電力設備においては、電力供給用の系統に接続される負荷の状況等に応じて、商用電源や同期発電機(以下の説明において単に「発電機」と記す)の接続状態の変更が行われる。ここで、電力系統に交流出力がなされている時に、遮断器を投入して新たに発電機の交流出力を系統に合流させる場合、発電機から出力される交流電圧出力Vg及び周波数Fgと、系統上の交流電圧出力Vb及び周波数Fbとを、それぞれ出来る限り一致させ、両者の出力電圧差ΔV(=Vb−Vg)、周波数差ΔF(=Fb−Fg)をそれぞれ許容範囲内に追込んだ上で、しかも発電機への瞬間突入電流をなるべく小さくするために、発電機側及び系統側の各交流波形Vg(T),Vb(T)の位相θg,θbをも同期させた状態で行う必要がある。このために、自動同期投入制御装置(特許文献1)を使用して、最初に前記出力電圧差ΔVと周波数差ΔFとが許容範囲内になるように制御を行い、この後に前記発電機側及び系統側の各交流波形Vg(T),Vb(T)の位相差Δθ(=θb−θg)が「0°」となる時間を推定し、両波形がほぼ同期するタイミングにて遮断器を投入する方法が一般的であった。
特開平10−56740号公報
従来、位相差Δθ=0°の同期点を検出するためには、以下の方法に従っていた。図13に示されるとおり、発電機Gの交流波形Vg(T)と系統Bの側の波形Vb(T)との差分を、アナログ減算器81を介して、ビート電圧波形として検出する。この結果得られるビート電圧の波形は、両交流電圧波形Vb(T),Vg(T)の周波数差ΔFに対応した交流波形であって(図示せず)、このままでは同期点を判定しにくい。よって、該ビート電圧の波形を全波整流回路82を介して整流した後に、フィルター回路83を介して更に平滑化してその包絡線に相当する波形に変換し、この変換後の波形をビート電圧波形ΔV(T)とみなす。該ビート電圧波形ΔV(T)は、系統側の交流波形Vb(T)と発電機側の交流波形Vg(T)とが、同期する〔Δθ=0°(又は360°)〕時間から、前記周波数差ΔFの大きさに応じて位相差Δθが増加(又は減少)しながら次の同期する〔Δθ=360°(又は0°)〕時間に至るまでを1サイクルとして連続する関数となる。即ち、該ビート電圧波形ΔV(T)の極小値をなす時間が、位相差Δθ=0°(又は360°)に対応すべき同期時の時間であって、極大値のそれは、位相差Δθ=180°に対応すべき半周期位相ずれ(逆位相)時の時間となる。本件では、同期時の時間の検出と遮断器投入のタイミングの演算を目的とするために、A/D変換回路84を介して、前記ビート電圧波形ΔV(T)をデジタル量に更に変換した後にこれをCPU7に入力し、極小値をなす時間を演算する。
ここで、図14は、アナログ減算器81等の上述した各回路82,83,84を介して、CPU7に入力される前記ビート電圧波形ΔV(T)を例示する概略図である。該ビート電圧波形ΔV(T)は、フィルター回路83の通過後の波形なので、実際のビート電圧波形の包絡線から得られるはずの波形ΔV
0(T)よりもΔφだけ位相が遅れている。また、理想的には位相差Δθ=0°の時にΔV=0で極小となるが、アナログ回路のオフセット等の理由により、実際にCPU7に入力されるビート電圧波形ΔV(T)は、必ずしもこれに従わない。よって、従来方法(特許文献2)に従って、位相差の検出を開始する時間Ts後の最初の1サイクルC
1の終点での第1極小点Q
1の電圧値ΔV
syn(以下の説明において、単に「オフセット電圧」と記す)を、CPU7のソフトウェアを使用して検知する必要があった。即ち、発電機Gの電圧波形Vg(T)と系統の電圧波形Vb(T)とを矩形波に変換して、この両矩形波より位相差Δθ=0°時を検出し、Δφ分の前記位相遅れを加味しながら、同期時と想定される瞬間の電圧値を前記ビート電圧波形ΔV(T)から読取り、これをオフセット電圧ΔV
synに定めていた。そして、該オフセット電圧ΔV
synの検知後に、次の1サイクルC
2での第2の極小点Q
2に到達する時間T'
syn2の推定演算を行う。即ち、前記波形ΔV(T)がほぼ直線的に右下がりをなす間に、所定の2点S
1(T
1,V
1),S
2(T
2,V
2)の座標を検知し、この2点の座標より再び電圧ΔV=ΔV
synとなるべき極小点Q
2の時間T'
syn2を演算する。ここで、時間T'
syn2は、位相差Δθ=0°とみなされる同期点であって、遮断器の接触子同士が実際に接触すべき時間である。よって、CPU7では、遮断器の漸進時間Tαと前記Δφに相当する時間を差引いた投入タイミングTe’〔=T'
