JP4169650B2 - 経路探索装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、経路探索装置に関し、特に、温室効果ガスの排出量を最小にする経路の探索が可能な経路探索装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
経路探索は、経路探索の指標を定めてその指標を最小とする経路を求める技術であり、この技術を利用した従来の経路探索装置として、出発点と目的地を設定すると、その設定された出発点から目的地までの最適経路、即ち、指標が最小となる経路を道路地図データに基づいて探索し、その探索された経路を画面等で指示して車両の走行案内をするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−316888号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、地球温暖化防止の観点から、温室効果ガスの排出量を抑制することが求められており、自動車等から排出される温室効果ガス(主に二酸化炭素)の排出量を抑制することが求められている。
【0005】
上述した従来の経路探索装置は、経路探索の指標として距離、時間等を用い、距離最短や時間最短とする経路を探索するものが一般的であり、自動車から排出される温室効果ガスの排出量を指標とし、温室効果ガス排出量を最小とするような経路を探索する経路探索装置はなかった。
【0006】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、温室効果ガスの排出量を最小にする経路を探索する経路探索装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の発明は、出発地と目的地の地点情報が設定されたときに予め設定した指標としての温室効果ガス排出量が最小となるよう地図情報に基づいて前記出発地−目的地間の経路を探索する経路探索装置であって、出発地と目的地の地点情報が設定されたときに交通情報と地図情報に基づいて前記温室効果ガス排出量データを算出する指標算出部と、前記温室効果ガス排出量データと前記地図情報に基づいて温室効果ガス排出量が最小となる前記出発地−目的地間の経路を算出する経路算出部と、温室効果ガス排出量を検出する温室効果ガスセンサと、を備え、前記経路算出部で算出された探索経路の走行途中において、前記温室効果ガスセンサで検出される温室効果ガス排出量の出発地からの実測累積値と前記経路算出部による経路探索時に算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量の出発地からの推定累積値とを比較し、前記実測累積値から前記推定累積値を減算した差分が予め設定した閾値以上になったときは、地図情報とVICSからの情報を含む新たな交通情報に基づいて前記指標算出部及び経路算出部によりその地点から目的地までの経路を再探索する構成とした。
【0008】
かかる構成では、温室効果ガス排出量を最小とする経路を探索することで、温室効果ガス排出量の抑制に有効である。更に、出発時に探索した経路の走行途中において、実際の温室効果ガス排出量と経路探索時の推定排出量との差が大きすぎる場合に、新たな交通情報により現在地点から目的地までの探索経路の見直しが可能になる。
【0009】
前記指標算出部は、請求項のように、地図情報に定められた各リンクの旅行時間を交通情報から取得し、前記各リンク毎の旅行時間と地図情報より取得した各リンクの距離情報とから各リンク毎の旅行速度を算出して旅行速度データを生成する旅行時間−旅行速度変換部と、旅行速度から温室効果ガス排出量を算出する変換式を用いて前記旅行速度データから算出した各リンク毎の単位距離当たりの温室効果ガス排出量と地図情報から取得した各リンクの距離情報とから各リンク毎の温室効果ガス排出量を算出して前記指標となる各リンク毎の温室効果ガス排出量データを作成する旅行速度−温室効果ガス排出量変換部と、前記算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量データを記憶するデータ記憶部とを備える構成とするとよい。
【0010】
請求項において、請求項のように、車速センサで検出される速度情報と温室効果ガスセンサで検出されるガス排出量情報を所定間隔でサンプリングし、サンプリング毎の単位距離当たりの温室効果ガス排出量を算出し、サンプリング時刻毎の計測データに基づいて旅行速度−温室効果ガス排出量変換部で用いる前記変換式を作成する温室効果ガス計測装置を備える構成とするとよい。
【0011】
かかる構成では、各車両の温室効果ガス排出特性に応じた経路探索が可能となる。
