JP4163632B2 - スロットライン型の平面アンテナ - Google Patents

Description

本発明はミリ波やマイクロ波帯等のスロットライン（ＳＬ）型とした平面アンテナ（以下、ＳＬ平面アンテナとする）を技術分野とし、特に電磁波動場を制御して周波数や偏波面を可変（制御）した設計容易なＳＬ平面アンテナに関する。

（発明の背景）一般に、平面アンテナは簡易な加工性や小型軽量性から、ワイヤレス通信や衛星放送等に広く用いられている。このようなものの一つに、周波数や偏波面を可変した本出願人によるマイクロストリップライン型の平面アンテナ（以下、ＭＳＬ平面アンテナとする）がある（特許文献１）。

（従来技術の一例）第４図は一従来例を説明する周波数可変型のＭＳＬ平面アンテナの図で、同図（ａ）は平面図、同図（ｂ）はＡ−Ａ断面図である。

ＭＳＬ平面アンテナは基本的にＭＳＬ共振器からなり、基板１の一主面に給電線２の延出した共振導体３を、他主面に接地導体４を有する。共振導体３には開口部５が形成されて電子素子６が配置される。電子素子６はリアクタンス可変素子６Ａとし、例えば電圧可変容量素子ここでは逆極性接続とした一対のバラクタダイオードとする。例えばカソード同士を接続し、各アノードを両側の接地導体４に接続する。そして、逆極性接続点のカソードに導線７を接続して逆バイアスの制御電圧Ｖ1を印加する。

このようにすれば、制御電圧Ｖ1によるバラクタダイオードの容量値によって電磁波動場を形成する境界条件が変化する。これにより、ＭＳＬ平面アンテナの共振周波数（アンテナ周波数）が変化する。このことから、バラクタダイオードへの制御電圧Ｖ1によって共振周波数を可変できる。

第５図は偏波面可変型のＭＳＬ平面アンテナの平面図である。ここでは、共振導体３の中心に設けられた開口部５に、電子素子６としてスイッチング素子６Ｂを配置する。スイッチング素子６Ｂは例えば４個のダイオードからなり、それぞれ対向する素子を逆極性接続として垂直方向（斜め右上がりの直線上、右４５度方向）及び水平方向（斜め左上がりの直線上、左４５度方向）に接続する。

この場合には、逆極性接続点に印加された制御電圧Ｖ2によって垂直方向のダイオードがＯＮ（導通）すると、縮退された共振モード（以下、縮退モードとする）のうち垂直方向での共振モードは励起されない。また、水平方向のダイオードがＯＮ（導通）すると、水平方向での共振モードは励起されない。

このことから、スイッチング素子６Ｂの導通方向（垂直又は水平方向）を選択することによって、縮退共振モードのうちのいずれか一方での共振となる。したがって、送受信時におけるアンテナ周波数の偏波面を可変（制御）できる。なお、縮退モードにおける各共振モードの共振周波数は同一である。
特開平２００３−１１０３２２号公報 特願２００２−１２７２２９号

（従来技術の問題点）しかしながら、上記構成のＭＳＬ平面アンテナでは、周波数や偏波面を制御する電子素子６を配置するため、ＭＳＬ共振器（共振導体３）に開口部５を設ける。このため、開口部５の形状や大きさ等によって例えば共振周波数が変化するので、ＭＳＬ共振器自体の基本的な設計を複雑にする。

また、開口部５に設けた電子素子６に、図示しない制御回路からの制御電圧Ｖ1、Ｖ2を印加するため、共振導体３中の高周波電流と制御回路とを高周波的に遮断する例えばチョークコイルを必要とする。したがって、部品点数を多くして制御回路をも複雑にする問題があった。

また、一般的に、ＭＳＬ平面アンテナでは周波数帯域が狭くてアンテナ利得が小さく、アンテナ素子からの直交成分も多い。そして、共振導体３に給電線２が接続するので、特に延出始端部でＭＳＬ共振器の境界条件に影響を与える問題もあった。

（発明の目的）本発明は設計を容易にした周波数及び偏波面可変型のＳＬ平面アンテナを提供することを目的とする。

（着目点）本発明ではＭＳＬ平面アンテナに代えて特許文献２で示されるようなＳＬ平面アンテナに着目した。すなわち、ＳＬ平面アンテナではそもそも開口部に相当する開口線路を有する点に着目した。

（解決手段）本発明は、特許請求の範囲（請求項１）に示したように、基板の一主面に設けられて開口部を内部に有する外部導体と、前記開口部に設けられた内部導体と、前記外部導体と前記内部導体との間に環状の開口線路とを有するスロットライン型の平面アンテナにおいて、前記外部導体と前記内部導体の間に電子素子を設けて電気的に接続し、前記電子素子は前記スロットラインの電磁波動場を制御する直交方向に設けられたスイッチング素子であって、前記スロットラインの互いに直交方向に生ずる縮退した共振モードを切り替える構成とする。

