JP4168850B2 - 剥離貼着可能な染料熱転写受像シート - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、染料熱転写受像シート(以下単に受像シートと記す。)に関するものである。更に詳しく述べるならば、本発明は、画像受像シート部が剥離シート部に剥離可能に貼着されており、画像転写後、画像受像シート部を剥離シート部から剥離して所望の物品に貼着できる受像シートにおいて、サーマルプリンタのサーマルヘッドからの熱によって、染料受像層に接する基材が熱収縮して染料受像層に凹凸を発生することがなく、転写された画像が銀塩写真類似の鮮明かつ高解像度の画像が得られ、搬送ロールの圧力による凹みの形成が殆どない剥離貼着可能な受像シートに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
染料熱転写プリンターは、染料インクシートの染料インク層に、受像シートの染料染着性樹脂を含む染料受像層を重ね合わせ、サーマルヘッドなどから供給される熱により所望転写画像に応じて、染料インク層の所要箇所の染料を所定量だけ染料受像層上に転写して画像を形成するものである。インクシートとしては、イエロー、マゼンタおよびシアンの3色の染料インクシート、あるいはこれにブラックを加えた4色の染料インクシートが用いられる。フルカラー画像は、インクシート上の各色染料を受像シートに順次に転写し、転写された染料を重ね合わせることによって形成される。
【0003】
近年、サーマルプリンターの発達とデジタルカメラの普及、コンピューターによる高度なデジタル画像処理の発達に伴い、得られる画像の品質は格段に向上し、染料熱転写方式の市場が拡大している。代表的なものには、印刷やデザインの校正刷りの出力、医療分野における内視鏡やCTスキャンの画像出力、アミューズメント分野の顔写真及びカレンダー、証明写真分野におけるIDカード及びクレジットカードへの出力等が挙げられる。また、サーマルヘッドの温度制御技術等の向上に伴い、印画の高速化も要求され、A6サイズ1枚を30秒以下で印画可能なプリンタも発売されており、今後も更に印画の高速化への要求が高まることが予想される。
【0004】
印画の高速化に伴い、印画濃度階調、精細な画質、色ずれの防止等の点で課題が生じてきた。良好な印画濃度階調を得るためには、狭い印加エネルギー領域で広い範囲の印画濃度を再現することが必要であり、低エネルギーでも高濃度を再現するためには受像シートに高い断熱性が要求される。また、精細な画質を得るためには、サーマルヘッドと染料インクシートと、それに重ね合わされた受像シートの間の良好な密着性が必要であり、受像シートには良好なクッション性が要求される。
【0005】
また、フルカラー印刷における色ずれを防止するために、スパイクを装着したロールとゴムロールの間に受像シートを挟んで搬送するが、印画の高速化に対応するためには、スパイクを大きくしたり、ニップ圧を増大して、受像シートの挟持を確実にすることが必要になり、この挟持により、受像シートの印画面に凹みを生じたり、スパイクのパターン痕がつき易くなり、商品価値が著しく低下するという問題が生じている。
【0006】
従来のサーマルヘッド付プリンタにおいて、良好な画質を得るために、染料受像層に接する発泡樹脂フィルムと、粘着剤に接する未発泡の樹脂フィルムからなる積層体により受像シート部を構成するという提案がなされている(特開平09−300832号公報、特許文献1)。しかしこのような積層体では、全体としての圧縮弾性率が高く、前記印画高速化に伴う色ずれ防止に関係する受像シート印画面の凹み及びスパイクのパターンの形成が発生するという問題は解決されていない。
【0007】
受像シートの表面層として、ポリエステルを主成分とするフィルムを使用すると、得られる表面の弾性率が高いため、搬送ロールによる凹みは生じにくいが、サーマルヘッドとの密着性には不利である。また、ポリプロピレンを主成分としたものを用いると、サーマルヘッドへの密着性には有利だが、印画時の熱により表層フィルムが収縮し、画像面に凹凸を生じたり、搬送ロールによる凹みが生じ易いという不利がある。
【0008】
従って、高速印画を可能にするために、受像シートに対して、サーマルヘッドとの良好な密着性及び高い断熱性を有し、サーマルヘッドの熱による画像受像層面に接するフィルムの熱収縮率が小さく、搬送ロールの高いニップ圧でも印画面に凹みを生じることがなく、銀塩類似の高品質画像を受像できる受像シートの開発が要望されている。
【0009】
【特許文献1】