また、前記指標算出部は、請求項のように、地図情報に定められた各リンクの旅行時間を交通情報から取得し、前記各リンク毎の旅行時間と地図情報より取得した各リンクの距離情報とから各リンク毎の旅行速度を算出して旅行速度データを生成する旅行時間−旅行速度変換部と、旅行速度から燃料消費量を算出する変換式を用いて前記旅行速度データから算出した各リンク毎の単位距離当たりの燃料消費量、地図情報から取得した各リンクの距離情報及び温室効果ガス排出量の排出係数に基づいて各リンク毎の温室効果ガス排出量を算出して前記指標となる各リンク毎の温室効果ガス排出量データを作成する旅行速度−温室効果ガス排出量変換部と、前記算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量データを記憶するデータ記憶部とを備える構成としてもよい。
【0012】
請求項のように、前記旅行速度−温室効果ガス排出量変換部は、算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量に対して温室効果ガス排出量に関連する要因による重み付け処理して各リンク毎の温室効果ガス排出量データを作成する構成とするとよい。
【0013】
かかる構成では、温室効果ガス排出量の算出データがより一層正確になり、経路探索の精度が向上するようになる。
前記温室効果ガス排出量に関連する要因として、請求項のように、例えば各リンク毎の勾配情報を用いる構成とするとよい。
【0014】
前記指標算出部は、請求項のように、地図情報に定められた各リンクの旅行時間を交通情報から取得し、前記各リンク毎の旅行時間と地図情報より取得した各リンクの距離情報とから各リンク毎の旅行速度を算出して旅行速度データを生成する旅行時間−旅行速度変換部と、予め設定した旅行速度区分毎に単位距離当たりの温室効果ガス排出量を記憶させた温室効果ガス排出量テーブルから、前記旅行時間−旅行速度変換部で算出した各リンク毎の旅行速度に対応する温室効果ガス排出量を検索し、該検索データと地図情報から取得した各リンク毎の距離情報から各リンク毎の温室効果ガス排出量を算出して前記指標となる各リンク毎の温室効果ガス排出量データを作成する旅行速度−温室効果ガス排出量変換部と、前記算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量データを記憶するデータ記憶部とを備える構成としてもよい。
【0015】
かかる構成では、予め記憶させた温室効果ガス排出量テーブルから指標となる各リンク毎の温室効果ガス排出量を検索すればよいので、経路探索の指標算出動作を簡略化できるようになる。
【0016】
請求項のように、前記経路算出部は、温室効果ガス排出量が最小となる探索経路が複数あるとき、複数の探索経路のうち出発地−目的地間の最短距離経路及び最短時間経路のいずれか一方を選択する構成とするとよい。
【0017】
また、請求項において、請求項のように、前記経路算出部は、出発地−目的地間の最短距離経路及び最短時間経路のいずれか一方を選択したときに当該選択経路が複数ある場合、複数の選択経路のうち出発地−目的地間の最短距離経路及び最短時間経路のうちの他方を選択する構成とするとよい。
【0018】
請求項10のように、前記経路算出部は、温室効果ガス排出量最小経路を探索すると共に、前記交通情報及び地図情報に基づいて出発地−目的地間の距離最短経路及び時間最短経路をそれぞれ探索する一方、温室効果ガス排出量最小の探索経路の総旅行時間及び総距離をそれぞれ算出し、前記総旅行時間及び総距離が共に予め設定した閾値を越える場合に、距離最短経路及び時間最短経路のうちの温室効果ガス排出量の少ない方を代替の探索経路とする構成としてもよい。
【0021】
前記温室効果ガスは、請求項11のように、例えば二酸化炭素とするとよい。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る経路探索装置の第1実施形態の構成を示すブロック図である。
【0023】
本実施形態は、温室効果ガスとして例えば二酸化炭素(以下、CO2とする)を対象とし、CO2排出量を最小とする経路を探索する構成である。自動車の走行において、CO2排出量に影響する要因としては、運転に関する要因(速度、燃費、加減速、アイドリング、走行時間、距離等)、車両に関する要因(重量、排気量、燃費等)及び道路による要因(交差点、道路の線形、勾配等)が考えられる。本実施形態は、CO2排出量に影響する要因として速度に着目し、CO2排出量と車両速度の関係を利用して経路探索する構成である。
【0024】
