JP4161661B2 - 記録装置およびその制御方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、記録装置およびその制御方法に関し、特に偏芯方式のPG調整機構を有するドットインパクトプリンタおよびその制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
連続紙や複写式用紙に印刷を行うプリンタとして、ドットインパクトプリンタが知られている。ドットインパクトプリンタは、記録ヘッドを記録用紙の幅方向に移動しながら、複数の記録ワイヤを打ち出すことによって印刷を行うプリンタである。また、ドットインパクトプリンタは、一般に、記録ヘッドとプラテンとの距離(プラテンギャップ、以下、「PG」という。)を調整するPG調整機構を備えており、記録ヘッドと、プラテンに配置された記録用紙との間の距離を変更できるように構成されている。これにより、ドットインパクトプリンタは、厚さの異なる連続紙や複写式用紙に印刷を行う場合でも、記録ヘッドと記録用紙との間の距離を一定に調整することができる。
【0003】
ところで、PG調整機構には、キャリッジガイド軸を偏芯回転させて記録ヘッドをプラテン側に移動可能にした偏芯方式がある(例えば、特許文献1参照)。ここで、図8は、偏芯方式を採用したプリンタの記録ヘッド周りの構成を示す図である。同図に示すように、記録ヘッド1は、キャリッジ2に固定され、キャリッジ2は、キャリッジガイド軸3、4によってプラテン5の延長方向(紙面垂直方向)に移動可能に案内される。ここで、図9に示すように、キャリッジガイド軸3は、両端の軸が偏芯されて形成されている。これにより、キャリッジ2は、キャリッジガイド軸3の回転によってプラテン5に対して前後方向に移動し、PGを変更できるように構成されている。ここで、図10は、図8の状態からキャリッジガイド軸3を45°回転した時の状態を示す図である。
【0004】
また、ドットインパクトプリンタにおいては、円筒形のプラテンを採用した場合に印字が薄くなったり縦線が湾曲しないように、記録ヘッドのセンターから離れた記録ワイヤのコアへの通電を、センターよりの記録ワイヤのコアへの通電タイミングよりも早めるようにしたものがある(例えば、特許文献2)。ここで、図11は、記録ヘッド1から打ち出される各記録ワイヤ6の位置を示す図である。
これによって、記録ヘッド1のセンターから離れた記録ワイヤ6のコアへの通電を、センターよりの記録ワイヤ6のコアへの通電タイミングよりも早めておくことにより、印字が薄くなったり縦線が湾曲する場合を回避することができる。
【0005】
【特許文献1】
特開平10−244729号公報(第3−4頁、第1図、第3図)
【特許文献2】
特開2001−277596号公報(第3−6頁、第5図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した偏芯方式では、記録ヘッド1は、キャリッジガイド軸3の回転によりキャリッジ2とガイド軸4との接点を中心として回転するため、PGを変更すると記録ヘッド1の傾きも変化する。このため、図12に示すように、記録ヘッド1の傾きが変化すると、各記録ワイヤ6の飛行距離が変わってしまう。例えば、図11の状態では、#1と#9の記録ワイヤ6の飛行距離はほぼ同一で、#5の記録ワイヤ6の飛行距離よりΔD 1だけ長いのに対し、図11の状態から記録ヘッド1が傾くと、#1と#9の記録ワイヤ6の飛行距離は異なることとなる。
【0007】
したがって、記録ヘッド1のセンターから離れた記録ワイヤ6のコアへの通電を、センターよりの記録ワイヤのコアへの通電タイミングよりも早めるようにしても、キャリッジガイド軸の回転させてPGを変更すると、図13に示すように、印字の理想位置に対するズレ(以下、アライメントズレという。)