JP4162425B2 - 導電性を有する多層反射防止膜付透明基板 - Google Patents

導電性を有する多層反射防止膜付透明基板 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高透過率が得られる導電性を有する多層反射防止膜付透明基板に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、ガラス板等の透明基板にインジウム錫酸化物(ITO)やSnO2等の透明導電膜を形成して、太陽電池などの光電変換素子の電極や液晶等の表示装置またはタッチパネルの電極として利用するものが知られている。特にタッチパネルや液晶で使用される場合、可視領域での高透過率や最適な抵抗値を確保することが必要となってくる。さらに液晶パネルの製造に於いては100Ω/□以下、好ましくは50Ω/□以下の低抵抗値を有する透明導電膜が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、低抵抗値の透明導電膜を作製しようとする場合、導電膜の膜厚をより厚くする必要があり、導電膜の膜厚が厚くなればなるほど、透過率は下がり、高透過率を得ることが難しくなってしまう。
【0004】
本発明では上記従来技術の問題点に鑑み、低抵抗値の透明導電膜でありながら、高透過率を得ることができる導電性を有する多層反射防止膜付透明基板を提供することを技術課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1) 透明基板上に透明誘電体の薄膜と透明導電体の薄膜とを積層する導電性を有する多層反射防止膜付透明基板において、前記透明基板側から順に、前記透明基板の屈折率より低い屈折率である透明誘電体の第1薄膜層と、該第1薄膜層の屈折率より高い屈折率である透明誘電体の第2薄膜層と、最外層に透明導電体の第3薄膜層との3層を有し、該第3薄膜層の光学膜厚は表面抵抗値が略50Ω/□以下となる膜厚にて決定され、第2薄膜層の光学膜厚は前記第3薄膜層の光学膜厚との和が略λ/2(ただし、λ= 550nm となるように決定され、前記透明基板上に各々積層してなることを特徴とする導電性を有する。
(2) (1)の多層反射防止膜付透明基板において、前記第1薄膜層の光学膜厚は略λ/4(ただし、λ= 550nm となることを特徴とする。
【発明の実施の形態】
以下に図面を参照しながら説明する。図1は本発明の実施形態である導電性を有する多層反射防止膜の積層構成を示す概念図である。
1は透明の基板である。使用する基板の屈折率は1.48〜1.70程度のものを使用する。具体的に、基板材料としてはガラス、プラスチック(ポリカーボネイト、ポリエチレンテレフタラート等)が用いられ、光学的に透明であれば特に限定されない。
【0006】
2は基板1上に積層され、基板1の屈折率よりも低い屈折率をもつ透明誘電体の第1薄膜層である。第1薄膜層2に使用される透明誘電体は、使用する基板1に応じて適宜選択されるが、屈折率1.35〜1.60程度の範囲のものが使用される。具体的には、第1薄膜層2の主成分にはSiO2(屈折率1.46)やMgF2が挙げられる。また、第1薄膜層2の光学的膜厚(以後、単に膜厚と記す)は略λ/4の膜厚となるように形成される。
【0007】
また、基板1と多層膜との間の密着力を上げるために基板1と第1薄膜層2との間にアンダーコート層を設けてもよい。このアンダーコート層は基板1の表面を保護するとともに、基板1と多層膜との間の密着力を上げることが可能なハードコートがよく利用される。また、アンダーコート層の膜厚は光学的な阻害が起こらない程度の膜厚であることが好ましい。
【0008】
3は第1薄膜層2上に積層され、第1薄膜層2の屈折率よりも高い屈折率をもつ透明誘電体の第2薄膜層である。第2薄膜層3に使用される透明誘電体は、屈折率1.50〜2.50程度の範囲のものが使用される。具体的には、第2薄膜層3の主成分にはZrO2(屈折率1.9)や、TiO2(屈折率2.2)、Al23(屈折率1.6)等が挙げられる。第2薄膜層3の膜厚は第2薄膜層3上に載せられる導電性を有する薄膜層の膜厚との合計の膜厚が略λ/2となるように決定される。
【0009】
4は第2薄膜層3上に積層され、最外層となる導電性を有する第3薄膜層である。第3薄膜層4の主成分にはITOやSnO2等が挙げられる。第3薄膜層4の膜厚により表面抵抗値が決定されるため、表面抵抗値を低抵抗値に設定する場合には膜厚を厚く、高抵抗値にする場合には膜厚を薄くすればよい。
【0010】
本実施の形態では、液晶ディスプレイ用に使用するために表面抵抗値が10Ω/□〜100Ω/□、好ましくは50Ω/□以下の間にて決定される。従って、この表面抵抗値と対応する第3薄膜層4の膜厚は80nm〜200nmの範囲で形成される。
【0011】