特開平9−300832号公報(第1−2欄)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は各種サーマルプリンタに対して、高感度を有し、サーマルヘッドの熱による画像受像層面に殆ど凹凸が無く高い色濃度及び鮮明度を有する画像が形成でき、かつ、搬送ロールのニップ圧により印画面に凹みを生じることのない剥離貼着可能な染料熱転写受像シートを提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の剥離貼着可能な染料熱転写受像シートは、剥離シート基材と、その1面上に形成され、離型剤を含む剥離層とを有する剥離シート部、並びに、受像シート基材と、その1面上に形成され、染料染着性樹脂を含む染料受像層と、前記受像シート基材の反対面上に形成され、粘着剤を含み、前記剥離シート部の剥離層に剥離可能に貼着されている粘着層とを有する受像シート部を有する受像シートにおいて、
前記受像シート基材が、延伸多孔質ポリエステルフィルム層と、それに貼り合わされた延伸多孔質ポリオレフィンポリマーフィルム層とを含み、前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層が、前記染料受像層に接合され、かつ前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層が前記粘着層に接合されており、
前記受像シートが、全体として、JIS K 7220に準拠して測定された5〜50MPaの範囲内の圧縮弾性率を有し、前記染料受像層に接合している前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層が、15〜80MPaの範囲内の前記圧縮弾性率を有し、かつ前記粘着層に接合している前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層が、3〜10MPaの範囲内の前記圧縮弾性率を有し、さらに、前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層の、前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層に対する厚さの比が1〜5の範囲内にあることを特徴とするものである。
本発明の染料熱転写受像シートにおいて、前記受像シート部の染料受像層表面における、JIS P 8123に準拠する白色度が、80%以上であり、かつJIS P 8138に準拠するハンター不透明度が、90%以上であることが好ましい。
本発明の染料熱転写受像シートにおいて、前記受像シート基材の延伸多孔質ポリエステルフィルム層表面における、JIS P 8123に準拠する白色度が、80%以上であり、かつJIS P 8138に準拠するハンター不透明度が、90%以上であることが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の剥離貼着可能な受像シートは、剥離シート基材と、その一面上に形成され、離型剤を含む剥離層とを有する剥離シート部、並びに受像シート基材と、その1面上に形成され、染料染着性樹脂を含む染料受像層と、前記受像シート基材の反対面上に形成され、粘着剤を含み、前記剥離シート部の剥離層に、剥離可能に粘着されている粘着層とを有する受像シート部とを有するものである。本発明の受像シートにおいて、前記受像シート基材が、延伸多孔質ポリエステルフィルム層と、それに貼り合わされた延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層とを含んで構成されており、前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層が前記染料受像層に接合され、前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層は、前記粘着層に接合されており、かつ前記受像シートが全体として、JIS K 7220に基づく5〜50MPaの範囲内の圧縮弾性率を有し、前記染料受像層に接合している前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層が、15〜80MPaの範囲内の前記圧縮弾性率を有し、かつ前記粘着層に接合している前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層が、3〜10MPaの範囲内の前記圧縮弾性率を有し、さらに、前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層の、前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層に対する厚さの比が1〜5の範囲内にある。
本発明の受像シートは、この特徴的構成により、サーマルプリンタで染料受像層上に画像を形成する際に、搬送ロールのニップにより印画面に凹凸を生ずることがなく、かつ、感度に優れ、画像の色濃度及び熱転写染料画像を記録することができる。本発明の受像シートの圧縮弾性率は、5〜50MPaであり、好ましくは5〜40MPaであり、更に好ましくは5〜30MPaである。
