JP4158425B2 - スナップリングインサート方法及びその装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【技術分野】
本発明は,円筒形状部材の内周面に,スナップリングを装着する装置及びその装着方法に関する。
【0002】
【従来技術】
円筒形状の部材の内周面に設けられたリング溝にスナップリングを装着するに当たっては,スナップリングの合口の間隔を縮めた状態で保持し得る専用工具を用いるのが一般的である。
この専用工具を用いてスナップリングを装着するに当たっては,まず,スナップリングの合口の間隔を縮めるよう拘束しておき,その状態を保持しながら上記部材の内周面側にスナップリングを押し込める。そして,上記内周面に設けられたリング溝とスナップリングとを対向させる。そしてその後,上記専用工具による拘束を解いてスナップリングを開放すると,スナップリングは,その合口の間隔を元に戻そうとするばね力により上記リング溝に強固に装着されることとなる。
【0003】
【解決しようとする課題】
しかしながら,上記のスナップリングインサート方法及びその方法に用いる専用工具には次のような問題がある。
即ち,円筒部を有するアウター部材と,上記円筒部の内径よりも小さい外径を有すると共に上記円筒部から突出するように該円筒部内において同軸上に配置されたインナー部材とを含む処理部材に対し,上記円筒部の内周面に形成されたリング溝に上記スナップリングを装着する場合である。
【0004】
上記円筒部と上記インナー部材との間隙が狭くなると,円筒部の内部に押し込めるためのスナップリングの外径と,インナー部材の外周を囲みうるスナップリングの内径とが両立しなくなる。すなわち,スナップリングの外径を,円筒部の内径よりも小さくすると,スナップリングの内径が,インナー部材の外径より小さくならざるを得ない場合を生じる。このような場合には,上記間隙に対して,上記のごとく合口を縮めた状態のスナップリングを押し込めていくことは不可能である。
【0005】
本発明は,かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので,円筒部を有するアウター部材と,上記円筒部の内径よりも小さい外径を有すると共に上記円筒部から突出するように該円筒部内において同軸上に配置されたインナー部材とを含む処理部材における,上記円筒部の内周面に形成されたリング溝に,スナップリングを容易に装着できるスナップリングインサート方法及びその装置を提供しようとするものである。
【0006】
【課題の解決手段】
第1の発明は,円筒部を有するアウター部材と,上記円筒部の内径よりも小さい外径を有すると共に上記円筒部から突出するように該円筒部内において同軸上に配置されたインナー部材とを含む処理部材に対し,上記円筒部と上記インナー部材との間隙にスナップリングを押し込んで上記円筒部の内周面に形成されたリング溝に上記スナップリングを装着するため方法であって,
上記処理部材の上記間隙の開口部上に上記スナップリングを配置するリングセット工程と,
上記スナップリングの一端部を,挿入手段を用いて上記間隙内に押し込むと共に,押さえ手段により上記スナップリングの上記間隙内に挿入されていない部分を上記間隙の開口部に向けて押し付けるリング挿入工程と,
上記押さえ手段により押し付けた部分が順次上記挿入手段によって上記間隙内に押し込められるように上記処理部材を回転させる回転工程とを含むことを特徴とするスナップリングインサート方法にある(請求項1)。
【0007】
上記第1の発明のスナップリングインサート方法は,上記リングセット工程と上記リング挿入工程と上記回転工程とを含む方法である。この方法によれば,上記アウター部材と上記インナー部材とを含む上記処理部材において,上記アウター部材の上記円筒部と上記インナー部材との間隙に対して,容易かつスムースにスナップリングのインサートを行うことができる。
【0008】
即ち,まず,上記リングセット工程においては,スナップリングの一端部が,上記間隙の上記開口部と略一致するよう上記スナップリングを処理部材に対してセットする。
次に,上記リング挿入工程においては,上記挿入手段により,スナップリングの一部を押圧して,その一端部を上記間隙におけるリング溝の位置まで押し込める。さらに,上記押さえ手段を用いてスナップリングにおける未だ間隙に押し込まれてない部分を上記開口部に向けて押し付ける。これにより,上記間隙に押し込まれた部分から押し込まれていない部分に至るスナップリングの傾斜角度が抑制され,上記間隙に押し込められていない部分のスナップリングを上記間隙の上記開口部に近づけることができる。
