JP4165280B2 - 圧縮機 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は斜板型圧縮機のような圧縮機に係り、特に、空調装置において冷媒を圧縮する圧縮機に適した潤滑システムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
空調装置の冷凍サイクルにおいては、冷媒圧縮機の摺動部分を潤滑するために冷媒に冷凍機油のようなオイルを混入させておくと共に、蒸発器から戻ってくる冷媒が摺動部分を通過するように構成して、戻り冷媒に含まれているオイルによって摺動部分を潤滑するのが普通である。このような構成の圧縮機においては、運転を停止している間にオイルが重力によって流下して圧縮機の底部に溜まるために、潤滑の必要な摺動部分ではオイルが欠乏した状態になると共に、冷凍サイクルの低部の配管には、冷却されて液状となった冷媒が溜まった状態になる。このような状態において圧縮機の運転が再開されると、最初の数秒間という短い期間ではあるが、オイルが欠乏した状態の摺動部分を更に液状の戻り冷媒が洗浄することになって、摺動部分の潤滑状態が悪化するという問題がある。
【0003】
この問題の対策として、従来は、圧縮機における冷媒の入口部分に空間としてのオイル溜まりを形成して、運転中にその中にオイルを溜めることにより、起動時にこのオイルによって潤滑を助けるようにしている。しかしながら、このようなオイル溜まりを設けても、冷凍サイクルに通常の量だけオイルを封入した場合にはオイル溜まりに溜まるオイルの量が少ないので、起動時のオイル不足の問題を解消することができない。そこで、冷凍サイクルに封入するオイルの量を増加させる必要が生じるため、コストの上昇や圧縮機の体格が大きくなるという別の問題を招くことになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来技術における前述のような問題に鑑み、新規な手段によってその問題を解消することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、この課題を解決するための手段として、特許請求の範囲の請求項1に記載された圧縮機を提供する。
【0006】
本発明の圧縮機は、被圧縮流体に混入されて循環する潤滑オイルの一部を運転中に被圧縮流体の一部が溶存している状態で貯留するために、作動室へ吸入される被圧縮流体及び潤滑オイルの吸入側の流れの経路から外れた位置に、先の閉じた空間として形成されたオイル溜め室と、オイル溜め室を周辺の他の部分よりも急速に冷却するための冷却手段と、このオイル溜め室と吸入側の経路とを連通する通路とを備えている点に特徴がある。
【0007】
従って、圧縮機の運転中に、被圧縮流体に混入して圧縮機の内部を流れる潤滑オイルの一部が分離し、吸入側の流れの経路から外れて先の閉じた空間として形成されているオイル溜め室内に貯留される。オイル溜め室は何らかの冷却手段によって周辺の他の部分よりも強く冷却されるので、オイル溜め室内に容易に潤滑オイルが貯留されるだけでなく、オイル溜め室内に貯留された潤滑オイルには可及的に多量の飽和状態における被圧縮流体が溶存している。
【0008】
この状態で圧縮機が停止し、且つ再起動されると、吸入側の流れの経路には作動室への被圧縮流体の吸入による負圧が作用するから、この経路に連通しているオイル溜め室も負圧となる。そのために、オイル溜め室に貯留されていた潤滑オイルから、それに溶存していた被圧縮流体が急激に蒸発し、潤滑オイルがフォーミング(発泡)状態となって体積が急増するため、フォーミング状態の潤滑オイルは膨張しながら通路を通って吸入側の流れの経路へ押し出される。このフォーミング状態の潤滑オイルが再起動直後の潤滑に役立つので、定常運転の状態になるまでに圧縮機の摺動部分等が潤滑不良となるのを防止することができる。
【0009】
