JP4158410B2 - 車体構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、衝突荷重が副部材を介して車体骨格を成す本体部材に軸方向に入力されるように構成された車体構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の車体構造としては、例えば特開2000−53019号公報に開示されたものがあり、これをフロントサイドメンバの前端にバンパーステイを結合する部分に適用した場合、副部材となるバンパーステイの塑性変形反力(F1)が本体部材となるサイドメンバの降伏点反力(F2)よりも低く、かつ、このサイドメンバの塑性変形反力(F3)よりも高くなることになる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、バンパーステイの静動比がサイドメンバの静動比よりも低い場合、バンパーステイの反力低下率よりもサイドメンバの反力低下率が大きくなるため、高速衝突時にはF2>F1>F3の関係が成り立って軸方向入力に対してバンパーステイ側から変形を発生できるにしても、低速衝突時にはバンパーステイの塑性変形反力F1よりもサイドメンバの降伏点反力F2が低くなるため、バンパーステイは変形せずにサイドメンバの方から変形が起こってしまう。
【0004】
このため、低速衝突時の比較的ダメージの少ない場合にあっても、比較的簡単に交換可能なバンパーステイに変形が生じないで、車体骨格の本体部分となるサイドメンバに損傷が発生することになり、その修復に多くの時間と費用が費やされてしまう。
【0005】
そこで、本発明は高速衝突時はもとより、比較的ダメージの少ない低速衝突時にあっても、軸方向入力に対して車体骨格を成す本体部材に先んじて副部材から変形させることができる車体構造を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の車体構造にあっては、車体前後方向に延在配置した本体部材の前部に強度が低い降伏点低減部を設け、この降伏点低減部に接合されて該降伏点低減部を補強する接合部と、本体部材の前端にこの本体部材と同軸状態で結合された副部材の後部の内方に差し込まれる剥離力付加部分とからなる補強部材を設け、衝突荷重の入力により副部材の変形が前記副部材の後部に到達したときに、前記剥離力付加部分が後方へ押圧されることにより、前記接合部を剥離させて前記本体部材の前部の強度を低下させる
【0007】
【発明の効果】
本発明の車体構造によれば、高速衝突時および低速衝突時に関わりなく、かつ、副部材の塑性変形反力を低下させることなく副部材から本体部材へと順次変形させることができるため、比較的ダメージの少ない低速衝突時にあっても、可能な限り損傷を副部材にとどめることができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面と共に詳述する。
【0009】
図1〜図7は本発明にかかる車体構造の第1実施形態を示し、図1は副部材と本体部材の結合部分の分解斜視図、図2は本体部材の端部斜視図、図3は副部材と本体部材の結合部分の非衝突時の断面図、図4は副部材と本体部材の結合部分の衝突時の断面図、図5は衝突時における副部材と本体部材の反力特性を示す模式図、図6は副部材の寸法を示す斜視図、図7は副部材の反力特性を示す説明図である。
【0010】
本実施形態では、図1に示すように本体部材としてのフロントサイドメンバ(以下、サイドメンバと称す)10と、副部材としてのバンパーステイ11との結合部分に適用している。
【0011】
サイドメンバ10は車幅方向両側に配置されていて、断面コ字状のインナパネル10aと平板状のアウタパネル10bとを接合することにより矩形状の閉断面構造として構成され、このサイドメンバ10は全体として車体前後方向に延在配置してあって、前面衝突時にこのサイドメンバ10の軸方向に入力する衝突荷重に対して、該サイドメンバ10の軸方向の圧潰変形により衝撃エネルギーを吸収する主要なエネルギー吸収部材として機能している。
【0012】