【0009】
次に,上記回転工程においては,上記押さえ手段により押し付けられた部分が,順次上記挿入手段によって上記間隙に押し込まれるよう上記処理部材を回転させる。即ち,この工程においては,スナップリングにおける押さえ手段及び挿入手段が接触する部分を,スナップリングに対して相対的に移動させる。
【0010】
そして,上記の回転によって,押さえ手段により押し付けられた部分は,順次挿入手段により上記間隙に押し込められていくので,この回転をおよそ1回転分実施することにより,上記リング全体が上記間隙内のリング溝の位置まで押し込められる。そして,リング溝に対面したスナップリングは,その中に速やかに装着される。
【0011】
このように,上記第1の発明によれば,円筒部を有するアウター部材と,上記円筒部の内径よりも小さい外径を有すると共に上記円筒部から突出するように該円筒部内において同軸上に配置されたインナー部材とを含み,スナップリングを予め小さく縮めて挿入することができない処理部材において,上記円筒部の内周面に形成されたリング溝に,スナップリングを容易に装着できる容易かつスムースにスナップリングの装着を行うことができる。
【0012】
第2の発明は,円筒部を有するアウター部材と,上記円筒部の内径よりも小さい外径を有すると共に上記円筒部から突出するように該円筒部内において同軸上に配置されたインナー部材とを含む処理部材に対し,上記円筒部と上記インナー部材との間隙にスナップリングを押し込んで上記円筒部の内周面に形成されたリング溝に上記スナップリングを装着するための装置であって,
上記間隙の開口部を上方に向けて上記処理部材を載置して上記円筒部の軸心を中心として回転させるための回転テーブルと,
上記スナップリングを上記間隙内の上記リング溝の位置まで押し込むための挿入部と,
上記スナップリングにおける上記間隙内に挿入されていない部分を上記間隙の開口部に向けて押し付けるための押さえ部とを有していることを特徴とするスナップリングインサート装置にある(請求項2)。
【0013】
上記第2の発明による上記スナップリングインサート装置は,上記回転テーブルと上記挿入部と上記押さえ部とを有している。そのため,上述した優れたインサート方法(第1の発明)を確実に実施することができる。
即ち,まず,上記回転テーブルに,上記間隙の開口部を上方に向けて上記処理部材を載置することにより,これを上記円筒部の軸心を中心として回転可能な状態に保持する。次に,上記挿入部により,スナップリングの一部分のみを,上記リング溝まで押し込める。
【0014】
スナップリングの一部のみを上記間隙に押し込めると,スナップリングにおける上記間隙に押し込まれた部分から押し込まれていない部分に至る傾斜角度が大きくなってしまう。この傾斜角度が大きくなると,スナップリングをリング溝に挿入していくことができない。
【0015】
ここで,上記スナップリングインサート装置は,上記押さえ部を有している。この押さえ部を用いて,上記スナップリングにおける上記間隙内に押し込められてない部分を上記開口部に向けて押し付ける。これにより,スナップリングにおける上記傾斜角度が抑制され,スナップリングを上記開口部に近づけることができる。
【0016】
この状態で回転テーブルを回転させると,上記挿入部と上記押さえ部とをスナップリングに接触させながら処理部材を回転させることができる。これにより,上記間隙の上記リング溝の位置まで押し込められ,上記リング溝に挿入された部分を契機として,スナップリングの他の部分を,順次リング溝の位置まで押し込んでいくことができる。そして,全周にわたってリング溝の位置まで押し込められたスナップリングは,速やかにリング溝に装着される。
【0017】
このように,上記スナップリングインサート装置によれば,円筒部を有するアウター部材と,上記円筒部の内径よりも小さい外径を有すると共に上記円筒部から突出するように該円筒部内において同軸上に配置されたインナー部材とを含む処理部材における,上記円筒部の内周面に形成されたリング溝に,スナップリングを容易に装着することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