図1において、本実施形態の経路探索装置は、出発地と目的地等の情報を設定する入力部1と、温室効果ガスとしてCO2の排出量を実測する温室効果ガス計測装置2と、道路地図データが記憶されている地図データベース3と、地図データベース3内の地図情報に定められた各リンク毎の旅行時間等の交通情報を取得するための交通情報入力部4と、出発地と目的地の情報が設定されたときに前記地図データベース3の地図情報及び交通情報入力部4で取得した交通情報に基づいて経路探索の指標となる各リンク毎のCO2排出量を算出すると共に、算出したCO2排出量データと地図情報に基づいてCO2排出量が最小となる出発地−目的地間の経路を算出するデータ処理部5と、データ処理部5で算出される後述の各種データを記憶するデータ記憶部と、データ処理部5の算出した経路を表示するための表示部と、を備えて構成される。
【0025】
前記入力部1は、入力操作部と緯度経度変換データベースを備え、入力操作部で出発地と目的地を設定すると、緯度経度変換データベースのデータに基づいて緯度経度の座標情報に変換してデータ処理装置5に入力する。入力操作部としてはキーボードやポインティングデバイス等の公知のマンマシンインタフェースを用いることができる。出発地と目的地の設定方法としては、例えば住所、建物の名称又は電話番号等を入力するか、或いは、地図による指定等の方法がある。また、GPS装置等で現在位置情報が得られる場合には出発地の設定を省略できる。
【0026】
前記温室効果ガス計測装置2は、エンジンが駆動されると一定のサンプリング間隔で単位距離当たりのCO2排出量を算出し単位距離当たりのCO2排出量データを作成するもので、例えば図2のように、時刻を計時する時計11と、車両速度を検出する車速センサ12と、CO2を計測する温室効果ガスセンサとしてのCO2センサ13と、時計11の時刻情報と車速センサ12及びCO2センサ13からの各検出値に基づいて単位距離当たりのCO2排出量を演算するためのCPU14と、CPU14の算出データ等を記憶するメモリ15とを備えて構成される。
【0027】
図3のフローチャートを参照して温室効果ガス計測装置2のCPU14によるCO2排出量データ作成動作を説明する。
ステップ1(図中S1で示し、以下同様とする)で、例えば図示しないエンジンキースイッチからの信号によりエンジン始動か否かを判定し、エンジン始動と判定したら(YES)、ステップ2に進む。
【0028】
ステップ2では、時計11の計時情報に基づいて収集タイミングか否かを判定し、収集タイミングと判定したら(YES)、ステップ3に進む。
ステップ3で、時計11の時刻を読込み、ステップ4で、CO2センサ13の検出値を読込み、ステップ5で速度センサ12の検出値を読込む。
【0029】
ステップ6では、ステップ3〜5で読込んだ各情報に基づいて単位距離当たりのCO2排出量を算出する。具体的には、今回の収集時刻tnから前回の収集時刻tmを引いた時間Δt(収集間隔時間)と車両速度Vkm/hから前回の収集時から今回の収集時までに進んだ距離Lkm(=V×Δt)を計算し、前回収集時から今回収集時までのCO2排出量ΔXg-CO2を前記距離で割ることにより単位距離当たりのCO2排出量yg-CO2/km(=ΔX/(V×Δt))を算出する。
【0030】
ステップ7では、ステップ3〜6で得られた収集時刻t、車両速度V、距離L、CO2排出量ΔX及び単位距離当たりのCO2排出量yのサンプリング時刻毎の各データをメモリ15に書き込む。
【0031】
そして、前記ステップ2〜7までの動作をステップ1の判定がNOとなるまで繰り返する。
このようにして、収集時刻t毎に単位距離当たりのCO2排出量を記録した単位距離当たりCO2排出量データテーブルを作成する。
【0032】
尚、温室効果ガス計測装置2は、エンジンが駆動されている時は常時CO2排出量Yデータの収集動作を実行し、メモリ15の容量がなくなったときは最新のデータが収集される毎に古いデータを順次消去していく。また、所定期間毎、例えば1ヶ月毎に新たにデータ収集し単位距離当たりCO2排出量データテーブルを書換えて更新する等のようにしてもよい。
【0033】
交通情報入力部4は、VICS等の交通情報から地図情報に定められた各リンクの旅行時間を取得するためのものである。
次に、図4のフローチャートを参照して第1実施形態のデータ処理部5による経路探索動作の手順の概略を説明する。
【0034】
