JP4159025B2 - 高輝度メカノルミネッセンス材料及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なメカノルミネッセンス材料、すなわち機械的エネルギーを光エネルギーに変換して発光する材料及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
これまで、外部からの刺激により発光する発光体として、紫外線で励起する蛍光ランプ用蛍光体、プラズマディスプレイ用蛍光体など、電子線で励起する高速電子励起用蛍光体、蛍光表示管用蛍光体など、X線・放射線で励起するX線用蛍光体、固体シンチレーターなど、熱や赤外線で励起する蓄光性蛍光体、輝尽性蛍光体、赤外可視変換蛍光体などが知られている。
【0003】
一方、機械的な外力によって発光する材料については、本発明者らが先に、非化学量論的組成を有するアルミン酸塩の少なくとも1種からなり、かつ機械的エネルギーによって励起されたキャリアーが基底状態に戻る際に発光する格子欠陥をもつ物質、又はこの母体物質中に希土類金属イオン及び遷移金属イオンの中から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを発光中心の中心イオンとして含む物質からなる高輝度応力発光材料(特開2001−49251号公報)及び、アルミン酸塩の少なくとも1種を母体物質とし、その中に希土類金属イオン及び遷移金属イオンの中から選ばれた少なくとも1種の金属イオンを発光中心の中心イオンとして含む高輝度発光材料を製造するに当り、アルミニウムアルコラートとアルミニウム以外の成分金属の水溶性化合物の少なくとも1種とを水性媒質中で混合したのち、アルカリ性に変えて膠質化し、次いでこれに分散安定剤を添加して急速乾燥し、膠質粒子表面に分散安定剤が付着した乾燥物を生成させたのち、この乾燥物を酸化雰囲気中500〜900℃で仮焼成し、この仮焼成物を粉砕し、得た粉末を成形し又は成形しないで還元雰囲気中1000〜1700℃において焼成することを特徴とする高輝度発光材料の製造方法(特願2001−17891号)を提案した。
【0004】
しかしながら、これまで知られているメカノルミネッセンス材料は、発光輝度が不十分である点及び繰り返し応力を印加するに従って発光輝度が減衰する点で利用分野が制限されるのを免れない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで、従来のメカノルミネッセンス材料がもつ欠点を克服し、高い輝度を有し、かつ繰り返し応力を印加しても発光輝度の減衰がない新規なメカノルミネッセンス材料を提供することを目的としてなされたものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、従来のメカノルミネッセンス材料がもつ欠点を改善し、結果的に機械的エネルギーを光エネルギーに変換する効率を著しく向上させた新規なメカノルミネッセンス材料を開発するために鋭意研究を重ねた結果、特定の半導体が複合した構成を有し、製造方法に工夫を加えることにより、その結晶粒度や結晶格子の欠陥や歪みを適正に制御した材料が、安定な高輝度メカノルミネッセンス材料となることを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、一般式
xMA・(1−x)MnA (I)
(式中のMは、Zn又はCuにより部分的に置き換えられたZn、Aはカルコーゲン、xは0よりも大きく1よりも小さい数である)
で表わされ、結晶粒子径が20nm以下の複合半導体結晶からなる高輝度メカノルミネッセンス材料、及び各成分の供給源を所定の割合で混合し、真空中、生成物の昇華点よりも低い温度において、前記一般式(I)に相当する組成物を形成させ、次いで昇華点以上の温度の高温域において生成物を昇華させたのち、昇華体を昇華点よりも低い低温域に導いて凝縮させ、結晶粒子径20nm以下に結晶化させることを特徴とする高輝度メカノルミネッセンス材料の製造方法を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明は、一般式MA(II)で表わされる半導体と一般式MnA(III)で表わされる半導体との複合体から成っている。これらの一般式中のMは、Zn又はその一部がCuにより置き換えられたものの中から選ばれるが、これらは単独でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