バンパーステイ11は断面矩形状の押出し材により、又はパネル材により矩形状の閉断面構造に形成し、その前端を車幅方向に延在するバンパーアーマチャー12の両端部後面12aに結合するとともに、後端にサイドメンバ10に取り付けるための第1エンドプレート13を結合してある。
【0013】
一方、サイドメンバ10の前端には第2エンドプレート14を結合し、第1,第2エンドプレート13,14の四隅部分に形成した取付孔13a,14aを通して締結手段としてのボルト15,ナット15aで結合することにより、サイドメンバ10とバンパーステイ11とが同軸状態で結合され、前面衝突時にバンパーアーマチャー12に入力した衝突荷重が、バンパーステイ11を介してサイドメンバ10の前端部に入力されるようになっている。
【0014】
前記第1,第2エンドプレート13,14それぞれの中央部には、図3にも示すように後述のレインフォース22の凸設部22bを挿入するための開口部13b,14bを形成してある。
【0015】
ここで、本実施形態にあっては前記バンパーステイ11の塑性変形反力を、荷重入力方向前部(以下、前部と称する)11Aよりも荷重入力方向後部(以下、後部と称する)11Bを高くするとともに、このバンパーステイ11の後部11Bの塑性変形反力をサイドメンバ10の降伏点反力よりも低くしてある。
【0016】
また、バンパーステイ11の後部11Bの変形時に、サイドメンバ10の降伏点反力をその塑性変形反力と略同レベルまで低下させる降伏点低減機構20を設けてある。
【0017】
降伏点低減機構20は、サイドメンバ10の上,下壁10c,10dの前端部に形成した降伏点低減部としてのスリット21と、このスリット21に取付けられてバンパーステイ11の変形が後部11Bに到達する時点で除去される補強部材としてのレインフォース22と、によって構成してある。
【0018】
レインフォース22は、前記スリット21の荷重入力方向前後に跨って溶接(前方のスポット溶接箇所Wfと後方のスポット溶接箇所Wr)した平板状の溶接部分22aと、バンパーステイ11の変形が後部11Bに到達すると、前記溶接部分22aを前方のスポット溶接箇所Wfから剥離する方向に変形させる剥離力付加部分としての凸設部22bと、を設けて構成してある。
【0019】
溶接部分22aは上下1対設けられて、図2に示すように上,下壁10c,10dのそれぞれの内側から前記スリット21を覆ってスポット溶接Wf,Wrする一方、前記凸設部22bは上下一対の溶接部分22a間の中央部に位置して車両前方に突設され、これら溶接部分22aの前端部と凸設部22bの後端部とを、荷重入力方向(前後方向)に対して略直角に延びる腕部22cを介して連結してある。
【0020】
前記レインフォース22の取付け状態では、図2に示すように凸設部22bがサイドメンバ10の前端から突設し、この凸設部22bは図3に示すように第1,第2エンドプレート13,14の開口部13b,14bからバンパーステイ11の内方に差し込んである。
【0021】
このとき、図3に示すようにバンパーステイ11の全長をLとしたときに、前記差し込んだ凸設部22bの先端(前端)とバンパーアーマチャー12の後面12aとの間には隙間aを設けてあって、該隙間aに相当する部分がバンパーステイ11の前部11Aとなり、残りの部分(L−a)が後部11Bとなるようにしてある。
【0022】
また、前記凸設部22bはバンパーステイ11内に位置することから、このバンパーステイ11の補強部材として機能し、この凸設部22bはバンパーステイ11の後部11Bの塑性変形反力を増大させる機能を兼ねている。
【0023】
ここで、サイドメンバ10とバンパーステイ11の形成材料を選択することにより、バンパーステイ11の静動比をαbとし、サイドメンバ10の静動比をαsとして設定する。
【0024】
また、バンパーステイ11の後部11Bにおける高速衝突時の塑性変形反力をFbdとし、サイドメンバ10の高速衝突時の降伏点反力をFsdとした場合に、低速衝突時にFsd>(αs/αb)>Fbdの関係を満たすように設定してある。
【0025】
