JP4163425B2 - パルスアーク溶接のアーク長制御方法 - Google Patents

パルスアーク溶接のアーク長制御方法 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶接ワイヤを定速で送給すると共に、ピーク期間中のピーク電流の通電とベース期間中のベース電流の通電とをパルス周期として繰り返して通電するパルスアーク溶接において、上記ピーク期間中のピーク電圧によるアーク長制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
消耗電極式アーク溶接においては、一般的に、溶接ワイヤの先端部に陽極点が形成され、母材表面上に陰極点が形成されて、これら両極点間にアークが発生する。このときの陽極点と陰極点との間の距離は、一般的に真のアーク長と呼ばれる。一方、溶接ワイヤの先端部とその直下の母材表面との最短距離は、一般的に見かけのアーク長(以下、単にアーク長という)と呼ばれる。溶け込み深さ、ビード外観、溶接欠陥等の重要な溶接品質は、上記の見かけのアーク長と強い相関関係があるので、良好な溶接品質を得るためには溶接中の見かけのアーク長を適正値に維持すること(以下、アーク長制御という)が重要である。他方、溶接電圧値は真のアーク長と略比例関係にある。炭酸ガスアーク溶接、MAG溶接等では、陰極点は溶接ワイヤ直下の母材表面上(以下、溶接狙い位置という)に形成されるので、上記の真のアーク長と見かけのアーク長とは結果的に略等しくなる。このために、溶接電圧の平均値を目標値と略等しくなるように制御することによって、真のアーク長を制御し、そのことで本来の制御目的である見かけのアーク長を制御することができる。これに対して、アルミニウム合金、ステンレス鋼等に用いられるMIG溶接においては、陰極点は、母材表面上の酸化皮膜がまだクリーニング作用によって除去されずに残っている部分に形成されやすいという性質がある。このために、陰極点は、溶接狙い位置近傍ではなく、そこから離れた酸化皮膜のある位置に形成されることが多い。この場合、真のアーク長と見かけのアーク長とは、かなり異なった値となるために、見かけのアーク長と比例関係にない溶接電圧平均値によって、精密に見かけのアーク長を制御することはできない。このMIG溶接の1種であるパルスMIG溶接において、上述の問題を解決するための1つの方法として、以下に説明するピーク電圧によるアーク長制御方法が従来から提案されている。以下、従来技術として、このピーク電圧によるアーク長制御方法について図面を参照して説明する。
【0003】
図1は、パルスMIG溶接の電流・電圧波形図であり、同図(A)は溶接電流Iwの時間変化を示し、同図(B)は溶接電圧Vwの時間変化を示す。また、図2は、アーク発生状態を示す図であり、図2(A)はピーク期間Tp中のアーク発生状態を示し、図2(B)はベース期間Tb中のアーク発生状態を示す。以下、同図及び図2を参照して説明する。
【0004】
▲1▼ 時刻t1〜t3のピーク期間Tp
同図(A)に示すように、時刻t1〜t2のピーク立上り期間Tup中は、ベース電流Ibからピーク電流Ipへと上昇する遷移電流が通電し、その後の時刻t2〜t3の最大ピーク期間Tpp中は、ピーク電流Ipが通電する。同様に、同図(B)に示すように、ピーク立上り期間Tup中は、ベース電圧Vbからピーク電圧Vpへと上昇する遷移電圧が印加し、その後の最大ピーク期間Tpp中は、ピーク電圧Vpが印加する。したがって、ピーク期間Tpは、上記のピーク立上り期間Tup及び最大ピーク期間Tppから形成される。また、上記のピーク期間Tp及びピーク電流Ipの値は、溶接ワイヤの種類、シールドガスの種類、送給速度等に応じて1パルス1溶滴移行になるように適正値に設定される。
【0005】
▲2▼ 時刻t3〜t5のベース期間Tb
同図(A)に示すように、時刻t3〜t4のピーク立下り期間Tdw中は、ピーク電流Ipからベース電流Ibへと下降する遷移電流が通電し、その後の時刻t4〜t5の定常ベース期間Tbb中は、ベース電流Ibが通電する。同様に、同図(B)に示すように、ピーク立下り期間Tdw中は、ピーク電圧Vpからベース電圧Vbへと下降する遷移電圧が印加し、その後の定常ベース期間Tbb中は、ベース電圧Vbが印加する。したがって、ベース期間Tbは、上記のピーク立下り期間Tdw及び定常ベース期間Tbbから形成される。また、上記のベース電流Ibの値は、溶接ワイヤの先端部を溶融させないように数十[A]程度に設定される。上記のベース期間Tbの時間長さは、後述するアーク長制御に従って制御される。
【0006】
したがって、時刻t1〜t5のパルス周期Tfは、ピーク期間Tp及びベース期間Tbから形成され、さらにはピーク立上り期間Tup、最大ピーク期間Tpp、ピーク立下り期間Tdw及び定常ベース期間Tbbから形成される。また、上記のピーク立上り期間Tup及びピーク立下り期間Tdwの値は、溶接電源装置の内部及び外部のインダクタンス値及び抵抗値によって定まる。また、スパッタの発生量を削減しビード外観を良好にするために、上記のピーク立上り期間Tup及びピーク立下りTdwの値を数[ms]に設定する場合もある。また、同図(A)に示すように、溶接電流Iwの平均値が平均電流値Iavとなり、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwの平均値が平均電圧値Vavとなる。
【0007】
