JP4174367B2 - 送信装置及びその歪み補償方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ディジタル無線機の送信装置に関し、送信電力増幅器を含む送信系の線形/非線形歪みを補償する送信装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
無線通信システムにおいて、ディジタル無線機の送信装置に用いる送信電力増幅器で発生する非線形歪みを補償するために、送信電力増幅器の歪みと逆特性の補償手段を設けたプレディストーション方式の技術が広く用いられている。
【0003】
この種の送信装置の一例として、送信電力増幅器の入力側からフィードバックした送信信号を用いて、送信電力増幅器の歪み成分を除く直交誤差の検出と補償を予め行うことにより、装置の経年変化や温度変化に対しても良好な歪補償特性を維持するとともに装置全体の構成を簡単にするという技術が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
しかしながら、この従来の送信装置は、送信電力増幅器を1つの増幅器として歪補償を行うことから、線形/非線形の歪み特性の逆特性を記憶するために大きな容量が要求される。
【0005】
一方、送信電力増幅器の歪み、特に動的に変化する非線形歪みを少なくするためには、A級増幅器に近づけることが必要とされるが、この場合には、電力消費の面で効率が悪くなってしまう。
【0006】
【特許文献1】
特開2001−16283号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来の送信装置は、送信電力増幅器の歪みを補償するために、電力増幅器の歪み成分として、線形/非線形歪みを同時に補償するため、これらの歪み成分の逆特性のデータが膨大になるという欠点がある。
【0008】
本発明の目的は、このような従来の欠点を除去するため、送信電力増幅器を電力増幅する主増幅器と高利得の前置増幅器とに分割し、主増幅器を除く線形歪みを主とする歪み補償量をオフセット値として予め補正した後に、主増幅器で主として発生する非線形歪みを補正することにより、送信系の歪みを効率良く補償することができる送信装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の送信装置は、送信電力増幅器を含む送信系の線形歪み/非線形歪みを負帰還補償するプリディストーション機能を有する送信装置であって、前記送信電力増幅器を主増幅器と前置増幅器とに分割し、前記主増幅器と前記前置増幅器との接続点で折り返す切替手段と、前記前置増幅器の出力点から折り返したときの歪み補償量を固定的に格納し、前記主増幅器を含む送信系の歪み補償量を通常動作時の変動分として更新する手段と、を備えることを特徴としている。
【0011】
また、本発明の送信装置は、入力された送信データにプリディストーション方式により線形歪み/非線形歪みを付加するプリディストータ部と、歪みを付加されたデジタル信号に変調をかけた後アナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器と、変換されたアナログ信号を周波数変換する周波数変換器と、前記周波数変換器出力を所要のレベルに増幅する前置増幅器および主増幅器と、増幅された送信信号の一部を分岐して送信系の線形歪み/非線形歪みを負帰還補償するための帰還信号回路とを含む送信装置であって、前記前置増幅器と前記主増幅器との接続点から前記帰還信号回路に折り返す切替手段と、前記前置増幅器の出力点から折り返したときの歪み補償量を歪み補償係数のオフセット値として固定的に格納する参照テーブル(LUT)と、を備えることを特徴としている。
【0012】
また、前記帰還信号回路は、増幅された送信信号の一部を取り出す方向性結合器と、前記前置増幅器出力を選択入力する切替器と、送信系に対応する周波数変換器、アナログ/デジタル変換器および復調器と、復調信号から送信系の歪み分を計算して出力するテーブル更新部と、計算結果より補正係数を更新して前記プリディストータ部に出力する前記参照テーブルとを備えて構成されることを特徴としている。
【0013】
また、前記切替手段は、電源投入時または動作立ち上がり時に前記前置増幅器と前記主増幅器との接続点から前記帰還信号回路に折り返すよう制御されることを特徴としている。
【0014】
また、前記参照テーブルは、電源投入時または動作立ち上がり時に前記切替手段により折り返された歪み補償量を固定的に格納し、定常動作時は前記主増幅器を含む送信系の歪み補償量の変動分に追従して更新されることを特徴としている。
【0015】
また、本発明の送信装置の歪み補償方法は、送信電力増幅器を含む送信系の線形歪み/非線形歪みを負帰還補償するプリディストーション機能を有する送信装置の歪み補償方法であって、前記送信電力増幅器を主増幅器と前置増幅器とに分割し、前記主増幅器を除く歪み補償量を固定的に参照テーブル(LUT)に格納した上で前記主増幅器を含む変動分に追従して前記参照テーブルを更新し歪み補償を行うことを特徴としている。
【0016】
