JP4165028B2 - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関と電気モータを駆動源とするハイブリッド車両の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は従来のハイブリッド車両における、(a)目標モータ/ジェネレータ回転数、(b)モータ/ジェネレータ回転数、(c)ブレーキの作動状態、(d)モータ/ジェネレータトルク値及び、(e)モータ/ジェネレータの制御モードの変移を示すタイムチャートである。
【0003】
従来、この種のハイブリッド車両において内燃機関を始動する場合、電気モータ(本明細書で、「電気モータ」と言った場合、内燃機関の回転で発電するジェネレータ機能を有する「モータ/ジェネレータ」も含む)で内燃機関のクランク軸(出力軸)を回転駆動して始動することが行われている。この始動に際して、図8に示すように、制御手段から始動要求が出力された時点T1で、従来は、電気モータは図8(e)に示すように速度制御されることから、内燃機関のクランク軸(電気モータ)が回転を開始する時点T2までは、図8(d)に示すように、電気モータから大きな始動トルクSTが出力され、クランク軸が回転を開始すると共に、その出力トルクは低下する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
通常、エンジンなどの内燃機関は、車両のフレームに対して防振ゴムなどの防振支持手段を介して支持されているので、速度制御される電気モータから大きな始動トルクSTが内燃機関のクランク軸に急激に入力されると、当該始動トルクSTにより防振ゴムが短時間で過大に変形してしまう。その後、クランク軸が回転を開始して電気モータの出力トルクが急激に減少すると、当該過大な変形が生じた防振ゴムに作用していたトルクが解放されて、大きな揺れ戻しが生じ、図8(b)に示すように、内燃機関(電気モータ)の回転に不連続な回転変化Pが生じ、ショックとなってドライバに違和感を生じさせる。
【0005】
ハイブリッド車両は、燃費の向上や排ガス対策などから、エンジンのアイドリング時に当該アイドリングを停止させる制御がよく行われ、しかも、蓄電池への充電に際しても内燃機関を始動させる必要があることから、電気モータによる内燃機関の始動動作は、内燃機関のみの車両よりも頻繁に行われる。
【0006】
従って、内燃機関の始動の度にこうした防振支持手段の過度の変形に基づく揺れ戻しが生じることは、運転フィーリングの上からも好ましくない。
【0007】
そこで、本発明は、ハイブリッド車両において、電気モータにより内燃機関を始動する際に、該内燃機関の防振支持手段に生じる過度の変形を防止して、ドライバに違和感を生じさせる原因となる回転変化が生じない、ハイブリッド車両の制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
本発明は、駆動源として、車体に搭載された電気モータ(3)と内燃機関(2)を有し、前記内燃機関は前記車体(10)に対して防振支持手段(10a)を介して支持されており、前記内燃機関の始動は、前記電気モータを回転駆動することにより内燃機関にトルクを与えることにより行う、ハイブリッド車両において、
前記内燃機関の始動に際して、前記電気モータをトルク制御モードで制御して、停止状態の前記内燃機関に、該内燃機関が回転を開始しない大きさの予トルク(PT)を与える予トルク付与手段(12、ESP)と、
前記予トルク付与手段により前記内燃機関に所定の予トルクが付与されたところで、前記電気モータの制御モードを前記トルク制御モードから速度制御モードに切り換えて前記内燃機関を回転させる電気モータ制御切り換え手段(12、ESP)と、を設けて構成される。
【0008】
請求項2の発明は、前記内燃機関が所定の回転数(例えば、図4の内燃機関始動プログラムESPの目標モータ回転数TgtmtN)に達したところで、前記内燃機関の自力回転を開始させる点火駆動手段(13、内燃機関始動プログラムESPのステップS12)を設けて構成される。
【0009】
請求項3の発明は、前記防振支持手段は、前記車体と内燃機関との間に配置されたゴム部材(10d)を有することを特徴として構成される。
【0010】
請求項4の発明は、前記防振支持手段は、バネ係数の異なる複数の材料(例えば、図6の心材10eと周材10f)から形成されていることを特徴として構成される。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、前記バネ係数の異なる複数の材料は、バネ係数が小さな材料(例えば、心材10e)が内燃機関側に配置され、バネ係数が大きな材料(例えば、周材10f)が車体側に配置されて構成される。
【0013】