図2(A)に、ピーク期間Tp中のアーク発生状態を示す。ピーク電流Ipは300〜600[A]程度の大電流であるために、アーク3がワイヤ送給方向に形成されやすい性質(アークの硬直性)が高くなる。このために、陰極点N1は、酸化皮膜が除去されていてもアークの硬直性によってワイヤ送給方向である溶接狙い位置近傍に形成される。アークの硬直性は、電流値の大きさに比例して高くなり、ピーク電流Ipが300[A]以上の場合には、陰極点N1は酸化皮膜上に形成される性質よりもアークの硬直性によって溶接狙い位置近傍に形成される性質が勝ることになる。したがって、図2(A)に示すように、ピーク期間Tp中は、溶接ワイヤ1の先端の溶滴1aに陽極点が形成され、その直下の溶接狙い位置近傍に陰極点N1が形成されて、両極点間にアーク3が発生する。この結果、真のアーク長La1[mm]と見かけのアーク長Lb1[mm]とは略等しくなる。さらに、ピーク電圧Vpと真のアーク長La1とは略比例関係にあり、上述したように真のアーク長La1と見かけのアーク長Lb1とは略等しいので、結果的に、ピーク電圧Vpと見かけのアーク長Lb1とは、略比例関係になる。したがって、ピーク電圧Vpによるアーク長制御によって、見かけのアーク長Lb1を制御することができる。
【0008】
図2(B)に、ベース期間Tb中のアーク発生状態を示す。ベース電流Ibは、前述したように数十[A]程度と小電流であるために、アークの硬直性は低く、陰極点N2は母材表面の酸化皮膜の除去されていない部分に形成される。通常、溶接狙い位置近傍の酸化皮膜は、ピーク電流Ipの通電等によって真っ先に除去されるために、陰極点N2はそこから離れた酸化皮膜が残る位置に形成される。このために、図2(B)に示すように、ベース期間Tb中は、溶滴1aに陽極点が形成され、溶接狙い位置から離れた酸化皮膜が残る母材表面上に陰極点N2が形成されて、両極点間にアーク3が発生する。この結果、真のアーク長La2[mm]と見かけのアーク長Lb2[mm]とは、かなり異なった値となる。しかも、陰極点N2は、酸化皮膜を求めてその形成位置を高速に移動するために、ベース期間Tbの開始直後の時点、中間の時点、終了直前の時点等のそれぞれの時点によって陰極点N2の形成位置が変化する。ベース電圧Vbは真のアーク長La2と略比例関係にあるために、陰極点N2の移動に伴って真のアーク長La2が変化すると、ベース電圧Vbも変化することになる。したがって、ベース期間Tb中のベース電圧Vbによって見かけのアーク長を制御することはできない。また、同図(B)に示すように、上記の平均電圧Vavは、上記のピーク電圧Vpとベース電圧Vbとの平均値となるために、見かけのアーク長と比例しておらず、かつ、たえず変化するベース電圧Vbを含んでいる。したがって、パルスMIG溶接において、平均電圧Vavによって精密なアーク長制御を行うことはできない。
【0009】
以下、上記のピーク電圧Vpによるパルス周期Tfの制御方法について説明する。
見かけのアーク長は、送給速度と溶融速度とのバランスによって定まり、両値の差に応じて変化する。通常、送給速度は定速であり、溶融速度は平均電流値Iavに略比例する。すなわち、パルス周期Tf毎の見かけのアーク長の変化分ΔLb[mm]は、送給速度Wf[mm/min]と溶融速度Ms[mm/min]との差となる。溶融速度Msは平均電流値Iav[A]と略比例するので、見かけのアーク長の変化分ΔLbは、送給速度Wfと平均電流値Iavに係数を乗じた値との差に等しくなる。したがって、パルス周期Tfを変化させて平均電流値Iavを変化させることによって、溶融速度を変化させて見かけのアーク長を適正値に導くことができる。
【0010】
ところで、前述した図1(A)において、平均電流値Iav[A]は下式で表わすことができる。
Iav=((Ip−Ib)・((1/2)・Tup+(1/2)・Tdw+Tpp)/Tf)+Ib (1)式
上式の右辺において、パルス周期Tf[ms]以外の値は定数とみなすことができるので、パルス周期Tfを変化させることによって平均電流値Iavを変化させることができる。したがって、前述したように、ピーク電圧Vpで見かけのアーク長を検出し、このピーク電圧値Vpと目標値のピーク電圧設定値Vpsとの電圧誤差ΔV=Vps―Vpを演算し、この電圧誤差ΔVを入力として、下式によってパルス周期Tf(n)を演算することができる。
Tf(n)=Tfi−B・ΣΔV=Tf(n-1)−B・ΔV (2)式
但し、Tf(n)は今周期のパルス周期、Tfiはパルス周期の初期値、Bは正の数の増幅率、Tf(n-1)は前周期のパルス周期である。
電圧誤差ΔVを入力として上式に従って今周期のパルス周期Tf(n)が決定される。以上のように、ピーク電圧値Vpとピーク電圧設定値Vpsとが略等しくなる(電圧誤差ΔV≒0)ように、パルス周期Tf(n)を制御することによって、(1)式で前述したように、平均電流値Iavを変化させて溶融速度Msを変化させ見かけのアーク長を制御する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
図3は、従来技術の解決課題を説明するためのピーク電圧波形図である。同図において、時刻t1〜t3は、前述した図1の同時刻に対応している。以下、同図を参照して説明する。
ピーク期間Tpは、前述したように、ピーク立上り期間Tupと、それ以降の最大ピーク期間Tppとからなる。このピーク期間Tp中の溶接電圧値Vwが、ピーク電圧Vpとなる。従来技術では、アーク長制御のためのピーク電圧としては、上記のピーク立上り期間Tupを除いた上記の最大ピーク期間Tpp中のピーク電圧の平均値(以下、最大ピーク電圧平均値Vppという)が用いられていた。
【0012】
しかし、時刻t1のピーク期間Tpの開始時点から定常値に収束する時点までの過渡期間中のピーク電圧は、曲線Y1に示すように理想的な波形となる場合、曲線Y2に示すように大きくオーバーシュートする場合又は曲線Y3に示すように理想波形を下回って収束する場合等種々な場合がある。この理由は、以下のとおりである。すなわち、時刻t1以前のベース期間中のアークは、前述した図2(B)の状態にあり、陰極点N2は溶接狙い位置から離れた位置に形成されている。そして、時刻t1以降のピーク期間Tp中の収束状態でのアークは、前述した図2(A)の状態にあり、陰極点N1は溶接狙い位置近傍に形成される。したがって、時刻t1以前の陰極点の形成位置によって、又は陰極点の過渡的な移動経路によって、それに伴うピーク電圧も、曲線Y1〜Y3に示すような種々な過渡的変化を示すことになる。