syn2−Tα−Δφ〕を演算し、このタイミングTe’において遮断器投入が開始するように、遮断器に投入命令を出力する。
特開2000−139029号公報
上述したように、従来の位相差検出方法によれば、前記第2の極小点Q2に至る直前の投入タイミングTe’を演算するために、位相差の検出開始時間Ts後まず最初の1サイクルC1での前記極小点Q1において、同期時間T'syn1時のオフセット電圧ΔVsynを検知し、更に前記2点S1,S2の座標を検知する必要があった。従って、第2の極小点Q2の投入タイミングTe’を演算する前に、第1の極小点Q1を必ず1度は通過しなければならず、位相差の検出開始時Tsから投入タイミングTe’に至るまでに時間を要する〔ビート電圧波形ΔV(T)の1サイクルに要する時間以上〕という問題点があった。この問題は、例えば負荷増大による商用電源の出力ダウン時に、速やかに非常用の自家用発電機の出力を合流させる場合や、停電時において複数の発電機の出力を連続接続する場合には、非常に重要となる。また、アナログ回路を介して生成されるビート電圧の波形は、周囲の温度環境等の影響を受け易く、本来検出誤差を内包しており、同期時間の検出精度の観点から限界があるという問題をも有していた。
遮断器を投入すべきタイミングをより正確に推定するために、発電機側と系統側との両交流電圧波形の位相同期点の検出精度をより向上させると共に、位相差の検出開始時から前記投入時までの時間をより短縮することである。
上記の課題を解決するための請求項1の発明は、発電機側と系統側との交流電圧波形をそれぞれ基準又は比較の各矩形波に変換する矩形波生成回路と、位相差検出の開始指令に応じて、所定周波数の基準クロックの出力数を計数開始する単調増加のカウンタ回路と、位相差検出開始以降の前記両矩形波のレベル遷移に対応して、順次更新しながらそれぞれの瞬間での基準クロックの計数値を読込んで記憶する基準波及び比較波の各記憶手段と、これらの各記憶手段からそれぞれの前記計数値を読込み、これらを元に投入タイミングを決定するための演算を行い、遮断器投入指令を出力するCPUとを備えた位相差検出装置において、基準矩形波に対する比較矩形波の位相の進み又は遅れに反転が生じない1サイクル内にて遮断器の投入を行うために位相差を検出する方法であって、位相差検出開始後の基準及び比較の各矩形波のレベル遷移を検知する毎にCPUで同期時推定のプログラムを実行し、まず、位相差検出開始後の基準矩形波の最初の単位波の1周期に相当するレベル遷移であって、その始端及び終端に対応する瞬間での前記計数値を最初及び次回の各周期カウント値として基準波の記憶手段より読込むと共に、前記基準矩形波の単位波に対応して比較矩形波がレベル遷移する瞬間の前記計数値を位相差カウント値として比較波の記憶手段より読込み、最初又は次回の前記周期カウント値と前記位相差カウント値との差より、基準矩形波に対する比較矩形波の位相差を演算し、更に、基準矩形波と比較矩形波との位相差演算値が第1目標閾値に該当するまで、基準矩形波の最初の単位波と連続する各単位波に対して、順次比較矩形波の単位波との位相差演算を繰返し、第1目標閾値に該当時の第1位相差演算値とその時の第1指標カウント値とを求め、次に、基準矩形波と比較矩形波との位相差演算値が、第1目標閾値と同じ前記1サイクル内の第2目標閾値に該当するまで、同様に位相差演算を繰返し、第2目標閾値に該当時の第2位相差演算値とその時の第2指標カウント値とを求め、最後に、第1及び第2の各位相差演算値と指標カウント値とを元に、両矩形波の同期時間を演算し、漸進時間相当だけ早いタイミングにおいて遮断器が投入開始するように指令を出力することを特徴としている。
位相差検出開始時において、発電機側と系統側の各交流波形は、僅かに異なるほぼ一定の周波数をそれぞれ有しているとみなせるので、これらを基準又は比較の各矩形波に変換した後にも同様に反映されている。よって、基準矩形波に対する比較矩形波の「進み(又は遅れ)」を「位相差」と定めると、その「進み(又は遅れ)」が反転しない限りは、該位相差は、単位時間あたりに一定角だけ比例増加又は減少する。即ち、位相差が0°(又は360°)から徐々に大きく(又は小さく)なって360°(又は0°)までに至る1サイクルの範囲内での単位時間あたりの位相差の変化量は一定とみなせる。また、基準矩形波の各単位波の1周期に相当するパルス数は、次回の周期カウント値と最初の周期カウント値との差で求められ、基準矩形波に対する比較矩形波の「進み(又は遅れ)」は、いずれか一方の周期カウント値と位相差カウント値との差で求められ、両矩形波の位相差は、前者の「差」に対する後者の「差」の比に対応させて演算できる。
