まず、実施例にかかる3相整流器1について図1を用いて説明する。図1は、3相整流器1の構成を示す図である。
3相整流器1は、3相交流電源PSから入力端子IT-r~IT-tを介して入力される3相交流電力を直流電力に変換して出力端子OT-p、OT-nから負荷LDに出力する。3相交流電力は、例えば、R相の交流電力、S相の交流電力、及びT相の交流電力を含む。
具体的には、3相整流器1は、3相リアクトル8、入力コンデンサ9、全波整流回路4、双方向スイッチ回路3、直流リアクトル2、コンデンサ10、及び制御部11を備える。
3相リアクトル8は、入力端子IT-r~IT-tと双方向スイッチ回路3との間に接続されている。入力コンデンサ9は、入力端子IT-r~IT-tと双方向スイッチ回路3との間に接続されている。
全波整流回路4は、双方向スイッチ回路3と出力端子OT-p、OT-nとの間に接続されている。全波整流回路4は、例えば、ブリッジ接続された6つのダイオードを有し、6つのダイオードを用いて、双方向スイッチ回路3を介して供給された3相交流電力を全波整流して直流電力を生成する。
双方向スイッチ回路3は、入力端子IT-r~IT-t側と全波整流回路4の各相の入力ノードとの接続をON/OFFする。すなわち、双方向スイッチ回路3は、3相交流電源PSから全波整流回路4への各相の交流電力の供給をON/OFFする複数のスイッチング素子SW-r,SW-s,SW-tを有する。
直流リアクトル2は、全波整流回路4と出力端子OT-pとの間に接続されている。直流リアクトル2は、例えば、全波整流回路4と出力端子OT-pとの間のPラインに直列に挿入されている。
コンデンサ10は、全波整流回路4と出力端子OT-p、OT-nとの間に接続されている。コンデンサ10は、例えば、一端の電極10pが全波整流回路4と出力端子OT-pとの間のPラインに接続され、他端の電極10nが全波整流回路4と出力端子OT-nとの間のNラインとに接続されている。
制御部11は、3相交流電源PSから入力される3相交流電力に対応した各相の電圧に基づいて、双方向スイッチ回路3をスイッチング制御する。
具体的には、制御部11は、スイッチングパターン発生器5、及び駆動回路6を有する。スイッチングパターン発生器5は、各相(例えば、R相、S相、T相)の電圧に基づいて、双方向スイッチ回路3のスイッチングパターンを生成する。駆動回路6は、スイッチングパターン発生器5で生成されたスイッチングパターンに基づいて、双方向スイッチ回路3のスイッチング素子SW-r,SW-s,SW-tをそれぞれスイッチング制御する。このとき、スイッチングパターン発生器5は、3相交流電力における各相の電圧の大小関係に応じて相電圧の1周期が区分された6つの区間I~VIに応じて、双方向スイッチ回路3のスイッチングパターンを生成する(図6~図8参照)。
次に、6つの区間I~VIについて図5を用いて説明する。図5は、6つの区間I~VIを示す図である。
制御部11は、各相(R相、S相、T相)の交流電圧の大小関係に応じて、例えば図5に示すような6つの区間I~VIを認識する。
区間Iでは、R相が最大電圧相であり、S相が最小電圧相であり、T相が中間電圧相である。例えば、制御部11は、R相が最大電圧相であり、S相が最小電圧相であり、T相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードが区間Iであると認識する。
区間IIでは、R相が最大電圧相であり、T相が最小電圧相であり、S相が中間電圧相である。例えば、制御部11は、R相が最大電圧相であり、T相が最小電圧相であり、S相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードが区間IIであると認識する。
区間IIIでは、S相が最大電圧相であり、T相が最小電圧相であり、R相が中間電圧相である。例えば、制御部11は、S相が最大電圧相であり、T相が最小電圧相であり、R相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードが区間IIIであると認識する。
区間IVでは、S相が最大電圧相であり、R相が最小電圧相であり、T相が中間電圧相である。例えば、制御部11は、S相が最大電圧相であり、R相が最小電圧相であり、T相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードが区間IVであると認識する。
区間Vでは、T相が最大電圧相であり、R相が最小電圧相であり、S相が中間電圧相である。例えば、制御部11は、T相が最大電圧相であり、R相が最小電圧相であり、S相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードが区間Vであると認識する。
区間VIでは、T相が最大電圧相であり、S相が最小電圧相であり、R相が中間電圧相である。例えば、制御部11は、T相が最大電圧相であり、S相が最小電圧相であり、R相が中間電圧相であることを認識した場合、現在のモードが区間VIであると認識する。
次に、スイッチングパターン発生器5の構成例について図2~図4を用いて説明する。図2は、図1のスイッチングパターン発生器5の一例を示すブロック図である。図3は、スイッチングパターン発生器5の相電圧判別器52の構成例を示す図である。図4は、スイッチングパターン発生器5のパターン信号発生器51の構成例を示す回路図である。
スイッチングパターン発生器5は、現在の区間が6つの区間I~VIのいずれであるかに応じて、例えば図6~図8に示すようなスイッチングパターン(R,S,T相パルス)を生成する。スイッチングパターン発生器5は、スイッチング周期の立ち上がり等の所定のタイミングで3相交流電源PSからの3相交流電力のどの相が中間電位相かを検出し、検出結果に応じて発生させた変調波形と鋸歯状波によってスイッチングパターンのON/OFFのタイミングを得て、スイッチングパターンを生成する。
例えば、スイッチングパターン発生器5は、図2に示すように、キャリア発生部5b及びスイッチングパターン発生部5aを有する。キャリア発生部5bは、キャリア用クロックに同期して、キャリアを発生する。スイッチングパターン発生部5aは、発生されたキャリアを用いて、双方向スイッチ回路3のスイッチングパターンを発生する。
キャリア発生部5bは、直流電圧設定器53及び鋸歯状波発生器54を有する。スイッチングパターン発生部5aは、パターン信号発生器51、相電圧判別器52、コンパレータ55-1~55-3、NOT回路56-1,56-2、OR回路57-1,57-2、NOT回路58-1,58-2、AND回路59-1,59-2、AND回路60R、60T、OR回路60S、NAND回路61R~61T、AND回路62R~62T、OR回路63R~63T、及びAND回路64を有する。