【0013】
また、ピーク期間Tpの終了時点(時刻t3)前後において溶滴が移行するように、ピーク期間Tpは設定されるのが通常である。このために、ピーク期間Tpの終了直前に溶滴移行が行われると、同図の曲線Y4に示すように、溶滴に形成されていた陽極点の形成位置が移動することになり、これに伴いピーク電圧が変動する場合がある。
【0014】
上述したように、最大ピーク電圧平均値Vppには、ピーク期間開始時の陰極点の移動に伴う過渡的変動及び溶滴移行時の陽極点の移動に伴う過渡的変動が含まれているために、見かけのアーク長の検出に誤差を生じることになる。特に、上記のピーク期間開始時の電圧変動値は大きいために、これを含んだ最大ピーク電圧平均値Vppによっては精密なアーク長制御を行うことはできなかった。
【0015】
さらに、以下に従来技術の別の解決課題について説明する。
図4は、従来技術における外乱発生時のアーク長の変動を示す図である。同図(A)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(B)はアーク長(点線で示す真のアーク長La及び実線で示す見かけのアーク長Lb)の時間変化を示す。従来技術では、前述したように、アーク長Lbを最大ピーク電圧平均値Vppで検出し、同図(B)に示すアーク長の目標値に対応するピーク電圧設定値Vpsと最大ピーク電圧平均値Vppとの電圧誤差ΔVを演算し、上記(2)式に基づいて同図(A)に示すパルス周期Tfを制御する。したがって、アーク長Lbの変化に応答して、パルス周期Tfが変化する。
【0016】
▲1▼ 時刻t1〜t2の期間
この期間中は、見かけのアーク長Lbと真のアーク長Laとは共に目標値と一致して良好な溶接状態にあるので、最大ピーク電圧平均値Vpp1[V]は、ピーク電圧設定値Vps[V]と略等しくなり、このときのパルス周期はTf1[ms]になっている。
【0017】
▲2▼ 時刻t2〜t3の期間
この期間中も上記▲1▼項と同様に、見かけのアーク長Lbと真のアーク長Laとは共に目標値と一致して良好な溶接状態にあるので、最大ピーク電圧平均値Vpp1[V]は、ピーク電圧設定値Vps[V]と略等しくなり、このときのパルス周期は上記▲1▼項と同様にTf1[ms]になる。
【0018】
▲3▼ 時刻t3〜t4の期間
アルミニウム合金のMIG溶接において、溶滴に含まれるマグネシウム等が高温のために蒸発して溶滴が破裂する現象(以下、溶滴破裂という)がときたま発生する。この溶滴破裂が発生すると、その破裂時の爆風によって真のアーク長Laが変動する場合が生する。この場合、見かけのアーク長Lbは変化していないが、真のアーク長Laが長くなるために、溶接電圧値が高くなる。上記の溶滴破裂以外にも。母材表面の酸化状態、汚れ状態、溶融池の状態、溶滴の状態等が複雑に複合化された溶接状態において、突然に陰極点の形成位置が溶接狙い位置から離れた位置に高速に移動する場合も、ときたま発生する。このような溶滴破裂、陰極点移動等の外乱がピーク期間中に発生すると、同図(B)に示すように、真のアーク長Laは大きく変動して、それに対応して最大ピーク電圧平均値もVpp2[V]に大きくなる。この最大ピーク電圧平均値Vpp2が上記(2)式に入力されると、下記のようにこの期間のパルス周期Tfが演算される。
Tf=Tf1−B・(Vps−Vpp2)=Tf2[ms]
ここで、電圧誤差ΔV=Vps−Vpp2<0であるので、Tf2>Tf1となり、この期間のパルス周期Tf2は前期間よりも長くなる。したがって、見かけのアーク長Lbは目標値のままであるにもかかわらず、パルス周期がTf1からTf2へと長くなる。
【0019】
▲4▼ 時刻t4〜t5の期間
前期間に発生した溶滴破裂、陰極点移動等の外乱は、過渡的なものであるために短時間で消滅することが多い。このために、時刻t4の開始時点では、外乱は消滅しており、真のアーク長Laは目標値に復帰している。見かけのアーク長Lbは、もともと変化していないので、目標値のままである。この期間の最大ピーク電圧平均値は、上記▲1▼〜▲2▼項の期間と同様にVpp1[V]になる。この値が上記(2)式に入力されると、下記のようにこの期間のパルス周期Tfが演算される。
Tf=Tf2−B・(Vps−Vpp1)=Tf2[ms]
ここで、電圧誤差ΔV=Vps−Vpp1=0であるので、この期間のパルス周期はTf2[ms]となり、上記▲1▼〜▲2▼項のアーク長が一定のときのパルス周期Tf1よりも長いままとなる。このために、平均電流値は、上記▲1▼〜▲2▼項のときよりも小さくなり、溶融速度が遅くなるために、見かけのアーク長Lbは目標値よりも短くなる。
【0020】
▲5▼ 時刻t5〜t6の期間
前期間中に見かけのアーク長Lbが目標値よりも短くなるために、この期間の最大ピーク電圧平均値Vpp3[V]は、ピーク電圧設定値Vpsよりも小さくなる。この値が上記(2)式に入力されると、下記のようにこの期間のパルス周期Tfが演算される。
Tf=Tf2−B・(Vps−Vpp3)=Tf3[ms]
ここで、電圧誤差ΔV=Vps−Vpp3>0であるので、パルス周期は前期間のパルス周期Tf2よりも短くなる。これに伴い、平均電流値も前期間よりも大きくなり、溶融速度が速くなるので、見かけのアーク長Lbは長くなり目標値に近づく。
【0021】
▲6▼ 時刻t6〜t7の期間
見かけのアーク長Lbがまだ目標値よりも短いために、この期間の最大ピーク電圧平均値Vpp4も、ピーク電圧設定値Vpsよりも小さくなる。この値が上記(2)式に入力されると、下記のようにこの期間のパルス周期Tfが演算される。
Tf=Tf3−B・(Vps−Vpp4)=Tf4[ms]
