JP4157998B2 - 有端リングの製造方法およびこれに用いる射出成形用金型 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円周上の一部をカットした樹脂製の有端リングを金型により製造する方法に関し、また、この製造方法の実施に使用される射出成形用金型に関するものである。上記有端リングは、例えば有端シールリングであって、この有端シールリングは、主としてトルクコンバーターや油圧式クラッチ等の自動変速機における作動油の密封に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
通常、射出成形において、金型のキャビティに溶融樹脂を注入し、冷却後、金型から製品を離型する際、エジェクター機構による突き出しが広く行なわれているが、有端のシールリングは、その形状から、製品に不均一な力がかかると簡単に変形してしまうと云う問題を抱えている。
【0003】
また、シールリングは通常、熱固定と云う作業を行なうが、その場合には製品を整列させ、寸法の決まった筒状の治具に装着する必要があるが、射出成形を自動運転で実施した場合やバッチ処理で仕上げ等を行なった場合、出来上がった成形品は通常、箱状の容器にストックされる。このとき、製品は有端であるために互いに絡み合い易くなっており、よって整列に多くの労を要する。
【0004】
また、上記バッチ処理による仕上げ等においても、製品同士の絡み合いのためにバッチ投入量が制限され、生産性向上の阻害要因となっている。
【0005】
また、シールリングを合成樹脂の射出成形により製造する場合には、図8に示すように、射出成形金型のキャビティに溶融樹脂を注入するためのゲートgを、(1)キャビティのほぼ中央部(キャビティ周長のほぼ中央部)c、または(2)中央部cから両側±30°未満の範囲に設け、このゲートgからキャビティに溶融樹脂を注入して成形している。
【0006】
しかしながら、このようにキャビティのほぼ中央部cまたは中央部cから両側±30°未満の範囲に設けたゲートgからキャビティに溶融樹脂を注入する場合には、注入された溶融樹脂がゲートgから左右の両末端e,eに向かって流れてゆく。そのため、溶融樹脂の流れの起点となるゲート部では樹脂の配向性が良くなく、また、繊維等の充填剤を配合する場合でも配向性が良くないことに起因して補強されにくいので、一般にゲート部は他の部分に比べて強度が低い。このような強度上のネックとなるゲート部がシールリングのほぼ中央部または中央部から両側±30°未満の範囲にあることは決して好ましいことではない。また、この種の有端シールリングは、装着または取り外しの際、両端部を左右に広げて拡径させるが、そのとき、応力がシールリングの中央部に集中することから、この部分にゲートがあると、損傷または欠損等の問題を生じ易い。
【0007】
一方、上記問題を解決するために、(3)シールリングの一方の端部付近にゲート部を設ける方法も提案されているが、このような合成樹脂製シールリングを射出成形する場合、特に外径の大きなシールリングでは、周長が長くなるため、均一な寸法および均一な材料特性を得ることが難しいと云った問題が残る。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は以上の点に鑑み、従来の有端リングの製造時における上記のようなハンドリングの悪さを解消するとともに、強度上の問題点も解消し、その耐久性および取り扱い性を高めることを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による有端リングの製造方法は、円周上の一部をカットした樹脂製の有端リングを金型により製造する方法であって、前記有端リングの相対向する端部をタブ等の連結部を介して互いに連結した状態で射出成形を行ない、離型および仕上げの後、前記連結部を製品部から切断し、熱固定を経て、最終製品を得ることとし、溶融樹脂を注入するゲートを前記有端リングを成形する製品キャビティの周長における中央部の両側±30°〜90°、望ましくは±55°〜70°の位置に設けた金型を用いて前記有端リングを製造し、更に、前記中央部からのゲート位置のシフト角、前記連結部の