JP4171030B2 - アスベスト処理方法 - Google Patents

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Description

本願発明は、アスベスト処理方法、特に、天井裏のアスベストに対する処理方法に関するものである。
建造物に用いられたアスベスト処理方法は、これを剥離撤去して処理する方法(特許文献1)と、アスベストを建造物から剥離せずに特許文献2、3に示すような樹脂組成物をアスベストに付与することにより封じ込め処理を行う方法とが知られている。前者は、建造物からアスベスト自体を除去してしまうため、一見最も安全な方法であると思われるが、撤去作業に伴う作業者の安全性、撤去作業時の周囲環境への影響、撤去したアスベストの廃棄処理と環境汚染などの問題を残すものである。他方、後者は、建造物に吹き付けられたアスベストを剥離せずに、安全な状態に処理してしまうもので、撤去したアスベストの廃棄処理作業とこれに伴う環境汚染の問題がなく、また、撤去作業に伴う作業者の安全性、撤去作業時の周囲環境への影響も比較的少ないと言える。
ところが、いずれの場合にあっても、アスベスト層を有する天井躯体と、この天井躯体の下方に天井裏空間を介して設けられた天井板とを備えた建造物に対するアスベスト処理を行う場合にあっては、天井板を撤去して、撤去作業を行うなり、アスベストへ樹脂組成物を塗布注入するなどの封じ込め処理を行っている。そのため、天井板撤去に際して天井板上に積もったアスベストが飛散するおそれがある。また、封じ込めの場合には、撤去よりも飛散が少ないものの、塗布注入時の樹脂組成物の噴射圧などにより天井躯体のアスベストの一部が飛散するおそれがあり、これら処理時に飛散するアスベストに対策を十分に行わなければ、作業者の安全性を確保できず、また周囲環境への悪影響も懸念される。さらに、天井撤去を行うため、天井撤去費用、撤去用仮設費用、これらの処分費用、飛散防止のための養生費用、撤去した後の新たな天井の取り付け費用と、その仮設費用、清掃費用等々、天井撤去に伴う多くの費用と、時間工期とがかかってしまう。
特開平8−28026号公報 特公昭63−55546号公報 特開平9−279861号
本願発明の目的は、天井裏のアスベストに対する処理方法に際して、天井板撤去に伴う安全性への懸念を低減させ得るアスベスト処理方法の提供を図ることにある。本願発明の他の目的は、天井裏のアスベストに対する処理方法に際して、天井板撤去にコストの低減と工期の短縮を可能にするアスベスト処理方法の提供を図ることにある。さらに本願発明の他の目的は、天井裏のアスベストを処理した後の天井を、処理前の姿に近い形で使用することができるアスベスト処理方法の提供を図ることにある。
本願の請求項1に係る発明は、アスベスト層を有する天井躯体と、この天井躯体の下方に天井裏空間を介して設けられた天井板とを備えた建造物に対するアスベスト処理方法において、天井板にノズル挿入孔を明ける工程と、ノズル挿入孔から噴射ノズルを天井裏空間に挿入する工程と、挿入した噴射ノズルからアスベスト処理剤を上記の天井躯体のアスベスト層に対して噴射する工程と、噴射後に挿入孔を封止する工程とを備え、天井板を全面撤去することなくアスベストの処理を行うことを特徴とするアスベスト処理方法を提供する。
本願の請求項2に係る発明は、アスベスト処理剤を上記の天井躯体のアスベスト層に対して噴射すると共に天井板上面にも散布することを特徴とする請求項1記載のアスベスト処理方法を提供する。
本願の請求項3に係る発明は、ノズル挿入孔から注入用ノズルを天井裏空間に挿入し、上記の天井躯体のアスベスト層内に注入用ノズルの先端を挿入する工程と、挿入した注入用ノズルからアスベスト処理剤を上記の天井躯体のアスベスト層内に注入する工程とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のアスベスト処理方法を提供する。
本願の請求項4に係る発明は、噴射ノズルは、先端に設けられた噴射ノズル本体と、この噴射ノズル本体より基端側であってノズル挿入孔から天井裏空間内に挿入可能な挿入部とを備え、この挿入部は少なくとも一部が可撓性を有するものであり、この可撓性を有する部分を変形させた状態で挿入部をノズル挿入孔から天井裏空間内に配位してアスベスト処理剤を噴射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアスベスト処理方法を提供する。