従って、請求項1の発明によれば、基準矩形波の各単位波について、前記両周期カウント値と位相差カウント値とにより比較矩形波との位相差演算を繰返しながら、該位相差演算値が、所定の第1及び第2の各目標閾値に到達したか否かを判断でき、到達時の第1及び第2の各位相差演算値と指標カウント値とを検知することができる。よって、カウンタ回路の段数及び基準クロックの周波数と、第1及び第2の各指標カウント値とにより、第1及び第2の両目標閾値到達時の時間差を求め、これに第1及び第2の各位相差演算値の変化量を対応させて、単位「時間」(又は位相差)あたりの「位相差の比例増減角度」(又は時間経過の比例増分)を求めることができる。そして、両矩形波の同期時間は、上記比例値を元にして、両者の位相差が0°又は360°となるべき時間を演算することにより推定できる。このように、位相差演算値が第2目標閾値に該当したことを検知後直ちに遮断器の投入タイミングの演算を実行することができ、従来例のように、同期時間を演算する前処理として、ビート電圧波形のオフセット電圧検知のために、位相差の検出開始時間が含まれる最初の1サイクルを通過せざるを得ない制約が無くなって、前記開始時から前記投入時までの時間をより短縮することができる。
また、2つの前記基準矩形波と比較矩形波がレベル遷移する瞬間のカウント値を元に位相差演算及び同期時の時間推定演算を行うので、従来例のようにアナログ回路に依存することなく、各演算値はデジタル値のみに依存する。従って、従来例のように周囲の温度環境等の影響を受けて電圧波形の誤差より位相差の検出精度が劣化する恐れが減少して、その検出精度が向上する。また、位相差の検出精度をより高めるには、カウンター回路の基準クロックの周波数をより大きくして位相差検出の分解角度を小さくし、この周波数で、周期が大きい方の矩形波の1周期内にカウンタ回路の前記計数値が1巡しないようにカウンタ回路の段数を構成することによって、容易に可能となる。
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、前記第1目標閾値に該当する位相差と第2目標閾値に該当する位相差との変化量は、ほぼ15°であることを特徴としている。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載の発明の作用効果に加えて、発電機の交流出力を系統側に接続する場合には、両者の周波数差が僅差をなすように発電機側が制御されているので、基準及び比較の各矩形波の位相差の変化量が15°生じる間には、多数個の前記単位波が含まれる。しかも、特に発電機側は、系統側と比較するとより周波数が変化しやすいので、その影響で、基準及び比較の各矩形波の個々の単位波間の位相差の変化量は、多少増減する。よって、相隣接する前記各単位波間で増減する位相差の変化量を、多数個の各単位波に亘って演算することができるので、それらのバラツキが平均化される。しかも、位相差の変化量が15°生じるのに必要な時間は、前記1サイクルに要する時間よりも比較的短時間なので、時間経過と共に変化する外乱の影響を受ける恐れが少ない。従って、第1目標閾値に該当時と第2目標閾値に該当時との間での単位時間あたりの位相差の変化量に基づいて演算される同期点推定値の信頼性が向上する。
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、前記第2目標閾値の検知時間から起算した同期時間に至るまでの時間経過において、該第2目標閾値に該当する位相差と同期時に該当する位相差との変化量は、ほぼ45°であることを特徴としている。
請求項3の発明によれば、請求項1又は2に記載の発明の作用効果に加えて 、前記第2目標閾値の検知時間をより同期点に近づけることによって、第2指標カウント値に対応する同期時間演算の開始時間から、同期時間に至るまでに変化する外乱の影響を受ける恐れが減少する。前記第2目標閾値の位相差を同期時間のほぼ45°手前に定めることによって、系統側と発電機側との接続後の制御を見据えた各種処理を実行するのに必要最低限の時間を確保し、出来る限り同期点の直前で同期時間演算を開始できるので、同期点演算値の信頼性がより向上する。
請求項4の発明は、請求項1ないし3に記載の発明において、位相差検出開始後の最初の位相差演算値が、同期時間の位相差のほぼ60°前を超えた場合には、位相差検出開始時間を含む前記1サイクルと連続する次のサイクル内において、同期時間の演算を行うことを特徴としている。