請求項6の発明は、前記電気モータ制御切り換え手段は、前記予トルク付与手段により与えられた予トルクにより、前記内燃機関が回転を開始した場合には、直ちに前記電気モータの制御モードを前記トルク制御モードから速度制御モードに切り換えることを特徴として構成される。
【0014】
請求項7の発明は、前記電気モータ制御切り換え手段は、前記予トルク付与手段による前記内燃機関への予トルクの付与が、当該予トルクの付与から所定時間(例えば、内燃機関始動プログラムESPの規定値’10’)経過したところで、前記電気モータの制御モードを前記トルク制御モードから速度制御モードに切り換えることを特徴として構成される。
【0015】
請求項8の発明は、請求項5記載の発明において、前記予トルク付与手段が前記内燃機関に与える予トルクは、前記防振支持手段のバネ係数が小さな材料(10e)が主として変形する大きさの予トルクで構成される。
【0016】
請求項9の発明は、前記内燃機関を、前記予トルク付与手段による予トルクの付与の後、始動させる方法と、前記電気モータを前記予トルク付与手段を介することなく、直ちに速度制御モードで始動させる方法を、選択的に使用する始動制御手段を設けて構成される。
【0017】
請求項10の発明は、前記予トルク付与手段が前記内燃機関に与える予トルクは、前記防振支持手段が変形する大きさの予トルクで構成される。
【0018】
請求項11の発明は、前記予トルク付与手段が前記内燃機関に与える予トルクは、前記内燃機関の水温に基づいて設定されることを特徴として構成される。
【0019】
請求項12の発明は、予トルク付与手段が前記内燃機関に与える予トルクは、前記内燃機関の油温に基づいて設定されることを特徴として構成される。
【0020】
【発明の効果】
請求項1の発明によると、予トルク付与手段(12、ESP)により、内燃機関の始動に際して、電気モータをトルク制御モードで制御して、停止状態の前記内燃機関に予トルク(PT)を与えることができる。これにより、内燃機関の回転開始に必要なトルクを、分散させた形で入力することが可能となり、従来のように、内燃機関の回転開始に必要なトルクを一度に急激に入力する必要が無くなる。これにより、内燃機関の実際の回転開始時には、予トルクと起動トルクとの差分だけが内燃機関に急激に入力されるが、その差分は、大幅に抑えられ、防振支持手段に生じる変形はそれだけ少なくなる。
【0021】
即ち、予トルクは、速度制御モードによる急激な起動トルク入力に比して内燃機関に対する付与速度を穏やかなものとすることが出来るので、それに伴う変形も小さくすることが出来、引き続いて、内燃機関の回転開始動作時に防振支持手段が変形したとしても、その変形総量を小さく抑えることが出来る。これにより、ドライバに違和感を生じさせる原因となる回転変化が生じることを未然に防止することが出来る。
そして、電気モータ制御切り換え手段が、トルク制御モードで予トルクが付与された状態の内燃機関を、速度制御モードで回転させるので、電気モータによる内燃機関の始動を円滑に行うことが出来る。
【0022】
請求項2の発明によると、点火駆動手段(13、内燃機関始動プログラムESPのステップS12)により、内燃機関が所定の回転数(例えば、図4の内燃機関始動プログラムESPの目標モータ回転数TgtmtN)に達したところで、前記内燃機関の自力回転を開始させることが出来る。
【0023】
請求項3の発明によると、ゴム部材(10d)により、安価な材料で、効果的に内燃機関の防振を図ることが出来る。
【0024】
請求項4の発明によると、防振支持手段をバネ係数の異なる複数の材料(例えば、図6の心材10eと周材10f)から形成することにより、内燃機関に生じる複雑な振動モードに容易に対応することが出来る。
【0025】
請求項5の発明によると、通常の内燃機関(2)の防振支持に使用される防振支持手段の構造に本発明を適用することが出来る。
【0027】
請求項6の発明によると、予トルク付与手段により与えられた予トルクにより、内燃機関が回転を開始した場合には、直ちに前記電気モータの制御モードを前記トルク制御モードから速度制御モードに切り換えられるので、直ちに内燃機関を点火させることが出来る。
【0028】
請求項7の発明によると、予トルクの付与は所定時間(例えば、内燃機関始動プログラムESPの規定値’10’)継続されるので、防振支持手段の変形をゆっくりと生じさせることが出来、その後の内燃機関の回転開始時における不連続な回転変化の発生を未然に防止することが出来る。
【0029】
請求項8の発明によると、予トルクにより、起動に際して、大きな変形が生じる防振支持手段のバネ係数が小さな材料(10e)を予め変形させておくことが出来、後の速度制御に際した大変形を防止することが出来る。
【0030】
