JP4167322B2 - 熱収縮性フィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スチレン系樹脂を基材とする熱収縮性フィルムに関する。更に詳しくは、例えばシュリンクラベル等の包装形態に利用されるスチレン系樹脂製熱収縮性フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在市販されている飲食料品や生活用品の多くは、容器キャップの封緘材として内容物の安全衛生を保持する為のキャップシールや、商品名や内容物を表示する為のシュリンクラベル等が装着されている。これらの包装形態には、包装すると同時にディスプレイ効果により商品価値を高めるような、即ち商品イメージを向上させ購入者の購買意欲を促す様なデザイン装飾が施されており、シュリンクラベル等の材料である熱収縮性フィルムに多色グラビア印刷することによりなされている。これらシュリンクラベル等は、加工メーカーにより熱収縮性フィルムの印刷工程とチューブ状に貼り合わせる製袋工程を経て製造され、商品メーカーであるユーザーが容器に被せたのち加熱シュリンクさせて装着されるのが一般的である。
【0003】
これらシュリンクラベル等に使用される熱収縮性フィルムは、以前は印刷適性や装着仕上がり性等に優れている塩化ビニル系樹脂を基材としていたが、塩化ビニル系樹脂は人体に悪影響を及ぼす塩素系化合物を発生する恐れがあることが指摘されており、他樹脂への変換を望む動きもある。そこで最近では、環境保全の観点から、塩素を分子内に含まず、安価で、且つ剛性や腰強さのあるスチレン系樹脂を基材とした熱収縮性フィルムが一般に用いられるようになってきた。この用途に使用されるスチレン系樹脂製熱収縮性フィルムとしては、例えば特開平5−104630号公報には、ビニル芳香族化合物系共重合体組成物を用いて特定の熱収縮力を有するように延伸した熱収縮性フィルムが、低温収縮性、耐衝撃性、機械的強度、及び透明性に優れたものであることが開示されている。
【0004】
しかしながら、上記特開平5−104630号公報に記載の熱収縮性フィルムは、基材樹脂がスチレン系樹脂に代表される繰返し単位が主としてビニル芳香族化合物よりなり、該フィルムに印刷を施す場合の印刷インキ等に含まれる有機溶剤に対する耐性(以下、耐溶剤性と略記する)が劣っていた。これは、一般に非晶性であるスチレン系樹脂を基材とした低温収縮性フィルムは、特許第2537391号公報にも記載されているように、芳香族炭化水素系やエステル系等の有機溶剤に侵され易く、発生したクラック等がノッチとなり引張伸度や引張強度が低下することに起因している。
【0005】
又、熱収縮性フィルムや商品に装着する前のシュリンクラベル等は、保管や輸送の際には長尺状該物がロール状に巻き取られた形態であり、前述した加工メーカーにおける印刷や製袋等の加工作業時、及びユーザーにおける装着作業時に、そのロールから作業機械へ連続的、若しくは断続的に自動供給されている。これら作業時には、該物が長尺方向に作業機械で引張られて、若しくは急に繰り出される衝撃引張力によってフィルム切れを発生し、再び機械に掛け直すために自動作業が中断されることがある。特に、耐溶剤性が劣っている上記特開平5−104630号公報に記載の熱収縮性フィルムでは、これら作業時にわずかな引張力でもフィルムが切れ易く、多発するフィルム切れにより自動作業が度々中断されて作業効率が非常に悪くなるという問題点があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、熱収縮性フィルムとした場合に低温収縮性、耐衝撃性、機械的強度、及び透明性に優れるスチレン系樹脂を基材として用いても、印刷を施す場合の印刷インキ等に含まれる有機溶剤に対する耐性が優れており、フィルム加工作業や商品への装着作業における自動作業機械に掛けてもフィルム切れを発生し難い熱収縮性フィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を達成する為に鋭意検討した結果、スチレン系樹脂に代表される繰返し単位が主としてビニル芳香族化合物よりなる熱可塑性樹脂に特定の結晶構造を持たせることにより、該樹脂を基材として用いた熱収縮性フィルムの耐溶剤性が著しく改良されることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
即ち、本発明は下記の通りである。
主としてビニル芳香族化合物よりなる共重合体(A)5〜95重量%、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体(B)5〜95重量%、及び、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体の水素添加物(C)0.3〜25重量%からなる混合樹脂組成物を主体とする熱可塑性樹脂を基材とする、延伸温度が70〜120℃の範囲で少なくとも一軸方向に延伸して製造した延伸フィルムであって、
前記(A)、(B)及び(C)が下記の通り規定される共重合体であり、
該フィルムを測定したDSC曲線(JIS K7122準拠、サンプル量10mg、冷却速度10℃/分)において結晶化ピークが少なくとも一つ存在し、且つ結晶化熱量の総和が0.05〜5J/gであることを特徴とする熱収縮性フィルム。
【0009】
(A):ビニル芳香族化合物と脂肪族不飽和カルボン酸誘導体よりなる共重合体であって、ビニル芳香族化合物の含有量が55〜95重量%、ビカット軟化点が105℃を超えない共重合体。
(B):ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体であって、ビニル芳香族化合物の含有量が20〜85重量%である共重合体。
(C):ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体の水素添加物であって、ビニル芳香族化合物の含有量が10〜60重量%、DSC曲線(JISK7121、及びK7122準拠、サンプル量10mg、加熱速度10℃/分)において融解ピーク温度が50℃以上である融解ピークが少なくとも一つ存在する重合体水素添加物。
【0010】
以下、本発明の熱収縮性フィルムについて詳細に説明する。
本発明が従来技術と相違するところは、従来技術はフィルム基材樹脂が非晶性であるのに対し、本発明はフィルム基材樹脂に特定の結晶構造を持たせることである。かかる相違点により、本発明の熱収縮性フィルムは、従来フィルムよりも耐溶剤性が著しく優れており、フィルム加工作業や商品への装着作業における自動作業機械に掛けてもフィルム切れを発生し難くい為に作業効率が大幅に向上する。
【0011】
図1は、本発明の熱収縮性フィルムの耐溶剤性の高さを示す実験図である。該図は、横軸に印刷後の経過日数(日)、縦軸に長尺方向の引張伸度(%)を目盛り、白丸印(○)は本発明の熱収縮性フィルムの場合を、黒丸印(●)は従来技術の場合を各々示している。前述のとおり、一般に非晶性であるスチレン系樹脂を基材とした低温収縮性フィルムは、有機溶剤に侵され易く、発生したクラック等がノッチとなり引張伸度が低下することが知られている。この図1は、熱収縮性フィルムに印刷を施した後の日数経過に伴ってフィルム長尺方向の引張伸度が変化する様子を示したものであり、日数が経過しても引張伸度の低下が少ないほど耐溶剤性が高いことを表している。
