JP4168572B2 - インクジェット記録装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録用紙の幅方向にインクジェット記録ヘッドを移動させて記録用紙に画像を記録するインクジェット記録装置、より詳細には記録ヘッドの目詰まりの防止を解消するためのフラッシング技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
40インチ以上の紙幅に印刷可能なインクジェット記録装置は、そのスループットを向上するため、印刷可能領域の両側にインク受けを配置して、1パスの印刷が終了した時点で所定時間毎に記録ヘッドからインク滴を吐出させて印刷期間中におけるインクの増粘による印刷不良を解消する、いわゆるフラッシング動作を行なわせるように構成されている。
一方、このような大きな幅の記録用紙に印刷が可能な記録装置は、1つの画像を印刷するのに長時間を要するため、ファインモードだけではなく、高速印刷が可能なドラフトモードを備え、さらにはA3程度の小さいサイズの記録用紙への印刷も可能に構成されている。
他方、フラッシング動作の有無を判定する閾値は、印刷のスループットに低下を来さないように、可能な限り長くなるように選択されるものの、印刷の信頼性を確保するためには、1パスの印刷が開始される時点で、つぎのパスの印刷期間中にフラッシング動作の周期が到来しないように、フラッシング動作周期の到来以前であってもフラッシングを実行させる必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、多様な幅の記録用紙や印刷モードに関わりなく、スループットを落とすことなく、印刷の信頼性を確保するようにフラッシング動作を実行することができるインクジェット記録装置を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
このような課題を達成するために本発明においては、記録用紙の幅方向に往復移動するキャリッジ上に装着されたインクジェット記録ヘッドを備え、ホームポジション側の非印字領域にフラッシング領域が設定され、前記記録用紙が前記ホームポジション側を基準位置として装着されるインクジェット記録装置において、装着された記録用紙の用紙幅に対応して基準値を設定する基準値設定手段と、前記基準値に基づいてフラッシング動作の要否を判定するための閾値を、前記ホームポジションから移動開始して印刷する場合の値を、前記ホームポジションに向けて印刷を開始する場合の値よりも小さくなるように設定する閾値設定手段と、フラッシング動作によりリセットされるリフレッシュタイマと、前記閾値設定手段により設定された閾値と前記リフレッシュタイマの計時時間とを比較して次のフラッシングの要否の判定を行うフラッシング決定手段と、を備えるようにした。
【0005】
【作用】
本発明によれば、ホームポジションから印刷を開始する場合には、ホームポジションに向けて印刷を開始する場合よりもフラッシング動作の頻度を高めて、スループットの低下を防止することができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
そこで、以下に本発明の詳細を図示した実施例に基づいて説明する。
図1乃至図3は、最大幅44インチの記録用紙に印刷が可能な大型のインクジェット記録装置の一実施例を示すものであって、給紙部1、印刷部2及び排紙スタック部3が上、中及び下の位置関係に配置されている。そして、給紙部1から印刷部2を経て排紙スタック部3に向かう用紙搬送経路が斜め上方の奥側から斜め下方の手前側にほぼ真っ直ぐに形成されている。 給紙部1には、図2及び図3に示すように最大44インチの紙幅を有する長尺のロール紙4を交換可能に配置できるように構成されている。
【0007】
給紙部1に装着されたロール紙4の前面を、開閉可能なロール紙カバ−5に覆うわれて、カバ−5が閉じた状態におけるカバー5の上面と印刷部2、及び後述する排紙ガイド6とがほぼ面一となって、ロール紙4とは別に小幅の単票紙などの給排紙も可能となるように構成されている。
