JP4159009B2 - 疲労特性に優れた打抜き部品用鋼板 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、打抜き加工後の熱処理で45HRC以上の高強度に調質でき、刃物,工具,歯車等の各種機械部品等として使用される鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種機械部品等に使用される鋼板としては、鋼材を部品形状に打ち抜いた後、熱処理によって調質されるものがある。この種の部品に要求される機械的特性には、高硬度,高強度,高靭性,高疲労強度,耐摩耗性等がある。疲労特性や耐摩耗性は、一般的に硬さや強度を高めることによって改善される。しかし、硬さや強度の上昇に伴って靭性が低下し、特に切欠き感受性の上昇に起因した欠陥が顕在化する。
【0003】
切欠き感受性は、表面欠陥等を起点とする亀裂,破断等の発生傾向を示す材料物性である。通常の打抜き加工では鋼材端面に破断面が露出するが、破断面に存在する微小クラック等の表面欠陥が完全に除去されることなく製品に持ち込まれる。打抜き後の部品端面に存在する表面欠陥は、切欠きや初期亀裂として作用し、部品の切欠き感受性を高くする原因となる。なかでも、部品の高強度化を図るため調質硬さを45HRC以上又は引張強さを1500MPa以上に高めた鋼材では、切欠き感受性が一層高くなり、疲労強度及び靭性が低下し易い。
部品を機械加工で作成する方法,打抜き部品の端面を機械加工で研削する方法等によるとき、打抜き面性状の影響を解消できる。しかし、これらの方法は、生産性が低く、複雑形状の部品製造には適さない。打抜き面の影響を研磨で除去することも可能であるが、研磨法では時間及びコストがかかる。このようなことから、工業的な大量生産ラインにおける打抜き面性状の保証は非常に困難である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
打抜き面を構成する破断面及び剪断面のうち、破断面は疲労破壊の起点になる。そこで、剪断面率を高めることによって打抜き面性状を改善する方法が一部で採用されている(特開平8−337843号公報)。剪断面率は精密打抜きにより100%にまで高められるが、精密打抜き性の改善には軟質化した材料の使用が必要になる(特公平5−14764号公報)。しかし、精密打抜きは、通常の打抜きに比較して生産性及び歩留が低いため、採算上から安価な部品の製造に適用できない場合が多い。軟質化が剪断面率の上昇に及ぼす影響は通常の打抜きでも同様に生じるが、軟質化した材料ではかえりが大きく、打抜かれた部品の平坦度が低くなる。この点、軟質化による打抜き性の改善には限界がある。
切欠き感受性の改善には、部品の強度低下も有効である。しかし、強度低下に伴って疲労強度も低下するので、各種機械部品に要求される特性が得られない。
【0005】
このように、打抜き部品の強度を確保しながら疲労特性を向上させることは難しく、なかでも45HRC以上の硬さ水準で打抜き部品の疲労特性を改善することは極めて困難である。更に、打抜き部品用の鋼板としては、打抜き後に熱処理を施される部品もあることから、焼入れ性や熱処理後の靭性等に優れていることも必要である。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、成分調整,炭化物の球状化率,球状化炭化物の大きさ及び硬さ水準を特定条件下で組み合わせることにより、疲労特性に優れ、打抜き加工後に45HRC以上に調質しても使用可能な打抜き部品用鋼板を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の打抜き部品用鋼板は、その目的を達成するため、C:0.3〜0.8重量%,Si:3.0重量%以下,Mn:1.5重量%以下,Cr:2.0重量%以下,Cu:0.5重量%以下,N:0.0005〜0.02重量%,O:0.0005〜0.01重量%,P:0.02重量%以下,S:0.01重量%以下,酸可溶Al:0.01〜0.1重量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成をもち、炭化物の球状化率が50〜95%,球状化炭化物の平均粒径が0.3μm以下,硬さが200〜400HVであることを特徴とする。