が変わってしまい、印字が薄くなったり、縦線が湾曲してしまうという問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、キャリッジガイド軸の回転に起因する印字のアライメントズレを補正することができる記録装置およびその制御方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述課題を解決するため、請求項1記載の発明は、複数の記録ワイヤを有し、各記録ワイヤに対応するコアへの通電によって前記記録ワイヤを打ち出す記録ヘッドと、前記各コアへの通電を制御する制御手段と、キャリッジガイド軸を偏芯回転させて前記記録ヘッドとプラテンとの距離を変更し、プラテンギャップを調整する手段とを有する記録装置において、前記キャリッジガイド軸の回転量を測定する測定手段を有し、前記制御手段は、前記測定手段で測定された前記キャリッジガイド軸の回転量に基づいて各コアへの通電タイミングの補正量を基本補正量として取得し、現在設定されている記録ヘッドの移動速度を取得し、この移動速度に基づいて各コアへの通電タイミングの補正量を取得し、この補正量と前記基本補正量とに基づいて通電タイミングの最終補正量を設定し、この最終補正量に基づいて各コアへの通電タイミングを補正することを特徴とする。
【0011】
た、前記キャリッジガイド軸の回転量と、前記各コアへの通電タイミングの補正量とを対応づけた補正テーブルを記憶する第1の記憶手段をさらに有し、前記補正手段は、前記補正テーブルに基づいて前記各コアへの通電タイミングを補正することを特徴とする。この構成によれば、補正テーブルに基づいて各コアへの通電タイミングを簡易に特定でき、キャリッジガイド軸の回転に伴う印字のアライメントズレを補正することができる。
【0012】
た、前記補正手段は、前記測定手段で測定された前記キャリッジガイド軸の回転量と、前記記録ヘッドを保持したキャリッジの移動速度とに基づいて前記各コアへの通電タイミングを補正することを特徴とする。この構成によれば、記録ヘッドの傾きとキャリッジの移動速度とに基づいて前記各コアへの通電タイミングを補正するので、キャリッジガイド軸の回転とキャリッジの移動速度に伴う印字のアライメントズレを補正することができる。
【0013】
た、前記記憶手段は、前記キャリッジの移動速度と、前記各コアへの通電タイミングの補正量とを対応づけた速度補正テーブルをさらに記憶し、前記補正手段は、前記速度補正テーブルに基づいて前記各コアへの通電タイミングを補正することを特徴とする。この構成によれば、速度補正テーブルに基づいて各コアへの通電タイミングを簡易に特定することができる。
【0014】
た、前記通電タイミングは、通電開始のタイミングでもよく、また、通電時間でもよい。
【0015】
また、本発明は、複数の記録ワイヤを有し、各記録ワイヤに対応するコアへの通電によって前記記録ワイヤを打ち出す記録ヘッドと、前記各コアへの通電を制御する制御手段と、キャリッジガイド軸を偏芯回転させて前記記録ヘッドとプラテンとの距離を変更し、プラテンギャップを調整する手段とを有する記録装置の制御方法において、前記キャリッジガイド軸の回転量を測定し、測定されたキャリッジガイド軸の回転量に基づいて各コアへの通電タイミングの補正量を基本補正量として取得し、現在設定されている記録ヘッドの移動速度を取得し、この移動速度に基づいて各コアへの通電タイミングの補正量を取得し、この補正量と前記基本補正量とに基づいて通電タイミングの最終補正量を設定し、この最終補正量に基づいて各コアへの通電タイミングを補正することを特徴とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。以下に示す実施形態は、本発明の一態様を示すものであり、この発明を限定するものではなく、本発明の範囲内で任意に変更可能である。
(1) 実施形態
(1.1) 実施形態の構成
本発明の記録装置の一例となるドットインパクトプリンタ(以下、プリンタという。)10は、偏芯方式のPG調整機構を内蔵した従来のドットインパクトプリンタとは特に制御ユニット(制御手段)60が異なる。そこで、プリンタ10の全体の機械的構成を説明した後、制御ユニット60と制御ユニットによって制御される記録ヘッド20周りについて説明する。
【0017】
図1は、プリンタ10のプリンタ本体11とその周辺構成を示す斜視図である。図2は、図1の側断面図である。
【0018】