本願の請求項5に係る発明は、噴射ノズルは、先端に設けられた噴射ノズル本体と、この噴射ノズル本体より基端側であってノズル挿入孔から天井裏空間内に挿入可能な挿入部とを備え、挿入部に上下に位置変更可能且つ固定可能な当接部を備え、この当接部をノズル挿入孔の周辺の天井板下面に当接した状態でアスベスト処理剤を噴射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアスベスト処理方法を提供する。
本願の請求項6に係る発明は、当接部は、少なくともその上面に弾性部材を備え、この弾性部材をノズル挿入孔の周辺の天井板下面に当接させた状態で、ノズル挿入孔を中心に操作棒を傾けて、噴射ノズル先端を天井裏空間で傾けつつアスベスト処理剤を噴射することを特徴とする請求項5記載のアスベスト処理方法を提供する。
本願発明に係るアスベスト処理方法は、天井躯体に形成されたアスベスト層に対して、天井板を全面撤去することなくアスベストの処理を行うことができるため、天井板撤去に伴う安全性への懸念を低減させることができる。また、天井板全面の撤去を行わずに処理ができるため、コスト低減と工期の短縮を実現することができる。しかも、処理時のアスベストの飛散防止については、天井板を全面撤去する場合に比して、飛散するアスベストが少なくなり、作業者の安全性や周囲環境への配慮の点からの有利である。そのため、飛散防止のため養生や作業者へのエアシャワールームの等の作業時における飛散防止対策についても、全面撤去の場合に比して軽減することができ、また、処理作業中においても、建造物の使用を継続して行うことも可能となる場合もあり、建造物の使用者が望む場合には、天井裏のアスベストを処理した後の天井を、処理前の姿に近い形で使用することもできる。
上記の効果に加えて、アスベスト処理剤を上記の天井躯体のアスベスト層に対して噴射すると共に天井板上面にも散布することによって、天井板上面に飛散していたアスベスト粉塵をも処理することができ、安全性をさらに向上させることができる。
ノズル挿入孔から注入用ノズルを天井裏空間に挿入し、上記の天井躯体のアスベスト層内に注入用ノズルの先端を挿入する工程と、挿入した注入用ノズルからアスベスト処理剤を上記の天井躯体のアスベスト層内に注入する工程とを実施することによって、天井躯体から浮き上がったアスベスト層や厚みの大きなアスベスト層に対しても、有効な処理を行うことができる。
噴射ノズルに可撓性を有する部分を設けることによって、より広範囲に噴射することができると共に、天井躯体の凹凸などによる噴射の死角を無くすのに効果がある。
当接部をノズル挿入孔の周辺の天井板下面に当接した状態でアスベスト処理剤を噴射することによって、噴射ノズルから天井躯体までの距離を所定の間隔に保った状態で処理剤の噴射を行うことができ、ひいてはアスベストの噴射領域を各挿入孔において適正に維持することができるものであり、噴射作業のミスによるアスベストの未処理部分を残すおそれを低減させることができる。
さらに、噴射ノズル先端を天井裏空間で傾けつつアスベスト処理剤を噴射することによって、天井躯体の形状に凹凸がある場合にも、ムラの少ない噴射塗布を行うことができる。
以下、図面に基づき本願発明の実施の形態を説明する。
図1は本願発明の実施の形態に係るアスベスト処理方法を示す正面図であり、図2は同処理方法における天井板の底面図であり、図3は図1の要部拡大図であり、図4は同処理方法に用いる噴射ノズル本体の断面図であり、図6は同処理方法に用いる閉止具の斜視図である。
この実施の形態に係るアスベスト処理方法の主たる対象としては、図1に示すように、吹き付けなどによって天井躯体1の表面に付与されたアスベスト層2であり、天井躯体1の下方に天井裏空間3を介して設けられた天井板4の下方からアスベスト処理を行うものである。天井躯体1及び天井板4の種類は特に限定されるものではなく、コンクリート建築、木造建築など建造物の種類は問わず、また天井板4についても、木材、石こうボード等々、種々のものに対して利用し得る。