上記第2の発明においては,上記挿入部と上記押さえ部とは,これらと上記スナップリングとの接触位置が,上記アウター部材の上記円筒部の軸心を中心として,30度から70度の範囲となるように配置されていることが好ましい(請求項3)。
【0019】
この場合には,スナップリングにおける上記間隙に押し込めた部分から未だ押し込められてない部分に至る傾斜角度を有効に抑制して,上記間隙に押し込められてない部分のスナップリングを上記間隙の上記開口部に近づけることができる。
一方,30度未満である場合には,上記押さえ部による上記スナップリングの押し付けが十分ではなく,上記の傾斜角度を十分に抑制できないおそれがある。また,70度を超える場合には,スナップリングにおける上記押さえ部と上記挿入部との間の湾曲により,上記の傾斜角度が大きくなるおそれがある。
【0020】
また,上記挿入部は,上記スナップリングに当接する位置と,上記アウター部材と上記インナー部材との間に形成される略円筒状の間隙を軸方向に延長した延長領域の外側の位置との間を移動可能なように構成してあり,上記押さえ部は,上記スナップリングに当接する位置と,上記延長領域の外側の位置との間を移動可能なように構成してあり,
上記押さえ部は,上記挿入部に連動して位置を変更し,上記挿入部が上記スナップリングに当接する位置にあるとき,上記押さえ部も上記スナップリングに当接し,上記挿入部が上記延長領域の外側にあるとき,上記押さえ部も上記延長領域の外側に位置するよう構成してあることが好ましい(請求項4)。
【0021】
この場合には,上記挿入部及び上記押さえ部を,上記アウター部材と上記インナー部材との間に形成される略円筒状の間隙を軸方向に延長した延長領域の外側に移動できるため,スナップリングの挿入作業を実施するに当たり,上記スナップリングインサート装置へのスナップリングの載置を容易に実施できる。
さらに,上記押さえ部は,上記挿入部に連動して位置を変更するよう構成してある場合には,上記押さえ部又は上記挿入部のいずれか一方を操作するのみにより,容易に上記スナップリングインサート装置を操作することができる。
【0022】
また,上記挿入部は,トグルクランプのクランプアームの先端に配設してあることが好ましい(請求項5)。
ここで,トグルクランプは,クランプするための力点を有するクランプアームと,操作力を作用させるための作用点を有するレバーアームとを含むリンク構造により構成されたクランプ装置である。このトグルクランプでは,上記レバーアームを操作して上記クランプアームをクランプ状態にすると,上記作用点への操作力を取り除いても,上記力点は大きなクランプ力を維持することができる。
【0023】
上記挿入部が,上記クランプアームの先端に配設してある場合には,上記挿入部を,一旦上記スナップリングを上記間隙に押し込むことができる状態にすれば,上記レバーアームを継続して操作する必要がない。すなわち,上記の挿入部の状態は,上記トグルクランプ固有の作用により保持されることとなる。
【0024】
【実施例】
(実施例1)
本例の実施例にかかるスナップリングインサート装置1及びスナップリングインサート方法について,図1〜図4を用いて説明する。
本例のスナップリングインサート装置1は,図1に示すごとく,円筒部531を有するアウター部材53と,円筒部531の内径よりも小さい外径を有すると共に円筒部531から突出するように該円筒部531内において同軸上に配置されたインナー部材51とを含む処理部材5に対し,円筒部531とインナー部材51との間隙533にスナップリング60を押し込んで円筒部531の内周面に形成されたリング溝532にスナップリング60を装着するための装置である。
【0025】
そして,このスナップリングインサート装置1は,図1に示すごとく,上記間隙533の開口部52を上方に向けて処理部材5を載置して円筒部531の軸心を中心として回転させるための回転テーブル40と,スナップリング60を間隙533内のリング溝532の位置まで押し込むための挿入部11と,スナップリング60における間隙533内に押し込められてない部分を上記間隙533の開口部52に向けて押し付けるための押さえ部21とを有している。
【0026】
そして,上記のスナップリングインサート装置1を用いて実施するスナップリングインサート方法は,リングセット工程と,リング挿入工程と,回転工程とを含む方法である。
上記リングセット工程は,処理部材5の間隙533の開口部52上にスナップリング60を配置する工程である。