この打抜き部品用鋼板は、更にMo:0.1〜2.0重量%,Ni:0.1〜3.0重量%,V:0.01〜0.5重量%,Ti:0.01〜0.1重量%,Nb:0.01〜0.2重量%,B:0.0005〜0.01重量%の1種又は2種以上を含むことができる。
【0007】
【作用】
本発明者等は、打抜き面に破断面が生じることを前提とし、破断面の性状が疲労特性に及ぼす影響を最小限に抑えるため、打抜き面性状と疲労特性との関係を詳細に調査検討した。その結果、球状化炭化物を大きくして軟質化した材料を打抜いたとき、打抜き面の剪断面率が高くなると共に、破断面にある微小クラック及び破断面直下にあるボイドの寸法が大きくなっていることを見出した。他方、炭化物を小さくして鋼材にある程度の硬さを与えると、疲労破壊の起点となる微小クラック及びボイドが最小限に抑えられることを解明した。
【0008】
炭化物の大きさが微小クラック及びボイドに及ぼす影響は次のように考えられる。打抜き時の局部的な塑性変形によって炭化物が引き摺られた痕跡が破断面近傍に残るが、炭化物の大きさに応じて痕跡の程度が異なり、粗大な炭化物がある組織では粗大なボイドやボイドが集合・成長した微小クラックが生じる。また、打抜き時に引き摺られる炭化物の移動距離は軟質の鋼材ほど長くなり、移動距離の長さに応じてボイド及び微小クラックが大きくなる。この点では、鋼材をある程度の硬さに調質し、炭化物の移動距離をコントロールする必要がある。
以上の知見をベースとして、本発明では、成分調整,炭化物の球状化率,球状化炭化物の大きさ及び硬さ水準を特定条件下で組み合わせているが、以下に各要件ごとに説明する。
【0009】
成分調整
C:0.3〜0.8重量%
鋼材の強度及び靭性に影響を及ぼす基本的な合金成分であり、45HRC以上の硬さを得るために0.3重量%以上が必要とされる。しかし、C含有量の増加応じて炭化物量が増加し、炭化物に起因するボイドが量的及びサイズ的に大きくなる。また、0.8重量%を超えるC含有量では、粒界にセメンタイトが析出し、靭性や疲労強度が悪くなる。過剰量のC含有は、MS 点の低下により残留オーステナイトの生成傾向を強め、靭性及び疲労特性の低下を招く。
Si:3.0重量%以下
脱酸剤として溶鋼に添加される合金成分であり、焼入れ性を高め、フェライトの固溶強化元素としても有効である。熱処理時の炭化物の析出を遅延させる作用も呈するが、熱延,焼鈍,熱処理等の際に鋼材表面直下に内部酸化を生じさせる原因にもなる。また、過剰量のSi添加は、鋼材を硬質化し、打抜き金型への負担を大きくする。これらの悪影響を抑制するため、Si含有量の上限を3.0重量%に設定した。なお、Mn,Al等の他の成分でも溶鋼の脱酸が補われるため、基本的にSi無添加とすることもできる。
【0010】
Mn:1.5重量%以下
脱酸剤として溶鋼に添加される合金成分であり、焼入れ性の向上にも有効に作用する。しかし、打抜き時にボイドや微小クラックの起点となるMn系の非金属介在物を生成し、縞状組織の発達による靭性低下を引き起こす悪影響も及ぼす。また、過剰量のMn添加は、鋼材を硬質化し、打抜き金型への負担を大きくする。これらの悪影響を抑制するため、Mn含有量の上限を1.5重量%に設定した。なお、Si,Al等の他の成分でも溶鋼の脱酸が補われるため、基本的にMn無添加とすることもできる。
Cr:2.0重量%以下
焼入れ性,熱処理後の強度及び靭性の向上に有効な合金成分であり、焼鈍中に黒鉛化を防止する作用も呈する。しかし、2.0重量%を超える過剰量のCrが含まれると、却って靭性の低下がみられ、球状化焼きなましが困難になると共に、中間製品の製造性も劣化する。過剰量のCr添加は、鋼材を硬質化し、打抜き金型への負担も大きくする。焼入れ性や熱処理後の強度及び靭性は他の合金成分でも補うことができるので、基本的にCr無添加とすることもできる。
【0011】
Cu:0.5重量%以下
Niと同様に鋼材の焼入れ性及び熱処理後の靭性を改善する上で有効な合金成分である。しかし、0.5重量%を超える過剰量のCu添加は、熱間脆性を引き起こす原因となる。
N:0.0005〜0.02重量%
V,Al,Ti,Nb等と窒化物や炭窒化物を形成し、オーステナイト粒を微細化する作用を呈する合金成分であり、これら元素と複合添加されるとき0.0005重量%以上の含有量でNの効果が顕著になる。しかし、0.02重量%を超える過剰量のNが含まれると、微細化効果が飽和するばかりでなく、却って靭性や疲労特性を低下させる悪影響が現れる。