請求項9の発明によると、始動制御手段により、前記予トルク付与手段による予トルクの付与の後、始動させる方法と、電気モータを前記予トルク付与手段を介することなく、直ちに速度制御モードで始動させる方法を、選択的に使用することが可能となるので、そのときの内燃機関の状態に応じた始動方法の選択が可能となる。
【0031】
請求項10の発明によると、予トルクにより、起動に際して、大きな変形が生じる防振支持手段を予め変形させておくことが出来、後の速度制御に際した大変形を防止することが出来る。
【0032】
請求項11の発明によると、予トルクの値が、内燃機関の水温に基づいて設定されるので、内燃機関の状態に応じて予トルクの大きさを最適なものにすることが出来る。
【0033】
請求項12の発明によると、予トルクの値が、内燃機関の油温に基づいて設定されるので、内燃機関の状態に応じて予トルクの大きさを最適なものにすることが出来る。
【0034】
なお、括弧内の番号等は、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る第1の実施の形態を図に沿って説明する。
【0036】
図1は本発明に係る車輌の駆動系を示すブロック模式図、図2は本発明に適用される自動変速機構を示す図で、(a)は自動変速機構のスケルトン図、(b)はその作動表、図3はハイブリッド車両の制御系を示すブロック図、図4はエンジン始動プログラムの一例を示すフローチャート、図5は、(a)目標モータ/ジェネレータ回転数、(b)モータ/ジェネレータ回転数、(c)ブレーキの作動状態、(d)モータ/ジェネレータトルク値及び(e)モータ/ジェネレータの制御モードの変移を示すタイムチャート、図6はマウント部の詳細を示す平面図、図7は防振ゴムの作用トルクとバネ係数の関係を示したグラフ、図8は従来のハイブリッド車両における、(a)目標モータ/ジェネレータ回転数、(b)モータ/ジェネレータ回転数、(c)ブレーキの作動状態、(d)モータ/ジェネレータトルク値及び(e)モータ/ジェネレータの制御モードの変移を示すタイムチャートである。
【0037】
図1に示すように、ハイブリッド車両の駆動源は、車体に搭載されたエンジン2及びモータ・ジェネレータ(M/G)3により構成されており、その駆動力は、自動変速機を構成するトルクコンバータ(T/C)4を介して自動変速機構5に出力される。
【0038】
エンジン2は、図2(a)に示すように、車体10に複数のマウント10aを介して搭載されており、マウント10aは、図6に示すように、車体10に固定された平面視円形の台座10bを有している。台座10bは、周囲に環状の枠10cを有しており、枠10c内には、円柱状に形成された防振ゴム10dが嵌入されている。防振ゴム10dは、バネ係数の小さな弾性材料から形成された心材10eと、該心材10eよりもバネ係数の大きな材料から形成された周材10fを有しており、心材10eの周囲に周材10fが両者が一体化された形で形成されている。
【0039】
なお、図1に示すエンジン2及びモータ・ジェネレータ(M/G)3が接続される自動変速機構5は、入力される駆動力を所定の車輌走行状況に基づいて変速し、車輪等に出力する。また、該自動変速機構5には、変速を行うための複数の摩擦係合要素が配設されており、その摩擦係合要素の係合を油圧制御して変速し、かつ上記トルクコンバータ4を制御するための油圧制御装置6が備えられている。そして、該油圧制御装置6に油圧を供給するための機械式オイルポンプ7及び電動オイルポンプ8が、それぞれ配設されている。該機械式オイルポンプ7は、トルクコンバータ4と連動するように配設されており、エンジン2及びモータ・ジェネレータ3の駆動力により駆動される。また、電動オイルポンプ8は、エンジン2及びモータ・ジェネレータ3の駆動力とは独立しており、不図示のバッテリーから電力供給されるモータにより駆動される。
【0040】
ついで、自動変速機構について図に沿って説明する。図2は本発明に適用される自動変速機構5を示す図で、(a)は自動変速機構5のスケルトン図、(b)はその作動表、である。図2(a)に示すように、主自動変速機構30は、エンジン出力軸に整列して配置される第1軸に配置されており、エンジン2(E/G)及びモータ・ジェネレータ(M/G)3よりロックアップクラッチ36を有するトルクコンバータ4を介して駆動力が伝達される入力軸37を有している。該第1軸には、トルクコンバータ4に隣接する機械式オイルポンプ7及び電動オイルポンプ8、ブレーキ部34、プラネタリギヤユニット部31、クラッチ部35が順に配置されている。
【0041】
