JP4156351B2 - リライト記録層付き非接触icカードとリライト記録層付き非接触icカードの製造方法 - Google Patents
リライト記録層付き非接触icカードとリライト記録層付き非接触icカードの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カードの片面にリライト記録層を形成した樹脂フィルムを有し、かつICチップとアンテナシートを内包する非接触ICカードに関する。
特に、アンテナシートを含む複数のシートをプレスラミネートして製造するリライト記録層付き非接触ICカードにおいて、カードの厚み方向の層構成が非対称であっても反りを生じず、外観品質と印字品質が優れたICカードを企図するものである。
従って、本発明の利用分野は、リライト記録層付き非接触ICカードの製造や利用分野に関する。
【0002】
【従来技術】
従来のリライト記録層付き非接触ICカードは、反りの発生を極力回避するため、カードの厚み方向の層構成をアンテナシート(一般に「インレイ」ということもある。)を中心層にして対称になるようにしていた。すなわち、リライト記録層と反対側の面にも、リライト記録層を形成したフィルムと同じ材質と厚さのフィルムを設けていた。
また、他の方法として、印刷シートの表面にリライト記録層を直接形成することで、カードの表裏の上記フィルムを無くし、結果的に厚み方向の層構成を対称にしたものもあった。
【0003】
図5、図6は、従来技術によるリライト記録層付き非接触ICカードの層構成を示す図であって、図5は、カードの片面にリライトシート、他面にダミーシートを設けた構成、図6は、表面印刷シートにのみリライト層を直接形成した構成を示している。
図5の場合は、アンテナシート10の表裏に接着シート33,34およびスペーサシート35,36を介して、印刷シート40,50を設け、さらにカードの表裏面にリライトシート42とリライトシートと同じ材質と厚みを有するダミーシート52を設けたもので、アンテナシート10を中心層として表裏対称の層構成としている。
【0004】
図6の場合も、図5と同様なカード基材の層構成とされているが、表裏にリライトシートを設ける代わりに、表面側印刷シート40または表面印刷層41上にリライト層43を直接印刷している。
リライト層43のみの印刷の場合はリライトシートのように、カードの反りに対する影響が小さく、片面のみの記録層にできるが、カード基材の層構成としては対称性が必要とされている。
【0005】
非接触ICカードにリライト記録層を設ける先行技術は、特に検出されないが、昇華性染料の受容層を形成する技術には、特許文献1と特許文献2がある。
特許文献1では、ICユニットを内蔵した非接触型ICカードにおいて、カードの片面の一軸または二軸延伸多孔質フィルムの上に熱転写受容層を積層した積層構造部を有するICカードを提案している。
また、特許文献2では、カードの表面およびまたは裏面の基材が一軸または二軸延伸多孔質ポリエステルフィルムであり、この基材上に塩化ビニル系樹脂フィルムを積層して受容層とすることを提案している。
なお、微細な空洞を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂シートに関しては、特許文献3等がある。
【0006】
【特許文献1】
特開2000−298716号公報
【特許文献2】
特開2000−298717号公報
【特許文献3】
特開2001−342273号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述の従来技術のように、両面にリライトシートを設ける場合は、リライト記録層として機能しない無用のダミーシートが反対面に必要であり、コストアップとなっていた。コストを下げるため、反対面のフィルムのみ安価な材料を用いるカードもあるが、材質が異なると反りを解消することができず、外観品質やリライト印字適性を著しく阻害していた。
印刷シートの表面にリライト層を直接形成するカードでは、印刷シートに絵柄を印刷した後にリライト層を形成するため、歩留りが低下し、やはりコスト高の原因になっていた。
【0008】
先行特許文献の技術は昇華転写用受容層に関し、リライト記録層にはそのまま適用はできない。当該積層構造では、カードの反りを生じて外観品質が低下すると共に、リライト印字品質を良好にするのは困難と考えられる。