【0013】
本発明の受像シートを用いることにより、搬送ロールのニップ圧による凹み形成に対する抵抗性が著しく改善される。その理由としては、粘着層に接合する延伸多孔質ポリオレフィンフィルムの背面と、染料受像層に接合し、凹み形成に対し抵抗性の高い延伸多孔質ポリエステルフィルムの背面とを貼り合わせて構成された受像シート部を用いると、両フィルム層の相乗効果により染料受像層に接する延伸多孔質ポリエステルフィルムが搬送ロールによる高いニップ押圧を受けても、受像シート内部でこの圧力を吸収して、押圧変形力に対抗することが可能となるためと考えられる。同時に染料受像層に接する延伸多孔質ポリエステルフィルムは、耐熱性及び表面の平滑性に優れ、熱伝導率が低く、かつ、染料熱転写受像シート全体の圧縮弾性率が低いため、サーマルヘッドとプラテンロールに挟まれた時に受像シート内部が適度に変形してその押圧エネルギーを吸収し、押圧が除かれたとき直ちに複元し、かつ、サーマルヘッドと受像シートの密着性が向上し、優れた記録感度、画質が得られるものである。
【0014】
本発明の受像シートにおいて、粘着層に接する延伸多孔質ポリオレフィンフィルムの圧縮弾性率は3〜10MPaの範囲内にある。また、粘着剤層に接する延伸多孔質ポリオレフィンフィルムの厚さは50〜200μmであることが好ましく、60〜150μmであることがより好ましい。粘着層に接する延伸多孔質ポリオレフィンフィルムの具体例としては、例えばポリプロピレンを主成分とするフィルム並びに、これらのポリオレフィンフィルムに顔料及び/又はそれと異なる樹脂を添加し、延伸して多孔質にしたフィルム、または発泡剤を含有せしめ、発泡させたフィルム等が用いられる。また、延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層の密度は、0.2〜1.0g/cm3程度であることが好ましい。
【0015】
上記延伸多孔質ポリオレフィンフィルムとして、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのフィルムが好ましく使用され、ポリオレフィン樹脂と無機顔料を主成分とする2軸延伸した空隙(ミクロボイド)を有する多層構造のフィルムがより好ましく使用される。このフィルムは単層フィルムであってもよいが、複数枚の延伸多孔質異種ポリマーフィルムを、ドライラミネート法、ウエットラミネート法、又は溶融ラミネート法等の従来の方法により、貼り合わせて多層構造にしたものであってもよく、その組み合わせには制限はない。
【0016】
本発明の受像シートにおいて、受像シート部の基材に用いられるポリエステルフィルムはテレフタル酸およびエチレングリコールからなるホモポリマー、または、テレフタル酸、エチレングリコールに第三成分を共重合させたコポリマーが使用できる。このようなコポリマーは既知のものから選んでもよく、第三成分としては、p−ヒドロキシ安息香酸などのオキシカルボン酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、並びにポリプロピレングリコール、テトラメチレングリコールなどのアルキレングリコール、エチレングリコールなどのポリアルキレングリコールなどが用いられる。
【0017】
更に、受像シートの基材に用いられる延伸多孔質ポリエステルフィルムは多孔質(ミクロボイド)層を有しているため、クッション性、及び断熱性に優れている。この延伸多孔質ポリエステルフィルムの圧縮弾性率は15〜80MPaであ、好ましくは15〜50MPaの範囲内である。圧縮弾性率が、15MPa未満では、印画面に凹みを生じ易くなり、一方、圧縮弾性率が80MPaを越える場合にはサーマルヘッドとの密着性が不十分となり、良好な画質が得られない。延伸多孔質ポリエステルフィルム層の厚さは10〜80μmであることが好ましく、より好ましくは20〜60μmである。また延伸多孔質ポリエステルフィルムの見かけ密度は、0.6〜1.2g/cm 3 であることが好ましい。
【0018】
延伸多孔質ポリエステル及び延伸多孔質ポリオレフィンポリマーフィルムの形成には、ベース樹脂に非相溶性の樹脂、及び/又はフィラーを均一に分散させ、フィルム状に成形してこれを延伸する方法を用いることができる。ポリエステル樹脂を用いる場合、非相溶性樹脂としてはポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ブタジエン、アクリロニトリル、及びそれらの共重合体などを用いることができるが、これらに限定されるものではない。フィラーとしては、例えば炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルミノ珪酸ナトリウム、アルミノ珪酸カリウム、クレー、マイカ、タルク、硫酸バリウム、硫酸カルシウムなどを用いることができる。これらは単独で用いてもよく、もしくは2種類以上の混合物として用いてもよい。