プラネタリギヤユニット部31はシンプルプラネタリギヤ32とダブルピニオンプラネタリギヤ33から構成されている。該シンプルプラネタリギヤ32は、サンギヤS1、リングギヤR1、及びこれらギヤに噛合するピニオンP1を支持したキャリヤCRからなり、また、該ダブルピニオンプラネタリギヤ33は、サンギヤS2、リングギヤR2、並びにサンギヤS2に噛合するピニオンP2及びリングギヤR2に噛合するピニオンP3を互に噛合するように支持するキャリヤCRからなる。そして、サンギヤS1及びサンギヤS2は、それぞれ入力軸37に回転自在に支持された中空軸に回転自在に支持されている。また、キャリヤCRは、前記両プラネタリギヤ32,33に共通しており、それぞれサンギヤS1,S2に噛合するピニオンP1及びピニオンP2は一体に回転するように連結されている。
【0042】
ブレーキ部34は、内径側から外径方向に向って順次ワンウェイクラッチF1、ブレーキB1そしてブレーキB2が配設されており、また、カウンタドライブギヤ39はスプラインを介してキャリヤCRに連結している。更に、リングギヤR2にワンウェイクラッチF2が介在しており、該リングギヤR2外周とケースとの間にはブレーキB3が介在している。また、クラッチ部35は、フォワードクラッチC1及びダイレクトクラッチC2を備えており、該フォワードクラッチC1は、リングギヤR1と入力軸37との間に介在しており、また、該ダイレクトクラッチC2は、サンギヤS1と入力軸37との間に介在している。
【0043】
副変速機構40は、入力軸37からなる第1軸に平行に配置された第2軸43に配設されており、これら第1軸及び第2軸は、ディファレンシャル軸(左右車軸)45l,45rからなる第3軸と合せて、側面視3角状に構成されている。そして、該副変速機構40は、シンプルプラネタリギヤ41,42を有しており、キャリヤCR3とリングギヤR4が一体に連結すると共に、サンギヤS3,S4同士が一体に連結して、シンプソンタイプのギヤ列を構成している。更に、リングギヤR3がカウンタドリブンギヤ46に連結して入力部を構成し、またキャリヤCR3及びリングギヤR4が出力部となる減速ギヤ47に連結している。更に、キャリヤCR3と一体サンギヤS3,S4との間にUDダイレクトクラッチC3が介在し、また一体サンギヤS3(S4)がブレーキB4にて適宜係止し得、かつキャリヤCR4がブレーキB5にて適宜係止し得る。これにより、該副変速機構40は、前進3速の変速段を得られる。
【0044】
また、第3軸を構成するディファレンシャル装置50は、デフケース51を有しており、該ケース51には前記減速ギヤ47と噛合するギヤ52が固定されている。更に、デフケース51の内部にはデフギヤ53及び左右サイドギヤ55,56が互に噛合してかつ回転自在に支持されており、左右サイドギヤから左右車軸45l,45rが延設されている。これにより、ギヤ52からの回転が、負荷トルクに対応して分岐され、左右車軸45l,45rを介して左右の前輪に伝達される。
【0045】
ついで、本自動変速機構5の作動を、図2(b)に示す作動表に沿って説明する。1速(1ST)状態では、フォワードクラッチC1,ワンウェイクラッチF2及びブレーキB5が係合する。これにより、主変速機構30は、1速となり、該減速回転がカウンタギヤ39,46を介して副変速機構40におけるリングギヤR3に伝達される。該副変速機構40は、ブレーキB5によりキャリヤCR4が停止され、1速状態にあり、前記主変速機構30の減速回転は、該副変速機構40により更に減速されて、そしてギヤ47,52及びディファレンシャル装置50を介して車軸45l,45rに伝達される。
【0046】
2速(2ND)状態では、フォワードクラッチC1の外、ブレーキB2が係合すると共に、ワンウェイクラッチF2からワンウェイクラッチF1に滑らかに切換わり、主変速機構30は2速状態となる。また、副変速機構40は、ブレーキB5の係合により1速状態にあり、この2速状態と1速状態が組合さって、自動変速機構5全体で2速が得られる。
【0047】
3速(3RD)状態では、主変速機構30は、フォワードクラッチC1、ブレーキB2及びワンウェイクラッチF1が係合した上述2速状態と同じであり、副変速機構40がブレーキB4を係合する。すると、サンギヤS3,S4が固定され、リングギヤR3からの回転は2速回転としてキャリヤCR3から出力し、従って主変速機構30の2速と副変速機構40の2速で、自動変速機構5全体で3速が得られる。
【0048】
4速(4TH)状態では、主変速機構30は、フォワードクラッチC1、ブレーキB2及びワンウェイクラッチF1が係合した上述2速及び3速状態と同じであり、副変速機構40は、ブレーキB4を解放すると共にUDダイレクトクラッチC3が係合する。この状態では、リングギヤR4とサンギヤS3(S4)が連結して、両プラネタリギヤ41,42が一体回転する直結回転となる。従って、主変速機構30の2速と副変速機構40の直結(3速)が組合されて、自動変速機構5全体で、4速回転が得られる。
【0049】