プリンタ10は、記録ヘッド20から多数の記録ワイヤを打ち出し、インクリボンを記録用紙Sに打ち付けることによって、ドットから構成される文字などの画像を記録する。ここで、記録用紙Sは、単票紙(単票複写紙を含む)や連続紙(連続複写紙を含む)などの普通紙の他に、通帳、葉書、封筒などである。
【0019】
プリンタ10は、プリンタ本体11と、プリンタ本体11に着脱自在に装着されたプッシュトラクタユニット12および排出ユニット13と、同じくプリンタ本体11に着脱自在に装着されたシート供給ガイド70(図2参照)と、プリンタ本体11の上方、下方をそれぞれ覆う上ケース(不図示)および下ケース(不図示)とから構成される。
【0020】
また、プリンタ本体11は、本体フレームとしてのベースフレーム14と、シート案内フレーム15(図2参照)と、左サイドフレーム16および右サイドフレーム17と、記録ヘッド20およびキャリッジ21を備える印刷機構部20Aと、シート案内18、プラテン24およびピンチローラ19(図2参照)を備えるシート搬送機構部7とから構成される。
【0021】
図2に示すように、ベースフレーム14とシート案内フレーム15とは連なるように配置され、各フレーム14、15の両端に上記左サイドフレーム16および右サイドフレーム17がそれぞれ立設して固定される。この左サイドフレーム16と右サイドフレーム17の間には、キャリッジガイド軸22、23およびプラテン24が回転可能に架け渡されている。なお、図1および図2において、キャリッジガイド軸23は他の部品に隠れている。シート案内18は、左サイドフレーム16と右サイドフレーム17の間に配設されて、シート案内フレーム15に嵌合されている。また、左サイドフレーム16および右サイドフレーム17の後方部、上方部には、プッシュトラクタユニット12および排出ユニット13を装着するためのトラクタユニット装着部(不図示)、および排出ユニット装着部(不図示)が設けられている。
【0022】
プッシュトラクタユニット12は、記録用紙Sとしての連続紙をシート搬送機構部7へ送り出す。また、シート供給ガイド70は、記録用紙Sとしての単票紙を一枚ずつ(連続単票紙の場合には1綴りずつ)シート搬送機構部7へ送り出す。排出ユニット13は、連続紙または単票紙をシート搬送機構部7からプリンタ10の外へ引き出す。
【0023】
つまり、連続紙は、プッシュトラクタユニット12のトラクタベルト12Aの回転によりこのトラクタベルト12Aのピン12Bの作用で、シート搬送機構部7のシート案内18に案内され、このシート案内18とプラテン24との間のシート搬送経路35を経てプラテン24の前方に搬送される。一方、単票紙は、シート供給ガイド70から1枚ずつ(または1綴りずつ)シート案内18に案内され、シート搬送経路35を経てプラテン24の前方へ供給される。これら連続紙または単票紙は、記録ヘッド20によって文字が記録された後、排出ローラ36の回転により排出ユニット13へと搬送される。
【0024】
また、左サイドフレーム16と右サイドフレーム17との間には、インクリボンカセット37がベースフレーム14に対向して着脱自在に装着されている。このインクリボンカセット37のインクリボンは、記録ヘッド20とプラテン24との間に引き回される。これによって、記録ヘッド20からの記録ワイヤの突出によりインクリボンのインクをプラテン24上の記録用紙Sに転写することができる。
【0025】
また、ベースフレーム14とシート案内フレーム15との間には、記録用紙Sとしての連続紙をシート搬送経路35に供給するためのボトムシート供給口38が形成されている。
【0026】
図3は、記録ヘッド20周りと制御ユニット60を示す図である。
【0027】
キャリッジ21は、記録ヘッド20を搭載し、キャリッジガイド軸22、23に支持されている。キャリッジガイド軸22は、キャリッジ21に回転可能に挿通されており、キャリッジガイド軸23は、キャリッジ21の後部を支持する。これにより、キャリッジは、キャリッジガイド軸22および23の延長方向、つまり、プラテン24の延長方向(紙面垂直方向)に移動可能に支持される。このキャリッジ21は、タイミングベルト機構(図1参照)を介してキャリッジ駆動モータによりプラテン24の延長方向に往復駆動され、これにより記録ヘッド20が記録用紙Sの幅方向に移動するようになっている。