パターン信号発生器51は、全区間I~VIでの区間電圧のパルス順序を規則的にするため、入力相電圧のピーク値を「1」に規格化したR相電圧規格化信号a、S相電圧規格化信号b、T相電圧規格化信号cを演算して、変調波形1、変調波形2A、変調波形2B、変調波形3を出力する。
直流電圧設定器53は、鋸歯状波発生器54に、直流電圧設定ゲインk(但し、k≦1)を設定する。鋸歯状波発生器54は、鋸歯状波1および鋸歯状波2を出力する。相電圧判別器52は、入力されるR相電圧規格化信号a、S相電圧規格化信号b、およびT相電圧規格化信号cの電位を比較し、R相中間、S相中間、T相中間を判別して、中間判定信号(中間の場合「1」、中間でない場合「0」)をそれぞれ出力する。具体的には、S相中間の場合、変調波形1、3を出力し、鋸歯状波1、2を出力する(図6参照)。T相中間の場合、変調波形1、2Aを出力し、鋸歯状波1を出力する(図7参照)。R相中間の場合、変調波形3、2Bを出力し、鋸歯状波2を出力する(図8参照)。このように、スイッチングパターン発生器5では、中間相がどの相かに応じてスイッチングパターンの生成方法を変える。これにより、全モードで同一の相のスイッチングパターンに同一の規則性を持たせる。
コンパレータ55-1で変調波形1と鋸歯状波1とが比較された比較信号と、R相中間信号をNOT回路58-1でNOT演算された出力とが、AND回路60RでAND演算され、R相非中間時パルスとして出力される。
コンパレータ55-3で変調波形3と鋸歯状波2とが比較された比較信号と、T相中間信号をNOT回路58-2でNOT演算された出力とが、AND回路60TでAND演算され、T相非中間時パルスとして出力される。
コンパレータ55-2Aで変調波形2Aと鋸歯状波1を比較された比較信号と、コンパレータ55-1の比較信号をNOT回路56-1でNOT演算された出力とが、OR回路57-1でOR演算される。コンパレータ55-2Bで変調波形2Bと鋸歯状波2を比較した比較信号と、コンパレータ55-3の比較出力をNOT回路56-2でNOT演算した出力とが、OR回路57-2でOR演算される。
OR回路57-1のOR演算した出力とT相中間信号とをAND回路59-1でAND演算した出力と、OR回路57-2のOR演算した出力とR相中間信号とをAND回路59-2でAND演算した出力とが、OR回路60SでOR演算され、S相非中間時パルスが出力される。
NAND回路61RでS相非中間時パルスとT相非中間時パルスとをNAND演算した出力と、R相中間信号とが、AND回路62RでAND演算され、R相中間時パルスが出力される。
NAND回路61SでR相非中間時パルスとT相非中間時パルスがNAND演算された出力と、S相中間信号とが、AND回路62SでAND演算され、S相中間時パルスとして出力される。
NAND回路61TでR相非中間時パルスとS相非中間時パルスがNAND演算された出力と、T相中間信号とが、AND回路62TでAND演算され、T相中間時パルスとして出力される。
コンパレータ65では、鋸歯状波1と「0」入力が比較され、比較信号が0電圧挿入ロック信号として出力される。
OR回路63RでR相非中間時パルスとR相中間時パルスとがOR演算された出力と、0電圧挿入信号とが、AND回路64でAND演算され、R相パルスとして出力される。これにより、R相パルスに、双方向スイッチをOFFするスイッチングパターン(各区間I~VIにおける区間4)が導入される。
OR回路63Tでは、T相非中間時パルスとT相中間時パルスがOR演算され、T相パルスとして出力される。かかるT相パルスは、OR回路63Tの出力が、0電圧挿入信号期間時に「0」であるため、0電圧挿入信号との演算は行わない。
OR回路63Sでは、S相非中間時パルスとS相中間時パルスがOR演算され、S相パルスが出力される。R相パルスとT相パルスが、0電圧挿入信号期間時に「0」となり、S相パルスがONでも直流電圧は発生しない。T相のスイッチング回数を増加させないことを目的に、0電圧挿入信号との演算を行わないことにしている。
鋸歯状波発生器54は、直流電圧設定器53の直流電圧設定ゲインkに基づき、周期Tとした時、(時間軸kT、ゲイン軸0)と(時間軸0、ゲイン軸1)を結ぶ直線で鋸歯状波1を出力する。また、鋸歯状波発生器54は、直流電圧設定ゲインkに基づき、(時間軸0、ゲイン軸0)と(時間軸kT、ゲイン軸1)を結ぶ直線で鋸歯状波2を出力する。
相電圧判別器52は、図3に示すように、コンパレータ70R、70S、70Tと、AND回路71R、71S、71Tと、AND回路72R、72S、72Tと、NOR回路73R、73S、73Tとを備えている。
コンパレータ70Rは、R相電圧規格化信号aとS相電圧規格化信号bとを比較して、比較信号(R相電圧規格化信号a>S相電圧規格化信号bの場合に「1」、R相電圧規格化信号a≦S相電圧規格化信号bの場合に「0」)をAND回路71R、72S、71T、72Tに出力する。コンパレータ70Sは、S相電圧規格化信号bとT相電圧規格化信号cとを比較して、比較信号(S相電圧規格化信号b>T相電圧規格化信号cの場合に「1」、S相電圧規格化信号b≦T相電圧規格化信号cの場合に「0」)をAND回路71R、72R、71S、72Tに出力する。コンパレータ70Tは、T相電圧規格化信号cとR相電圧規格化信号aとを比較して、比較信号(T相電圧規格化信号c>R相電圧規格化信号aの場合に「1」、T相電圧規格化信号c≦R相電圧規格化信号aの場合に「0」)をAND回路72R、71S、72S、71Tに出力する。
AND回路71Rは、コンパレータ70Rの比較信号とコンパレータ70Sの比較信号とのAND演算結果を出力する。AND回路72Rは、コンパレータ70Sの比較信号とコンパレータ70Tの比較信号とのAND演算結果を出力する。AND回路71Sは、コンパレータ70Sの比較信号とコンパレータ70Tの比較信号とのAND演算結果を出力する。AND回路72Sは、コンパレータ70Tの比較信号とコンパレータ70Rの比較信号とのAND演算結果を出力する。AND回路71Tは、コンパレータ70Tの比較信号とコンパレータ70Rの比較信号とのAND演算結果を出力する。AND回路72Tは、コンパレータ70Rの比較信号とコンパレータ70Sの比較信号とのAND演算結果を出力する。