本発明では、オイル溜め室の冷却手段として、オイル溜め室が外気と接触する外壁をハウジングの他の部位よりも薄肉にする。それによって冷却手段の構成がきわめて簡単になり、オイル溜め室が潤滑オイルを貯留する時に、貯留された潤滑オイルが外気によって直ちに冷却される。いずれにしても、オイル溜め室に冷却手段を設けることによって、オイル溜め室に貯留される潤滑オイルに溶存する被圧縮流体の量が増加し、再起動時にフォーミング状態となる潤滑オイルと冷媒の体積が大きくなり、吸入側の流れの経路へ押し出される潤滑オイルの量が増大する。
【0010】
本発明の圧縮機の好適な用途の一つとして冷媒圧縮機を挙げることができる。また、本発明の圧縮機の好適な形式の一つとしては斜板型圧縮機を挙げることができる。本発明が斜板型の冷媒圧縮機に適用された場合に、斜板を収容している斜板室を吸入側の流れの経路の一部とすることができ、斜板室が常時通路を介してオイル溜め室と連通しているように構成することが望ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に、添付の図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。図示実施例は本発明を斜板型の冷媒圧縮機に適用した場合を示している。図1及び図2に示すように、斜板型の冷媒圧縮機1は中心部に駆動のためのシャフト2を備えている。シャフト2はその端部に設けられた電磁クラッチ3と、その外周部に形成されたプーリ4と、それに巻き掛けられる図示しないベルト等を介して自動車の内燃機関等によって回転駆動される。このシャフト2を中心として、フロントハウジング5、フロントバルブプレート6、フロントシリンダ7、リヤシリンダ8、リヤバルブプレート9、リヤハウジング10等を順に軸方向に重ね合わせて、ボルト11等によって相互に一体的に結合することにより圧縮機1の外殻部分が構成される。
【0012】
シャフト2がフロントハウジング5を貫通する部分にはシャフトシール12が設けられる。フロントシリンダ7がシャフト2を軸支する部分にはラジアルベアリング13が設けられ、リヤシリンダ8がシャフト2を軸支する部分にはラジアルベアリング14が設けられる。15は概ね円板状の斜板であって、シャフト2と一体的に回転するように結合されており、軸方向のボス部の前後面はフロントシリンダ7及びリヤシリンダ8によって支持されるスラストベアリング16及び17によって軸方向に軸支されている。
【0013】
フロントシリンダ7及びリヤシリンダ8の対向位置には、図2に示すように、それぞれ5個のシリンダボア18及び19がシャフト2の周囲に均等配置で形成されている。勿論、シリンダボア18及び19の数はそれぞれ4個或いは6個のように5個以外の数であってもよい。対になって対向しているシリンダボア18及び19に跨って、それぞれ双頭のピストン20が軸方向に摺動可能に挿入される。ピストン20はそれぞれ長手方向(軸方向)の中央の切り欠き部分に相互に対向する半球形の窪みを有し、それらの窪みに挿入された一対の半球形のシュー21を介して斜板15の周縁部を挟むように摺動可能に接触することにより、斜板15が回転した時に軸方向に往復運動を受ける。斜板15に対してシュー21が摩擦接触した状態で摺動するので、この摺動部分の潤滑が問題になる。
【0014】
フロントシリンダ7とリヤシリンダ8の内部にはシリンダボア18及び19の他に空間として斜板室22が形成される。斜板室22の形状は斜板15の回転と共に5個のピストン20が往復運動をすることによって変化を繰り返すが、斜板室22は概ね一定の容積を有するものとして常に斜板15の周りに形成される。斜板室22は圧縮機1によって圧縮される冷媒(一般的には被圧縮流体)の入口側通路の一部となっているので、冷媒に予め冷凍機油のような潤滑オイルを混合して冷凍サイクルに封入しておくことにより、潤滑オイルを含む戻り冷媒が斜板室22を通過する時に、オイルの一部が冷媒から分離して斜板15とシュー21との摺動接触部分や、シリンダボア18及び19とピストン20との間の摺動部分、或いはベアリング13,14,16,17等を潤滑する。