容積および前記連結部へのゲート断面積を組み合わせることにより樹脂のウェルドが前記連結部に発生するように設定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2による有端リングの製造方法は、上記した請求項1記載の有端リングの製造方法において、前記中央部からのゲート位置のシフト角を±30°〜60°、連結部の容積を116〜307mm3、連結部へのゲート断面積を0.81mm2に設定することを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項3による有端リングの製造方法は、上記した請求項1記載の有端リングの製造方法において、前記中央部からのゲート位置のシフト角を±45°〜90°、連結部の容積を97〜403mm3、連結部へのゲート断面積を0.25mm2に設定することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項4による射出成形用金型は、上記した請求項1記載の有端リングの製造方法の実施に用いる射出成形用金型であって、パーティング部に製品キャビティに連続して連結部成形部を設け、溶融樹脂を注入するゲートを前記製品キャビティの周長における中央部の両側±30°〜90°、望ましくは±55°〜70°の位置に設け、更に、前記中央部からのゲート位置のシフト角、連結部の容積および前記連結部へのゲート断面積を組み合わせることにより樹脂のウェルドが前記連結部に発生するように設定することを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項5による射出成形用金型は、上記した請求項4記載の射出整形用金型において、前記中央部からのゲート位置のシフト角を±30°〜60°、連結部の容積を116〜307mm3、連結部へのゲート断面積を0.81mm2に設定することを特徴とするものである。
【0016】
更にまた、本発明の請求項6による射出成形用金型は、上記した請求項4記載の射出整形用金型において、前記中央部からのゲート位置のシフト角を±45°〜90°、連結部の容積を97〜403mm3、連結部へのゲート断面積を0.25mm2に設定することを特徴とするものである。
【0017】
上記構成を備えた本発明の製造方法のように、射出成形可能な合成樹脂からなる有端リングの相対向する端部をタブ等の連結部を介して互いに連結した状態で射出成形を行ない、離型後、そのままの形状で仕上げを行ない、その後、タブ等の連結部の切断工程および熱固定工程を経て最終製品を得るようにすると、リングを始めから有端状態で成形する場合よりも離型時の変形が抑えられるために、生産性の向上ないし不良率の低下に寄与することが可能となる。
【0018】
また、リングを始めから有端状態で成形する場合よりも、離型のための、例えばエジェクター機構による離型の際の成形品に付随するタブ点数を少なくすることができるために、歩留まりを向上させることが可能となる。
【0019】
また、仕上げ工程については、コストの面から多数のリングを一度に処理するバッチ処理が広く行なわれているが、有端リング形状の場合には、リング同士が互いに絡み合い、それが仕上げ処理効率の妨げになっているのに対し、本発明のようにリングが無端状態にあるときに仕上げ工程を行なえば、リング同士が絡み合うことがなく、仕上げ処理時間およびランニングコストの面で非常に有利なものとなる。
【0020】
また一般に、有端リングを射出成形により製造する場合には、熱固定と云う工程を欠かすことができない。熱固定とは、一旦、組み付け時の寸法よりも端部を拡径した状態で成形した後、組み付け時の寸法に変形させた状態で加熱し、形状を固定するものであり、この熱固定の方法としては例えば、必要とするリングの外径と同寸法の内径を有する筒を用意し、その中にリングを詰め、適当な熱を加え、形状を固定する方法がある。この場合も本発明によるタブ連結リング形状の場合、有端リングのようなリング同士の絡み合いが起こらないため、整列処理のための時間削減、整列させるための治具の簡素化を図ることが可能となる。
【0021】