【0009】
次に、これらの金属と結合して半導体を形成する非金属であるAとしては、カルコーゲンすなわち酸素族元素が用いられる。このカルコーゲンには、酸素、硫黄、セレン、テルル、ポロニウムが含まれるが、ポロニウムは金属性が高いため、あまり好ましくなく、特に硫黄、テルルが好ましい。このカルコーゲンも通常は単独で用いられるが、所望ならば2種以上の組合せでもよい。
【0010】
本発明のメカノルミネッセンス材料は、ウルツ鉱型構造とせん亜鉛鉱型構造が共存する構造をもつ、酸化物、硫化物、セレン化物、テルル化物を主成分で構成されるものが好ましい。このウルツ鉱型構造とは、陽性元素M1(●印)と陰性元素A1(○印)が図1に示す配列をもって形成されている結晶構造であって、M1A1 4四面体が各隅を共有して構成されている。また、せん亜鉛鉱型構造とは、図2に示すようにM1(●印)とA1(○印)とからなるウルツ鉱型構造の単位層がM1(●印)が立方最密充填構造の配列をとるように積み重ねられた構造である。
【0011】
本発明のメカノルミネッセンス材料においては、例えばZnS・MnS、ZnTe・MnTe、ZnCuS・MnSが特に高い応力発光強度を得ることができるので好適である。さらに、歪みのないあるいは極小な微結晶で構成される材料を用いれば、レーザ光のような強い応力発光を示すものが得られる。
【0012】
次に本発明のメカノルミネッセンス材料を製造するには、前記一般式(II)で表わされる半導体を形成する原料と前記一般式(III)で表わされる半導体原料とを所定の割合、例えばxが0.01〜99.99、好ましくは0.1〜99.9の範囲になる割合で混合し、これを石英管に充填し、真空下で加熱し、温度勾配を利用して高温側で原料を昇華させ、低温側で再結晶化させる。この際、昇華を促進させるために循環ガスとしてカルコーゲン又はハロゲンを少量用いるのが好ましい。この循環ガスは石英管の単位体積1cm3当り、0.01〜10mgの範囲で用いられる。
【0013】
このようにして、石英管に充填した原料から、所望の半導体を昇華点よりも低い温度で合成し、次いで昇華点以上の高い温度で昇華させ、これを低温減に導いて凝縮すれば、高輝度のメカノルミネッセンス材料が得られる。この際、石英管内は、真空に掃引し、アルゴン又は水素で内部を置換したのち、104Pa以下、好ましくは10-2Pa以下の高真空にすることにより、発光強度を向上させることができる。
【0014】
本発明のメカノルミネッセンス材料においては、その応力発光強度は、結晶粒子径と格子歪みの両方に依存する。すなわち、結晶粒子径が大きくなると発光強度は低下し、結晶粒子径が小さくなると、例えばナノサイズの結晶粒子になると高い発光強度を示すので、この結晶粒子径は20nm以下であることが必要である。この結晶粒子径はX線回折によって測定することができる。
【0015】
また、粒子歪みが存在すると、発光強度は著しく低下するので、強い発光強度を得るには、歪みの少ない微結晶を形成させるのがよい。この結晶粒子サイズと結晶の歪みはX線回折により同時に解析することができる。すなわち、広い範囲の回折線に対して、シュード−ボイグト(Pseudo−voigt)関係式をプロファイルフィットさせて、ガウス分布とローレンツ分布における半価幅を独立に求めることによって、結晶粒子サイズと格子歪みが同時に得られる(1993年6月1日講談社発行,山中高光著,「粉末X線回折による材料分析」,第95ページ参照)。
【0016】
本発明のメカノルミネッセンス材料の発光強度は、励起源となる機械的エネルギーの大きさ、すなわち機械的な作用力によって変化する。一般にメカノルミネッセンス材料は、印加される機械的な作用力が大きいほど発光強度は大きくなるが、発光させるには最低のエネルギーすなわちしきい値が存在する。このしきい値は材料の組成に左右され、1N未満の小さいエネルギーで発光するものから、材料の破壊を生じるような大きなエネルギーを加えてはじめて発光するものまでいろいろであるが、本発明のメカノルミネッセンス材料は、極めて小さい外力を加えただけで発光させることができる。
【0017】
本発明のメカノルミネッセンス材料は、粉末状、ブロック状、塗膜状に成形することができ、また積層体やプラスチックとの複合体に加工することができる。