ここで、電圧誤差ΔV=Vps−Vpp4>0であるので、パルス周期は前期間のパルス周期Tf3よりも短くなる。これに伴い、平均電流値も前期間よりも大きくなり、溶融速度が速くなるので、見かけのアーク長Lbは長くなり目標値にさらに近づく。この期間の動作を数回程度繰り返した後に、パルス周期は上記▲1▼〜▲2▼項の安定状態のパルス周期Tf1に戻り、見かけのアーク長Lbも目標値に復帰する。
【0022】
上述したように、従来技術では、溶滴破裂、陰極点移動等の外乱が発生すると、見かけのアーク長は目標値に維持されているにもかかわらず、見かけのアーク長が変化したと誤検出して、パルス周期を変化させて見かけのアーク長を目標値から変化させてしまう。このような外乱に起因するアーク長の誤検出に伴うアーク長変動が生じると、溶接品質が悪くなる。
【0023】
そこで、本発明では、電圧変動の影響を受けることなく見かけのアーク長を正確に検出すると共に、外乱に起因するアーク長の誤検出に伴うアーク長変動を抑制することによって、精密にアーク長を制御することができるパルスアーク溶接のアーク長制御方法を提供する。
【0024】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、図5〜8及び(4)式に示すように、
溶接ワイヤを平均電流設定値Iasに対応する送給速度設定値Fsに相当する速度で送給すると共に、ピーク期間Tp中のピーク電流Ipの通電とベース期間Tb中のベース電流Ibの通電とをパルス周期Tfとして繰り返して通電するパルスアーク溶接のアーク長制御方法において、
上記平均電流設定値Iasに応じて中心パルス周期Tcを設定し、上記ピーク期間の開始時の電圧が過渡的に変動する過渡ピーク期間Tpaを除いた定常ピーク期間Tpb中の定常ピーク電圧Vpaを検出し、この定常ピーク電圧値Vpaと予め定めたピーク電圧設定値Vpsとの電圧誤差ΔV及び上記中心パルス周期Tc及び予め定めた正の数の増幅率Kによってパルス周期演算Tc−K・ΔVを行い、この演算値に従ってパルス周期Tfを制御することによってアーク長を適正値に維持することを特徴とするパルスアーク溶接のアーク長制御方法である。
【0025】
第2の発明は、図9及び(4)式〜(5)式に示すように、
溶接ワイヤを平均電流設定値Iasに対応する送給速度設定値Fsに相当する速度で送給すると共に、ピーク期間Tp中のピーク電流Ipの通電とベース期間Tb中のベース電流Ibの通電とをパルス周期Tfとして繰り返して通電するパルスアーク溶接のアーク長制御方法において、
上記平均電流設定値Iasに応じて中心パルス周期Tcを設定し、上記ピーク期間の開始時の電圧が過渡的に変動する過渡ピーク期間Tpaを除いた定常ピーク期間Tpb中の定常ピーク電圧Vpaを検出し、この定常ピーク電圧値Vpaと予め定めたピーク電圧設定値Vpsとの電圧誤差ΔV及び上記中心パルス周期Tc及び予め定めた正の数の増幅率Kによってパルス周期演算Tc−K・ΔVを行い、この演算値に従ってパルス周期Tfを制御すると共に、上記電圧誤差ΔVに応じて上記ピーク電流Ipを増減させることによって、アーク長を適正値に維持することを特徴とするパルスアーク溶接のアーク長制御方法である。
【0026】
第3の発明は、(41)式に示すように、
上記パルス周期演算が、電圧誤差ΔV及び中心パルス周期Tc及び予め定めた正の数の増幅率K1によってTc−Tc・K1・ΔVであることを特徴とする第1又は第2の発明記載のパルスアーク溶接のアーク長制御方法である。
【0027】
第4の発明は、(3)式に示すように、
パルス周期Tfがピーク立上り期間Tup及び最大ピーク期間Tpp及びピーク立下り期間Tdw及び定常ベース期間Tbbから形成されており、ピーク電流設定値Ips及びベース電流設定値Ibs及び平均電流設定値Iasを予め設定し、これらの値によって中心パルス周期Tc=((Ips−Ibs)/(Ias−Ibs))・((1/2)・Tup+(1/2)・Tdw+Tpp)を演算して設定することを特徴とする第1又は第2又は第3の発明記載のパルスアーク溶接のアーク長制御方法である。
【0028】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
[実施例1]
図5は、本発明のピーク電圧検出方法を説明するための前述した図3に対応するピーク電圧波形図である。同図のピーク電圧波形は、図3のときと同一である。以下、同図を参照して説明する。
同図に示すように、時刻t1のピーク期間Tpの開始時において、前述したように陰極点の移動に伴う過渡ピーク期間Tpa中のピーク電圧は、曲線Y1〜Y3のように陰極点の移動経路等によって大きく変動する。そして、この過渡ピーク期間Tpaが経過して定常ピーク期間Tpbに入ると、図2(A)で前述したように、陰極点は溶接狙い位置近傍に安定的に形成されるので、このときのピーク電圧は安定した略定常値(以下、定常ピーク電圧値Vpaという)になる。陰極点が溶接狙い位置近傍に安定して形成されているので、上記の定常ピーク電圧値Vpaによって見かけのアーク長を誤差がほとんどなく正確に検出することができる。したがって、この定常ピーク電圧値Vpaを検出して予め定めたピーク電圧設定値Vos(目標値)と略等しくなるように、パルス周期Tfを制御することによって、適正なアーク長に制御することができる。
【0029】
上記の定常ピーク電圧値Vpaとしては、以下のような検出値を使用することができる。
▲1▼ 特定時点の定常ピーク電圧瞬時値Vpc
同図に示すように、ピーク期間Tpの開始時点から予め定めた遅延時間Tpcが経過した時点の定常ピーク電圧瞬時値Vpcを、定常ピーク電圧値Vpaとして使用することができる。上記の遅延時間Tpcは、過渡ピーク期間Tpaが経過した後から、曲線Y4に示す溶滴移行時の陽極点の移動に伴う電圧変動が発生する前までの期間中の時点になるように、予め設定される。例えば、前述した図3に示す最大ピーク期間Tppの真ん中の時点に設定することが考えられる。