NOR回路73Rは、AND回路71Rの出力とAND回路72Rの出力とのNOR演算結果(中間の場合「1」、中間でない場合「0」)をR相中間信号として出力する。NOR回路73Sは、AND回路71Sの出力とAND回路72Sの出力とのNOR演算結果(中間の場合「1」、中間でない場合「0」)をS相中間信号として出力する。NOR回路73Tは、AND回路71Tの出力とAND回路72Tの出力とのNOR演算結果(中間の場合「1」、中間でない場合「0」)をT相中間信号として出力する。
各変調波形を形成するパターン信号発生器51は、図4に示すように、絶対値回路80R、80S、80Tと、3入力加算器81-1,81-2とを備えている。絶対値回路80Rは、R相電圧規格化信号aの絶対値|a|を演算し、変調波形1を出力する。絶対値回路80Sは、S相電圧規格化信号bの絶対値|b|を演算して出力する。絶対値回路80Tは、T相電圧規格化信号cの絶対値|c|を演算して変調波形3を出力する。
3入力加算器81-1は、変調波形1と、絶対値回路80Sの出力と、定数-1とを加算して、変調波形2Aを出力する。3入力加算器81-2は、変調波長3と、絶対値回路80Sの出力と、定数-1とを加算して、変調波形2Bを出力する。
次に、スイッチングパターン発生器5の各区間I~VIにおける動作について図6~図8を用いて説明する。
図6~図8を参照して、各区間I~VIでのスイッチング動作による直流電圧・各相の電流を説明する。区間Iと区間IVでは共にT相が中間相となり、区間IIと区間Vでは共にS相が中間相となり、区間IIIと区間VIでは共にR相が中間相となるので、以下、区間I、II、IIIについて説明する。図6は、区間II、Vにおける、変調波形と、鋸歯状波と、R,S,T相パルスの一例を示す図である。図7は、区間I、IVにおける、変調波形と、鋸歯状波と、R,S,T相パルスの一例を示す図である。図8は、区間III、VIにおける、変調波形と、鋸歯状波と、R,S,T相パルスの一例を示す図である。
図6~図8に示すように、全区間I~VIにおいて、R相パルスは、OFF→ON→OFF、S相パルスは、ON→OFF→ON、T相パルスは、ON→OFFとなっており、全区間I~VIで同一の相は、ONとOFFの変化が規則的である同一の規則性のあるパターンとなっている。また、全区間I~VIでR相パルスには、0電圧挿入信号が挿入される期間(区間4)が設けられており、この0電圧挿入信号が挿入された期間は、R相パルスに双方向スイッチ回路をOFFするスイッチングパターンが挿入される。したがって、区間4では、3相のうち2相(R相とT相)がOFFするので、全相で電流が流れないことになる。
(1)区間II
まず、直流電圧について説明する。図6において、区間1、2、3、4の直流電圧は、それぞれST間電圧=b-c、RT間電圧=a-c、RS間電圧=a-b、整流器出力短絡電圧=0となる。次に、各相パルスについて説明する。区間IIでは、R相が最大相、T相が最小相、S相が中間相となる。最大相と最小相では、パルスはそれぞれの電位に比例する時間ONとなる。したがって、R相のパルス幅x=kT|a|、T相のパルス幅z=kT|c|となる。ここで、R相パルスがONとなるタイミング(区間2+区間3)は、R相電圧|a|と鋸歯状波1との交点から求められる。また、R相パルスがOFFとなるタイミング(区間1+区間4)は、鋸歯状波1とゲイン軸0との交点から求められる。これにより、R相パルスが得られる。一方、T相パルスがOFFとなるタイミング(区間3+区間4)は、T相電圧|c|と鋸歯状波2との交点から求められる。これにより、T相パルスが得られる。中間相パルスは、最大相又は最小相のパルスのどちらかがOFFのときにONする。したがって、S相パルスは、R相電圧|a|と鋸歯状波1との交点、およびT相電圧|c|と鋸歯状波2との交点から求められる。また、区間1、2、3、4の幅は、それぞれkT×(1-|a|)、kT×(|a|+|c|-1)、kT×(1-|c|)、T×(1-k)となる。スイッチング周期Tの直流電圧の平均は、それぞれの区間ごとに直流電圧を積算しそれぞれを加算してスイッチング周期Tで除して、以下のように表すことができる。スイッチング周期Tの直流電圧の平均={(b-c)×kT×(1-a)+(a-c)×kT×(a-c-1)+(a-b)×kT×(1+c)+0×T×(1-k)}/T
=k{a2+c2-b(a+c)}
ここで、a+b+c=0(3相条件)を考慮すると、
=k(a2+b2+c2)
さらに、交流理論から、a2+b2+c2=3/2より、
=k×3/2
このように、kに比例する一定電圧となる。
つぎに、入力電流について説明する。R相の入力電流は、R相電圧aの時間に比例する正の電流が流れる。T相の入力電流は、T相の電圧の大きさ|c|に比例する負の電流が流れる。S相の入力電流は、区間1で正の電流が流れ、区間3で負の電流が流れる。したがって、流れる電流は、kT×(1-a)-kT×(1+c)-kT(-a-c)=kTbとなり、スイッチング周期Tのうち、0電圧挿入信号が挿入される区間4を除いた期間kTで除すると、S相電圧bとなる。したがって、R相、S相、T相には、R相電圧a、S相電圧b、T相電圧cに比例する電流が流れることになり、正弦波電流となる。
(2)区間I
図7において、区間1、2、3、4の直流電圧は、それぞれST間電圧=c-b、RT間電圧=a-c、RS間電圧=a-b、整流器出力短絡電圧=0となる。次に各相のパルスについて説明する。区間Iでは、R相が最大相、S相が最小相、T相が中間相となる。R,S,T相のパルスのON、OFF順序を変えずに、最大相と最小相でそれぞれの電位に比例する時間ONとするため、区間Iでは、変調波形1,2Aと鋸波状波1を用いて、図7に示す各パルスのON,OFFタイミングを得る。また、区間1、2、3、4の幅は、それぞれkT×(1-|a|)、kT(1-|b|)、kT×(|a|-|b|-1)、T×(1-k)となる。スイッチング周期Tの直流電圧の平均は、以下のように表すことができる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均={(c-b)×kT×(1-a)+(a-c)×kT×(b+1)+(a-b)×kT×(a-b-1)+0×kT×(1-k)}/T
=k{a2+b2-c(a+b)}
ここで、a+b+c=0(3相条件)を考慮すると、
=k(a2+b2+c2)
さらに、交流理論から、a2+b2+c2=3/2より、
=k×3/2
このように、kに比例する一定電圧となる。
つぎに、入力電流について説明する。区間IIの場合と同様に、最大相のR相には、R相電圧aの時間に比例する正の電流が流れる。最小相のS相には、S相電圧bの時間に比例する負の電流が流れる。T相は、区間1で負の電流が流れ、区間2で正の電流が流れる。このため、流れる電流は、kT×(1-a)-kT×(1+b)=kTcとなり、kTで除するとcとなる。従って、電圧に比例する電流が、各相に流れ、正弦波電流となる。