【0015】
フロントハウジング5の後端面とフロントシリンダ7の前端面との間に挟み込まれたフロントバルブプレート6と、リヤシリンダ8の後端面とリヤハウジング10との間に挟み込まれたリヤバルブプレート9は概ね対称的な形状を有する。また、フロントハウジング5とリヤハウジング10の構造も概ね対称的である。そこで、代表としてリヤバルブプレート9とリヤハウジング10の組立体を取り上げて説明するが、フロントハウジング5とフロントバルブプレート6の組立体についても概ね同様なことが言える。
【0016】
リヤハウジング10の周縁部寄りの一部には空間として吸入室23が形成されると共に、それとの間に隔壁を挟んで他の部分には吐出室24が形成される。吸入室23とシリンダボア19とを連通させ得るようにリヤバルブプレート9に形成された吸入ポート25には、シリンダボア19側の面に吸入弁としてサクションリード26が設けられる。これに対して、吐出室24とシリンダボア19とを連通させ得るようにリヤバルブプレート9に形成された吐出ポート27には、吐出室24の側に吐出弁としてディスチャージリード28が設けられる。フロント側のバルブプレート6でも同様な構造となっている。
【0017】
前後の吸入室は相互に、また、前後の吐出室も相互に、それぞれ軸方向の通路によって連通している。これらの連通通路はフロントハウジング5とリヤシリンダ8を貫通して連続するように形成される。図示実施例において、リヤ側の吸入室23と図示しないフロント側の吸入室とを接続する連通通路29は、図2に示すように3本ある。それら3本の連通通路29は軸方向の中間部分においていずれも斜板室22に開放されている。従って、吸入室23によって代表される前後の吸入室は、いずれも斜板室22に連通している。前後の吐出室もまた軸方向の通路によって相互に連通している。図示実施例では、リヤ側の吐出室24とフロント側の吐出室30との間を連通させる軸方向の連通通路31は太いが、ハウジングの上部に1本だけ設けられている。
【0018】
この圧縮機1は空調装置に適用され、その冷凍サイクルの一部を構成する冷媒圧縮機として使用されるので、圧縮機1には図3に示すような冷凍サイクルの残余の部分が接続される。図3において、32は凝縮器であって、圧縮機1によって圧縮された冷媒がこの凝縮器32において外気等によって冷却されて凝縮、液化する。33は気液分離器であって、凝縮器32によって液化した冷媒を液化しない冷媒から分離する。34は膨張弁である。液化した冷媒は膨張弁34を通過することによって減圧され、蒸発器35の中で膨張して気化する。その際に、蒸発器35を通過する室内空気等を冷却して冷房作用をする。
【0019】
図3に示す冷凍サイクルの蒸発器35の出口は圧縮機1の斜板室22に接続されている。従って、蒸発器35において冷房作用をした後の圧縮機1への戻り冷媒がまず斜板室22へ流入し、3本の連通通路29を経て前後の吸入室23へ供給される。戻り冷媒が斜板室22を通過するので、戻り冷媒に含まれている冷凍機油のような潤滑オイルが斜板室22内にある潤滑を必要とする部分に供給されて潤滑作用をする。潤滑を必要とする部分とは、斜板15とシュー21との摺動接触面、シリンダボア18及び19とピストン20の摺動面、ベアリング13,14,16,17の転動部分等である。しかしながら、このような潤滑作用が圧縮機1の起動直後には十分に行われないことは前述のとおりである。
【0020】
本発明の圧縮機の基本的な構造と作用は前述のような従来の圧縮機と同様であるが、本発明の特徴に対応して、図示実施例の圧縮機1は、まず、リヤハウジング10内の中心部にオイル溜め室36と呼ぶ空間を備えている。オイル溜め室36の周辺の構造を図4に拡大して示す。オイル溜め室36の外壁37は、それ以外のリヤハウジング10内の吸入室23や吐出室24等の外壁と比べて熱を伝え易いように薄肉となっている。薄肉の外壁37はオイル溜め室36の冷却手段となるものであるが、これに代わるものとして、他の積極的な冷却手段をオイル溜め室36に設けることも可能である。リヤバルブプレート9の中心部に開口38が設けられることによって、オイル溜め室36がリヤシリンダ8内においてシャフト2の後端部に形成される空間39と連通している。