【0012】
非晶性である従来技術の熱収縮性フィルムは、印刷前に測定した長尺方向の引張伸度が170%以上であるが、印刷後10日経過した時点では120%を下回り印刷前の引張伸度に対する伸度低下が非常に大きかった。これに対して、本発明の熱収縮性フィルムは、印刷後30日経過しても引張伸度が印刷前と同等以上であり、印刷前後で伸度低下は全く見られなかった。上記の観点から図1の結果を考察すると、本発明の熱収縮性フィルムは従来技術と比較して耐溶剤性が大幅に向上していることが判る。即ち、スチレン系樹脂に代表される繰返し単位が主としてビニル芳香族化合物よりなる熱可塑性樹脂を基材として用いても、DSC曲線において結晶化ピークが少なくとも一つ存在し、且つ結晶化熱量の総和が0.05〜5J/gの範囲内にある結晶構造を持つ本発明の熱収縮性フィルムは、印刷後日数が経過しても引張伸度は印刷前と同等以上であり、印刷前後で伸度低下が見られず耐溶剤性が著しく高いことを示している。
【0013】
本発明の要件である特定の結晶構造について詳細に説明する。DSCとは、JIS K7121、及びK7122で規定されている示差走査熱量測定をさし、転移温度や転移熱の測定により樹脂の結晶構造を分析する方法であることは一般に知られている。測定したDSC曲線に結晶化ピークが存在するということは、その樹脂が結晶性であることを示しており、また結晶化熱量からは、その樹脂中に含まれる結晶成分量を知ることができる。従って、フィルムを測定したDSC曲線において結晶化ピークが存在し、且つ結晶化熱量を規定することは、該フィルムの基材樹脂が結晶性を示し、且つ結晶成分量が規定されることを意味し、フィルム基材樹脂の結晶構造を特定することと同義である。
【0014】
本発明で特定するフィルム基材樹脂の結晶構造とは、繰返し単位が主としてビニル芳香族化合物よりなる熱可塑性樹脂であって、フィルムを測定したDSC曲線において結晶化ピークが少なくとも一つ存在し、且つ結晶化熱量の総和が0.05〜5J/gである。ここで、結晶化ピークの数は、フィルム基材樹脂が結晶性を示す為には少なくとも一つ存在することが肝要である。一方、結晶化熱量の総和は、耐溶剤性と透明性に優れる熱収縮性フィルムを得る為には0.05〜5J/gの範囲に留めることが肝要であり、更に厳選すると好ましくは0.2〜2J/gの範囲から選ぶことになる。該値が、0.05J/gより小さい場合は耐溶剤性に劣る為に有機溶剤に侵され易くフィルム切れが多発し、5J/gより大きい場合は透明性が劣る為にシュリンクラベル等として使用した時の美観が損なわれる。
【0015】
次に、本発明の熱収縮性フィルムに用いる基材樹脂について説明する。本発明の熱収縮性フィルムを得る為には、剛性、腰強さ、コストの点から、その基材となる樹脂として繰返し単位が主としてビニル芳香族化合物よりなる熱可塑性樹脂を用いることが肝要である。ここでいう繰返し単位が主としてビニル芳香族化合物よりなる熱可塑性樹脂とは、スチレン、或いはα−メチルスチレン等のα−アルキル置換スチレン類、p−メチルスチレン等の核アルキル置換スチレン類等から選ばれる一種、又は二種以上のビニル芳香族化合物よりなる繰返し単位が、該熱可塑性樹脂を構成する全繰返し単位中に最も多い割合で含有されるものを指し、好ましくは該ビニル芳香族化合物よりなる繰返し単位が全繰返し単位中に50重量%以上の割合で含有される場合、更に好ましくはスチレンよりなる繰返し単位が全繰返し単位中に65重量%以上の割合で含有される場合である。上記熱可塑性樹脂がビニル芳香族化合物よりなる繰返し単位を最も多い割合で含有されるものは、フィルム基材として用いた場合に、熱収縮性フィルムは腰強さや剛性など機械的強度が高い為に加工作業時や装着作業時における自動作業機械で取扱い易く、また透明性や経時の寸法安定性や物性安定性も優れるものとなる。
【0016】
又、上記熱可塑性樹脂を構成する上記ビニル芳香族化合物よりなる繰返し単位以外の繰返し単位としては、上記熱可塑性樹脂に特定の結晶構造を持たせる為に重合体で結晶性を示す繰返し単位、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類よりなる繰返し単位等を含有することが必須である。更に、熱収縮性フィルムとした場合に低温収縮性や耐衝撃性を持たせる為のブタジエン、イソプレン等の共役ジエン類よりなる繰返し単位、装着時の収縮温度を調節する為のアクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル等の脂肪族不飽和カルボン酸誘導体類よりなる繰返し単位等を含有することが好ましい。即ち、上記熱可塑性樹脂は、これら繰返し単位から構成される一種類のブロック共重合体、一種類のグラフト共重合体、或いは二種類以上の重合体を混合してなる組成物であり、好ましくは二種類以上の共重合体を混合してなる組成物の場合である。
【0017】
尚、フィルム基材として用いる熱可塑性樹脂中のビニル芳香族化合物よりなる繰返し単位の含有量を把握するには、該熱可塑性樹脂の繰返し単位割合が重合時の単量体仕込み割合等により明確である場合には既知の繰返し単位割合から求めることができるが、繰返し単位割合が不明である場合には赤外分光分析法によりベンゼン核のC−H結合面外変角振動に基づく吸収について検量線を作成し求めることができる。
【0018】
本発明のフィルム基材として用いる熱可塑性樹脂において、好ましい二種類以上の共重合体を混合してなる組成物とは、主としてビニル芳香族化合物よりなる共重合体(A)とビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体(B)との混合樹脂組成物を主体とする場合であり、本発明に必須の上記結晶性繰返し単位は共重合体(A)及び(B)の一部で重合体ブロックとして共重合されているか、或いは第三の樹脂組成成分として50重量%未満の組成割合で混合されていることが望ましい。より好ましい上記熱可塑性樹脂は、主としてビニル芳香族化合物よりなる共重合体(A)、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体(B)、及びビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体の水素添加物(C)の混合樹脂組成物を主体とする場合である。以下に、これら(A)、(B)、及び(C)について詳細に説明する。
【0019】
本発明で用いる上記共重合体(A)は、好ましくはビニル芳香族化合物と脂肪族不飽和カルボン酸誘導体よりなる共重合体であって、ビニル芳香族化合物の含有量が55〜95重量%、ビカット軟化点が105℃を超えない重合体である。(A)に用いるビニル芳香族化合物としては、前述したビニル芳香族化合物と同様のものから一種、又は二種以上が選ばれ、この内でスチレンが最も好ましい。一方、(A)に用いる脂肪族不飽和カルボン酸誘導体としては、前述した脂肪族不飽和カルボン酸誘導体と同様のもの、詳しくは(メタ)アクリル酸と炭素数C1 〜C12のアルキルアルコールとのエステル化合物である(メタ)アクリル酸アルキルエステル類等から一種、又は二種以上が選ばれ、この内でアクリル酸ブチルやメタクリル酸メチルが最も好ましい。又、該脂肪族不飽和カルボン酸誘導体としては、上記の他に(メタ)アクリル酸やα,β−不飽和ジカルボン酸、例えばフマル酸、マレイン酸、イタコン酸等をカルボン酸のまま用いたり、これらカルボン酸とアルキルアルコール、脂環式アルコール、多価アルコール、アルキレンオキサイド等とのエステル類、これらカルボン酸の無水物、及びこれらカルボン酸の金属塩等も用いることができる。