5速(5TH)状態では、フォワードクラッチC1及びダイレクトクラッチC2が係合して、入力軸37の回転がリングギヤR1及びサンギヤS1に共に伝達されて、主変速機構30は、ギヤユニット31が一体回転する直結回転となる。また、副変速機構40は、UDダイレクトクラッチC3が係合した直結回転となっており、従って主変速機構30の3速(直結)と副変速機構40の3速(直結)が組合されて、自動変速機構5全体で、5速回転が得られる。
【0050】
後進(REV)状態では、ダイレクトクラッチC2及びブレーキB3が係合すると共に、ブレーキB5が係合する。この状態では、主変速機構30にあっては、後進回転が取り出され、また副変速機構40は、ブレーキB5に基づきキャリヤCR4が停止され、1速状態に保持される。従って、主変速機構30の逆転と副変速機構40の1速回転が組合され、逆転減速回転が得られる。
【0051】
なお、図2(b)において、三角印は、エンジンブレーキ時に作動することを示す。即ち、1速にあっては、ブレーキB3が係合して、ワンウェイクラッチF2に代ってリングギヤR2を固定する。2速、3速、4速にあっては、ブレーキB1が係合して、ワンウェイクラッチF1に代ってサンギヤS2を固定する。
【0052】
また、車両には、図3に示すように、モータ/ジェネレータ3を制御するモータ制御部12が接続しており、モータ制御部12には、車両制御部12及び変速機制御部15などが接続している。
【0053】
ハイブリッド車両は上記のような構成を有するので、アイドルストップ制御などにより、車両が内燃機関であるエンジン2が停止した状態から、ドライバのスロットルの踏み込みにより走行を開始する要求や、電気モータとしてのモータ/ジェネレータ3を駆動するバッテリーの蓄電容量の不足から充電する要求が生じた場合などには、車両制御部13は、ドライバによってブレーキが踏まれているか否かを公知の手法で検出し、ブレーキがON状態(図5(c)参照)、即ち、ドライバによるブレーキの踏み込みが解放された(ON→OFF)と判定された場合には、図5に示すように、モータ制御部12に対して、時点T1で始動要求SDを出力する。
【0054】
これを受けて、モータ制御部12は、図4に示す内燃機関始動プログラムESPを実行し、エンジン2を始動する。即ち、内燃機関始動プログラムESPは、ステップS1で、エンジン始動要求SDが出力されているか否かを判定し、エンジン始動要求SDが出力されている場合には、ステップS2に入り、モータ/ジェネレータ3でエンジン2を始動させる際に、最初にエンジン2に掛ける予トルクの値PTを設定する。この予トルクは例えば40Nm程度であり、この程度のトルクではエンジン2は回転することはない。予トルクの値が設定されたところで、ステップS3でタイマ’4’がセットされ、ステップS4でモータ制御部12はモータ/ジェネレータ3に対してトルク制御モードでのモータ制御を開始し、ステップS2で設定された予トルクの値PTがモータ/ジェネレータ3から出力されるように、モータ/ジェネレータ3を制御する。この予トルクの付与は、ステップS6で定められた規定の時間である、規定値’10’の間継続される。
【0055】
すると、モータ/ジェネレータ3からは、図5(d)に示すように、値PTなる予トルクがエンジン2に対して所定時間出力される。エンジン2は、値PTなる予トルクが入力されると、当該予トルクではエンジン2が回転を開始することはないので、エンジン2全体に予トルクが作用することとなる。
【0056】
エンジン2は、既に述べたように、車体10に対して複数のマウント10aにより、エンジン2下部に設けられたエンジン支持部2aを介して弾性的に支持されているので、エンジン2に予トルクに対応するトルクが作用することにより、マウント10aの防振ゴム10dは、図6に示すように、エンジン2支持部2aにより枠10c側に変形させられる。防振ゴム10dは既に述べたように、エンジン支持部2aと当接するエンジン側の心材10eとその外周側に設けられた車体側の周材10fの、それぞれバネ係数の相違する2種の部材から形成されているので、全体として、入力トルクに対するバネ係数は、図7に示すような特性を有している。即ち、図6の心材10eのみが変形しているトルクが小さな状態では、バネ係数は小さく、変形が周材10fに及ぶ程大きなトルクが作用した場合には、バネ係数は大きくなるように設定されている。
【0057】
いま、予トルクとして値PTなるトルクが所定時間入力された場合、エンジン支持部2aによる防振ゴム10dの変形は、予トルクが所定時間維持されることと相まって、ゆっくりとした穏やかなものとなる。またその変形範囲は、心材10e部分に留まり、周囲のバネ係数が高い周材10f部分にまで及ばない。また、予トルクの値PTは図5に示すように、通常の速度制御の場合に出力される起動トルクMTよりも約1/2程度の値である。
【0058】