ステップ11で、出発地及び目的地が設定されると、ステップ12で、記憶されている単位距離当たりCO2排出量データテーブルに基づいて、旅行速度と単位距離当たりCO2排出量の関係を定義する変換式を作成する。ステップ13で、作成した変換式を用いて交通情報と地図データベースの道路情報から経路探索の指標を算出する。具体的には指標として各リンク毎のCO2排出量を算出し各リンク毎のCO2排出量データテーブルを作成する。ステップ14で、作成した各リンク毎のCO2排出量データテーブルと地図情報に基づいてCO2排出量を最小とする経路を探索し、探索した経路が複数あった場合は、ステップ15で経路選択が行われ、ステップ16で、選択された経路を表示部6に表示する。尚、ステップ14の探索経路が1つであればステップ15の経路選択は省略され、ステップ14の探索経路が表示部6に表示される。ここで、データ処理部5が、指標算出部及び経路算出部の機能を備える。
【0035】
以下に、前述したステップ12〜ステップ15の変換式作成、指標算出、経路探索及び経路選択の各動作について具体的に説明する。
図5のフローチャートは、変換式の作成動作を示すものである。
【0036】
ステップ21では、温室効果ガス計測装置2のメモリ15に記憶されている単位距離当たりCO2排出量データテーブルから各収集時刻の車両速度Vt(t=1〜n)及び単位距離当たりのCO2排出量yt(t=1〜n)を読み出す。
【0037】
ステップ22では、読み出した各データから単位距離当たりCO2排出量を旅行速度から算出するための変換式を作成する。具体的には、単位距離当たりCO2排出量yは、旅行速度Vから一般的にy=b0×V2+b1×V+b2×V-1+b3で与えられるので、ステップ22では、ステップ21で読み出した単位距離当たりCO2排出量yと車両速度Vから係数b0〜b3を求める。
【0038】
まず、各時刻t(t=1〜n)のCO2排出量yは、前述した下記の(1)式で近似できる。
t=b0×Vt 2+b1×Vt+b2×Vt -1+b3 ・・・(1)
(1)式は誤差を含んでいるので、(1)式に誤差ftを加える。
【0039】
t=b0×Vt 2+b1×Vt+b2×Vt -1+b3+ft ・・・(2)
各時刻t(t=1〜n)で誤差ftを最小にすればよいので、最小自乗法を利用する。誤差をGとすると、誤差Gは、下記の数1の(3)式で表すことができる。
【0040】
【数1】
Figure 0004169650
【0041】
誤差Gが最小となる時の正規方程式は、数2〜数5の4つの式で与えられる。
【0042】
【数2】
Figure 0004169650
【0043】
【数3】
Figure 0004169650
【0044】
【数4】
Figure 0004169650
【0045】
【数5】
Figure 0004169650
【0046】
数2の(4)式〜数5の(7)式をまとめて記述すると、数6の(8)式のようになる。
【0047】
【数6】
Figure 0004169650
【0048】
数6の(8)式を(A)・(B)=(C)とおくと、(C)=(B)/(A)から係数b0〜b3を求めることができる。
ステップ23では、求めた係数b0〜b3を(1)式に代入して得られる変換式の確認を行う。具体的には、求めた係数b0〜b3を(1)式に代入した変換式で、メモリ15の情報から読み出された旅行速度情報を(1)式に代入して求めたCO2排出量推定値と実測値のCO2排出量より決定係数を求め、決定係数が予め設定した閾値以上であれば変換式はOKと判定する。尚、変換式の判定がNGの場合を考慮して、一般的な変換式を予めデータ記憶部7に記憶させておき、変換式の判定がNGのときは、記憶させた一般的な変換式を採用するようにすることが望ましい。
【0049】
ステップ24では、採用した測定データの範囲(日付、時間)、係数b0〜b3、決定係数、判定結果等の各データをデータ記憶部7に記録する。
図6のフローチャートを参照して生成した変換式を用いて指標となる各リンク毎のCO2排出量の算出動作を説明する。
【0050】
ステップ31では、交通情報入力部4により各リンク毎の旅行時間ti(h)(iはリンク番号)を取得する。
ステップ32では、地図データベース3から各リンクの距離データDi(km)を読み出す。
【0051】
ステップ33では、旅行時間tiと距離Diから各リンク毎の旅行速度Vi(km/h)(Vi=Di/ti)を算出する。
ステップ34では、各リンク毎の旅行速度Viをデータ記憶部7に記録してリンク−旅行速度テーブルを作成する。
【0052】
ステップ35では、前述の作成した変換式を用いてリンク−旅行速度テーブルの旅行速度Viから各リンク毎の単位距離当たりのCO2排出量yi(g-CO2/km)を算出する。
【0053】
ステップ36では、ステップ32で読み出した距離データDiを用いて各リンク毎のCO2排出量Yi(g-CO2)(Yi=yi×Di)を算出する。
ステップ37では、各リンク毎のCO2排出量Yiをデータ記憶部7に記録してリンク−CO2排出量テーブルを作成する。
【0054】
次に、図7のフローチャートを参照して経路探索動作を説明する。
本実施形態では、公知のダイクストラ法により経路を探索する