【0012】
O:0.0005〜0.01重量%
Al23 等の非金属介在物を形成する有害成分である。非金属介在物は、打抜き時にボイドや微小クラックの起点になると共に、非金属介在物自体で疲労亀裂の起点になることもある。また、焼入れ・焼戻し後の靭性を低下させ、疲労特性にも悪影響を及ぼすことから、O含有量の上限を0.01重量%に設定した。可能な限り低いO含有量が好ましいが、極端なO含有量の低減は製造コストを上昇させることになるので、O含有量の下限を0.0005重量%に設定した。
P:0.02重量%以下
結晶粒界に偏析して焼入れ・焼戻し後の靭性を低下させる有害成分であり、可能な限り低減することが好ましい。しかし、P含有量の低減に応じて製造コストが高くなる。そこで、靭性劣化に実質的な悪影響を及ぼさない範囲を調査し、P含有量の上限を0.02重量%に設定した。
【0013】
S:0.01重量%以下
MnS等の非金属介在物を形成し、鋼材の加工性,強度,靭性に悪影響を及ぼす有害成分である。MnSは、打抜き時にボイドや微小クラックの起点となり、MnS自体でも疲労亀裂の起点になる。また、MnSが圧延方向に展延されている圧延材では、加工性,強度,靭性に面内異方性が大きく現れる。これらの悪影響を抑制するため、S含有量の上限を0.01重量%に設定した。
酸可溶Al:0.01〜0.1重量%
Alは、脱酸剤として有効な合金成分であり、鋼中のNをAlNとして固定し、熱処理時にオーステナイト結晶粒の異常成長を抑制する作用も呈する。これらの作用は、酸可溶Alとして0.01重量%以上で顕著になる。しかし、酸可溶Alの効果は0.1重量%で飽和し、過剰量の酸可溶Alは却って製造コストの上昇や表面疵等の欠陥発生の原因となる。
【0014】
Mo:0.1〜2.0重量%
必要に応じて添加される合金成分であり、焼入れ性や熱処理後の強度及び靭性を向上させる作用を呈する。これらの効果は、0.1重量%以上のMo含有量で顕著になる。しかし、2.0重量%を超える過剰量のMoが含まれると、却って靭性が低下し、球状化焼きなましが困難になると共に、中間製品の製造性が著しく劣化する。過剰量のMoは、鋼材を著しく硬質化し、打抜き金型への負担も大きくする。
Ni:0.1〜3.0重量%
必要に応じて添加される合金成分であり、焼入れ性及び熱処理後の靭性を向上させる作用を呈する。また、Ni添加により強度及び靭性が向上するので、疲労特性も改善される。これらの効果は、0.1重量%以上のNi含有量で顕著になる。熱処理後の強度,靭性,亀裂伝播抵抗を向上させるNiの効果は3.0重量%で飽和し、3.0重量%を超える過剰量のNiでは鋼材が著しく硬質化し、打抜き金型への負担も大きくなる。
【0015】
V:0.01〜0.5重量%
必要に応じて添加される合金成分であり、鋼中で炭化物を形成し、強度及び靭性を向上させると共に、旧オーステナイト結晶粒を微細化して亀裂伝播抵抗を向上させる作用を呈する。このような作用・効果は0.01重量%以上のV含有量で顕著になるが、強度,靭性,亀裂伝播抵抗を向上させる効果は0.5重量%で飽和する。0.5重量%を超える過剰量のVが含まれると、却って中間製品の製造性が劣化する。
Ti:0.01〜0.1重量%
必要に応じて添加される合金成分であり、固溶し難い炭窒化物を熱処理時に形成し、焼入れ加熱時のオーステナイト結晶粒の粗大化を抑制し、亀裂伝播抵抗を高める作用を呈する。Bとの複合添加では、鋼中のNをTiNとして固定するため、有効B量を確保することにも働く。このようなTiの作用は、0.01重量%以上で顕著になる。しかし、0.1重量%を超える過剰量のTi含有は、粗大な窒化物が形成される原因となり、靭性の低下を招く。
【0016】
Nb:0.01〜0.2重量%
必要に応じて添加される合金成分であり、安定な炭窒化物を形成し、V,Tiと同様に焼入れ時に結晶粒の粗大化を抑制し、靭性の劣化を防止する作用を呈する。このような作用は、0.01重量%以上のNb含有量で顕著になる。しかし、0.2重量%を超える過剰量のNbは、マトリックスに対する炭化物の固溶を減少させ、強度低下の原因となる。
B:0.0005〜0.01重量%