また、本発明の送信装の歪み補償方法は、送信電力増幅器を含む送信系の線形歪み/非線形歪みを負帰還補償するプリディストーション機能を有する送信装置の歪み補償方法であって、前記送信電力増幅器を主増幅器と前置増幅器とに分割し、電源投入時または動作立ち上がり時に前記主増幅器を除く歪み補償量を測定して参照テーブル(LUT)に固定的に格納し、前記主増幅器を含む通常動作の変動分に追従して前記参照テーブルを更新しながら歪み補償を行うことを特徴としている。
【0017】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の送信装置の一つの実施の形態を示すブロック図である。
【0018】
図1に示す本実施の形態は、入力された送信データをシフトQPSK変調するマッピング1と、帯域制限するFIRフィルタ(FIR)2と、プリディストーション方式により歪みを付加するプリディストータ部3と、歪みを付加されたデジタル信号に変調をかける直交変調部4と、アナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器(D/A CONV)5と、周波数変換する周波数変換器(MIX)6と、所要のレベルに増幅する前置増幅器7および主増幅器8と、増幅された送信信号の一部を分岐するカプラ(結合器)9と、送信信号を放射するアンテナ10と、送信信号を折り返す切替器(SW)11、12と、増幅器13、周波数変換器(MIX)14、アナログ/デジタル変換器(A/D CONV)15および直交復調部16より成る帰還信号回路と、テーブル更新部17と、参照テーブル(LUT)18とより構成されている。
【0019】
次に、本実施の形態の送信装置の動作を図1を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1によると、マッピング1は入力された送信データをπ/4シフトQPSKに変調する。
【0021】
FIRフィルタ(FIR)2は、マッピング1出力の変調されたデータを帯域制限してプリディストータ部3に出力する。
【0022】
プリディストータ部3は、FIR2出力を入力し、送信系で発生する歪みを補償するために、予め歪ませた信号を出力する。
【0023】
直交変調部4は、プリディストータ部3から出力された信号に変調をかけてIF(中間周波数)帯に変換する。
【0024】
デジタル/アナログ変換器(D/A CONV)5は、IF帯に変換された送信データをアナログ信号に変換する。
【0025】
周波数変換器(MIX)6は、アナログ信号に変換された信号を図示しない局部発振信号を用いて、RF(無線周波数)帯に変換する。
【0026】
前置増幅器7および主増幅器8は、MIX6出力を所要の電力に増幅し、カプラ(結合器)9を介してアンテナ10に出力する。
【0027】
スイッチ(SW)11は、前置増幅器7と主増幅器8との間に接続され、電源投入時または動作立ち上がり時に、送信信号をSW12側に出力する。
【0028】
スイッチ(SW)12は、カプラ9により分岐された主増幅器8出力を増幅器13に出力する。また、SW12はSW11と連動して制御される。
【0029】
増幅器13は、周波数変換器(MIX)14の動作に必要なレベルに増減して出力する。
【0030】
続いて、増幅器13出力は、MIX14により図示しない局部発振信号を用いて、IF(中間周波数)帯に変換され、アナログ/デジタル変換器(A/D CONV)15によりデジタル信号に変換され、さらに直交復調器16でベースバンド信号に戻される。
【0031】
テーブル更新部17は、戻されたベースバンド信号から送信系の歪み分を所定のアルゴリズムに基づいて計算し、計算した結果を参照テーブル18に出力する。
【0032】
参照テーブル18(LUT)は、計算された結果を入力し、補正係数を更新するとともにプリディストータ部3に出力する。
【0033】
なお、マッピング1、FIR2、プリディストータ部3、LUT18およびテーブル更新部17はDSPでの処理を示している。
【0034】
次に、歪み補償の動作について説明する。
【0035】
まず、電源投入時などの送信する最初の段階では、主増幅器8の入力側で送信信号の折り返しを行うように、SW11およびSW12を制御する。したがって、送信装置に入力された送信データは、主増幅器8を通ることなく折り返されてテーブル更新部17に入力される。
【0036】
テーブル更新部17は、入力された信号から歪みを計算し、歪み補償するための補正係数を計算する。
【0037】
LUT18は、テーブル更新部17で計算された結果を入力し、このときの補正係数をオフセット値として保存するとともに、この補正係数をプリディストータ部3に出力する。これによりSW11からSW12に折り返した際の主増幅器8を含まない送信系の歪み分が補正されることになる。
【0038】
次に、オフセット値の補正が終わると、SW11およびSW12を制御して、前置増幅器7と主増幅器8、カプラ9と増幅器13とがそれぞれ接続される。すなわち、送信装置に入力された送信データは、主増幅器8を通りカプラ9を介して折り返され、テーブル更新部17に入力される。
【0039】
テーブル更新部17は、直交復調器16から入力された信号を所定のアルゴリズムに基づいて歪みを計算し、主増幅器8を含む歪み量を補償するための補正係数を計算する。
【0040】
LUT18は、テーブル更新部17で計算された結果を入力し、先のオフセット値に加算した補正係数をプリディストータ部3に出力する。
【0041】