ところで、前記静動比は、材料を静的にゆっくりと変形させた時と、高速の歪み速度で変形させた時との引張強さの比を表すものとし、例えば衝突時に相当する歪み速度10/s以上の高速変形(動的変形)時と、10−3〜10−1/sとゆっくり変形する静的変形時では、鋼板の応力・歪み曲線の形が大きく異なり、高速変形では強さが大幅に増すことが確かめられている。
【0026】
また、本実施形態の車体構造では、図6に示すようにバンパーステイ11の断面の縦,横の寸法をそれぞれp,qとし、バンパーステイ11の変形が変形初期から塑性変形反力の高い後部11Bに到達するまでのストロークa(図3参照)を、a=(p+q)×{(1/16)+(1/4×n)}(nは整数)の関係を満たすように設定してある。
【0027】
以上の構成によりこの第1実施形態の車体構造にあっては、前面衝突によりバンパーアーマチャー12の変形を伴いつつバンパーステイ11を介してサイドメンバ10に衝突荷重が軸方向に入力されると、図4に示すようにバンパーステイ11の変形(軸圧潰)に伴って隙間aが潰れると、バンパーアーマチャー12の後面12aがレインフォース22の凸設部22bの先端に干渉してこの凸設部22bを後方に押圧する。
【0028】
すると、前記押圧力が腕部22cを介して溶接部分22aの前端部に伝達されることにより、溶接部分22aには後方のスポット溶接部Wrを支点とするモーメントMが働いて、前方のスポット溶接部Wfに剥離力が発生し、スポット溶接は剥離力に弱いためこのスポット溶接部Wfは剥離して、スリット21から溶接部分22aを除去してこのスリット21を開口する。
【0029】
このようにスリット21が開口することにより、このスリット21を形成した部分の強度が低下されているため、バンパーステイ11の後部11Bの変形時には、サイドメンバ10の降伏点反力が塑性変形反力と略同レベルまで低下するようになる。
【0030】
以下、前記バンパーステイ11の変形量(ストローク)と、このバンパーステイ11およびサイドメンバ10に働く反力との関係から、高速衝突時と低速衝突時の挙動を図5の模式図を用いて説明する。
【0031】
高速衝突時は、バンパーステイ11の塑性変形反力が低い前部11Aが変形する時点では、このバンパーステイ11の後部11Bの塑性変形反力は見かけ上Fbdとなり、また、このときは、サイドメンバ10の降伏点反力は降伏点低減機構20が作動しない状態、つまりスリット21がレインフォース22の溶接部分22aによって覆われているためFsdである。
【0032】
そして、更に変形が進行してバンパーステイ11の後部11Bに変形が及ぶと、レインフォース22の凸設部22bに押圧力が作用して溶接部分22aの前方のスポット溶接部Wfが剥離するため、スリット21が現れて降伏点低減機構20が作動状態となり、サイドメンバ10の降伏点反力は塑性変形反力と同レベルまで低下する。
【0033】
一方、低速衝突時は、バンパーステイ11の静動比がαbであり、サイドメンバ10の静動比がαsであるため、バンパーステイ11の荷重入力方向後部の塑性変形反力はFbd/αbとなるとともに、サイドメンバ10の降伏点反力はFsd/αsとなる。
【0034】
このとき、Fsd>(αs/αb)>Fbdの関係を満たすように設定してあるため、サイドメンバ10が変形する以前にバンパーステイ11の後部11Bが変形し、これによってレインフォース20の凸設部22bに押圧力が作用して前記降伏点低減機構20が同様に作動するため、前記高速衝突時と同様にサイドメンバ10の降伏点反力は塑性変形反力と同レベルまで低下する。
【0035】
従って、高速衝突時および低速衝突時に関わりなく、かつ、バンパーステイ11の塑性変形反力を低下させることなく、バンパーステイ11からサイドメンバ10へと順次変形させることができる。
【0036】
このため、比較的ダメージの少ない低速衝突時にあっては、サイドメンバ10に先んじてバンパーステイ11を変形させることができるため、可能な限り損傷をバンパーステイ11に止めることができる。
【0037】
従って、バンパーステイ11のみが損傷した場合は、第1エンドプレート13を第2エンドプレート14から取り外して、バンパーステイ11およびバンパーアーマチャー12を交換するのみでよく、車体骨格を成すサイドメンバ10を修復する作業が省略されることにより、破損個所の修復に要する時間を短縮するとともに、その修復コストを安く済ますことができる。
