JP4163902B2 - 中空ガラス製品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は中空ガラス製品の製造方法に関し、特には、変形表面、とりわけ円周方向に形状が異なる表面を有する中空ガラス製品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばコップ等の中空ガラス製品は、プレス・ブロー成形法によって製造されている。このプレス・ブロー成形の代表的な成形機であるH−28マシンでは、粗型でプレス成形されたパリソンを仕上型に導入し、該仕上型で最終製品形状にブロー成形される。この成形法では、パリソンを仕上型内で回転しながらエアブローする「回し吹き」と、パリソンを回転することなく停止した状態でエアブローする「留め吹き」が行われている。前者の回し吹きは円周方向に同一表面形状を有する製品に適しており、後者の留め吹きは胴部に彫刻模様を有する製品や円周方向に変形表面形状となる製品などについて行われる。
【0003】
従来知られている前記のH−28マシンで回し吹きを行う場合、仕上型の型面にコルク粉末を焼き付けたペーストモールドが用いられる。このペーストモールドにあっては、パリソンが入る直前まで水がかけられペーストはある程度水を含んだ状態となっていて、この中でパリソンをブローすることによって、ペーストに吸収されていた水分が水蒸気となり、ペースト表面とパリソンとの間にスチームクッションを形成する。この水蒸気によるスチームクッションは、仕上型の型面とパリソンとの直接接触を防ぎ摩擦を減ずるために、滑らかな回し吹きを可能にし、滑らかな表面光沢に優れたガラス製品が成形されるとともに、金型の合目(シーム)のない製品が得られる。これに対して、留め吹きにあっては、正確な型面形状や模様の転写を目的とするため、ペーストモールドは使用されず、SUS系の金属によって仕上型の型面を構成し金型を焼けやすいようにして、製品肌の向上を図っている。ただし、留め吹きの場合には金型のシームの現出が不可避であるので、模様の位置などによって工夫がなされている。
【0004】
上のように、現状では、回し吹きとするかあるいは留め吹きとするかはガラス製品の外周形態によって決定されている。従って、例えばコップなどにおいて、変形表面、殊に円周方向に形状が異なる表面を有する製品を成形する場合には、回転による回し吹きができず、留め吹きによって成形するものとされている。しかしながら、該変形製品の表面が無地であったりあるいは無地部を有するような場合には、シームの現出をできるだけ避けたい、さらに、回し吹きによる優れた表面光沢を得たいという要請がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
この発明はこのような要請に鑑みなされたもので、変形製品であっても回し吹きによるシームのない、かつ優れた表面光沢を得ることができる新規な中空ガラス製品の製造方法を提案するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1の発明は、中空ガラス製品をプレス・ブロー成形法によって成形するに際し、粗型でプレス成形されたパリソンをペーストモールドの割型よりなる仕上型に導入し該パリソンを回転しながら所定時間の低圧ブローを行った後、前記パリソンの回転を継続したまま高圧ブローに切り換えてブロー成形するとともに、前記仕上型の型開きの0.5ないし5秒前に前記パリソンの回転を停止させて前記高圧ブローによって最終形状に賦形することを特徴とする中空ガラス製品の製造方法に係る。
【0007】
請求項2の発明は、前記パリソンの回転を、仕上型が開く2.5秒前に停止する請求項1に記載の中空ガラス製品の製造方法に係る。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下添付の図面に従ってこの発明を詳細に説明する。
図1はこの発明製法によって製造された中空ガラス製品の一例であるガラスコップを示す斜視図、図2は図1の2−2線で切断したガラスコップの横断面を表した断面図、図3は仕上型におけるブロー開始状態を表す要部の断面図、図4は同じくパリソンの回転停止直前状態を表す要部の断面図、図5は同じくパリソン回転停止状態を表す要部の断面図、図6はブロー成形時の作動状態図である。
【0009】