(3)区間III
図8において、区間1、2、3、4の直流電圧は、それぞれST間電圧=b-c、RT間電圧=a-c、RS間電圧=b-a、整流器出力短絡電圧=0となる。次に、各相のパルスについて説明する。区間IIIでは、S相が最大相、T相が最小相、R相が中間相となる。区間Iと同じく、R,S,T相のパルスのON,OFF順序を変えずに、最大相と最小相でそれぞれの電位に比例する時間をONとするため、区間IIIでは、変調波形3、2Bと鋸歯状波2を用いて、図8に示す各相パルスのON,OFFタイミングを得る。また、区間1、2、3、4の幅は、それぞれ、kT×(|b|+|c|-1)、kT×(1-|b|)、kT×(1-|c|)、T×(1-k)となる。スイッチング周期Tの直流電圧の平均は、以下のように表すことができる。
スイッチング周期Tの直流電圧の平均={(b-c)×kT×(-c+b-1)+(a-c)×kT×(-b+1)+(b-a)×kT×(1+c)+0×kT×(1-k)}/T
=k{b2+c2-a(b+c)}
ここで、a+b+c=0(3相条件)を考慮すると、
=k(a2+b2+c2)
さらに、交流理論から、a2+b2+c2=3/2より、
=k×3/2
このように、kに比例する一定電圧となる。
つぎに、入力電流について説明する。区間IIIでは、S相が最大相で、T相が最小相なので、S相はS相電圧bの時間に比例する正の電流が流れ、T相は、T相電圧cの時間に比例する負の電流が流れる。R相は区間2で負の電流が流れ、区間3で正の電流が流れる。このため、流れる電流は、kT×(1-b)-kT×(1+c)=kTaとなり、RTで除するとaとなる。従って、電圧に比例する電流が、各相に流れ、正弦波電流となる。
このように、スイッチングパターン発生器5では、相電圧の1周期を6つの区間I~VIに区分し、各区間I~VIごとにスイッチング制御の内容を切り換えている。そのため、仮に、スイッチング制御に用いるキャリアの周期と6つの区間I~VIの各周期とが非同期になると、入力側の相電圧の波形が歪む可能性がある。
すなわち、スイッチングパターン発生器5では、R、S、T相の相電圧を1に規格化し、キャリア信号と比較を行い、パルス信号を生成する。そのパルスは、R、S、T相の大小関係の判定に従って演算され、駆動回路6で駆動信号を生成し、双方向スイッチ回路3のスイッチング素子SW-r,SW-s,SW-tを駆動する。これにより、直流電圧を一定にできるとともに入力電流を正弦波にできる。
このとき、R、S、T相の相電圧は、系統のノイズのために、一般的に歪があり、3相交流電源PSからの3相交流電力をそのまま使用すると、理論通りの成果を得ることが困難である。従って、スイッチング制御に用いる各相の相電圧は、波形の歪みがない理想的な正弦波が望ましい。
また、変調は、図5の各区間I~VIの初めと終わりは、キャリア波形の初めと終わりに一致させておく必要がある。そうでない場合、すなわちキャリアの周期の途中のタイミングで次のキャリアが始まる場合、理想的なパルス信号を得ることが困難になり、理論通りの波形を得ることが困難になる。
すなわち、6つの区間I~VIの各周期と非同期のキャリアを使用すると、入力電流波形、直流電圧波形は歪む傾向にある。
そこで、本実施例では、制御部11が、スイッチング制御に用いるキャリアの周期と6つの区間I~VIの各周期とを同期させるような制御を行う。
具体的には、制御部11は、図1に示すように、ゼロクロス検出部12、PLL回路13、及び推定部14をさらに有する。
ゼロクロス検出部12は、3相交流電力における相電圧のゼロクロスのタイミングを検出する。例えば、図1に示す場合、ゼロクロス検出部12は、R相の電圧がゼロクロスするタイミングを検出する。例えば、ゼロクロス検出部12は、コンパレータを有し、相電圧の極性の反転をコンパレータ等で検出することにより、相電圧のゼロクロスのタイミングを検出する。ゼロクロス検出部12は、検出結果をPLL回路13へ出力する。以下では、この検出結果を、相電圧のゼロクロス信号と呼ぶことにする。すなわち、相電圧のゼロクロス信号は、例えば、相電圧が立ち上がり方向にゼロクロスするタイミングを示す信号であり、例えば、相電圧の周波数を有するパルス状の信号である。
なお、ゼロクロス検出部12は、相電圧のゼロクロスのタイミングを検出する代わりに、線間電圧のゼロクロスのタイミングを検出してもよい。例えば、図示しないが、ゼロクロス検出部12は、R相及びS相の線間電圧がゼロクロスするタイミングを検出してもよい。この場合、ゼロクロス検出部12は、検出結果として線間電圧のゼロクロス信号を生成する。線間電圧のゼロクロス信号は、例えば、線間電圧が立ち上がり方向にゼロクロスするタイミングを示す信号であり、例えば、相電圧の周波数を有するパルス状の信号である。このとき、ゼロクロス検出部12は、線間電圧のゼロクロス信号が相電圧のゼロクロス信号に比べて略30°進み位相となることを考慮し、生成された線間電圧のゼロクロス信号を略30°で位相遅延させ、位相遅延された信号を線間電圧のゼロクロス信号に応じた信号としてPLL回路13へ出力する。すなわち、ゼロクロス検出部12は、生成された線間電圧のゼロクロス信号に応じて、相電圧のゼロクロス信号に相当する信号を生成してPLL回路13へ出力する。
PLL回路13は、ゼロクロス信号を、3相交流電源PSからの3相交流電力に対応した基準信号として受ける。PLL回路13は、3相交流電力に対応した基準信号(例えば、ゼロクロス信号)に応じて相電圧の周波数を把握する。例えば、ゼロクロス信号は相電圧の周波数を有するので、PLL回路13は、ゼロクロス信号の周波数から相電圧の周波数を把握することができる。PLL回路13は、把握された相電圧の周波数に6の整数倍をかけた周波数を有するキャリア用クロックを発生させる。PLL回路13は、発生されたキャリア用クロックをキャリア発生部5b(図2参照)へ出力する。これにより、キャリア発生部5bは、相電圧の周波数に6の整数倍をかけた周波数を有するキャリア用クロックに同期して、キャリアを発生する。
例えば、6つの区間I~VIの各周期は相電圧の1周期を6等分したものであるので、キャリア用クロックの周波数を相電圧の周波数に6の整数倍をかけたものにすることで、6つの区間I~VIの各周期が、キャリア用クロックに同期して発生されるキャリアの周期(スイッチング周期T)の整数倍になるようにすることができる。これにより、6つの区間I~VIのそれぞれに整数個のキャリア波形が収まるようにすることができる(図11参照)。すなわち、キャリアの周期(スイッチング周期T)と6つの区間I~VIの各周期とを同期させることができる。