【0038】
また、本実施形態では図6に示すようにバンパーステイ11の断面の縦,横の寸法をそれぞれp,qとし、かつ、図3に示すストロークaは、
a=(p+q)×{(1/16)+(1/4×n)}(nは整数)…(1)
としたので、図7に示すバンパーステイ11の反力特性を得ることができ、バンパーステイ11の反力がストロークに対してフラットに近付くため、車体変形特性や乗員障害値の安定化の点で望ましい結果となる。
【0039】
つまり、バンパーステイ1と反力特性との関係は、前記図6,図7に示すような関係があることが知られている(自動車技術会論文集,No.7,1974,「車体のエネルギ吸収特性(第1報)」等)。
【0040】
従って、反力特性の面からは図7に示すように隙間aの寸法は、初期の{(p+q)/16}に順次{(p+q)/4}がn個集合することによって決定されて概略次のようになっており、
a={(p+q)/16}、{(p+q)/16}+(p+q)/4、…、(p+q)×{(1/16)+(1/4×n)}(nは整数)…(2)
この(2)式から前記(1)の一般式が導き出される。
【0041】
ところで、この第1実施形態の車体構造にあっては、降伏点低減機構20を、サイドメンバ10に形成した降伏点低減部としてのスリット21と、このスリット21に取付けられてバンパーステイ11の変形が後部11Bに到達する時点で除去される補強部材としてのレインフォース22とで構成したので、降伏点低減機構20を簡単な構成にして確実に作動させることができる。
【0042】
また、前記補強部材としてのレインフォース22には、溶接部分22aと、剥離力付加部分としての凸設部22bと、を設け、溶接部分22aをスリット21の荷重入力方向前後に跨って溶接するとともに、凸設部22bはバンパーステイ11の変形が後部11Bに到達すると、溶接部分22aを荷重入力方向前方の溶接箇所(前方のスポット溶接部Wf)から剥離する方向に変形させるようにしたので、前記後部11Bの変形力を凸設部22bに作用させることでスリット21を現すことができるため、簡単な構成にして降伏点低減機構20を確実に作動させることができる。
【0043】
更に、前記剥離力付加部分としての凸設部22bを、バンパーステイ11の後部11Bに位置させて補強部材として用いることにより、この凸設部22bがバンパーステイ11の後部11Bの塑性変形反力を増大させる機能を兼ねるようにしたので、バンパーステイ11自体の構造を前部11Aと後部11Bで変化させる必要が無くなるため、バンパーステイ11の構造を簡単にすることができる。
【0044】
更にまた、剥離力付加部分としての凸設部22bと前記溶接部分22aとの間に、荷重入力方向に対して略直角に延びる腕部22cを設け、この腕部22cを介して凸設部22bに入力される荷重(押圧力)を溶接部分22aの剥離力として伝達するようにしたので、腕部22cを介して溶接部分22aに大きな剥離モーメントM(図4参照)を発生させることができるため、簡単な構成にして溶接部分22aを確実に剥離することができる。
【0045】
また、前記剥離力付加部分を凸設部22bとして、この凸設部22bを腕部22cから前方に突設してバンパーステイ11の後部11Bに挿入して並列配置したので、後部11Bの変形時にはバンパーアーマチャー12が干渉して凸設部22bに押圧力が入力されるため、簡単な構造にして降伏点低減機構20の作動タイミングを正確に取ることができる。
【0046】
更に、降伏点低減部をサイドメンバ10の上,下壁10c,10dに形成したスリット21としたので、加工が容易であり、かつ、スリット21の開口面積によって降伏点の低減量を簡単かつ精度良く調整することができる。
【0047】
更にまた、バンパーステイ11とサイドメンバ10との結合は、それぞれに設けた第1,第2エンドプレート13,14をボルト15,ナット15aによって着脱自在としたので、衝突により破損したバンパーステイ11の交換が容易になる。
【0048】
図8,図9は本発明の第2実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0049】
