁床等いずれの形態でも良い。
【0038】
触媒の使用量については、特に限定的ではなく、原料の種類、触媒の種類、極性溶媒の種類等や反応条件等に応じて適宜決めればよいが、例えば、溶媒中に原料と共に触媒を仕込む場合には、触媒の使用量については特に限定的ではないが、通常、全溶液量に対して0.01〜50重量%程度とすることが好ましく、0.1〜20重量%程度とすることがより好ましい。また、触媒を仕込んだ反応装置に原料を含む溶液と水素を連続的に供給する方法、例えば、反応装置に何らかの方法で触媒を固定或いは充填したところに原料を含む溶液と水素を連続的に供給する方法では、溶液の触媒層での平均滞留時間又は接触時間は1秒〜2時間程度であることが好ましく、10秒〜30分程度であることがより好ましい。
【0039】
分子状水素の供給方法としては、回分式で反応を行う場合には、水素圧が0.1〜10MPa程度、好ましくは0.2〜2MPa程度となるように、反応装置中に水素を供給し、更に、上記水素圧を反応期間中維持できるように、必要に応じて、水素を追加すればよい。また、連続式で反応を行う場合には、やはり水素圧が0.1〜10MPa程度、好ましくは0.2〜2MPa程度となるように、反応装置中に連続的に水素を供給すればよい。
【0040】
反応温度については、220℃程度以下という比較的低い温度において、高転化率且つ高選択率で目的とする不飽和アルコールを得ることができ、特に、副反応を抑制する点では、150℃程度以下とすることが好ましく、120℃程度以下とすることがより好ましい。また、反応温度の下限については特に限定的ではないが、十分な活性を得るためには、0℃程度以上とすることが適当であり、20℃程度以上とすることが好ましく、50℃程度以上とすることがより好ましい。
【0041】
反応時間については、特に限定的ではなく、各種反応条件によって変わり得るが、通常、反応時間又は滞留時間(反応器内滞留液量/液供給量)として0.5〜20時間の範囲内とすればよい。
【0042】
上記した方法によって反応を行った後、必要に応じて、ろ過、遠心分離等の公知の固液分離方法を用いて触媒を分離し、その後、公知の分離精製手段を用いて、生成した不飽和アルコールを回収することによって、目的とする不飽和アルコールを得ることができる。
【0043】
【発明の効果】
本発明の不飽和アルコールの製造方法によれば、溶媒中で金担持触媒という特定の触媒の存在下に水素化反応を行うことによって、以下の様な優れた効果が達成される。
(1)飽和アルデヒドの生成より不飽和アルコールの生成が有利となる。また、α,β−不飽和アルデヒドを原料に用いた場合に、2量化生成物の生成が抑制される。
【0044】
その結果、不飽和アルデヒドを原料として選択性良く不飽和アルコールを製造できる。
(2)溶媒中で金担持触媒を用いて反応を行うことによって高活性となり、高温、高圧という厳しい反応条件を要することなく、比較的低い反応温度及び低い水素圧下においても、高選択率且つ高収率で目的とする不飽和アルコールを製造することができる。
【0045】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0046】
触媒製造例1(Au/TiO2触媒の製造)
濃度0.01mol/lの塩化金酸水溶液500mlを70℃に加温し、0.5mol/lのNaOH水溶液を用いてpHを約7.5に調整した。次いで、この水溶液を攪拌しながら、市販の酸化チタン(アナターゼ、粒径250μm以下に粉砕したもの)10gを投入し、pHを7〜8.5に維持しながら同温度で1時間攪拌を続けた。
【0047】
その後、遠心分離機を用いて溶液を分離し、固形分にイオン交換水500mlを加えて5分間攪拌した後、遠心分離機により溶液を分離し、この操作を3回繰り返した。得られれた固形分を100℃で12時間乾燥した後、空気中で400℃で3時間焼成した。得られた焼成物では、金が超微粒子として酸化チタンに担持されており、透過型電子顕微鏡(TEM)(装置名「HF−2000」日立製作所製、加圧電圧200kV)による観察で求めた金超微粒子の平均粒子径は約3nmであり、蛍光X線分析により求めた金超微粒子の担持量は、酸化チタンに対して6.8重量%であった。
【0048】
実施例1
SUS製攪拌型100ccオートクレーブに、触媒製造例1で調製した触媒0.5g、メタクロレイン2g及び2−プロパノール20cを仕込み、密封して窒素置換した。その後、水素を1MPa加圧し、さらに攪拌しながら加温して内温を80℃に昇温して同温度を3時間保持した。
【0049】
その後冷却して内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、メタクロレインの転化率は56%、メタリルアルコールの選択率は82%であり、副生成物としてイソブチルアルデヒドと微量のメタクロレイン2量体の生成が認められた。
【0050】
実施例2
メタクロレイン2gをベンズアルデヒド2gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。
【0051】
反応終了後、内容物を冷却してガスクロマトグラフィーにて分析したところ、ベンズアルデヒドの転化率は48%、ベンジルアルコールの選択率は99%以上であり、副生成物としてトルエンの生成が僅かに認められた。