必要に応じて添加される合金成分であり、焼入れ性を高め、結晶粒界へのPの偏析を抑制して結晶粒界を強化し、粒界破壊に起因する靭性低下を防止する作用を呈する。このような作用は、0.0005重量%以上のB含有量で顕著になるが、0.01重量%で飽和する。なお、添加したBが鋼中のNと結合して窒化物BNになるとB添加の効果が損われるので、B添加に際しては、鋼中のNをTiNとして固定するTiを複合添加することが好ましい。
【0017】
炭化物の球状化率:50〜95%,
球状化炭化物の平均粒径:0.3μm以下
炭化物の形態は、打抜き加工性及び打抜き面の破断面性状に大きな影響を及ぼす。本発明者等による調査・研究の結果、破断面にある微小クラックや破断面直下にあるボイドの大きさが球状化炭化物の大きさに依存していることが判った。球状化率を小さくすると球状化炭化物が微細になる傾向にあるが、球状化率の低下に応じて炭化物分布が不均一化し、部品間での打抜き面性状にバラツキが大きくなると共に、金型寿命も短くなる。逆に大きな球状化率では、粗大な炭化物が分散するようになり、微小クラックやボイドも大きくなる。
そこで、炭化物の球状化率及び球状化炭化物の平均粒径が微小クラック及びボイドに及ぼす定量的な影響を調査した。鋼板断面の観察視野内である炭化物の最大長さpと最大長さに直交する方向の最大長さqの比(p/q)が3未満の炭化物を球状化した炭化物として扱い、全炭化物に対する球状化炭化物の個数割合として球状化率を求めた。また、鋼板断面の観察視野において個々の球状化炭化物の面積から算出した円相当径の合計を測定した全球状化炭化物の個数で除し、得られた値を球状化炭化物の平均粒径とした。
【0018】
その結果、球状化率が50%以上になると、打抜き面性状にバラツキを発生させる炭化物の不均一分布が解消され、金型寿命も長くなることが判った。しかし、95%を超える球状化率では、粗大な炭化物の分散が検出され、発生するボイドや微小クラックも大きくなる。また、ボイドや微小クラックは、球状化炭化物の平均粒径が0.3μmを超えると粗大化し、疲労亀裂の起点になり易いことが判った。大きな炭化物は、熱処理時に未固溶のまま残存し、熱処理後の靭性を劣化させる原因にもなる。この点、球状化炭化物は小さいほど好ましく、平均粒径で0.3μm以下(より好適には0.2μm以下)に調整する。
【0019】
硬さ:200〜400HV
鋼材の硬さが不足すると、打抜き時に破断面近傍の局部的な変形量が増加し、結果として疲労亀裂の起点になり易い大きなボイドや微小クラックが生成する傾向が示される。硬さ不足がボイドや微小クラックの大きさに及ぼす影響は,200HV未満で顕著に現れる。強度不足は、打抜き面のかえりを大きくする原因にもなる。しかし、400HVを超える硬さでは、打抜き金型への負荷が大きくなり、金型寿命を短くする。
鋼材の硬さは、炭化物の形態による影響を受け、焼きなまし条件に応じて変化する。また、冷間圧延率の変更によっても硬さを調整できる。硬さが200〜400HVの範囲に維持される限り、硬さの調整方法に格別の制約が加わるものではなく、焼きなましや冷間圧延との組合せによって適宜調整される。
【0020】
以上のように成分調整,炭化物の球状化率,球状化炭化物の大きさ及び硬さ水準が調整された鋼板は、優れた打抜き加工性を呈し、良好な打抜き面性状を維持する。打ち抜かれた鋼板は、必要に応じ45HRC以上の高強度に調質される。調質のための熱処理方法としては焼入れ又は焼入れ・焼戻しが一般的であるが、材料によってはオーステンパー,マルテンパー等の恒温処理も採用できる。疲労特性の向上を狙って熱処理後にショットピーニングすることもできる。
疲労強度は一般に材料強度の上昇に応じて高くなるが、強度レベルが45HRC以上になると材料の表面欠陥に対する感受性が高くなり、必ずしも強度上昇が疲労強度の改善に結びつかない。すなわち、打抜き面をもち高疲労強度が要求される部品では、強度レベルが45HRC以上になると打抜き面の性状が大きな影響を及ぼす。この点、本発明に従った鋼板は、良好な打抜き面性状をもつので、強度レベルが45HRC以上になっても優れた疲労特性を維持する。
【0021】
【実施例】
表1の組成をもつ鋼を転炉で溶製し、スラブに連続鋳造した。得られた連鋳スラブを巻取り温度600℃で熱間圧延し、板厚2.6mmの熱延鋼帯を製造した。熱延鋼帯を酸洗し、表2の条件下で焼きなまし及び冷間圧延を施し、硬さを調整しながら板厚1.3mmの冷延鋼帯にした。
【0022】
Figure 0004159009
【0023】