そこで、本願発明者は、リライト記録層付き非接触ICカードにおいて、アンテナシートに対して、非対称の層構成であっても平滑性が良く、優れた印字品質の得られる非接触ICカードを開発すべく研究して本発明の完成に至ったものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明の要旨の第1は、ICチップを装着したアンテナシートの両面を、ホットメルト系接着シートと両面にPET−G樹脂からなるスペーサ・スキン層を有し、スペーサ・コア層が微細な空洞を有する二軸延伸PET樹脂であるスペーサシートを介して表裏の印刷シート間に挟持し、熱圧プレスして一体の基体にするリライト記録層付き非接触ICカードにおいて、前記スペーサシートにICチップの厚みを吸収する貫通孔を形成するとともに、表裏の印刷シートに二軸延伸PET樹脂製シートを延伸方向を同一方向にして使用し、さらにカードのいずれかの片面には、リライトシートを重ねてプレスラミネートしたことを特徴とするリライト記録層付き非接触ICカード、にある。
【0010】
上記課題を解決する本発明の要旨の第2は、ICチップを装着したアンテナシートの両面を、ホットメルト系接着シートと両面にPET−G樹脂からなるスペーサ・スキン層を有し、スペーサ・コア層が微細な空洞を有する二軸延伸PET樹脂であるスペーサシートを介して表裏の印刷シート間に挟持し、熱圧プレスして一体の基体にするリライト記録層付き非接触ICカードの製造方法において、表裏の印刷シートに、同一巻き取りから採取した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂製シートを延伸方向を同一方向にして使用するため、当該ICカードの表面側には同一巻き取りの外側の面に、裏面側には当該同一巻き取りの他の面(巻き取りの内側の面)に、交互に多面付けで印刷したものを順次表裏に組み合わせて使用し、さらにカードのいずれかの片面には、リライトシートを重ねてプレスラミネートする、ことを特徴とするリライト記録層付き非接触ICカードの製造方法、にある。
【0011】
【発明の実施の形態】
非接触ICカードには各種の形態があるが、JISおよびISOで規定するカード厚みとし、平滑なカード表面とするためには、ICチップを装着したアンテナシートを、表裏のカード基材で挟持した形態とするのが一般的である。
アンテナは捲線を使用しないで、金属薄膜をエッチング形成するものでも、前記のようにシート表面から20μm〜40μmの突起部を形成する。
アンテナの両端部に装着するICチップはさらに、150μm〜300μm程度もの厚み(突起)を有するので、アンテナシートは不可避的な突起または凹凸を有し、そのまま通常の表裏基材に挟んでプレスラミネートしたのでは、十分に平滑性の優れたICカードは得られない。
【0012】
本発明は、非接触ICカードのいずれかの片面にリライト記録層を設け、なおかつ反りが無く十分に平滑なカードを目的とするものである。
なお、反りには、プレスラミネート工程後に既に生じている「初期カール」と、カードにリライト印字を行なった際に生じる「使用時の変形」とがあるが、いずれの反りも外観品質を低下させ、印字品質を損ねるので排除されなければならないものである。
【0013】
従来方法に起因する前記問題を解決すべく、本発明のリライト記録層付き非接触ICカードは、以下の層構成とするものである。以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明のカードの層構成を示す分解断面図、図2は、本発明で使用するアンテナシートの平面図、図3は、図1の層構成をプレスラミネートした後の状態を示す表面側平面図、図4は、図3のA−A線断面図、である。
【0014】
アンテナシート10は、図2のようにポリエチレンテレフタレート(PET)等のシートに平面状のコイルアンテナ11を有し、コイルアンテナ11の両端部111,112にはICチップ12が装着されている。
コイルアンテナ11は省略して図示しているが、カード基体の周囲(斜線のハッチングを施した部分)を数回周回するように形成される。当該コイルアンテナ11は、シートにラミネートしたアルミ箔等にレジストを形成し、周知のフォトエッチング技術でコイル形状のみを残したものである。
なお、ICチップに限らず、樹脂封止したICモジュールでも良いが、以下、統一してICチップと表現することにする。
【0015】
カード基体を積層する場合は、図1のように、このアンテナシート10と表裏の印刷シート20,30の間に、接着シート13,14とスペーサシート15,16が、それぞれ挿入される。表裏の印刷シートには、空洞を有しない通常の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製シートを、その延伸方向が完全に同一方向になるようにして使用する。