ここで、本明細書中では、後述するように、多層反射防止膜付透明基板の評価をY値を用いて行うことにした。
Y値とは、分光光度計によって測定された試料の分光反射率とXYZ表色系の等色関数y(λ)の積を可視域波長で積分した値である。そして、刺激値Y(Y値)は、明るさを評価する際の指標とされている。したがって、視感反射率としてY値を用いた場合には、Y値が高いほど高反射であることを意味し、Y値が低いほど高透過であることを意味する。
【0012】
そして、本明細書中では、視感反射率としてY値を用いている。つまり、本明細書中のY値は、反射率を測定して算出したものである。したがって、本明細書では、Y値が低いほど低反射、言い換えると高透過であることを意味する。そして、現在、このY値を「0.1」単位で低減させるための研究開発が盛んに行われている。このため、当業者間では、Y値が「0.1」低くなれば非常に大きな成果が得られたと考えられているのが実情である。
【0013】
視感反射率としてのY値を低くするには、波長550nmにおいて反射率を最小にすることが必要である。そして、最外層となる導電性を有する薄膜層(本実施の形態では第3薄膜層4)の膜厚を変化させれば、最小反射率がシフトすることが知られている。具体的には、導電性を有する薄膜層の膜厚を薄くすれば最小反射率は短波長側にシフトし、導電性を有する薄膜層の膜厚を厚くすれば最小反射率は長波長側にシフトする。
【0014】
しかしながら、第3薄膜層4の表面抵抗値は要求値に固定する必要があるため、第3薄膜層4の膜厚を変化させることができない。そこで、本願発明者は、試行錯誤を重ねた結果、第3薄膜層4の膜厚を変化させる代わりに、第2薄膜層3を第3薄膜層4と同等の屈折率をもつ膜とし、第2薄膜層3の膜厚を変化させれば、最小反射率がシフトすることを突き止めた。そのシュミレーション結果を、図5に示す。このシュミレーションでは、第2薄膜層3としてTiO2膜を形成させ、第3薄膜層4としてITO膜を形成させて、ITO膜の膜厚を150nm(表面抵抗30Ω/□)に固定して、第2薄膜層3の膜厚を変化させた。このとき第1薄膜層2(SiO2)の膜厚は波長550nmにて略λ/4となる膜厚(142.5nm)としている。
【0015】
図5に示すように、TiO2膜の膜厚を変化させると、最小反射率がシフトすることがわかる。より具体的には、TiO2膜の膜厚を厚くするにしたがって、最小反射率が長波長側へとシフトすることがわかる。そして、TiO2膜の膜厚を124nm(▲4▼の場合)にしたとき、すなわちTiO2膜の膜厚とITO膜の膜厚との和が274nmのときに波長550nmで反射率が最小となることが判った。
【0016】
したがって、上記したように、第2薄膜層3の膜厚を、第2薄膜層3上に載せられる第3薄膜層4の膜厚との合計の膜厚が略λ/2となるようにしたことにより、波長550nmで反射率が最小となるので、Y値を低くすることができ、高い透過率を得ることができる。
【0017】
また、上記したような各薄膜層2〜4を透明基板1上に形成する方法としては、物理的方法では熱蒸着方法やスパッタ方法、イオンプレーティング方法等が挙げられる。また、化学的方法ではめっき方法や化学的気層成長方法等が挙げられる。これらの成膜方法は本発明の実施の形態としてすべて使用可能であるが、特に熱蒸着方法の一つである真空蒸着方法やスパッタ方法は、膜厚制御が正確にできるため、好適に用いられる。
【0018】
なお、本実施の形態は、単なる例示にすぎず本発明を何ら限定するものではない。従って、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲内での種々の変形、改良が可能である。
【0019】
以上のような構成を備える導電性を有する多層反射防止膜付透明基板について実施例を挙げ、より具体的に説明する。
【0020】
<実施例1>
ハードコート付きポリカーボネイト基板(屈折率1.58)を用意し、基板表面の汚れをとるために超音波洗浄機で洗浄する。基材を乾燥させた後、真空蒸着装置に基材を投入し、排気を行なう。排気を始めてから基板への成膜完了後リークするまで、装置内のマイクロヒーター、ハロゲンヒーターは130℃で加熱を行なう。マイクロヒーター、ハロゲンヒーターは共に基板の加熱を行なう。また、装置内には予め、第1層から第3層までの成膜用の薬品を準備しておく。
【0021】
加熱を始めてから約1時間後、成膜を開始する。装置内に予め設置しておいた第1層蒸着用の薬品(SiO2ザラメ)を使用し、基板上に第1薄膜層としてSiO2を主成分とする薄膜層を形成する。蒸着時間は約5分、膜厚は142.5nm(波長550nmにて略λ/4となる膜厚)とした。
【0022】
次に第2薄膜層蒸着用の薬品(オプトロン社製TiO2タブレット)を使用し、第1薄膜層上に第2薄膜層としてTiO2を主成分とする薄膜層を形成する。蒸着時間は約5分、膜厚は124.0nmとした。
