JP4170684B2 - 静止誘導電器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は静止誘導電器に係り、特に、予め将来の低騒音化を想定した変圧器本体と基礎及び防音建屋と防音建屋より外部に伸びるブッシングポケット配管放圧管等を改良した静止誘導電器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、都市部の拡大によって住宅地が変電所等に近接して建設されるようになるに伴い、変圧器・リアクトル等の静止誘導電器に対する低騒音化の要求が強くなってきた。静止誘導電器の騒音は、電器本体の鉄心で発生する騒音と、冷却器の冷却扇や送油ポンプなどの補機から発生する騒音に分けられる。
【0003】
このうち、鉄心の磁歪による電磁振動は絶縁油、ガス等の絶縁媒体を介してタンクに伝達し、タンクの振動により騒音となり外部へ放射される。その電磁振動による騒音のエネルギーが静止誘導電器全体の騒音の中で大きな比率を占めており、これを防ぐために種々の防止策がとられている。
【0004】
例えば、静止誘導電器をコンクリートや鉄板により作られた防音建屋で覆い、これにより遮音或いは吸音する方式や、タンクから放射する騒音を簡単に低減するための対策として、タンクの外面に配置される補強ステー間に遮音板を取付ける方式がある。
【0005】
一方、冷却器の騒音低減対策としては、冷却扇そのものに低騒音仕様のものを採用したり、或いは防音風洞等を取付ける対策がある。
【0006】
図8は、コンクリートや鉄板の防音建屋により静止誘導電器本体の騒音を遮音或いは吸音するものである。該図において、1はタンク、2はタンク1の側板、3は側板2の強度を補強するため側板2に固着される上部スー、は下部スー、10はブッシングポケット、11はブッシングをそれぞれ示す。5は電器本体を示し、鉄心6及びこの鉄心6に巻回された巻線7で構成されている。8はタンク1内に充填された絶縁油やガス等の絶縁媒体である。
【0007】
このような静止誘導電器において、鉄心6を励磁すると、鉄心6に電磁振動が発生する。この鉄心6に発生した振動は非圧縮性に近い特性を持つ絶縁媒体8によりほとんど減衰することなくタンク1に伝達され、タンク1が振動することにより騒音を発生する。この騒音を低減するため、タンク1を囲むようにコンクリートや鉄板の防音建屋9を建築し、この防音建屋9でタンク1より放射される騒音を遮音或いは吸音している。
【0008】
また、18は冷却器であり、タンク1内の絶縁媒体8は、上部配管12を介して上部共通配管14に流入し、上部配管16を介して各冷却器18に供給される。冷やされた絶縁媒体8は下部配管17を介して下部共通配管15に流入し、下部配管13を介してタンク1に戻っていく。尚、タンクの周囲に遮音対策を施した静止誘導電器としては、特開平10−149920号公報を挙げることができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、既存静止誘導電器にコンクリートや鉄板の防音建屋建築し、更に低騒音対策が施された音冷却器18を取替え、また増設するためには、コンクリートや鉄板の防音建屋9建築するための基礎や冷却器設置用の基礎を新たに打つ必要がある。また、ブッシングポケット10や配管12,13等は、防音建屋を貫通する構造とする必要があり既存のものが使えない。これらのことから、静止誘導電器の改造工事や基礎の追加工事及びそれらに伴う工事期間の長期化など様々な欠点があり、低騒音化改造工事で防音建屋や低騒音冷却器を新たに据付けることは大変な工事となるばかりかコスト増大につながってしまう
【0010】
本発明の目的は、予め将来の低騒音化を想定した構造としておくことで、静止誘導電器の低騒音化改造期間の短縮とコスト低減を実現できる静止誘導電器を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前述の目的を達成するために、本発明では、据付当初から予め基礎に将来の低騒音化改造時に防音建屋や低騒音冷却器を取付けるための支持用構造物を設けておくことを特徴とし、これにより、防音建屋の建築あるいは既存の冷却器を低騒音冷却器への取替えや低騒音冷却器の増設を追加基礎工事なしで容易に行うことができ、低騒音改造時の改造期間及び改造費を従来に比べて大幅に改善できる。
【0012】
また、ブッシング頭部の下端面と下端面に対向する将来設置予定のタンクを包囲する防音建屋の外側に設置される構造物及び防音建屋の外側に突出するブッシングポケットの突出面との間絶縁距離を確保するようにブッシング及びブッシングポケットを予め配置しておけば、静止誘導電器の低騒音化改造時にブッシングポケットを改造又は交換することなく、防音建屋を設置することができる。