【0028】
ここで、キャリッジガイド軸22は、両端の軸が偏芯されて形成され、この軸(偏芯軸)を回転させることにより偏芯回転するように構成されている。したがって、キャリッジ21は、キャリッジガイド軸22が回転させられると、キャリッジガイド軸23との接点を中心に回転しながらプラテン24側に前後移動する(図中、符号αにて示す)。これによって、記録ヘッド20とプラテン24との距離、つまり、PGを変更できるように構成されている。なお、キャリッジガイド軸22は、図示しないフレームに取り付けられた減速機構(一部省略)25を介してパルスモータ26によって回転駆動される。また、キャリッジ21の前後方向の移動範囲は、記録ヘッド20がプラテン24に当接する位置から最大厚の記録用紙Pの装填を可能とする最大後退位置までに規制されている。このキャリッジ21の後側には、キャリッジ21が最大後退位置に位置することを検出するためのマイクロスイッチ等の基準位置検出器30が配置される。
【0029】
また、キャリッジガイド軸22の回転角度Aは、パルスモータ26の軸27に取り付けられた符号板28と、フォトインターラプタ29とからなるエンコーダ(特定手段)32によって特定されるようになっている。ここで、符号板28は、例えば、パルスモータ26の1相分の駆動に対して一つのパルスを出力するように符号パターンが形成されている。
【0030】
ここで、図4は記録ヘッド20の断面図である。記録ヘッド20は、ケース41内に、コイル42が巻き付けられたコア43と、ワイヤレバー44とが対になって環状に複数配置されている。
【0031】
ワイヤレバー44は、その一端がピン45に回動可能に固定され、他端に記録ワイヤ50が固定される。また、ワイヤレバー44は、バネ46によってコア43と離れる方向(ピン45を中心として図中時計回り方向)に付勢されている。ここで、コイル42に電流が流れていない状態では、記録ワイヤ50はノーズ47に収容されるように構成されている。一方、コイル42に電流が流されると、コア43が電磁石となり、ワイヤレバー44がコア43に吸引されるように構成されている。この結果、記録ワイヤ50の先端がノーズ47の外に飛び出し、インクリボン31を記録用紙Sに接触させてインクを転写する。
【0032】
このノーズ47の内部には、各記録ワイヤ50のガイド孔が形成されたガイド48が複数配置されており、各記録ワイヤ50を記録用紙Sに向けてほぼ垂直に案内する。なお、これら複数の記録ワイヤ50は縦方向に配置されている。本実施形態では、記録ワイヤ50は縦方向に9本配置されている。
【0033】
また、この記録ヘッド20のケース41には、放熱用のフィン49が設けられ、コイル42から発せられた熱を速やかに放熱するようになっている。
【0034】
次に、制御ユニット60について説明する。前掲図3に示すように、インターフェース(I/F)61は、制御部62の制御の下、通信ケーブル(不図示)を経由して接続されたパーソナルコンピュータ(PC)との間で印刷データなどの各種データを送受信する。
【0035】
制御部62は、記憶部63に記憶されたプログラムに従ってプリンタ10の動作を中枢的に制御する。具体的には、制御部62は、入力した印刷データに基づく印刷制御や、PG調整などの各種制御を行う。また、記憶部63には、PG調整などの各種制御用プログラムの他、記録ヘッド20内の各コア43への通電タイミングを補正するための補正テーブルや速度補正テーブルなどが記憶されている。
【0036】
補正テーブルは、キャリッジガイド軸22の回転に伴う印字のアライメントズレを補正するための情報が記述される。より詳しく説明すると、補正テーブルには、キャリッジガイド軸22の回転角度Aと、各コア43の通電開始タイミングの補正量とが対応づけて記述されている。ここで、各コア43の通電開始タイミングの補正量は、各記録ワイヤ50が記録用紙Sに到達するタイミングを同一にするための補正量であり、例えば、CAD(Computer Aided Design)を用いて、キャリッジガイド軸22が回転角度Aのときの記録ヘッド20とプラテン24の図を作図し、この図からコンピュータシミュレーションによって得た値である。