【0020】
これら単量体の共重合割合は、(A)中のビニル芳香族化合物の含有量が55〜95重量%であり、この範囲内で(A)のビカット軟化点が105℃を超えないように調節することが好ましい。ビニル芳香族化合物の含有量が55重量%より少ない共重合体をフィルム基材となる熱可塑性樹脂に用いると、熱可塑性樹脂中の該共重合体の組成割合によっては熱収縮性フィルムに腰強さや剛性など機械的強度を持たせることが困難になる場合がある。又、ビニル芳香族化合物の含有量が95重量%より多い共重合体、或いはビカット軟化点が105℃を超える共重合体をフィルム基材となる熱可塑性樹脂に用いると、熱可塑性樹脂中の該共重合体の組成割合によっては熱収縮性フィルムに低温収縮性を持たせることが困難になる場合がある。上記(A)のビカット軟化点の下限については、フィルム基材となる熱可塑性樹脂中の(A)の組成割合によっても異なる為に得に限定しないが、熱収縮性フィルムが保管時に経時寸法変化することのないよう40℃以上であることがより望ましい。尚、上記(A)は、熱収縮性フィルムの使用条件に合わせて適切なビニル芳香族化合物の含有量、及びビカット軟化点が選ばれ、例えば単量体にビニル芳香族化合物としてスチレン、脂肪族不飽和カルボン酸誘導体としてアクリル酸ブチルを用いる場合には、その共重合割合によってビカット軟化点が30〜100℃程度のものが得られるが、比較的低温での収縮性を必要とするときはスチレン含有量が75重量%であるビカット軟化点60℃程度のものがより好適であり、比較的高温での収縮性を必要とするときはスチレン含有量が90重量%であるビカット軟化点90℃程度のものがより好適である。
【0021】
上記(A)の分子量は、重量平均分子量で5万〜60万の範囲が望ましく、より望ましくは10万〜50万の範囲、更に望ましくは20万〜45万の範囲である。該分子量が60万を超えると溶融時に流動し難くて他重合体の分散性が悪化する場合があり、5万より小さいと熱収縮性フィルムの経時寸法安定性や物性安定性が悪化する場合がある。本発明で用いる共重合体(A)の具体例としては、例えば特開昭61−25819号公報、特開平5−104630号公報等に詳細に記載されているもので上記要件を満たす共重合体等が挙げられる。
【0022】
本発明で用いる上記共重合体(B)は、好ましくはビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体であって、ビニル芳香族化合物の含有量が20〜85重量%の場合である。(B)を構成するビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックとしては、前述したビニル芳香族化合物と同様のものから選ばれた一種、又は二種以上のビニル芳香族化合物が50重量%以上の割合で含有される重合体ブロックが好ましく、更に好ましくはスチレンが60重量%以上の割合で含有される重合体ブロックである。一方、(B)を構成する共役ジエンを主体とする重合体ブロックとしては、前述した共役ジエンと同様のもの、詳しくはブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の共役二重結合を有する脂肪族不飽和化合物類等から選ばれた一種、又は二種以上の共役ジエンが50重量%以上の割合で含有される重合体ブロックが好ましく、更に好ましくはブタジエン、イソプレンが60重量%以上の割合で含有される重合体ブロックである。又、該ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック中には共役ジエンが、該共役ジエンを主体とする重合体ブロック中にはビニル芳香族化合物が、各々ランダム状に分布していても良いし、テーパー状に分布していても良い。上記(B)は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックをX、共役ジエンを主体とする重合体ブロックをYで表すと、例えばX−Y、X−Y−X、X−Y−X−Y等の構造で表される直線型、X−Y(−X)−X等の構造で表される分岐型、(X−Y−)nZ等の構造で表される放射型(但し、nは重合体ブロックの数、Zはカップリング剤残基を表す)、若しくはこれら三種の内の二種以上を組み合わせた混合型の構造で表されるブロック共重合体である。
【0023】
上記単量体の共重合割合は、(B)中のビニル芳香族化合物の含有量が20〜85重量%であることが好ましい。ビニル芳香族化合物の含有量が20重量%より少ない共重合体をフィルム基材となる熱可塑性樹脂に用いると共重合体(A)への分散性が劣る為に熱収縮性フィルムの透明性が低下する場合があり、一方、該含有量が85重量%より多い共重合体をフィルム基材となる熱可塑性樹脂に用いると熱収縮性フィルムの低温収縮性や耐衝撃性が低下する場合がある。上記(B)のビカット軟化点は、フィルム基材となる熱可塑性樹脂中の(B)の組成割合によっても異なる為に特に限定しないが、熱収縮性フィルムの低温収縮性と耐衝撃性が低下することのないよう95℃以下であることが望ましい。
【0024】
上記(B)の分子量は、重量平均分子量で1万〜100万の範囲が望ましく、より望ましくは3万〜80万の範囲、更に望ましくは10万〜60万の範囲である。該分子量が100万を超えると溶融時に流動し難くて他重合体への分散性が悪化する場合があり、1万より小さいと熱収縮性フィルムの耐衝撃性が劣る場合がある。本発明で用いる共重合体(B)の具体例としては、例えば特開昭61−25819号公報、特開平5−104630号公報等に詳細に記載されているもので上記要件を満たす重合体等が挙げられる。
【0025】
本発明で用いる上記重合体水素添加物(C)は、詳細説明は後述するとして、概略説明すると次の通りである。即ち、特定のビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体の水素添加物であり、水素添加処理前のブロック共重合体が、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックをX、共役ジエンを主体とする重合体ブロックをYで表すとX−Y−Y等の非対称直線型構造で表され、1,2−付加割合が30%以下である共役ジエンを主体とする重合体ブロックを含有するもの等を指す。
【0026】
以下、本発明で用いる上記重合体水素添加物(C)について詳細説明する。
本発明で用いる上記重合体水素添加物(C)は、好ましくはビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体の水素添加物であって、ビニル芳香族化合物の含有量が10〜60重量%、DSC曲線において融解ピーク温度が50℃以上である融解ピークが少なくとも一つ存在する場合である。(C)の水素添加処理前のブロック共重合体を構成するビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックとしては、前述したビニル芳香族化合物と同様のものから選ばれた一種、又は二種以上のビニル芳香族化合物が50重量%以上の割合で含有される重合体ブロックが好ましく、更に好ましくはスチレンが60重量%以上の割合で含有される重合体ブロックである。