図8は本体部材の結合部分の分解斜視図、図9は本体部材の結合部分の断面図である。
【0050】
この第2実施形態の車体構造は、図8,図9に示すように降伏点低減部としてビード30を用い、このビード30をサイドメンバ10の上,下壁10c,10d、つまり、前記第1実施形態のスリット21に対応した位置に形成してある。
【0051】
勿論、この第2実施形態にあっても前記ビード30の荷重入力方向前後に跨って、レインフォース22の溶接部分22aを溶接(前方のスポット溶接箇所Wfと後方のスポット溶接箇所Wr)してあり、その他の構成も前記第1実施形態と同様としてある。
【0052】
従って、この第2実施形態の車体構造にあっては、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏するのは勿論のこと、降伏点低減部となるビード30にあっても、レインフォース22の溶接部分22aの前方のスポット溶接部Wfが剥離することにより、このビード30が応力集中部分となって降伏点を低減することができる。
【0053】
また、降伏点低減部をビード30としたので、単にプレスで凹設するのみでよいため、加工が容易となる。
【0054】
図10,図11は本発明の第3実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0055】
図10は本体部材の結合部分の分解斜視図、図11は本体部材の結合部分の断面図である。
【0056】
この第3実施形態の車体構造は、図10に示すように降伏点低減部として、サイドメンバ10の一般部分の壁面よりも肉厚が小さい薄板31で構成してある。
【0057】
前記薄板31はサイドメンバ10のインナパネル10aの断面形状と同形となる断面コ字状に形成し、この薄板31をこのインナパネル10aの前端部にレーザー溶接により一体化してある。
【0058】
そして、図11に示すようにレインフォース22の溶接部分22aを薄板31とサイドメンバ10とに跨って溶接(前方のスポット溶接箇所Wfと後方のスポット溶接箇所Wr)してあり、その他の構成も前記第1実施形態と同様としてある。
【0059】
従って、この第3実施形態の車体構造にあっては、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏するのは勿論のこと、レインフォース22の溶接部分22aの前方のスポット溶接部Wfが剥離することにより、小さな肉厚で強度が低下した薄板31に荷重が入力されることにより降伏点を低減することができる。
【0060】
また、前記薄板31はサイドメンバ10のインナパネル10aと同形状となる断面コ字状に形成してあるので、サイドメンバ10の上,下壁10c,10dのみならず、内側壁10eに対応する部分によっても降伏点を制御できる。
【0061】
図12,図13は本発明の第4実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0062】
図12は本体部材の結合部分の分解斜視図、図13は本体部材の結合部分の断面図である。
【0063】
この第4実施形態の車体構造は、図12に示すように降伏点低減部として、サイドメンバ10の一般部分の材料強度よりも低い低強度部材32で構成してある。
【0064】
前記低強度部材32は前記第3実施形態の薄板31と同様に、サイドメンバ10のインナパネル10aの断面形状と同形となる断面コ字状に形成し、この低強度部材32をインナパネル10aの前端部にレーザー溶接により一体化してある。
【0065】
そして、図13に示すようにレインフォース22の溶接部分22aを低強度部材32とサイドメンバ10とに跨って溶接(前方のスポット溶接箇所Wfと後方のスポット溶接箇所Wr)してあり、その他の構成も前記第1実施形態と同様としてある。
【0066】
従って、この第4実施形態の車体構造にあっては、前記第1実施形態と同様の作用・効果を奏するのは勿論のこと、前記第3実施形態と同様に前方のスポット溶接部Wfが剥離することにより、低強度部材32に荷重が入力されて降伏点を低減することができる。
【0067】