【0052】
触媒製造例2(Au/ZrO2触媒の製造)
酸化チタンに代えて、酸化ジルコニウム(粒径250μm以下に粉砕したもの)10gを用いたこと以外は、触媒製造例1と同様にして、金が超微粒子として酸化ジルコニウムに担持された触媒を製造した。得られた触媒では、透過型電子顕微鏡(装置名「HF−2000」日立製作所製、加圧電圧200kV)による観察で求めた金超微粒子の平均粒子径は約4nmであり、蛍光X線分析により求めた金超微粒子の担持量は、酸化ジルコニウムに対して5.2重量%であった。
【0053】
実施例3
SUS製攪拌型100ccオートクレーブに、触媒製造例2で調製した触媒0.5g、アクロレイン2g及び水20cを仕込み、密封して窒素置換後、水素を1MPa加圧して60℃で5時間反応を行った。
【0054】
冷却後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、アクロレインの転化率は49%、アリルアルコールの選択率は74%であり、副生成物としてプロピオンアルデヒドと微量のアクロレイン2量体の生成が認められた。
【0055】
実施例4
アクロレイン2gをアニスアルデヒド2gに変更し、溶媒を水20ccからメタノール20ccに変更したこと以外は、実施例3と同様にして反応を行った。
【0056】
反応終了後、内容物を冷却してガスクロマトグラフィーにて分析したところ、アニスアルデヒドの転化率は76%、アニスアルコールの選択率は99%以上であり、副生成物としてのp−メトキシトルエンの生成は殆ど認められなかった。
【0057】
触媒製造例3(Au/Al2O3触媒の製造)
酸化チタンに代えて、酸化アルミニウム(粒径250μm以下に粉砕したもの)10gを用いたこと以外は、触媒製造例1と同様にして、金が超微粒子として酸化アルミニウムに担持された触媒を製造した。得られた触媒では、透過型電子顕微鏡(装置名「HF−2000」日立製作所製、加圧電圧200kV)による観察で求めた金超微粒子の平均粒子径は約3nmであり、蛍光X線分析により求めた金超微粒子の担持量は、酸化アルミニウムに対して4.2重量%であった。
【0058】
実施例5
SUS製攪拌型100ccオートクレーブに、触媒製造例3で調製した触媒1g、メタクロレイン2g及びメタノール20ccを仕込み、密封して窒素置換後、水素を2MPa加圧して100℃で2時間反応を行った。
【0059】
冷却後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、メタクロレインの転化率は62%、メタリルアルコールの選択率は71%であった。
【0060】
触媒製造例4(Pd−Au/TiO2触媒の製造)
触媒製造例1において、濃度0.01mol/lの塩化金酸水溶液500mlに、テトラアンミンパラジウム塩化物を0.15g添加したこと以外は、触媒製造例1と同様にして、金とパラジウムが酸化チタンに担持された触媒を製造した。得られた触媒を透過型電子顕微鏡(装置名「HF−2000」日立製作所製、加圧電圧200kV)で観察したところ、担体上に担持された粒子の平均粒子径は約3nmであり、蛍光X線分析により求めた金とパラジウムの担持量は、それぞれ7.3重量%と0.6重量%であり、Pd/Au原子比は0.15であった。また、各粒子の組成分析を行ったところ、殆どの粒子に金とパラジウムの両方が含まれていた。
【0061】
実施例6
SUS製攪拌型100ccオートクレーブに、触媒製造例4で調製した触媒0.5g、ベンズアルデヒド2g及び2−プロパノール20ccを仕込み、密封して窒素置換後、水素を1MPa加圧して60℃で5時間反応を行った。
【0062】
冷却後、内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、ベンズアルデヒドの転化率は68%、ベンジルアルコールの選択率は97%であり、副生成物としてトルエンの生成が認められた。
【0063】
比較例1
メタノールを用いることなく、メタクロレイン2gを20gに変更したこと以外は、実施例1と同様にして反応を行った。
【0064】
その後冷却して内容物をガスクロマトグラフィーにて分析したところ、メタクロレインの転化率は6%、メタリルアルコールの選択率は26%であり、副生成物としてイソブチルアルデヒドとメタクロレイン2量体の生成が何れも多量に認められた。
【0065】
この結果を上記した実施例の結果と比較すれば、溶媒を使用することにより、その効果として、副生成物である飽和アルデヒドや2量体の生成が抑制され、目的とする不飽和アルコールの選択性が向上することが明らかである。
【0066】
以上の実施例及び比較例の結果を下記表1に示す。
【0067】
【表1】
Claims (1)
- 平均粒子径10nm以下の金の超微粒子を無機酸化物担体に担持してなる触媒の存在下に、水及びアルコール類から選ばれた少なくとも一種の溶媒中でα,β−不飽和アルデヒド類及び芳香族アルデヒド類から選ばれた少なくとも一種の不飽和カルボニル化合物を水素化することを特徴とする不飽和アルコールの製造方法。
Priority Applications (1)
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