【0027】
上記リング挿入工程は,スナップリング60の一端部を,挿入部11を用いて間隙533に押し込むと共に,上記押さえ部21により上記スナップリング60の間隙533内に押し込められてない部分を間隙533の開口部52に向けて押し付ける工程である。
さらに,上記回転工程は,押さえ部21により押さえつけた部分が順次挿入部11によって間隙533に押し込められるように回転テーブル40を回転させる工程である。以下に,この内容について詳しく説明する。
【0028】
まず,本例に適用する処理部材5及びスナップリング60について説明する。この処理部材5は,図1に示すごとく,アウター部材53とインナー部材51とを同軸上に配置した部材である。
上記のアウター部材53は,その軸方向の少なくとも一部に略円柱形状の中空部を有しており,この中空部によって円筒部531が形成されている。さらに,この円筒部531の内周面には,スナップリング60を装着するためのリング溝532を設けてある。
【0029】
また,インナー部材51は,図1に示すごとく,アウター部材53の上記円筒部531の内径よりも小さい外径を有する略円柱形状の部材である。そして,その軸方向の一部に,アウター部材53の円筒部531に嵌り合う段部515とくびれ部516とを有しており,両者は,たな面518を介してつながっている。上記アウター部材53とインナー部材51とが同軸上に配置されたとき,このたな面518の位置は,上記リング溝532の上記軸方向の縁部であって,段部515側にある縁部と略一致するように構成されている。
【0030】
そして,上記アウター部材53とインナー部材51とが同軸上に配置され,かつ,リング溝532にスナップリング60が装着されたとき,このスナップリング60の端面とインナー部材51のたな面518とが当接するよう構成されている。このようにして,上記処理部材5は,アウター部材53に対して,インナー部材51を強固に固定できるよう構成されている。
【0031】
また,スナップリング60は,図5に示すごとく,SWRH72A等の高硬度線材よりなる板状素材からなる略円形のリング状の部材であって,端部が向き合ってなる合口61を有するものである。そして,外径に対して幅が細いこのスナップリング60は,上記の合口61の間隔を伸縮可能に構成されている。そして,合口61の間隔を縮められ,その外径が小さく拘束されたとき,スナップリング60は,外側に拡開しようとするばね力を発揮するよう構成されている。
【0032】
何ら外力を受けない状態のスナップリング60は,図1に示すごとく,上記アウター部材53の円筒部531の内径よりも大きな外径を有している。一方,スナップリング60を内径方向に縮めてその端部が当接して上記の合口61の間隔がゼロとなったとき,その外径は上記円筒部531の内径よりも小さくなるように構成してある。
すなわち,本例のスナップリング60は,上記アウター部材53の円筒部531の内周面に装着されたとき,上記合口61の間隔を広げようとするばね力を発生して強固に固定できるものである。
【0033】
そして,上記スナップリングインサート装置1は,図1及び図2に示すごとく,処理部材5を回転させるための回転テーブル40と,スナップリング60の一部を上記間隙533内へ押し込むための挿入部11と,スナップリング60におけるリング溝532に未挿入の部分を押し付けるための押さえ部21とを有する装置である。
【0034】
上記回転テーブル40は,図1及び図2に示すごとく,スナップリングインサート装置1の土台をなすベース30に回転可能に取り付けられると共に,処理部材5を載置するテーブルである。この回転テーブル40のテーブル面41には,処理部材5の外径よりわずかに大きい内径を有する位置決め用の凸状環(図示略)を設けてある。この凸状環は,上記回転テーブル40の回転軸をその中心として形成してある。
【0035】
上記挿入部11は,図1及び図2に示すごとく,ベース30に配設されたトグルクランプ10のクランプアーム13の先端に配設された凸状ピンであり,上記間隙533に差し込むことができるよう構成してある。
上記トグルクランプ10は,図1及び図3に示すごとく,挿入部11を操作するためのレバーアーム12と挿入部11を設けたクランプアーム13と,中間アーム14とからなるリンク構造を,クランプ台15に取り付けたものである。
【0036】