ステップ41で、設定された出発地と目的地の座標情報に基づいて道路地図上における出発地ノード及び目的地ノードを決定する。具体的には、出発地点の座標(緯度経度)に一番近いリンクを選出し、そのリンクの両端のノードのうち出発地点の座標に近いノードを出発地ノードとする。同様に、目的地点の座標に一番近いリンクを選出し、そのリンクの両端のノードのうち目的地点の座標に近いノードを目的地ノードとする。
【0055】
ステップ42では、出発地ノードでのCO2排出量を0として、その他のノードまでのCO2排出量を∞として初期設定する。ここで、最小排出量が確定した始点(出発点)をノードiとする。
【0056】
ステップ43では、リンクの探索を実行する。ノードiと、まだ最小排出量が確定していないノードjを結ぶ全てのリンク(i,j)について次の計算を行う。
【0057】
ノードjでのCO2排出量>ノードiまでのCO2最小排出量+リンク(i,j)でのCO2排出量
であれば、ノードjまでのCO2排出量を、
ノードiまでのCO2最小排出量+リンク(i,j)でのCO2排出量
とする。
【0058】
ステップ44では、ノードiに接続する全てのリンクについて探索が終了したか否かを判定し、YESであればステップ45に進む。
ステップ45では、最小排出量が確定していないノードの中で、排出量が最小であるノードk(ステップ43で決まったノード)を選択し、最小排出量の確定しているノードにノードkを結ぶリンクの排出量を加算してノードkまでの最小排出量を計算する。
【0059】
ステップ46では、ステップ45で同一の排出量となるリンクが複数存在するか否かを判定し、1つであればステップ47に進み、複数の場合はステップ48に進む。
【0060】
ステップ47、48では、確定したリンク番号を確定順に出発地ノードからの番号を付してデータ記憶部7に記録するが、ステップ47では1つのリンク番号が記録され、ステップ48では複数のリンク番号が記録される。
【0061】
ステップ49では、ノードkが目的地ノードか否かを判定し、目的地ノードでなければ、ノードkをノードiに置き換えてステップ43に戻り、目的地ノードであれば、ステップ50で、CO2排出量を最小とする経路を確定する。尚、ステップ48で複数のリンク番号が記録された場合は、ステップ43に戻った際は、それぞれのノードから探索を行い、探索結果を記録する。
【0062】
次に、図8のフローチャートを参照して、上述の経路探索動作で最小CO2排出量が同一の経路が複数あった場合の経路選択動作について説明する。
ステップ61では、前述の図6に示すリンク−CO2排出量テーブル作成の際に交通情報入力部4により取得した各リンクの旅行時間データと地図データベース3の各リンクの距離データに基づいて、探索された複数の最小CO2排出量経路に関して総時間及び総距離をそれぞれ算出する。
【0063】
ステップ62では、各探索経路の総時間を比較して最短時間の経路を検索する。
ステップ63では、最短時間経路が複数あるか否かを判定し、あればステップ64に進み、なければ後述のステップ67に進む。
【0064】
ステップ64では、各探索経路の総距離を比較して最短距離の経路を検索する。
ステップ65では、最短距離の経路が複数あるか否かを判定し、あればステップ66に進み、なければステップ67に進む。
【0065】
ステップ66では、ステップ65で入力部1によりユーザーが経路を選択操作する。
ステップ67では、経路を決定する。かかる経路選択動作により決定された経路は、表示部6に表示される(図4参照)。
【0066】
尚、経路選択の優先順位を入れ換えて最短距離の経路を先に選択し、その後、最短時間の経路を選択するようにしてもよい。また、経路選択の指標として、最短距離、最短時間以外の他の項目を用いてもよい。
【0067】
かかる第1実施形態の構成によれば、経路探索の指標にCO2排出量を用い、CO2排出量が最小となる経路を探索するので、自動車の走行により排出されるCO2排出量の抑制に有効であり、温室効果ガスの排出量低減に有効である。また、車両に搭載した温室効果ガス計測装置2でCO2排出量を実測し、この実測値に基づいて車両固有の旅行速度−CO2排出量の変換式を生成して経路探索を行うので、経路探索の精度が良好となる。
【0068】
尚、本実施形態では、温室効果ガス計測装置2を車両に搭載してCO2排出量を実測し、経路探索時に、経路探索直前までの実測データに基づいて変換式を作成する構成であるが、これに限らず、実測データに基づいて生成する変換式を記憶させ一定期間毎に更新し、更新してから次の更新時までの一定期間は記憶させた変換式を利用する構成としてもよい。
【0069】