また、本発明の製造方法は、上記したように金型内に溶融樹脂を注入するゲートを有端リングを成形する製品キャビティの周長ないし全長における中央部の両側±30°〜90°、望ましくは±55°〜70°の位置に設けた金型により有端リングを製造するものであり、すなわちゲートのシフト角を30°〜90°、望ましくは55°〜70°に設定するものである。
【0022】
有端リングはその両端を左右に開く際、全長の中央部に最も応力が集中し、全長の中央部から端部にかけてその応力は徐々に小さくなる。また、注入された溶融樹脂はゲートから左右の両末端に向かって流れていくため、溶融樹脂の流れの起点となるゲート部では樹脂の配向性が良くなく、また、繊維等の充填剤を配合する場合でも配向性が良くないことに起因して補強されにくいので、一般にゲート部は他の部分に比べて強度が低くなる。
【0023】
一方、ゲート位置が一方の端部に近過ぎる場合、特に外径の大きなリングでは周長が長くなるため、均一な寸法および均一な材料特性を得ることが難しいといった問題が残る。
【0024】
ゲート部の配置については、強度確保のためには、リングの中央部より離れる方向に、寸法精度の確保のためには、溶融樹脂がキャビティ内を流れる距離が短くなる方向へ、すなわちリングの中央部に近いほど有利となることから、両因子についてバランスを取る必要がある。
【0025】
今回、本発明をなすに当たって、有端リングの端部を拡径させた場合の応力分布を解析したところ、リング中央部から30°未満の位置では、最大応力(リング中央部)の90%強の応力がかかることから、損傷または欠損等の問題を生じる可能性が高く、反対に、最大応力の80%以下になるのは、中央部からの角度が55°を越えるところであることが判明した。したがって、ゲートの設置位置はリング中央部から左右端部へそれぞれ30°〜90°、望ましくは55°〜70°の位置とするのが有効である。
【0026】
また、上記製造方法に関連して、以下のことに留意する必要がある。
【0027】
すなわち、これまで有端リング形状で成形していた場合には問題にならなかったが、有端リングの端部をタブ等の連結部で連結した無端リング形状で成形する場合には、ゲートより注入した樹脂が二方向に分かれてキャビティ内を流れ、再度合流する所謂ウェルドについて考慮する必要がある。つまり、ウェルド部では溶融樹脂の融着(接合)の問題や結晶性樹脂や繊維等の充填剤が配合されている場合の樹脂や充填剤の配向性に起因するウェルド部の強度低下と云う致命的な問題がある。
【0028】
そこで、本発明の製造方法は、円周上の一部をカットした樹脂製の有端リングを金型により製造する方法であって、前記有端リングの相対向する端部をタブ等の連結部を介して互いに連結した状態で射出成形を行ない、離型および仕上げの後、前記連結部を製品部から切断し、熱固定を経て、最終製品を得るとともに、更に、前記連結部の形状を樹脂のウェルドがこの連結部に発生するように設定することにした。これは以下のようなものである。
【0029】
先ず、端部をタブ等の連結部で連結せしめた無端リング形状において、ウェルドがどこに発生するかは、ゲート位置に大きく依存する。すなわち、無端リング形状においても、リングの中央部にゲートがある場合、キャビティ形状が対称である場合は、ウェルドは連結部内に発生する。そして、ゲート位置を中央部から端部方向へシフトさせていった場合、ウェルド位置は連結部から製品部にシフトしていくようになる。しかしながら、これまで見て来たように、ゲート位置はその強度の問題から、リングの中央部から端部方向へできるだけシフトさせることが望ましいことから、ゲート位置をリング中央からリング端部へシフトさせたまま、ウェルドが連結部内に発生するようでなければ、無端リング形状で成形する意味がなくなってしまう。
【0030】
そして、これについては、タブ等の連結部の容積および連結部へのゲート断面積を調整することにより、ウェルド発生位置をある程度調整することが可能である。すなわち、連結部の容積を大きくし、連結部へのゲート断面積を小さくすることにより、ウェルドを連結部内に収めることが可能となる。但し、連結部の容積を大きくすることは製品の歩留まりを悪くすることから、必要以上に大きくすることは望ましくない。また、連結部へのゲート断面積を小さくし過ぎると成形機への負担が大きくなり、これも望ましくない。