【0013】
【0014】
【0015】
【0016】
また、予め防音建屋を貫通する構造となるブッシングポケットや配管、放圧管等は防音建屋設置を考慮した長さとすることで、交換をする必要がなく、既存のものを使用して防音建屋を設置することができる。
【0017】
【0018】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図1は請求項1に関する防音型変圧器の実施例を示す。本実施例の防音型変圧器の概略構成は図8に示した構成とほぼ同一なので、ここでの詳細説明は省略する。尚、各実施例の図面では、将来増設予定の部品は点線で表示してある。
【0019】
実施例では、基礎20に予め防音建屋9用の支持用構造物21と、冷却器18用の支持用構造物22を設けておき、将来の低騒音化改造時に防音建屋9を追加設置するとき、あるいは冷却器18を低騒音用の冷却器18に取替え、または複数台増設するときには、予め設けた支持用構造物21に防音建屋9を固定し、支持用構造物22に低騒音用の冷却器18を固定するようにしたものである
【0020】
このように、予め将来の低騒音化を想定して支持用構造物21,22を設けておくことで、低騒音化改造時に新たに支持用構造物21,22を設置する必要がなく、支持用構造物21に防音建屋9を据付け、また支持用構造物22に低騒音用の冷却器18を取付けることができるので、既存変圧器の低騒音化改造時における建設期間の短縮とコスト低減を図ることができる。
【0021】
、将来の低騒音改造時に既存の冷却器18が再使用可能な場合は、冷却器18の冷却ファンモータ19として、極数を増加し、回転数を低下して低騒音化したファンモータに取替えるだけでよく、更なる経済性向上を図ることができる。
【0022】
(実施例2)
図2(A)は請求項2に関する防音型変圧器の実施例を示す。該図において、電器本体5は鉄心6に巻回した巻線7を備え、巻線7からの高電圧用導体(図示せず)をタンク1の外側に引き出している。この引き出し導体はブッシング11の下端部に接続され、かつブッシング頭部11Aまで電気的につながっている。タンク1からブッシング11の絶縁媒体側の導体(図示せず)をブッシングポケット10により包囲している。
【0023】
そして、本実施例では、タンク1を包囲するように将来防音建屋9を設置すること、及び防音建屋9の上面壁9Aに架台9Fを設置し、架台9Fにコンサベータ9Gを取付けることを想定する。尚、コンサベータ9Gに代えて例えば配管等の構造物を設置しても良い。まず、防音建屋9の上面壁9Aの外側にブッシングポケット10突出させ、この突出している部分の距離をL2とする距離L2は上面壁9Aと突出面10Hとの間の距離である
【0024】
また、ブッシング頭部11Aの下端面11Bと、この下端面11Bに対向するコンサベータ9G及びブッシングポケット10の突出面10Hとの間に絶縁距離L1を形成している。絶縁距離L1は、ブッシング頭部11Aの下端面11Bとコンサベータ9G及びブッシング10の突出面10との間で気中放電を生じない距離である。そして、本実施例では、絶縁距離L1を確保するようにブッシング11及びブッシングポケット10を予めタンク1に配置しておくと共に、将来設置予定の防音建屋9に設置されるコンサベータ9Gを想定して絶縁距離L1を確保しておく
【0025】
ブッシングポケット10と防音建屋9の取合部構造を図2(B)に示す。該図の如く、防音建屋9に設けた支持金具9Eで取付金具10Bに取付けられているガスケット10Aを支持している。取付け金具10Bはガスケット10Aを周方向に沿って包囲する部分と、この部分より直角方向に折り曲げられ取付け部分10Cとにより形成されている。取付け部分10Cには貫通穴設けられ、この貫通穴にブッシングポケット10を通している。ブッシングポケット10に取付け金具10D取付けられ、この取付け金具10Dは、取付け部分10Cに設けた取付穴に挿入した締め付け手段10Eにより締め付けられることで取付け金具10Bを支持している。
【0026】
この結果、将来の防音建屋9を追加設置する時には、ブッシングポケット10及びブッシング11は絶縁距離L1を確保するように予めタンク1に設置されているので、ブッシングポケット10及びブッシング11を改造または交換することなく、防音建屋9を据付けることができるので、建設期間の短縮とコスト低減を図ることができる。
【0027】
またブッシングポケット10にガスケット10Aが設けられているので、このガスケット10Aにより変圧器の電磁振動のエネルギーを吸収し、ブッシングポケット10と防音建屋9とを振動絶縁することができるので、静止誘導電器全体の騒音を小さくすることができる。
【0028】