本発明（請求項１）では、電磁波動場を制御する電子素子の配置される開口部は、もともと存在してＳＬを形成するに必要な外部導体と内部導体との間になる。したがって、ＳＬ共振器自体の共振周波数等に関する基本的設計を阻害することがない。したがって、設計を容易にする。

また、外部導体と内部導体との間に電磁波動場が集中するため、内部導体の中心付近に高周波電流は基本的に存在しない。したがって、電子素子に例えば制御電圧を印加しても、制御回路とは高周波的に遮断される。これにより、制御回路を独立的に設計できてチョークコイル等を不要にする。

そして、ＳＬ平面アンテナであるため、ＭＳＬ平面アンテナに比較して、周波数帯域が広くてアンテナ利得が大きく、アンテナ素子からの直交成分の放射も少ない。そして、外部及び内部導体には他主面側から給電されて直接には給電線が接続しないので、ＳＬ共振器の境界条件に与える影響が小さい。

そして、電子素子はＳＬの電磁波動場を制御して直交方向に生ずる縮退した共振モードを直交方向に設けられたスイッチング素子によって切り替えるので、縮退モードの一方を選択してアンテナ周波数の偏波面を可変できる。なお、本発明は特に実施例２に対応する。

第１図は本発明の一実施例を説明するＳＬ平面アンテナの図で、同図（ａ）は平面図、同図（ｂ）は同図（ａ）のＡ−Ａ断面図である。なお、前従来例と同一部分には同番号を付与してその説明は簡略又は省略する。

ＳＬ平面アンテナは、ＳＬ共振器と、電子素子６と、給電線２とからなる。ＳＬ共振器は基板１の一主面に設けられた外部導体８、内部導体９、及び開口線路１０（ＳＬ）からなる。外部導体８及び内部導体９は同心とした矩形状とし、開口線路１０は両導体の間に矩形環状とする。

電子素子６はリアクタンス可変素子６Ａとして例えばバラクタダイオードとした電圧可変容量素子からなる。そして、ＳＬ共振器の両側（図の左右）の開口線路１０に３個ずつ、例えばアノードを内部導体９にカソードを外部導体８に接続して対称に配置される。そして、端子間容量を可変する逆バイアスの制御電圧Ｖ1（直流電圧）が内部導体９の中央部に印加される。制御電圧Ｖ1は内部導体９と外部導体８とに図示しない制御回路から導線７を経て供給される。

給電線２は基板１の他主面に設けられたＭＳＬからなり、外部導体８を経て開口線路１０を横断して内部導体９に達する。そして、電磁結合によってＳＬに給電する。

このような構成であれば、外部導体８と内部導体９との間に接続した電圧可変容量素子の容量値によってＳＬ共振器の電磁気的な境界条件が変化する。したがって、ＳＬの電気長が等価的に変化し、共振周波数も変化する。なお、共振周波数はＳＬの電気長に依存する。これにより、制御電圧Ｖ1によってアンテナ周波数を可変できる。

そして、効果の欄にて説明したように、電磁波動場を制御する電圧可変容量素子は、もともと存在してＳＬを形成するに必要な開口線路１０（従来例の開口部５に相当）に配置される。したがって、別途に開口部５を形成することがないので、ＳＬ共振器自体の基本的設計を阻害することがない。したがって、設計を容易にする。

また、ＳＬ共振器の外部導体８と内部導体９との間に電磁波動場が集中するため、内部導体９の中心付近（中央部）に高周波電流は基本的に存在しない。したがって、電圧可変容量素子に制御電圧Ｖ1を印加すべく結線しても、制御回路とは高周波的に遮断される。これにより、制御回路を独立的に設計できて従来でのチョークコイル等を不要にする。

また、ＳＬ共振器を用いたＳＬ平面アンテナであるため、ＭＳＬ平面アンテナに比較して、周波数帯域が広くてアンテナ利得が大きく、アンテナ素子からの直交成分の発生も少ない。そして、外部及び内部導体８、９には他主面側から給電されて直接には給電線２が接続しないので、ＳＬ共振器の境界条件に与える影響が小さい。

なお、２個ずつのバラクタダイオードをＳＬ共振器の両側（左右）に接続したが、左右１個ずつの計２個でもよく、さらには上下に配置してもよくこれらに特に制限はない。但し、ＳＬ共振器の中央部を結ぶ線上では効果が小さいのでこの線上は除く。