【0031】
そこで、(1)リング中央部からのゲート位置のシフト角、(2)連結部の容積、(3)連結部へのゲート断面積とウェルド発生位置との関係を検討したところ、図7のグラフ図に示すような相関関係があることが判明した。したがって、この結果からウェルドが連結部内に収まるような、(1)リング中央部からのゲート位置のシフト角、(2)連結部の容積、(3)連結部へのゲート断面積の組み合わせの中から、歩留まり、ゲート位置の強度とのバランスを考慮し、最適なゲート位置、連結部形状を設定することにより問題を解決することが可能となり、すなわち、有端リングの端部をタブ等の連結部で連結した無端リングによる成形において、ウェルドの位置を製品部とは関係ない連結部内に収めることができ、ウェルド部の致命的な強度低下を回避することが可能となる。
【0032】
この製造方法は、上記連結部(連結タブ)の形状に関して、ゲートより注入した樹脂が二方向に分かれてキャビティ内を流れ、再度合流するウェルドが製品部に発生せずに、端部を連結している連結部内に発生するよう、形状を考慮された連結部を有するものである。この観点からして、連結部はこれを例えば円板形に成形し、更に、直径7mm、高さ4mmほどの大きさの円板形に成形するのが好適であり、また連結部用ゲート部はこれを例えば、0.5×0.5mm角の断面形状に形成するのが好適である。
【0033】
【発明の実施の形態】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0034】
当該実施例に係る製造方法によって円周上の一部をカットした樹脂製の有端シールリングを金型を用いて製造する場合には、先ず、図1(A)および(B)に示すように、有端シールリング1の相対向する端部2,2をタブ等の連結部3を介して互いに連結した無端状態で当該シールリング1を射出成形する射出成形工程を行ない、次いで離型工程を行ない、次いで仕上げ工程を行ない、次いで連結部3を製品部であるシールリング1から切断する切断工程を行ない、更に熱固定工程を行なって、最終製品を得る。また、上記切断工程に際して、ゲート用タブ4もこれを、製品部であるシールリング1から切断する。図1では、上記連結部3が円板形のタブ(連結タブとも称する)3Aによって形成されており、シールリング1の相対向する端部2,2がそれぞれ小径の切断箇所特定部(タブ−リング先端連結部とも称する)5および連結部用ゲート部(タブ用ゲート部またはタブゲート部とも称する)6を介してこの円板形のタブ3Aに一体的に連結されている。したがって、上記切断工程に際しては、切断箇所特定部5をそれぞれ切断する。円板形のタブ3Aは、直径7mm、高さ4mm、容積(体積)約154mm3ほどの大きさに成形されており、また連結部用ゲート部6は、一辺の長さを0.5mmとする正方形の断面形状(0.5×0.5mm角、断面積0.25mm2)に成形されている。
【0035】
また、上記有端シールリング1を金型により製造する場合には、図2に示すように、金型21内に溶融樹脂を注入するゲート25を、シールリング1を成形する製品キャビティ26の周長ないし全長における中央部cの両側±30°〜90°、望ましくは±55°〜70°の位置(シフト角30°〜90°、望ましくは55°〜70°)に設けた金型21を使用して当該シールリング1を射出成形する。図2では、ゲート25が中央部cに対してシフト角左60°の位置に設けられている。また図3に示すように、上型22および下型23の組み合わせよりなるこの金型21のパーティング部24には、上記製品キャビティ26に連続して連結部成形部27が、切断箇所特定部成形部28、連結部用ゲート(タブ用ゲートまたはタブゲートとも称する)29、スプル30およびランナ31等と共に設けられている。連結部成形部27は、上記連結タブ3Aが対応するよう円板状に形成されており、直径7mm、高さ4mm、容積(体積)約154mm3ほどの大きさの円板状に形成されている。また連結部用ゲート29は、上記連結部用ゲート部6が対応するよう、一辺の長さを0.5mmとする正方形の断面形状(0.5×0.5mm角、断面積0.25mm2)に形成されている。
【0036】