そして、記録装置が印刷可能な最大幅に満たない画像等のデータを印刷する場合には、用紙をホームポジション側、つまり右端側を基準位置に装填し、ホームポジション側を基準とするように印刷が実行される。なお、最大幅の記録用紙にこれよりもサイズの小さな画像データを印刷する場合にも同様にホームポジション側を基準とするように印刷が実行される。
【0008】
図2に示すように給紙部1には、一対のスピンドル受け7a、7bの下に他の一対のスピンドル受け8a、8bが配置されている。なお、これらのスピンドル受け7a、7b、8a、8bは、プリンタ本体における左右一対のフレーム9、9にそれぞれ取付けられている。そして、ロール紙4、4をそれぞれ装着した長尺な2本のスピンドル7、8のそれぞれ両端が、スピンドル受け7a、7b間、及び8a、8b間に載置された状態で横架されている。
【0009】
図2に示すように印刷部2には、左右のフレーム9、9間に水平状態となるように取付けられたガイドロッド10が配置され、このガイドロッド10には図中左右に移動できるようにキャリッジ11が装着され、キャリッジ11には第1の記録ヘッド12a及び第2の記録ヘッド12bが、キャリッジ11の移動方向に並んで搭載されている。
【0010】
また排紙スタック部3は、印刷された用紙を受ける部分であり、この排紙スタック部3は用紙受け面が折り畳み可能な布製シートから成るスタック布13で形成されている。そして排紙切換レバー14によって、図3に示すように印刷された用紙を印刷部2のほぼ真下の第1受け部15に導く状態、または図には示していないがプリンタ本体の前面床上にスタック布13を展開して前面側に一時的に作られる第2受け部に、用紙を導く状態も採り得るように構成されている。
【0011】
そして、印刷された用紙を第1受け部15に導く場合においては、印刷部2の下方に形成された排紙ガイド6における後端縁6aと、排紙切換レバ−14により用紙搬送経路上に突出させたスタック布13の上端縁13aとの間に開口16が形成されることにより確保されるように構成されている。
【0012】
また、印刷された用紙を第2受け部に導く場合には、排紙切換レバ−14によりスタック布13の上端縁13aを用紙搬送経路より後方に退避させると共に、スタック布固定レバー17を手前に引き出し、スタック布13の先端部側を固定したフック18を固定レバー17の前端部に係合させることで、スタック布13をプリンタ本体の前面側に展開させることができるように構成されている。
【0013】
図2に示すように、キャリッジ11に搭載された記録ヘッド12a、12bの走行領域の一端部の非印字領域(この実施例ではホームポジション)には、キャッピング手段21が配置されている。記録ヘッド12のノズル形成面は、鉛直方向から若干傾斜した状態でキャリッジ11上に搭載されており、キャッピング手段21は、記録ヘッド12がホームポジションに移動した時点で、記録ヘッド12a、12bの各ノズル形成面を封止できるように各記録ヘッドに対応した2つのキャップ部材が配置されている。そしてキャッピング手段21の下方には、ここの内部空間に負圧を与えるための吸引ポンプ22が配置されている。
【0014】
キャッピング手段21は、記録装置の休止期間中における記録ヘッド12a、12bのノズル開口の乾燥を防止する蓋体として機能する他、吸引ポンプ22からの負圧を記録ヘッド12a、12bに作用させて、インクを吸引するヘッドクリーニング手段として機能するように構成されている。吸引ポンプ22によって吸引された廃インクは、第1の廃インクタンク23に排出され、当該タンク内に収容された廃液吸収材23aに吸収される。
【0015】
一方、キャッピング手段21に隣接した記録ヘッド12a、12bの移動経路上には、第1のフラッシング領域25が形成されており、ここにはインク受けユニットを構成するフラッシングボックス7が配置されていて、収集された廃インクは、第1の廃インクタンク23に排出されて廃液吸収材23aに吸収される。
【0016】
また、中央の印字領域を介したキャッピング手段21と対向した他方端にも、第2のフラッシング領域26が形成されている。この第2のフラッシング領域26においても、フラッシングボックス27が配置されていて、このフラッシングボックス27によって収集された廃インクは、第2の廃インクタンク28に排出され、廃液吸収材28aに吸収される。
【0017】