スペーサシート15,16のうち、アンテナシートの少なくとも突起のある側に面するスペーサシートには、微細な空洞を有する二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂製のシートを使用する。微細な空洞により、熱圧プレスした際にアンテナシート10の凹凸を吸収するためである。
アンテナシート10の両面に微細な空洞を有する二軸延伸のPET樹脂製シートを使用することも勿論構わない。図1の場合は、双方のスペーサシートに微細空洞を有する二軸延伸PET樹脂製シートを使用した例が図示されている。
【0016】
スペーサシート15,16の微細な空洞は、体積比率で20〜30%の空洞を有することが好ましい。これにより、熱圧プレスした際にシート厚みの10〜15%が圧縮荷重によって収縮可能となる。ただし、横方向に対しては二軸延伸している影響もあり変位が殆ど生じない特徴がある。加熱によって横方向に流動する接着シートとは対照的である。
【0017】
微細な空洞を有する二軸延伸PET樹脂製シートからなるスペーサシート15,16は、空洞を有するスペーサ・コア層15c,16cとその両側のスペーサ・スキン層15s,16sとからなっている。
スペーサ・スキン層15s,16s自体は、層間の熱融着性を考慮して非結晶性ポリエステル系樹脂(PET−G樹脂)を使用している。PET−G樹脂は、一般的には芳香族ジカルボン酸とジオールとの脱水縮合体であって、共重合ポリエステルの中でも特に結晶性が低く、実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル樹脂からなるものをいう。
【0018】
接着シート13,14を使用するのは、アンテナシートであるPETフィルムが熱融着性を有しないからであり、アンテナシート10とスペーサシート15,16間を強固に接着する役割をする。これにはホットメルト系の接着シートを好適に使用できる。
本発明のカード層構成の場合、接着シートの溶融粘度は190°Cで2500Poise以下であることが必要となる。プレスラミネート時の熱によって横方向に流動し、荷重によって厚み方向に圧縮されるスペーサシートと相まって、アンテナシートの凹凸を完全に吸収する効果を発揮するためである。
【0019】
スペーサシート15,16のICチップ12が当接または位置する部分には、貫通孔151,161が形成されていて、ICチップの厚みを吸収できるようにされているが、接着シート13,14には貫通孔を設けない。貫通孔とICチップの間の隙間を無くし凹みの発生を防ぐと共に、ICチップ12の突起部の接着を強固にするためである。
【0020】
表裏の印刷シート20,30には、前記のように二軸延伸した白色PETシートを使用する。一般に、表面側印刷シート20には装飾的な表面印刷層21がプレス前に印刷されることが多く、裏面側印刷シート30には文字等の裏面印刷層31がプレス後に印刷されることが多いが、それに限定されるものではない。
また、熱伝導率が、0.12W/m・K以上であるものが好ましい。熱伝導率が低い場合は蓄熱しやすく冷めにくいため、リライトの印字濃度が低下して文字がかすれたりするからである。特に、ロイコ系のリライト材料は徐冷すると印字が消えてしまうので、早く冷める熱伝導率が高いカード基材が好ましくなる。
【0021】
一般的な二軸延伸PETの熱伝導率は、0.12〜0.15W/m・Kとなる。例えば、空洞含有PETは、0.10W/m・K以下であるが、0.10W/m・K以下の材料を印刷シートに使用すると、リライト印字が薄くなる傾向が顕著になり、リーダライタの条件調整が困難となる。
【0022】
交通機関用途等の場合には、表面印刷シート20面の一部または全面に感熱記録が可能なリライトシート22が貼着される。リライトシートは透明であって表面印刷層21の視認を妨げることはない。
リライトシートは、完成後はリライト記録層になり、サーマルヘッドにより、乗車区間や有効期間を明瞭に印字し、かつ使用済み後は消去して反復して利用することができる。その他、図示してないが昇華転写記録用の受像層を設けることや文字エンボスすることも自由である。
【0023】
先に、表裏の印刷シートには、空洞を有しない通常の二軸延伸PET樹脂製シートを、その延伸方向が完全に同一方向になるようにして使用する必要があることを述べたが、延伸方向を完全に同一方向にする意味について説明する。