【0027】
一方、(C)の水素添加処理前のブロック共重合体を構成する共役ジエンを主体とする重合体ブロックとしては、前述した共役ジエンと同様のものから選ばれた一種、又は二種以上の共役ジエンが50重量%以上の割合で含有される重合体ブロックが好ましく、更に好ましくはブタジエン、イソプレンが60重量%以上の割合で含有される重合体ブロックである。又、該ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック中には共役ジエンが、該共役ジエンを主体とする重合体ブロック中にはビニル芳香族化合物が、各々ランダム状に分布していても良いし、テーパー状に分布していても良い。上記(C)の水素添加処理前のビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体は、ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックをX、共役ジエンを主体とする重合体ブロックをYで表すと、例えばX−Y、X−Y−X、X−Y−X−Y等の構造で表される直線型、X−Y(−X)−X等の構造で表される分岐型、(X−Y−)nZ等の構造で表される放射型(但し、nは重合体ブロックの数、Zはカップリング剤残基を表す)、若しくはこれら三種の内の二種以上を組み合わせた混合型の構造で表されるブロック共重合体であり、この内でもX−Y、X−X−Y、X−Y−Y等の構造で表される非対称直線型が好ましい。
【0028】
上記(C)は、該ブロック共重合体に水素添加処理を施した水素添加物であり、該ブロック共重合体中に存在する共役ジエン由来の炭素原子間二重結合残基が触媒存在下に水素と反応することで得られるものである。この水素添加処理は、特に限定されるものではなく従来公知の一般的な方法で行われても良く、例えば該ブロック共重合体をヘキサン、トルエン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン等の不活性溶媒中に溶解して、アルミナ等で担持されたNi、Pd、Pt等の主に8族の遷移金属、これら金属がリン化合物等を配位子とする0〜2価の錯体化合物、チタノセンジクロライド等の遷移金属化合物とトリアルキルアルミニウム等の有機金属化合物の組合せ等の触媒を用いて、水素圧0.1〜10MPa、反応温度0〜150℃の範囲で行われる。
【0029】
上記ブロック共重合体中の共役ジエンを主体とする重合体ブロックは、その二重結合残基が水素添加されることによりエチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィン類よりなる繰返し単位が連なる重合体に類似の構造となり、前述した本発明で必須の重合体で結晶性を示す繰返し単位が得られる。即ち、上記ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体に水素添加処理を施すことにより結晶性の(C)を得ることができる。例えば、共役ジエンとしてブタジエンを用いる場合には、共役ジエンを主体する重合体ブロックはブタジエンの1,4−付加と1,2−付加が混在する付加重合により得られ、該重合体ブロックに水素添加処理を施すと1,4−付加したブタジエン残基はエチレンよりなる繰返し単位が二つ連なる構造に、1,2−付加したブタジエン残基は付加重合で反応せずに残ったビニル基を有するのでブチレンよりなる繰返し単位の構造に各々類似し、(C)はエチレンよりなる繰返し単位とブチレンよりなる繰返し単位が混在する結晶性の重合体ブロックを含有することになる。
【0030】
但し、共役ジエンを主体とする重合体ブロック中の1,2−付加割合によっては、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体を水素添加処理した重合体水素添加物は融解ピーク温度等が変化することがあり、場合によっては重合体水素添加物は融解ピークが存在せず結晶性を示さないことがある。重合体水素添加物に、本発明の上記(C)の要件であるところの、DSC曲線において融解ピーク温度が50℃以上である融解ピークが存在するという結晶構造を持たせ、熱収縮性フィルムに耐溶剤性を持たせる為には、上記1,2−付加割合が30%以下である共役ジエンを主体とする重合体ブロックを含有することが好ましく、より好ましくは上記1,2−付加割合が20%以下である。該重合体ブロックは、水素添加処理前のブロック共重合体の末端に含有されることが更に好ましく、例えばX−Y1−Y2の構造で表されるブロック共重合体の末端Y2ブロックが該重合体ブロックの場合である。この場合にはY1ブロックは1,2−付加割合が30%以上であっても差し支えない。又、上記(C)は、上記二重結合残基の水素添加率が少なくとも70%以上であることが望ましく、更に望ましくは90%以上である。水素添加率が70%より少ない重合体水素添加物をフィルム基材となる熱可塑性樹脂に用いると、該重合体水素添加物の結晶性が低い為に熱収縮性フィルムの耐溶剤性が劣る場合がある。
【0031】
上記単量体の共重合割合は、(C)中のビニル芳香族化合物の含有量が10〜60重量%であることが好ましい。ビニル芳香族化合物の含有量が10重量%より少ない重合体水素添加物をフィルム基材となる熱可塑性樹脂に用いると他共重合体への分散性が劣る為に熱収縮性フィルムの透明性が低下する場合があり、一方、該含有量が60重量%より多い重合体水素添加物をフィルム基材となる熱可塑性樹脂に用いると、熱可塑性樹脂中の該重合体水素添加物の組成割合によっては熱収縮性フィルムの耐溶剤性が低下する場合がある。又、熱収縮性フィルムに耐溶剤性を持たせる為には、上記(C)単体を測定したDSC曲線において融解ピーク温度が50℃以上である融解ピークが少なくとも一つ存在することが好ましい。DSC曲線に融解ピークが存在しない、若しくは融解ピークが存在しても融解ピーク温度が50℃より低い重合体水素添加物では、該重合体水素添加物をフィルム基材となる熱可塑性樹脂に用いると熱収縮性フィルムに耐溶剤性を持たせることが困難になる場合がある。尚、上記(C)は、該重合体水素添加物中に前述したオレフィン類よりなる繰返し単位が連なる結晶性の重合体ブロックを含有する為に、室温では芳香族炭化水素系やエステル系等の有機溶剤に完全に溶解することはなく、例えば25℃のトルエン50gに上記(C)5gを投入しても完全に溶解せずに固体、又はゲル状の残存物が目視で確認された。一方、従来技術である特開平5−104630号公報実施例2に記載の水添スチレン−ブタジエン共重合体(該公報におけるTPS−1)は、DSC曲線に融解ピークが存在せず、本発明で所望の結晶構造を持たないので、有機溶剤に上記条件で完全に溶解した。
【0032】