また、PLL回路13は、3相交流電力に対応した基準信号(例えば、ゼロクロス信号)に応じて、6つの区間I~VIの各周期に均等な周期を有する区間周期クロックを発生させる。すなわち、PLL回路13は、キャリア用クロックを複数分周してキャリア周期クロックを生成し、キャリア周期クロックを複数分周して区間周期クロックを生成する。PLL回路13は、発生されたキャリア周期クロック、区間周期クロック、及びキャリア周期クロックから区間周期クロックまでの途中段階における分周クロック(以下、途中分周クロックとする)を推定部14へ出力する。なお、途中分周クロックは、キャリア周期クロックを繰り返し2分周して区間周期クロックを生成する際における複数の段階における分周クロックを含んでもよい。
さらに、PLL回路13は、区間周期クロックを2分周して、第1の分周クロック(図12参照)を生成する。PLL回路13は、第1の分周クロックを2分周して、第2の分周クロック(図12参照)を生成する。PLL回路13は、第2の分周クロックを2分周した第3の分周クロック(追従信号とも呼ぶ、図12参照)を生成する。
推定部14は、キャリア周期クロック、途中分周クロック、区間周期クロック、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックをPLL回路13から受ける。推定部14は、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックの組み合わせに応じて、現在の区間が6つの区間I~VIのいずれであるかを推定する(図12参照)。さらに、推定部14は、キャリア周期クロック、途中分周クロック、及び区間周期クロックの組み合わせに応じて、現在のタイミングが現在の区間におけるどの時間位置(すなわち、図5の横軸における位置)にあるのかを推定する。そして、推定部14は、推定結果に応じて、各相の電圧を図5に示すように推定して、推定された各相の電圧(例えば、R相電圧a、S相電圧b、T相電圧c)をスイッチングパターン発生器5へ出力する。
具体的には、推定部14は、ROM14a及び制御信号生成器14b(図9参照)を有する。ROM14aには、ピーク値が「1」に規格化された正弦波における時間位置データと規格化振幅とが対応付けられた正弦波データ(例えば、テーブルデータ)が格納されている。制御信号生成器14bは、上記のように、現在の区間I~VI及び現在の区間I~VIにおける時間位置を推定している。
例えば、制御信号生成器14bは、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックの各ビット値をまとめて現在の区間を示す第1のデータを生成する。制御信号生成器14bは、キャリア用クロック、途中分周クロック、及び区間周期クロックの各ビット値をまとめて現在のタイミングを示す第2のデータを生成する。制御信号生成器14bは、第1のデータ及び第2のデータをまとめて、時間位置データを生成する。そして、制御信号生成器14bは、ROM14aに格納された正弦波データを参照し、生成された時間位置データに対応する各相の規格化振幅を特定し、特定された各相の規格化振幅を各相の電圧の推定結果とする。これにより、3相交流電源PSからの3相交流電力における各相の相電圧をそのまま使用する場合に比べて、波形の歪みがない理想的な正弦波に近い各相(R相、S相、T相)の相電圧を得ることができる。
このように、スイッチング制御に使用する各相の相電圧は、R、S、T相の検出された相電圧を使用する代わりに、R、S、T相の相電圧のいずれかのゼロクロス信号、および位相から、理想的な正弦波をROM14aに格納したデータより得る事で、理想的な正弦波に近いものとして得ることができる。
また、キャリアの初めと終わりとをゼロクロス信号に同期させる機能が必要である。直流分が残らないためには、正弦波波形の正側のキャリア数と負側のキャリア数とを同じにするため、キャリア用クロックの周波数は、相電圧の周波数に対して2の倍数をかけたものとすることが必要である。次に、120°づつ遅れてくる他の2相と対称にするためには、相電圧の周波数に対して3の倍数をかけたものである必要がある。このように、各区間I~VIの周期に収まるキャリアの数を一定にすることが必要である。
仮に、キャリア用クロックが一定の周波数を有するクロックである場合、キャリア用クロックに同期して発生されるキャリアも一定の周波数を有するものとなる。この場合、3相交流電源PSからの3相交流電力の周波数が変動したときに、その変動に追従することが困難であり、結果として、スイッチング制御に用いるキャリアの周期と6つの区間I~VIの各周期とが非同期になりやすい。
それに対して、本実施例では、PLL回路13が、3相交流電源PSからの3相交流電力に対応した基準信号(例えば、ゼロクロス信号)の位相と、キャリア用クロックに対応して内部的に生成した追従信号とを同期させる。例えば、PLL回路13において、分周段を6の倍数にし、ゼロクロス信号に同期させるように構成する。これにより、3相交流電源PSからの3相交流電力の周波数が変動したときに、その変動に追従することができる。すなわち、入力波形の変動に対して対応でき、入力波形の周期に応じて追従できる。
次に、PLL回路13内の構成について図9を用いて説明する。図9は、PLL回路13の構成を示す図である。
PLL回路13は、発振部13a、第1の分周部13b、第2の分周部13c、位相比較部13d、及び生成部13eを有する。
発振部13aは、基準信号(例えば、ゼロクロス信号)に応じた周波数で発振して、キャリア用クロックを生成する。発振部13aは、生成したキャリア用クロックを、第1の分周部13bに出力するとともに、キャリア発生部5bの鋸歯状波発生器54へ出力する。
これにより、図10に示すように、キャリア発生部5bの鋸歯状波発生器54において、ダウンカウンタ54aは、キャリア用クロックに同期して、初期値からカウント値をディクリメントしていき、キャリーオーバーが発生した時点でカウント値を初期値に戻すようなカウント動作を行う。ダウンカウンタ54aは、キャリア用クロックに同期して、このようなカウント動作を繰り返すことで、図11に示すような鋸歯状波1を生成する。すなわち、鋸歯状波1の周期をダウンカウンタ54aのカウント値の上限に対応した一定の値(すなわち、図11に示すスイッチング周期T)にすることができる。