【0023】
次に第3薄膜層蒸着用の薬品(オプトロン社製ITOタブレット)を使用し、第3薄膜層としてITOを主成分とする薄膜層を形成する。第3薄膜層の薄膜層を形成している間はプラズマ処理(RF処理)を行なっておく。膜厚は表面抵抗値が30Ω/□が得られる厚さである150.0nmとした。
【0024】
このようにして得られた導電性を有する多層反射防止膜を徐冷し、試料とした。この試料の可視光透過率を分光光度計により測定した。このときの視感度透過率は91%であった。また、この膜構成、膜厚での透過率及び反射率のシュミレーション結果を図2に示す。シュミレーション結果では波長550nmにおいて透過率98.9%、反射率1.0%となった。
【0025】
<比較例1>
実施例1で使用する基板(ポリカーボネイト 屈折率1.58)の上にITO(屈折率2.0)の薄膜層を膜厚150.0nmにて形成した場合をシュミレーションした。このときのシュミレーション結果を図3に示す。シュミレーション結果では波長550nmにおいて透過率81.4%、反射率18.5%となった。
【0026】
<比較例2>
実施例1で使用する基板(ポリカーボネイト 屈折率1.58)の上にSiO2(屈折率1.46)単層の反射防止膜(膜厚 138nm=略1/4λ)を形成させ、その上にITO(屈折率2.0)の薄膜層を膜厚150.0nmにて形成した場合をシュミレーションした。このときのシュミレーション結果を図4に示す。シュミレーション結果では波長550nmにおいて透過率75.7%、反射率24.2%となった。
【0027】
<比較例3>
本実施の形態の膜構成にて導電膜の膜厚を種々変化させたときの各膜厚とY値を表1に示す。
ここで実施例1の膜構成において基本的には第1薄膜層の膜厚はλ/4、第2薄膜層と第3薄膜層との合計の膜厚はλ/2であるが、できるだけ低いY値が得られるように各膜厚とも若干量だけ修正してある。
【0028】
また、比較例2の膜構成(基板+SiO2+ITO)にて導電膜の膜厚を種々変化させたときのSiO2の膜厚とそのときのY値を表2示す。このときSiO2の膜厚はY値ができるだけ低くなるような膜厚とした。また、実施例1と同じ基板上に高屈折率の薄膜層(TiO2)、低屈折率の薄膜層(SiO2)を順次形成し、最外層に導電膜を形成する膜構成にて導電膜の膜厚を種々変化させたときの各導電膜の膜厚とY値を表3に示す。このときの各膜厚はY値ができるだけ低くなるような膜厚とした。
【0029】
<結果>
表1に示す本実施の形態での膜構成によるY値は、表2に示す膜構成にて得られるY値に対してすべて下回る値が得られた。また、表3に示す膜構成との比較においては、IT0の膜厚が120nm以上(表面抵抗値が略50Ω/□以下)のときに何れも下回る値が得られた。
【0030】
【表1】
Figure 0004162425
【0031】
【表2】
Figure 0004162425
【0032】
【表3】
Figure 0004162425
【0033】
【発明の効果】
以上のように本発明よれば、表面抵抗値が低抵抗値を必要とする透明導電膜に場合において、最表面層の導電性と必要な抵抗値を確保するとともに、高透過率を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の膜構成を示す模式図である。
【図2】実施例1における膜構成、膜厚での透過率及び反射率のシュミレーション結果を示した図である。
【図3】比較例1における膜構成、膜厚での透過率及び反射率のシュミレーション結果を示した図である。
【図4】比較例2における膜構成、膜厚での透過率及び反射率のシュミレーション結果を示した図である。
【図5】第2薄膜層の膜厚を変化させた時の最小反射率のシフトの様子を示した図である。
【符号の説明】
1 基板
2 第1薄膜層
3 第2薄膜層
4 第3薄膜層

Claims (2)

  1. 透明基板上に透明誘電体の薄膜と透明導電体の薄膜とを積層する導電性を有する多層反射防止膜付透明基板において、前記透明基板側から順に、前記透明基板の屈折率より低い屈折率である透明誘電体の第1薄膜層と、該第1薄膜層の屈折率より高い屈折率である透明誘電体の第2薄膜層と、最外層に透明導電体の第3薄膜層との3層を有し、該第3薄膜層の光学膜厚は表面抵抗値が略50Ω/□以下となる膜厚にて決定され、第2薄膜層の光学膜厚は前記第3薄膜層の光学膜厚との和が略λ/2(ただし、λ= 550nm となるように決定され、前記透明基板上に各々積層してなることを特徴とする導電性を有する多層反射防止膜付透明基板。
  2. 請求項1の多層反射防止膜付透明基板において、前記第1薄膜層の光学膜厚は略λ/4(ただし、λ= 550nm となることを特徴とする多層反射防止膜付透明基板。
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