また、フラッシング領域における各フラッシングボックス7、27は、キャリッジ走行方向の幅W1は、第1と第2の記録ヘッド12a、12bにわたるキャリッジ走行方向の幅W2に対して、小さく構成されている。
【0018】
一方、図3に示すように記録装置における印刷部2の後方には、その左右にインクカートリッジが装填されるカートリッジホルダ31が配置されている。
【0019】
図4は、同上記録装置のフラッシング制御手段に一実施例を示すものであって、プリンタドライバを内蔵するホストコンピュータ41からは印刷データ処理手段42に対して指令信号が供給され、また印刷データ処理手段42からの指令信号はヘッド制御手段43に供給され、ヘッド制御手段43より第1及び第2記録ヘッド12a、12bに対してそれぞれビットマップデータに基づくヘッド駆動信号が供給されるように構成されている。また同時に印刷データ処理手段42からの指令信号を受けたキャリッジ制御手段44は、キャリッジモータ45を駆動して第1及び第2記録ヘッド12a、12bを往復動させる。
【0020】
キャリッジ上に配置された例えばフォトセンサ(図示せず)により、プリンタに装着された記録用紙の用紙幅を物理的に検出できる物理的用紙幅検出手段46や、ユーザがホストコンピュータ41に入力した用紙幅をプリンタドライバを介して検出する論理的用紙幅検出手段47が設けられている。
【0021】
用紙幅認識手段48は、論理的用紙幅検出手段47による用紙データが得られない場合には、当該データは最大用紙幅とみなす。また物理的用紙幅検出手段46によって得られた用紙データと比較した小さい方を用紙幅と認識するようになされている。これにより、A0版の記録用紙がセットされて物理的用紙幅検出手段46によりA0と認識された状態で、印刷データが用紙幅A4版相当の小さいものである場合には、論理的用紙幅検出手段47は、A4版の用紙がセットされたものと検出するから、用紙幅認識手段48は、A4版の用紙がホームポジション側を基準位置としてセットされた状態と同等であると認識する。
【0022】
リフレッシュタイマ49は、前回のフラッシング動作終了時、または記録ヘッド12a、12bがキャッピング手段21から解放された時から計時を開始し、次回のフラッシング動作時において、ヘッド制御手段43またはキャリッジ制御手段44からリセット信号Reを受けて計時データをクリアするように構成されている。
【0023】
キャップタイマ50は、1パスの印刷が終了した時点で計時を開始し、キャッピング手段21により記録ヘッド12a、12bがキャッピングされた時点、または印字起動のトリガによってリセットされるように構成されている。また、リフレッシュタイマ49と同様にヘッド制御手段43、またはキャリッジ制御手段44からリセット信号Reを受けて計時データをクリアするように構成されている。
【0024】
設定手段51は、例えば記憶手段により構成され、用紙幅と印刷モードつまりキャリッジ速度とに関連付けて設定された表1に示す数値を格納して構成されている。
すなわち表1に示すように、リフレッシュ時間Rfは、高品質印刷モード、つまりキャリッジ11の速度が例えば200cpsの場合における用紙幅毎の値と、ドラフト品質印刷モード、つまりキャリッジ11の速度が例えば300cpsの場合とに大きく2分し、それぞれに用紙幅毎の基準値Rf*が規定されている。
【0025】
【表1】
Figure 0004168572
【0026】
これらの基準値Rf*は、最長フラッシング周期T(この実施例では、12.4秒)と1パスの印字動作に要するキャリッジ11の移動時間Ctとの差分(T−Ct)が設定されている。これらの基準値Rf*は、閾値設定手段53において利用され、印字起動が発せられたとき、またはCapタイマが2秒以上を計時した時点で、フラッシング動作を実行させるか、否かを判定するための閾値を作り出すのに用いられる。
【0027】
なお、この実施例においては、Wait設定手段52を備え、インクが乾き難い用紙やインクを用いた場合に、ユーザによって操作パネルからその旨の入力指令がなされると、1パス印刷毎にキャリッジ11の走査開始時期を遅らせるためのパス乾燥時間、この実施例では2秒程度のパラメータ(Wait)が取り込まれ、このパス乾燥時間が加味された閾値とリフレッシュタイマ49の計時時間が比較されてフラッシングを実行させるか、否かの判定が行われる。