また、図6に示す各リンク毎のCO2排出量の算出動作において、CO2排出量に関連する要因によりCO2排出量の算出結果に重み付けを行うようにするとよい。例えば、地図情報から各リンクの勾配情報を取得し、CO2排出量の算出結果に重み付けするための係数wを、上り勾配であればw>1とし下り勾配であればw<1とする。尚、重み付けは勾配に限らず、その他のCO2排出量に関連する要因或いは複数の要因を用いて行うようにしてもよい。
【0070】
次に、本発明の経路探索装置の第2実施形態について説明する。
第2実施形態は、旅行速度から燃料消費量を推定し、その推定燃料消費量からCO2排出量を推定する構成である。尚、第2実施形態は第1実施形態とハードウエア構成は同じであり、図6に示す各リンク毎のCO2排出量の算出動作が異なるだけであり、ここでは、第2実施形態の各リンク毎のCO2排出量の算出動作についてのみ説明する。
【0071】
図9は、第2実施形態による各リンク毎のCO2排出量の算出動作を示すフローチャートである。
ステップ71〜74までは図6のステップ31〜34と同様であるので説明を省略する。
【0072】
ステップ75では、燃料消費量と速度との関係を定義した一般的な変換式を用いてリンク−旅行速度テーブルの旅行速度Viから各リンク毎の単位距離当たりの燃料消費量fi(リットル/km)を算出する。尚、燃料消費量と速度との関係を定義した一般的な変換式は、f=a0×V2+a1×V+a2×V-1+a3で与えられる。fは燃料消費量、Vは車両速度である。
【0073】
ステップ76では、ステップ62で読み出した距離データDiを用いて各リンク毎の燃料消費量Fi(リットル)(Fi=fi×Di)を算出する。
ステップ77では、使用燃料のCO2排出係数を用いてステップ76で算出した燃料消費量Fi(リットル)をCO2排出量Yiに換算し、各リンク毎のCO2排出量Yiを算出する。尚、CO2排出係数はガソリンでは2.31(kg-CO2/リットル)である。
【0074】
ステップ78では、各リンク毎のCO2排出量Yiをデータ記憶部7に記録してリンク−CO2排出量テーブルを作成する。
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0075】
第3実施形態は、リンク−CO2排出量テーブルを簡易な方法で作成するようにしたものである。尚、第3実施形態も第2実施形態と同様で、第1実施形態とハードウエア構成は同じであり、各リンク毎のCO2排出量の算出動作が異なるだけであるので、各リンク毎のCO2排出量の算出動作についてのみ説明する。
【0076】
図10は、第3実施形態による各リンク毎のCO2排出量の算出動作を示すフローチャートである。
ステップ81〜84までは図6のステップ31〜34と同様であるので説明を省略する。
【0077】
ステップ85では、予め作成しデータ記憶部7に記憶させた図11に示すような旅行速度範囲と単位距離当たりのCO2排出量を関連付けた、CO2排出量(g-CO2/km)の速度区分テーブルより各リンク毎の単位距離当たりのCO2排出量(g-CO2/km)を検索する。
【0078】
その後のステップ86、87は図6と同様であるので説明を省略する。
かかる第3実施形態によれば、指標の算出動作を簡略化できる。
【0079】
上記各実施形態において、探索経路の走行途中において、実際のCO2排出量と経路探索により推定されたCO2排出量が大きく異なる場合に、再度経路探索を実行するようにする。
【0080】
図12のフローチャートを参照して経路再探索の動作を説明する。
ステップ91では、探索経路走行途中で温室効果ガス計測装置2により計測されるCO2の実測値と探索経路の現在位置までのCO2排出量の推定累積値との差分(実測値−推定累積値)を算出する。
【0081】
ステップ92では、算出した差分と予め設定した閾値とを比較し、差分≧閾値であれば、ステップ93に進み、現在地点から目的地まで再探索する。
経路探索においては、交通情報入力部4で取得する予測の旅行時間からCO2排出量を推定しているため、走行途中において実際のCO2排出量と推定値が大きくずれる場合が想定される。かかる構成によれば、走行途中において実際のCO2排出量と推定値が大きくずれた場合に、経路を再探索することができるので、目的地までの推定値と実測値の誤差を抑制できるようになる。
【0082】
次に、本発明の第実施形態について説明する。
本実施形態は、CO2排出量、時間、距離をそれぞれ指標としてそれぞれを最小とする経路探索を行い、CO2排出量を最小とする探索経路の総時間及び総距離が、予め設定した閾値を越えるような場合には、時間及び距離を指標として探索した経路のうちの最適経路を選択するよう構成したものである。
【0083】
図13のフローチャートを参照して第実施形態の探索経路の選択動作を説明する。