プリディストータ部3は、プリディストータをかけるための補正係数を更新し、入力された送信データを複素演算して演算結果を出力する。
【0042】
この2回目の補正では、入力信号レベルの変動により飽和状態近くで動作する主増幅器8の主として非線形歪みが補正されることになる。
【0043】
以上の説明により、従来の送信装置では、電力増幅器の非線形特性の逆特性を全て記憶していたため膨大な記憶容量を必要としていたが、本実施の形態によれば、電力増幅器を前置増幅器と主増幅器との2段に分割し、前置増幅器における線形領域の逆特性を固定分としてオフセット値として定め、主増幅器における非線形領域の逆特性を動作変動分として、入力信号レベルの変動に応じて適応的にLUTを活用することにより、記憶容量を低減するとともに主増幅器の歪み補正を効率的に行うことが可能となる。
【0044】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の送信装置及びその歪み補償方法によれば、電力増幅器を前置増幅器と主増幅器との2段に分割し、前置増幅器を含む線形領域の歪みの補償を予めオフセットとしてLUTに格納することにより、入力信号レベルの変動や温度変動に伴う主増幅器の非線形領域の歪みを適応的に補償することが可能となる。
【0045】
また、送信系を通して電力増幅器の歪み補償を行う場合には、従来では主増幅器にA級の増幅器を用いることも必要であったが、主増幅器の非線形歪みを効率良く補正できるため、AB級の増幅器の使用により熱効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の送信装置の一つの実施の形態を示すブロック図である。
【符号の説明】
1 マッピング
2 FIR
3 プリディストータ部
4 直交変調部
5 デジタル/アナログ変換器(D/A CONV)
6 MIX
7 前置増幅器
8 主増幅器
9 カプラ(結合器)
10 アンテナ
11、12 SW
13 増幅器
14 MIX
15 アナログ/デジタル変換器(A/D CONV)
16 直交復調部
17 テーブル更新部
18 LUT
Claims (7)
- 送信電力増幅器を含む送信系の線形歪み/非線形歪みを負帰還補償するプリディストーション機能を有する送信装置であって、前記送信電力増幅器を主増幅器と前置増幅器とに分割し、前記主増幅器と前記前置増幅器との接続点で折り返す切替手段と、前記前置増幅器の出力点から折り返したときの歪み補償量を固定的に格納し、前記主増幅器を含む送信系の歪み補償量を通常動作時の変動分として更新する手段と、を備えることを特徴とする送信装置。
- 入力された送信データにプリディストーション方式により線形歪み/非線形歪みを付加するプリディストータ部と、歪みを付加されたデジタル信号に変調をかけた後アナログ信号に変換するデジタル/アナログ変換器と、変換されたアナログ信号を周波数変換する周波数変換器と、前記周波数変換器出力を所要のレベルに増幅する前置増幅器および主増幅器と、増幅された送信信号の一部を分岐して送信系の線形歪み/非線形歪みを負帰還補償するための帰還信号回路とを含む送信装置であって、前記前置増幅器と前記主増幅器との接続点から前記帰還信号回路に折り返す切替手段と、前記前置増幅器の出力点から折り返したときの歪み補償量を歪み補償係数のオフセット値として固定的に格納する参照テーブル(LUT)と、を備えることを特徴とする送信装置。
- 前記帰還信号回路は、増幅された送信信号の一部を取り出す方向性結合器と、前記前置増幅器出力を選択入力する切替器と、送信系に対応する周波数変換器、アナログ/デジタル変換器および復調器と、復調信号から送信系の歪み分を計算して出力するテーブル更新部と、計算結果より補正係数を更新して前記プリディストータ部に出力する前記参照テーブルとを備えて構成されることを特徴とする請求項2記載の送信装置。
- 前記切替手段は、電源投入時または動作立ち上がり時に前記前置増幅器と前記主増幅器との接続点から前記帰還信号回路に折り返すよう制御されることを特徴とする請求項2又は3記載の送信装置。
- 前記参照テーブルは、電源投入時または動作立ち上がり時に前記切替手段により折り返された歪み補償量を固定的に格納し、定常動作時は前記主増幅器を含む送信系の歪み補償量の変動分に追従して更新されることを特徴とする請求項2、3又は4記載の送信装置。
- 送信電力増幅器を含む送信系の線形歪み/非線形歪みを負帰還補償するプリディストーション機能を有する送信装置の歪み補償方法であって、前記送信電力増幅器を主増幅器と前置増幅器とに分割し、前記主増幅器を除く歪み補償量を固定的に参照テーブル(LUT)に格納した上で前記主増幅器を含む変動分に追従して前記参照テーブルを更新し歪み補償を行うことを特徴とする送信装置の歪み補償方法。
- 送信電力増幅器を含む送信系の線形歪み/非線形歪みを負帰還補償するプリディストーション機能を有する送信装置の歪み補償方法であって、前記送信電力増幅器を主増幅器と前置増幅器とに分割し、電源投入時または動作立ち上がり時に前記主増幅器を除く歪み補償量を測定して参照テーブル(LUT)に固定的に格納し、前記主増幅器を含む通常動作の変動分に追従して前記参照テーブルを更新しながら歪み補償を行うことを特徴とする送信装置の歪み補償方法。
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