近年、マイクロコンピュータ、メモリ等の集積回路をプラスチックカード内に搭載し、外部機器とアンテナを介して信号の送受を行う非接触型ICカードが、定期券、プリペイドカード、さらには個人認証用のIDカード等の、非接触で使用することが好ましい多種多様な用途に使用され、普及率が著しく向上している。
非接触型ICカードの用途が拡大し、普及率が向上するにつれて、耐久性の向上が要求されている。そのひとつに、ICチップの機械的破損対策の改良がある。ICチップは正常に使用されれば、寿命は非常に長いが、厚さが0.1〜0.5mm程度と薄く、機械的な力によって破損し易い。例えば、ICモジュール部分に衝撃的な力が加わったり、カードに曲げ応力が加わったりした場合に破損しやすい。
一方、ICカードの厚さは規格で0.8mm程度に規定されているので、頑強なカードとすることは、なかなか難しい。そのため、ICカードの初期段階からICチップの機械的破損の対策が求められ、実際に種々の対策が提案され、実施されている。例えば、ICモジュール自体やICカードの側に補強用の鋼板やステンレス板を設置する方法、ICモジュールの配置を、カードの中央近くでなく、周辺部に近い位置とし、ICモジュールに曲げ応力がかかりにくくする方法、ICカードに意図的に曲げに弱い部分を形成し、曲げ応力がかかった場合にそこが曲がるようにする方法などがある。以下、現在多用されている非接触型ICカードの基本構造と改良構造の例を示し、次ぎに、ICチップの機械的破損についての上記以外の対策と、表面平滑性向上についてのこれまでの提案について述べる。
図1(a)は現在多くの場合に使用されている非接触型ICカード1の一例の平面図であり、図1(b)は、図1(a)をA−A’で切断した断面図であり、その層構成を示す。この構成は、現在使用されている非接触型ICカードの基本構造と言えるものである。図1(c)は、図1の構造の非接触型ICカードを製造する方法の一例を説明するための説明断面図である。
図1(a)、(b)において、アンテナコイル12とICモジュール13はカード1の内部に埋め込まれた構造である。アンテナコイル12は外部装置との電波による送受信行うためと電力の供給を受けるためのものであり、その両端はICモジュール13のアンテナコイル用端子部14,14’と電気的に接続されている。
プラスチック製のアンテナシート用フィルム11の上にアンテナコイル12が固着している状態ものをアンテナシートと呼ぶ。また、ICチップを組み込んだICモジュール13がアンテナシートに固着され、さらにアンテナコイル12の両端がICモジュール13の端子部14、14’で電気的にICチップと接続されている状態のもの(ICモジュールが搭載されているもの)をインレット10と呼ぶ。
図1(b)に示すように、インレット10は表裏をコアシート2と2’で挟み込まれている。アンテナシート用フィルム11はコアシート2,2’と熱融着しているか、または接着剤によって接着している。アンテナコイル12は、コアシート2に単に埋め込まれている場合と、コアシートに熱融着または接着している場合があり、後者のほうが好ましいが、仕様によって規定されている。また、ICモジュール13はコアシート2に包み込まれている。通常、ICモジュール13とコアシート2の間は熱融着も接着もしていない。
コアシート2,2’の役割は、ICモジュール13やアンテナコイルを埋設して保護すると共に、カードに機械的強度を付与し、曲げ応力等に対してICモジュール13が破損しないように保護するためのものである。さらに、コアシート2と2’はその外側をプラスチック製の外装シート3、3’で挟み込まれている。コアシート2,2’と外装シート3、3’は、熱融着しているか、または接着剤によって接着し、全体が一体になっている。
外装シート3,3’の役割は、第一にカードに表面強度(耐擦過性)を付与すること、第二に曲げ応力に対抗する強度を増加すること、第三に要求されるデザインに応じることができる加工性を具備する表面とすることである。さらに、用途の拡大に従って、ICモジュールへの垂直方向の衝撃を緩和して、ICチップの破損を防ぐことも、役割として要求されるようになっている。
現在の非接触型ICカード製造方法は、熱プレス法とインジェクション法に大別される。本発明は熱プレス法に係わる。熱プレス法には、大別して二つの方法がある。第1の方法は、図1(c)示した順序に各種のシート基材を重ね合わせ、熱プレス装置に入れ、上面と下面から加熱加圧して、シート同士を熱融着させて一体化する方法である。この場合に熱融着では十分な接着強度が得られない場合には、シート基材間に接着剤層を形成して、接着する。
図1(c)に示した状態はカード1枚分についての図であるが、実際は、インレットはカード一枚分ではなく、例えばカードを縦横に10〜数十枚程度配列した大判の状態で作成される。また、対応するコアシート、外装シート等の部材もその大判のサイズに対応したサイズである。
第2の方法は、製造工程を分けて、先ずインレット10を上下のコアシート2,2’で挟み込み、加圧加熱して、インレット10とコアシート2、2’の層間を熱融着したり、接着剤を使用して接着したりして、一体化する。この工程を第一ラミネート工程とよび、一体化した状態のものをセンターコアとよぶこともある。次ぎに、センターコアの上下を外装シート3,3’で挟み込み、再度加熱加圧して、層間を熱溶融させて一体化する方法である。このように2工程に分けることの利点は、第一にコアシート基材と外装シート基材の軟化温度が異なる場合に基材の軟化温度に合わせたラミネート温度とすることが可能であり、第二に第一ラミネート工程で比較的平滑な板状に予め成形することにより、外装シートに絵柄が印刷してある場合に絵柄の歪みを抑えることが可能だからである。現在では、どちらかと言えば、後者の工程によって非接触型ICカードを製造する場合が多い。