上記(C)の分子量は、重量平均分子量で1万〜100万の範囲が望ましく、より望ましくは4万〜70万の範囲、更に望ましくは8万〜50万の範囲である。該分子量が100万を超えると溶融時に流動し難くて他共重合体への分散性が悪化する場合があり、1万より小さいとフィルム基材樹脂中の該重合体水素添加物の組成割合によっては熱収縮性フィルムの耐溶剤性が劣る場合がある。本発明で用いる重合体水素添加物(C)の具体例としては、例えば特開平2−133406号公報、特開平2−305814号公報、特開平3−128957号公報、特開平5−170844号公報等に詳細に記載されているもので上記要件を満たす重合体等が挙げられる。
【0033】
本発明のフィルム基材として用いる熱可塑性樹脂において、主体となる上記(A)、(B)、及び(C)の混合樹脂組成物は、それら組成割合が5〜95重量%の(A)、5〜95重量%の(B)、及び0.3〜25重量%の(C)であることが好ましく、更に好ましくは40〜80重量%の(A)、20〜60重量%の(B)、及び1〜10重量%の(C)である。(A)、(B)、及び(C)の組成割合が上記範囲から外れる混合樹脂組成物をフィルム基材として用いた熱収縮性フィルムは、(A)の組成割合が5重量%より少ない、或いは(B)の組成割合が95重量%より多いと腰強さや剛性など機械的強度が劣る場合があり、一方(A)の組成割合が95重量%より多い、或いは(B)の組成割合が5重量%より少ないと耐衝撃性が劣る場合がある。又、重合体(C)の組成割合が0.3重量%より少ないと耐溶剤性が劣る場合があり、25重量%より多いと透明性が劣る場合がある。
【0034】
尚、本発明のフィルム基材として用いる熱可塑性樹脂は、上記(A)、(B)、及び(C)の他に、熱収縮性フィルムの滑性、帯電防止性、防曇性、又は装着時の収縮温度を調節する等の目的で、ビニル芳香族化合物の含有量が95重量%より多い重合体類、例えば一般的な非晶性ポリスチレンや立体規則性ポリスチレン、及びゴム状重合体を分散粒子として含有するポリスチレン類、石油樹脂類、テルペン系樹脂類やその水素添加物、ポリアルキレンオキサイド類、ポリフェニレンエーテル類等が本発明の要件を満たす範囲内で混合されても良い。更に、公知の無機、及び有機化合物よりなる添加剤、例えば可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤等が適宜混合されても良く、特に上記(B)は比較的熱安定性が低くゲル化し易いので酸化防止剤や熱安定剤が混合されることが望ましい。使用される酸化防止剤や熱安定剤の具体例としては、例えば特開平5−104630号公報等に詳細に記載されているもの等が挙げられ、フェノール系、フェニルアクリレート系、リン系、イオウ系等から選ばれる一種、又は二種以上がフィルム基材として用いる熱可塑性樹脂中に0.01〜10重量%の範囲で混合されている場合である。
【0035】
本発明における上記熱可塑性樹脂として混合樹脂組成物を用いる場合は、上記重合体、及び添加剤の全部、或いは一部を単軸、又は二軸押出機、バンバリーミキサー、ミキシングロール等を使用して予備的に溶融混合を行ってからフィルム製造に供しても良いし、ドラムブレンダー等を使用して上記重合体をペレット形状、或いは粉体形状のまま予備混合したのちフィルム製造の際に押出機中で溶融混合させても良い。
【0036】
本発明の熱収縮性フィルムは、上記熱可塑性樹脂を基材として用いて、フィルム用途に応じ少なくとも一軸方向に延伸して製造することができる。その際の延伸方法としては、ロール延伸法、テンター延伸法、バブル延伸法等の一般的な方法が挙げられ、二軸延伸の場合は逐次二軸延伸法と同時二軸延伸法の何れでも良い。フィルム製造の具体例としては、例えば上記熱可塑性樹脂を押出機に投入してTダイより押出成形した長尺シート状物をロール延伸法やテンター延伸法にて適宜選ばれた延伸温度、及び延伸倍率等の延伸条件で逐次二軸延伸する等が挙げられる。ここで、延伸温度、及び延伸倍率等の延伸条件は、使用する熱可塑性樹脂やフィルム用途に応じてフィルムが後述する熱収縮性能を満たす様に適宜選ばれ、延伸温度は特に限定しないが使用する熱可塑性樹脂のビカット軟化点より10〜50℃高い温度の範囲が望ましく、例えば70〜120℃の範囲が良い。一方、延伸倍率は特に限定しないがフィルムの熱収縮性能を調節する為に面積倍率で2〜25倍の範囲に延伸することが望ましく、例えば逐次二軸延伸法でフィルムを製造するときには長尺方向に1.1〜2.5倍に延伸した後、これと直交する横方向に2〜10倍に延伸するのが良い。
【0037】
本発明の熱収縮性フィルムは、低温収縮性に優れシュリンクラベル等として用いた場合に緩み、シワ、破れ、歪み、位置ズレなど装着仕上がり不良が発生しないように、特定の熱収縮性能を持たせることが好ましい。フィルムの熱収縮性能について詳細に説明すると、例えば上記逐次二軸延伸法により得られるフィルムでは、主として横方向に収縮するシュリンクラベル等に用いることができるが、主延伸方向である横方向の加熱収縮応力は151〜800g/mm2 の範囲に留めることが好ましく、更に好ましくは200〜500g/mm2 の範囲である。
【0038】
該値が151g/mm2 より小さいフィルムをシュリンクラベル等に用いると緩み等の装着仕上がり不良が発生する場合があり、一方該値が800g/mm2 より大きいフィルムは経時寸法安定性や物性安定性が劣ったり、破れや位置ズレ等の装着仕上がり不良が発生する場合がある。長尺方向である縦方向の加熱収縮応力は5〜150g/mm2 の範囲に留めることが好ましく、更に好ましくは10〜100g/mm2 の範囲である。該値が5g/mm2 より小さいフィルムは長尺方向の引張伸度や引張強度が低くフィルム切れが発生し易かったり、シュリンクラベル等に用いるとシワ等の装着仕上がり不良が発生する場合があり、一方該値が150g/mm2 より大きいフィルムは歪みや位置ズレ等の装着仕上がり不良が発生する場合がある。
【0039】
又、上記逐次二軸延伸法により得られるフィルムでは、主延伸方向である横方向の加熱収縮率は80℃で10〜85%、100℃で10〜90%の範囲に留めることが好ましく、更に好ましくは80℃で25〜70%、100℃で30〜85%の範囲である。該値が80℃、又は100℃で10%より小さいフィルムをシュリンクラベル等に用いると緩み等の装着仕上がり不良が発生する場合があり、一方該値が80℃で85%、又は100℃で90%より大きいフィルムは歪みや位置ズレ等の装着仕上がり不良を発生する場合がある。長尺方向である縦方向の加熱収縮率は80℃で0〜50%、100℃で0〜80%の範囲に留めることが好ましく、更に好ましくは80℃で0〜25%、100℃で1〜70%である。該値が80℃、又は100℃で熱膨張により負の値になるフィルムをシュリンクラベルに用いるとシワや歪み等の装着仕上がり不良が発生する場合があり、一方該値が80℃で50%、又は100℃で80%より大きいフィルムは歪みや位置ズレ等の装着仕上がり不良を発生する場合がある。
【0040】
この様にして得られた熱収縮性フィルムは、そのまま前述した印刷や製袋等の加工作業に供しても良いが、フィルムの熱収縮性能を調節したり、経時寸法安定性や物性安定性を向上させる目的で熱処理やエージング処理等を施しても良いし、帯電防止性や防曇性等を向上させる目的でコーティング等の各種表面処理を施しても良い。
【0041】
