JP4159193B2 - 茶風味飲料及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ナノ濾過膜で処理された茶の浸出液に関する。
【0002】
【従来の技術】
古来より、お茶は嗜好品として我国国民に親しまれ、最近では、半発酵茶も含め、缶或いはPETボトルなどの密閉容器に充填された手軽な飲料として市場に出回るようになってきている。
【0003】
こうした傾向は、茶飲料がより身近なものとして普及しつつあることを意味しているが、従来の茶葉から得られた抽出液は、それ自体が外観上茶色を呈しており、視覚上清涼感に欠けるという難点がある。そしてこれは、PETボトルなどの透明容器のほうが好まれる現在においては、何らかの形で十分な解決が図られるのが望ましい。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、上記のような要請に応えるべく、単に容器にしかるべき色彩を付すだけというのでは、根本的な解決にはならず、当該容器から直接的に飲用するというのであればそれほど問題にはならないとしても、ガラス製のコップなどの別の透明容器に移し替えられてしまったような場合には、その工夫の仕掛けが露呈されてしまうという難点がある。
【0005】
また、根本的な解決を図るべく、茶の浸出液を減らして色調を落とすようにすると、十分な茶の呈味を維持することができなくなり、茶飲料としての意義が失われてしまう。そして、呈味の減少を補うために、お茶からの回収香を付与するようにしたとしても、お茶の呈味を十分に再現することはできなかった。
【0006】
本発明は以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、お茶の呈味を十分に維持したままにして、茶飲料の視覚上の清涼感を向上させるような手段を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために、本発明においては、茶の呈味成分はナノ濾過膜を透過するという新たな知見に基づき、茶の浸出液をナノ濾過膜で処理することによって得られる透過液を他の茶飲料に混合することによって茶飲料の清涼感を向上させることを特徴とする。
【0008】
より具体的には、本発明は、以下のようなものを提供する。
【0009】
(1) 茶の浸出液をナノ濾過膜で処理することにより得られた透過液であって、色調に対する呈味成分の比が当該茶の浸出液の3倍量以上であることを特徴とする透過液。
【0010】
(2) 茶の浸出液をナノ濾過膜で処理することにより得られた透過液を含む茶風味飲料。
【0011】
(3) 1cmセルで測定した420nm(ナノメートル)の吸光度0.1あたりの物性が、下記の▲1▼から▲3▼のいずれか一つ以上を満たすものであることを特徴とする茶風味飲料。
▲1▼: カフェイン含量が3mg/100ml以上、
▲2▼: タンニン含量が10mg/100mg以上、または、
▲3▼: 可溶性固形分量が0.1重量%以上。
【0012】
(4) ナノ濾過膜で処理することにより得られた透過液であることを特徴とする上記(3)記載の茶風味飲料。
【0013】
(5) 茶の浸出液をナノ濾過膜で処理することにより、当該茶の浸出液の呈味成分と色素成分とを分離する方法。
【0014】
(6) 茶の浸出液をナノ濾過膜で処理することにより、1cmセルで測定した420nm(ナノメートル)の吸光度0.1あたりの可溶性固形分量を0.1重量%以上に高める方法。
【0015】
(7) 茶の浸出液をナノ濾過膜で処理することによって得られた透過液を他の茶飲料に添加することにより、当該他の茶飲料の清涼感を調整する方法。
【0016】
[定義等]
「ナノ濾過膜」というのは、荷電型逆浸透膜もしくは荷電型限外濾過膜のことをいい、分画分子量は数百〜数千であるが、塩化ナトリウムは透過しない性質を持つ(大日本図書、「分離の技術」(木村尚史/中尾真一 著)、60-62頁)。なお、「ナノ濾過膜で処理する」というのは、ナノ濾過膜で分画する(大雑把な言い方をすれば、「濾過する」)ことを意味する。
【0017】
「透過液を含む」というのは、が飲料全体の一部分(或いは、一成分)として含有されている場合の他、透過液のみの100%で構成されている場合も含む。
【0018】
「茶」には、緑茶、半発酵茶(包種茶や烏龍茶など)、紅茶、ジャスミン茶、プーアール茶などのあらゆる茶が含まれる。
【0019】
「呈味成分」というのは、味覚で感じる食品の成分のことを意味し、茶の場合においてその呈味成分の代表的なものは、タンニンとカフェインである。
【0020】
【発明の実施の形態】
茶の浸出液をナノ濾過膜で処理することにより得られる本発明に係る透過液は、茶風味飲料としてそのまま飲用に供してもよく、或いは、図1に示されるように、本発明に係る透過液と茶の浸出液とを適宜所定の割合で混合することにより得られる混合液を茶風味飲料として飲用に供するようにしてもよい。そして、後者の場合には特に、本発明を「茶の浸出液の呈味成分の濃度を調整する方法」として把握することができる。
【0021】
なお、上記のいずれの場合にしても、茶風味飲料に香料や色素を添加して風味等の微妙な調整をすることもでき、または、pH調整剤や酸化防止剤などを適宜添加することもでき、これらいずれの場合も本発明の範囲に含まれる。
【0022】
【実施例】
茶の浸出液をナノ濾過膜で処理する実施例として、緑茶及び烏龍茶に対して塩排除率10%のナノ濾過膜を適用した例を以下に示す。
【0023】
まず、緑茶及び烏龍茶について、通常のナノ濾過処理と同様に、お茶の浸出液を攪拌しながら、いずれも常温で、窒素ガスにより10kgf/cmの圧力をかけることによってナノ濾過膜を透過させた。
【0024】
そして、得られた透過液について、吸光度、並びに、カフェイン、タンニン、カフェイン及び可溶性固形分の濃度を測定し、各呈味成分の色に対する濃度挙動を検証した。
【0025】
【表1】
Figure 0004159193
【0026】
ここで、下表のようにパラメータを定めた場合に、テアニン、タンニン、カフェイン及び可溶性固形分の各呈味成分について、濃縮倍率[V/V]と透過比率[(C/A)/(C/A)]との関係を調べた。なお、吸光度は、1cmセルで測定した420nm(ナノメートル)のデータを使用した。
【0027】
【表2】