なお、予トルクの値PTの上限は、エンジンが回転を開始しないトルクであり、下限は、マウント10aの防振ゴム10dが変形を開始するトルクとなる。この場合、エンジンが回転を開始しないトルクとは、エンジンのピストンが空気を圧縮する際に必要な力であり、圧縮比に基づくコンプレッショントルクとピストンリングとシリンダ間などの摺動抵抗に基づくフリクショントルクから決まる。コンプレッショントルク及びフリクショントルクは、エンジン水温及び油温によって変化するため、温度変化に応じた予トルクのマップを実験などにより求めて、そこから値を参照して予トルクの値PTを決定するようにする。
【0059】
ステップS4で、所定時間継続付与される予トルクによりマウント10aを予め変形させたところで、ステップS5に入り、エンジン回転数E/Grpmが0を越えた場合、即ち、予トルクでエンジン2が回転を開始してしまった場合には、モータ/ジェネレータ3の制御モードをそれまでのトルク制御から、後述するステップS7以降の速度制御による始動動作に切り換える。なお、この際、モータ/ジェネレータ3からエンジン2には、図5(d)に示す起動トルクMTが急激に入力されるが、既に起動トルクMTが入力される直前まで、エンジン2には予トルクが付与されていたので、新たにエンジン2に入力されるトルク変化は、起動トルクMTと予トルクPTとの差分だけであり、この差分の入力に起因する防振ゴム10dの変形は、起動トルクMTが一気に入力される従来の起動方法に比して、大幅に少なくなる。従って、エンジン2が回転を開始した際の防振ゴム10dからの揺れ戻しは、それほど大きくなることはなく、その後のエンジン2(モータ/ジェネレータ3)の回転に不連続な回転変化などが生じるようなことはない。
【0060】
また、ステップS5に入り、エンジン回転数E/Grpmが0を越えない場合(通常は、越えない)には、ステップS6に入り、ステップS3のタイマ’4’が規定値’10’を超えているか否かを判定し、タイマ’4’が規定値’10’を越えるまで、ステップS4から6を実行し、既に述べたように、規定値’10’に規定された時間だけ予トルクをエンジン2に与え続ける。
【0061】
次に、ステップS7に入り、エンジン2の始動に際しての目標モータ回転数TgtmtNを設定する。このモータ回転数TgtmtNは、基本的にはスロットル開度が0の時のアイドル回転数を目標値とするが、ドライバのスロットル開度に応じて、マップなどにより目標モータ回転数TgtmtNを決定してもよい。
【0062】
次に、ステップS8に入り、タイマ’1’をセットし、ステップS9で、それまでの低い予トルクに基づくトルク制御モードから、モータ/ジェネレータ3の制御モードを、速度制御モードに切り換えて、目標モータ回転数TgtmtNを目標とする制御に入る。すると、モータ/ジェネレータ3の出力トルクは、図5(d)に示すように、制御モードがトルク制御から速度制御に切り替わった時点T2から、それまでの予トルクの値PTから、起動トルクMTに上昇し、これにより、図5(b)に示すように、エンジン2の出力軸は回転を開始する。
【0063】
以後、ステップS10で、実際のモータ/ジェネレータ3の回転数mtNが目標モータ回転数TgtmtNを上回ったか否かを判定し、実際のモータ/ジェネレータ3の回転数mtNが目標モータ回転数TgtmtNを上回らないまま、タイマ’1’による計時が規定値’3’(通常、3msec程度)を上回た場合には、ステップS11で、モータ制御部12はモータ/ジェネレータ3に何らかの異常が生じているものと判定して、内燃機関始動プログラムESPを終了して、エンジン2の始動動作を中止する。
【0064】
規定値’3’以内に、実際のモータ/ジェネレータ3の回転数mtNが目標モータ回転数TgtmtNを上回った場合には、ステップS12に入り、モータ制御部12は、車両制御部12を介してエンジン2に対するインジェクションをONにして、エンジンでの燃料の噴射を開始してエンジン2を点火させ、自力回転を開始する。
【0065】
なお、この際、モータ/ジェネレータ3及びエンジン2の回転数は、図5(b)に示すように、モータ/ジェネレータ3の速度制御モードにより、それまでの予トルクが付与された停止状態から、急速に目標モータ回転数TgtmtNに向けて上昇して行くが、その際も、モータ/ジェネレータ3からエンジン2には、図5(d)に示す起動トルクMTが急激に入力される。しかし、既に起動トルクMTが入力される直前まで、エンジン2には予トルクが規定値’10’に規定された時間だけ付与されていたので、新たにエンジン2に入力されるトルク変化は、起動トルクMTと予トルクPTとの差分だけであり、この差分の入力に起因する防振ゴム10dの変形は、起動トルクMTが0から一気に入力される従来の起動方法に比して、大幅に少なくなる。従って、エンジン2が回転を開始した際の防振ゴム10dからの揺れ戻しは、それほど大きくなることはなく、その後のエンジン2(モータ/ジェネレータ3)の回転に不連続な回転変化などが生じるようなことはない。