なおこの場合も、熱融着では十分な接着強度が得られない場合には、接着剤を使用してシート間を接着することがある。このようにシート基材を重ね合わせて、シート間を融着したり、接着したりして一体化することを、一般的にラミネートするということが多い。本発明においても、ラミネートをこの意味で使用する。
さらに、コアシート2と2’の外側をプラスチック製の外装シート3、3’で挟み込み、熱プレス法で熱融着するか、または接着剤によって接着し、全体がカードとして一体になるようにする。
いずれの熱プレス法においても、使用する熱プレス板は表面が平滑でかつ非弾性のものを使用する。さらに、外装シートの熱プレス時には、表面を鏡面にするために、たとえば研磨したステンレス板、磨きクロムメッキした鋼板などを、ヒータを内蔵したアルミニウムや鉄製のプレス定盤に貼り付けたものを使用する。接着剤を使用する場合も、同様である。
なお図示しないが、通常、コアシートへの印刷は、第1ラミネート工程の前に予め行う。また外装シート上への印刷も第2ラミネート工程の前に行なう。
一体化した後に、外装シート上の印刷層を保護するために、また外装シートの耐久性、例えば耐擦過性を向上するために、保護層を印刷または転写によって形成する。昇華熱転写記録層や溶融熱転写記録層を形成することもある。次ぎに、抜き型等を使用して1枚のカードサイズにした後に、仕様に応じて、ホログラム層を転写法で形成したり、会員番号や氏名をエンボスしたり、ICチップに所定の情報を書き込んだりして、完成カードとする。
非接触型ICカードは、JIS等でカード厚さが0.76±0.08mmと定められている。カード厚さの規定はカードリーダーへの挿入安定、磁気ヘッド圧安定を目的として、定められている。また、表面平滑性は磁気出力読み取り安定、印字品質安定等を目的として定められているが、規定以上に平滑であることが好ましい。得意先から、外見の平坦性を向上するように求められることがある。さらに、折り曲げ耐久性が磁気ストライプ読み取り機能維持を目的として要求されている(JISX 6301)。また、部分的な加圧、特にICモジュールにかかる部分的な外力、に対する耐久性がJISX 6303に定められている。さらに耐擦過性についての規定が使用者間により別途定めることと定められている。
図1の構造の非接触ICカードの問題点は第1に、生産性が低いことであった。その理由は、アンテナシート上には、ICモジュールやアンテナコイルが設置されていて、凹凸があるのに、カードの表面は平滑であることが要求されているので、コアシートを加熱溶融し、アンテナシートの凸部上のコアシートをアンテナシートの凹部に流動させるには、時間がかかるからである。
また、非接触型ICカードのコアシート基材には、一般的にポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ポリカーボネート(PC)、テレフタル酸とグリコールと1,4シクロヘキサンジメタノールの共重合体(例えば、PETG:イーストマンケミカル社製)、PETG−PC(PETGとPCの共重合体),ポリプロピレン(PP)等の樹脂が用いられており、加熱により基材を流動させるためには基材を高温で熱成形する必要があり、基材の劣化等の物性的な問題があった。
その対策として、コアシートの材料として、比較的低温で流動しやすいホットメルト系の材料を使用して、短時間で表面を平滑にする方法が開示されている。(特許文献1参照)。しかし、ホットメルト系の材料は流動しやすい反面、厚さを制御することが難しく、全体的な厚さムラを少なくすることが難しい、という問題があった。さらに、ホットメルト系の材料は、室温に戻った時に弾性が不足してICモジュール部へ衝撃的な加重がかかった場合に、ICモジュールが破損するという問題があった。
この生産性の低さを解消するための別の方法として、図2(a)の層構成図に示すよう
に、コアシート2に開口部21を設け、ICモジュール13がその開口部21へ格納されるようにする方法が使用されている。この場合、コアシート2に開口部21を設けるだけでICモジュール13を格納することができない場合には、図2(b)の層構成図に示すように、コアシート2’にも開口部21’を設ける。
この構造にすることによって、熱プレス時間を大幅に短縮することができるようになったので、現在多用されている。しかしまだ問題点がある。すなわち、アンテナコイル部分の凹凸を平滑にするために、溶融したコアシートを流動させる時間が必要である。
さらには、アンテナシート用基材フィルムとして、PEN、PET、ポリイミド等の接着性が劣る樹脂を使用した場合、アンテナコイルやICモジュール配置した部分以外の部分に開口部を設けコアシート同士が熱融着するようにする場合があるが、その場合にはアンテナシート基材がある部分とない部分においても凹凸が発生する。アンテナシート用基材フィルムの開口部の面積が広い場合には、コアシートを熱溶融して流動させ平坦化するために長時間を要し、生産性が低い。
さらに問題点として、ICモジュールが固定されていないので、機械的衝撃によって、アンテナコイルとICモジュールの接合部がはずれてしまうことがあり、また先の細いもので、ICモジュールが格納されている部分の上部から突くと、外装シート2が破れたり、ICモジュールが破損したりすることがあり、さらに、モジュールが格納されている部分が若干凹んでいること、いわゆるヒケが、目視でわかる場合が多いことなどがある。