原液(お茶の浸出液)Fの吸光度 … A
ナノ濾過膜を透過した透過液Pの吸光度 … A
ナノ濾過膜を透過せずに残留した濃縮液Dの吸光度 … A
原液(お茶の浸出液)Fの液量 … V
ナノ濾過膜を透過した透過液Pの液量 … V
ナノ濾過膜を透過せずに残留した濃縮液Dの液量 … V
原液(お茶の浸出液)Fのある成分の濃度 … C
ナノ濾過膜を透過した透過液Pのある成分の濃度 … C
ナノ濾過膜を透過せずに残留した濃縮液Dのある成分の濃度 … C

【0028】
濃縮倍率[V/V]と透過比率[(C/A)/(C/A)]との関係を調べた結果、図2に示されるように、緑茶の場合には、濃縮倍率3以上となると透過比率が一定することがわかり、成分比が安定した透過液の安定な生産(即ち飲料の安定供給)の可能性が示された。
【0029】
そして、この安定供給に係る透過液の物性について検証をしたところ、1cmセルで測定した420nm(ナノメートル)の吸光度0.1あたりの物性が、下記の▲1▼から▲3▼のいずれか一つ以上を満たすものであることが判明した。
【0030】
【表3】

▲1▼: カフェイン含量が3mg/100ml以上、
▲2▼: タンニン含量が10mg/100mg以上、または、
▲3▼: 可溶性固形分量が0.1重量%以上。
【0031】
こうして得られた透過液について、10人のオペレーターに対して官能性試験を行った。官能性試験は、次のような7段階のカテゴリー尺度に従い、シェッフェの一対比較法によって行った。
【0032】
【表4】
Figure 0004159193
【0033】
この官能性試験の結果を図3に示す。この図3に示されるように、緑茶及び烏龍茶のいずれについても、透過液のほうが、おいしさ、お茶の味、お茶の香りのいずれについても評価が高かった。
【0034】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、水色の割に清涼感を持ち、消費者にも受けが良い新規な茶飲料が提供できると共に、茶飲料の呈味成分を調整する適切な方法が提供されることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】浸出液と透過液とを混合することによって呈味成分の濃度の調整を行う実施形態を説明するための図である。
【図2】各呈身成分の色に対する濃縮挙動を示すグラフを表す図である。
【図3】官能性試験の結果を示す図である。

Claims (2)

  1. 茶の浸出液をそのままナノ濾過膜で処理することによって得られた透過液を他の茶飲料に添加することにより、当該他の茶飲料の清涼感を調整する方法。
  2. 茶の浸出液をそのままナノ濾過膜で処理することにより、当該茶の浸出液の呈味成分と色素成分とを分離することにより得られた透過液を茶風味飲料とする方法。
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