【0066】
次に、ステップS13で、モータ制御部12は、タイマ’3’をセットし、ステップS14で、エンジン点火に伴うトルクの吹き上がりにより目標モータ回転数TgtmtNと実際のモータ/ジェネレータ3の回転数mtNとの差が、所定の規定値’1’ (通常、30rpm程度)を越えてエンジン2が燃焼を開始して、自力回転しているか否かを判定し、目標モータ回転数TgtmtNと実際のモータ/ジェネレータ3の回転数mtNとの差が、所定の規定値’1’を越えている場合には、エンジン2は自力回転しているものと判定してステップS15を経由してステップS16で完爆判定フラグをONにし、ステップS17でタイマ’2’をセットする。
【0067】
また、ステップS14で、目標モータ回転数TgtmtNと実際のモータ/ジェネレータ3の回転数mtNとの差が、所定の規定値’1’を越えていないものと判定された場合で、完爆判定フラグがONでない場合には、ステップS18からステップS19に入る。更に、ステップS13のタイマ’3’が、所定の規定値’2’ (通常、3msec程度)を越えていた場合には、所定時間内での、エンジン2の自力回転が判定されないことから、エンジン2の失火と判定して、内燃機関始動プログラムESPの実行を中止して、モータ/ジェネレータ3による始動動作を中止する。
【0068】
なお、ステップS18で、完爆判定フラグが、ONとなっている場合には、ステップS22に入り、目標モータ回転数TgtmtNを再度設定する。
【0069】
また、ステップS17でタイマ’2’の設定後に、モータ制御部12は、ステップS20に入り、目標モータ回転数TgtmtNを、目標モータ回転数TgtmtNと現在のモータ/ジェネレータ3の回転数mtNとの偏差分だけ変化させて、新たな目標モータ回転数TgtmtNを設定し、完爆判定がONとなった以後の、エンジン2の吹き上がりを防止する。この動作は、ステップS21で、ステップS17のタイマ’2’が規定値’4’(通常、2sec程度)を越えるまで継続され、エンジン2が完爆後にモータ/ジェネレータ3(エンジン2)の回転数mtNが安定するのを待つ。
【0070】
タイマ’2’が、規定値’4’を越えたところで、ステップS23に入り、モータ/ジェネレータ3へのトルク指令値を0Nmに設定し、更にステップS24で当該指令を実行して、モータ/ジェネレータ3の出力トルクを0にする。こにより、エンジン2は、自力回転することとなり、始動動作は完了する。
【0071】
なお、エンジン2のモータ/ジェネレータ3の速度制御モードによる回転を開始させるに際して、既に述べたように、エンジン2の出力軸には、予トルクが掛けられているので、速度制御の開始に際した起動トルクMTの出力時間が短時間でも、更には、それほど大きな始動トルクを掛けなくても簡単にエンジン2が回転を開始することが出来、それだけエネルギを節約することが出来、省燃費となる。
【0072】
上述の実施例は、エンジン2を車体10に弾性的に支持する防振支持手段として、車体10とエンジン2の間に配置される防振ゴム10dを用い、該防振ゴム10dは、エンジン支持部2aに近接した側にバネ係数が低い弾性材料かならる心材10eを設け、その外側にそれよりもバネ係数が高い弾性材料かならなる周材10fを設けた場合について述べたが、防振ゴム10dとしては、必ずしも、バネ係数の異なる多層構造である必要はなく、単一のバネ係数を有する弾性材料から構成してもよい。更に、防振支持手段は、防振ゴムなどのゴム部材に限らず、バネなどの適宜な弾性手段を用いることもできる。
【0073】
また、本発明による、トルク制御により予トルクをエンジン2に付与しておいた後、速度制御に制御モードを切り換えて、エンジン2を回転開始させる方法は、エンジン2の始動時に毎回必ず行う必要はなく、必要に応じて、最初から速度制御モードによる、従来の始動方法も適宜選択的に使用することが出来るように、モータ制御部12を構成することも当然可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明に係る車輌の駆動系を示すブロック模式図である。
【図2】図2は本発明に適用される自動変速機構を示す図で、(a)は自動変速機構のスケルトン図、(b)はその作動表である。
【図3】図3はハイブリッド車両の制御系を示すブロック図である。
【図4】図4はエンジン始動プログラムの一例を示すフローチャートである。
【図5】図5は、(a)目標モータ/ジェネレータ回転数、(b)モータ/ジェネレータ回転数、(c)ブレーキの作動状態、(d)モータ/ジェネレータトルク値及び(e)モータ/ジェネレータの制御モードの変移を示すタイムチャートである。
【図6】図6はマウント部の詳細を示す平面図である。
【図7】図7は防振ゴムの作用トルクとバネ係数の関係を示したグラフである。