ここでは,中間アーム14及びクランプアーム13は,図1及び図3に示すごとく,それぞれ第1支点101,第3支点103によりクランプ台15に回転可能に支持されるよう構成してある。また,レバーアーム12は,中間アーム14及びクランプアーム13に,それぞれ第1支点101,第4支点104により回転可能に支持されるよう構成してある。
【0037】
さらに,クランプアーム13の側面には,図2及び図4に示すごとく,その側面と直交する軸の周りを回転可能なようカムアーム132が取り付けてある。該カムアーム132の先端には,さらに,後述するカム133を配設してある。
上記押さえ部21は,図1及び図2に示すごとく,スナップリング60における未だ間隙533に押し込められてない部分を,開口部52に向けて押し付けることができるよう構成してある。この押さえ部21は,押さえ部アーム22を介して,上記テーブル面41と略直角に配設された回動軸23の周りを回動可能なように取り付けてある。
【0038】
さらに,上記押さえ部アーム22は,図2及び図4に示すごとく,上記カムアーム132の先端のカム133が係合するカム溝221を有している。そして,カム133とカム溝221との係合により,上記挿入部11の移動に応じて,押さえ部21を含む押さえ部アーム22は,上記回動軸23周りに回動するよう構成してある。
【0039】
そして,上記挿入部11が,上記間隙533に差し込む状態となったとき,押さえ部21は,上記開口部52に近接する位置に移動するよう構成してある。
なお,この押さえ部21と上記挿入部11とは,図2に示すごとく,スナップリング60に接触する状態において,上記円筒部531の軸心を中心として,両者のなす角度が45度になるように配置してある。
【0040】
上記のごとく構成されたスナップリングインサート装置1を用いて,スナップリング60を挿入するに当たっては,まず,上記回転テーブル40に上記処理部材5を載置して,その間隙533上にスナップリング60を載置するリングセット工程を実施する。
ここでは,まず,回転テーブル40の回転軸と上記円筒部531の軸心とが一致するよう,テーブル面41上の上記凸状環の内側に処理部材5を載置する。
【0041】
そして,スナップリング60を,図2に示すごとく,スナップリング60における挿入部11によって押し込められる部分及び,押さえ部21によって押し付けられる部分が,処理部材5の上記開口部52に略一致するように載置する。またこのとき,スナップリング60における挿入部11の接触位置から合口に至るまでの一端部を,間隙533に押し込むことができるようスナップリング60の載置位置を調整する。
【0042】
次に,スナップリング60の一端部を,挿入部11により間隙533に押し込むと共に,未だ間隙533に押し込まれてない部分を,押さえ部21により開口部52に向けて押し付けるリング挿入工程を実施する。
ここでは,まず,図1及び図3に示すごとく,上記レバーアーム12の端部のうち,トグルクランプ10とは反対側にある端部をベース30側に押し下げ,上記トグルクランプ10を構成するリンク構造を作用させる。
【0043】
ベース30側に押し下げられたレバーアーム12は,図1及び図3に示すごとく,上記第2支点を中心として回転すると共に,この第2支点を支点とするテコの原理により上記第4支点104をベース30と反対側に押し上げる。このとき,上記中間アーム14と接続する第2支点は,中間アーム14が上記第1支点101周りを回転していくのに応じて,処理部材5側に移動していく。
【0044】
また,第4支点104により,レバーアーム12と接続されたクランプアーム13は,上記第4支点104が押し上げられると共に,上記第3支点103を中心として右回りに回転する。そうすると,このクランプアーム13の先端に配設された挿入部11は,図1に示すごとく,処理部材5の開口部52の間隙533に向けて移動する。そして,挿入部11は,この開口部52にセットされたスナップリング60と当接し,さらに,スナップリング60における当接する部分を含む上記一端部を,間隙533に押し込める。
【0045】
またこのとき,スナップリング60のリンク構造を構成するクランプアーム13,レバーアーム12及び中間アーム14は,図1に示すごとく,配置されることなる。このような配置状態においては,トグルクランプ10固有の作用により,挿入部11に力を作用して上方に押し上げることは困難である。そのため,レバーアーム12に作用させる操作力を取り除いた後においても,挿入部11は,スナップリング60に対する押し込み状態を維持することができる。