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3の発明の作用効果に加えて、位相差検出開始時間を含む1サイクル内で同期投入しなかった場合の理由が明確になると共に、同期時推定のプログラムの処理を簡素化できる。
請求項5の発明は、請求項1ないし4に記載の発明において、前記同期時推定のプログラムでは、前記基準矩形波と比較矩形波との周波数演算を行い、所定時間毎にCPUで処理される周波数差調整のプログラムでは、前記各周波数の差が所定値より小さく、しかも所定時間以上持続する場合には、周波数差を所定範囲内でより大きく生じさせる指令を出力することを特徴としている。
請求項5の発明によれば、請求項1ないし4に記載の発明の作用効果に加えて、基準矩形波と比較矩形波との周波数差が殆ど無い場合には、同期時間に至るまでの前記1サイクルに要する時間を短縮できるので、同期タイミングまでの時間が短くなる。
本発明によれば、位相差の検出開始時から前記投入時までの時間をより短縮しながら、発電機側と系統側との両交流電圧波形の位相同期点の検出精度をより向上させることができる。
本発明に係る位相差検出方法を実行するための位相検出部Aの構成について以下に説明する。図1は、位相差検出部Aの構成を示す概略ブロック図である。Bは、電力設備の負荷に対して電力を供給する電力系統であって、商用電源1に接続されている。また、Gは発電機であり、調速機能を備えたエンジンによって駆動されることにより交流電圧を発生する。2と3は、系統Bと発電機Gとの交流波形Vb(T),Vg(T)をそれぞれ入力して、系統側の矩形波Wbと発電機側の矩形波Wgとを出力する矩形波生成回路であって、比較電圧を0ボルトとするコンパレータを用いて回路構成されている。4は、2.5Mhzの基準クロックを計数する16段構成の単調増加のカウンタ回路であって、そのパルス数Mを0から(216−1)まで計数する毎にクリアを繰返す。5と6は、前記系統側と発電機側との各矩形波Wb,Wgのそれぞれの立上り時に、カウンタ回路4にて計数されたパルス数Mを読込み、それぞれ系統側及び発電機側の各立上りカウント値Mb,Mgとして記憶する系統側及び発電機側の各レジスタである。7は、前記各矩形波Wb,Wgの立上りを検知して割込みを発生し、同期点演算のプログラムP1を実行すると共に、所定時間毎に割込みを発生し、前記各矩形波Wb,Wgの周波数差調整のプログラムP2を実行するCPUである(図4参照)。同期点演算のプログラムP1では、割込み発生時に前記各レジスタ5,6に格納されている前記各立上りカウント値Mb,Mgを読込んで、それぞれ次回の周期カウント値RWbと位相差カウント値RWgとして自身のメモリ7aに書込むと共に、後述する位相差演算を実行しながら同期点演算を行い、遮断器8に投入指令を出力する処理が実行される。なお、CPU7は、発電機Gの総合的な制御機能を有しており、系統Bの出力電圧Vb等を検知し、これらの検知結果に基づいて、発電機側の上述したエンジンの回転数の制御や、出力電圧Vgの調整装置に与える電圧指令値の制御をも行っている。
次に、上述した位相差検出部Aでの動作について図2に示すタイムチャートに従って説明する。本実施形態の位相差検出は、系統Bの側と発電機Gの側との出力電圧差ΔV及び周波数差ΔFが規定値の範囲内(出力電圧差ΔVは、系統Bの出力電圧Vbの±5%以内、周波数差ΔFは、±0.3hz以内)に到達したことをCPU7にて検知した後に実行され、図2では、系統Bの側と発電機Gの側とでそれぞれ50hzと50.3hzの各矩形波Wb,Wgが並走する場合について示している。図4は、位相差検出部A全体の動作を示す流れ図、図5乃至図9は、CPU7で実行される同期点演算のプログラムP1のより詳細なフローチャート図である。なお、各フローチャートに示される各変数には、適宜初期値が代入されている。図2に示されるとおり、時間Tsにて位相差検出の開始指令が入力され、カウンタ回路4は、この時間Tsより基準クロックの計数を開始する。該カウンタ回路4は、基準クロックのパルスが(1/2.5Mhz)秒毎に立上る毎に、パルス数Mの値を「1」づつ加算しながら、「216−1」まで計数した次に「0」に戻る計数を繰返す(ステップ4−1)。そして、前記各レジスタ5,6は、それぞれの矩形波Wb,Wgの立上りを検知する度に、その時のパルス数Mをカウンタ回路4から読込み記憶する回路である。従って、まず、レジスタ5が、矩形波Wbの最初の単位波Wb0の立上りを検知し、その時のパルス数Mを立上りカウント値Mb0として読込む(ステップ5−1)。