【0018】
本発明のメカノルミネッセンス材料については、それを製造する際の焼成条件を制御することによって、粒子径を20nmにすることができる。そして、このようにして得た20nm以下の粒子径をもつ超微粒子は、機械的な外力の刺激により、レーザのような強い光を放出し、この発光は繰り返し印加された機械的外力に対しても減衰することがなく、安定している。
【0019】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0020】
実施例1
ZnCuSとMnSとをモル比で9.9:0.1の割合で混合し、石英管に充填したのち、この石英管の内部を10-2Paに減圧し、900℃で24時間加熱焼成した。次いで、温度分布勾配を制御しうる電気炉を用いて、生成したZnCuMnSを石英管の一端に集め、その部分を1100℃に昇温し、他端を900℃に保持して7日間加熱を継続し、この間に、ZnCuMnSを高温側で昇華させ、低温側で凝縮させることにより結晶化した。
このようにして得た微細結晶の粒子径をX線回折で求め、表1に示す。
【0021】
次に、このようにして得たメカノルミネッセンス材料について、図3に示す構成の自製摩擦試験機(回転速度60rpm、先端径1mmの透明樹脂製摩擦棒使用)を用いて、0.2Nの負荷を加えながら、繰り返し励起させ発光させた。この際生じた発光の経時的変化をグラフとして図4に示す。この図から分るように、この発光は繰り返し負荷を加えることにより減衰しない。
また、このときの応力発光強度のSrAl2O4:Euに対する相対値を表1に示す。
【0022】
次に、負荷させる荷重を増加させながら発光強度の変化を測定し、発光強度の応力依存性を求めた。この結果をグラフとして図5に示す。この図から印加する荷重の増加に従って発光強度が上昇することが分る。このグラフを利用すれば、発光強度を測定することにより、印加された機械的作用力の大きさを求めることもできる。
【0023】
実施例2〜4、比較例1〜6
実施例1と同様にして、表1に示す組成のメカノルミネッセンス材料9種を製造した。これらの材料について測定した結晶粒子の粒子径及びSrAl2O4:Euの発光強度を100としたときの相対強度を表1に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
この表から分るように、特にMがZn又は一部Cuにより置換されたZnであり、AがS又はTeであるもののうち、結晶粒子径が20nm以下のものが高い発光強度を示す。
【0026】
【発明の効果】
本発明によると、摩擦力、剪断力、衝撃力、圧力、張力、捩りなどの機械的外力によって強く発光する新規なメカノルミネッセンス材料が提供され、これを用いれば機械的エネルギーを直接に光エネルギーに変換できるので、センサー、ディスプレー、アミューズメント、応力分布の観察などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ウルツ鉱型構造のモデルを示す平面図。
【図2】 せん亜鉛鉱型構造のモデルを示す斜視図。
【図3】 実施例1で用いた摩擦試験機の構造を示す説明図。
【図4】 実施例1における発光強度の経時的変化を示すグラフ。
【図5】 実施例1における荷重と発光強度との関係を示すグラフ。
Claims (3)
- 一般式
xMA・(1−x)MnA
(式中のMは、Zn又はCuにより部分的に置き換えられたZn、Aはカルコーゲン、xは0よりも大きく1よりも小さい数である)
で表わされ、結晶粒子径が20nm以下の複合半導体結晶からなる高輝度メカノルミネッセンス材料。 - AがS又はTeである請求項1記載の高輝度メカノルミネッセンス材料。
- 各成分の供給源を所定の割合で混合し、真空中、生成物の昇華点よりも低い温度において、一般式
xMA・(1−x)MnA
(式中のMは、Zn又はCuにより部分的に置き換えられたZn、Aはカルコーゲン、xは0よりも大きく1よりも小さい数である)
で表わされる組成物を形成させ、次いで昇華点以上の温度の高温域において生成物を昇華させたのち、昇華体を昇華点よりも低い低温域に導いて凝縮させ、結晶粒子径20nm以下に結晶化させることを特徴とする高輝度メカノルミネッセンス材料の製造方法。
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