【0037】
なお、図5は、#5の記録ワイヤ50が最もプラテン24に近接している場合の通電タイミングの補正量(Δt 1〜Δt 9)と、補正後の通電開始のタイミングチャートとを示す図である。
【0038】
また、速度補正テーブルは、記録ヘッド20の移動速度(=キャリッジ速度)に起因する印字のアライメントズレを補正するための情報が記述される。すなわち、記録ヘッド20の移動速度が変化すると、記録ワイヤ50が記録用紙Sに到達する位置が変わってしまう。このため、速度補正テーブルには、記録ヘッド20の移動速度と、記録ワイヤ50の到達位置を同一位置にするためのコア43の通電開始タイミングの補正量とが対応づけて記述される。なお、補正テーブルおよび速度補正テーブルに格納される情報には、通電開始タイミングの補正量に限らず、通電開始タイミングそのものでもよく、通電時間など通電タイミングに関わる情報を記述すればよい。ここで、通電時間は、その時間を変更することによって、記録ワイヤ50と印刷用紙Sとの接触時間、および印字の濃さを変更する要素である。このため、上記各テーブルに通電時間を記述する場合は、記録ヘッド20の傾き角度Aや移動速度に起因する印字品質の変化を補正する値を記述すればよい。
【0039】
モータ駆動部64は、制御部62の制御の下、パルスモータ26、キャリッジ駆動モータおよび紙送りなどを行うための各種モータを駆動する。ここで、紙送りを行うためのモータとは、具体的には、プッシュトラクタユニットおよび排出ユニットを駆動するモータなどである。
【0040】
記録ヘッド駆動部65は、制御部62の制御の下、記録ヘッド20を駆動して記録ワイヤ50を選択的に打ち出す。
【0041】
時間差検出部66は、エンコーダ32からのパルス信号の周期とパルスモータ26の駆動パルスの周期との時間差を検出し、時間差積分部67に出力する。時間差積分部67は、入力した時間差の積分値を求め、当接判定部68に出力する。当接判定部68は、入力した積分値が予め設定した値、例えば、パルスモータ26の駆動パルスの周期の1/2以下(具体的には1.5ミリ秒など)に一致すると、記録ヘッド20が記録用紙Sに当接したと判断し、その旨を用紙厚み算出部69に通知する。
【0042】
用紙厚み算出部69は、基準位置検出器30からの信号によりエンコーダ32からのパルス信号の計数を開始し、当接判定部68から当接が通知された時点の計数値に基づき、記録用紙Sの厚みを算出する。ここで、キャリッジガイド軸22を一定角度回転させたときのPGの変更量は、キャリッジガイド軸22の回転角度Aに応じて変化する。このため、エンコーダ32からのパルス信号の計数値と、記録用紙Sの厚みとの関係を記述したテーブルまたは近似式を記憶しておき、用紙厚み算出部69は、その情報に基づいて記録用紙Sの厚みを算出すればよい。そして、制御部62は、用紙厚み算出部69から記録用紙Sの厚みの情報を入力すると、この値に基づいてモータ駆動部64によりパルスモータ26を駆動させ、記録ヘッド20と記録用紙Sとの距離が予め定めた値になるようにPGを調整する。この場合も、記録用紙Sの厚みに応じたパルスモータ26の駆動量(キャリッジガイド軸22の回転量)を記述したテーブルまたは近似関係式などを記録部63に格納しておき、制御部62は、このテーブルに基づいてパルスモータ26を駆動すれば、PGを正確に調整することができる。
(1.2) 実施形態の動作
次に、プリンタ10の動作を説明する。本実施形態のプリンタ10は、キャリッジガイド軸22の回転量と移動速度に応じてコア43への通電タイミング(通電時間を含む)を設定する処理(以下、通電タイミング設定処理)を行う点が従来のドットインパクトプリンタと異なる。それ以外の動作は、従来のドットインパクトプリンタと同様であるため、以下、通電タイミング設定処理について説明する。ここで、図6は、通電タイミング設定処理のフローチャートである。
【0043】