これらの問題点を解決するために、開口部21、21’とICモジュールの間に接着剤等を充填する方法が採用されることがある。しかし、工程が増える上に、ヒケが発生しないようにするには充填量を精密に調節する必要がある。充填量が多すぎると、ヒケでなく凸部が発生してしまう。
ヒケやICモジュールの破損が発生しない構造として、図3(a)に示す層構成の、ICモジュール等を、発泡セルを有するコアシート4、4’で包埋してなる非接触型ICカードが開示されている。この層構成にすることによって、表面の平滑性と、曲げやねじりに対する耐久性も向上すると記載されている。(特許文献2、特許文献3参照)。
しかし、図3(a)の発泡セルを有するコアシートでICモジュール等を包埋したカードは、従来のポリ塩化ビニル等の剛性のあるコアシートを使用したカードと比較して、曲げやねじりの応力に反発する力が弱い。また、一部に強い力が加わった場合に、カードとしての硬さを確保することが難しく、例えばカードが引っかかれた場合には、その部分は潰れたままになり、その痕跡がいつまでも残ることがあり、さらに、ICモジュールの上に局部的に強い力が加わった場合に、ICモジュールが破損しやすいという問題があった。
対策として、発泡倍率が低い発泡シートを使用すると、表面強度は高く、多少の引っ掻きや局部的加圧では引っ掻き跡もつき難くなる。しかし、ICモジュールが設置されている部分を平滑にするためには、発泡倍率が高いシートを使用する必要がある。すると、表面強度(耐擦過性)が不足してしまうというジレンマがあった。
発泡シートを使用する方法の改良案として、図3(b)の断面説明図に示すように、発泡シートをコアシート4、4’として使用し、さらに外装シート3,3’に従来使用されているものを用いる方法が開示されている。(特許文献4参照。)
図3(b)に示した構造にすることによって、カードの耐擦過性が向上し、局部的に強
い力が加わっても、ICモジュールが破壊し難くなり、さらに曲げ応力やねじり応力に対しても図2(a)の構造と比較して耐性が向上した。
しかし、図3(b)の構造の場合、ICモジュールの部分を包埋して表面に凹凸が発生せず、平坦にするためにはICカードの厚さの規格が約0.8mmであり、一方ICモジュールの厚さが0.4mm程度なので、発泡倍率が高い発泡シートを使用する必要があった。
非接触型ICカードではなく、ICラベルについてであるが、荷物等の比較的硬い被着物に貼り付けされた状態で外から加わる衝撃力に対して、耐衝撃性を有するようにする方法が開示されている。(特許文献5参照。)その方法は、荷物等に貼り付けられる側のICチップの面を覆うように補強部材を設けると共に、表側の全面にクッション性を有する発泡性基材(シート)を配置し、さらにその上に表面基材(外装シート)を配置して貼り合わせた構造とする方法である。
非接触型ICカードにおいても、上記のICラベルと同様な衝撃力が印加されることがあり得る。例えば、非接触型ICカードが机の上に置いてあって、その上にたとえばコップ等を落としてしまう場合である。従って、上記のICラベルと同様な耐衝撃性を有することが好ましい。
以下本発明を実施するための最良の形態につき説明する。まず、本発明の非接触型ICカードの製造方法の一例について、図6、図7に示した断面説明図に基づいて以下に述べる。
図6(a)は、センターコアを形成するための第1工程において、プレス前の状態を示している。インレット10として、アンテナシート用基材フィルム11の上に、アンテナコイル12が形成し、非接触型ICカード用ICモジュール13が搭載し、アンテナコイ
ルがない部分に開口部15を形成したものを用いている。このインレット10の表側面(ICモジュールを搭載した側)に非多孔質コアシート2、裏側面に非多孔質コアシート2’を置く。なお、非多孔質コアシート2と2’には、ICモジュールを格納するための開口部21と21’を形成してある。さらに、その上下にプレス板31、31’を配置する。このプレス板にはそれぞれゴム弾性表面材の層32、32’が形成してある。この順序に重ねた状態で、熱プレス装置のプレス定盤(図示せず)の間に置き、所定時間、加圧加熱する。
図6(b)は、熱プレスした後の、圧力がかかったままの状態を示している。非多孔質コアシート2は開口部15において、コアシート2’と熱融着している。また、アンテナコイル12、アンテナシート11に対しても熱融着している。非多孔質コアシートとアンテナシートの各部分において、隙間なく融着している。非多孔質コアシート2の表面は、アンテナシートの表面の凹凸を反映した凹凸状態になっている。また、プレス板のゴム弾性層32の表面も非多孔質コアシートの凹凸に対応した凹凸状態になっている。
ICモジュール13とその下面のアンテナシート用フィルム11は、プレス板のゴム弾性面32と32’に加圧された状態で挟み込まれていて、ゴム弾性層も圧力に応じて凹んでいる。非多孔質コアシート2’の表面は開口部21’を除いて、平坦であり、プレス板のゴム弾性層32’は圧力に応じて凹んでいる。このようにしてセンターコア40を形成し、冷却後に取り出す。ゴム弾性層は離型性のよいシリコーンゴム製としておくことで、融着なしにセンターコア40を取り出すことができる。