これと並行してCPU7も同様に矩形波Wbの最初の立上りを検知し、前記立上りカウント値Mb0をレジスタ5から読込み、最初の周期カウント値RWb(0)0としてメモリ7aに記憶する(ステップ10)。次に、レジスタ6は、矩形波Wgの最初の単位波Wg1の立上りを検知して、同様に立上りカウント値Mg1として読込み(ステップ6−1)、CPU7は、該カウント値Mg1を位相差カウント値RWg1として記憶する(ステップ20)。次に、レジスタ5は、前記単位波Wb0の次に連続する単位波Wb1の立上りを検知し、その時のパルス数Mを立上りカウント値Mb1として読込み(ステップ5−1)、CPU7は、該カウント値Mb1を次回の周期カウント値RWb1として記憶する(ステップ20)。そして、CPU7のメモリ7aに前記各カウント値RWb(0)0,RWb1,RWg1が記憶された時点で、ステップ30の周波数演算の処理に移行する。発電機側の最初の単位波Wg1については、前記カウント値RWg1と対をなすべき最初の周期カウント値RWg0(0)が検知されていないので、ステップ31にて「Yes」側に分岐し、ステップ40の位相差演算の処理に移行する。
ここで、本実施形態では、系統側の矩形波Wbの位相に対する発電機側の矩形波Wgの進み角を位相差と定める。基準となる系統側の矩形波Wbの1周期分、即ち360°に相当するパルス数は、N番目の単位波の立上り時の次回の周期カウント値RWbNと、前回の立上り時の最初の周期カウント値RWb(0)N-1との「差」から求まるので、系統側の矩形波Wbの位相が1°進む間に増加する「単位パルス数」は、この「差」を「360」で割れば求められる。また、「単位パルス数」は、系統側の矩形波Wbと発電機側の矩形波Wgとの位相差が1°生じる度に増加するパルス数と同値である。よって、系統側の矩形波Wbに対する発電機側の矩形波Wgの位相の「進み角」は、矩形波Wbの次回の周期カウント値RWbからこれに対応する矩形波Wgの位相差カウント値RWgを減算した「差」を、前記単位パルス数で割れば求められる。以上を踏まえて、系統側の矩形波Wbの最初の単位波Wb0の1周期に対応する一対の前記各カウント値RWb0(0),RWb1から、該単位波Wb0の位相が1°進む間に増加する「単位パルス数」は、(1)式で演算でき、
〔RWb1−RWb0(0)〕/360 (1)
単位波Wb0と連続する次の単位波Wb1の位相に対する発電機側の単位波Wg1の進み角に相当する基準クロックのパルス数は、
RWb1−RWg1 (2)
で求められ、よって両単位波Wb1,Wg1の「位相差」Δθ1は、次式(3)で演算できる。
Δθ1=〔RWb1−RWg1〕×360/〔RWb1−RWb0(0)〕 (3)
これにより、本実施形態の最初のステップ41では、位相差演算値Δθ1=2
03.40°と求められる。
ステップ41の位相差演算の次には、該位相差演算値Δθ1が、第1目標閾値φ1か又は第2目標閾値φ2のいずれか判定すべき方の閾値を選択する(ステップ42)。単位波Wb0の検知時点では、第1目標閾値φ1に該当する位相差演算値Δθ(C1)が記憶されていない状態なので(ステップ42,Yes)、ステップ50に分岐する。ステップ50では、位相差演算値Δθ1が、第1目標閾値φ1=300°に満たないと判定されて(ステップ51,NO)ステップ53に移行する。ステップ53では、前記各単位波Wb1,Wg1の立上り時の次回の周期カウント値RWb1と位相差カウント値RWg1とを、これらと連続するそれぞれの各単位波Wb2,Wg2の立上りと対をなすべき最初の各周期カウント値RWb1(0),RWg1(0)として記憶した後に、次の前記プログラムP1の割込みが発生するまで待機する。
そして、前記各単位波Wg2,Wb2の立上り検知時に、CPU7において、それぞれの位相差カウント値RWg2と次回の周期カウント値RWb2とが書込まれ、各カウント値RWb1(0),RWb2,RWg1(0),RWg2が揃った時点で、ステップ30での2度目の周波数演算の処理に移行する。このステップ30は、後述する周波数調整のプログラムP2において読込むべき前記各矩形波の周波数FWb,FWgを演算するための工程であって、以下、この処理を中心に説明する。まず、ステップ31では、最初の周期カウント値RWg1(0)が新に書き込まれたことにより、「NO」側に分岐し、ステップ32にて各単位波Wb1,Wg1の周波数FWb1,FWg1演算が行われる。ここで、カウンタ回路4は、2.5Mhzの基準クロックのパルス数Mを計数する回路であるが、この基準クロックの周波数F0(=2.5Mhz)は、系統Bにおいて想定される最高値の周波数(=65hz)に対して、0.01°の分解能を有するに十分なように設定されている(65×360×100=2.34Mhz<2.5Mhz)。そして、各単位波Wb1,Wg1の周波数演算値FWb1,FWg1(hz)は、各単位波Wb1,Wg1の1周期に相当する前記各カウント値の差分Db〔=RWb2−RWb1(0)〕,Dg〔=RWg2−RWg1(0)〕を元に、(4),(5)式から演算できる。