また、この第4実施形態にあっても前記低強度部材32はサイドメンバ10のインナパネル10aと同形状となる断面コ字状に形成してあるので、サイドメンバ10の上,下壁10c,10dのみならず、内側壁10eに対応する部分によっても降伏点を制御できる。
【0068】
図14〜図16は本発明の第5実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0069】
図14は本体部材の結合部分の分解斜視図、図15は副部材と本体部材の結合部分の非衝突時の断面図、図16は副部材と本体部材の結合部分の衝突時の断面図である。
【0070】
この第5実施形態の車体構造は、図14,図15に示すようにレインフォース22の腕部22cからサイドメンバ10の内方に挿入する凹設部33を形成するとともに、バンパーステイ11の前部11Aから一体にプッシュロッド34を延設し、これら凹設部33とプッシュロッド34によって剥離力付加部分を構成してある。
【0071】
前記プッシュロッド34は、第1,第2エンドプレート13,14の開口部13b,14bを貫通して前記凹設部33に、その底部33aとの間に所定間隔(ストロークa)を設けて挿入している。
【0072】
従って、この実施形態にあってはバンパーステイ11の前部11Aが変形して後部11Bに変形が到達すると、プッシュロッド34の先端が凹設部33の底部33aに干渉し、更なる荷重の入力により図16に示すように腕部22cを介して溶接部分22aに剥離方向のモーメントMを発生し、前方のスポット溶接部Wfを剥離させることができる。
【0073】
また、この第5実施形態ではストロークaの寸法をプッシュロッド34の長さで決定することができるため、このプッシュロッド34の長さを変更するのみで、同一の降伏点低減機構20を車体重量の異なる複数の車種に共用することができる。
【0074】
図17,図18は本発明の第6実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0075】
図17は副部材と本体部材の結合部分の分解斜視図、図18は副部材と本体部材の結合部分の断面図である。
【0076】
この第6実施形態の車体構造は、図17,図18に示すようにサイドメンバ10の前端部において、アウタパネル10bの上下両側部10b1,10b2を折曲して、インナパネル10aの上,下壁10c,10dの外面に重ねてスポット溶接し、サイドメンバ10の前端部外側を略突起部分の無い断面矩形状とするとともに、この前端部分をバンパーステイ11の内側に嵌合してある。
【0077】
そして、サイドメンバ10とバンパーステイ11との嵌合部分相互に形成した取付孔35を通して締結部材としての図外のボルト,ナットで着脱自在に結合している。
【0078】
従って、この第6実施形態の車体構造にあっても、サイドメンバ10とバンパーステイ11とがボルト,ナットで着脱自在に結合してあるため、バンパーステイ11の交換作業が簡単になり、修復に要する時間や経費を削減することができる。
【0079】
図19,図20は本発明の第7実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0080】
図19は副部材と本体部材の結合部分の分解斜視図、図20は副部材と本体部材の結合状態の斜視図である。
【0081】
この第7実施形態の車体構造は、補強部材を平板状レインフォース36で構成し、この平板状レインフォース36を、スリット21を形成したサイドメンバ10の上,下壁10c,10dとバンパーステイ11との間に跨って配置し、サイドメンバ10側は溶接部分となってスリット12の前後に跨って溶接(前方のスポット溶接部Wfと後方のスポット溶接部Wr)するとともに、バンパーステイ11側ではアーク溶接Waにより結合してある。
【0082】
このとき、平板状レインフォース36をバンパーステイ11に結合する前端部はバンパーステイ11の後部11Bに位置させてあり、このバンパーステイ11の塑性変形反力を増大させる機能を兼ねている。
【0083】