図6(c)は、第2工程において、プレスする前の部材を重ねる状態を示している。第1工程で作成したセンターコア40の上下に多孔質コアシート4、4’を置き、その外側に非多孔質外装シート3、3’を置く。さらにその外側に表面が平滑に研磨されたプレス板33、33’を置く。この状態に重ねたものを、熱融着する場合には熱プレス装置のプレス定盤(図示せず)の間に置く。また、接着剤を使用してセンターコアと多孔質コアシートの間、多孔質コアシートと非多孔質外装シートの間を接着する場合には加熱装置なしのプレス装置のプレス定盤に置く。もちろんこの場合には、センターコアと多孔質コアシートの間、多孔質コアシートと非多孔質外装シートの間に接着剤を入れる。プレス装置には、プレス時のプレス定盤の間隔を規定値に保持することができるものを使用する。
図7(d)は、プレスした後の加圧したままの状態を示している。多孔質コアシート2はセンターコアとの境界で、センターコアの凹凸に対応して、凹んでいる。ICモジュール13は多孔質コアシート2によって固定されている。また、多孔質コアシート2’もICモジュールの底面にあるアンテナシートの基材フィルム11に密着していて、ICモジュールを固定している。非多孔質外装シート3、3’の表面はプレス板の表面と同じく、平滑である。なお、外装シートの表面を光沢あるものにするには、プレス時に外装シートがプレス圧で流動するように加熱する。
図7(e)はプレス装置から取り出した状態を示している。非接触型ICカード1の厚さは、第2工程でプレスした際に、多孔質コアシートが潰れるので、プレス板の間隔になっている。この後、表面に保護層形成、感熱記録層形成、ホログラム層形成、エンボス加工、ICチップへのデータ書き込み等を行って、非接触型ICカードの製品とする。
本発明に使用することができる多孔質コアシート3、3’としては、ある程度以上の圧力で加圧されたとき圧縮され、その後圧力を解除しても、圧縮されたままの形状を維持する非弾性のもの、すなわち塑性変形性のもの、であればよい。
塑性変形性多孔質コアシートとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポ
リオレフィンを主成分とした発泡シートや多孔シート、発泡ポリ塩化ビニルシート、発泡軟質アクリル系樹脂シート、発泡後塩素化ポリ塩化ビニルシート、発泡ポリ塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体シートを使用することができる。特にこの中でも常温で面に対して垂直方向に加圧した際に、一定以上の圧力に対して塑性変形により厚さが薄くなる特性を有したものが好ましい。市販されているものとしては、Teslin(ピーピージー・インダストリーズ・インコーポレイテッドの登録商標)、ユポ(ユポ・コーポレーションの登録商標)がある。
上記のTeslinは、シリカを含有したポリエチレンフィルムを延伸して形成したフィルム状の微小な孔を有する多孔性物質であり、たとえば180μm厚、空隙率35体積%、孔径0.01〜1μmのアモルファスシリカ含有のものがある。
ここで発泡性基材(多孔質コアシート)の空隙率A(%)は、発泡性基材の外形寸法から算出される見かけ体積(cm3)をB、発泡性基材の空隙部を除いた真の体積(cm3)をC(真の体積は発泡性基材を、アルコール等の液体中に沈めた時の増加した体積を測定することによって知ることができる。)としたときに、次の式によって算出されるものである。
A(%)=[(B−C)/B]×100
多孔質コアシートの好ましい厚さは、その空隙率に関連する。たとえば、空隙率が33%の多孔質コアシートを使用すると、その厚さが100μmであれば、圧縮されて厚さが元の厚さの約67%になるまで圧縮することができる。しかし、多孔質コアシートの衝撃吸収性を利用する場合には、空隙率が10%程度残っている程度にプレスするのが限度である。圧縮後のICモジュールの上部分の多孔質コアシートの空隙率が10%以上であればカード表面に対して垂直な方向のICモジュールに対する耐衝撃性を向上することができる。それ以上プレスして厚さを薄くして空隙率が10%以下になると、多孔質コアシートは衝撃吸収性を発揮することが難しくなる。10%程度以上残っていれば、例えばICモジュールに対してカード表面に垂直な方向の衝撃が加わっても、その衝撃を緩和することができる。すなわち、多孔質コアシートを使用しない場合と比較して、耐衝撃性を向上することができる。そのため、本発明においては、多孔質コアシートの空隙率を10%以上に保持したカードを作成する。
使用する多孔質コアシートの空隙率には、格別の制限はない。ただし、実装されているICモジュールが周囲の非多孔質コアシートより飛び出ている場合には、実装されている部分の上下の多孔質コアシートは、第2の工程において、プレス圧力を受けて潰れる。その際、空隙が完全になくなるまで潰れると、多孔質コア材のクッション作用がなくなる。ICモジュール上の多孔質コアシートは、潰れた後においても10%程度空隙が残っていることが好ましい。
本発明の非接触型ICカードでは、多孔質コアシートの外側に外装シートとして硬い材料を使用する。硬い外装シートは、カード表面に垂直方向にかかる集中荷重を水平方向に分散し、さらに内部にある多孔質コアシートがクッションの役目を果たすため、内蔵されたICモジュールにかかる荷重が小さくなり、衝撃等の荷重に対する耐性を向上することができる。
この目的を達成するためには、外装シートは厚さ50μm以上であって、ロックウェル硬度(Rスケール)100以上であることが好ましく、カード形状でのロックウェル硬度は30以上であることが好ましい。ロックウェル硬度の上限はなく、硬いほど好ましいが、実際に使用することができる材料では130程度が限度である。