更に、ブッシングポケット10に予め取付け金具10Dを取付けておくことにより、取付け金具10B等をブッシングポケット10と防音建屋9との間に簡単に取付けることができる。
【0029】
(実施例3)
図3、図4は請求項3に関する防音型変圧器の実施例を示す。該図において、14,15は共通配管、23は冷却器用の接続弁を示し、24及び25は上部配管、26及び27は下部配管を示す。本実施例では、増設用冷却器18のための接続弁23及び上部配管24、下部配管26を予め設けている。接続弁23は通常、図4に示すように単独の冷却器18毎に設けられている。図4の場合には、左右の点線で示す冷却器18は増設予定するもの実線で示す中間の冷却器18はすでに設置されているのもである。
【0030】
この実施例では、将来低騒音用の冷却器18に取替える時や更なる増設時に上下の接続弁23を閉じることで、変圧器本体の絶縁媒体抜き(全量)を行うことなく冷却器18の取替え及び増設が行えるため、交換作業時間の短縮とコスト低減を図ることができる。冷却器18を取替える時には、単独毎に設けた接続弁23を操作すれば、共通配管14,15の絶縁媒体抜きを不要として、単独毎に冷却器18の取替えることができる。
【0031】
(実施例4)
図5は請求項4に関する防音型変圧器の実施例を示す。該図において、28は配管の仕切り弁を示し、29,30は上部配管、31,32は下部配管を示す。将来低騒音用の冷却器18の増設に対応するために共通配管14,15を取替える時は、上部配管29と30の間及び下部配管31と32の間に設けた仕切り弁28を閉じることで、変圧器本体の絶縁媒体抜き(全量)を行うことなく共通配管14,15の取替えが行える。また将来、防音建屋9を追加設置する時には、仕切り弁28は防音建屋9の外側に設けることで、交換作業時間の短縮を図ることができる。
【0032】
(実施例5)
図6は請求項5に関する防音型変圧器の実施例を示す。該図において、33はタンク1に接続される放圧管を示す。本実施例では、将来追加設置する予定の防音建屋9を貫通するブッシングポケット10、上,下部配管12,13、放圧管33は、従来の防音建屋設置状態を考慮し、予め防音建屋9の外側まで延長した長さとしたものである。このようにすることで、ブッシングポケット10上,下部配管12,13、放圧管33を改造または交換することなく、防音建屋9を据付けることができるので、建設期間の短縮とコスト低減を図ることができる。
【0033】
(実施例6)
図7は請求項6に関する防音型変圧器の実施例を示す。本実施例では、将来設置予定の防音建屋9の上面壁9Aに貫通口9Bを形成し、この貫通口9Bを分割するように防音建屋9を分割した分割防音建屋9Cを形成している。ブッシングポケット10及び上部配管12は貫通口9Bを通し、ブッシングポケット10及び上部配管12は前述の実施例で説明したように防音建屋9の外側まで延長するように予め配置されている。
【0034】
この状態で防音建屋9を組立てる場合には、ブッシングポケット10及び上部配管12に当接するように複数の分割防音建屋9C同士を押圧し、対向する分割防音建屋9C同士を当接させて防音建屋9を組立てる。
【0035】
このように、ブッシングポケット10や上、下部配管12,13等を防音建屋9の外側に予め延長しておくことにより、ブッシングポケット10や上,下部配管12,13等を取外さずに防音建屋9の設置を完了することができるので、防音建屋9の建設期間の短縮とコスト低減を図ることができる。また防音建屋9は複数に分割した貫通口9B及び分割防音建屋9Cとよりなるので、ブッシングポケット10を配置したままで防音建屋9を容易に組み立てることができる。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明の静止誘導電器によれば、既存静止誘導電器の低騒音化改造を建設期間の短縮と低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例1として示した防音型変圧器の断面図。
【図2】 同図(A)及び(B)は本発明の実施例2として示した防音型変圧器の断面図及び同(A)のブッシングポケット付近の部分断面図。
【図3】 本発明の実施例3として示した防音型変圧器の断面図。
【図4】 本発明の実施例3として示した防音型変圧器の平面図。
【図5】 本発明の実施例4として示した防音型変圧器の断面図。
【図6】 本発明の実施例5として示した防音型変圧器の断面図。
【図7】 本発明の実施例6として示した防音型変圧器の斜視図。
【図8】 従来の防音型変圧器を示した断面図。
【符号の説明】