FWb1=F0/〔RWb2−RWb1(0)〕 (4)
FWg1=F0/〔RWg2−RWg1(0)〕 (5)
ステップ32にて各単位波Wb1,Wg1の周波数演算値FWb1,FWg1をメモリ7aに記憶した後にステップ40の位相差演算の処理に移行する。
ここで、図3は、これまでにCPU7が読込む各レジスタ5,6の立上りカウント値Mb,Mgと、CPU7がメモリ7aに書込む最初の各周期カウント値RWb(0),RWg(0)と、次回の周期カウント値RWb、位相差検出値RWgの関係について示したタイムチャート図である。単位波Wb1の1周期Tb1、即ち前記各差分Dbに相当するパルス数は、「50000」(基準クロックの周波数F0/系統の周波数Fb=2.5×103/50)が基準値となっており、カウンタ回路4の計数値が1巡する周期T0に相当するパルス数、即ち「216」よりも小さい。よって、前記カウント値RWb2は、CPU7において、最上位ビットを超えた桁から桁借りして演算することによって、RWb'2と同値とみたてて減算を行うことができ、この結果、差分Dbを演算するために、カウンタ回路4の計数値の1巡以上を要することがない。系統B側の矩形波Wbよりも周波数が大きい(周期が短い)発電機G側の差分Dgについても同様である。また、商用電源1として、系統Bでの最低値の周波数を45hzと想定した場合にも、「系統の周期/基準クロックの周期=2.5×103/45=52000」であって、カウンタ回路4の計数値の1巡以内で差分が演算でき、16段のカウンタ回路4を使用して、周波数演算が可能に構成されている。
そして、順次連続する各単位波についても同様の処理を繰返し、図2において、系統側の単位波Wbnに対する発電機側の単位波Wgnの位相差演算時(ステップ41)において、Δθn=300.60°が求まり、この位相差演算値Δθnは、ステップ51の第1目標閾値φ1=300°を超えるので「YES」側に分岐し、位相差演算値Δθn及びこの時の位相差カウント値RWgnを、第1位相差演算値Δθ(C1)及び第1指標カウント値RC1として記憶する(ステップ52)。ステップ53にて、次回の周期カウント値RWbnと位相差カウント値RWgnとを最初の各周期カウント値RWbn(0),RWgn(0)として書換え、次の両単位波の立上り時にも同様に位相差演算を行うが、ステップ42では「NO」側に分岐し、ステップ60に移行する。ステップ60では、まず、最初の周期カウント値RWgn(0)(=Mgn)に対する位相差カウント値RWgn+1(=Mgn+1)のオーバーフローを判定し、位相差カウント値RWgn+1<最初の周期カウント値RWgn(0)なので(ステップ61,YES)、この間にパルス数Mが1度「0」にクリアされたとみなされ、これをオーバーフロー回数Jとして記憶する(ステップ62)。これは、後述する同期点演算のための処理である。そして、位相差演算値Δθn+1は、第2目標閾値φ2=315°に満たないので(ステップ63,NO)、順次同様に連続する各単位波について位相差演算を繰返す。本実施形態では、系統側の単位波Wbn+7の立上り検知時において、発電機側の単位波Wgn+7に対する位相差演算値Δθn+7が、前記第2目標閾値φ2を超えて大きくなるのでステップ63で「YES」側に分岐し、位相差演算値Δθn+7及びこの時の位相差カウント値RWgn+7(=Mgn+7)を、第2位相差演算値Δθ(C2)及び第2指標カウント値RC2として記憶する(ステップ65)。次に、ステップ70に移行して同期時間を推定する演算を行う。
ステップ70では、まず、第1位相差演算値Δθ(C1)の検知時間Tc1から第2位相差演算値Δθ(C2)の検知時間Tc2の間の「単位時間あたりの位相差の比例増加角度」Kθを演算する。ここで、前記第1検知時間Tc1から第2検知時間Tc2に至るまでに要する時間差ΔTは、基準クロックの周波数F0(=2.5Mhz)、第1及び第2の各指標カウント値RC1,RC2、ステップ62で書込まれたオーバーフロー回数J(実施形態では「5」)とより(6)式で演算できる。
ΔT={(J×216)−RC1+RC2}/F0 (6)