本発明の熱収縮性フィルムは、前述した以外の特性として、フィルムの実用性能において落錘衝撃強度は少なくとも5Kg・cm以上、引張弾性率は縦横両方向とも少なくとも140Kg/mm2 以上であることが好ましく、更に好ましくは落錘衝撃強度は20Kg・cm以上、引張弾性率は175Kg/mm2 以上である。これら特性はフィルムの耐衝撃性や機械的強度等を表す尺度と見なすことができ、該値が小さ過ぎるフィルムは破れたりやシワになり易く取扱い等の実用性能に不具合を生じる場合がある。耐衝撃性や機械的強度等が劣り取扱い等で不具合を生じる場合には、フィルム厚みを厚くすることが対策の一つに挙げられるが、これは基材樹脂の使用量増加によるコスト高となり望ましくない。又、本発明においてフィルム基材として用いる熱可塑性樹脂は、特定の結晶構造を有する為に、フィルム厚みを厚くすることは透明性が阻害される場合があり望ましくない。フィルム厚みは、シュリンクラベル等として用いる場合には一般に厚いほどシワ等の発生が少なく装着仕上がり具合が良くなるが、コスト面や透明性から考慮すると5〜800μmの範囲が望ましく、更に望ましくは20〜300μmの範囲である。但し、フィルム厚みは、その用途により適宜選ばれ、これに限定されるものではない。フィルム透明性は、フィルムに印刷された図柄や文字等がフィルムの印刷面と反対側から見て不鮮明とならないように、ヘーズが5%未満であることが好ましく、更に好ましくは3%未満である。
【0042】
【発明の実施の形態】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、これら具体例は本発明の範囲を限定するものではない。又、物性測定方法、評価方法と尺度を下記に示すが、熱収縮性フィルムのサンプルについては、特に断りのない限り製造後に温度23℃、湿度50%の雰囲気下に1〜3日間保管したものを物性測定や評価に供した。
【0043】
[物性測定方法]
(1)DSC(示差走査熱量測定)
結晶化ピーク、結晶化熱量、融解ピーク、融解ピーク温度はJIS K7121、及びK7122に準拠して測定した。測定装置にPERKIN−ELMER社製DSC−7を使用し、サンプル量は10mgとして、先ず0℃で10分間保持したのち加熱速度10℃/分で融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱し、そのまま10分間保持する熱処理を行った。その後、冷却速度10℃/分で結晶化ピーク終了温度より50℃低い温度まで冷却して結晶化ピークと結晶化熱量を測定した。次に、該温度で10分間保持したのち加熱速度10℃/分で融解ピーク終了温度より30℃高い温度まで加熱して融解ピークと融解ピーク温度を測定した。但し、上記測定において、融解ピークが存在しない場合は230℃まで加熱し、結晶化ピークが存在しない場合は−20℃まで冷却した。尚、温度と熱量の校正は標準物質としてインジウムを用いて行った。
【0044】
(2)ビカット軟化点
ビカット軟化点はASTM D1525に準拠して測定した。厚さ4mm、縦横幅30mmの直方体形状に熱プレス成形し作製したサンプルを使用して、荷重1Kg、加熱速度2℃/分の条件でビカット軟化点を測定した。
(3)フィルム厚み
フィルム厚みはJIS K7130A法(機器法)に準拠して測定した。最小目盛1μmのダイアルゲージを使用して等間隔に厚みを10ヶ所測定し、その平均値をフィルム厚みとした。
【0045】
(4)加熱収縮応力
加熱収縮応力はASTM D2838に準拠して測定した。幅10mm、長さ150mmに切り出し作製したサンプルを、フィルム厚みを測定した後、ストレインゲージを片方のチャックに装備した一対のチャックにチャック間隔100mm、初期荷重5gとなるようセットした。それを100℃に加熱したシリコーンオイル恒温槽中に浸漬し、発生した収縮力をペンレコーダーで記録した。得られた時間−収縮力のグラフから浸漬後30秒以内の収縮力最大値を読み取り、該値をフィルム断面積(厚み×幅)で除してサンプル毎の加熱収縮応力を求めた。測定結果は、上記手順により縦方向と横方向の各々につきサンプル数5個づつ測定し、その平均値で示した。
【0046】
(5)加熱収縮率
加熱収縮率はJIS Z1709に準拠して測定した。一辺100mmの正方形状に切り出し作製したサンプルを、ステンレス製金網の支持具にセットした。それを80℃に加熱した温水恒温槽中、又は100℃に加熱したシリコーンオイル恒温槽中に浸漬し10秒間加熱した後、別に用意した常温の水槽に浸漬し5秒間冷却し取り出す。この収縮したサンプルの収縮寸法を測り、該値をサンプルの元寸法で除してサンプル毎の加熱収縮率を百分率で求めた。測定結果は、上記手順により縦方向と横方向の各々につきサンプル数5個づつ測定し、その平均値で示した。
【0047】
[評価方法と尺度]
(1)耐溶剤性
耐溶剤性は、フィルムの印刷前後における長尺方向引張伸度を測定し、印刷前に対する印刷後の伸度低下率を算出して評価した。フィルムサンプルに、スクリーンT300Bメッシュ、版厚み58μm、テンション17N/cmのベタ刷り版をセットしたミシマ社製簡易型スクリーン印刷機を用いて、スクリーンギャップ1mm、スキージ荷重2Kg、スキージ速度10cm/秒の条件で、サカタインクス社製PSA−2溶剤(トルエン8%、酢酸エチル35%含有):60重量部でサカタインクス社製PS−985(白120):40重量部を希釈したインキを転移させ、その後温風循環恒温槽中に30℃で1時間乾燥させて印刷を行った。引張伸度はASTM D882に準拠して測定した。未印刷サンプルとしてフィルム製造後に温度23℃、湿度50%の雰囲気下に3日間保管したものを、印刷後10日経過サンプルとして印刷乾燥後に温度23℃、湿度50%の雰囲気下に10日間保管したものを、印刷後30日経過サンプルとして印刷乾燥後に温度23℃、湿度50%の雰囲気下に30日間保管したものを各々長尺方向に幅10mm、長さ150mmに切り出し、ストレインゲージを片方のチャックに装備した一対のチャックにチャック間隔100mmとなるようセットした。これを引張速度200mm/分で引張り、発生した張力をペンレコーダーで記録した。得られた伸び−張力のグラフからサンプルが破断するまでの伸びを読み取り、該値をチャック間隔の元寸法で除してサンプル毎の引張伸度を求めた。引張伸度の測定結果は、上記手順により各サンプルにつきサンプル数10個づつ測定し、その平均値で示した。この引張伸度の測定結果から下式により印刷前に対する印刷後の伸度低下率を求め、得られた伸度低下率の値を耐溶剤性の指標とした。
【0048】
α(N)=(L(0)−L(N))/L(0)
但し、α(N):印刷N日後の伸度低下率(−)
L(0):印刷前の引張伸度(%)
L(N):印刷N日後の引張伸度(%)
【0049】
(2)装着仕上がり性