つぎに当該製造方法に適用される材料および射出成形条件の一例を示すと、以下のとおりである。
【0037】
すなわち、PEEK(VICTREX社製 PEEK150)に対して粒状ガラスフィラー5〜40重量%をミキサーによって乾式混合し、更に押出機によって溶融押し出しして造粒し、これを射出成形機によって射出圧70〜120MPa、シリンダー温度320〜420度、金型温度150〜240度の条件で射出成形し、その後、180〜280度の熱処理を施す。
【0038】
このとき、射出圧力が低過ぎると、十分な機械的強度を有する成形体を得にくく、ボイドまたはヒケの発生原因となる。また射出圧力が高過ぎると、射出成形機や成形体に負担がかかり過ぎ、ソリや離型不良の原因となり易い。また、シリンダー温度が低過ぎると、熱可塑性樹脂が十分に溶融せず、ショートショットの原因になり、シリンダー温度が高過ぎると、材料が熱分解したり、ヤケの原因になり易い。更に、金型温度が低過ぎると、ショートショットの原因になり、金型温度が高過ぎると、冷却時の急冷によるヒケや離型不良の原因となり易い。
【0039】
金型21のキャビティ26内にゲート25から溶融樹脂を注入し、成形品が取り出すのに十分冷却された後、金型21から成形品を取り出す。このとき、シールリング1の端部2がカットされている状態では、シールリング1全体に離型のための力がかからないと成形品が変形してしまうことが考えられるが、シールリング1の端部2がタブ3A等の連結部3により連結されている場合には、比較的変形が起こりにくい。
【0040】
一般に離型後は、ゲート用タブ4等の非製品部のカットが行なわれ、次いで仕上げ処理、熱処理の工程へと流れるが、本製法では、離型後に、非製品部すなわち連結タブ3A等のカットを行なわず、仕上げ処理を先に行なう。シールリング1の端部2が連結した状態では、シールリング1の端部2がカットされた状態に比べて、製品同士が絡み合いにくく、仕上げ処理のバッチ処理投入量を多くすることができるメリットがある。
【0041】
仕上げ処理後、成形品を整列せしめて、ゲート用タブ4等の非製品部のカットを行ない、そのまま、くせ付け(熱固定)処理を行ない、最終的な製品を得る。
【0042】
尚、上記連結部3は、図1(A)および(B)に示したものの他、図4ないし図6に示すようなものであっても良い。図4の連結部3においては、切断箇所特定部5の断面形状および断面積と連結部用ゲート部6の断面形状および断面積とが互いに同じに成形されている。図5の連結部3においては、切断箇所特定部5の断面形状および断面積と、連結部用ゲート部6の断面形状および断面積と、連結部3の断面形状および断面積とが互いに同じに成形されている。また図6の連結部3においては、連結部用ゲート部6の断面形状および断面積と連結部3の断面形状および断面積とが互いに同じに、かつ切断箇所特定部5よりも小さく成形されている。
【0043】
【発明の効果】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0044】
すなわち先ず、上記構成を備えた本発明の有端リングの製造方法においては、有端リングの相対向する端部をタブ等の連結部を介して互いに連結した状態で射出成形を行ない、離型および仕上げの後、連結部を製品部から切断し、更に熱固定を経て、最終製品を得るようにしたために、従来問題となっていた離型時の変形や、仕上げおよび熱固定工程時のハンドリングの悪さなどを解消することができ、生産性を向上させることができる。
【0045】
また、上記構成を備えた本発明の有端リングの製造方法においては、金型内に溶融樹脂を注入するゲートを有端リングを成形する製品キャビティの周長における中央部の両側30°〜90°、望ましくは55°〜70°の位置に設けた金型を用いて有端リングを製造するようにしたために、強度が若干劣る有端リングのゲート部に応力が集中することがなく、リング組込み時にカット部を拡径しても破損しにくい有端リング製品を提供することができる。
【0046】
また、上記構成を備えた本発明の射出成形用金型によれば、上記本発明の有端リングの製造方法を実施するのに適した金型を提供することができる。
【0047】