【図8】図8は従来のハイブリッド車両における、(a)目標モータ/ジェネレータ回転数、(b)モータ/ジェネレータ回転数、(c)ブレーキの作動状態、(d)モータ/ジェネレータトルク値及び(e)モータ/ジェネレータの制御モードの変移を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
2……内燃機関(エンジン)
3……電気モータ(モータ/ジェネレータ)
10……車体
10a……防振支持手段(マウント)
10d……ゴム部材(防振ゴム)
10e……バネ係数の小さな材料(心材)
10f……バネ係数の大きな材料(周材)
12……予トルク付与手段(モータ制御部)
13……点火駆動手段(車両制御部)
ESP……予トルク付与手段、電気モータ制御切り換え手段、点火駆動手段
(内燃機関始動プログラム)
TgtmtN……所定の回転数(目標モータ回転数)
PT……予トルク
Claims (12)
- 駆動源として、車体に搭載された電気モータと内燃機関を有し、前記内燃機関は前記車体に対して防振支持手段を介して支持されており、前記内燃機関の始動は、前記電気モータを回転駆動することにより内燃機関にトルクを与えることにより行う、ハイブリッド車両において、
前記内燃機関の始動に際して、前記電気モータをトルク制御モードで制御して、停止状態の前記内燃機関に、該内燃機関が回転を開始しない大きさの予トルクを与える予トルク付与手段と、
前記予トルク付与手段により前記内燃機関に所定の予トルクが付与されたところで、前記電気モータの制御モードを前記トルク制御モードから速度制御モードに切り換えて前記内燃機関を回転させる電気モータ制御切り換え手段と、を設けて構成した、ハイブリッド車両の制御装置。 - 前記内燃機関が所定の回転数に達したところで、前記内燃機関の自力回転を開始させる点火駆動手段を設けて構成した、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記防振支持手段は、前記車体と内燃機関との間に配置されたゴム部材を有することを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記防振支持手段は、バネ係数の異なる複数の材料から形成されていることを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記バネ係数の異なる複数の材料は、バネ係数が小さな材料が内燃機関側に配置され、バネ係数が大きな材料が車体側に配置されて構成される、請求項4記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記電気モータ制御切り換え手段は、前記予トルク付与手段により与えられた予トルクにより、前記内燃機関が回転を開始した場合には、直ちに前記電気モータの制御モードを前記トルク制御モードから速度制御モードに切り換えることを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記電気モータ制御切り換え手段は、前記予トルク付与手段による前記内燃機関への予トルクの付与が、当該予トルクの付与から所定時間経過したところで、前記電気モータの制御モードを前記トルク制御モードから速度制御モードに切り換えることを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記予トルク付与手段が前記内燃機関に与える予トルクは、前記防振支持手段のバネ係数が小さな材料が主として変形する大きさの予トルクである、請求項5記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記内燃機関を、前記予トルク付与手段による予トルクの付与の後、始動させる方法と、前記電気モータを前記予トルク付与手段を介することなく、直ちに速度制御モードで始動させる方法を、選択的に使用する始動制御手段を設けて構成した、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記予トルク付与手段が前記内燃機関に与える予トルクは、前記防振支持手段が変形する大きさの予トルクである、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記予トルク付与手段が前記内燃機関に与える予トルクは、前記内燃機関の水温に基づいて設定されることを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
- 前記予トルク付与手段が前記内燃機関に与える予トルクは、前記内燃機関の油温に基づいて設定されることを特徴とする、請求項1記載のハイブリッド車両の制御装置。
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