【0030】
▲2▼ 所定期間中の定常ピーク電圧平均値Vpd
上記▲1▼項は瞬時値であるが、検出誤差を減少させるために、上記の遅延時間Tpc経過後から所定の平均化期間Tpd中の定常ピーク電圧の平均値Vpdを、定常ピーク電圧値Vpaとして使用することができる。
【0031】
▲3▼ 定常ピーク期間中の定常ピーク電圧平均値Vpb
上記▲2▼項においてピーク電圧を平均化する期間を、定常ピーク期間Tpbの全期間中とするのが、定常ピーク期間中の定常ピーク電圧平均値Vpbである。
【0032】
▲4▼ 上記▲1▼〜▲3▼項の移動平均値
第n回目のピーク期間Tp(n)中の上記▲1▼項の定常ピーク電圧瞬時値をVpc(n)とし、今周期から前の所定周期m回にわたる移動平均値Vpcrは、下式となる。
Vpcr=(Vpc(n)+Vpc(n-1)+…+Vpc(n-m+1))/m
上式では、各周期の定常ピーク電圧瞬時値Vpcは均等の重みで平均化しているが、今周期に近い周期の値の重みを重くする重み付け移動平均値であってもよい。このように移動平均値を算出して定常ピーク電圧値Vpaとする理由は、以下のとおりである。すなわち、定常ピーク期間Tpb中は、陰極点が溶接狙い位置近傍に形成されていても、溶融池の状態、溶滴の状態等は毎周期ごとに少しは変動しているために、見かけのアーク長も変動することになる。この変動を平均化してより正確な見かけのアーク長を検出するために移動平均値を算出している。
また、上記▲2▼項及び▲3▼項の定常ピーク電圧平均値Vpd及びVpbの過去所定周期にわたる移動平均値についても、上記と同様にして算出することができる。
【0033】
次に、外乱に起因するアーク長の誤検出に伴うアーク長変動を抑制するための、上記の定常ピーク電圧値Vpaを使用した本発明のパルス周期制御方法について説明する。
アーク長が適正値に維持されている良好な溶接状態においては、アーク長の変化はないので、送給速度Wfと溶融速度Ms(平均電流値Iav)とはバランスしている。したがって、アーク長一定状態においては、送給速度Wfが設定されれば、それに対応する平均電流値Iavが一義的に定まり、反対に平均電流値Iavが設定されれば、送給速度は一義的に定まる。この関係を表わした図を溶融特性図という。
【0034】
図6に、この溶融特性図の一例を示す。同図は、溶接ワイヤが直径1.2[mm]のアルミニウム合金ワイヤ(JIS A5356相当材)のときの溶融特性であり、横軸に平均電流値Iav[A]を示し、縦軸に送給速度Wf[cm/min]を示す。例えば、平均電流値Iav=100[A]のときの送給速度Wf=680[cm/min]となる。
【0035】
ところで、平均電流値Iavとパルス周期Tfとの関係は、上記(1)式によって下記のようになる。
Iav=((Ip−Ib)・((1/2)・Tup+(1/2)・Tdw+Tpp)/Tf)+Ib
ここで、ピーク電流の設定値をIps[A]とし、ベース電流の設定値をIbs[A]とし、ピーク立上り期間をTup[ms]とし、最大ピーク期間をTpp[ms]とし、ピーク立下り期間をTdw[ms]とすると、変数の平均電流の設定値Ias[A]を入力とする変数のパルス周期Tf[ms]は、上記(1)式を整理して下式となる。
Tf=((Ips−Ibs)/(Ias−Ibs))・((1/2)・Tup+(1/2)・Tdw+Tpp) (3)式
上式の右辺において、平均電流設定値Ias以外の波形パラメータは全て定数とみなすことができるので、平均電流設定値Iasが設定されるとそれに対応するパルス周期Tfが演算される。この平均電流設定値Iasに対応するパルス周期を中心パルス周期Tcと定義することにする。
【0036】
平均電流設定値Iasが設定されると、前述した図6からそれに対応する送給速度Wfを算出することができる。同時に、平均電流設定値Iasに対応した中心パルス周期Tcを上記(3)式によって演算することができる。前述したように、アーク長一定状態においては、送給速度Wfと溶融速度(平均電流値)がバランスしており、このときのパルス周期Tfは中心パルス周期Tcと一致する。すなわち、平均電流設定値Iasが設定されると、アーク長一定状態でのパルス周期が定まることになる。
【0037】
上記の中心パルス周期Tcを使用した本発明のパルス周期制御方法は、下式として表わすことができる。
Tf(n)=Tc−K・ΔV (4)式
唯し、Kは正の数の増幅率、電圧誤差ΔV=Vps−Vpa、Vpaは定常ピーク電圧値である。
上式において、見かけのアーク長が目標値よりも長くなると、定常ピーク電圧値Vpaがピーク電圧設定値Vpsよりも大きくなるので、ΔV<0となり、今周期のパルス周期Tf(n)は中心パルス周期Tcよりも長くなる。この結果、平均電流値が小さくなり、溶融速度が遅くなるので、見かけのアーク長は短くなり目標値に復帰する。逆に、見かけのアーク長が短くなると、定常ピーク電圧値Vpaがピーク電圧設定値Vpsよりも小さくなるので、ΔV>0となり、今周期のパルス周期Tf(n)は中心パルス周期Tcよりも短くなる。この結果、平均電流値が大きくなり、溶融速度が速くなるので、見かけのアーク長は長くなり目標値に復帰する。
【0038】
上記(4)式において、中心パルス周期Tcに比例して下式のように増幅率Kを変化させてもよい。これは、中心パルス周期Tcの時間長さに比例して、同じ値の電圧誤差ΔVに対するパルス周期Tfの変化幅を大きくして、フィードバック制御における過渡応答性を改善するためである。
K=Tc・K1 (41)式
但し、K1は定数の増幅率(正の数)である。
【0039】
本発明において、中心パルス周期Tcは、平均電流設定値Iasを入力として、上記(3)式を実施する演算回路によって求めてもよい。