また、この実施形態ではバンパーステイ11およびサイドメンバ10の結合側端部を外方に折曲したフランジ部11c,10fを形成し、これらフランジ部11c,10fを互いに突き合わせて、エンドプレートを介すことなく図外のボルト,ナットで結合するようにしている。
【0084】
従って、この第7実施形態の車体構造にあっては、バンパーステイ11の変形が前部11Aから後部11Bに到達すると、平板状レインフォース36が全体的に後方に移動するため、前後のスポット溶接部Wf,Wrに剪断力を作用させて剥離することになる。
【0085】
また、この実施形態では補強部材が平板状レインフォース36であるため、構造を簡素化することができる。
【0086】
図21は本発明の第8実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0087】
図21は副部材と本体部材の結合部分の断面図で、この第8実施形態の車体構造は、レインフォース22の腕部22cに波形部分37を形成してある。
【0088】
従って、この第8実施形態の車体構造では、凸設部22bに入力された押圧力を腕部22cを介して溶接部分22aの剥離力として伝達する際、前記波形部分37を伸展した後に剥離モーメントM(図4参照)を発生させることができるため、この波形部分37の緩衝機能によってサイドメンバ10の降伏点反力の変化を滑らかにしてショックを和らげることができる。
【0089】
図22は本発明の第9実施形態を示し、前記第1実施形態と同一構成部分に同一符号を付して重複する説明を省略して述べる。
【0090】
図22は副部材と本体部材の結合部分の断面図で、この第9実施形態の車体構造は、溶接部分22aの前方のスポット溶接部Wfを荷重入力方向に所定距離を設けて複数箇所(本実施形態では2箇所)設けてある。
【0091】
従って、この第9実施形態の車体構造では、溶接部分22aに剥離モーメントMが作用した際に、前後方向に設けた複数のスポット溶接部Wfが前方から順に剥離していくため、サイドメンバ10の降伏点反力の変化を滑らかに行ってショックを和らげることができる。
【0092】
以上、第1〜第9実施形態によって本発明の車体構造を説明したが、第5〜第8実施形態では、降伏点低減部として第1実施形態と同様にスリット21を形成した場合を示すが、勿論、これに限ることなく第2実施形態のビード30、第3実施形態の薄板31、第4実施形態の低強度部材32を降伏点低減部として用いてもよいことはいうまでもない。
【0093】
また、第6,第8,第9実施形態では、レインフォース22の剥離力付加部分として凸設部22bを用いたが、これに限ることなく、第5実施形態に示した凹設部33とプッシュロッド34によって剥離力付加部分を構成することもできる。
【0094】
ところで、本発明の車体構造は前記第1〜第9実施形態に限ることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他の各種実施形態を採用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態における副部材と本体部材の結合部分の分解斜視図。
【図2】本発明の第1実施形態における本体部材の端部斜視図。
【図3】本発明の第1実施形態における副部材と本体部材の結合部分の非衝突時の断面図。
【図4】本発明の第1実施形態における副部材と本体部材の結合部分の衝突時の断面図。
【図5】本発明の第1実施形態における衝突時における副部材と本体部材の反力特性を示す模式図。
【図6】本発明の第1実施形態における副部材の寸法を示す斜視図。
【図7】本発明の第1実施形態における副部材の反力特性を示す説明図。
【図8】本発明の第2実施形態における本体部材の結合部分の分解斜視図。
【図9】本発明の第2実施形態における本体部材の結合部分の断面図。
【図10】本発明の第3実施形態における本体部材の結合部分の分解斜視図。
【図11】本発明の第3実施形態における本体部材の結合部分の断面図。
【図12】本発明の第4実施形態における本体部材の結合部分の分解斜視図。
【図13】本発明の第4実施形態における本体部材の結合部分の断面図。
【図14】本発明の第5実施形態における本体部材の結合部分の分解斜視図。
【図15】本発明の第5実施形態における副部材と本体部材の結合部分の非衝突時の断面図。