【0046】
さらに,上記のごとく,挿入部11がスナップリング60と接触するよう移動すると,クランプアーム13に接続された上記カムアーム132のカムは,図2及び図4に示すごとく,上記押さえ部アーム22のカム溝221を移動する。そうすると,押さえ部アーム22は,カムとカム溝221の係合により,上記回動軸23まわりを回動することとなる。そして,押さえ部アーム22の先端に配設された押さえ部21は,図2に示すごとく,処理部材5の開口部52に近接する。
この押さえ部21は,スナップリング60における未だ間隙533に押し込まれてない部分を開口部52に向けて押し付け,間隙533に押し込まれた部分から押し込まれてない部分に至るスナップリング60の傾斜角度を抑制する。
【0047】
次に,押さえ部21により押さえつけた部分が,順次挿入部11によって間隙533に押し込まれるように回転テーブル40を回転させる回転工程を実施する。この工程においては,上記のリング挿入工程において操作したトグルクランプ10のリンク構造の状態を維持しておく。すなわち,上記挿入部11によりスナップリング60の一部を間隙533に押し込め,上記押さえ部21により間隙533に押し込まれていない部分を押し付けているという状態を保持しながら,上記回転工程を実施する。
【0048】
この工程では,処理部材5を載置する回転テーブル40を回転させる。処理部材5の軸心と回転テーブル40の回転軸とは,略一致させてあるため,処理部材5は,その軸心を中心として回転することとなる。このとき,押さえ部21及び挿入部11が,スナップリング60に接触する状態において,押さえ部21から挿入部11へ向かう方向に回転させる。
【0049】
上記の方向に回転テーブル40を回転させることは,すなわち,スナップリング60における押さえ部21に接触する部分を,順次挿入部11側へ送り込んでいくことに等しい。そうすると,スナップリング60における押さえ部21により押し付けられた部分を順次,間隙533内のリング溝532の位置まで押し込めていくことができる。そして,処理部材5をおよそ360度回転させると,スナップリング60は,その全周にわたり,リング溝532の位置まで押し込められる。そしてその結果,スナップリング60は,リング溝532に装着され,上記アウター部材53と上記インナー部材51とを,その軸方向に強固に固定する。
【0050】
このように,本例における,上記のスナップリングインサート装置1を利用して実施するスナップリングインサート方法によれば,上記アウター部材53と,上記インナー部材51とからなり,両者の間に形成される間隙533を含む処理部材5において,この間隙533内の上記リング溝532に対して,非常に効率良く,かつ,滑らかにスナップリング60を装着することができる。
また,本例のスナップリングインサート方法によれば,スナップリング60を装着する作業は,非常に滑らかに実施でき効率的である。さらに,その作業中において処理部材5等に無理な力を作用することもない。
【0051】
なお,上記挿入部11としては,その先端部に,回転するボールを配設することも良い。また,上記押さえ部21としては,上記間隙533に正対するローラ面を有する回転ローラを配設し,該回転ローラによりスナップリング60を押し付けることも良い。この場合には,上記回転工程において,挿入部11及び押さえ部21と,スナップリング60との摩擦抵抗を減じて,さらに滑らかに回転工程を実施することができる。
【0052】
また,本例では,トグルクランプ10のクランプアーム13に挿入部11を配設しているが,トグルクランプ10に替えて,簡単なてこ構造等を採用しても良い。この場合には,上記回転工程を実施する間,挿入部11によるスナップリング60の押し込みを継続できるよう,作業者は上記てこ構造等の操作を続けることが必要となる。しかし,上記スナップリングインサート装置1を,より簡便な構造にできる利点もある。
【0053】
(実施例2)
本例は,実施例1の挿入部11及び押さえ部21の保持する構造を変更した例である。
本例のスナップリングインサート装置1は,図6及び図7に示すごとく,挿入部11及び押さえ部21を,トグルクランプ10のクランプアーム13の先端に配設したブリッジバー131に取り付けてある。
そのため,上記スナップリングインサート装置1は,クランプアーム13を動作させるだけで,上記挿入部11及び押さえ部21をスナップリング60に接触させることができる。