図7に、平均電流設定値Ias[A]に対する中心パルス周期Tc[ms]を示す。同図は、直径1.2[mm]のアルミニウム合金ワイヤ(JIS A5356相当材)を使用し、波形パラメータが以下の場合である。すなわち、ピーク電流設定値Ips=330[A]、ベース電流設定値Ibs=30[A]、ピーク立上り期間Tup=1.0[ms]、最大ピーク期間Tpp=0.8[ms]、ピーク立下り期間Tdw=1.0[ms]の場合である。同図は、上記(3)式に基づいて算出することができる。また、予め実験によって測定することもできる。そして、同図の特性を記憶した演算回路によって、平均電流設定値Iasを入力として中心パルス周期Tcを出力してもよい。同図において、例えば、平均電流設定値Ias=100[A]のときの中心パルス周期Tc=7.7[ms]となり、平均電流設定値Ias=150[A]のときの中心パルス周期Tc=4.5[ms]となる。
【0040】
これ以降においては、上述した本発明のアーク長制御方法を実施するための溶接電源装置について説明する。
図8は、本発明を実施するための溶接電源装置のブロック図である。以下、同図を参照して、各回路ブロックについて説明する。
出力制御回路INVは、商用交流電源(3相200[V]等)を入力として、後述する電流誤差増幅信号Eiに従って、インバータ制御、サイリスタ位相制御等の出力制御を行い、溶接を行うための溶接電圧Vw及び溶接電流Iwを出力する。溶接ワイヤ1はワイヤ送給装置の送給ロール5によって溶接トーチ4を通って定速で送給されて、母材2との間にアーク3が発生する。
【0041】
電圧検出回路VDは、溶接電圧Vwを検出して、電圧検出信号Vdを出力する。定常ピーク電圧検出回路VPAは、上記の電圧検出信号Vd及び後述するピーク期間信号Stpを入力として、図5で前述したように過渡ピーク期間Tpa経過後のピーク電圧Vpを検出して、定常ピーク電圧検出信号Vpaを出力する。ピーク電圧設定回路VPSは、予め定めたピーク電圧設定信号Vpsを出力する。電圧誤差回路EVは、上記の定常ピーク電圧検出信号Vpaと上記のピーク電圧設定信号Vpsとの電圧誤差Vps−Vpaを演算して、電圧誤差信号ΔVを出力する。
【0042】
平均電流設定回路IASは、予め定めた平均電流設定信号Iasを出力する。送給速度設定回路FSは、図6で前述した溶融特性を予め記憶し、上記の平均電流設定信号Iasに対応する送給速度設定信号Fsを出力する。送給制御回路FCは、上記の送給速度設定信号Fsに相当する速度でワイヤ送給モータWMを回転させるための送給制御信号Fcを出力する。中心パルス周期演算回路TCSは、上記の平均電流設定信号Ias及び予め定めた波形パラメータによって、上記(3)式の演算を行い、中心パルス周期設定信号Tcsを出力する。パルス周期演算回路TFSは、上記の電圧誤差信号ΔV、中心パルス周期設定信号Tcs及び予め定めた正の数の増幅率Kによって、上記(4)式を演算し、パルス周期設定信号Tfsを出力する。
【0043】
パルス周期タイマ回路TFは、上記のパルス周期設定信号Tfsによって定まる時間毎に短時間だけHighレベルとなるパルス周期信号Stfを出力する。ピーク期間タイマ回路TPは、上記のパルス周期信号Stfが短時間Highレベルに変化した時点から、予め定めた時間長さだけHighレベルとなるピーク期間信号Stpを出力する。したがって、このピーク期間信号Stpは、ピーク期間Tp中はHighレベルとなり、ベース期間Tb中はLowレベルとなる信号である。
【0044】
ピーク電流設定回路IPSは、予め定めたピーク電流設定信号Ipsを出力する。ベース電流設定回路IBSは、予め定めたベース電流設定信号Ibsを出力する。電流設定切換回路SWは、上記のピーク期間信号StpがHighレベルのときにはa側に切り換わり上記のピーク電流設定信号Ipsを電流制御設定信号Iscとして出力し、Lowレベルのときには上記のベース電流設定信号Ibsを電流制御設定信号Iscとして出力する。
【0045】
電流検出回路IDは、溶接電流Iwを検出して、電流検出信号Idを出力する。電流誤差増幅回路EIは、上記の電流制御設定信号Iscと電流検出信号Idとの誤差を増幅して、電流誤差増幅信号Eiを出力する。この電流誤差増幅回路EIによって、溶接電源装置PSの外部特性は定電流特性に出力制御されて、上記の電流制御設定信号Iscに相当する溶接電流Iwが通電する。
【0046】
上述した溶接電源装置PSによって、定常ピーク電圧検出信号Vpaの値が目標値のピーク電圧設定信号Vpsの値と略等しくなるように、上記(3)式によって演算された中心パルス周期設定信号Tcsを中心値として、上記(4)式に基づいてパルス周期Tfが制御されて、見かけのアーク長を適正値に維持する。
【0047】
[実施例2]
実施例2の発明では、ピーク電圧設定値Vpsと定常ピーク電圧値Vpaとの電圧誤差ΔV=Vps−Vpaを入力として、上記(4)式Tf(n)=Tc−K・ΔVによって今周期のパルス周期Tf(n)を制御すると共に、上記の電圧誤差ΔVに応じて次周期のピーク電流Ip(n+1)を制御するアーク長制御方法である。ピーク電流Ipの制御方法の一例を、下式に示す。
Ipsc(n+1)=Ips+G・ΔV (5)式
但し、Ips c(n+1)は次周期のピーク電流制御設定値、Ipsは予め定めたピーク電流設定値、Gは予め定めた正の数の増幅率である。
上式において、見かけのアーク長が目標値よりも長くなると、定常ピーク電圧値Vpaがピーク電圧設定値Vpsよりも大きくなるので、ΔV<0となり、次周期のピーク電流Ipは小さくなる。この結果、平均電流値が小さくなり溶融速度が遅くなるので、見かけのアーク長は短くなり目標値に復帰する。逆に、見かけのアーク長が短くなると、定常ピーク電圧値Vpaがピーク電圧設定値Vpsよりも小さくなるので、ΔV>0となり、次周期のピーク電流Ipは大きくなる。この結果、平均電流値が大きくなり溶融速度が速くなるので、見かけのアーク長は長くなり目標値に復帰する。このときに、ピーク電流Ipの変化幅は、上記のピーク電流設定値Ipsを中心値として±数十[A]程度の範囲に制限してもよい。これは、ピーク電流Ipの値が、1パルス1溶滴移行の範囲内で変化するようにするためである。