第２図は本発明の第２実施例を説明する偏波面可変型のＳＬ平面アンテナの図である。なお、前実施例と同一部分の説明は省略又は簡略する。

ここでのＳＬ平面アンテナは、アンテナ周波数を互いに直交する縮退モードによる同一の共振周波数とする。そして、ＳＬ共振器の開口線路１０に配置する電子素子６をスイッチング素子６Ｂとする。開口線路１０は例えば円環状とする。スイッチング素子６Ｂは４個のダイオードからなり、互いに直交する方向の線上にある開口線路１０にダイオードを配置する。

一方の直線上（斜め右上がりの直線上、右４５度方向）にある一対のダイオードは外部導体８にアノードを、内部導体９にカソードを接続する。また、他方の直線上（斜め左上がりの直線上、左４５度方向）にある他対のダイオードはこれとは逆に外部導体８にカソードを、内部導体９にアノードを接続する。そして、例えば外部導体８を基準（接地）電位として、内部導体９に＋又は−電圧を図示しない制御回路から導線７を経て供給する。

このような構成であれば、例えば内部導体９に＋電圧を供給すると左４５度方向のダイオードがＯＮ、右４５度方向のダイオードがＯＦＦとなる。この場合、ダイオードがＯＮの場合はＳＬの外部及び内部導体９が短絡するので、同方向の共振モードは励起されない。

したがって、縮退モードの直交する一方である右４５度方向の共振モードは励起し、他方である左４５度方向の共振モードが励起されない。したがって、この場合は右４５度の偏波面としたアンテナ周波数を送受信できる。そして、これとは逆に内部導体９に−電圧を供給すると、右４５度方向のダイオードがＯＮになるので、左４５度方向での共振モードが励起される。したがって、左４５度の偏波面としたアンテナ周波数を送受信できる。

そして、ここでも第１実施例と同様に、ＳＬを形成するに必要な開口線路１０にスイッチング素子６Ｂ（ダイオード）を配置するので、ＳＬ共振器自体の基本的設計を阻害することなく、設計を容易にする。

また、ＳＬ共振器の外部導体８と及び内部導体９との間に電磁波動場が集中するため、内部導体９の中心付近に高周波電流は基本的に存在しない。したがって、制御電圧Ｖ２を供給する制御回路とは高周波的に遮断され、制御回路を独立的に設計できて従来でのチョークコイル等を不要にする。

また、ＳＬ平面アンテナであるが故、広帯域、高利得で雑音も少なく、給電線２によるＳＬ共振器の境界条件に与える影響が小さい等の効果を奏する。なお、図での上側にあるダイオード２個あるいは下側にあるダイオードのみでも制御できることは勿論である。

（他の事項）上記各実施例ではＳＬ平面アンテナは単一として説明したが、例えばこれらを（縦横マトリクス状）に配列したアレー型にすることもできる。第３図は、例えば第２実施例の偏波面可変型を４素子としてアレー化した平面図である。

この場合、例えば左右側での上下のＳＬ共振器をＭＳＬの第１給電線２ａで接続する。そして、第２給電線２ｂをＳＬとして第１給電線１ａに直交させて電磁結合する。さらに、第３給電線２ｃをＭＳＬとして第２給電線２ｂに直交させて電磁結合し、各ＳＬ共振器に給電する。

なお、第１実施例での周波数可変型の場合でも同様にアレー化でき、４素子に限らず例えば８素子、１６素子等の多素子化アレーを実現できる。

本発明の第１実施例を説明する周波数可変型のＳＬ平面アンテナの図で、同図（ａ）は平面図、同図（ｂ）はＡ−Ａ断面図である。 本発明の第２実施例を説明する偏波面可変型のＳＬ平面アンテナの平面図である。 本発明の他の適用例を示しアレー型としたＳＬ平面アンテナの平面図である。 従来例を説明する周波数可変型のＭＳＬ平面アンテナの図で、同図（ａ）は平面図、同図（ｂ）はＡ−Ａ断面図である。 従来例を説明する偏波面可変型のＭＳＬ平面アンテナの平面図である。

符号の説明

１ 基板、２ 給電線、３ 共振導体、４ 接地導体、５ 開口部、６ 電子素子、６Ａ リアクタンス可変素子６Ａ、６Ｂ スイッチング素子６Ｂ、７ 導線、８ 外部導体、９ 内部導体、１０ 開口線路。

Claims (1)

1. 基板の一主面に設けられて開口部を内部に有する外部導体と、前記開口部に設けられた内部導体と、前記外部導体と前記内部導体との間に環状の開口線路とを有するスロットライン型の平面アンテナにおいて、前記外部導体と前記内部導体の間に電子素子を設けて電気的に接続し、前記電子素子は前記スロットラインの電磁波動場を制御する直交方向に設けられたスイッチング素子であって、前記スロットラインの互いに直交方向に生ずる縮退した共振モードを切り替えることを特徴とする平面アンテナ。

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