図1はこの発明製法によって得られた中空ガラス製品の一例であるガラスコップ10を示すものである。このガラスコップ10は、図2の断面図のように、円周方向に形状が異なる変形表面11を有するもので、ここではあたかも人の手によって自然な形状に形作られたようないわば「手ひねり」調の外観形態を有する。このガラスコップ10の表面は全面が無地面Mで、その自然な変形形状と滑らかな表面の光沢によって使用者に心地よい外観印象を付与する。
【0010】
前記したように、このガラスコップ10のような変形製品にあっては、従来回し吹きが不可能で留め吹きによって成形するものとされていたのであるが、以下述べるように、この発明によれば、実質的な回し吹きが可能で、その結果として、回し吹きの利点である型の合目が無く(シームレス)かつ優れた表面光沢を得ることができる。
【0011】
すなわち、この発明は、図3ないし図5にその要部を図示したように、中空ガラス製品をプレス・ブロー成形法によって成形するに際し、粗型でプレス成形されたパリソン20をペーストモールドの割型よりなる仕上型22に導入し(図3参照)、該パリソン20を回転しながらブロー成形するとともに(図4参照)、前記仕上型の型開き直前に前記パリソンの回転を停止させて最終形状に賦形する(図5参照)ものである。なお、この発明のプレス・ブロー成形においては、前記した従来公知のH−28マシン(H−28―12、H―28−18等の機種)の自動成形機を用いることができる。
【0012】
まず、従来公知の手段によって粗型でパリソンがプレス成形される。この工程は、図示及び詳しい説明を省略するが、溶融したガラスの塊であるゴブを粗型へ投入し、プランジャを圧入して粗型内のゴブをプレスしパリソンを成形するものである。
【0013】
前記粗型でプレス成形されたされたパリソン20は、図3に示すように、仕上型22に導入される。仕上型22はガラス製品(コップ10)の最終製品形状である変形表面を形作る型面23を備えており、前記したような回し吹きに用いられるコルク粉末が焼き付けられたペースト・モールドとして構成されている。このペースト・モールドにはパリソン20が導入される直前まで水がかけられている。図において、符号24は底型、25は底型24の型面、26は口型(ネックリング)、27は口型の型面を表す。
【0014】
仕上型22に導入されたパリソン20は口型(ネックリング)26とともに回転されながら公知のブローヘッド(図示せず)を介して内部にブローエアが注入される。このブロー成形は従来の回し吹きと同様で、図6の作動状態図のように、仕上型の型閉じ、低圧ブロー、高圧ブローの順に行われる。
【0015】
所定時間の低圧ブロー後、高圧ブローに切り換えられ、パリソン20は回転されながら、図4に示すような製品のほぼ全体形状を規定する形状に膨張される。そして、仕上型22の型開き直前に、前記パリソン20の回転が停止され、ブロー成形される。図5はこのパリソン20の回転が停止された状態でのブロー成形状態を表すものであるが、図のように、パリソン20の回転が停止されることによって、仕上型22の型面23に沿って製品の最終形状に賦形される。そして、その後に仕上型22が型開きされる。
【0016】
パリソン20の回転停止のタイミングについては、通常のガラス製品の場合、仕上型22が開く0.5ないし5秒前に停止することが望ましい。パリソン20の回転停止が仕上型22が開く0.5秒未満前になされる場合には、成形時間が短すぎてガラス製品の賦形が不十分となる嫌いがある。一方において、パリソン20の回転停止が仕上型22が開く5秒以上前になされる場合には、成形時間が長くなって製品表面に仕上型22の合目(シーム)が現出されるおそれが高い。
【0017】
図6は実施例のガラスコップ10のブロー成形における作動状態図であるが、この例では、パリソン20に対し、型閉じ後3.3秒間低圧ブローがなされ、その後型開きまで3.9秒間高圧ブローがなされる(ブロー時間7.2秒。なお、回し吹きの場合、上部の口型26からブローエアが排出される関係で低圧ブローと高圧ブローとの間に極端な圧力差はない)。そして、型開き2.5秒前にパリソン20の回転が停止され、仕上成形がなされる。
【0018】