延伸したPETシートの耐熱性(反りを生じない温度)は、一般には75°C〜85°Cと言われている。90°Cを超える熱を受けると成形歪み(内部応力)が緩和されて、寸法変化が生じる。カード基体の熱圧プレス条件は、当然にこの温度を超えるので、1枚のカード基体に複数枚の延伸PETを用いて製造する本発明のカードのような場合は、それぞれのシートの縦・横方向の伸縮量が異なるとカード基材が反ってしまうことになる。
そのため、使用するシートの配向(延伸方向)を揃える必要が生じる。
【0024】
図7は、PETシートの製造(延伸)工程を示す図、図8は、カードの印刷工程と積層工程の例を示す図である。
図7(A)のように、Tダイ4で押し出した後、インラインまたはオフラインで、縦(流れ)方向および横方向に張力をかけて延伸し、最後に熱をかけて固定する。当初シート2の幅は、2〜5mの広幅であるが、得意先の仕様や目的に応じて、スリットした狭幅シートS1,S2,S3,S4,S5として巻き取られ、あるいは断截して枚葉シートとして出荷される(図7(B))。
延伸後のシートは、当初はシートの流れに直交する平行な部分が、マシン方向(MD)に進むにつれて、図7中に示すような波形状の配向方向5もって延伸されることになる。従って、各狭幅シートS1〜S5は、それぞれ異なる成形歪みを持っていて、それらが、無選択で表裏の印刷シートに使用される場合は、表裏の寸法変化が異なるため、各種の反り状態を呈することになる。
【0025】
そこで、本発明のリライト記録層付き非接触ICカードの製造方法では、表裏印刷シートの二軸延伸方向を完全に同一方向になるように、例えば、図8(A)のように、巻き取りシートS4に対して、S41とS43部分にはカード表面の絵柄、S42とS44部分にはカード裏面の絵柄のように、表裏面の絵柄部分を交互に印刷して、S41とS42、S43とS44のように断裁線6から切断して表裏の印刷シートを、図8(B)のように積層して使用することにする。
この時は、もちろん縦と横方向が交差したり、同じ縦方向であっても流れ方向の頭部分と尻部分を重ねるようなことはしない。また、印刷面は表裏共にカードの外面側になることになる。もっとも、印刷面を表裏共に内面側にする場合にも、この条件は保たれることになるのは、当業者には自明のことである。
すなわち、本発明で完全に同一方向とは、印刷シート20,30の前後左右方向の全てを一致させ、表裏印刷シートはカードの中心層に対して対称的に配置し、さらにシートの当初シート2からの採取位置(側辺からの一定位置)をも一致させることを意味することになる。
【0026】
二軸延伸シートを断截して使用する場合は、例えば、図8(B)のように、上記したS41とS42の部分を断截して、S41シートを表面側、S42シートを裏面側シートとして組み合わせて使用する。
各シートには多面付けで印刷するので、1枚のシートの組から20〜30枚のカードが得られることになる。このようにして反りの無いカードが得られる。
枚葉シートの場合は、印刷前にコーナー(角)部を特定の形状3に切断して目印を付けておくと表裏の組合せのセットを容易に区別することができる。
【0027】
図1の層構成をプレスラミネートした後は、図3、図4のような非接触ICカード1になる。図3は、表面側平面図であって、印刷絵柄21Pと共に、リライト記録層に印字したリライト印字22Pが視認できる。
図4は、図3のA−A線断面図である。ICチップ12が接着シート14により印刷シート30に、接着シート13により印刷シート20に、それぞれ強固に接着している。また、ICチップ12が、カード基体のほぼ中央に位置することになるので、ICチップの影響で外観を著しく損なうようなことはない。
図4において、アンテナシート10が屈曲しているのは、ICチップ部分のみであって、コイルアンテナ11自体は平面部分にあるので、通信特性に影響することもない。貫通孔151,161は接着シート13,14の溶融やスペーサシート15,16の変形によりほぼ埋まった状態になっている。
【0028】
スペーサシート15,16に使用するシートは、上記のように体積比率で20〜30%の微細な空洞を有する二軸延伸PET樹脂シートを使用する特徴がある。空洞は通常、微粒子を中心に持ち、シート面に平行な微細な円板形状を有している。このようなシートは、強圧を受けた部分の空洞が強く圧縮されるため、結果的に突起や凹凸形状を吸収することができる。
空洞含有率を30%以下とするのは、30%を超えると強度が不足しカード基材として不十分となるからである。また、20%以上とするのは20%未満では空洞の含有量が少なく凹凸や突起形状を十分に吸収できないからである。