請求項2に記載の表面硬度を得ることができる非多孔質外装シートの材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、テレフタル酸とグリコールと1,4シクロヘキサンジメタノールの共重合体(PET−G:イーストマンケミカル社製)等のポリエステル樹脂、およびポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂、さらにポリカーボネート(PC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂がある。また、以上のものの共重合体やポリマーアロイがある。
また、外装シートとして使用することができる結晶性樹脂としては、上記のポリエステル樹脂、ポリオレフィン樹脂の内で結晶性のものがある。また、ガラス転移点が100℃以上の非結晶性樹脂は、上記の各種樹脂のうちから選定することができる。さらに、それらの共重合体もしくはポリマーアロイであって最も高温のガラス転移点が110℃以上のものを使用することができる。これらの樹脂を使用することによって、耐熱性が向上するだけでなく、表面強度が向上する。
本発明の非接触型ICカードは、非多孔質コアシートにICモジュールを嵌め込むための開口部を設けなくても、空隙率の大きな多孔質コアシートを使用すれば、製造することができる。しかし、非多孔質コアシートに開口部を設け、そこにICモジュールを格納することが好ましい。開口部の大きさは、ICモジュールがぴったりはめ込まれるサイズが好ましいが、生産時の位置ずれを考慮して1mm程度大きくてもよい。
非多孔質コアシートの厚さが、ICモジュールの厚さより厚くて、開口部を設けただけで、ICモジュールを格納するに十分であるばかりでなく、多孔質コアシートが開口部へ入り込んでも、空隙がある状態になる場合には、設計を変更して、非多孔質コアシートの厚さを減らして、空隙がない状態にする。空隙があると、ICモジュールが宙づり状態になり、使用状態でICモジュールとアンテナコイルの接点が破壊されやすいからである。ICモジュールが宙づりにならないように設計することが必要である。少なくとも、第2工程において、多孔質コアシートが潰れて、開口部へ入り込み、ICモジュールを押さえ込む状態になるように設計する。
表側面のコアシートに開口部を設けるだけでは、多孔質コアシートが潰れたとしてもICモジュールを格納することができない場合には、裏側面の多孔質コアシートにも開口部を設けるようにする。多孔質コアシートによってICモジュールが固定されるように設計することによって、使用中の各種の振動によって、ICモジュールとアンテナコイルの端部の接点が破壊される事故がなくなる。
本発明に使用するインレットは、アンテナコイルとICモジュールと、それらが配置されたアンテナシートとで構成される。アンテナコイルは、エナメル被覆導線で形成されたもの、ベースフィルムに貼り合わされたAl箔、Cu箔をエッチングにより形成したもの、銀系の導電性ペーストを印刷して形成したもののいずれでもよい。また、ベースフィルムはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等の樹脂フィルムである。
本発明に使用するインレットは、アンテナシートにICモジュールが搭載された部分の厚さは合計で100〜600μmが好ましく、アンテナシートにアンテナコイルが配置された部分の厚さは合計で15〜105μmが好ましく、アンテナシートのみ厚さは10〜100μmが好ましい。
非接触型ICカードの厚さは規格で約0.8mmなので、ICモジュール部の厚さが600μmを超えるとカード化したときにICモジュールが表面から透けてしまう恐れがあるため、外観的に好ましくない。また、アンテナシートの厚さが10μm以下の場合、シートが薄すぎるために、一体化のためのプレス加工時の加工安定性が損なわれ、アンテナシートごと封止成形することができるという利点が失われるので好ましくない。
なお、アンテナコイルの製法と、アンテナシート用フィルムへの固着の方法は、第1に、絶縁銅線等をコイル状に巻いて、アンテナコイルシートへ貼り付ける方法、第2に、アンテナシート用フィルム上に銅箔やアルミニウム箔の接着しメッキ法で形成し、次ぎにフォトエッチング法を使用して所定のアンテナコイルを形成する方法、第3に転写用フィルム上にフォトエッチング法でアンテナコイルを形成し、それをアンテナシート用フィルムへ接着剤を介して転写する方法がある。本発明には何れの方法で形成したアンテナシートでも使用することができる。
アンテナシート用基材フィルムとして、PEN、PET、ポリイミド等の接着性が劣る樹脂を使用した場合、アンテナコイルやICモジュール配置した部分以外の部分に開口部を設けコアシート同士が熱融着するようにする場合があるが、本発明においては、この方法を使用することができる。
すなわち、従来の製造方法では、コアシートで挟み込んでラミネートしてセンターコアを製造する場合、ICモジュール部には開口部を設けたコアシートを使用すると、センターコアの表面を平滑にするには、溶融したコアシートは、流動してアンテナシートの厚さとアンテナコイルの厚さの合計の厚さをすることが必要である。開口部の大きさが増すにつれて、流動するコアシートの量が増え、平滑になるまでに余分に時間がかかり、生産性が低い。
一方、本発明の構造では、センターコアの表面は平坦でなくてよい。センターコアの両側に設けた多孔質コアシートがセンターコアの凹凸を吸収するので、容易に外装シートの表面を平滑にすることできる。
また、本発明の製造方法ではセンターコアを製造する際に、ゴム弾性を有する熱プレス板を使用する。出来上がったセンターコアは表面がアンテナシートの凹凸を反映した凹凸を有するようになるが、先に述べたように、その外側を覆う多孔質コアシートが表面の凹凸を吸収してくれる。ゴム弾性を有する熱プレス板を使用することによって、溶融したコアシートが流動する必要がなくなり、ラミネートに要する時間を大幅に短縮することができる。