ここで、この通電タイミング設定処理は、少なくとも記録用紙Sに印字する前(記録ワイヤを打ち出す前)に行われる処理であり、例えば、記録用紙Sに対してPG調整を行った直後に行われる。なお、前提として、用紙厚み算出部69は、PG調整時に係数したエンコーダ32からのパルス信号の計数値を制御部62に通知するものとする。
【0044】
まず、制御部62は、用紙厚み算出部69から通知されたパルス信号の計数値に基づいてキャリッジガイド軸22の回転角度(回転量)を算出(測定)する(ステップS1)。より具体的には、制御部62は、パルス信号の計数値とキャリッジガイド軸22の回転角度とを対応づけたテーブルを記憶部63から読み出して回転角度を特定する処理、若しくは、パルス信号の計数値とキャリッジガイド軸22の回転角度との関係を近似した近似式に基づいて回転角度を算出する処理を行う。
【0045】
次に、制御部62は、特定した回転角度に基づいて補正テーブルを参照することにより、各コア43の通電タイミングの補正量を基本補正量として取得する(ステップS2)。次に、制御部62は、現在設定されている記録ヘッド20の移動速度(=キャリッジ速度)を取得する(ステップS3)。そして、制御部62は、移動速度に基づいて速度補正テーブルを参照することにより、コア43の通電タイミングの補正量を取得し、この補正量と基本補正量とに基づいて各コア43の通電タイミングの補正量(最終補正量)を設定する(ステップS4)。
【0046】
これにより、制御部62は、キャリッジガイド軸22の回転角度と移動速度とに応じてアライメントズレを補正する補正量を設定することができる。したがって、制御部62は、記録ワイヤ50を打ち出す際に、この設定した補正量に基づいて各コア43への通電タイミングを補正することにより、各記録ワイヤ50が記録用紙Sに到達するタイミングを同一にすることができ、かつ、キャリッジ速度が異なっても記録ワイヤ50が記録用紙Sに到達する位置を同一位置にすることができる。
【0047】
このように、本実施形態に係るプリンタ10においては、キャリッジガイド軸22の回転角度と移動速度とに応じて記録ヘッド20内の各コア43への通電タイミングを補正するので、キャリッジガイド軸22の回転に起因するアライメントズレと、移動速度に起因するアライメントズレを確実に防止することができる。この結果、印字品質を向上することができる。また、キャリッジガイド軸22の回転に起因するアライメントズレだけでなく、移動速度に起因するアライメントズレを防止するので、キャリッジ速度の高速化にも対応することができる。
(2) 変形例
本願発明は、上述した実施形態に限らず種々の態様にて実施され得る。例えば、以下のような変形実施が可能である。
【0048】
上述の実施形態では、補正テーブルに基づいて補正量を特定する場合(ステップS2の処理を行う場合)について述べたが、この処理に代えて、プリンタ10の制御部23が、各記録ワイヤ50の飛行距離を算出し、これら飛行距離の差から各コア43の通電タイミングの補正量を算出する処理を行うようにしてもよい。この場合、図7に示すような、キャリッジガイド軸22(パルスモータ26)の回転角度(若しくは記録ヘッド20の傾き角度)と、各記録ワイヤ50の飛行距離との関係を示す情報を記憶部63に記憶しておき、制御部63が、この情報に基づいて各飛行距離の差から通電タイミングの補正量を算出するようにすればよい。
【0049】
また、上述の実施形態では、パルスモータ26によりPGを自動調整可能なプリンタ10に本発明を適用する場合について述べたが、PGを手動調整するプリンタにも適用できることは言うまでもない。この場合、PG手動調整用のレバーなどの回転角度をエンコーダ(回転検出器)32で検出するようにすればよい。
【0050】
また、上述の実施形態では、通電タイミング設定処理をPG調整の直後に行う場合について述べたが、要は、記録ヘッド20の傾き角度が決定または変更された後や、記録ヘッド20の移動速度(キャリッジ速度)が決定または変更された後に行えばよい。したがって、PG調整を行わない設定の場合でも、記録ヘッド20の移動速度(キャリッジ速度)が変更された場合は、通電タイミング設定処理を行うことが好ましい。
【0051】