【0019】
本発明の受像シートの受像シート部の基材において、染料受像層面に接する延伸多孔質ポリエステルフィルム層に比較して、粘着層に接する延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層の圧縮弾性率が低、このようにすると搬送ロールに高い圧力を受けても、大部分の圧力を粘着層に接する延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層で吸収することが可能となり、延伸多孔質ポリエステルフィルム層及びその上の染料受像層の変形を防止することができる。
本発明において、粘着層と接する延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層と、染料受像層面に接する延伸多孔質ポリエステルフィルムの貼合には、ドライラミネート、ウエットラミネート、カレンダー法等の貼合方法が挙げられる。
【0020】
なお、受像シート全体(剥離シート部も含む)の厚さは、100〜300μmであることが好ましい。この厚さが100μm未満であると、その機械的強度が不十分となり、かつその剛度も不十分となり、印画の際に生ずる受像シートのカールを十分に防止できないことがある。また、それが300μmを越えると、プリンター中に収容し得る受像シートの枚数の低下を招いたり、あるいはプリンタの受像シート収容室の容積増大が必要になり、プリンタのコンパクト化を困難にする等の問題が生ずることがある。
【0021】
また、本発明の構成により、受像シート基材の表面基材として一般に白色度や不透明度において劣る延伸多孔質ポリエステルフィルムを使用しているにもかかわらず、染料受容層表面において優れた白色度と不透明度とを得ることが可能となる。延伸多孔質ポリオレフィンフィルムとして、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのフィルムが好ましく使用され、ポリオレフィン樹脂と無機顔料を主成分とする2軸延伸した空隙(ミクロボイド)を有する多層構造のフィルム(合成紙)がより好ましく使用される。これらのフィルムの厚さ比率(延伸多孔質ポリオレフィンフィルム/延伸多孔質ポリエステルフィルム)は、1〜であり、好ましくは2〜5である。フィルムの厚さ比率が1未満であると、得られる資料受容層表面に十分な白色度と不透明度が得られない。一方、前記厚さ比率が5を越える場合には、得られる受像シート基材中の延伸多孔質ポリエステルフィルム層が相対的に薄くなり、記録工程において、印画部に凹みなどを生ずる
【0022】
本発明において、受像シート部の染料受像層表面における、JIS P 8123に準拠する白色度は、80%以上が好ましく、より好ましくは83%以上であり、また、JIS P 8138に準拠するハンター不透明度は、90%以上が好ましく、より好ましくは94%以上である。白色度が80%未満では、良好なコントラストのある画像が得難く、くすんだ画像となることがある。一方、ハンター不透明度が90%未満では、印画した受像シートを被着体に貼付した時、被着体に印刷された図柄等が受像シートを介して認識され、画像の品位が損なわれることがある。
【0023】
また、前記受像シート基材の延伸多孔質ポリエステルフィルム層表面における、JIS P 8123に準拠する白色度は、80%以上であることが好ましく、より好ましくは84%以上であり、また、JIS P 8138に準拠するハンター不透明度は、90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上である。白色度が80%未満では、良好なコントラストのある画像が得難く、くすんだ画像となることがある。一方、ハンター不透明度が90%未満では、印画した受像シートを被着体に貼付した場合、被着体に印刷された図柄等が受像シートを介して認識され、画像の品位が著しく損なわれることがある。
【0024】
本発明において、粘着層と接する延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層と染料受像層面に接する延伸多孔質ポリエステルフィルムの貼合には、ドライラミネート、ウエットラミネート、カレンダー法等の貼合方法が挙げられる。
本発明の受像シートの粘着層用粘着剤としては、アクリル系、合成ゴム系、天然ゴム系、シリコーン系等の従来の粘着剤を使用してもよい。粘着剤は剥離シート部の離型層表面に塗工し乾燥した後、これを、表面側に画像受像層を有する受像シート部の基材の裏面に貼り合わせてもよいし、受像シート部の基材の裏面上に粘着剤を塗工乾燥後、これに剥離シート部の剥離層表面を貼り合わせてもよい。