同様に、キャリア発生部5bの鋸歯状波発生器54において、アップカウンタ54bは、キャリア用クロックに同期して、初期値からカウント値をインクリメントしていき、キャリーオーバーが発生した時点でカウント値を初期値に戻すようなカウント動作を行う。アップカウンタ54bは、キャリア用クロックに同期して、このようなカウント動作を繰り返すことで、図11に示すような鋸歯状波2を生成する。すなわち、鋸歯状波2の周期をアップカウンタ54bのカウント値の上限に対応した一定の値(すなわち、図11に示すスイッチング周期T)にすることができる。
図9に示す第1の分周部13bは、Mを正の整数とするとき、キャリア用クロックをM(例えば、M=2N、Nは正の整数)分周して、6つの区間I~VIに対応した(例えば、6つの区間I~VIのそれぞれの周期と均等な周期を有する)区間周期クロックを生成する。例えば、第1の分周部13bは、分周器13b1及び分周器13b2を有する。
例えば、P,Qを正の整数とし、N=P+Qとするとき、分周器13b1は、キャリア用クロックを2P分周して、キャリアの周期(すなわち、図11に示すスイッチング周期T)に対応した(例えば、キャリアの周期と均等な周期を有する)キャリア周期クロックを生成する。分周器13b2は、キャリア周期クロックを2Q分周して、6つの区間I~VIに対応した(例えば、6つの区間I~VIのそれぞれの周期と均等な周期を有する)区間周期クロックを生成する。
すなわち、整数Pは、ダウンカウンタ54a(図10参照)におけるディクリメント回数及びアップカウンタ54b(図10参照)におけるインクリメント回数に対応したものである。整数Qは、6つの区間I~VIのそれぞれに収まるキャリアの数(図11参照)に対応したものである。
第1の分周部13bの分周器13b2は、生成された区間周期クロックを第2の分周部13cへ出力する。それとともに、第1の分周部13bの分周器13b2は、キャリア周期クロック、途中分周クロック、及び区間周期クロックを推定部14の制御信号生成器14bへ出力する。途中分周クロックは、キャリア周期クロックを繰り返し2分周して区間周期クロックを生成する際における複数の段階における分周クロックを含んでもよい。例えば、R,SをQより小さい正の整数とするとき、途中分周クロックは、キャリア周期クロックを2QーR分周した分周クロックと、キャリア周期クロックを2QーS分周した分周クロックとを含んでいてもよい。
第2の分周部13cは、区間周期クロックを6分周して、3相交流電源PSからの3相交流電力の周期に対応した(例えば、3相交流電力の周期と均等な周期を有する)追従信号を生成する。例えば、第2の分周部13cは、6分周器13c1を有する。6分周器13c1は、区間周期クロックを6分周して、追従信号を生成する。例えば、6つの区間I~VIの各周期は相電圧の1周期を6等分したものであるので、区間周期クロックを6分周することで、追従信号の周期を、相交流電源PSからの3相交流電力における相電圧の周期に対応したものとすることができる。
例えば、図12に示すように、6分周器13c1は、区間周期クロックを2分周した第1の分周クロックと、第1の分周クロックを2分周した第2の分周クロックと、第2の分周クロックを2分周した第3の分周クロック(追従信号)とを生成する。
例えば、図9に示す6分周器13c1は、区間周期クロックを分周器13b2から受ける。6分周器13c1は、区間周期クロックを2分周して、第1の分周クロックを発生させる。6分周器13c1は、発生させた第1の分周クロックをさらに2分周して、第2の分周クロックを発生させる。6分周器13c1は、発生させた第2の分周クロックをさらに2分周して、第3の分周クロックを発生させる。このとき、6分周器13c1は、第2の分周クロックの立ち上がりタイミングなどにより、区間VIから区間Iに戻るタイミングtcを認識できる。すなわち、6分周器13c1は、図12に示すタイミングtcにおいて、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックの各レベルをリセットする。例えば、タイミングtcにおいて、図12に示す破線のレベルを実線のレベルにリセットする。これにより、第3の分周クロックの周期が区間周期クロックの6クロック分となるので、第3の分周クロックを、区間周期クロックが6分周された追従信号とすることができる。
第2の分周部13cの6分周器13c1は、生成された第3の分周クロック(追従信号)を位相比較部13dへ出力する。それとともに、第2の分周部13cの6分周器13c1は、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロック(追従信号)を推定部14の制御信号生成器14bへ出力する。
推定部14の制御信号生成器14bは、キャリア周期クロック、途中分周クロック、及び区間周期クロックを第1の分周部13bの分周器13b2から受け、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロック(追従信号)を第2の分周部13cの6分周器13c1から受ける。制御信号生成器14bは、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックの組み合わせに応じて、現在の区間が6つの区間I~VIのいずれであるかを推定する。さらに、制御信号生成器14bは、キャリア周期クロック、途中分周クロック、及び区間周期クロックの組み合わせに応じて、現在のタイミングが現在の区間におけるどの時間位置(すなわち、図5の横軸における位置)にあるのかを推定する。そして、制御信号生成器14bは、推定結果に応じて、各相の電圧を図5に示すように推定する。
例えば、制御信号生成器14bは、第1の分周クロック、第2の分周クロック、及び第3の分周クロックの各ビット値をまとめて現在の区間を示す第1のデータを生成する。制御信号生成器14bは、キャリア用クロック、途中分周クロック、及び区間周期クロックの各ビット値をまとめて現在のタイミングを示す第2のデータを生成する。制御信号生成器14bは、第1のデータ及び第2のデータをまとめて、時間位置データを生成する。そして、制御信号生成器14bは、ROM14aに格納された正弦波データを参照し、生成された時間位置データに対応する各相の規格化振幅を特定し、特定された各相の規格化振幅を各相の電圧の推定結果とする。
位相比較部13dは、基準信号(例えば、ゼロクロス信号)をゼロクロス検出部12から受け、追従信号を第2の分周部13cから受ける。位相比較部13dは、基準信号の位相と追従信号の位相とを比較し、比較結果に応じた位相誤差信号を生成する。位相比較部13dは、例えば、位相差検出器13d1を有する。位相差検出器13d1は、基準信号の位相と追従信号の位相との位相差を検出し、検出された位相差に応じて位相誤差信号を生成する。位相比較部13dは、生成された位相誤差信号を生成部13eへ出力する。