このものは通常のPETシートよりも約20%軽く、密度は1.1g/cm3 程度である。
【0029】
このような空洞の生成は、前記特許文献3にも記載するように、シートの成形工程において、ポリエステル中に無機微粒子を混合して延伸することにより粒子周辺に空洞を形成したり、ポリエステル樹脂と非相溶性の熱可塑性樹脂微小球等をポリエステル中に混合、分散させて、空洞形成の核として利用し、同様に延伸する方法が知られている。
後者の空洞形成剤としては、ポリプロピレン樹脂やポリメチルペンテン樹脂に代表されるポリオレフィン樹脂やポリスチレン系樹脂等が挙げられる。
【0030】
【実施例】
乗り物の改札用途に用いられるリライト記録層付き非接触ICカードを製造した。図1、図2を参照して本発明の実施例を説明する。
(実施例)
<アンテナシートの準備>
厚み40μmのPETフィルムに、厚み20μmのアルミ箔を接着剤を介して貼り合わせ、このアルミ箔をエッチングすることで、コイルアンテナ11を形成した。さらに、厚み300μmのICチップ12をコイルの両端と電気的に接続して実装し、カード内に内包するアンテナシート10を完成した。
なお、ICチップ12は、厚み175μmのICチップに、補強板100μm、異方導電性シート50μmを重ねて付加し、プレスラミの圧力を受けた後の総厚が300μmとなったものである。
【0031】
<カード基体の製造>
カード基体の層構成は、アンテナシート10の表裏に、厚さ50μmの接着シート13,14と、その外側に体積比率で20〜30%の微細な空洞を有する二軸延伸PET樹脂シートからなるスペーサシート15,16を使用した。
スペーサシート15,16は、それぞれ厚み100μmからなるスペーサ・コア層と、その両面にPET−G樹脂からなる厚み40μmのスペーサ・スキン層を有する総厚180μmからなるものである。
スペーサシート15,16のさらにその外側には、厚み125μmの二軸延伸したPET製印刷シート(東レ株式会社製造「ルミラー」)20,30を延伸方向が完全に同一となるように、かつ表裏が対称になるように配置した。リライト印字適性を確保するために、印刷シートには熱伝導率が、0.14W/m・Kであるものを使用した。
カード表側のスペーサシートと裏側のスペーサシート、および表側の印刷シートと裏側の印刷シートは、各々の延伸方向が完全に一致するように重ねた。
【0032】
接着シート13,14には、アンテナシートのPETフィルムとスペーサシート15,16との接着適性を考慮して、ポリエステル系ホットメルト接着剤(溶融粘度2000Poise:190°C)を採用した。
スペーサシート15,16には、アンテナシート上に実装したICチップが貫通するように、予めICチップ12と同じ大きさ(約5mm×5mm)の貫通孔151,161を打ち抜いて設けたが、接着シート13,14には貫通孔を設けなかった。
【0033】
スペーサシート15,16の外側に設ける印刷シート20,30には、二軸延伸したPETシートを使用した。このシートは空洞を含有していず、プレスラミネートの圧力を受けても圧縮しない。
カード表側の印刷シート20には、あらかじめ、インレイの配置に合わせた絵柄を印刷した。印刷はシルクスクリーン印刷した上にオフセット印刷を刷り重ねる方法で行なった。
【0034】
上記、7層に加えて、カードの最表面側にのみ、厚み50μmのリライトシート22を設けて、カードの有効期限などを表示できるようにした。
リライトシート22は二軸延伸したPET樹脂フィルム(厚み25μm)上に、ロイコ染料からなるリライト記録層と、その保護層を形成したものである。PET樹脂フィルムのカード面側には接着剤層を有するものである。
これにより、都合8層の層構成となり、コイルアンテナ11とICチップの厚みを含めない使用材料の総厚は800μmである。
【0035】
アンテナシート10と接着シート、スペーサシートの位置合わせは、アンテナシートと各接着シート、スペーサシートに設けた抜き穴をピンに嵌めることにより行った。
この8層からなる積層体をプレス機の熱板上に載置して、プレスラミネートした。プレス工程の条件は、熱板温度120°C、圧力2.0MPa、成形(加熱)時間20min.に設定して行った。
【0036】
プレスによって一体化したシートから、絵柄に合わせてカード形状に打ち抜いた後、最後に裏側に絵柄印刷31を行った。印刷は表側と同様に、シルクスクリーン印刷の上にオフセット印刷を刷り重ねて行った。
このようにして総厚、0.80mmであって、リライト記録層付き非接触ICカード1が完成した。