【0025】
粘着剤には必要に応じて架橋剤、及び/又は添加剤を添加することができる。架橋剤としてはイソシアネート系、エポキシ系、金属キレート系等の架橋剤を使用できる。また粘着層用添加剤には石油系およびロジン系のタッキファイヤーなどが使用できる。粘着層の剥離力およびクリープ特性は、粘着剤、架橋剤および添加剤の種類、並びに配合部数に応じて、適宜に調整できる。架橋剤およびタッキファイヤーの添加量は、組み合わせによるので一概にはいえないが、粘着剤固形質量に対して、それぞれ、0〜5%および0〜30%(固形比)であることが好ましい。粘着剤は分子量がある程度大きく(好ましくは25万以上、より好ましくは30万〜60万)、架橋点である官能基の相互間距離が比較的短い構造をもつものが好ましい。架橋剤は分子量が比較的小さいものを用い、添加量をなるべく少量に抑制することが好ましい。
【0026】
粘着層を形成するには、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、及びリップコーター等から選ばれたコーターを使い、従来の粘着剤形成方法により粘着層形成用塗液を塗工、乾燥して形成することができる。
【0027】
粘着層の塗工量は、10〜30g/m2(固形分)であることが好ましい。それが10g/m2未満では、粘着効果が乏しくなることがあり、またそれが30g/m2をこえると、その効果が飽和し、経済性の面からその必要性が乏しくなることがある。粘着層の剥離力は390mN/25mm以上であれば、シール浮きを発生するという問題はないが、785mN/25mm以下であることが好ましい。785mN/25mmより大きくなると、プリント後の受像シート部と剥離シート部との剥離が重くなり、はがしにくくなることがある。
【0028】
本発明に用いられる剥離層用離型剤は、それに対向する粘着層中の粘着剤の種類に対応して選定されるが、一般に重剥離性のシリコーン樹脂を用いることが好ましい。剥離層の剥離シート基材への塗工方法は、グラビアコーターやバーコーター等を用いて行うことができ、この場合の塗工量は、固形分で0.3〜1.5g/m2であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜1.2g/m2である。それが0.3g/m2未満では、剥離層における剥離性能のバラツキが大きくなることがあり、また、それを1.5g/m2より多くしても効果の向上はなく、経済性の面から実用性に乏しいことがある。
【0029】
本発明の受像シートに含まれる剥離シート部は、基材と剥離層とを含み、剥離シート基材としてはセルロースパルプを主成分とする原紙にポリエチレン型樹脂等を少なくとも片側にラミネートしたポリラミ原紙、ポリオレフィンおよびポリエチレンテレフタレート等の合成紙が用いられる。
受像シート基材と剥離シート基材との組合せとしては、前記受像シート基材に、延伸多孔質ポリエステルフィルム層/延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層貼合体を用いるが、剥離シート基材に、無機顔料含有ポリプロピレン合成紙を用いるなど、様々な組合せを用いることができる。
プリンター内を受像粘着加工シートが走行するとき、静電気による走行トラブルの発生を防ぐため、受像シートの表面(染料受像層表面)および/または裏面(剥離シート基材の裏面)に、少なくとも一層の帯電防止剤含有層を塗布してもよい。
【0030】
本発明の受像シートにおいて、染料受像層には、インクリボンから熱転写される染着性染料との親和性(染着性)の良い染着性樹脂が使用され、好ましくはポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、塩化ビニル共重合体、セルロース誘導体が例示される。プリントの際のサーマルヘッドによる加熱のためにインクリボンと染料受像層との融着を防ぐ目的で、染料受容層中に架橋剤、滑り剤、及び/又は離型剤等を添加されていることが好ましい。また、必要に応じ、染料受像層中に、蛍光染料、可塑剤、酸化防止剤、顔料、紫外線吸収剤等が添加されていてもよい。これらの添加剤は、染料受像層形成用主成分と混合されて塗工されてもよいし、別の被覆層として染料受像層の上および/または下に塗工されていてもよい。
【0031】
本発明の受像シートの染料受像層は、バーコーター、グラビアコーター、コンマコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、及びリップコーター等から選ばれたコーターを使い、染料受像層形成用塗液を塗工し、乾燥して形成することができる。
【0032】
【実施例】