まず、天井板4に下方からノズル挿入孔5を形成する。この挿入孔5の形成はドリルなどの適宜工具を用いて行うことができる。挿入孔5の大きさは、後述の噴射ノズル6を挿入できる大きさとすればよく、噴射ノズル径と等しいか、あるいは噴射ノズル径よりも大きいものであればよい。具体的には、噴射ノズルを上下に動かす際ならびに回動させる際のクリアランスを考慮して、噴射ノズル径よりも10%以上大きな径とし、他方、必要以上に大きな孔を明けることはアスベストの飛散防止ならびにアスベスト処理後の天井板修復の点から好ましくないため、噴射ノズルの径の200%以下の径とすることが望ましい。具体的には、挿入孔5の直径を5〜50mmとすることが望ましく、より望ましくは10〜30mm程度、特に20mm以下とすることが最も望ましい。
この天井板4の挿入孔5は、所定の間隔毎に設けることが望ましく、図2に示すように、碁盤の目状に縦横に均等間隔で配列して形成することが好ましい。隣合う挿入孔5間の間隔aは、作業効率及び作業後の天井板の改修の点から500mm以上が好ましく、より好ましくは700mm以上とする。他方、あまり間隔が広いと、後述の塗布ムラが生じるおそれがあるため、1500mm以下が好ましく、より好ましくは1000mm以下とする。
次に、天井板4の下面と天井躯体1との間の寸法を確認する。これは、建造物の図面により予め確認しておくものであってもよいが、上記の挿入孔5から物差しや棒状体を挿入するなどして、天井躯体1又はアスベスト層2までの距離を測定してもよい。天井躯体1に凹凸がある場合には、その最下方の部分を基準値とすればよいが、下方に突出した部分が極めて小さい場合(例えば全面積の10%以下)の場合などは、大部分の面積を占める部分を基準値とすればよい。
次に、この天井板4に形成された挿入孔5から噴射ノズル6を挿入する。この噴射ノズル6は、図3に示すように、長尺パイプからなる挿入部61と、挿入部61の先端に設けられた噴射ノズル本体62とを備え、挿入部61の基端側にはアスベスト処理剤の噴射機63が接続されている。噴射機63は流量調整可能な開閉弁を内蔵し、噴射機63のレバー64を操作することによって、噴射とその停止とが可能となる。噴射機63には、ポンプpを介してアスベスト処理剤液を収納したタンクなどの貯溜部65がホース等によって接続されている。また、図示は省略するが、噴射機63としてエアガンを用いた場合には、コンプレッサなどの必要に必要な装置が接続される。噴射ノズル本体62には、充円錐形の噴射パターンを示す充円錐噴射ノズルを用いてもよいが、図2に示すような充角錐形の噴射パターンsを示す充角錐噴射ノズルを用いる方が、各挿入孔5から挿入した各噴射ノズル6間の噴射量が等しく設定し易い点で有利である。噴射ノズルの噴角は90〜130度程度が好ましいものであり、90度以上の広角噴射ノズルを用いることが望ましい。噴射ノズル本体62の内部構造は適宜変更することができるが、図4に示すようなワーラー66を有するものが望ましい。
噴射による塗布面積は、噴射ノズルの噴角と、噴射ノズルと被塗布面との関係で決まる。そのため、噴射ノズル6の挿入に際しては、各挿入孔5について、噴射ノズル本体62の噴射孔と、天井躯体1のアスベスト層2との間が一定に保たれるように設定することが、全体にムラのない噴射塗布を行う点で重要である。そこで、挿入部61に上下位置調整可能な当接部67を設ける。この当接部67は、挿入孔5よりも大きく挿入孔5の全体を下方から塞ぐことができるものであることが望ましく、具体的には、挿入孔5より5〜50mm程度大きな径を有するものが望ましい。より具体的な一例を図3に示すと、当接部67は、挿入部61を摺動可能に挿入する中央貫通孔を備えると共に半径方向にねじ穴を有する位置決め部68と、位置決め部68の上部に設けられた中央貫通孔を有する弾性部材69とを備える。これらの中央貫通孔に、噴射ノズルの挿入部61を通して、ねじ穴にビスをねじ込むことにより、所定位置で固定する。この固定位置の設定を容易に行うために、噴射ノズルの挿入部61には目盛りなどの寸法表示を設けておいてもよい。また、固定手段としては、ねじ穴とビスの他、バネ部材を用いたクリップ状のものや、各種のクランプ機構を用いたものなど、挿入部61に対して当接部67を軸方向に位置変更可能に固定できるものであれば種々変更して実施し得る。弾性部材69は、軟質ゴムや発泡ウレタンなどの弾性を有する板状をなすものが望ましく、これによって、この弾性部材69を挿入孔5の周辺の天井板4下面に当接させた状態で、挿入孔5を中心に挿入部61の下方の噴射機63を傾けることにより、噴射ノズル本体62を天井裏空間で傾けつつ処理剤を噴射することができ、傾けた状態で、前後左右に動かしたり、旋回させたりすることも望ましい。また、このような弾性部材69の他、旋回可能な軸受けを介して当接部67と挿入部61とを接続するなどしてもよい。