本発明の非接触型ICカードは、コアシートがすべて多孔質材である非接触型ICカードよりもカードの剛性が向上し、ICモジュールの破損を防止することができる。
なお、本発明のカードではコアシートの表面に印刷することはない。その上の多孔質コアシートが不透明なので、たとえコアシート上に印刷されていても、隠蔽されてしまうからである。また、多孔質コアシートに印刷することができてもできなくても、外装シート上に印刷することができる。
さらに、多孔質コアシートとして、スキン層を有していて印刷が可能なものを使用することによって、従来構造の非接触型ICカードにおいてコアシートに印刷していた絵柄や文字を印刷することができる。印刷方法としては、潰れるのを防止するために、低圧のオフセット印刷、低圧のスクリーン印刷、無圧のインクジェット印刷を使用することができる。
非多孔質外装シートの上に保護層を形成したり、ホログラム層を形成したり、顔写真部
や、感熱記録部分を形成したり、エンボスしたりする方法は、従来方法と同じでよい。
本発明は、非接触型ICカードに対して適しており、形状はISO7810に定めるID−1、ID−2、ID−3に定義されるカードやID−000のように特殊な形状に打ち抜かれたカードに好適に適用することができる。すなわち、ID−1のカードはクレジットカードやキャッシュカードで使われている形状であるが、財布等で保管した場合に最も厚みのあるICモジュール部に圧力がかかることがあり、これを防ぐ点で本発明の構造が適している。またID−2,3のカードはIDカード,パスポート等で使われる形状であるが、裸で携帯した際にかかるICモジュール部への圧力を低減する点で本発明の構造が適している。
コアシートは、ICモジュールを格納するための開口部を設けないでも、本発明に非接触型ICカードとすることができる。しかし、開口部を設けるほうが、本発明の構造と製造方法の利点を大きく発揮することができる。開口部は2枚のコアシートの一方に設けるか、あるいは双方に設けるかは、ICモジュールを多孔質コアシートとの間に空隙なしに格納するために、ICモジュールの厚さ、インレットの厚さ、その他使用することができる多孔質コアシートの厚さや空隙率を考慮して、設計によって決定する。
一体化のための加圧・加熱の工程において、非多孔質外装シート、多孔質コアシート、非多孔質コアシート、インレットを熱融着させるための温度は、一般的に各カード基材のガラス転移点よりも80℃以上の温度であることが、十分な流動性を得るために必要であるが、接着剤を使用して低温で一体化することができる。接着剤の種類は、各カード基材間を接着することができ、カードとして必要な特性、例えば耐熱性、耐変形性、耐久性、透明性等、を得ることができるものであれば、格別の制限なく使用することができる。ここで透明性は、多孔質コアシート上に絵柄や文字を印刷した場合に必要である。好ましくは熱可塑性樹脂接着剤ホットメルト接着剤であるが、加熱硬化性、紫外線硬化性、嫌気硬化性、2液反応硬化性のものも使用することができる。
熱可塑性樹脂接着剤の接着温度はカードの各基材のガラス転位点に対して0〜+60℃であることが好ましい。例えば、カード基材としてPVC、PET−Gを使用する場合には、これらのガラス転位点は60℃前後なので、加熱温度を120℃以下で接着できる接着剤を使用する。
使用することができる熱可塑性接着剤としては、例えば、ポリ塩化ビニルとポリエステルをブレンドしたもの、ポリエステル水系エマルション接着剤、ポリウレタン系硬化性ホットメルト接着剤、ポリ塩化ビニル系接着剤、ポリエステル系接着剤等がある。いずれも、各カード基材との接着性を確認して使用する。
第2工程において、接着剤を使用する場合、接着時に加熱が必要な接着剤の場合には、熱プレス装置を使用する。一方、接着時に加熱が不要な接着剤の場合には、加熱できないプレス装置を使用することができる。
実生産では、エッチング法によるアンテナシートを使用する場合は、一枚ずつでなく、幅広のアンテナシート(例えば600mm幅)に多面付けした状態で、エッチング加工、ICチップ実装を行い、さらに以上の工程で作成したアンテナシートを上面下面各1枚の非多孔質コアシートで挟み込み、さらにその外側に多孔質コアシートを上下1枚ずつ配置し、さらにその外側非多孔質外装シートを上下各1枚ずつ配置し、熱圧プレスによる一体化、規定サイズの抜き加工、といった工程で、本発明の非接触ICカードを製造する。また、非多孔質コアシートに開口部を設ける場合は、ICモジュールのサイズより1mm程度大きな開口部を設けたほうが、ICモジュールの位置が多少ばらついていても、対応す
ることが容易になる。
多孔質コアシートと非多孔質外装シートをラミネートして一体化するほうが、製造上取り扱いが単純になる、または装置が単純になる等の利点がある場合には、一体化してもよい。一体化したものをセンターコアの表裏に配置して、(熱)プレスして、非接触型ICカードとする。
ラミネートする際に、多孔質コアシートが潰れない低圧の方法が必要である。その方法としては、ロールで挟み込んで長尺のシートを2本のロールで挟み込んで貼り合わせて一体化し複合シートとする印刷関係の技術を使用することができる。使用した材料によっては、加熱溶融による一体化では圧力が高すぎて、多孔質コアシートが潰れてしまう場合には、接着剤を使用して一体化することができる。