本発明を下記実施例により詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらにより限定されるものではない。なお、実施例において、特に断らない限り「%」および「部」はすべて「質量%」および「質量部」を示す。
【0033】
実施例1
ポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、多孔質構造を有し、厚さ50μmのフィルム(東レ製、商標:50E63S、圧縮弾性率:50MPa)を、染料受像層面に接する基材用フィルムとして用い、また粘着層に接するフィルムとして厚さ60μmの合成紙(ユポ・コーポレーション製、商標:ユポFPG60、圧縮弾性率:7MPa)を用い、両者をポリエステル系接着剤を使用してドライラミネート法により固形分4g/m2の受像シート部用基材を構成するように積層、貼合した。
上記受像シート部用基材のポリエステルフィルム面上に、染料受像層形成のため、下記組成の塗料1を、固形分8g/m2の塗布量でダイコーティング法により塗工し、乾燥した。
前記受像シート用基材の反対面上に、下記組成の塗料2を、固形分塗布量が16g/m2となるようにグラビアコーティング法により塗工、乾燥して、粘着層を形成し、受像シート部を作製した。
多孔質構造を有し、厚さ100μmのポリエステルフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム製、商標:W900E100、圧縮弾性率:45MPa)を剥離シート用基体として用い、その一方の面に、シリコーン系離型剤(信越化学工業製、商標:KS−830)を、固形分で0.6g/m2となるように、グラビアコーティング法で塗工、乾燥して剥離層を形成し、更に前記基材の反対面上に帯電防止層として下記組成を有する塗料3を固形分で1g/m2となるように、バーコーティング法で塗工、乾燥して帯電防止層を形成して、剥離シート部を作製した。この剥離シート部の剥離層と、受像シート部の粘着剤層を重ね合わせて貼着することによって受像シートを得た。
【0034】
Figure 0004168850
【0035】
実施例2
実施例1と同様にして受像シートを作製した。但し、実施例1の粘着層に接するフィルム(ユポFPG60)を、厚さ55μmのポリプロピレン系多孔質フィルム(モービル製、商標:260LLG302、圧縮弾性率:5MPa)に変更した。
【0037】
実施例3
実施例1と同様にして受像シートを作製した。但し、実施例1の粘着層に接するフィルム(ユポFPG60)を、厚さ110μmの合成紙(商標:ユポFPG110、ユポ・コーポレーション製、圧縮弾性率:5MPa)に変更した。
【0038】
実施例4
実施例1と同様にして受像シートを作製した。但し、実施例1の染料受像層面に接する基材用フィルム(50E63S)を、ポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、多孔質構造を有し、厚さ38μmのフィルム(商標:クリスパー、東洋紡製、圧縮弾性率:15MPa)に変更し、かつ粘着層に接するフィルム(ユポFPG60)を、厚さ130μmの合成紙(商標:ユポFPG130、ユポ・コーポレーション製、圧縮弾性率:6MPa)に変更した。
【0039】
比較例1
実施例1と同様にして受像シートを作製した。但し、実施例1の粘着層に接するフィルム(ユポFPG60)を、厚さ130μmのコート紙(王子製紙社製、商標:OKトップコートN、目付:157g/m2、圧縮弾性率:86MPa)に変更した。
【0040】
比較例2
実施例1と同様にして受像シートを作製した。但し、実施例1の粘着層に接するフィルム(ユポFPG60)を、厚さ100μmのポリエステエルフィルム(ユニチカ社製、商標:エンブレット、圧縮弾性率:86MPa)に変更した。
【0041】
比較例3
実施例1と同様にして受像シートを作製した。但し、実施例1の染料受像層に接するフィルム(50E63S)を、厚さ60μmの合成紙(ユポ・コーポレーション社製、商標FPU60、圧縮弾性率:7MPa)に変更した。
【0042】
評価方法
上記各実施例および比較例で得られた受像シートについて、それぞれ下記の方法により測定評価を行なった。
【0043】
圧縮弾性率
JIS K 7220「硬質発泡プラスティックの圧縮試験方法」に準じて受像シートの圧縮弾性率を評価した。但し、供試受像シートの厚さをもって、試験片の高さ(厚さ)とした。また圧縮速度を20μm/minとした。
【0044】
受像紙シート凹み防止性
市販の熱転写ビデオプリンタ(商標:M1、ソニー社製)を改造して、搬送ロールのニップ圧が高い試験機を作製した。この試験機のニップ圧を、圧力試験フィルム(富士写真フィルム社製、商標:プレスケール)を用いて測定評価したところ、200kg/cm2 であった。この試験機を用い搬送ロールによる受像シートの凹みを目視評価した。