パリソン20の回転停止時における成形状態について説明すると、仕上型22がペーストモールドよりなりその型面23は水分を含んでいるため、高熱のパリソン20が導入された金型内はスチームクッション状態となっている。このスチームクッション状態はパリソン20の回転時にも回転停止時にも生じており、パリソン20の回転を停止してエアブローしたときにも、このスチームクッションによってパリソン20と型面23との強い圧着が妨げられて、型形状は賦形されるがシームを現出することがない(ただし、成形時間が長くなるとシームが現出されるおそれが高いことは前述した通りである)。そして、成形品の表面はスチームクッションによって滑らかな光沢表面に成形される。
【0019】
パリソン20を最終形状に賦形した後、公知の手法により、口部不要部分であるモイルの除去が行われる。すなわち、半製品状態である中空ガラス製品を仕上型22から取り出し、これを倒立の状態に反転し、図示しないバーンオフ・マシンによって半製品状態の中空ガラス製品の前記モイルを焼き切り、その口部の仕上げがなされて、ガラス製品10となる。
【0020】
【発明の効果】
以上図示し説明したように、この発明に係る中空ガラス製品の製造方法によれば、仕上型としてペーストモールドを用いてパリソンを回転しながら所定時間の低圧ブローを行った後、前記パリソンの回転を継続したまま高圧ブローに切り換えてブロー成形するとともに、前記仕上型の型開きの0.5ないし5秒前に前記パリソンの回転を停止させて前記高圧ブローによって最終形状に賦形するものであるから、前記ペーストモールドによるスチームクッションによって、シームのない、滑らかな優れた表面光沢を有する中空ガラス製品を得ることができるようになった。
【0021】
特に、この発明によれば、従来回し吹きが不可能とされていた円周方向に形状が異なる変形表面を有する製品においても、実質的な回し吹きが可能となり、回し吹きと全く変わらないシームレスで滑らかな表面光沢を有する製品を得ることができるようになった。これによって、実施例で述べたような無地表面を有する変形ガラス製品の外観性を飛躍的に高めることができ、同種製品からの差別化を図り大きな有利性を享有することができる。
【0022】
また、この発明によれば、請求項2に係る発明としても規定したように、パリソンの回転を、仕上型が開く一定時間前(2.5秒前)に停止するようにしておけば、確実にかつ効率よく、シームレスの優れた表面光沢を有する中空ガラス製品を得ることができ、工程的にも簡単で、自動生産による量産に全く影響を与えることなく実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1はこの発明製法によって製造された中空ガラス製品の一例であるガラスコップを示す斜視図である。
【図2】図1の2−2線で切断したガラスコップの横断面を表した断面図である。
【図3】仕上型におけるブロー開始状態を表す要部の断面図である。
【図4】同じくパリソンの回転停止直前状態を表す要部の断面図である。
【図5】同じくパリソン回転停止状態を表す要部の断面図である。
【図6】ブロー成形時の作動状態図である。
【符号の説明】
10 中空ガラス製品
11 ガラス面
20 パリソン
21 表面
22 仕上型
23 型面
26 口型
Claims (2)
- 中空ガラス製品をプレス・ブロー成形法によって成形するに際し、粗型でプレス成形されたパリソンをペーストモールドの割型よりなる仕上型に導入し該パリソンを回転しながら所定時間の低圧ブローを行った後、前記パリソンの回転を継続したまま高圧ブローに切り換えてブロー成形するとともに、前記仕上型の型開きの0.5ないし5秒前に前記パリソンの回転を停止させて前記高圧ブローによって最終形状に賦形することを特徴とする中空ガラス製品の製造方法。
- 前記パリソンの回転を、仕上型が開く2.5秒前に停止する請求項1に記載の中空ガラス製品の製造方法。
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JP2002162555A JP4163902B2 (ja) | 2002-06-04 | 2002-06-04 | 中空ガラス製品の製造方法 |
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2002
- 2002-06-04 JP JP2002162555A patent/JP4163902B2/ja not_active Expired - Lifetime
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