また、上述の実施形態では、キャリッジガイド軸22の回転に起因するアライメントズレと、移動速度に起因するアライメントズレとの両方を補正する場合について述べたが、記録ヘッド20の移動速度がほとんど変化しないプリンタの場合などは、キャリッジガイド軸22の回転に起因するアライメントズレだけを補正するようにしてもよい。
【0052】
上述の実施形態では、プラテン20に丸プラテンを用いる場合について述べたが、本発明は、平プラテンを用いる場合にも適用することが可能である。
【0053】
【発明の効果】
上述したように本発明によれば、記録ヘッドの傾きによる印字のアライメントズレを補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るプリンタのプリンタ本体とその周辺構成を示す斜視図である。
【図2】図1の側断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るプリンタの記録ヘッド周りと制御ユニットを示す図である。
【図4】記録ヘッドの断面図である。
【図5】#5の記録ワイヤが最もプラテンに近接している場合の通電タイミングの補正量(Δt 1〜Δt 4)と、補正後の通電開始のタイミングチャートを示す図である。
【図6】通電タイミング設定処理のフローチャートである。
【図7】変形例の説明に供する図である。
【図8】偏芯方式を採用したプリンタの記録ヘッド周りの構成を示す図である。
【図9】キャリッジガイド軸の斜視図である。
【図10】図8の状態からキャリッジガイド軸を45°回転した時の記録ヘッド周りを示す図である。
【図11】記録ヘッドから打ち出される各記録ワイヤを説明する図である。
【図12】記録ヘッドの傾きと、各記録ワイヤの飛行距離との関係を説明する図である。
【図13】キャリッジガイド軸の回転角度が90°と45°の場合の印字のアライメントズレを示す図である。
【符号の説明】
1、20 記録ヘッド
2、21 キャリッジ
3、4、22、23 キャリッジガイド軸
10 ドットインパクトプリンタ
11 プリンタ本体
26 パルスモータ
30 基準位置検出器
32 エンコーダ
50 記録ワイヤ
60 制御ユニット
62 制御部
63 記憶部

Claims (2)

  1. 複数の記録ワイヤを有し、各記録ワイヤに対応するコアへの通電によって前記記録ワイヤを打ち出す記録ヘッドと、
    前記各コアへの通電を制御する制御手段と、
    キャリッジガイド軸を偏芯回転させて前記記録ヘッドとプラテンとの距離を変更し、プラテンギャップを調整する手段とを有する記録装置において、
    前記キャリッジガイド軸の回転量を測定する測定手段を有し、
    前記制御手段は、前記測定手段で測定された前記キャリッジガイド軸の回転量に基づいて各コアへの通電タイミングの補正量を基本補正量として取得し、現在設定されている記録ヘッドの移動速度を取得し、この移動速度に基づいて各コアへの通電タイミングの補正量を取得し、この補正量と前記基本補正量とに基づいて通電タイミングの最終補正量を設定し、この最終補正量に基づいて各コアへの通電タイミングを補正することを特徴とする記録装置。
  2. 複数の記録ワイヤを有し、各記録ワイヤに対応するコアへの通電によって前記記録ワイヤを打ち出す記録ヘッドと、
    前記各コアへの通電を制御する制御手段と、
    キャリッジガイド軸を偏芯回転させて前記記録ヘッドとプラテンとの距離を変更し、プラテンギャップを調整する手段とを有する記録装置の制御方法において、
    前記キャリッジガイド軸の回転量を測定し、測定されたキャリッジガイド軸の回転量に基づいて各コアへの通電タイミングの補正量を基本補正量として取得し、現在設定されている記録ヘッドの移動速度を取得し、この移動速度に基づいて各コアへの通電タイミングの補正量を取得し、この補正量と前記基本補正量とに基づいて通電タイミングの最終補正量を設定し、この最終補正量に基づいて各コアへの通電タイミングを補正することを特徴とする記録装置の制御方法。
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