【0028】
すなわち、パラメータ(Wait)は、図8に示したように第1の印字起動Aにより1パスの印刷が終了した時点で、次の印字起動B、さらに次の印字起動Cを出力する際の待ち時間を示すもので、このようなアイドル時間を設けることにより、印字終了直後の未乾燥状態の記録用紙の紙送り開始時期をwait分だけ遅らせて、記録用紙のインクをこすれなどによりずれない程度に乾燥させた段階で紙送りを実行することができる。
【0029】
キャリッジ(CR)移動方向検出手段54は、キャリッジ11がホームポジションの側から走行を開始するか、またホームポジションとは反対の側から走行を開始するかを判定して、キャリッジ11の移動方向についてのデータをフラッシング決定手段55に出力する。
【0030】
フラッシング決定手段55は、閾値設定手段53によって設定される閾値と、リフレッシュタイマ49の計時時間Rfとを比較し、フラッシングを実行するか否かを決定するとともに、指令信号をフラッシング量設定手段56に出力して、ヘッド制御手段43により各記録ヘッド12a、12bからフラッシングのためのインク量を決定する。
【0031】
フラッシング位置決定手段57は、CR移動方向検出手段54、及び用紙幅認識手段48からのデータに基づいてキャリッジ11の走行状態、及び用紙幅に応じて、第1または第2のフラッシング領域25、26のいずれか早く到達できる方の領域を判別、選択する。
【0032】
次にこのように構成した装置のフラッシング実行の判定動作を、図5に示したフローチャートに基づいて説明する。
印字起動を受けた場合には(ステップS11)、Capタイマ49をリセットしてから(ステップS12)、またはCAPタイマ49の計時時間が所定時間以上、例えば2秒以上を計時した段階では(ステップS13)、設定手段51は、用紙幅認識手段48からの用紙幅と、印刷モードに対応したキャリッジ移動速度とに基づいて、キャリッジ移動時間Ctと基準値Rf*とを選択し(ステップS14)、フラッシング動作の有無の判定動作を準備する。
すなわち、Capタイマ49が2秒を計時した段階で印刷が開始されていないのは、ホストからの印刷データが停滞していて、記録ヘッドがキャップ手段から露出し、かつインク滴を吐出しない状態で放置されると、インク滴の吐出不良を招き易いため、パラメータWait程度の時間、この実施例では2秒が経過した時点でフラッシング動作の判定の準備を行う。なお、記録ヘッドがキャップ手段から露出し、かつインク滴を吐出しない状態が5秒経過した時点で、記録ヘッドは、キャッピング手段により封止される。
【0033】
引き続いてCR移動方向検出手段54からのデータによりキャリッジ11がこれから移動しようとする方向を判定し(ステップS15)、キャリッジ11の移動方向が右から左、すなわちホームポジション側から始まろうとしている場合には、閾値設定手段53は、“Rf*−Ct−2×wait”なる閾値を設定し、またフラッシング決定手段55は、この閾値“Rf*−Ct−2×wait”とリフレッシュタイマ49の計時時間Rfとを比較する(ステップS16)。
【0034】
一方、キャリッジ11が左から右に移動する場合には、閾値設定手段53は、“Rf*”なる閾値を設定し、またフラッシング決定手段55は、この閾値“Rf*”とリフレッシュタイマ49の計時時間Rfとを比較する(ステップS17)。
【0035】
これらのステップS16、ステップS17のいずれかにおいて、リフレッシュタイマ49の計時時間Rfが、閾値設定手段53により設定された閾値を経過している時には、フラッシング動作の決定がなされる(ステップS18)。
【0036】
ところで、次の印刷でキャリッジ11が右から左に移動しようとする場合(ホームポジション側から移動しようとする場合)の閾値“Rf*−Ct−2×wait”が、キャリッジ11が左から右に移動しようとする場合の閾値“Rf*”よりも小さくなるから、ホームポジション側から移動開始する場合にはリフレッシュタイマ49の計時時間Rfが短時間で閾値を超えることになり、右側に配置されたホームポジションでフラッシングを実行する確率が高くなり、スループットを向上することができる。なお、パラメータwaitが2倍されているのは、マージンを確保するためで、適宜の倍率に設定することができる。