装着仕上がり性は、筒状に製袋したフィルムを被装着物にセットして熱風シュリンクトンネルを通過させ、その装着仕上がり具合を観察評価した。フィルムサンプルを、フィルムの主延伸方向が折り幅方向になるようにして、又これと直交する方向に沿ってヒートシールを施して、折り幅148mm、高さ90mmの筒状に製袋した。これを1.5リットルのペットボトル(最大径91mm、高さ310mmの円筒こけし状容器に30℃の水を充填したもの)にセットして、全長2mの熱風シュリンクトンネルをトンネル内温度135℃、トンネル通過時間10秒の条件で通過させた。このようにして収縮させた筒状フィルムサンプルの装着仕上がり具合について、緩み、シワ、破れ、歪み、位置ズレなど装着仕上がり不良の有無を観察評価し装着仕上がり性の指標とした。尚、ここでいう装着仕上がり不良について具体例を説明すると、緩みとは収縮させた筒状フィルムが円周方向に動かすことができる状態をいう。シワとは該フィルムの表面が平滑でなくクレーター状起伏や筋目状起伏の皺ができた状態をいう。破れとは該フィルムに切れ目が生じたり裂けた状態をいう。歪みとは該フィルムが所定の形状から歪んだ状態をいうが縦収縮が2%以内であれば許容範囲とする。位置ズレとは該フィルムが所定の位置からずれた状態をいう。
【0050】
(3)耐衝撃性
耐衝撃性はJIS K7124に準拠してフィルムの落錘衝撃強度(50%破壊エネルギーと同意)を測定し評価した。一辺25cmの正方形状に切り出したサンプルを多数枚用意した。ダートは直径38mm、自重32gのものを用いて落下高さ66cm、質量間隔20gの条件で落下試験を行った。この試験結果から50%破壊質量に落下高さを乗じて落錘衝撃強度を求め、得られた落錘衝撃強度の値を耐衝撃性の指標とした。
【0051】
(4)機械的強度
機械的強度はASTM D882に準拠してフィルムの引張弾性率を測定し評価した。前述の引張伸度と同様にして、引張速度10mm/分で引張り、発生した張力をペンレコーダーで記録した。得られた歪み−張力グラフの初期直線部分から二点間の歪みと張力を読み取って、下式によりサンプル毎の引張弾性率を求めた。引張弾性率の測定結果は、上記手順により縦方向と横方向の各々につきサンプル数5個測定し、縦横両方向の平均値で示した。この引張弾性率の値を機械的強度の指標とした。
【0052】
E=ΔF/(S・Δε)
但し、E:引張弾性率(Kg/mm2 )
S:引張方向に直交するサンプル断面積(mm2 )
ΔF:直線上の二点間の張力の差(Kg)
Δε:同じ二点間の歪みの差(−)
【0053】
(5)透明性
透明性はJIS K7105に準拠してヘーズを測定し評価した。一辺50mmの正方形状に切り出したサンプルを用意して、これをホルダーにセットしサンプル毎のヘーズを測定した。ヘーズの測定結果は、サンプル数5個づつ測定し、その平均値で示した。得られたヘーズの値を透明性の指標とした。
【0054】
[フィルム基材樹脂]
本発明の実施例、及び比較例では、熱収縮性フィルムの基材として用いる熱可塑性樹脂は、複数種類の原料重合体と添加剤の混合樹脂組成物である。該組成物は、先ず原料重合体の一部と添加剤を二軸押出機を使用して予備的に溶融混合を行って、該予備溶融混合物と残りの原料重合体をドラムブレンダーを用いてペレット形状のまま予備混合した後、該予備混合物をフィルム製造の際に押出機中で溶融混合させたものである。
【0055】
先ず、本発明の実施例、及び比較例で使用する混合樹脂組成物の内容を表1乃至表3に示す。表1には、該組成物を構成する原料重合体と添加剤について原料重合体の構造と物性値、及び添加剤の化学名を示してある。尚、これら表1中の原料は、A1が共重合体(A)[旭化成工業社製、商品名ポリスチレンSC004]、B1が共重合体(B)[スチレン含有量が70重量%、ビカット軟化点が77℃、分子量が35万、X−Y−X型であるスチレンとブタジエンのブロック共重合体]、C1が重合体水素添加物(C)[JSR社製、商品名ダイナロン4600P]、U1が重合体水素添加物[旭化成工業社製、商品名タフテックH1041]、D1が熱安定剤[住友化学工業社製、商品名スミライザーGS]、D2が酸化防止剤[チバガイギー社製、商品名イルガノックス1076]、D3が酸化防止剤[チバガイギー社製、商品名イルガフォス168]、D4が酸化防止剤[住友化学工業社製、商品名スミライザーTPL]であり、該表中のX、及びYは、ビニル芳香族化合物−共役ジエンブロック共重合体のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロック、及び共役ジエンを主体とする重合体ブロックを各々表している。
【0056】
表2には、上記予備溶融混合物について原料重合体と添加剤の原料混合割合を示してある。表2中の予備溶融混合物P1乃至P5は、定量ホッパーと定量フィーダーを備え、ストランドダイを先端に取り付けた二軸押出機を用いて、該表A1乃至U1の原料重合体は定量ホッパーから、該表D1乃至D4の添加剤は定量フィーダーから該押出機に各々供給し、溶融混合してストランドダイより押出し造粒したものである。但し、原料重合体が複数種類である場合には、予めペレット形状のままドラムブレンダーを用いて予備混合したものを使用してある。同様に、複数種類の添加剤は、予め粉体形状のままドラムブレンダーを用いて予備混合したものを使用してある。表3には、上記予備混合物について残りの原料重合体と予備溶融混合物の原料混合割合を示してある。
【0057】
次に、表3に示す上記予備混合物を溶融混合するフィルム製造時の押出成形装置の概要と押出成形方法を示す。口径65mm、L/D=31の単軸押出機の先端にTダイを取り付けた押出成形装置を用いて、上記予備混合物を該押出機に供給して190℃で溶融混合し、Tダイより押出して冷却ロールで引き取り原反を得た。
【0058】
【実施例、及び比較例】
この実験は、熱収縮性フィルムの結晶化熱量の大きさに着目した実験である。従って、フィルムの製造条件は、一定の延伸倍率において横方向の加熱収縮応力が389〜410g/mm2 の範囲に留まるように延伸温度を調節してあり、フィルム厚みは50μmとした。
予備混合物記号M1の予備混合物を使用し、前述の押出成形方法に従って原反を得た。該原反をロール延伸機を用いてロール温度90℃で長尺方向に1.9倍に延伸した後、テンター延伸設備を用いてオーブン温度90℃で横方向に7.0倍に延伸して厚み50μmの逐次二軸延伸フィルムを得た。得られた熱収縮性フィルムを実験No.1とする。この実験No.1のフィルムをサンプルとして前述のDSC測定を行ったところ、該フィルムには結晶化ピークが一つ存在し、結晶化熱量は0.30J/gであった。
【0059】
次いで、予備混合物記号M2の予備混合物を使用することの他は上記実験No.1と同じ実験を繰返し、得られた熱収縮性フィルムを実験No.2とする。この実験No.2のフィルムには結晶化ピークが一つ存在し、結晶化熱量は0.61J/gであった。予備混合物記号M3の予備混合物を使用し、オーブン温度を88℃に変更することの他は上記実験No.1と同じ実験を繰返し、得られた熱収縮性フィルムを実験No.3とする。この実験No.3のフィルムには結晶化ピークが一つ存在し、結晶化熱量は1.78J/gであった。予備混合物記号M4の予備混合物を使用し、オーブン温度を92℃に変更することの他は上記実験No.1と同じ実験を繰返し、得られた熱収縮性フィルムを実験No.4とする。この実験No.4のフィルムには結晶化ピークが一つ存在し、結晶化熱量は0.06J/gであった。予備混合物記号M5の予備混合物を使用し、オーブン温度を86℃に変更することの他は上記実験No.1と同じ実験を繰返し、得られた熱収縮性フィルムを実験No.5とする。この実験No.5のフィルムには結晶化ピークが一つ存在し、結晶化熱量は4.84J/gであった。
【0060】