なお,その他の構成及び作用効果は,実施例1と同様である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1における,スナップリング装置によるスナップリング挿入する様子を示す側面図。
【図2】実施例1における,スナップリング装置によるスナップリング挿入する様子を示す上面図。
【図3】実施例1における,スナップリング装置を示す側面図。
【図4】実施例1における,スナップリング装置を示す上面図。
【図5】実施例1における,スナップリングを示す上面図。
【図6】実施例2における,トグルクランプを示す側面図。
【図7】実勢例2における,トグルクランプを示す上面図。
【符号の説明】
1...スナップリングインサート装置,
10...トグルクランプ,
11...挿入部,
12...レバーアーム,
13...クランプアーム,
15...クランプ台,
21...押さえ部,
22...押さえ部アーム,
221...カム溝,
30...ベース,
40...回転テーブル,
41...テーブル面,
5...処理部材,
51...インナー部材,
52...開口部,
53...アウター部材,
531...円筒部,
532...リング溝,
60...スナップリング,

Claims (5)

  1. 円筒部を有するアウター部材と,上記円筒部の内径よりも小さい外径を有すると共に上記円筒部から突出するように該円筒部内において同軸上に配置されたインナー部材とを含む処理部材に対し,上記円筒部と上記インナー部材との間隙にスナップリングを押し込んで上記円筒部の内周面に形成されたリング溝に上記スナップリングを装着するため方法であって,
    上記処理部材の上記間隙の開口部上に上記スナップリングを配置するリングセット工程と,
    上記スナップリングの一端部を,挿入手段を用いて上記間隙内に押し込むと共に,押さえ手段により上記スナップリングの上記間隙内に挿入されていない部分を上記間隙の開口部に向けて押し付けるリング挿入工程と,
    上記押さえ手段により押し付けた部分が順次上記挿入手段によって上記間隙内に押し込められるように上記処理部材を回転させる回転工程とを含むことを特徴とするスナップリングインサート方法。
  2. 円筒部を有するアウター部材と,上記円筒部の内径よりも小さい外径を有すると共に上記円筒部から突出するように該円筒部内において同軸上に配置されたインナー部材とを含む処理部材に対し,上記円筒部と上記インナー部材との間隙にスナップリングを押し込んで上記円筒部の内周面に形成されたリング溝に上記スナップリングを装着するための装置であって,
    上記間隙の開口部を上方に向けて上記処理部材を載置して上記円筒部の軸心を中心として回転させるための回転テーブルと,
    上記スナップリングを上記間隙内の上記リング溝の位置まで押し込むための挿入部と,
    上記スナップリングにおける上記間隙内に挿入されていない部分を上記間隙の開口部に向けて押し付けるための押さえ部とを有していることを特徴とするスナップリングインサート装置。
  3. 請求項2において,上記挿入部と上記押さえ部とは,これらと上記スナップリングとの接触位置が,上記アウター部材の上記円筒部の軸心を中心として,30度から70度の範囲となるように配置されていることを特徴とするスナップリングインサート装置。
  4. 請求項2又は3において,上記挿入部は,上記スナップリングに当接する位置と,上記アウター部材と上記インナー部材との間に形成される略円筒状の間隙を軸方向に延長した延長領域の外側の位置との間を移動可能なように構成してあり,上記押さえ部は,上記スナップリングに当接する位置と,上記延長領域の外側の位置との間を移動可能なように構成してあり,
    上記押さえ部は,上記挿入部に連動して位置を変更し,上記挿入部が上記スナップリングに当接する位置にあるとき,上記押さえ部も上記スナップリングに当接し,上記挿入部が上記延長領域の外側にあるとき,上記押さえ部も上記延長領域の外側に位置するよう構成してあることを特徴とするスナップリングインサート装置。
  5. 請求項2〜4のいずれか1項において,上記挿入部は,トグルクランプのクランプアームの先端に配設してあることを特徴とするスナップリングインサート装置。
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