従って、時間差ΔT内での「単位時間あたりの位相差の比例増加角度」Kθは、(7)式で容易に演算でき(ステップ71)、
Kθ={Δθ(C2)−Δθ(C1)}/ΔT (7)
この比例増加角度Kθは、第2位相差演算値Δθ(C2)の検知時間Tc2から同期時間Tsynに至るまでの「単位時間あたりの位相差の比例増加角度」と等しいとみなせるので、この間に要する時間差をΔTxとすると、時間差ΔTxは、(8)式で演算でき、
ΔTx={360−Δθ(C2)}/Kθ (8)
同期時間Tsynは、次式(9)で演算できる(ステップ72)。
Tsyn=Tc2+ΔTx (9)
更に、遮断器の漸進時間Tαを差引いた投入タイミングTe〔=Tsyn−Tα〕を演算し(ステップ73)、このタイミングTeにおいて遮断器投入が開始するように、CPU7から遮断器に投入命令を出力する(ステップ74)。
このように、第2目標閾値φ2に該当すると判断できた時間Tc2直後には、遮断器8の投入タイミングTeを求める演算を実行し、位相差が反転する同期時間Tsynを超えて次のサイクルC2に突入する前に、即ち位相差の検出を開始した時間Tsと同一サイクルC1内の投入タイミングTeにて、遮断器8を投入開始できる。従来例と比較すると、最初の1サイクルC1での第1極小点Q1を通過せざるを得ない制約が無くなって、位相差の検出開始時間Tsから前記投入時までの時間を短縮することができる(図13参照)。また、2つの基準矩形波及び比較矩形波の立上り時の前記各カウント値、即ちカウンタ回路4が計数する基準クロックのパルス数Mを元に、位相差の演算及び同期点の推定等の各種演算を行うので、各演算値はデジタル値のみに依存する。従って、従来例のようにアナログ回路特有の不安定要素が無くなり、その検出精度が向上する。
また、第1目標閾値φ1及び第2目標閾値φ2は、それぞれ300°と315°とであって、それぞれ同期時間Tsynの位相差Δθ=360°との変化量は、60°と45°となる。上述したとおり、実施形態では、基準及び比較の各矩形波Wb,Wgの位相差の変化量が15°生じる時間差ΔTの間には、7〜8個の前記単位波が含まれるので、隣接する個々の単位波間で増減する恐れを有する位相差の変化量を、7〜8個の単位波に亘って平均的に演算することができる。更に、第2目標閾値φ2は、同期時間Tsynの位相差より約45°手前であって、前記時間差ΔTxは、同期時間Tsynの演算を実行して投入タイミングTeの指令を出力しながら、系統Bと発電機Gとの接続後の制御を見据えた各種処理を実行するのに最低限必要な時間に該当する。このように、出来る限りの同期点の直前での同期時間演算を実行することにより、同期点推定(同期時間Tsyn)の信頼性が更に向上する。なお、本実施形態では、両矩形波Wb,Wgの周波数差ΔFが0.3hzの場合について説明したが、実際にはこれよりも小さな数値を目標に制御を行っており、上述した時間差ΔTの間の単位波の個数等については適宜変化する。
そして、図10は、周波数差調整のプログラムP2に係るフローチャート図である。2ms毎に割込みを発生する周波数差調整のプログラムP2では、まず、前記ステップ30で演算された系統側及び発電機側の各周波数FWb,FWgを読込み(ステップ110)、周波数差ΔFを演算する(ステップ120)。次に、該周波数差ΔFが0.05hzより大きいか否か判定し、大きい場合には(ステップ130−1,YES)、次の割込みまで待機する。小さい場合には(ステップ130−1,NO)、周波数差ΔFが0.05hzよりも小さい状態の持続時間を演算するために、まずステップ130−1を連続して「NO」側に分岐した回数Iを計数し(ステップ130−2)、次に該連続分岐回数Iを元に、割込み処理間隔=2(ms)より継続時間TΔF(s)を演算する(ステップ130−3)。次に、継続時間TΔFが3秒を超えたか否か判定し、超えない場合には(ステップ130−4,NO)、次の割込みまで待機し、超えた場合には(ステップ130−4,YES)、周波数差ΔFが所定の範囲内で、しかも0.05hzよりも大きく生じるように発電機Gを制御すべく別処理を実行する(ステップ130−5)。これにより、基準矩形波Wbと比較矩形波Wgとの周波数差ΔFが0.05hzよりも小さい場合の同期時間に至るまでの前記1サイクルに要する時間を短縮して、検出開始の時間から、同期タイミングまでの時間を短縮できる。なお、上記した演算に係る各変数は、処理に応じて適宜リセットされる。