予備混合物記号M6の予備混合物を使用することの他は上記実験No.1と同じ実験を繰返し、得られた熱収縮性フィルムを実験No.6とする。この実験No.6のフィルムには結晶化ピークは存在しなかった。予備混合物記号M7の予備混合物を使用し、オーブン温度を92℃に変更することの他は上記実験No.1と同じ実験を繰返し、得られた熱収縮性フィルムを実験No.7とする。この実験No.7のフィルムには結晶化ピークが一つ存在し、結晶化熱量は0.04J/gであった。予備混合物記号M8の予備混合物を使用し、オーブン温度を86℃に変更することの他は上記実験No.1と同じ実験を繰返し、得られた熱収縮性フィルムを実験No.8とする。この実験No.8のフィルムには結晶化ピークが一つ存在し、結晶化熱量は5.69J/gであった。
【0061】
この実験No.1〜8の熱収縮性フィルムをサンプルとして、前述した耐溶剤性、装着仕上がり性、耐衝撃性、機械的強度、透明性について評価を行った。それらをまとめて表4に示す。尚、該表中のSt含量はフィルム基材として用いる熱可塑性樹脂のスチレンよりなる繰返し単位含有量を、MDはフィルムの長尺方向(縦方向)を、TDはこれと直交する横方向を各々表している。表4の結果によると、何れのサンプルもスチレンよりなる繰返し単位が50重量%以上の割合で含有されており、ビニル芳香族化合物よりなる繰返し単位が全繰返し単位中に最も多い割合で含有されている熱可塑性樹脂を基材として用いていることから、耐衝撃性と機械的強度が優れていた。又、何れのサンプルも特定の熱収縮性能を持たせてあることから、シュリンクラベルとして用いた場合に緩み、シワ、破れ、歪み、位置ズレ等が発生せず装着仕上がり性が優れていた。
【0062】
しかしながら、結晶化ピークが存在しないサンプル(実験No.6参照)、及び結晶化ピークが存在しても結晶化熱量の総和が0.05J/gより小さいサンプル(実験No.7参照)は、印刷前後で伸度低下が著しく耐溶剤性は非常に劣っていた。一方、結晶化熱量の総和が5J/gより大きいサンプル(実験No.8参照)は透明性が劣っていた。これに対して、結晶化ピークが少なくとも一つ存在し、且つ結晶化熱量の総和が0.05〜5J/gの範囲にあるサンプル(実験No.1〜5参照)に限っては耐溶剤性、透明性とも非常に優れていた。
【0063】
【参考例】
この実験は、熱収縮性フィルムの印刷後経過日数に依存する長尺方向引張伸度の変化が、フィルム基材として用いた熱可塑性樹脂の結晶構造により異なることを調べる為の実験である。従って、フィルムの製造条件、及び厚みが同一で、加熱収縮応力や加熱収縮率の熱収縮性能が同程度であるものをサンプルとして比較している。本発明の熱収縮性フィルムとして結晶化ピークが一つ存在し、且つ結晶化熱量が0.30J/gである上記実験No.1のフィルムを、従来技術の熱収縮性フィルムとして結晶化ピークが存在しない上記実験No.6のフィルムを各々用いて、前述した耐溶剤性の評価方法における引張伸度の測定を行った。この長尺方向引張伸度の測定結果を図1、及び表5にまとめて示す。
【0064】
図1は、本発明の熱収縮性フィルムの耐溶剤性の高さを示す実験図である。該図は、横軸に印刷後の経過日数(日)、縦軸に長尺方向の引張伸度(%)を各々目盛り、白丸印(○)は本発明の熱収縮性フィルムの場合を、黒丸印(●)は従来技術の熱収縮性フィルムの場合を各々示している。図1、及び表5の結果によると、結晶化ピークが存在しない従来技術の熱収縮性フィルムは、印刷後10日経過した時点で測定した長尺方向の引張伸度は120%を下回り、印刷前の引張伸度に対する伸度低下が非常に大きかった。これに対して、本発明の熱収縮性フィルムは、印刷後30日経過しても引張伸度は印刷前と同等以上であり、印刷前後で伸度低下は全く見られず、耐溶剤性が大幅に向上したことが判る。更に、本発明の熱収縮性フィルムは、該測定値の標準偏差が従来技術のフィルムよりも小さいことから、フィルム性能が均一であり混合樹脂組成物の分散性が優れていることが判る。
【0065】
即ち、スチレン系樹脂に代表される繰返し単位が主としてビニル芳香族化合物よりなる熱可塑性樹脂を基材として用いても、DSC曲線において結晶化ピークが少なくとも一つ存在し、且つ結晶化熱の総和が0.05〜5J/gの範囲である結晶構造を持つ本発明の熱収縮性フィルムは、印刷後日数が経過しても引張伸度は印刷前と同等以上であり、印刷前後で伸度低下が見られず耐溶剤性が著しく高いことが判る。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
【0070】
【表5】
【0071】
【発明の効果】
本発明によれば、熱収縮性フィルムとした場合に低温収縮性、耐衝撃性、機械的強度、及び透明性に優れるスチレン系樹脂を基材として用いても、印刷を施す場合の印刷インキ等に含まれる有機溶剤に対する耐性が優れており、フィルム加工作業や商品への装着作業における自動作業機械に掛けてもフィルム切れを発生し難い熱収縮性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明、従来技術の各々の熱収縮性フィルムについて、印刷後の経過日数に依存する長尺方向の引張伸度の変化を示す実験図である。
Claims (3)
- 主としてビニル芳香族化合物よりなる共重合体(A)5〜95重量%、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体(B)5〜95重量%、及び、ビニル芳香族化合物−共役ジエン共重合体の水素添加物(C)0.3〜25重量%からなる混合樹脂組成物を主体とする熱可塑性樹脂を基材とする、延伸温度が70〜120℃の範囲で少なくとも一軸方向に延伸して製造した延伸フィルムであって、
該フィルムを測定したDSC曲線(JIS K7122準拠、サンプル量10mg、冷却速度10℃/分)において結晶化ピークが少なくとも一つ存在し、且つ結晶化熱量の総和が0.05〜5J/gであることを特徴とする熱収縮性フィルム。
(A):ビニル芳香族化合物と脂肪族不飽和カルボン酸誘導体よりなる共重合体であって、ビニル芳香族化合物の含有量が55〜95重量%、ビカット軟化点が105℃を超えない共重合体。
(B):ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体であって、ビニル芳香族化合物の含有量が20〜85重量%である共重合体。
(C):ビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックと共役ジエンを主体とする重合体ブロックよりなるブロック共重合体の水素添加物であって、ビニル芳香族化合物の含有量が10〜60重量%、DSC曲線(JISK7121、及びK7122準拠、サンプル量10mg、加熱速度10℃/分)において融解ピーク温度が50℃以上である融解ピークが少なくとも一つ存在する重合体水素添加物。 - 少なくとも一方の延伸方向の加熱収縮率が、80℃で10〜85%の範囲にある、請求項1に記載の熱収縮性フィルム。
- 延伸温度が70〜120℃の範囲で、延伸倍率がフィルムの長尺方向に1.2〜2.5倍、これと直交する横方向に2〜10倍の範囲に延伸されたものである、請求項1又は2に記載の熱収縮性フィルム。
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