【0048】
上述したように、パルス周期及びピーク電流を同時に制御する理由は、電圧誤差ΔVが大きな値となると、パルス周期が大きく変化することになり、その結果、溶接状態が過渡的に不安定になる場合がある。このような場合に、パルス周期及びピーク電流を同時に制御すると、大きな値の電圧誤差ΔVを2つで分担することになり、パルス周期の変化幅を小さくすることができ、溶接状態が過渡的に不安定になるのを抑制することができる。
【0049】
実施例2の発明を実施するための溶接電源装置のブロック図は、前述した図8のブロック図においてピーク電流設定回路IPSを図9に示すピーク電流制御設定回路IPSCに置換したものとなる。以下、同図を参照して説明する。
増幅回路AMPは、電圧誤差信号ΔVに予め定めた増幅率Gを乗じて、増幅信号G・ΔVを出力する。ピーク電流設定回路IPSは、予め定めたピーク電流設定信号Ipsを出力する。加算回路ADは、上記の増幅信号G・ΔVとピーク電流設定信号Ipsとの加算を行い、ピーク電流制御設定信号Ipscを出力する。したがって、このピーク電流制御設定回路IPSCは、上記(5)式の演算を行う。
【0050】
上述したように、本発明のアーク長制御方法は、パルスMIG溶接において大きな効果を奏するが、パルスMAG溶接においても同様にアーク長を精密に制御することができる。したがって、本発明はパルスアーク溶接全体に適用することができる。
【0051】
[効果]
以下に、本発明の効果について、図面を参照して説明する。
図10は、前述した図4に対応する本発明における外乱発生時のアーク長の変動を示す図である。同図(A)は溶接電圧Vwの時間変化を示し、同図(B)はアーク長(点線で示す真のアーク長La及び実線で示す見かけのアーク長Lb)の時間変化を示す。前述したように、アーク長Lbを定常ピーク電圧値Vpaで検出し、同図(B)に示すアーク長の目標値に対応するピーク電圧設定値Vpsと定常ピーク電圧値Vpaとの電圧誤差ΔVを演算し、上記(4)式に基づいて同図(A)に示すパルス周期Tfを制御する。したがって、アーク長Lbの変化に応答して、パルス周期Tfが変化する。以下、同図を参照して説明する。
【0052】
▲1▼ 時刻t1〜t2の期間
この期間中は、見かけのアーク長Lbと真のアーク長Laとは共に目標値と一致して良好な溶接状態にあるので、定常ピーク電圧値Vpa1[V]はピーク電圧設定値Vps[V]と略等しくなる。この定常ピーク電圧値Vpa1が上記(4)式に入力されると、下記のようにこの期間のパルス周期Tfが演算される。
Tf=Tc−K・(Vps−Vpa1)=Tf1[ms]
ここで、電圧誤差ΔV=Vps−Vpa1=0であるので、パルス周期Tf1=Tcとなる。したがって、この期間のパルス周期Tf1は中心パルス周期Tcと等しくなる。
【0053】
▲2▼ 時刻t2〜t3の期間
この期間中も上記▲1▼項と同様に、見かけのアーク長Lbと真のアーク長Laとは共に目標値と一致して良好な溶接状態にあるので、定常ピーク電圧値Vpa1[V]はピーク電圧設定値Vps[V]と略等しくなり、パルス周期は上記▲1▼項と同様にTf1[ms]になる。
【0054】
▲3▼ 時刻t3〜t4の期間
図4のときと同様に、溶滴破裂、陰極点移動等の外乱がピーク期間中に発生すると、同図(B)に示すように、真のアーク長Laは大きく変動して、それに対応して定常ピーク電圧値もVpa1[V]からVpa2[V]に大きくなる。この定常ピーク電圧値Vpa2が上記(4)式に入力されると、下記のようにこの期間のパルス周期Tfが演算される。
Tf=Tc−K・(Vps−Vpa2)=Tf2[ms]
ここで、電圧誤差ΔV=Vps−Vpa2<0であるので、Tf2>Tcとなり、この期間のパルス周期は中心パルス周期Tcよりも長くなる。したがって、見かけのアーク長Lbは目標値のままであるにもかかわらず、パルス周期がTf1からTf2へと長くなる。
【0055】
▲4▼ 時刻t4〜t5の期間
前期間に発生した溶滴破裂、陰極点移動等の外乱は、過渡的なものであるために短時間で消滅することが多い。このために、時刻t4の開始時点では、外乱は消滅しているために、真のアーク長Laは目標値に復帰している。他方、見かけのアーク長Lbは、もともと変化していないので、目標値のままである。このために、この期間の定常ピーク電圧値は、上記▲1▼〜▲2▼項の期間と同様にVpa1[V]になる。この値が上記(4)式に入力されると、下記のようにこの期間のパルス周期Tfが演算される。
Tf=Tc−K・(Vps−Vpa1)=Tf1[ms]
ここで、電圧誤差ΔV=Vps−Vpa1=0であるので、この期間のパルス周期Tf1は中心パルス周期Tcと等しくなる。
【0056】
上述したように、本発明では、溶滴破裂、陰極点移動等の外乱が発生してもその外乱が短時間で消滅すれば、見かけのアーク長は目標値に維持される。
【0057】
図11は、溶接状態が安定する電流範囲を従来技術と本発明とで比較した図である。同図は、溶接ワイヤに直径1.2[mm]のアルミニウム合金ワイヤ(JIS A5356相当材)を使用して、パルスMIG溶接を行い、溶接状態が安定して溶接品質が良好である平均電流値Iav[A]の範囲を測定したものである。同図から明らかなように、従来技術では、安定電流範囲は60〜230[A]になっている。これに対して、本発明では、安定電流範囲は30〜270[A]に拡大している。特に、本発明では、不安定になりやすい小電流域の安定性が大幅に改善されている。
【0058】
【発明の効果】
本発明では、パルスアーク溶接において、定常ピーク電圧値Vpaと目標値との電圧誤差ΔVに応じて中心パルス周期Tcを中心値としてパルス周期Tfを制御することでアーク長制御を行うことによって、溶滴破裂、陰極点移動等の外乱の影響を抑制してアーク長を精密に制御することができるので、高品質な溶接結果を得ることができる。