【0037】
つぎに、印刷不良を防止するため、印刷期間中のフラッシング動作を最長でも12.4秒以内に実行する必要があり、また印刷モード、つまり高品質印刷モード、及びドラフト印刷モードのキャリッジ移動速度がそれぞれ200cps、300cpsに設定されている場合、各サイズの用紙毎の1パスに印刷に要するキャリッジ11の移動時間が、表2に示した値となる印刷装置を例に採って上述の判定動作を具体的に説明する。
【0038】
【表2】
Figure 0004168572
【0039】
A0版の記録用紙が装填され、印刷モードが高品質印刷モードが指定させている場合には、設定手段51は、印刷モードと用紙幅認識手段48からの用紙幅とによりキャリッジ移動時間Ctとして「2」を、また基準時間Rf*として10.4を選択する(ステップS14)。
CR移動方向検出手段54がキャリッジ11の移動方向が右から左、すなわちホームポジション側から始まろうと判定すると(ステップS15)、閾値設定手段53は、“Rf*−Ct−2×wait”=(10.4−2−2×wait)=(8.4−2×wait)なる閾値を設定し、またフラッシング決定手段55は、この閾値“Rf*−Ct−2×wait”とリフレッシュタイマ49の計時時間Rfとを比較する(ステップS16)。
【0040】
この場合は第1パスの印刷であるから、リフレッシュタイマの計時時間Rfは閾値(8.4−2×wait)を超えておらず、したがってフラッシングを実行することなく印刷を開始する。1パスの印刷が終了して記録ヘッドが左端側に移動すると、閾値設定手段53は、“Rf*”=(10.4)なる閾値を設定し、またフラッシング決定手段55は、この閾値(10.4+2)とリフレッシュタイマ49の計時時間Rfとを比較する(ステップS17)。
【0041】
このようにして、ホームポジションの側からの印刷においてリフレッシュタイマ49の計時時間Rfが、(8.4−2×wait)を経過すると、フラッシング動作の決定がなされ(ステップS18)、図6、及び図7のフローチャートで示す工程によりフラッシングを実行する。
【0042】
また、ホームポジションの反対側から印刷においてリフレッシュタイマ49の計時時間Rfが、(10.4)を経過すると、フラッシング動作の決定がなされ(ステップS18)、図6、及び図7のフローチャートで示す工程によりフラッシングを実行する。
【0043】
この基準値Rf*は、他の用紙や印刷モードでの印刷においても、最長のフラッシング周期Tと1パスの印字に要するキャリッジ11の移動時間Ctとの差分として設定されているから、ホームポジションの反対側から印刷が開始される場合には、印刷中に最長のフラッシング周期Tとなる以前にフラッシング動作を起動することができる。
最長フラッシング周期Tとは、前回のフラッシング動作の終了から少なくとも時間Tが到来する以前に再びフラッシング動作を実行しないと、インク滴の吐出不良、例えばインク滴の飛行方向の曲がり等が生じるまでの時間である。
例えばキャリッジが200cpsの速度で、用紙幅A0の距離を移動している場合を例に採ると、表1から基準値Rf*は、10.4となる。さらにリフレッシュタイマ49が計測時間Rfとして10.3秒を計時し、かつホームポジションとは反対側から印刷が開始されようとしている状態では、計測時間Rf=10.3は、基準値Rf*=10.4を超えていないので、ステップS17での判断は否(N)となり、フラッシング動作は実行されない。
キャリッジの移動時間Ctは2秒であるから、キャリッジがホームポジションに到達する時点で、リフレッシュタイマ49が時間Rf=12.3(秒)を計時する。したがって、キャリッジ移動速度と用紙幅に関わり無く、印刷期間中にリフラッシュタイマ49が時間Tを計時してタイムアップすることにはならず、インク滴の吐出不良に至ることはない。
【0044】
一方、ホームポジションの側から印刷が開始される場合には、閾値として(Rf*−Ct−2wait)が設定され、装填された記録用紙の幅と、印刷モードに応じてキャリッジ移動時間Ctと基準値Rf*とにより閾値(Rf*−Ct−2wait)の値が変化する。