この当接部67の設定位置について説明する。ここで、図1に示すように、隣合う挿入孔5間の距離をa、天井板4と天井躯体1との間の距離(上記の天井板4の下面と天井躯体1との間の基準値)をb、当接部67と噴射ノズル本体62の噴射孔との間の距離をcとし、噴射ノズルの噴角をdとした場合、一例として、a=930mm、b=400mm、c=50mm、d=110度とすると、噴射ノズル本体62の噴射孔と天井躯体1との間の距離はb−c=350mmとなり、天井躯体1への処理液の塗布パターンの大きさは、tan55×350mm×2=1000mmとなる。この値は、a=930mmよりも大きく、重なり代をもって噴射塗布を行うことできることが判る。ただし、噴角と実際の噴射幅との関係を考慮し、これらの値を設定することが望ましいが、この例であれば、c=50mmの位置に、弾性部材69の上面が位置するように当接部67の位置を設定すればよい。従って、一つの作業現場では、当接部67の位置を適正な位置に設定し、各挿入孔5について当接部67を天井板4の下面に当接した状態で噴射することによって、天井躯体1全体のアスベスト層2にムラなく、一定の重なり代をもって、処理剤を噴射塗布することができる。この隣合う挿入孔5間の距離aの値は、前述のように500〜1500mmが望ましく、より望ましくは700〜1000とする。また噴射ノズルの噴角は90〜130度程度が好ましく、既存の建造物の値によって決定される天井板4と天井躯体1との間の距離bとの関係において、当接部67と噴射ノズル本体62の噴射孔との間の距離cを適正な値に設定出来るように、噴射ノズルの挿入部の長さは50〜2000mm程度とすることが望ましい。さらに、前述のように、噴射ノズル本体62を天井裏空間3で傾けつつ処理剤を噴射することによって、より広範囲に処理剤を噴射することができる。また天井躯体1に凹凸がある場合などでは、挿入部61を上下動させつつ噴射してもよい。
また、図5に示すように、挿入部61を可撓性を有するものとして実施することも望ましい。ここで、可撓性とは、少なくもと人の手の力で曲げることができ、その力を除去しても曲げた形状をほぼ維持できることを意味し、具体的には、銅管が適している。また、断面が波形のフレキシブルパイプを用いることもできるが、内周面が平滑なもののほうが、良好な噴射とメンテナンスの点から望ましい。材質は、銅またはその合金の金属製や、合成樹脂製のものを用いることができる。この可撓性を有する部分fは、噴射ノズル本体62と噴射機63との間の適宜区間で300〜500mm程度とすればよいが、噴射ノズル本体62と噴射機63との間の略全長としてもよく、この長さは適宜変更して実施することができ、また長手方向の複数箇所に可撓性を有する部分fを設けてもよい。
このように、可撓性を有する部分fを設けることによって、この部分fを変形させた状態で挿入部61をノズル挿入孔5から天井裏空間3内に配位してアスベスト処理剤を噴射することができる。これにより、天井躯体1に大きな凹凸があっても、ムラなく処理剤を噴射することができる。また、可撓性を有する部分fを少し湾曲させたり、全体的に弓状に湾曲させたりするなど、種々の形状に湾曲させることにより、先端の噴射ノズル本体62を傾けた状態で噴射でき、さらに、噴射機63を360度回しながら噴射することによって、処理剤の噴射範囲が大きな円を描くようにすることができる。
また、図5に示すように、他のノズル挿入孔5からCCDカメラcなどを挿入して、天井躯体1の形状や噴射状態をモニターmで確認しながら、噴射作業を行うようにしてもよい。その際、施工の前後や施工中の状況を、動画又は静止画で電子データやフィルムなどの適宜記録媒体によって記録しておくことにより、施工の記録を残すこともできる。