また、上記構成を備えた本発明の有端リングの製造方法においては、上記効果が得られる他に、ウェルドが製品部ではなく、製品部からカットされる連結部に発生するために、製品部のウェルドが発生するのを防止することができる。したがって、ウェルドによる強度劣化や耐久性劣化を生じることのない高品質の有端リング製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (A)は本発明の実施例に係る製造方法によって製造される有端シールリングの製造中途の状態を示す平面図、(B)は同正面図
【図2】 同製造方法の実施に使用される金型の横断面図
【図3】 (A)は図2におけるA−A線断面図、(B)は図2におけるB−B線断面図
【図4】 (A)は連結部の形状の他の例を示す平面図、(B)は同正面図
【図5】 (A)は連結部の形状の他の例を示す平面図、(B)は同正面図
【図6】 (A)は連結部の形状の他の例を示す平面図、(B)は同正面図
【図7】 ゲート位置、タブ形状、タブゲート断面形状とウェルド発生位置(タブ内発生限界)の関係を示すグラフ図
【図8】 従来例に係る製造方法を示す説明図
【符号の説明】
1 有端シールリング(有端リング)
2 端部
3 連結部
3A タブ
4 ゲート用タブ
5 切断箇所特定部
6 連結部用ゲート部
21 金型
22 上型
23 下型
24 パーティング部
25 ゲート
26 製品キャビティ
27 連結部成形部
28 切断箇所特定部成形部
29 連結部用ゲート
30 スプル
31 ランナ
Claims (6)
- 円周上の一部をカットした樹脂製の有端リング(1)を金型(21)により製造する方法であって、
前記有端リング(1)の相対向する端部(2)をタブ(3A)等の連結部(3)を介して互いに連結した状態で射出成形を行ない、離型および仕上げの後、前記連結部(3)を製品部から切断し、熱固定を経て、最終製品を得ることとし、
溶融樹脂を注入するゲート(25)を前記有端リング(1)を成形する製品キャビティ(26)の周長における中央部(c)の両側±30°〜90°、望ましくは±55°〜70°の位置に設けた金型(21)を用いて前記有端リング(1)を製造し、
更に、前記中央部(c)からのゲート位置のシフト角、前記連結部(3)の容積および前記連結部(3)へのゲート断面積を組み合わせることにより樹脂のウェルドが前記連結部(3)に発生するように設定することを特徴とする有端リングの製造方法。 - 請求項1記載の有端リングの製造方法において、
前記中央部(c)からのゲート位置のシフト角を±30°〜60°、連結部(3)の容積を116〜307mm3、連結部(3)へのゲート断面積を0.81mm2に設定することを特徴とする有端リングの製造方法。 - 請求項1記載の有端リングの製造方法において、
前記中央部(c)からのゲート位置のシフト角を±45°〜90°、連結部(3)の容積を97〜403mm3、連結部(3)へのゲート断面積を0.25mm2に設定することを特徴とする有端リングの製造方法。 - 請求項1記載の有端リングの製造方法の実施に用いる射出成形用金型であって、
パーティング部(24)に製品キャビティ(26)に連続して連結部成形部(27)を設け、
溶融樹脂を注入するゲート(25)を前記製品キャビティ(26)の周長における中央部(c)の両側±30°〜90°、望ましくは±55°〜70°の位置に設け、
更に、前記中央部(c)からのゲート位置のシフト角、連結部(3)の容積および前記連結部(3)へのゲート断面積を組み合わせることにより樹脂のウェルドが前記連結部(3)に発生するように設定することを特徴とする射出成形用金型。 - 請求項4記載の射出整形用金型において、
前記中央部(c)からのゲート位置のシフト角を±30°〜60°、連結部(3)の容積を116〜307mm3、連結部(3)へのゲート断面積を0.81mm2に設定することを特徴とする射出成形用金型。 - 請求項4記載の射出整形用金型において、
前記中央部(c)からのゲート位置のシフト角を±45°〜90°、連結部(3)の容積を97〜403mm3、連結部(3)へのゲート断面積を0.25mm2に設定することを特徴とする射出成形用金型。
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