上述のホームポジションとは反対側からホームポジションに向けて印刷を開始する場合に比較すると、閾値が(Ct+2wait)分だけ小さく設定されているので、ホームポジション側の領域でフラッシング実行の有無を判定する確率が高くなる。
このため、印刷に際してはホームポジション側を基準として印刷が行うので、ホストからのデータ送信の滞りなどにより、次の印字起動が発令される時点が不明となってホームポジションで印刷データ待ちの状態となった場合にでも、ホームポジションでフラッシング動作の有無の判定の確率が高くなり、スループットが向上する。特に、装填されている記録用紙の物理的用紙幅よりも印刷データの幅が小さい印刷データでは、スループットが大きく向上する。
【0045】
換言すれば、用紙幅がほぼ同一の場合、キャリッジの移動速度が速いほど基準値Rf*が大きく設定され、またキャリッジ移動時間Ctが短くなるので、フラッシング動作の頻度が下がりスループットが向上する。反対にキャリッジの移動速度が遅くなるほど、移動時間が長くなるので、フラッシング動作の頻度を上げて印刷の信頼性が確保されている。
【0046】
次に図6及び図7は、図5に続くフラッシング動作の詳細を示すものであって、図6における(A)に始まるステップS31においては、フラッシング数がセットされる。これは、図4におけるフラッシング量設定手段56においてなされる。フラッシング数は、この実施例においては、“Fb=48、Fy=36”に設定され、ブラック、シアン、及びマゼンタの各インクを扱う第1ヘッド12aについては48ショット、イエロー、ライトシアン、ライトマゼンタの各インクを扱う第2ヘッド12bについては36ショットがセットされる。
【0047】
続いてステップS32において、キャッピング手段21に配置された2つのキャップ部材において吐出されたインク滴のショット数が、所定の数以上に達しているか否かが判定される。ここでは、2つのキャップ部材のいずれかにおいて、それぞれ60000ショット以上に達している場合においては、フラッシング動作に移行せずに定期空吸引を実行するようになされる。これにより、キャップ部材内のインクは吸引ポンプ22により吸引されて、廃インクタンク23に排出される。これと同時に2つのキャップ部材において吐出されたインク滴のショット数をカウントするカウンタはクリアされる。
【0048】
ステップS33において、所定のショット数に達していないと判定されると、ステップS34においてキャリッジ11が次の印刷において移動しようとする方向が判定される。ここで、キャリッジ11が右から左に移動しようとする場合においては、ステップS35において、右側のフラッシングボックス7にフラッシングを行う。この場合、ステップS36に示したように第1及び第2ヘッド12a、12bから、ステップS31でセットされたショット数(Fb、Fy)がそれぞれフラッシングされ、ステップS37においてそのフラッシング数がカウントアップされる。
【0049】
これに続く図7におけるステップS38において、右側のフラッシングボックス7におけるフラッシング数が所定の数を越えているが否かが判断される。ここでは12500のショット数を越えていると判定されると、ステップS39において、廃液ボックスのカウント数“A”に“1”を足して、右側のフラッシングボックスにおけるフラッシング数のカウント値をリセットさせる。続いてステップS40においてリフレッシュタイマ49の計数値がリセットされ、その直後から計時が開始される。
【0050】
そして、ステップS41に移りインク検出がなされる。このステップにおいては、記録ヘッド12a、12bからのインクの吐出数に基づいてインクカートリッジのインクの消費量を積算し、積算値が規定値に達したか否かがステップS42において判定される。そして、規定値に達していない場合にはリターンされる。また規定値に達したと判定されると、ステップS43に移行してキャリッジ11がホームポジションに移動して記録ヘッドはキャッピング手段21によって封止され、ディスプレイにエラー表示(Ink−Out)が行われる。
【0051】