【0021】
なお、図4において、参照符号26は後述のサクションリードを、同じく28はディスチャージリードを、49はリヤバルブプレート9とリヤハウジング10との間に挟み込まれた金属製のガスケットを、50はガスケット49の表面に施されたゴムのコーティングをそれぞれ示している。
【0022】
図2に示したように、シャフト2の周囲にはそれと平行にリヤシリンダ8を軸方向に貫通する5本の通路40が穿孔されて、それらの後端が空間39に連通している。そのために、それぞれの通路40の後端においてリヤバルブプレート9の表面に近いリヤシリンダ8の一部に切り欠き通路42が設けられている。従って、オイル溜め室36はリヤバルブプレート9の開口38と、リヤシリンダ8内の空間39と、切り欠き通路42及び軸方向の通路40とを介して、斜板室22に常時連通している。しかしながら、オイル溜め室36は先の閉じた空間であって、開口38以外に出入口は設けられていない。
【0023】
軸方向に設けられた5本の通路40のうち、上部にある2本の通路40の後端には樋のようなオイルガイド41が設けられている。オイルガイド41はリヤバルブプレート9の開口38を通過して、オイルをオイル溜め室36内へ導く作用をする。また、それら上部にある2本の通路40の前端付近において、図2に示すように、リヤシリンダ8の前面には上方に向かって開くオイル受け溝43が形成されていて、上部のシリンダボア19aから流出するオイルを集めるようになっている。集められたオイルは、図7に示したように、スラストベアリング17のリヤ側のレース17aを堰として形成される溝のようなオイル回収通路44によって案内されて、上部の2本の軸方向通路40へ流入することができる。
【0024】
実施例の斜板型の冷媒圧縮機1はこのように構成されているから、シャフト2が電磁クラッチ3を介して、車両に搭載された内燃機関のような動力源によって回転駆動されると、斜板15が回転と共に揺動運動をするために、5本のピストン20がシリンダボア18及び19内で往復運動をする。それによって拡大して負圧となるシリンダボア18及び19内の作動室には、リヤ側の吸入室23及び図示しないフロント側の吸入室にある冷媒が、バルブプレート6及び9に形成された吸入ポート25のサクションリード26を押し開いて吸入される。そして、作動室が縮小して高圧となる時に、加圧された冷媒が吐出ポート27のディスチャージリード28を押し開いて前後の吐出室24及び30へ吐出され、更に連通通路31を通過することにより合流して冷凍サイクルの凝縮器32へ送られる。
【0025】
このようにして、リヤ側の吸入室23及び図示しないフロント側の吸入室内の冷媒がシリンダボア18及び19内の作動室へ吸入され、圧縮されて吐出されることによって前後の吸入室23等が負圧になるから、連通通路29によって連通している斜板室22も負圧となる。それによって、冷凍サイクルの蒸発器35において膨張して冷房作用を終えた低圧の戻り冷媒が斜板室22へ吸入され、連通通路29を通って前後の吸入室23等へ供給され、前述のようにして作動室内へ吸入されて圧縮される。このような作動は前述の従来の圧縮機と同様に行われるので、本発明の実施例である圧縮機1に特有のものではない。
【0026】
ピストン20がシリンダボア18及び19内において往復運動をして冷媒を圧縮する時に、予め冷媒に混合されている冷凍機油のような潤滑オイルが冷媒から分離して、ピストン20とシリンダボア18及び19との摺動面を潤滑するが、この摺動面には僅かな隙間があるから、作動室内が高圧になると加圧された冷媒の一部が隙間を通って低圧の斜板室22へ漏れ出る。通常、これをブロ―バイガスという。ブロ―バイガスと共に、冷媒に混入されていたオイルの一部も斜板室22へ押し出されることになる。この状態が図5に拡大して示されている。押し出されたオイルを参照符号45によって示す。