ステップ101では、前述した第1〜第3実施形態と同様にしてCO2排出量最小とする経路探索を行う。尚、本実施形態も、経路探索後、探索経路の走行途中において、実際のCO 2 排出量と経路探索により推定されたCO 2 排出量が大きく異なる場合に、上述の経路再探索を実行する。
【0084】
ステップ102,103では、従来公知の方法による距離最短の経路探索、時間最短の経路探索をそれぞれ行う。
ステップ104では、ステップ101で探索した経路の総時間が閾値を越えるか否かを判定し、越える場合はステップ105で総距離が閾値を越えるか否かを判定し、越える場合はステップ106に進む。
【0085】
ステップ106では、ステップ102と103で探索した経路の推定CO2排出量を比較し、推定CO2排出量が少ない経路を選択して代替経路として確定する。
【0086】
ステップ104又は105のいずれかで閾値以下と判定された場合は、ステップ107に進み、その経路をCO2排出量最小の探索経路として確定する。
【0087】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、出発地と目的地が設定されたときに交通情報と地図情報に基づいて温室効果ガス排出量を最小とする経路を探索する構成としたので、車両から排出される温室効果ガス排出量の抑制に有効である。また、経路の走行途中で探索経路を、VICSからの情報を含む新たな交通情報により見直すようにすることで、温室効果ガス排出量の推定量を修正できるようになる。
【0088】
また、車両から排出される温室効果ガス排出量を計測する計測装置を搭載し、温室効果ガス排出量の実測値データに基づいて指標算出用の変換式を生成する構成とすれば、車両の温室効果ガス排出特性に適合した指標を算出できるので、高精度の経路探索が可能である。
【0089】
また、勾配等の温室効果ガス排出量に影響する要因で算出した指標に重み付け処理を行うことにより、指標を高精度に算出でき、経路探索精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る経路探索装置の第1実施形態の構成図
【図2】温室効果ガス計測装置の構成図
【図3】温室効果ガス計測動作を説明するフローチャート
【図4】第1実施形態の経路探索動作手順の概略を説明するフローチャート
【図5】変換式の作成動作を説明するフローチャート
【図6】各リンクのCO2排出量算出動作を説明するフローチャート
【図7】経路探索動作を説明するフローチャート
【図8】探索経路が複数ある場合の経路選択動作を説明するフローチャート
【図9】本発明に係る経路探索装置の第2実施形態の要部動作を説明するフローチャート
【図10】本発明に係る経路探索装置の第3実施形態の要部動作を説明するフローチャート
【図11】第3実施形態で使用する旅行速度区テーブルの図
【図12】本発明に係る経路探索装置の経路再探索の動作を説明するフローチャート
【図13】本発明に係る経路探索装置の第実施形態の要部動作を説明するフローチャート
【符号の説明】
1 入力部
2 温室効果ガス計測装置
3 地図データベース
4 交通情報入力部
5 データ処理部
6 表示部
7 データ記憶部

Claims (11)

  1. 出発地と目的地の地点情報が設定されたときに予め設定した指標としての温室効果ガス排出量が最小となるよう地図情報に基づいて前記出発地−目的地間の経路を探索する経路探索装置であって、
    出発地と目的地の地点情報が設定されたときに交通情報と地図情報に基づいて前記温室効果ガス排出量データを算出する指標算出部と、
    前記温室効果ガス排出量データと前記地図情報に基づいて温室効果ガス排出量が最小となる前記出発地−目的地間の経路を算出する経路算出部と、
    温室効果ガス排出量を検出する温室効果ガスセンサと、
    を備え、
    前記経路算出部で算出された探索経路の走行途中において、前記温室効果ガスセンサで検出される温室効果ガス排出量の出発地からの実測累積値と前記経路算出部による経路探索時に算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量の出発地からの推定累積値とを比較し、前記実測累積値から前記推定累積値を減算した差分が予め設定した閾値以上になったときは、地図情報とVICSからの情報を含む新たな交通情報に基づいて前記指標算出部及び経路算出部によりその地点から目的地までの経路を再探索する構成としたことを特徴とする経路探索装置。
  2. 前記指標算出部は、地図情報に定められた各リンクの旅行時間を交通情報から取得し、前記各リンク毎の旅行時間と地図情報より取得した各リンクの距離情報とから各リンク毎の旅行速度を算出して旅行速度データを生成する旅行時間−旅行速度変換部と、