出来上がった非接触ICカードは平滑で「初期カール」がなく、外観品質に優れ、リライト印字品質も優れていた。また、「使用時の変形」の反りも生じず、全体の製造工程も特に困難性を伴うものではなかった。
【0037】
【発明の効果】
上述のように、本発明のリライト記録層付き非接触ICカードでは、リライト記録層と反対側の面に、反り矯正用フィルムを設ける必要が無いので、コスト低減を図ることができる。
また、印刷シートに対する印刷工程と、フィルム上へのリライト層形成工程は、それぞれ別ラインで行なうことができるので、生産性が向上し、かつ歩留りを高くして、コスト低減を図ることができる。
さらに、リライト層は印刷層に関係なく形成できるため、絵柄と使用できる印刷インキの選択幅が広がり、密着度の安定性も確保できる。
本発明のリライト記録層付き非接触ICカードの製造方法によれば、カードの厚み方向の層構成が非対称であっても「初期カール」や「使用時の変形」の反りを生じることがない、外観品質とリライト印字品質が優れたリライト記録層付き非接触ICカードを、安価に製造できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のカードの層構成を示す分解断面図である。
【図2】 本発明で使用するアンテナシートの平面図である。
【図3】 図1の層構成をプレスラミネートした後の状態を示す表面側平面図である。
【図4】 図3のA−A線断面図である。
【図5】 従来技術によるリライト記録層付き非接触ICカードであって、カードの片面にリライトシート、他面にダミーシートを設けた構成を示す図である。
【図6】 従来技術によるリライト記録層付き非接触ICカードであって、表面印刷シートにのみリライト層を直接形成した構成を示す図である。
【図7】 PETシートの製造(延伸)工程を示す図ある。
【図8】 カードの印刷工程と積層工程の例を示す図である。
【符号の説明】
1 非接触ICカード
2 当初シート
4 Tダイ
5 配向方向
6 断裁線
10 アンテナシート
11 コイルアンテナ
12 ICチップ
13,14,33,34 接着シート
15,16,35,36 スペーサシート
20,30,40,50 印刷シート
21,41 表面印刷層
22,42 リライトシート
43 リライト層
31,51 裏面印刷層
52 ダミーシート
Claims (5)
- ICチップを装着したアンテナシートの両面を、ホットメルト系接着シートと両面にPET−G樹脂からなるスペーサ・スキン層を有し、スペーサ・コア層が微細な空洞を有する二軸延伸PET樹脂であるスペーサシートを介して表裏の印刷シート間に挟持し、熱圧プレスして一体の基体にするリライト記録層付き非接触ICカードにおいて、前記スペーサシートにICチップの厚みを吸収する貫通孔を形成するとともに、表裏の印刷シートに二軸延伸PET樹脂製シートを延伸方向を同一方向にして使用し、さらにカードのいずれかの片面には、リライトシートを重ねてプレスラミネートしたことを特徴とするリライト記録層付き非接触ICカード。
- 印刷シートの熱伝導率が、0.12〜0.15W/m・Kであることを特徴とする請求項1記載のリライト記録層付き非接触ICカード。
- スペーサ・コア層が、体積比率で20〜30%の微細な空洞を有することを特徴とする請求項1または請求項2記載のリライト記録層付き非接触ICカード。
- スペーサシートの微細な空洞を有する二軸延伸PET樹脂の延伸方向が同一方向にされていることを特徴とする請求項1または請求項3記載のリライト記録層付き非接触ICカード。
- ICチップを装着したアンテナシートの両面を、ホットメルト系接着シートと両面にPET−G樹脂からなるスペーサ・スキン層を有し、スペーサ・コア層が微細な空洞を有する二軸延伸PET樹脂であるスペーサシートを介して表裏の印刷シート間に挟持し、熱圧プレスして一体の基体にするリライト記録層付き非接触ICカードの製造方法において、表裏の印刷シートに、同一巻き取りから採取した二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂製シートを延伸方向を同一方向にして使用するため、当該ICカードの表面側には同一巻き取りの外側の面に、裏面側には当該同一巻き取りの他の面(巻き取りの内側の面)に、交互に多面付けで印刷したものを順次表裏に組み合わせて使用し、さらにカードのいずれかの片面には、リライトシートを重ねてプレスラミネートする、ことを特徴とするリライト記録層付き非接触ICカードの製造方法。
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