生成部13eは、位相誤差信号を位相比較部13dから受ける。生成部13eは、位相誤差信号に応じて、発振制御信号を生成する。例えば、生成部13eは、追従信号が基準信号に比べて進み位相であることが位相誤差信号により示される場合、キャリア用クロックの周波数が高くなるように発振制御信号を生成する。例えば、生成部13eは、追従信号が基準信号に比べて遅れ位相であることが位相誤差信号により示される場合、キャリア用クロックの周波数が低くなるように発振制御信号を生成する。例えば、生成部13eは、フィルタ13e1を有する。フィルタ13e1は、例えば、位相誤差信号にローパスフィルタ処理を施すことで、発振制御信号を生成する。生成部13eは、生成された発振制御信号を発振部13aへ出力する。
これにより、発振部13aは、発振制御信号に基づいて、基準信号に対応した周波数で発振する。例えば、発振部13aは、発振器13a1及び分周器13a2を有する。発振器13a1は、発振制御信号に対応した周波数で発振して、内部クロックを生成する。発振器13a1は、生成された内部クロックを分周器13a2へ出力する。分周器13a2は、内部クロックを分周して(例えば、2分周して)キャリア用クロックを生成する。
PLL回路13では、位相差検出器13d1、フィルタ13e1、発振器13a1、分周器13a2、分周器13b1、分周器13b2、及び6分周器13c1を含む位相同期ループが形成されており、基準信号の位相と追従信号の位相とが一致するようにフィードバック制御される。すなわち、3相交流電源PSからの3相交流電力に対応した基準信号(ゼロクロス信号)の位相と、キャリア用クロックに対応してPLL回路13が内部的に生成した追従信号とを同期させる。これにより、3相交流電源PSからの3相交流電力の周波数が変動したときにも、その変動に追従することができる。すなわち、入力波形の変動に対して対応でき、入力波形の周期に応じて追従できる。
これに応じて、PLL回路13は、相電圧の周波数に6の整数倍をかけた周波数を有するキャリア用クロックを発生させる。すなわち、PLL回路13を構成することで、波形の歪みが小さい正弦波の相電圧を用いながら、スイッチング制御に用いるキャリアの周期と6つの区間I~VIの各周期とを同期させることができる(図11参照)。
ただし、3相整流器1の入力電圧が一時的に変動するなどして入力電圧にノイズが含まれる場合に、直ぐに追従信号の位相を基準信号に同期させてしまうと、入力電圧の変動解消後も位相のズレが収まらない場合があった。すなわち、短時間で入力電圧の変動が解消する短時間停電や電圧ディップがノイズの場合は、このノイズによる位相のズレを解消するために追従信号が入力電圧の変動に過度に影響されてしまい、入力電圧の変動解消後も位相のズレが収まらず、入力電流に高調波が含まれてしまう。入力電流に高調波が含まれると、3相整流器1の出力電圧が変動する。
そこで、3相整流器1の入力電圧が一時的に変動した場合にも、位相のズレを抑制して出力電圧の変動を抑えるため、過去に検出されたゼロクロス信号を用いて、新たに検出されたゼロクロス信号を補正して基準信号を生成する補正部を備えたPLL回路23について説明する。
図13は、移動平均を用いて基準信号を生成するPLL回路23を示す図である。図13に示すPLL回路23は、図9に示したPLL回路13と比較して、位相差検出器13d1に接続される移動平均器23a(補正部)をさらに有する。移動平均器23aは、例えば、検出された(過去に生成された)ゼロクロス信号を記憶する記憶部(不図示)を有しており、nを2以上の正の整数として、直近に生成されたn個のゼロクロス信号の周期基準の移動平均をとり、新たに検出されたゼロクロス信号を、ゼロクロス信号の移動平均に基づき補正し、この補正されたゼロクロス信号を基準信号として出力する。ここで、ゼロクロス信号の周期基準の移動平均とは、ゼロクロス検出部12が検出した直近のn個のゼロクロス点の時間間隔(ゼロクロスの周期)に基づき算出される、ゼロクロス信号の移動平均のことである。例えば、ゼロクロス検出部12が出力したゼロクロス信号の波形(後述する図14(a)のExsyc_1)において、立ち上がりエッジから次の立ち上がりエッジまでの1周期としたとき、直近までの連続するn周期分のゼロクロス信号の波形を移動平均し、移動平均後の波形を補正後の基準信号(後述する図14(b)のExsyc_2)として位相差検出器13d1に出力する。nは、例えば100である。
図14は、PLL回路23の効果を示すための試験例を示す図である。図14(a)は移動平均器23aを含めない場合を示し、図14(a)に示すExsyc_1は、実際に外部(ゼロクロス検出部12)から入力された50Hzのゼロクロス信号(基準信号)であり、ノイズや半波ロストを含む。図14(b)は移動平均器23a(補正部)を含めた場合を示し、図14(b)に示すExsyc_2は、移動平均器23aによって上述の手順で補正されたゼロクロス信号を示している。すなわち、Exsyc_2は、100個のゼロクロス信号の移動平均から求められた補正後のゼロクロス信号(基準信号)である。図から分かるように、Exsyc_2は、Exsyc_1のイレギュラーなノイズや波形ロストが平均されることにより、その影響が取り除かれている。図14(c)に示すInsycは、Exsyc_2と比較される初期状態で55Hzの内部信号(追従信号)である。
試験装置は、Exsyc(Exsyc_1、Exsyc_2)の立上がりエッジと同時にInsycを立上がりエッジでスタートさせる。試験装置は、2回目のInsycの立上がりエッジのときにExsycとエクスクルーシブオア(EXor)を取り、結果が「1」の場合はInsycを低いタイマーへ移行させ、結果が「0」の場合はInsycを高いタイマーへ移行させる。試験装置は、3回目以降のInsycの立上がりエッジのときも同様の動作を行う。
図15は、試験結果を示す図である。図15(a)は、移動平均器23aを含めない場合を示し、図15(b)は、移動平均器23aを含めた場合を示す。図15(a)及び(b)において、入力電圧は3相整流器1の入力電圧であり、入力電流は3相整流器1の入力電流であり、出力電圧は3相整流器1の出力電圧である。図15(a)、図15(b)ともに、時刻0秒からの約12ミリ秒(入力電圧の半周期分の時間)の間だけ、入力電圧に電圧ディップが起きた場合の試験結果が示されている。