    旅行速度から温室効果ガス排出量を算出する変換式を用いて前記旅行速度データから算出した各リンク毎の単位距離当たりの温室効果ガス排出量と地図情報から取得した各リンクの距離情報とから各リンク毎の温室効果ガス排出量を算出して前記指標となる各リンク毎の温室効果ガス排出量データを作成する旅行速度−温室効果ガス排出量変換部と、
    前記算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量データを記憶するデータ記憶部と、
    を備える構成である請求項に記載の経路探索装置。
  3. 車速センサで検出される速度情報と温室効果ガスセンサで検出されるガス排出量情報を所定間隔でサンプリングし、サンプリング毎の単位距離当たりの温室効果ガス排出量を算出し、サンプリング時刻毎の計測データに基づいて旅行速度−温室効果ガス排出量変換部で用いる前記変換式を作成する温室効果ガス計測装置を備える構成である請求項に記載の経路探索装置。
  4. 前記指標算出部は、地図情報に定められた各リンクの旅行時間を交通情報から取得し、前記各リンク毎の旅行時間と地図情報より取得した各リンクの距離情報とから各リンク毎の旅行速度を算出して旅行速度データを生成する旅行時間−旅行速度変換部と、
    旅行速度から燃料消費量を算出する変換式を用いて前記旅行速度データから算出した各リンク毎の単位距離当たりの燃料消費量、地図情報から取得した各リンクの距離情報及び温室効果ガス排出量の排出係数に基づいて各リンク毎の温室効果ガス排出量を算出して前記指標となる各リンク毎の温室効果ガス排出量データを作成する旅行速度−温室効果ガス排出量変換部と、
    前記算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量データを記憶するデータ記憶部と、
    を備える構成である請求項に記載の経路探索装置。
  5. 前記旅行速度−温室効果ガス排出量変換部は、算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量に対して温室効果ガス排出量に関連する要因による重み付け処理して各リンク毎の温室効果ガス排出量データを作成する構成である請求項2〜4のいずれか1つに記載の経路探索装置。
  6. 前記温室効果ガス排出量に関連する要因として、各リンク毎の勾配情報を用いる構成である請求項に記載の経路探索装置。
  7. 前記指標算出部は、地図情報に定められた各リンクの旅行時間を交通情報から取得し、前記各リンク毎の旅行時間と地図情報より取得した各リンクの距離情報とから各リンク毎の旅行速度を算出して旅行速度データを生成する旅行時間−旅行速度変換部と、
    予め設定した旅行速度区分毎に単位距離当たりの温室効果ガス排出量を記憶させた温室効果ガス排出量テーブルから、前記旅行時間−旅行速度変換部で算出した各リンク毎の旅行速度に対応する温室効果ガス排出量を検索し、該検索データと地図情報から取得した各リンク毎の距離情報から各リンク毎の温室効果ガス排出量を算出して前記指標となる各リンク毎の温室効果ガス排出量データを作成する旅行速度−温室効果ガス排出量変換部と、
    前記算出した各リンク毎の温室効果ガス排出量データを記憶するデータ記憶部と、
    を備える構成である請求項に記載の経路探索装置。
  8. 前記経路算出部は、温室効果ガス排出量が最小となる探索経路が複数あるとき、複数の探索経路のうち出発地−目的地間の最短距離経路及び最短時間経路のいずれか一方を選択する構成である請求項1〜7のいずれか1つに記載の経路探索装置。
  9. 前記経路算出部は、出発地−目的地間の最短距離経路及び最短時間経路のいずれか一方を選択したときに当該選択経路が複数ある場合、複数の選択経路のうち出発地−目的地間の最短距離経路及び最短時間経路のうちの他方を選択する構成である請求項に記載の経路探索装置。
  10. 前記経路算出部は、温室効果ガス排出量最小経路を探索すると共に、前記交通情報及び地図情報に基づいて出発地−目的地間の距離最短経路及び時間最短経路をそれぞれ探索する一方、温室効果ガス排出量最小の探索経路の総旅行時間及び総距離をそれぞれ算出し、前記総旅行時間及び総距離が共に予め設定した閾値を越える場合に、距離最短経路及び時間最短経路のうちの温室効果ガス排出量の少ない方を代替の探索経路とする構成である請求項1〜9のいずれか1つに記載の経路探索装置。
  11. 前記温室効果ガスは、二酸化炭素とした請求項1〜10のいずれか1つに記載の経路探索装置。
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