さらに、定常ピーク電圧値Vpaと目標値との電圧誤差ΔVに応じてパルス周期Tf及びピーク電流Ipを制御することによって、トーチ高さ等の大きな変動に伴って上記電圧誤差ΔVが大きく変化したときでも、溶接状態が過渡的に不安定になることがないので、常に良好な溶接品質を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来技術のパルスMIG溶接の電流・電圧波形図
【図2】従来技術のピーク期間Tp及びベース期間Tbのアーク発生状態図
【図3】本発明の解決課題を説明するための従来技術のピーク電圧波形図
【図4】本発明の解決課題を説明するための従来技術のアーク長変動図
【図5】本発明のアーク長検出方法を示すピーク電圧波形図
【図6】本発明の溶融特性図
【図7】本発明の平均電流設定値Iasと中心パルス周期Tcとの関係図
【図8】本発明の溶接電源装置のブロック図
【図9】本発明のピーク電流制御設定回路IPSCのブロック図
【図10】本発明の効果を示す図4に対応するアーク長変動図
【図11】本発明の効果を示す安定電流範囲の比較図
【符号の説明】
1 溶接ワイヤ
1a 溶滴
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
AMP 増幅回路
B,G,K 増幅率
EI 電流誤差増幅回路
Ei 電流誤差増幅信号
EV 電圧誤差回路
FC 送給制御回路
Fc 送給制御信号
FS 送給速度設定回路
Fs 送給速度設定信号
G・ΔV 増幅信号
IAS 平均電流設定回路
Ias 平均電流設定信号
Iav 平均電流値
Ib ベース電流
IBS ベース電流設定回路
Ibs ベース電流設定信号
INV 出力制御回路
Ip ピーク電流
IPS ピーク電流設定回路
Ips ピーク電流設定信号
IPSC ピーク電流制御設定回路
Ipsc ピーク電流制御設定信号
Isc 電流制御設定信号
Iw 溶接電流
La 真のアーク長
Lb 見かけのアーク長
N1,N2 陰極点
PS 溶接電源装置
Stf パルス周期信号
Stp ピーク期間信号
SW 電流設定切換回路
Tb ベース期間
TCS 中心パルス周期演算回路
Tcs 中心パルス周期設定信号
Tdw ピーク立下り期間
TF パルス周期タイマ回路
Tf パルス周期
TFS パルス周期演算回路
Tfs パルス周期設定信号
TP ピーク期間タイマ回路
Tp ピーク期間
Tpa 過渡ピーク期間
Tpb 定常ピーク期間
Tpc 遅延時間
Tpd 平均化時間
Tpp 最大ピーク期間
Tup ピーク立上り期間
Vav 平均電圧値
Vb ベース電圧
VD 電圧検出回路
Vd 電圧検出信号
Vp ピーク電圧
VPA 定常ピーク電圧検出回路
Vpa 定常ピーク電圧(検出信号)
Vpb,Vpd 定常ピーク電圧平均値
Vpc 定常ピーク電圧瞬時値
Vpp 最大ピーク電圧平均値
VPS ピーク電圧設定回路
Vps ピーク電圧設定信号
Vw 溶接電圧
WM ワイヤ送給モータ
Y1〜Y4 電圧変動の曲線
ΔV 電圧誤差(信号)

Claims (4)

  1. 溶接ワイヤを平均電流設定値に対応する送給速度設定値に相当する速度で送給すると共に、ピーク期間中のピーク電流の通電とベース期間中のベース電流の通電とをパルス周期として繰り返して通電するパルスアーク溶接のアーク長制御方法において、
    前記平均電流設定値に応じて中心パルス周期Tcを設定し、前記ピーク期間の開始時の電圧が過渡的に変動する過渡ピーク期間を除いた定常ピーク期間中の定常ピーク電圧を検出し、この定常ピーク電圧値と予め定めたピーク電圧設定値との電圧誤差ΔV及び前記中心パルス周期Tc及び予め定めた正の数の増幅率Kによってパルス周期演算Tc−K・ΔVを行い、この演算値に従ってパルス周期を制御することによってアーク長を適正値に維持することを特徴とするパルスアーク溶接のアーク長制御方法。
  2. 溶接ワイヤを平均電流設定値に対応する送給速度設定値に相当する速度で送給すると共に、ピーク期間中のピーク電流の通電とベース期間中のベース電流の通電とをパルス周期として繰り返して通電するパルスアーク溶接のアーク長制御方法において、
    前記平均電流設定値に応じて中心パルス周期Tcを設定し、前記ピーク期間の開始時の電圧が過渡的に変動する過渡ピーク期間を除いた定常ピーク期間中の定常ピーク電圧を検出し、この定常ピーク電圧値と予め定めたピーク電圧設定値との電圧誤差ΔV及び前記中心パルス周期Tc及び予め定めた正の数の増幅率Kによってパルス周期演算Tc−K・ΔVを行い、この演算値に従ってパルス周期を制御すると共に、前記電圧誤差ΔVに応じて前記ピーク電流を増減させることによって、アーク長を適正値に維持することを特徴とするパルスアーク溶接のアーク長制御方法。
  3. 前記パルス周期演算が、電圧誤差ΔV及び中心パルス周期Tc及び予め定めた正の数の増幅率K1によってTc−Tc・K1・ΔVであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のパルスアーク溶接のアーク長制御方法。
  4. パルス周期がピーク立上り期間Tup及び最大ピーク期間Tpp及びピーク立下り期間Tdw及び定常ベース期間Tbbから形成されており、ピーク電流設定値Ips及びベース電流設定値Ibs及び平均電流設定値Iasを予め設定し、これらの値によって中心パルス周期Tc=((Ips−Ibs)/(Ias−Ibs))・((1/2)・Tup+(1/2)・Tdw+Tpp)を演算して設定することを特徴とする請求項1又は請求項2又は請求項3記載のパルスアーク溶接のアーク長制御方法。
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