【0027】
双頭のピストン20に形成された2つの頭部のスカート部20aによってブロ―バイガスと共にオイル45が斜板室22へ押し出されると、図示実施例の圧縮機1においては特別の構造としてオイル受け溝43や軸方向の通路40、更にリヤハウジング10内のオイル溜め室36等が設けられているから、押し出されたオイル45はオイル受け溝43によってオイル回収通路44へ集められ、図6に示したように、5本あるうちの上部2本の軸方向の通路40と、切り欠き通路42及びリヤバルブプレート9の開口38を通ってオイル溜め室36へ流入する。この時にオイルガイド41が、流れるオイル46を案内してオイル溜め室36内へ確実に流入させる。このようにしてオイル溜め室36に溜まった潤滑オイルを参照符号47によって示す。
【0028】
なお、オイル溜め室36内に溜まったオイル47のレベルがリヤバルブプレート9に形成された開口38の下部の高さに達すると、空間39内へオーバーフローするので、それ以上はオイル溜め室36内のオイル量が増加しない。従って、圧縮機1の運転状態においては、押し出されたオイル45がオイル溜め室36へ流入するオイル46となって、一定量のオイルがオイル溜め室36に常に溜まっている。なお、オイル溜め室36から空間39へオーバーフローしたオイルは、ラジアルベアリング14等を潤滑してから斜板室22へ流れ、斜板室22内に臨んでいる色々な摺動面を潤滑する。
【0029】
このようにして、圧縮機1においては運転中にオイル溜め室36に常に一定量のオイルが溜まっており、圧縮機1が運転を停止した後にもオイル溜め室36に一定量のオイルが保持されている。オイル溜め室36の外壁37が比較的に薄肉となっているので、オイル溜め室36へ流入したオイルは、図8に矢印aによって示す外気により直ちに冷却される。そのために、オイル溜め室36内に溜まったオイル47には比較的に多量の冷媒が溶け込んでいる。
【0030】
圧縮機1の定常的な運転中には、冷媒が斜板室22を通過して流れる間に、冷媒に混入されていた潤滑オイルが分離して潤滑を必要とする摺動面等へ供給されるので、斜板室22に臨んでいる摺動面等が潤滑不良になることはないが、圧縮機1が停止すると、前述の従来の圧縮機と同様に、摺動面等を潤滑していたオイルが、圧縮機1が停止している間に重力によって斜板室22の底部等へ流下するために、次に、圧縮機1が再起動されると、特別の対策が講じられていない場合には、短時間ではあっても摺動面の潤滑状態が不良となる恐れがある。しかし、図示実施例の圧縮機1においては、オイル溜め室36に保持されている一定量のオイルが次のように作用して潤滑不良を回避することができる。
【0031】
即ち、圧縮機1においては、特別の構成としてオイル溜め室36を設けて、その中に一定量の潤滑オイルを保持しており、しかもオイル溜め室36の外壁37は薄肉となっているために、貯留されたオイルが外気によって直ちに冷却される結果、貯留されたオイルには多量の冷媒が溶け込んでいる。
【0032】
圧縮機1が再起動されると、前後の吸入室23等に常時連通している斜板室22及びオイル溜め室36は直ちに減圧されて低圧となる。そのために、オイル溜め室36内に貯留されたオイルから冷媒が泡立つように急激に蒸発してフォーミング状態となる。フォーミングが始まった状態を図8に示す。フォーミング状態にある冷媒とオイルを参照符号48によって示している。このようにして、オイル溜め室36内のオイルは泡状になって体積が急増するので、図9に示したように、フォーミング状態のオイルと冷媒が短時間内にオイル溜め室36を満たすだけでなく、それから5本の軸方向通路40を通って斜板室22内へ吹き出す。
【0033】