Figure 0004159009
【0024】
得られた各冷延鋼帯から試験片を切り出し、炭化物球状化率,球状化炭化物の平均粒径及び硬さを測定した。また、打抜き加工した試験片の打抜き面を観察し、破断面近傍のボイド及び微小クラックを調査した。そして、単位観察面積に占めるクラックの開口部面積及びボイドの面積の合計の割合としてボイド及び微小クラックの大きさを算出した。調査結果を表3に示す。
【0025】
Figure 0004159009
【0026】
更に、各冷延鋼帯を850℃に15分加熱した後、焼入れし、300℃に100分焼き戻した。熱処理後の各冷延鋼帯から試験片を切り出し、硬さ,引張強さ及び疲労特性を調査した。疲労特性試験では、30mm×200mmのサイズで中央部に片側クリアランス10%の打抜きにより直径10mmの円孔を開けた試験片を使用し、熱処理後に油圧式疲労試験機で繰返し引張荷重を20Hzで試験片に加え、破断サイクルが105 回になる時の時間強度で疲労特性を評価した。調査結果を表4に示す。
【0027】
Figure 0004159009
【0028】
試験番号1〜3(比較例)は、炭化物球状化率,球状化炭化物の平均粒径,硬さに関しては本発明で規定した条件を満足している。しかし、C含有量の低い試験番号1は、強度が不足し、疲労強度も低い値を示している。C及びCrを過剰に含む試験番号2は、MS 点が低く、残留オーステナイトを含む不安定な組織になるため、45HRC以上の硬さは確保されるものの疲労強度が低い値を示している。S,O等の不純物含有量が多い比較例3も、45HRC以上の硬さは確保されるものの疲労強度が低い値を示している。
試験番号9〜12(比較例)は、組成的には本発明で規定した条件を満足しているが、炭化物形態や硬さを変えている。炭化物球状化率が98%で球状化炭化物の平均粒径が大きな試験番号9では、ボイドや微小クラックの面積率が大きく、疲労強度が低い値を示した。硬さが不足する試験番号10も、ボイドや微小クラックの面積率が大きく、疲労強度が低い値を示した。逆に硬すぎる試験番号11では、良好な疲労特性を示すものの、打抜き金型の寿命が極端に短くなった。炭化物の球状化率が低い試験番号12では、破断面の性状が不安定化し、疲労強度が低下した。
【0029】
これに対し、本発明に従った試験番号4〜8は、何れもボイドや微小クラックの面積率が小さく、45HRC以上に調質した場合でも優れた疲労強度をもっていた。
この対比から明らかなように、成分調整,炭化物球状化率,球状化炭化物の平均粒径及び硬さを特定条件下で組み合わせることにより、高強度に調質した打抜き部品でも優れた疲労特性が得られることが確認される。
【0030】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明の打抜き部品用鋼板は、成分調整,炭化物球状化率,球状化炭化物の平均粒径及び硬さを特定条件下で組み合わせ、打抜き面の破断面近傍にあって疲労亀裂の起点となるボイド及び微小クラックの面積率を下げている。そのため、45HRC以上の高強度に調質した場合でも、優れた疲労特性が付与された打抜き部品が得られる。このように本発明に従った鋼板は、高強度で疲労特性が要求される用途に適し、各種機械部品,ばね,刃物等として広範な分野で使用される。

Claims (2)

  1. C:0.3〜0.8重量%,Si:3.0重量%以下,Mn:1.5重量%以下,Cr:2.0重量%以下,Cu:0.5重量%以下,N:0.0005〜0.02重量%,O:0.0005〜0.01重量%,P:0.02重量%以下,S:0.01重量%以下,酸可溶Al:0.01〜0.1重量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成をもち、炭化物の球状化率が50〜95%,球状化炭化物の平均粒径が0.3μm以下,硬さが200〜400HVであることを特徴とする疲労特性に優れた打抜き部品用鋼板。
  2. 更にMo:0.1〜2.0重量%,Ni:0.1〜3.0重量%,V:0.01〜0.5重量%,Ti:0.01〜0.1重量%,Nb:0.01〜0.2重量%,B:0.0005〜0.01重量%の1種又は2種以上を含む請求項1記載の疲労特性に優れた打抜き部品用鋼板。
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