以上のように、各挿入孔5に所定の長さで噴射ノズル6を挿入し、処理剤を霧状に噴射することによって、天井躯体1のアスベスト層2全体に、処理剤を塗布含浸させる。その際、液圧(噴射ノズル本体62直前の液圧)は0.5〜10MPa、1つの挿入孔5における噴射時間は5〜15秒程度が適当である。特に、十分な量を噴射することによって、処理剤は、アスベスト層2に塗布含浸される他、天井裏空間3に広がって天井板4の上面をも間接的に散布されることとなる。これによって、天井板4上面に積もったアスベストに対しても、処理液による処理がなされ得る。また、噴射ノズルからの噴射方向を水平方向や下方に形成した噴射ノズルを併用することによって、天井板4上面に直接噴射することも望ましい。
なお、アスベスト層2の厚みが大きい場合には、アスベスト層2内に細い注入用ノズルを挿入して処理剤を注入してもよく、この場合にも、挿入孔5から当該注入用ノズルをアスベスト層2に達するまで挿入すればよい。この注入用ノズルは、アスベスト層2内に人の力で無理なく挿入できる細さを有するもので、釘状若しくは錐状をなし、先端に噴射孔を備えたものとして実施することができる。また、アスベスト層2が部分的に剥離して浮き上がった状態となっている部分には、この注入用ノズルを挿入して処理剤を注入し、その後、棒状の押圧部材を挿入孔5から挿入して、で浮き上がった部分を押さえる(転圧する)ことにより、浮き上がりを解消するようにしておくことが望ましい。
ここで、浮き上がり部分の対策を含めた望ましい噴射手順を説明すると、まず、天井裏空間の全体に予備噴射を行う。この噴射は、各挿入孔5から噴射用ノズルを挿入して、天井裏空間に処理剤の噴射を行うものであるが、比較的孔径の小さな(直径0.1〜0.20mm)のノズル本体を用いて、処理剤を微粒子状にして噴霧するもので、これにより、アスベスト層2の表面、天井板4の上面のアスベスト、及び浮遊しているアスベストを予備的に固めるものである。次に、浮き上がり部分について、上記の注入と転圧の処理を行う。最後に、本噴射を行う。これは、各挿入孔5から噴射用ノズルを挿入して、前述の要領で天井躯体1のアスベスト層2全体に噴射を行うものである。これらの処理に際しては、下記の処理剤を利用することができる。処理剤の濃度は、水を加えて調整すればよく、その際、予備噴射が最も薄く、次に、浮き上がり部分の処理とし、本噴射が最も濃いものとすることが望ましいが、ノズル径などによって適宜変更して実施し得る。
処理剤としては、アスベスト層に対する封じ込め効果を有するもので、浸透性の高いものが適している。具体的には、合成樹脂と無機質難燃剤とを主成分としたもので、合成樹脂には、ビニル又はアクリル系の単独重合体、ビニル−アクリル系共重合体、ビニル−エチレン−アクリル系共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体などを例示し得る。無機質難燃剤としては、塩素化パラフィン(塩素含有量40〜75重量%)が適しており、また、水酸化アルミニウムおよび水酸化マグネシウムを併用したものであってもよい。さらに、シリカ、炭酸カルシウム、カオリン、雲母などの無機質充填剤を付加することも好ましく、また、ヒドロキシメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどの湿潤剤や、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース膨潤剤を添加してもよい。配合比率は、無機質難燃剤として塩素化パラフィン(塩素含有量40〜75重量%)を用いた場合には、合成樹脂100重量部に対して、無機質難燃剤を16〜1600重量部、無機質充填剤を16〜1600重量部とすることが望ましい。また、無機質難燃剤として塩素化パラフィン(塩素含有量40〜75重量%)を用いた場合には、合成樹脂100重量部に対して、無機質難燃剤を100〜1200重量部、無機質充填剤を100〜1200重量部とすることが望ましい。また、上記処理剤を第1処理剤として噴射した後、他の処理剤を第2処理剤として噴射してもよく、第2処理剤としては、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル樹脂、変性アクリル樹脂など、密閉性の高い樹脂塗膜を形成するものが適している。