図15(a)に示すように、移動平均器23aを含めない場合には、入力電圧がノイズを含まない状態に復帰した時刻0.012秒から、入力電流及び出力電圧が300ミリ秒以上の時間で発信、変動する。一方、図15(b)に示すように、移動平均器23aを含めた場合には、入力電圧がノイズを含まない状態に復帰した時刻0.012秒から、入力電流の振動は抑えられ、20ミリ秒以内で入力電流及び出力電圧は正常に復帰する。
このように、PLL回路23は、過去に検出されたゼロクロス信号を用いて、新たに検出されたゼロクロス信号を補正して基準信号を生成することで、ゼロクロス信号にノイズや半波ロストが含まれる場合にも、同期外れしにくく、ノイズや半波ロストの影響を緩和できる。また、同期がずれた場合に初回同期のため再計算するよう設定されている場合でも、再計算なしで追従を継続させやすくすることができる。
なお、PLL回路は、移動平均をとる代わりに、ゼロクロス信号の検知範囲を制限してもよい。図16は、ゼロクロス信号の検知範囲を制限するPLL回路24の構成を示す図である。図16に示すように、PLL回路24は、PLL回路23と比較して、移動平均器23a(補正部)の代わりに検知窓制限器23b(補正部)を有する。
検知窓制限器23bは、例えば、前回のゼロクロス信号のタイミング(時刻)に、同期中の入力電圧の1周期分の時間(ゼロクロス信号の時間間隔)を加えた時刻の、前後15ミリ秒の範囲を計測可能幅とし、この計測可能幅以外ではゼロクロス信号を計測しない。ここで、15ミリ秒は、55Hzの場合、位相基準で約30度の位相幅である。これにより入力電圧が周波数換算で凡そ45~65Hzの範囲のゼロクロス信号を検出し、それ以外の範囲のゼロクロス信号を検出しないよう検知範囲を制限することができる。このように、PLL回路24は、ゼロクロス信号の検知範囲を制限することによって、誤信号の混入を防止することができる。
また、PLL回路は、移動平均器23a(補正部)と検知窓制限器23b(補正部)の両方を備えてもよい。図17は、移動平均器23aと検知窓制限器23bの両方を備えるPLL回路25の構成を示す図である。図17に示すように、PLL回路25は、移動平均器23aと検知窓制限器23bの両方を備える。検知窓制限器23bは移動平均器23aに接続され、移動平均器23aは位相差検出器13d1に接続される。
検知窓制限器23bは、ゼロクロス信号が入力され、検知窓の範囲が制限された信号を出力する。移動平均器23aは、検知窓制限器23bの出力を入力とし、基準信号を出力する。このように、PLL回路25は、検知窓制限器23bにより、位相基準で同期タイミングの約±30度以外のノイズを抑制し、移動平均器23aにより、位相基準で同期タイミングの約±30度以内のノイズと半波ロストを抑制することができる。
また、PLL回路は、移動平均の計算に用いるゼロクロス信号の数を可変にしてもよい。図18は、例えば初回同期までと初回同期後とで、移動平均の計算に用いるゼロクロス信号の数を変えるPLL回路26の構成を示す図である。図17に示すように、PLL回路26は、PLL回路25と比較して、移動平均器23aの代わりに移動平均器23cを有し、位相差検出器13d1の代わりに位相差検出器13d2を有し、判定器23dをさらに有する。
位相差検出器13d2は、位相差検出器13d1と同様の機能を有し、さらに、初回の同期完了を判定器23dに通知する。判定器23dは、位相差検出器13d2から初回の同期完了を通知されるまでは初回同期前と判定し、位相差検出器13d2から初回の同期完了を通知されると初回同期後と判定する。そして、判定器23dは、初回同期前と判定すると、移動平均器23cに少ない数(第1の数)での移動平均を指示し、初回同期後と判定すると、移動平均器23cに多い数(第2の数)での移動平均を指示する。ここで、少ない数とは、例えば10であり、多い数とは、例えば100である。
移動平均器23cは、判定器23dにより少ない数での移動平均を指示されると、直近の少ない数のゼロクロス信号の周期基準の移動平均をとり、移動平均をとったタイミングを基準信号として位相差検出器13d2に出力する。一方、移動平均器23cは、判定器23dにより多い数での移動平均を指示されると、直近の多い数のゼロクロス信号の周期基準の移動平均をとり、移動平均をとったタイミングを基準信号として位相差検出器13d2に出力する。
このように、PLL回路26は、初回同期までは移動平均の算出に用いるゼロクロス信号の数を少なくする(第1の数とする)ことで追従性(変動した基準信号に追従信号が早く同期すること)をよくし、初回同期後は移動平均の算出に用いるゼロクロス信号の数を多くする(第2の数とする)ことでノイズ除去の性能を上げ、安定性(基準信号の変動に追従信号が影響されにくいこと)をよくすることができる。
また、ゼロクロス信号にノイズや半波ロストが含まれているか否かを判定する判定手段(不図示)を設け、PLL回路は、ゼロクロス信号にノイズや半波ロストが含まれていると判定手段が判定した場合に、ゼロクロス信号を補正するようにしてもよい。あるいは、PLL回路は、3相整流器1の立上げ時など所定の条件下では、ゼロクロス信号の補正を行わなくてもよい。
以上のように、実施例では、移動平均器23c(補正部)は、直近のn個のゼロクロス信号の周期基準の移動平均をとり、移動平均をとったタイミングを基準信号として位相差検出器13d1に出力する。したがって、移動平均器23cは、3相整流器1への入力電圧が一時的に変動した場合にも位相のズレを防止し、ノイズや半波ロストの影響を緩和できる。さらに、入力電流の振動を抑え、3相整流器1の出力電圧の変動を抑えることができる。
また、実施例では、検知窓制限器23bは、ゼロクロス信号の検知範囲を制限することによって、誤信号の混入を防止することができる。
また、実施例では、判定器23dは、位相差検出器13d2からの初回の同期完了の通知に基づいて、移動平均器23c(補正部)が移動平均の算出に用いるゼロクロス信号の数の変更を指示する。したがって、PLL回路26は、初回同期までは追従性をよくし、初回同期後はノイズ除去の性能を上げ、安定性をよくすることができる。
なお、制御部11において、ゼロクロス検出部12が、3相交流電力における2つ以上の相電圧のゼロクロスのタイミングを検出してもよい。
あるいは、制御部11において、ゼロクロス検出部12は、3相交流電力における線間電圧のゼロクロスのタイミングを検出し、検出された線間電圧のゼロクロスのタイミングを示すゼロクロス信号を生成して位相遅延させてもよい。この場合、PLL回路は、生成されたゼロクロス信号に対応した信号(例えば、ゼロクロス信号が位相遅延された信号)を受ける。この場合にも、PLL回路は、ゼロクロス信号に基づいて、相電圧の周波数を把握できるので、相電圧の周波数に6の整数倍をかけた周波数を有するキャリア用クロックを発生させることができる。