フォーミング状態のオイルと冷媒48は急激に膨張するので、圧縮機1の再起動がなされた後の短時間内に斜板15とシュー21との摺動面や、ピストン20とシリンダボア18及び19との摺動面、更に、ベアリング13,14,16,17の転動面等へ到達し、それらを応急的に潤滑する。この時期に液状となる戻り冷媒によって摺動面等が洗われても、フォーミング状態の冷媒とオイル48が摺動面を直ちに覆うので油膜切れになることがない。従って、圧縮機1においては再起動の直後でも潤滑不良になる恐れがない。
【0034】
フォーミング状態の冷媒とオイル48による潤滑は、圧縮機1の再起動後の短時間内に行われるものであって、圧縮機1が定常的な運転状態になると戻り冷媒に含まれているオイルが冷媒と共に斜板室22を通過して流れるので、そのオイルによって摺動面等が潤滑される。また、オイル溜め室36にも、前述のような作用によって一定量のオイルが多量の冷媒を溶存している状態で貯留される。
【0035】
図示実施例は斜板型の冷媒圧縮機1に関するものであるが、以上の説明から、本発明を斜板型圧縮機以外の圧縮機に適用可能であることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例である斜板型圧縮機を示す縦断面図である。
【図2】図1のII−II線における横断側面図である。
【図3】この圧縮機が接続される空調装置の冷凍サイクルを示す概念図である。
【図4】図1の一部を拡大して示す断面図である。
【図5】ブロ―バイガスと共に斜板室へ押し出されるオイルを示す断面図である。
【図6】オイル溜め室へ潤滑オイルを貯留する作用を説明する断面図である。
【図7】図6の横断側面図である。
【図8】オイル溜め室に貯留された潤滑オイルが冷却される状態を示す断面図である。
【図9】オイル溜め室からフォーミング状態の潤滑オイルが吹き出す作用を説明する断面図である。
【符号の説明】
1…斜板型の冷媒圧縮機
8…リヤシリンダ
9…リヤバルブプレート
10…リヤハウジング
15…斜板
18,19…シリンダボア
20…ピストン
21…シュー
22…斜板室
36…オイル溜め室
37…外壁
38…開口
40…通路
43…オイル受け溝
45…押し出されたオイル
46…流入するオイル
47…オイル溜め室に溜まったオイル
48…フォーミング状態の冷媒とオイル
Claims (5)
- 被圧縮流体に混入されて内部を流れる潤滑オイルの一部を、運転中に前記被圧縮流体の一部が溶存している状態で貯留するために、作動室へ吸入される前記被圧縮流体及び前記潤滑オイルの吸入側の流れの経路から外れた位置に先の閉じた空間として形成されたオイル溜め室と、該オイル溜め室を周辺の他の部分よりも急速に冷却するための冷却手段と、前記オイル溜め室と前記吸入側の流れの経路とを連通する通路とを備えており、
前記冷却手段として前記オイル溜め室の外壁が、ハウジングの他の部位よりも薄肉となっていることを特徴とする圧縮機。 - 前記ハウジングは、フロントハウジング、フロントシリンダ、リヤシリンダ及びリヤハウジングの順に前後の両ハウジング及び前後一対の両シリンダを軸方向に重ねて一体的に結合することによって外殻部分を構成しており、前記フロントハウジング及び前記リヤハウジングには、それぞれ吸入室及び吐出室が形成されていて、前後の前記吸入室及び前後の前記吐出室は相互にそれぞれ軸方向の通路によって連通しており、かつ前記オイル溜め室が前記リヤハウジングにのみ設けられていることを特徴とする請求項1に記載の圧縮機。
- 請求項1又は2において、前記被圧縮流体が冷媒であって、それ自体が空調装置の冷凍サイクルにおける冷媒圧縮機として使用されていることを特徴とする圧縮機。
- 請求項3において、それ自体が斜板型圧縮機であることを特徴とする圧縮機。
- 請求項4において、斜板を収容している斜板室が前記被圧縮流体及び前記潤滑オイルの前記吸入側の流れの経路の一部となっていると共に、前記オイル溜め室が前記通路を介して前記斜板室に常時連通していることを特徴とする圧縮機。
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