1…タンク、2…タンク側板、3…上部ステー、4…下部ステー、5…電器本体、6…鉄心、7…巻線、8…絶縁媒体、9…防音建屋、9A…上面壁、9B…貫通口、9C…分割防音建屋、9E…支持金具、9F…架台、9G…コンサベータ、10…ブッシングポケット、10A…ガスケット、10B…取付け金具、10C…取付け部分、10D…取付け金具、10E…締め付け手段、10H…突出面、11…ブッシング、11A…ブッシング頭部、11B…下端面、14…上部共通配管、15…下部共通配管、18…冷却器及び低騒音冷却器、19…冷却ファンモータ、20…基礎、21,22…支持用構造物、23…冷却器用接続弁、28…仕切り弁、33…放圧管、12,16,24,25,29,30…上部配管、13,17,26,27,31,32…下部配管、L1…絶縁距離、L2…突出している部位の距離。

Claims (6)

  1. 内部に静止誘導電器本体を収納したタンクと、このタンク内に充填した絶縁媒体とを備え、前記タンクが基礎に支持されている静止誘導電器において、前記基礎に、低騒音化改造時に前記タンクを覆う防音建屋を建築するための支持用構造物及び前記絶縁媒体を冷却する冷却器の取替え時又は増設時に前記冷却器を取付けるための支持用構造物を予め設けておくことを特徴とする静止誘導電器。
  2. 鉄心に巻線を巻回して成る静止誘導電器本体を内部に収納したタンクと、このタンク内に充填した絶縁媒体とを備え、前記タンクが基礎に支持されている静止誘導電器において、前記巻線からの導体が前記タンクの外側に引き出され、該引き出された導体が接続されるブッシング及び該ブッシングの絶縁媒体側を包囲するブッシングポケットを有し、前記ブッシング頭部の下端面と、低騒音化改造時に設置予定の前記タンクを包囲する防音建屋の外側に設置される構造物及び前記防音建屋の外側に突出する前記ブッシングポケットの突出面との間で絶縁距離を確保するように前記ブッシング及び前記ブッシングポケットを予め配置しておくと共に、前記基礎に、低騒音化改造時に前記タンクを覆う防音建屋を建築するための支持用構造物及び前記絶縁媒体を冷却する冷却器の取替え時又は増設時に前記冷却器を取付けるための支持用構造物を予め設けておくことを特徴とする静止誘導電器。
  3. 内部に静止誘導電器本体を収納したタンクと、このタンク内に充填した絶縁媒体と、該絶縁媒体を冷却する冷却器と、該冷却器と前記タンクとを接続する上部及び下部配管とを備え、前記タンクが基礎に支持されている静止誘導電器において、冷却器増設時に増設用冷却器を接続するための上部及び下部配管を前記タンクに予め設けておくと共に、該上部及び下部配管の先端に、冷却器増設時に前記増設用冷却器から伸びている上部及び下部配管と接続され、前記配管を開閉する弁を予め設けておくと共に、前記基礎に、低騒音化改造時に前記タンクを覆う防音建屋を建築するための支持用構造物及び前記絶縁媒体を冷却する冷却器の取替え時又は増設時に前記冷却器を取付けるための支持用構造物を予め設けておくことを特徴とする静止誘導電器。
  4. 冷却器増設時に前記増設用冷却器から伸びている上部及び下部配管の途中に共通配管が設置されていることを特徴とする請求項3記載の静止誘導電器。
  5. 内部に静止誘導電器本体を収納したタンクと、このタンク内に充填した絶縁媒体と、該絶縁媒体を冷却する冷却器と、該冷却器と前記タンクとを接続する上部及び下部配管と、前記タンクに接続されている放圧管とを備え、前記タンクが基礎に支持されている静止誘導電器において、前記上部及び下部配管並びに放圧管は、前記タンクを包囲するように設置予定の防音建屋の外側の位置まで予め伸ばされていると共に、前記基礎に、低騒音化改造時に前記タンクを覆う防音建屋を建築するための支持用構造物及び前記絶縁媒体を冷却する冷却器の取替え時又は増設時に前記冷却器を取付けるための支持用構造物を予め設けておくことを特徴とする静止誘導電器。
  6. 鉄心に巻線を巻回して成る静止誘導電器本体を内部に収納したタンクと、このタンク内に充填した絶縁媒体と、該絶縁媒体を冷却する冷却器と、該冷却器と前記タンクとを接続する上部及び下部配管とを備え、前記タンクが基礎に支持されている静止誘導電器において、前記巻線からの導体が前記タンクの外側に引き出され、該引き出された導体が接続されるブッシング及び該ブッシングの絶縁媒体側を包囲するブッシングポケットを有し、前記上部及び下部配管並びにブッシングポケットは、前記タンクを包囲するように設置予定の防音建屋の外側の位置まで予め伸ばされていると共に、前記基礎に、低騒音化改造時に前記タンクを覆う防音建屋を建築するための支持用構造物及び前記絶縁媒体を冷却する冷 却器の取替え時又は増設時に前記冷却器を取付けるための支持用構造物を予め設けておくことを特徴とする静止誘導電器。
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