なお、上述した実施形態では、各矩形波生成回路2,3は、比較電圧を0ボルトとするコンパレータを使用する場合について示したが、必ずしも「0ボルト」を基準にして回路を組む必要は無い。正弦波から変換される矩形波の周波数がそのまま維持されれば問題無く、比較電圧が「0」以外の一定電圧値であったり、ヒステリシスを有していても良い。また、耐ノイズ性向上のため、矩形波生成回路2,3の各コンパレータにそれぞれの正弦波を入力する前に、同じ値のフィルタ回路を挿入しても構わない。この場合には、両正弦波の実際の位相に対応する変換後の矩形波の位相がずれる(遅れる)ので、このずれ位相に対応する時間Td分を前記同期時間演算のステップ73にて補正する必要がある(Te=Tsyn−Tα−Td)。また、CPUへのパルス数の読込みは、記憶手段であるハードウェア(レジスタ5,6)を介して行う方法について記載したが、CPU7のソフトウェア(前記プログラムP1)を介して、カウンタ回路4から直接にCPUに読込んで記憶する方法でも構わない(図11にこの場合の位相差検出部A’の構成を示す)。この場合には、立上りを検知する瞬間とカウンタ値を取込む瞬間との間に時間差が生じるので、上述したのと同様にステップ73にて補正すれば問題無い。また、最初の前記両周期カウント値RWb(0),RWg(0)は、CPU7のメモリ7aに記憶する方法について説明したが、レジスタ5,6に相当するハードウェアで記憶しても構わない。前記両周期カウント値RWb(0),RWg(0)を、次回の周期カウント値RWbと位相差カウント値RWgとの検知時点で読み出せれば良い。
本実施形態では、第1目標閾値φ1及び第2目標閾値φ2は、それぞれ300°と315°とであって、それぞれの同期時の位相差360°との変化量は、60°と45°の場合について示したが、本発明はこれらに限定されない。また、位相差を演算する場合には、系統側の矩形波Wbの立上りに対する発電機側の矩形波Wgの「進み角」を位相差と定めて演算したが、これが「遅れ角」であっても構わない。より具体的には、本実施形態で説明した(2)式を(RWg−RWb)とし、この式を元に位相差を演算しても構わない。この場合には、同期時の位相差、第1及び第2の各目標閾値は、0°、60°、45°とになる。また、発電機側の矩形波Wgを基準波に定め、この1周期を360°として同期時間を演算することも可能である。更に、各矩形波の「立上り」の検知に基づいて位相差演算を実行する方法について示したが、「立下り」であっても同様に位相差演算を実行でき、両矩形波Wb,Wgの「立上り及び立下り」に相当する半周期毎に位相差演算を行う方法も可能である。
そして、位相差の検出精度をより高めるには、カウンタ回路の基準クロックの周波数をより大きくして位相差検出の分解角度を小さくし、この周波数で、周期が大きい方の矩形波の1周期に相当するパルス数が、カウンタ回路が計数可能な最大パルス数を超えないようにカウンタ回路の段数を構成すれば、容易に可能となる。系統側又は発電機側として想定し得る周波数の最高値を65hz、分解角度Zとすれば、基準クロックの周波数F0は(10)式を満たし、
F0>65×360×(1/Z) (10)
2進カウンタの段数Dは、周期が大きい方の矩形波の周波数を45hzとすると、(11)式を満たすDが求まれば良い。
2D>F0/45 (11)
また、上記した実施形態では、前記検出開始の時間Ts直後での最初の位相差演算値Δθ1が203°の場合について説明したが、仮にΔθ1が300°よりも大きく、同期時間の位相差360°との差が60よりも小さい場合には、検出開始の時間Tsを含む最初の1サイクルC1での同期投入を実行しない方法も実施可能である。そして、次のサイクルC2での同期投入を実行すべく、実施形態と同様に位相差の検出に係る各処理が実行される。図12に、この場合の処理例を示す。図示されるとおり、検出開始の時間Ts以降に、第1目標閾値φ1に満たない位相差Δθが演算された場合には(ステップ51,NO)、これを示すフラグをONするステップを追加する(ステップ54)。これにより、前記検出開始の時間Ts直後での最初の位相差演算値Δθ1が第1目標閾値φ1を超えた場合には(ステップ51,YES)、このフラグのNO,OFFを判定するステップ55にて「NO」側に分岐させ、前記第1位相演算値Δθ(C1)をメモリに書込まない。よって、最初の前記サイクルC1での投入タイミングTeの演算のステップ70に分岐させずに、次のサイクルC2に突入後に、ステップ54にて前記フラグをONして、遮断器を投入する処理に分岐可能となる。上述した処理を付加することによって、位相差検出開始時間を含む1サイクル内で同期投入しない不具合が生じた時には、その原因を絞り込むことが容易となる。