噴射処理後は、下方から挿入孔5を閉じて、必要に応じて天井板4を下面から塗装したり化粧紙を張るなどしてもよい。挿入孔5を閉じる際には、パテなどを用いてもよく、図6に示すような、筒部71の下端に下面フランジ72を備えた閉止具7を用い、挿入孔5に筒部71を嵌入し必要に応じて接着して、閉鎖することもできる。
以上の各挿入孔5の形成から挿入孔5の封止までの工程は、各挿入孔5について、1つずつ順次行っていってもよく、図1のように、複数の噴射ノズル6を用いて複数の挿入孔5について同時に行ってもよい。また、挿入孔5を形成する工程は、多数の挿入孔5を一度に明けた後、処理剤の噴射の工程を順次行っていってもよいが、処理中の天井裏空間の密閉性を考慮すると、1つの挿入孔5について、挿入孔5の形成工程から封止までの工程を連続して行い、その封止完了後に、次の挿入孔5を形成する工程を行うようにすることが望ましい。また、本願発明の処理方法は、この処理のみでアスベストの最終処理とすることもできるが、撤去除去処理の前処理として実施することもできる。また、例えば、1つの室の処理を考えた場合、天井板の剥離を一部箇所(例えば、柱付近の天井)を行い、中央部分については本願発明の処理方法を採用するなど、部分的に本願発明の処理方法を実施することもできる。
本願発明の実施の形態に係るアスベスト処理方法を示す正面図である。 同処理方法における天井板の底面図である。 図1の要部拡大図である。 同処理方法に用いる噴射ノズル本体の断面図である。 本願発明の他の実施の形態に係るアスベスト処理方法を示す正面図である。 同処理方法に用いる閉止具の斜視図である。
符号の説明
1 天井躯体
2 アスベスト層
3 天井裏空間
4 天井板
5 ノズル挿入孔
6 噴射ノズル
61 挿入部
62 噴射ノズル本体
63 噴射機
67 当接部
68 位置決め部
69 弾性部材

Claims (6)

  1. アスベスト層を有する天井躯体と、この天井躯体の下方に天井裏空間を介して設けられた天井板とを備えた建造物に対するアスベスト処理方法において、
    天井板にノズル挿入孔を明ける工程と、
    ノズル挿入孔から噴射ノズルを天井裏空間に挿入する工程と、
    挿入した噴射ノズルからアスベスト処理剤を上記の天井躯体のアスベスト層に対して噴射する工程と、
    噴射後に挿入孔を封止する工程とを備え、
    天井板を全面撤去することなくアスベストの処理を行うことを特徴とするアスベスト処理方法。
  2. アスベスト処理剤を上記の天井躯体のアスベスト層に対して噴射すると共に天井板上面にも散布することを特徴とする請求項1記載のアスベスト処理方法。
  3. ノズル挿入孔から注入用ノズルを天井裏空間に挿入し、上記の天井躯体のアスベスト層内に注入用ノズルの先端を挿入する工程と、
    挿入した注入用ノズルからアスベスト処理剤を上記の天井躯体のアスベスト層内に注入する工程とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のアスベスト処理方法。
  4. 噴射ノズルは、先端に設けられた噴射ノズル本体と、この噴射ノズル本体より基端側であってノズル挿入孔から天井裏空間内に挿入可能な挿入部とを備え、この挿入部は少なくとも一部が可撓性を有するものであり、この可撓性を有する部分を変形させた状態で挿入部をノズル挿入孔から天井裏空間内に配位してアスベスト処理剤を噴射することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアスベスト処理方法。
  5. 噴射ノズルは、先端に設けられた噴射ノズル本体と、この噴射ノズル本体より基端側であってノズル挿入孔から天井裏空間内に挿入可能な挿入部とを備え、挿入部に上下に位置変更可能且つ固定可能な当接部を備え、この当接部をノズル挿入孔の周辺の天井板下面に当接した状態でアスベスト処理剤を噴射することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアスベスト処理方法。
  6. 当接部は、少なくともその上面に弾性部材を備え、この弾性部材をノズル挿入孔の周辺の天井板下面に当接させた状態で、ノズル挿入孔を中心に操作棒を傾けて、噴射ノズル先端を天井裏空間で傾けつつアスベスト処理剤を噴射することを特徴とする請求項5記載のアスベスト処理方法。
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