図6に戻り、ステップS34において、キャリッジ11が次の印刷において左から右に移動しようとする場合においては、ステップS51においてキャリッジ11が〔B〕より左か否かの判断がなされる。〔B〕は、フラッシングボックスが左右2か所に存在するために、キャリッジ11がいずれのフラッシングボックス7、27に移動した方が短時間のうちにフラッシングボックスに到達できるかを判定する臨海位置で、このステップS51においてYesと判定した場合には、ステップS52に移行し、左側のフラッシングボックス27にフラッシングを実行する。
【0052】
そしてステップS53に移り、第1及び第2のヘッド12a、12bからステップS31でセットされたショット数(Fb、Fy)がそれぞれフラッシングされ、ステップS54において左側のフラッシングボックス27におけるフラッシング数がカウントアップされる。
【0053】
続いてステップS55においては、左側のフラッシングボックス27でのフラッシング数が所定の数を越えているが否かが判断され、例えば60000ショットを越えていると判定されると、ステップS56において、左側廃液ボックスのカウント数“D”に“1”を足して、左側のフラッシングボックス27のフラッシング数のカウント値をリセットさせる。そして以後は図7に示すステップS38に移行する。
【0054】
また、ステップS51において、Noと判定した場合には、ステップS57に移行し、右側のフラッシングボックス7にフラッシングを行う。そしてステップS58に移り、第1及び第2のヘッド12a、12bからステップS31でセットされたショット数(Fb、Fy)がそれぞれ吐出され、ステップS59においてフラッシング数がカウントアップされる。続いてステップS60に移り、キャリッジを印刷途中の元の位置に戻す操作がなされ、以後は図7に示すステップS38に移行する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のインクジェット記録装置の一実施例を示す斜視図である。
【図2】同上記録装置の印刷機構を中心に示す正面図である。
【図3】フラッシング領域の構造を示す断面図である。
【図4】同上インクジェット記録装置におけるフラッシング制御部の一実施例を示すブロック図である。
【図5】フラッシングの要否を判定する動作を示すフローチャートである。
【図6】フラッシング動作を示すフローチャートである。
【図7】フラッシング動作を示すフローチャートである。
【図8】印刷工程におけるアイドリングについての説明図である。
1 給紙部
2 印刷部
12a、12b 記録ヘッド
21 キャッピング手段
22 吸引ポンプ
23 廃インクタンク
25、26 フラッシング領域

Claims (3)

  1. 記録用紙の幅方向に往復移動するキャリッジ上に装着されたインクジェット記録ヘッドを備え、ホームポジション側の非印字領域にフラッシング領域が設定され、前記記録用紙が前記ホームポジション側を基準位置として装着されるインクジェット記録装置において、装着された記録用紙の用紙幅に対応して基準値を設定する基準値設定手段と、前記基準値に基づいてフラッシング動作の要否を判定するための閾値を、前記ホームポジションから移動開始して印刷する場合の値を、前記ホームポジションに向けて印刷を開始する場合の値よりも小さくなるように設定する閾値設定手段と、フラッシング動作によりリセットされるリフレッシュタイマと、前記閾値設定手段により設定された閾値と前記リフレッシュタイマの計時時間とを比較して次のフラッシングの要否の判定を行うフラッシング決定手段と、
    を備えたインクジェット記録装置。
  2. 前記基準値が、最長フラッシング周期と、装着される記録用紙の用紙幅を前記キャリッジが移動するのに要する時間との差分として設定されている請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記フラッシング領域は、前記ホームポジション側の非印刷領域に配置された第1のフラッシング領域と、前記ホームポジションに対向する非印刷領域に配置された第2のフラッシング領域とに形成され、
    当該パスの印刷終了後にフラッシングが要と判定された場合に、第1、第2のフラッシング領域のいずれでフラッシングを実行するのか判定するフラッシング位置決定手段を備えた請求項1に記載のインクジェット記録装置。
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