凹みが見えないものを○、少し凹みのあるものを△、凹みの著しいものを×とした。
【0045】
印画品質(印画濃度、画質均一性、印画部凹み防止性)
厚さ6μmのポリエステルフィルム基体の上に、イエロー、マゼンタ、シアンの3色それぞれの昇華性染料を、バインダーと共に含むインク層を設けたインクシートを、供試受像シートに接触させ、市販の熱転写ビデオプリンタ(商標:DR100、ソニー社製)を用いて、サーマルヘッドで段階的に異る種々の温度に加熱することにより所定の画像を受像シートに熱転写させ、各色の中間調の単色および色重ねの画像をプリントした。
この受像シート上に転写された記録画像について、マクベス反射濃度計RD−914(:商標)を用いて、印加エネルギーの低いほうから16ステップ目に相当する高階調部の濃度を印画濃度とした。
また、光学濃度(黒)が1.0に相当する階調部分の記録画像の均一性について、(1)濃淡ムラおよび(2)白抜けの有無などについて目視観察をおこなった。
さらに、最高濃度2.2付近の印画部の凹みを目視観察した。上記、評価結果が良好なものを○、普通のものを△、欠陥または印画部の凹みが著しいものを×とした。
【0046】
白色度測定
受像シート基材、及び受像シートの白色度は、JIS P 8123に基づき、ハンター反射率計で測定した。白色度の分光特性は光源、ブルーフィルター、光電池の分光感度の積で決まり、主波長が457nmの光を45度入射/0度受光とした。評価サンプルの裏当ては、同じ試料を測定値が変化しなくなるまで重ね、酸化マグネシウム白色面=100%の基準板を用いた。
【0047】
不透明度測定
受像シート基材、及び受像シートの不透明度は、JIS P 8138に基づき、ハンター反射率計のグリーンフィルターで測定し、次式により算出した。
C=100×R0 /R0.89
ここで、C :不透明度(%、小数点以下1桁)
0 :黒色板を裏当てにしたときの反射率(%)
0.89:反射率89%の白色板を裏当てにしたときの反射率(%)
上記試験の結果を表1に示す。
【0048】
【表1】
Figure 0004168850
【0049】
【発明の効果】
本発明の染料熱転写受像シートは、各種サーマルプリンタに使用された時、高感度で搬送ロールのニップにより印画面に凹みを生ずること無く、かつ高い色濃度で鮮明な画像形成の可能な剥離貼着可能な染料熱転写受像シートであり、実用的で価値の高いものである。

Claims (3)

  1. 剥離シート基材と、その1面上に形成され、離型剤を含む剥離層とを有する剥離シート部、並びに、受像シート基材と、その1面上に形成され、染料染着性樹脂を含む染料受像層と、前記受像シート基材の反対面上に形成され、粘着剤を含み、前記剥離シート部の剥離層に剥離可能に貼着されている粘着層とを有する受像シート部を有する受像シートにおいて、
    前記受像シート基材が、延伸多孔質ポリエステルフィルム層と、それに貼り合わされた延伸多孔質ポリオレフィンポリマーフィルム層とを含み、前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層が、前記染料受像層に接合され、かつ前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層が前記粘着層に接合されており、
    前記受像シートが、全体として、JIS K 7220に準拠して測定された5〜50MPaの範囲内の圧縮弾性率を有し、前記染料受像層に接合している前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層が、15〜80MPaの範囲内の前記圧縮弾性率を有し、かつ前記粘着層に接合している前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層が、3〜10MPaの範囲内の前記圧縮弾性率を有し、さらに、前記延伸多孔質ポリオレフィンフィルム層の、前記延伸多孔質ポリエステルフィルム層に対する厚さの比が1〜5の範囲内にあることを特徴とする、剥離貼着可能な染料熱転写受像シート。
  2. 前記受像シート部の染料受像層表面における、JIS P 8123に準拠する白色度が、80%以上であり、かつJIS P 8138に準拠するハンター不透明度が、90%以上である、請求項1に記載の染料熱転写受像シート。
  3. 前記受像シート基材の延伸多孔質ポリエステルフィルム層表面における、JIS P 8123に準拠する白色度が、80%以上であり、かつJIS P 8138に準拠するハンター不透明度が、90%以上である、請求項1又は2に記載の染料熱転写受像シート。
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