個々の材料(アンテナシート、非多孔質コアシート、多孔質コアシート、非多孔質外装シート)の厚さには、通常10%程度のバラツキがある。一方、カードの厚さの規定値は0.76±0.08mmである。本発明の非接触型ICカードは、塑性変形性多孔質シートを使用しているので、プレス時の間隔を規定することができるプレス装置を使用することによって、カード間の厚さムラが極めて小さなカードを製造することができる。その場合、カードの厚さのばらつきは、プレス板の位置制御のばらつきになる。また、減圧プレス、真空プレスを採用することは、空隙をなくすことに有効である。
プレス時のプレス板の間隔を所定の値に保持する方法としては、例えばストッパーによる方法、間隔を測定して、その値をプレス板の駆動機構にネガティブフィードバックして一定にする方法がある。なお、第1工程、第2工程のいずれにおいても、複数枚のカードに相当する材料を重ねプレスすることがある。この際には、プレス板を一枚のカードに相当する材料のセットの間すべてに挟み込む。例えば第1工程では、裏面側の非多孔質コアシートと表面側非多孔質コアシートの間すべてに、ゴム弾性表面を有するプレス板を挟み込む。そのプレス板は両面をゴム弾性としたものでもよいし、一面をゴム弾性としたものを2枚背中合わせにして挟み込んでもよい。
なお、実際の構成としては、本発明のカードにさらに、ホログラム層やサインパネル層を形成したり、熱転写リボンによる印字をしたりすることができる。
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<実施例1>
非接触型ICカードとして、非多孔質外装シート3/多孔質コアシート4/非多孔質コアシート2/インレット10/非多孔質コアシート2’/多孔質コアシート4’/非多孔質外装シート3’の7層構成であるものを製造した例を、以下に説明する。
<設計の1例> 与件条件は、使用するICモジュールの厚さは400μm、アンテナシートの基材フィルムの厚さは40μm、アンテナコイルの厚さは40μmであるとする。また、アンテナシート基材フィルムは非多孔質外装シートとの接着性が悪いので、アンテナコイルが設置してない部分のアンテナシート基材フィルムをできりだけ打ち抜いて、使用すると、する。非多孔質コアシートとして厚さ200μmのPVCシートを使用すると仮定すると、開口部を表裏の双方の非多孔質コアシートに形成した場合、ICモジュールは、作成した表側センターコアの開口部から20μm突出し、またICモジュールが設置されているアンテナシート基材フィルムが裏側センターコアの開口部から20μm突出する。また、アンテナシート上にアンテナコイルのある部分は、表側センターコア側にア
ンテナコイルがない部分と比較して40μm突出する。すなわち、段差は最高80μmになる。
ここで、多孔質コアシートとして、空隙率35%の多孔質コアシートを使用すると仮定すると、圧縮後の空隙率として10%を設計値とする場合、所要の多孔質コアシートの厚さの最小値は80μmである。しかし、この厚さではアンテナシートの基材フィルムがない部分との高低差(80μm)を吸収して平滑な表面を得ることができない。厚さを100μmの多孔質シートを使用すると仮定すると、前記の高低差80μmを吸収することができ、カードの表面を平滑にすることができる。また圧縮後の多孔質コアシートの厚さは125μmとなる。なおこの場合、ICモジュール上の非多孔質外装シートの厚さは、最小75μmである。ICモジュール部分の最小厚さは合計400+40+75×2=590μmとなる。従って、非接触型ICカードの厚さを760μmとしたとき、非多孔質外装シートの厚さを85μmとすることができる。
なお、非多孔質コアシートの厚さが厚い場合にはICモジュールは非多孔質コアシートの開口部より突出しない。従来の構造では、外装シートとICモジュールの間に隙間が発生するので、ICモジュールは宙づりの状態になった。これを防止するため、詰め物を入れてICモジュールを固定する場合があった。本発明の構造の場合には、ICモジュール上の多孔質コアシートが変形してICモジュールを押しつけるようにして、宙づり状態になることを防止するように設計する。
<第1工程:センターコアの作成> アンテナシート用基材フィルム11として厚さ40μmのポリエチレンナフタレート(PEN)を使用し、その一面上に貼り付けた厚さ40μmの銅箔をエッチングして形成したアンテナコイル12を有するアンテナシートを用い、これにアンテナコイル、ICモジュールが配置されない中央部にパンチング法で開口部を設けた。これに厚さ450μmの非接触型ICカード用ICモジュール13を搭載したものをインレット10として使用した。
非多孔質コアシート2および2’には、厚さ170μmのPETGシート(三菱樹脂(株)製)を用い、非多孔質外装シート3、3’には厚さ90μmのPETGとポリカーボネートのポリマーアロイからなるシート(三菱樹脂(株)製)を用い、多孔質コアシート4、4’には、空隙率35%,厚さ160μmのポリオレフィン系多孔質樹脂シート(製品名Teslin、ピーピージー・インダストリーズ・インコーポレイテッド社製)を用いた。
非多孔質コアシート2、2’にはICモジュールが配置される部分にICモジュールを入れ込むために、最も好ましいICモジュールの外形と同じサイズではなく、加工性を考慮して、ICモジュールの外形サイズより0.5mm大きな開口部21、21’をパンチング法で形成した。