【図16】本発明の第5実施形態における副部材と本体部材の結合部分の衝突時の断面図。
【図17】本発明の第6実施形態における副部材と本体部材の結合部分の分解斜視図。
【図18】本発明の第6実施形態における副部材と本体部材の結合部分の断面図。
【図19】本発明の第7実施形態における副部材と本体部材の結合部分の分解斜視図。
【図20】本発明の第7実施形態における副部材と本体部材の結合状態の斜視図。
【図21】本発明の第8実施形態における副部材と本体部材の結合部分の断面図。
【図22】本発明の第9実施形態における副部材と本体部材の結合部分の断面図。
【符号の説明】
10 フロントサイドメンバ(本体部材)
11 バンパーステイ(副部材)
11A 荷重入力方向前部
11B 荷重入力方向後部
15 ボルト(締結部材)
15a ナット(締結部材)
20 降伏点低減機構
21 スリット(降伏点低減部)
22 レインフォース(補強部材)
22a 溶接部分
22b 凸設部(剥離力付加部分)
22c 腕部
30 ビード(降伏点低減部)
31 薄板(降伏点低減部)
32 低強度部材(降伏点低減部)
33 凹設部(剥離力付加部分)
34 プッシュロッド(剥離力付加部分)
36 平板状レインフォース(補強部材)
37 波形部分
Wf 前方のスポット溶接部
Wr 後方のスポット溶接部

Claims (8)

  1. 車体前後方向に延在配置された本体部材 (10) と、
    該本体部材 (10) の前端に、前記本体部材 (10) と同軸状態で結合された副部材 (11) と、
    を有する車体構造において、
    前記本体部材 (10) の前部に、強度が低い降伏点低減部 (21) を設け、
    該降伏点低減部 (21) に接合されて、前記降伏点低減部 (21) を補強する接合部 (22a) と、
    前記本体部材 (10) の前端から突設し、前記副部材 (11) の後部の内方に差し込まれる剥離力付加部分 (22b,34) と、
    を有する補強部材 (22) を設け、
    車体前方からの衝突荷重が前記副部材 (11) に入力されて、
    前記副部材 (11) の変形が、前記副部材 (11) の後部に到達すると、
    前記剥離力付加部分 (22b,34) が後方に押圧されることによって、前記接合部 (22a) が剥離して
    前記本体部材 (10) の前部の強度を低下させる
    ことを特徴とする車体構造
  2. 剥離力付加部分(22b)と溶接部(22a)との間に、荷重入力方向に対して略直角に延びる腕部(22c)を設け、この腕部(22c)を介して剥離力付加部分(22b)に入力される荷重を溶接部(22a)の剥離力として伝達することを特徴とする請求項に記載の車体構造。
  3. 剥離力付加部分は、腕部(22c)から本体部材(10)の内方に挿入した凹設部(33)と、副部材(11)の荷重入力方向前部から一体に延設されて前記凹設部(33)にその底部(33a)との間に所定間隔をおいて挿入したプッシュロッド(34)と、で構成したことを特徴とする請求項に記載の車体構造。
  4. 前記腕部(22c)に波形部分(37)を形成したことを特徴とする請求項2または3に記載の車体構造。
  5. 降伏点低減部は、本体部材(10)の壁面に形成したスリット(21)であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の車体構造。
  6. 降伏点低減部は、本体部材(10)の壁面に形成したビード(30)であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の車体構造。
  7. 降伏点低減部は、本体部材(10)の一般部分の壁面よりも肉厚が小さい薄板(31)で構成したことを特徴とする請求項のいずれかに記載の車体構造。
  8. 降伏点低減部は、本体部材(10)の一般部分の材料強度よりも低い低強度部材(32)であることを特徴とする請求項のいずれかに記載の車体構造。
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