このアンテナシートの両面を前記非多孔質コアシートで挟んで、その上下から厚さ2mmのシリコーンゴムを貼り付けた熱プレス板で、圧力2MP、温度130℃で3分間熱プレスしてセンターコアを形成した。非多孔質コアシートはアンテナシートの各部分に完全に入り込んでいて、非多孔質コアシートとアンテナシートの間には隙間が見られなかった。ちなみに、プレス板として従来の非弾性のものを用いた場合には、同一温度、圧力、時間でプレスした場合、溶融した非多孔質コアシートがアンテナシートと接触する前の段階であり、隙間がなくなるまで流動するには10分間が必要であった。
センターコアの表面は、アンテナシートの表面の凹凸に類似した凹凸になり、高低差はアンテナコイルの上の部分とアンテナシート基材フィルムの開口部の高低差は60〜70
μmであった。また、ICモジュールは表面側の非多孔質コアシートより約55μm突出し、裏面側の非多孔質コアシートの開口部にはICモジュールを搭載している部分のアンテナシートの基材フィルムが約55μm突出していた。しかし、ゴム弾性を有するプレス板なので、突出部に追従し、ICモジュールが損傷することはなかった。また実際上は、この撓みは、ICモジュールの破損、出来上がったカードのカール、等の問題を生じなかった。
<第2工程:カードの作成> まず、スキン層を有する多孔質コアシート(Teslin)の表面にインクジェット印刷、低圧オフセット印刷、低圧スクリーン印刷を併用して、文字と絵柄を印刷した。
次に第1工程で作成したセンターコアの表裏に前記多孔質コアシートを、印刷面を外側にむけて重ね、さらにその上に厚さ90μmPETGとポリカーボネートのポリマーアロイからなる非多孔質外装シートを重ね、熱プレス板として研磨したステンレス板を貼り付けた熱プレス装置で、加圧時の間隔を0.76mmに設定して温度120℃で熱プレスして非接触型ICカードを作成した。
得られた非接触型ICカードの表面は鏡面平滑であり、ICモジュールが埋め込んである場所の表面にヒケは見あたらず、また凸状にもなっていなかった。またロックウェル硬度(Rスケール)は95であった。
<比較例>
非接触ICカードとして、層構成が、非多孔質外装シート/多孔質コアシート/インレット/多孔質コアシート/非多孔質外装シートの5層構成であるものを、以下に述べる方法で作成した。
外装シート(3)(3’)に厚さ90μmのPETGとポリカーボネートのポリマーアロイからなるシート(三菱樹脂(株)製)、コアシート(2)および(2’)に空隙率35%,厚さ300μmの多孔質樹脂シート(製品名Teslin、ピーピージー・インダストリーズ・インコーポレイテッド社製)を用いた。実施例1と同じアンテナシート(1)は厚さ40μmのPENを基材とし、搭載したICモジュールの厚さは450μmであった。
上記の層構成で基材を積層した後、圧力2MPa、温度130℃、で10分間プレスし、全体を一体化した。一体化した後の全体の厚さは760μmであった。表面は平滑であり、ICモジュールが埋め込まれている部分にヒケや膨らみは目視では認められなかった。また、ロックウェル硬度(Rスケール)は45であった。
<特性の評価>衝撃耐性、集中加重耐性、折り曲げ耐性、引っ掻き耐性、について評価した。
<衝撃荷重耐性の評価>JIS K5600に規定された落球試験を行った。高さ1mより750g鋼球を落下させたところ実施例1のカード及び比較例のカードにおいて損傷は見られなかった。
<集中荷重耐性の評価>JIS X6303で規定された機械的強度の評価方法である直径1mmの鋼球に荷重を加える試験を行ったところ、実施例1のカード、比較例のカードとも1.5Nの力を加えても損傷は生じなかった。
<曲げ応力耐性の評価>JIS X6301で規定された静的曲げ強さについての評価を行ったところ、実施例1のカードでは25〜30mmの範囲だったが、比較例では、37〜43mmであった。
<耐引っ掻き強度耐性の評価>JIS K5600−5−4に規定された鉛筆硬度試験を
実施したところ、実施例1のカードではFだったが、比較例はHBであった。
以上の結果を表1にまとめて示した。
表1に示した結果から実施例1は、比較例と外装シートの材質と厚み多孔質コアシートの材質は同じであるが非多孔質コアシートを2層具備していることにより、静的曲げ強さを向上させることが出来る。また、表面の硬度についても同様に向上させることができる。衝撃や集中荷重に対しても実施例1のカードは比較例に対して通常使用において同等の物性を有しているということができる。
<実施例2>
アンテナコイルがある部分とない部分の厚さムラを、多孔質コアシートを使用した場合と、使用しなかった場合について比較した。
アンテナシートの材料にはPEN厚さ40μm、アンテナコイルの厚さは76μmのものを使用した。非多孔質コアシートの材料にはPETG(材質)、厚さ170μm、多孔質コアシートはポリオレフィン(材質)厚さ160μm、非多孔外装シートはPET(材質)、厚さ75μmのものを使用した。
アンテナコイルの厚さが76μmである他は、実施例1と構造および製法が同じ非接触型ICカードと、比較サンプルとして、その構造から多孔質コアシートを除き、また第1ラミネートのプレス条件として、非弾性のプレス板を使用し、非多孔質コアシート材がアンテナシートに空隙なく入り込むまで加圧、加熱し、第2ラミネート工程は実施例1と同様にして製造したものを準備した。
アンテナコイルのある部分と無い部分の厚さを測定し差を算出した。測定方法は、デジタルマイクロメータを使用し、一枚のカードについて3カ所測定した。総数112枚のカードについて、測定した。アンテナコイルがある部分とない部分の厚さの差を各カードについて求めた。結果を図8にヒストグラムとして示した。
図8のヒストグラムからコアシートとして多孔質樹脂シートを使用した場合のほうが、多孔質樹脂シートを使用しない場合と比較して、カードの厚さが規定値に近く、しかもバラツキも減少していると言える。